説明

ミニ細胞ディスプレイを用いるペプチドディスプレイライブラリーをスクリーニングする方法

【課題】結合し得、そして特定の生物学的プロセスを効果的に調節し得る候補についてのペプチドライブラリーをスクリーニングすることについて有意な利点を有するミニ細胞ディスプレイ方法を、提供すること。
【解決手段】スクリーニングされるべき独特の配列を作製する際の多様性を増加し、そしてスクリーニングされるべきペプチドのサイズを増加させる、小さな無核のミニ細胞に基づく方法。インビトロ変異誘発(タンパク質合成のレベルにおける)、ならびにDNA複製は、スクリーニングされるべきライブラリーの多様性を増加し、従って、特定の生物学的応答または機構を調節し得る潜在的なペプチドの数を実質的に増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
優先権主張が米国仮出願番号第60/274,039号(2001年3月7日出願)、および米国仮出願番号第60/306,946号(2001年7月20日出願)に対してなされる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概してハイスループットペプチドスクリーニングに関し、特に、ランダムペプチドの生成およびスクリーニングのためのミニ細胞ディスプレイ技術に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
レセプター−リガンド複合体、酵素基質反応および抗体−抗原結合反応における同族タンパク質の間の相互作用は、広汎な範囲のプロセスにおける応答を行なうために必要な分子相互作用の理解を促進してきた。選択された標的に結合し得、そして特定の生物学的プロセスを有効に調節し得る新たなペプチド分子についての検索は、農学、生物学および医学の研究の最先端にある。
【0004】
潜在的なレセプター、酵素、または抗体の相互作用ペプチドのライブラリーを開発するためにペプチドまたはヌクレオチドを使用する方法にはいくつか例がある。過去20年の間にわたって、これらのライブリーは、異なるファージまたは細菌の表面においてランダムなペプチドの発現を可能にする系に取り込まれてきた。多くの刊行物が、選択された標的に結合することについて、ポリペプチドのライブラリーを生産およびスクリーニングするためにファージディスプレイ技術を使用することを報告してきた。以下を参照のこと:例えば、 Cwirla et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,6378−6382 (1990);Devlin et al.,Science 249,404−406 (1990),Scott & Smith,Science 249,386−388 (1990);米国特許第5,571,698号(Ladner et al)。ファージディスプレイ法の基本的概念は、スクリーニングされるべきポリペプチドをコードするDNAと、標的ポリペプチドとの間の物理的会合の確立である。この物理的会合は、ファージ粒子によって提供される。このファージ粒子は、ポリペプチドをコードするファージゲノムを封入するキャプシドの部分として、そのポリペプチドをディスプレイする。ポリペプチドとその遺伝的材料との間の物理的会合の確立は、異なるポリペプチドを有する非常に多数のファージの同時の大量スクリーニングを可能にする。標的に親和性を有するポリペプチドをディスプレイするファージはその標的に結合し、そしてこれらのファージは、その標的へのアフィニティースクリーニングによって濃縮される。これらのファージからディスプレイされたポリペプチドの正体は、そのそれぞれのゲノムから決定され得る。次いで、これらの方法を用いると、所望の標的について結合親和性を有するとして同定されるポリペプチドは、従来の手段によってバルクで合成され得る。
【0005】
標的分子と相互作用するペプチドを選択するための方法を提供することに加えて、ファージディスプレイは、哺乳動物細胞の表面上のインテグリンタンパク質に結合するファージコートタンパク質に遺伝的に融合されたペプチドを用いて標的細胞に繊維状ファージを指向させるために用いられてきた。ファージディスプレイの方法は、遺伝子治療適用において多大な影響を有し、そして特定の様式で標的細胞に対して試みられてきた。
【0006】
表面に発現された外来タンパク質を入手するための別のアプローチは、外来タンパク質についてのキャリアとして細菌のネイティブ膜タンパク質を使用することである。一般に、細菌表面においてタンパク質を固定する方法を開発する多くの試みは、得られるハイブリッドもまた表面上に局在化されるという希望を持って、細胞の外側に通常露出するネイティブタンパク質に対して所望の組換えポリペプチドの融合に焦点が当てられてきた。しかし、ほとんどの場合、外来タンパク質は局在化を阻害する。従って、融合タンパク質は、細胞表面に到達し得ない。これらの融合物は、誤った細胞配置をするか、または分泌タンパク質ドメインが周辺質に面して膜に固定されるようになるかのいずれかである。以下を参照のこと:Murphy,et al.,J.Bacteriol.,172:2736 (1990)。
【0007】
細菌ディスプレイ方法における最近の進展は、ピリンタンパク質(TraA)またはその一部、およびピリ繊毛を形成し得る細菌宿主細胞の外側表面においてライブラリーペプチドをディスプレイする異種ポリペプチドを含む融合タンパク質を用いてこの課題を解決してきた。以下を参照のこと:米国特許第5,516,637号(Huang et al)。ピリ繊毛は、細菌の細胞表面に固定され、そして天然に溶媒暴露される。
【0008】
あるいは、FLITRXTM(Invitrogen Corp.)のランダムペプチドライブラリーは、細菌鞭毛タンパク質FliCおよびチオレドキシンTrxAを用いて、コンフォメーション的に拘束される様式でE.coliの表面上にドデカマーのランダムペプチドライブラリーをディスプレイする。以下を参照のこと:Lu et al.,BioTechnology,13:366(1995)。これらの系は、抗体エピトープマッピング、生細菌ワクチン送達系の開発および構築、ならびに環境浄化の目的および診断のための全細胞生体吸着剤の生成に適用されてきた。腫瘍に由来する上皮細胞上の腫瘍特異的な標的に結合するペプチド配列もまた、FLITRXTM系を用いて同定された。以下を参照のこと:Brown et al.,Annals of Surgical Oncology,7(10):743(2000)。
【0009】
ファージおよび細菌のディスプレイ系は、新たなまたは増強された結合特性で標的分子に結合し得る新たなペプチドを見出すためのユニークな経路を提供してきたが、考慮する必要があるいくつかの重要な制限がある。このペプチドが遺伝学的に融合されるファージコートタンパク質の構造コンフォメーションにおける最小限の変化に寛容である。より大きなペプチドインサート(100アミノ酸を超える)がコートタンパク質およびそれゆえファージアセンブリの機能を破壊するときに問題が生じる。異種ペプチドは、フィンブリアおよび鞭毛フィラメントの両方を用いて細菌上にディスプレイされてきた。インサートのサイズの束縛は、これらの系の適用性にも影響を与える。今日まで、フィンブリアにおいてディスプレイされる最大のペプチドは、50〜60アミノ酸の範囲にあるが、他方、Escherichia coliのFliCフラゲリンに融合される接着ペプチドの機能的発現は、302アミノ酸に拘束されるようである。以下を参照のこと:Westerlund−Wikstrom 2000。
【0010】
アミノ酸アナログを用いて化学的に反応性の残基を置換し、そして合成ペプチドの安定性を改善し、ならびにその標的についての薬物ペプチド化合物の親和性を調節してきた。ファージおよび細菌のディスプレイ系の限界は、インビボでペプチドライブラリーにアミノ酸アナログを取り込むことがこれらの系ではできないことにある。インビボでは、アミノ酸アナログは、必須タンパク質に天然のアミノ酸を取り込むために用いられる細胞機構および成長しつつある目的のペプチド鎖を破壊する。ファージおよび細菌のディスプレイは、両方とも、生存について必須であるタンパク質を合成し、ペプチドライブラリーを合成し、そしてその目的のペプチドを有するファージまたは細菌のプールを増殖または増幅させる、細菌細胞のタンパク質合成機構に依存する。技術的に厄介なプロトコルは、ペプチド配列にアミノ酸アナログを取り込むために頻繁に用いられるインビトロ翻訳方法を試みる場合に時間の浪費であり得る。
【0011】
ファージまたは細菌のプールを増幅する方法は、目的のペプチドの発現を必要とする。細菌細胞に対して毒性であり、そしてそれゆえ致死的であるペプチドは、ファージまたは細菌のディスプレイ系においてスクリーニングされ得ない。このことは、そうでなければ目的であったであろう可能性のある大きなペプチドセグメントを除去する。
【0012】
ファージおよび細菌のディスプレイはまた、細胞増殖および細胞の生存について最適な条件を維持するために、厄介かつ時間を浪費する技術に依存する。細菌細胞は、比較的大きく、そして標的と相互作用するペプチドについてスクリーニングする間注意しなければならない。アフィニティークロマトグラフィーは、結合ペプチドから非結合ペプチドを分離するために一般に用いられる方法であり、そしてカラムにおける細胞の詰まりおよび非特異的な保持を防止するために注意しなければならない。候補ペプチドをディスプレイするファージは、概して、増殖または増幅され、従ってそのファージのパッケージングタンパク質および目的のペプチドを合成するために細菌の細胞の転写、翻訳および複製の機構の使用を必要とする。細菌細胞に感染させること、ファージを採集すること、およびいくつかの回数再感染させることは、非常に時間がかかることである。細菌細胞ディスプレイ系はまた、プラスミドによってコードされるペプチドの世代ごとの安全な継代および続いての再スクリーニングを保証するために最適な増殖条件を必要とする。
【0013】
オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発を利用して、選択されたペプチドがさらに特徴付けられてきた。一般に、オリゴヌクレオチド媒介性変異誘発を用いて、非常に特異的な変異が目的の遺伝子に導入される。その遺伝子に導入されるべき特定の変異の選択は、他の相同タンパク質の活性または機能における変異の効果を記載する公開された報告に通常基づくが、変異または置換の効果を予測することは依然として困難である。
【0014】
インビボでペプチドライブラリーの自然変異頻度を増大させることがしばしば有利である。細菌表面にディスプレイされたペプチドの集団の多様性を増大させることは、特定の効果を伴うペプチドを同定するための非常に有用な道具であることが示されてきた。自然変異は、ペプチドライブラリーに対する進化的圧力を維持し、そしてユニークな配列のスクリーニングを最大化する。
【0015】
細菌(例えば、E.coli)の遺伝学を使用する、DNA配列のクローニングおよび増幅の複雑でない性質に従順なディスプレイシステムが、ライブラリー内のペプチドの変動性およびサイズを増大させるために、所望される。オリゴヌクレオチド配列へのアミノ酸アナログをインビボで取り込んで、その結果、その遺伝的特性および生化学的特性を変更することを可能にする、新規なペプチドライブラリーを系内に作製する必要がある。ファージまたは細菌のディスプレイシステムにおいて、他の方法で、それらの毒性によって除去され得るペプチドを生成する必要がある。インビボでオリゴヌクレオチドを操作し、そして細胞生存力のための最適な成長条件を確実にするための要件を軽減する必要もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、変更された機能活性および結合活性を有する新規なペプチド基質の系統的な調製のための効率的かつ迅速な方法を提供し、当該分野で現在実施されているファージディスプレイ法および細菌ディスプレイ法に固有の欠点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要旨)
目的のオリゴヌクレオチドおよびペプチドを選択するための方法、ならびに所望の機能的特性および結合特性を有するペプチドについての大きなミニ細胞ディスプレイライブラリーを作製し、スクリーニングするための方法が開発された。これらの方法は、Rickettsia rickettsiiの17K抗原のようなタンパク質に対する遺伝子融合体として表されるランダムオリゴヌクレオチドのミニ細胞ディスプレイライブラリーから、新規かつ独特の標的相互作用ペプチドを選択する工程を包含する。
【0018】
プラスミドまたは発現ベクターをコードしたオリゴヌクレオチド融合産物または遺伝子融合産物は、好ましくは、「ディスプレイミニ細胞」と称されるものを形成するミニ細胞外膜に局在化される。簡潔にいうと、この方法は、最初にライブラリーを構築する工程からなり、ここで、このライブラリーは、遺伝子融合体に作動可能に連結した誘導性転写調節因子を含む複製可能な発現ベクターからなり、ここで、この遺伝子融合体は、以下:
(i)細菌外膜タンパク質の少なくとも一部をコードする第1の遺伝子;および
(ii)標的分子と相互作用する潜在的な「基質」ペプチドをコードする第2の遺伝子またはオリゴヌクレオチド、
を含む。
【0019】
この第1の遺伝子の3’末端は、第2の遺伝子またはオリゴヌクレオチドの5’末端に連結され、それによってキメラ遺伝子を形成する。このキメラ遺伝子は、キメラタンパク質をコードする。第1の遺伝子と第2の遺伝子との間の連結は、リンカー分子またはオリゴヌクレオチドを介して、直接的であっても間接的であってもよい。第2の遺伝子またはオリゴヌクレオチドは、変性ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、当該分野で周知の方法、または他の増幅方法によって構築されたランダムオリゴヌクレオチドのライブラリーから得られる。
【0020】
特定の実施形態において、この第1の遺伝子が、302アミノ酸長より大きいタンパク質をコードする大きなオリゴヌクレオチドの融合に従順な外膜タンパク質またはその一部をコードすることが所望される。Rickettsia rickettsiiの17K抗原が、好ましい。1実施形態において、融合タンパク質の発現は、誘導性DNA調節エレメント、例えば、lacプロモーター、tacプロモーター(lacリプレッサーによって調節されるハイブリッドtrp−lacプロモーター)、trpプロモーター、またはlacUV5プロモーターによって調節される。他の適切な細菌プロモーターも同様に使用され得る。誘導性プロモーターを使用することによって、オリゴヌクレオチド融合体は、インデューサーの添加まで、静止したままである。これによって、遺伝子産物の産生のタイミングの制御が可能となる。
【0021】
この方法は、第2の遺伝子内の1つ以上の選択された位置において発現ベクターを変異する工程をさらに包含し、それによって、第2の遺伝子によってコードされた関連基質ペプチドのファミリーを形成する。次いで、適切な宿主ミニ細胞株は、発現ベクターDNA調製物で形質転換される。この方法はまた、獲得されたプラスミドDNAの複製の誘発およびミニ細胞における対応するペプチドの制御された発現を提供する。
【0022】
必要に応じて、この方法は、変異誘発遺伝子表現型を示す適切な宿主ミニ細胞株を形質転換すること、および獲得されたプラスミドDNAを複製するためのミニ細胞の後の誘導からなる。この方法は、細菌ミニ細胞株を示す変異誘発遺伝子表現型を生成する工程をさらに含む。DNA修復に重要な遺伝子内の変異体は、代表的に、変異誘発遺伝子表現型を有する。例えば、DNAのメチル指向ミスマッチ修復に重要な遺伝子内の変異体(mutS、mutL、およびmutHと称される)は、その自然変異頻度を約1000倍増加させる。親細菌細胞へのこれらの変異体の1つ、2つ、または全ての3つの取り込みは、無核ミニ細胞集団内のペプチドディスプレイライブラリーのインビボ多様化を生じる。
【0023】
ミニ細胞は、それらの外側表面上でペプチドのライブラリーを発現するために後に誘発される。次いで、この前選択された標的分子は、ディスプレイミニ細胞と接触され、このペプチドライブラリーは、当該分野で十分に確立された方法によって結合活性についてスクリーンされる。
【0024】
前選択された標的分子は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖、核酸、金属、または非タンパク質有機分子(例えば、薬物、ビタミンもしくは補助因子)、神経媒介物質(neuromediator)、細胞レセプターもしくは細胞レセプター複合体、ステロイド、前選択された分子もしくはそのアナログに対する天然アクセプター結合部位を模倣するペプチド、またはレセプター複合体の個々のタンパク質であり得る。
【0025】
別の実施形態において、機能的スクリーニングアッセイは、例えば、目的のペプチドと関連した阻害プロセス、刺激プロセス、または応答プロセスに関する生化学活性を確立するために組み込まれる。
【0026】
標的分子に結合するこれらのミニ細胞は、結合しないミニ細胞から分離される。必要に応じて、ミニ細胞上にディスプレイされたペプチドは、ディスプレイライブラリーの発現の前、間、または後に、放射性同位体、ローダミン、またはFITCのような分子または化合物で標識され得る。これは、目的の結合ペプチドの後の同定を容易にするのに役立つ。例えば、標的分子に有用な抗体は、相互作用する複合体を免疫沈降するために使用され得る。目的のペプチドが放射標識される場合、この複合体は、オートラジオグラフィー、当該分野で十分に確立された方法によって、容易に識別され、視覚化され得る。必要に応じて、このミニ細胞は、インビボで合成されるペプチド内に取り込まれるように、アミノ酸アナログで外因的に補充され得る。
【0027】
未結合メンバーから分離された結合ミニ細胞ライブラリーメンバーは、ここで、富化したライブラリーを表す。この富化したライブラリーのオリゴヌクレオチドを含む発現ベクターは、標的に対する融合タンパク質の変更された特異性についてスクリーニングするために、再び、単離され得、変異誘発され得、そしてディスプレイされ得る。あるいは、この富化したライブラリーは、再び、よりストリンジェントな条件下で、結合能力について試験され得、結合するライブラリーは、結合しないライブラリーから分離され、そしてこのライブラリーはさらに富化される。
【0028】
この方法は、標的分子に結合したミニ細胞または結合しなかったミニ細胞のいずれかについても一回以上繰り返され得る。
【0029】
この結合したミニ細胞は、標的分子および情報を抽出するために単離されたペプチドコード発現ベクターから容易に溶離され得る。次いで、ペプチドのDNA配列、DNA塩基組成、分子量、および/または任意の第2の構造体がこの配列内に存在するかどうかが、決定され得る。
【0030】
必要に応じて、この方法は、ディスプレイタンパク質から目的のペプチドを遊離する工程であって、後のアミノ酸分析のために、このディスプレイタンパク質にペプチドが遺伝学的に融合される、工程を包含する。ペプチドライブラリーのアミノ酸分析は、当該分野で周知の方法によって、自動化分析器によって実施される。当業者はまた、ペプチドの、アミノ酸組成、アミノ酸配列、等電点、および分子量を決定し得る。
【0031】
次いで、これらのペプチドは、所望の活性についてさらにスクリーニングされ得る。さらに合理的な操作はまた、特異的なアミノ酸を欠失し、付加し、または置換するために、あるいは、診断学的スクリーニングアッセイにおける使用のためにペプチドを標識するために、または固定化するために、実施され得る。
上記に加えて、本発明は、以下を提供する:
項目1.
結合パートナーに結合されたミニ細胞パートナーを同定するための方法であって、以下の工程:
(a)外膜を含むミニ細胞中の融合タンパク質を発現する工程であって、ここで、該融合タンパク質が、キメラ遺伝子によってコードされ、該キメラ遺伝子が、以下:
該外膜への該融合タンパク質の結合を媒介する第1ペプチドをコードするDNAフラグメント、および
第2ペプチドをコードするDNAフラグメント、
を含む、工程;
(b)該工程(a)のミニ細胞宿主を、結合パートナーに接触する工程;および
(c)該結合パートナーに結合される該ミニ細胞宿主を同定する工程、
を包含する、方法。
項目2.
項目1に記載の方法であって、以下の工程:
(d)前記結合したミニ細胞宿主または結合していないミニ細胞宿主を単離する工程、をさらに包含する、方法。
項目3.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記外膜への融合タンパク質の結合を媒介する第1ペプチドをコードDNAフラグメントが、シグナルアミノ酸配列を含む、方法。
項目4.
項目3に記載の方法であって、ここで、前記シグナル配列が、Rickettsia
rickettsii由来のompAシグナル配列、ompTシグナル配列、ompFシグナル配列、traAシグナル配列、phoAシグナル配列、βラクタマーゼシグナル配列、および17K抗原シグナル配列からなる群から選択される、方法。
項目5.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記第2ペプチドをコードするDNAフラグメントが、DNAライブラリー由来である、方法。
項目6.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記結合パートナーが、炭水化物、糖、核酸分子、ペプチド、タンパク質、金属、無機分子および合成薬物からなる群より選択される方法。
項目7.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記結合パートナーが、レセプター、リガンド、抗体、ビタミン、補因子、酵素、およびニューロメディエーターからなる群より選択される、方法。
項目8.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記ミニ細胞株が、グラム陰性細菌である、方法。
項目9.
項目7に記載の方法であって、ここで、前記グラム陰性細菌が、E.coli、Salmonella typhimurium、S.anatum、S.enteritidis、S.pullorum、S.senftenberg、S.worthington、Vibrio cholera、Erwinia amylovora、およびHaemophilus influenzaeを含む群から選択される、方法。
項目10.
項目1に記載の方法であって、ここで、前記ミニ細胞株が、グラム陽性細胞である、方法。
項目11.
項目9に記載の方法であって、ここで、前記グラム陽性細菌が、Bacillus subtilisである、方法。
項目12.
項目1に記載の方法であって、以下の工程:
(d)前記融合タンパク質をコードするDNAフラグメントを単離する工程;ならびに
(e)該単離されたDNAを、分析方法に供する工程であって、該分析方法が、DNA塩基組成の決定、DNA塩基配列の決定、分子量の決定、および該配列内の2次構造の決定を含む群より選択される、工程、
を、さらに包含する、方法。
項目13.
項目3に記載の方法であって、ここで、シグナルアミノ酸配列を含む前記DNAフラグメントが、Rickettsia rickettsiiの17K抗原のオープンリーディングフレームの最初の213ヌクレオチドを含む、方法。
項目14.
項目1に記載の方法であって、前記融合タンパク質の発現が、誘導性プロモーターエレメントによって制御される、方法。
項目15.
項目14に記載の方法であって、ここで、前記誘導性プロモーターエレメントが、lac、tac、およびtrpからなる群より選択される、方法。
項目16.
項目1に記載の方法であって、以下の工程:
(d)前記ミニ細胞宿主から前記第2ペプチドを切断する工程、
をさらに包含する、方法。
項目17.
項目2に記載の方法であって、以下の工程:
(e)前記ミニ細胞宿主から前記第2ペプチドを切断する工程、
をさらに包含する、方法。
項目18.
項目17に記載の方法であって、以下の工程:
(f)前記ミニ細胞宿主から切断された前記ペプチドを単離する工程;ならびに
(g)該単離されたペプチドを、アミノ酸組成の決定、アミノ酸配列の決定、等電点の決定、および分子量の決定からなる群より選択される方法に供する工程、
を、さらに包含する、方法。
項目19.
項目18に記載の方法であって、ここで、前記単離されたペプチドが、配列番号40、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号52、および配列番号53からなる群より選択される、方法。
項目20.
項目18に記載の方法であって、ここで、前記単離されたペプチドが、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号33、配列番号34、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号41、配列番号42、配列番号49、配列番号50、および配列番号51からなる群より選択される、方法。
項目21.
項目18に記載の方法であって、ここで、前記単離されたペプチドが、配列番号17、配列番号18、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号31、および配列番号32からなる群より選択される、方法。
項目22.
項目18に記載の方法であって、ここで、前記単離されたペプチドが、配列番号7、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号19、配列番号35、および配列
番号36からなる群より選択される、方法。
項目23.
項目5に記載の方法であって、ここで、前記第2ペプチドをコードするDNAフラグメントが、少なくとも3アミノ酸長である、方法。
項目24.
ミニ細胞DNAライブラリーの多様性を増加させるための方法であって、該ミニ細胞DNA中の細胞を変異させて、次いで、結合についてスクリーニングする工程を包含する、方法。
項目25.
項目24に記載の方法であって、ここで、前記変異誘発が、インビボである、方法。
項目26.
項目25に記載の方法であって、ここで、前記インビボでの変異誘発が、以下の工程:
(a)誘導性遺伝子融合を含む発現ベクターを、mut遺伝子中に変異を有するミニ細胞株中に形質転換する工程;および
(b)発現ベクターの複製を誘導するために、該ミニ細胞株にヌクレオチドを加える工程、
を包含する、方法。
項目27.
項目26に記載の方法であって、ここで、前記mut遺伝子内の変異によって、ミニ細胞株において、正常な速度より速い速度の自然変異誘発が与えられる、方法。
項目28.
項目25に記載の方法であって、ここで、前記インビボ変異誘発が、以下の工程:
(a)誘導性遺伝子融合を含む発現ベクターを、アミノアシル−tRNAシンテターゼ遺伝子中に変異を有するミニ細胞株中に形質転換する工程;ならびに
(b)タンパク質合成を誘導するために、該ミニ細胞株に、L−アミノ酸およびアミノ酸アナログを補充する工程、
を包含する、方法。
項目29.
項目28に記載の方法であって、ここで、前記アミノアシル−tRNAシンテターゼ遺伝子中の変異によって、tRNAがアミノ酸アナログを認識し、結合し、そして転移させる能力が、与えられる、方法。
項目30.
項目28に記載の方法であって、前記アミノ酸アナログが、ヒドロキシアミノ酸、またはその誘導体、オルニチン、アジトリプトファン、およびD−アミノ酸からなる群より選択される、方法。
項目31.
ミニ細胞DNAライブラリーをスクリーニングするための方法であって、以下の工程:
(a)ミニ細胞ライブラリーを標的に接触させる工程であって、ここで、前記標的が、固体支持体上に固定される、工程;および
(b)ミニ細胞ライブラリーの結合したメンバーを結合していないメンバーから分離し、それによって、該標的に結合するペプチドをコードするDNAが豊富なライブラリーを作製する、工程、
を包含する、方法。
項目32.
項目31に記載の方法であって、以下の工程:
(c)発現ベクターDNAを、結合したミニ細胞または結合していないミニ細胞から単離する工程;
(d)該単離されたDNAをインビトロで変異誘発させる工程;
(e)変異誘発されたDNAをミニ細胞株に形質転換する工程;
(f)タンパク質融合の発現を誘導する工程;
(g)該工程(c)のミニ細胞宿主を標的に接触させる工程;および
(h)該標的に結合したライブラリーにおけるミニ細胞を、該標的に結合しなかったミニ細胞から分離する工程、
を包含する、方法。
項目33.
項目31に記載の方法であって、ここで、前記固体支持体マトリクスが、アガロース、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、セルロース、中性キャリアおよびイオン性キャリア、ならびにアクリルポリマーからなる群より選択される、方法。
項目34.
項目31に記載の方法であって、ここで、前記結合パートナーが、炭水化物、糖、ペプチド、タンパク質、核酸分子、無機分子および合成薬物からなる群より選択される方法。
項目35.
項目31に記載の方法であって、ここで、前記結合パートナーが、レセプター、リガンド、抗体、ビタミン、補因子、酵素、金属およびニューロメディエーターからなる群より選択される、方法。
項目36.
組換え発現ベクターであって、Rickettsia rickettsiiの17K抗原のオープンリーディングフレームに遺伝的に融合された誘導性プロモーターエレメントを含む、ベクター。
項目37.
項目36に記載のベクターであって、ここで、前記Rickettsia rickettsiiの17K抗原のオープンリーディングフレームが、シグナル配列を含む、ベクター。
項目38.
項目37に記載のベクターであって、ここで、前記シグナル配列が、17K抗原のオープンリーディングフレームの最初の213ヌクレオチド内でコードされる、ベクター。
項目39.
項目38に記載のベクターであって、ここで、前記213ヌクレオチドフラグメントが、第2ペプチドをコードするDNAに遺伝的に融合される、ベクター。
項目40.
項目39に記載のベクターであって、ここで、前記遺伝的融合の発現が、キメラタンパク質を生成する、ベクター。
項目41.
項目36に記載のベクターであって、ここで、前記誘導性プロモーターエレメントが、lac、lacUV5、tac、およびtrpからなる群より選択される、ベクター。
項目42.
ミニ細胞DNAライブラリーを作製するための方法であって、以下の工程:
(a)ランダム化1本鎖プライマーを合成する工程;
(b)プライマーの相補的領域をアニーリングしてコンカテマーを形成する工程;および
(c)コンカテマーの1本鎖領域を2本鎖に変換し、それによって、オリゴヌクレオチドライブラリーを形成する工程、
を包含する、方法。
項目43.
項目42に記載の方法を使用して得られるライブラリーであって、ここで、前記ライブラリーのオリゴヌクレオチドが、少なくとも9ヌクレオチドを含む、ライブラリー。
項目44.
ミニ細胞を精製するための方法であって、密度勾配超遠心分離によって、細胞全体からミニ細胞を分離する工程を包含し、ここで、該勾配が、線状スクロース勾配から作製される、方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明によって、変更された機能活性および結合活性を有する新規なペプチド基質の系統的な調製のための効率的かつ迅速な方法が得られ、当該分野で現在実施されているファージディスプレイ法および細菌ディスプレイ法に固有の欠点が解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
(I.ミニ細胞の構築および組成)
ミニ細胞は、ライブラリーDNAをパッケージし、ペプチドをディスプレイするための代替の方法を提供する。本明細書中において使用されるように、用語「ペプチド」および「タンパク質」は、他で注記しない限り、交換可能に使用される。ミニ細胞は、細菌の極性末端において異常細胞画分から生じる、小さな無核細胞である。しかし、このミニ細胞は、幾つかのプラスミドを収容するのに十分な大きさであり、そしてミニ細胞は、細菌性染色体DNAを含まず、組み合わされた転写および翻訳、ならびにタンパク質改変に必要な機構の全てを含むため、クローン化されたタンパク質発現を分析するために大規模に使用される。グラム陽性株およびグラム陰性株を表す多くの変異体細菌株は、それらの個々の細胞周期にわたってミニ細胞を産生し得る。例として、E.coli,S.typhimurium,S.anatum,S.enteritidis,S.pullorum,S.senftenberg,S.worthington,B.subtilis,V.cholera,E.amylovora,およびH.influenzaeが挙げられる。
【0034】
(A)Min変異)
細菌の細胞は、細胞分裂を制御する洗練された系と供に提供されている。このmin遺伝子は、解剖学的に細胞分裂が起こる部分を制御する能力を細菌に提供する。細菌が正常に分裂する場合、minタンパク質(MinC、MinD、およびMinE)は、各細胞の2極の末端に蓄積する。このminタンパク質は、細胞分裂装置が各細胞の末端に蓄積することを妨げ、そして極の細胞分裂インヒビターと考えられ得る。MinEは、細胞の極に対するMinCタンパク質およびMinDタンパク質の正確な配置のために要求される位相の特異性を提供する。de Boerら、Proc.Nat.Acad.Sci.,(87)1129〜1133(1990)またはde Boerら、Cell,(56)641〜649(1989)を参照のこと。分裂装置アセンブリから遮断された各細胞の極の末端で、分裂のために要求されるタンパク質は、細胞の中間(細胞中期(midcell))に蓄積する。minCまたはminD遺伝子のいずれも欠損しているか、あるいはMinEタンパク質を過剰発現する細胞は、増加した頻度で極の末端で異常に分裂し、染色体DNAが不完全なミニ細胞を形成する。この形成されたミニ細胞は、分裂し得ないが、ヌクレオチドを複製プラスミドDNA中に組み込み得、そしてプラスミドの配列によってコードされるタンパク質を合成し得る。ミニ細胞を形成し得る任意の細菌株が、ペプチドディスプレイ(display peptide)の発現のための細菌宿主として使用され得る。
【0035】
細菌のミニ細胞株の重要な要素としては、ミニ細胞の表現型を付与する遺伝子中の変異が挙げられる。この変異は、好ましくは、遺伝的にクリーンなゲノムバックグラウンドにある(所望の表現型を付与するこれらの変異のみが、それ以外には野生型のバックグラウンド中に存在する)。
【0036】
(B)変異因子の変異)
別の実施形態において、種々のオリゴヌクレオチドおよびこれらによってコードされるペプチドのライブラリーをさらにランダム化するインビボの方法が、使用される。コードタンパク質を非機能的とするmutS遺伝子中の変異はまた、この変異を宿している細胞がDNA合成/複製の間に作製されたミスを正し得なくする。mutS株は、変異因子の表現型を付与する。
【0037】
ペプチドライブラリーは、min遺伝子(例えば、minC)の1つにおける変異を利用、および変異遺伝子をmutS細胞株に形質導入することによって、インビボでさらに多様化され得る。新しく作製された細胞株(MsMc)は、mutSおよびminC遺伝子の両方における変異を収容する。塩化カルシウム形質転換またはエレクトロポレーションのような技術を用いて、オリゴヌクレオチドを収容するプラスミドは、新しい細胞株中に導入され得る。形質転換された細胞株は、細胞外でヌクレオチドを添加することによって、プラスミドDNAを複製するように誘導され得、そしてこうする際に、ミニ細胞の複製機構は、コピーまたは複製される1000塩基あたり約1塩基対の割合でミス塩基対のヌクレオチドを組み込みまたは置換する。それ故、5×10個の細菌が、生成ごとに10個の新しい配列を生成する。次いで、プラスミドは、さらなるディスプレイのために非変異ミニ細胞株に移動され得る。
【0038】
(C)アミノ酸アナログ組み込み)
目的のペプチド中に組み込まれるべきアミノ酸アナログをミニ細胞のディスプレイに提供することは、ライブラリーのさらなる多様化のために使用され得る。アミノ酸アナログがペプチド中に組み込まれるために、mRNAからペプチドを合成することに関与するtRNA分子が、改変されなければならない。tRNA分子は、特定のアミノ酸にそれ自体を化学結合させ、次いで、ペプチド鎖中に組み込むために、mRNA中の正しい配列に対応するアミノ酸を提示するように働く。20個の天然に存在するL−アミノ酸の1つにそれぞれ対応する20個のアミノアシルtRNAシンテターゼ酵素は、受容するtRNA分子にアミノ酸に添加する。変異は、アミノ酸のアナログを認識し、そしてこのアナログを対応するtRNA分子に移すことを可能にする、MsMc株のアミノアシルtRNAシンテターゼをコードする遺伝子の任意の1つ、いくつかまたは全てに組み込まれ得る。次いで、生じたtRNA分子は、アミノ酸アナログを、伸長しているペプチド鎖に組み込む能力を有する。あるいは、tRNAは、アミノ酸アナログとアミノアシル化するシンテターゼによってのみ認識され、そしてナンセンスコドン(サプレッサーtRNA)または4つの塩基コドンを認識するように指向されるように遺伝的に構築され得る。Maglieryら、J.Mol.Biol.,March 2001,307(3):755〜769を参照のこと。このような組み合わせは、アミノ酸アナログの特異的なインビボ組み込みを提供する(Wangら、Science,April 2001,292:498〜500;LiuおよびSchultz,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,April 1999,96:4780〜4785)。アミノ酸アナログ(例えば、任意のヒドロキシアミノ酸またはその誘導体、オルニチン、アジトリプトファン、またはD−アミノ酸)は、ペプチド鎖に組み込まれる細胞に対して外因的に供給され得る。あるいは、任意のミニ細胞株が、tRNA分子をコードする遺伝子中の変異を収容し得る。
【0039】
(II.プラスミド構築)
一般に、使用されたプラスミドは、所望の宿主株における複製に適切なクローニングベクターとして作用し得る。複製配列および制御配列の起点は、ディスプレイのために使用される宿主ミニ細胞と適合性である。例えば、競合的プラスミドpUC19もしくはpBR322、またはその誘導体は、E.coliが、ミニ細胞が由来する株(親株)である場合、使用され得る。プラスミドは、好ましくは、親宿主で選択され得る1つまたは複数の選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子としては、選択的に増殖される親細胞に表現型を付与する任意の遺伝子が挙げられる。選択可能なマーカー遺伝子の例としては、テトラサイクリン遺伝子、カナマイシン遺伝子、アンピシリン遺伝子およびゲンタマイシン遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。プラスミドは、目的の配列の制御された発現のために誘導可能な調節エレメントを含むことが、好ましい。このプラスミドはまた、例えば、9塩基対〜3000塩基対の長さの範囲でDNAオリゴヌクレオチドをクローニングするのに適しており、そしてオリゴヌクレオチド融合タンパク質の発現のためのテンプレートとして作用し得るものである。プラスミドはまた、代表的に1細胞あたり2〜100コピーの範囲で宿主細胞内に複数のコピーが存在する。
【0040】
(III.ペプチド融合構築)
標的分子に結合し得るペプチドは、ランダムミニ細胞ライブラリーから得られ、ここで、ミニ細胞が、ミニ細胞の外側表面に暴露されたタンパク質に結合された少なくとも1つのランダムペプチド配列を含む融合タンパク質を発現する。この融合は、リンカー配列を介して直接か、または間接的にされ得る。間接的な連結は、外膜タンパク質と基質ペプチドとの間の直接的な化学カップリングによって表され得る。例えば、当業者は、市販、および代替的にデノボ構築によって利用可能な核酸リンカーが過度に存在することを認識する(このようなリンカーが、細胞の表面上に通常見出されるアミノ酸の配列を表す必要はない)。
【0041】
ミニ細胞の表面上にディスプレイされる融合(キメラ)タンパク質は、一般にプラスミド発現ベクター中にクローン化され、ここで、キメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子が、発現される。
【0042】
(A)第一遺伝子)
第二遺伝子産物をミニ細胞表面へと指向させるために用いられるべきペプチドが通常選択される。なぜなら、これは、ミニ細胞の外表面への融合タンパク質またはキメラタンパク質の正確な局在を媒介し得るシグナルアミノ酸配列をコードするからである。シグナル配列としては例えば、ompAシグナル配列、ompTシグナル配列、ompFシグナル配列、ompCシグナル配列、βラクタマーゼ、traAシグナル配列、phoAシグナル配列およびRickettsia rickettsiiの17K抗原シグナル配列が挙げられる。さらに、外膜に通常は会合しないシグナル配列を保有するペプチドは、脂質改変コンセンサス配列を用いて改変されて、外膜への結合が確実にされ得る。
【0043】
好ましいペプチドは、R.rickettsiiの17K抗原オープンリーディングフレーム(ORF)の最初の71アミノ酸(213ヌクレオチド)からなり、シグナル配列ならびに脂質改変部位を含む。この213塩基対のオリゴヌクレオチド(配列番号6)は、この最初の213ヌクレオチドの重複領域に対応する異なる領域のプライマーをアニーリングすることによってアセンブリされて、DNAのコンカテマーを形成し得る。続いて、このコンカテマーの一本鎖部分は、当該分野で公知の精製酵素によって二本鎖へと変換される。次いで、得られる二本鎖DNAは、適切なプラスミド発現ベクターへとクローニングされて、誘導性調節プロモーターエレメントに対する遺伝融合物を作製し得る。このようなプロセスを用いて、ミニ細胞の外膜に局在するペプチドをコードする任意の核酸配列をクローニングし得る。膜タンパク質コード配列(例えば、17K抗原ORFの最初の71アミノ酸をコードする213ヌクレオチドフラグメント)は好ましくは、プロモーターの下流で、かつ目的のペプチドをコードするオリゴヌクレオチド(第二遺伝子)の上流に配置される。ミニ細胞の発現機構によって認識される任意の終結配列を用いて、転写を終結させ得る。細菌DNA配列(およびプラスミドDNA配列)は、2つの基本的型の転写終結(因子独立性および因子依存性(RNAポリメラーゼが、終結するためにまさにその配列以外を必要とするか否かに基づく))のうちの一方に依存することが当該分野で周知である。このような終結部位は、開示される構築物に適用可能である。
【0044】
(B)標的化されるべきペプチド(第二遺伝子))
標的化されるべきランダム化ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドライブラリーは、PCRまたは当該分野で充分に確立された他の増幅方法を用いてインビトロで合成され得る。好ましい実施形態では、このライブラリーは、このペプチドをコードする少なくとも約1010個のオリゴヌクレオチドを含む。一般に、このオリゴヌクレオチドライブラリーは、このライブラリーに対して多様性を付与する、独特の配列領域または可変配列領域を含む。このライブラリーの多様化は代表的に、多数の可能なアミノ酸が特定の位置に取り込まれ得るように、このペプチドの配列を特定するコード配列を変更することによって達成される。このライブラリーの作製の中心には、縮重プライマーの構築がある。縮重プライマーは、入手可能な自動化ポリヌクレオチド合成機(例えば、Nucleic Acid Synthesis Instrument Systems(Applied
Biosystems)のうちの1つ)を用いて構築され得る。
【0045】
プライマー配列は、特定のシリーズのヌクレオチドまたはそれらの等価なIUBコードから作製され得る(例えば、R{A、G}、W{A、T}、K{G、T}、M{A、C}、S{G、C}、V{A、G、C}、D{A、G、T}、H{A、C、T}、B{G、C、T}およびN{A、G、C、T})。多くのシステムが、DDDDという入力配列が、各位置でA、GまたはTが取り込まれる可能性が等しい4塩基プライマー配列に対応するように、IUB曖昧コードを認識するようにプログラムされている。一端構築されたら、ランダム化プライマーは、それらの配列内に、他のプライマーに対する相補性領域を含む。相補性プライマーはアニーリングして、一本鎖ギャップがヌクレオチドおよびポリメラーゼを用いてフィルインされたヌクレオチド配列のコンカテマーを形成して、ランダム化二本鎖オリゴヌクレオチドを形成する。次いで、この二本鎖オリゴヌクレオチドは、発現プラスミド中に、誘導性プロモーターおよび好ましくは17K抗原の下流にクローニングされて、キメラ遺伝子融合物を形成し得る。
【0046】
あるいは、オリゴヌクレオチドは、当該分野で周知の方法を用いてインビトロで変異誘発され得る。オリゴヌクレオチド、プラスミド内にコードされるオリゴヌクレオチド、またはベクターもしくはプラスミド中にオリゴヌクレオチドを保有する遺伝子融合物のインビトロ変異誘発は、部位特異的またはランダムであり得る。次いで、変異誘発されたプラスミドを用いて、発現のその後の誘導およびコードされるペプチドの結合活性についてのスクリーニングのために、ミニ細胞またはミニ細胞株を形質転換し得る。
【0047】
別の好ましい実施形態では、細菌ミニ細胞株は、新たに構築されたプラスミドで形質転換される。形質転換方法としては、例えば、ファージトランスフェクション(例えば、P1、λまたはM13)、エレクトロポレーション、および形質転換が挙げられる。親ミニ細胞株が形質転換され、そのプラスミド上の選択マーカーによって選択され、そしてそのプラスミドを保有するミニ細胞が親株から単離されることが好ましい。あるいは、親株から単離されたミニ細胞は、直接的に形質転換され得る。
【0048】
(IV.ミニ細胞の単離およびディスプレイ誘導)
(A)ミニ細胞精製)
好ましい実施形態では、所望の非対称細胞分裂(極細胞分裂)を経た、1以上の小さな変異を保有する細胞は、非対称細胞分裂を経ていない細胞から分離される。ミニ細胞は、それらのサイズおよび密度の相違に基づいて、全体の細菌細胞から分離される。密度勾配遠心を用いて、ミニ細胞を、培養物中に存在する「全体」細胞の集団から分離して単離する。単離されたミニ細胞は、室温にて48時間また−70℃で6週間にわたって、安定なままであり、かつ活性なままである。室温安定性は、細胞全体およびファージを、当該分野で公知のディスプレイ方法を通して最適条件で増殖させ続けるために必要とされる時間のかかるプロトコルの必要性を除去する。ミニ細胞は、生理学的に、細胞分裂できない。
【0049】
(B)プラスミドDNAの複製)
好ましい実施形態では、形質転換されたミニ細胞を、成長中のDNA鎖中への取込みが必要とされるヌクレオチドを外因的に添加することによって誘導して、プラスミドDNAを複製させる。プラスミドDNAの複製は、細胞内のプラスミドコピー数を増大させる。形質転換細胞が、ミューテーター表現型を保有する場合、外表面にディスプレイされるべきペプチドの多様性は増大する。ミューテーター表現型は、別の多様化技術(ペプチド合成のレベルでのアミノ酸アナログの取込み)と比較して、DNA合成のヌクレオチドレベルでその効果を示す。
【0050】
(C)キメラタンパク質発現の誘導)
ディスプレイされるべきペプチドの発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。多くの誘導性プロモーターが、遺伝子発現を制御するために当該分野で入手可能であり、そして本明細書中で使用され得る。誘導性プロモーターは、他の場合には通常の分裂性細菌細胞に毒性であるペプチドの発現に理想的である。分裂細菌を通常殺傷する毒性ペプチドは、ミニ細胞内でそれらの致死効果を発揮できない。ミニ細胞は、増殖も分裂もせず、そして染色体DNAを欠く。ミニ細胞は、単離され、続いて、キメラペプチドの発現が誘導される。誘導は通常、アミノ酸およびタンパク質発現を活性化するインデューサーを外部からミニ細胞に供給することによって実施される。例えば、インデューサーであるイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)の添加は、lacプロモーター、tacプロモーターまたはlacUV5プロモーターの制御下にある遺伝子の抑制を解放する。IPTGの添加が省略された場合、これらのプロモーターは、lacIリプレッサータンパク質によって負に制御されている。外部から添加されたアミノ酸は、ペプチド鎖の成長に必要なサブユニットを提供する。必要に応じて、アミノ酸アナログが、L−アミノ酸と同時またはL−アミノ酸の代わりに添加されて、ディスプレイされるべきペプチドライブラリーをさらに多様化させ得る。
【0051】
(V.スクリーニングされるべきペプチドと、標的分子または結合分子(「結合パートナー」)との間の相互作用)
ディスプレイされたペプチドおよび相互作用する分子または標的は、相互作用についてスクリーニングされる。この相互作用は、第二遺伝子によってコードされるペプチドと標的分子との間での結合を必要とする。ペプチドは、基質、補因子、リガンドまたはエフェクターであり得る。標的分子は、ペプチドもしくはタンパク質、核酸分子、糖質もしくは糖、ビタミン補因子、金属または合成薬物であり得る。標的分子は、酵素についての基質、機能的複合体の一部を形成する補因子、第二遺伝子によってコードされるペプチド上で作用する酵素、または第二遺伝子によってコードされるペプチドと相互作用する、リガンドもしくはレセプターであり得る。このような標的分子の例としては、抗原−抗体、ビオチン−アビジン、ホルモン−ホルモンレセプター、レセプター−リガンド、酵素−基質、IgG−プロテインAが挙げられる、ペプチド相互作用対が挙げられる。ディスプレイされたペプチドと相互作用する標的分子はあるいは、ランダムペプチドライブラリーの一部であり得る。好ましくは、結合反応の強度は、相互作用対が、標的とランダムペプチドとの間での物理的反応に基づいて単離されるのを可能にするに十分である。予め選択された「標的」分子は、薬物、ビタミン神経メディエーター、細胞レセプターもしくは細胞レセプター複合体、ステロイドホルモン、金属、糖質、無機化合物もしくは有機化合物、予め選択した分子に対する天然のアクセプター結合部位を模倣するペプチドもしくはそのアナログ、またはレセプター複合体の個々のタンパク質であり得る。
【0052】
(VI.未結合のミニ細胞からの、結合したミニ細胞の分離)
アフィニティークロマトグラフィーに類似する方法において、予め選択した標的分子、またはランダムペプチドのライブラリー、(結合パートナー)を、適切な固相支持体マトリクス(例えば、アガロースビーズ、アクリルアミドビーズ、セルロース、中性またはイオン性のキャリア、または種々のアクリルポリマー)にそれらを付着させることによって固定化し得る。予め選択された分子またはライブラリーを、特定のマトリクスに付着するために使用される方法は、当該分野において十分に確立されており、そして、例えば、Methods in Enzymology、44(1976)に記載されている。分子またはペプチドをマトリクスに付着した後、単離されたディスプレイミニ細胞を、そのマトリクスとインキュベートして、そのミニ細胞と結合パートナーとの間に形成される接触を可能にする。未結合の細胞を、洗浄して取り除き、そして予め選択された標的に結合したミニ細胞を、種々の方法(pH条件、イオン条件の調整を含む)、または過剰の遊離の抗原との競合によって溶出し得る。そうでなければ細菌増殖および活力にとって有害であり得る溶出条件を、ディスプレイミニ細胞の溶出時に組み込み得る。増殖および活力は、ミニ細胞にとって問題ではない。比較的大きなサイズの細菌細胞はまた、この技術において使用されるカラムを詰まらせるため、アフィニティークロマトグラフィーにおいて使用されないかもしれない。より小さなサイズのミニ細胞は、アフィニティークロマトグラフィーを受け入れやすい。
【0053】
(VII.ペプチド分析)
ディスプレイされたペプチドライブラリーを分析して、組み込まれたアミノ酸の多様性および/または組成を決定し得る。ミニ細胞は、特定のペプチド残基の間を特異的に切断することが公知の酵素または酸に供されて、ディスプレイシャペロンタンパク質から目的のペプチドを放出し得る(例えば、ギ酸は、プロリン残基とグリシン残基との間のペプチド結合を切断する)。次に、ペプチドは、加水分解され、そして自動アミノ酸分析器を使用して、アミノ酸含量について分析される。
【0054】
ペプチドはまた、正確なアミノ酸配列について分析され得る。例えば、ペプチドのN末端が修飾され、切断され、そして分析され、そのためにペプチドを1アミノ酸短くする、古典的なエドマン分解方法は、アミノ酸レベルでの情報を抽出するための1つの方法である。質量分析法は、より洗練された技術であり、そしてアミノ酸アナログを組み込んだペプチドの分析を受け入れやすい。質量分析法は、ヘリウムガスを利用して、ペプチドをランダムに切断し、そして、生成されたフラグメントの質量についてのその後の分析を比較して、配列を明らかにする。次に、ペプチド配列を使用して、ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを決定および/または設計し得る。
【0055】
(VIII.オリゴヌクレオチド(第2の遺伝子)分析)
ミニ細胞は、細菌遺伝学の複雑でない性質を受け入れやすいので、当業者にとって公知の方法によって、ミニ細胞からプラスミド発現ベクターを単離し、もし所望であれば、さらにプラスミドを適切な宿主中で増殖させることは、比較的容易である。あるいは、単離された発現ベクター内に含まれる第2の遺伝子配列を、17K抗原(第1の遺伝子)および/または親発現ベクター内の公知の配列に対するプライマーを用いて、PCRによって直接増幅し、配列決定し得る。
【0056】
一旦単離されると、プラスミド発現ベクターは、目的のペプチドをコードする遺伝子内の特定の変異の効果を研究するために、インビトロで変異誘発され得る。そのような効果は、遺伝学的に、または生化学的に、以下に考察するようにアッセイされ得る。プラスミドおよびベクターの部位特異的変異誘発およびランダムな変異誘発は、当該分野において十分に確立されている。
【0057】
別の実施形態において、本発明の方法は、オリゴヌクレオチドライブラリーを、ディスプレイ「シャペロン」DNAと融合するために適切なベクターを使用する。好ましいシャペロンDNAは、Rickettsia rickettsiiの17K抗原をコードする。
【0058】
(IX.活性についてのペプチドのスクリーニング)
ペプチドは、好ましくは、結合に基づいて単離、または同定される。ペプチドはさらに(またはそのかわりに)、生物活性についてスクリーニングされ得る。生物活性は、ペプチドまたはタンパク質が有し得る任意の生物学的な効果または機能であり得る。例えば、生物活性としては、生物分子(例えば、レセプターのリガンド)に対する特異的結合、ホルモン活性、サイトカイン活性、および生物学的活性の阻害、または他の生物分子(例えば、レセプター結合のアゴニストおよびアンタゴニスト)の相互作用、酵素活性、抗癌活性(抗増殖、細胞傷害性、抗転移)、免疫調節(免疫抑制活性、免疫刺激活性)、抗感染活性、抗生物質活性、抗ウイルス活性、抗寄生生物活性、抗真菌活性、および栄養活性が挙げられる。生物活性は、当該分野において公知の適切な技術およびアッセイを使用して、測定および検出され得る。抗体反応性およびT細胞活性化は、生物活性であると考慮され得る。生物活性はまた、適切な場合、インビボにおいて評価され得る。このことは、目的の生物活性の有用なレベルの存在の最も正確な評価であり得る。酵素活性を、当該分野において公知の適切な技術およびアッセイを使用して、測定および検出し得る。
【0059】
実施例9において実証されるように、細胞表面において見出され、そして腫瘍転移に必要なレセプターに結合するいくつかの(第2の遺伝子)ペプチドが、このシステムを使用して同定された。これらの可能性のある転移ブロッキングペプチドを、生化学的にアッセイされ得る、レセプターに対する特定の応答を生じることについて、さらに評価した。ペプチドとの相互作用の前後において、レセプターによって保持される放射性同位元素標識したリン酸塩の量をアッセイすることによって、ペプチドが、インビトロにおいて、レセプターの自己リン酸化に対して影響することが、示された。このことは、分子生物学の分野の標準的な技術を用いることによって示され得る。細胞表面レセプターのリン酸化に影響することによって、単離されたペプチドは、これらレセプターが制御する細胞プロセスの活性に、直接的に影響し得る。インビトロにおいて単離されたペプチドの翻訳後修飾またはペプチド修飾を可能にする方法が、当該分野において十分に確立されている。そのような改変としては、アシル化、メチル化、リン酸化、硫酸化、プレニル化、グリコシル化、カルボキシル化、ユビキチン化、アミド化、酸化、ヒドロキシル化、アミノ酸側鎖へのセレノ基の付加(例えば、セレノシステイン)、および蛍光標識が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
さらに、インビトロでの分析を用いて、細胞の生存に対するペプチドの影響について研究し得る。生体の細胞プロセスを中断、刺激、または減少するいずれかのペプチドを使用して、培養中の細胞(例えば、腫瘍細胞)に影響を与え得る。一旦影響を与えて、細胞増殖および生存を、当該分野において公知の方法によって分析する。
【0061】
多くの細胞は、自己破壊の遺伝子によって媒介された形態であるプログラムされた細胞死を受け得る。この現象を、当該分野において一般にアポトーシスという。頻繁に、アポトーシス細胞は、その生化学的、形態学的、および分子的特徴における変化によって認識され得る。形態学的変化としては、細胞形状の変化、細胞の萎縮、細胞の剥離、アポトーシス体、核の断片化、核包膜変化および細胞表面構造の喪失が挙げられるが、これらに限定されない。生化学的変化としては、タンパク質分解、タンパク質の架橋、DNA変性、細胞の脱水、ヌクレオソーム内の切断、および遊離カルシウムイオンの上昇が挙げられ得る。そのような特徴は、当該分野において十分に確立された方法によって容易に同定され得る。開示されたミニ細胞ディスプレイ法によって単離されたペプチドを、そのような生理学的プロセスおよび生化学的プロセスに対するそれらの影響について、試験する。
【0062】
細胞がもはや生存しない場合(すなわち、細胞が死滅する場合)、その膜は透過性となり、そして膜が透過性となることは、光の散乱の変化としてそれ自体が明らかとなる。この光の散乱は、細胞の細胞質の屈折率の変化に起因し得る。透過性となった膜を通過し得るDNA染色色素の使用は、死滅細胞、生存細胞、およびアポトーシス細胞の同定を補助する。フローサイトメトリーおよび/または蛍光細胞分析分離装置(FACS分析)を、目的の細胞を分離するために蛍光色素を使用するプロトコルに組み込み得る。フローサイトメトリーは、サンプルから目的の粒子を、仕分けするか、または物理的に分離し得る。従って、FACS分析(フローサイトメトリーの1つのタイプ)は、目的の細胞または粒子の、不均一な集団からの物理的な分離として規定され得る。
【0063】
当業者は、死滅細胞、生存細胞、およびアポトーシス細胞を区別し得る。なぜなら、これら各々は、例えば、DNA色素に対するその透過性が異なるからである。2つの広範に使用されるDNA色素(Hoechst33342およびヨウ化プロピジウム(propidium)(PI))は、死滅した細胞に浸透し得る。生存細胞は、いずれの色素も保持しないが、アポトーシス細胞は、Hoechstを保持するが、PIを保持しない。蛍光顕微鏡観察によって、視覚的に生存細胞およびアポトーシスを受ける細胞から死滅細胞を視覚的に分離し得る。これら異なる細胞からの蛍光発光はまた、フローサイトメトリーおよび/またはFACS分析を介して、その分離を可能にする。これらのアッセイにおいて使用される代表的な着色剤としては、ヨウ化プロピジウム、Hoechst33342、7AADおよびTO−PRO−3が挙げられる。
【0064】
アポトーシスの間の膜変化の段階も、同様に分析し得る。これらの変化は、アポトーシスの初期段階から中間段階の間の、ホスファチジルセリン(PS)の細胞膜内側部分から外側への転位を含む。FITCを用いて、標識したアネキシンVを使用して、PSを検出し得る。アネキシンVは、Ca++依存性リン脂質結合タンパク質である。また、死滅細胞は、アネキシンVに結合しない。生存細胞はまた、アネキシンに結合しない。アポトーシス細胞は、アネキシンに結合する。PSを分析するこの方法を、PIを用いてDNAを染色する上記方法と組み合わせて、それによって生存細胞、死滅細胞、および/またはアポトーシス細胞の異なるプロファイルを得ることができる。
【0065】
上で言及したように、アポトーシスの特徴は、DNAの分解である。この分解は、通常、エンドヌクレアーゼに依存性の活性化Ca/Mgによって行われる。末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)は、ビオチン化した、BrdUまたはジゴキシゲニン標識化ヌクレオチドの、DNA鎖切断に付加する。続いて、ビオチンによって外因的に添加されたストレプトアジピン、または蛍光色素標識化抗ジゴキシゲニン抗体の結合を使用して、DNA分解を検出し得る。この方法により、アポトーシスを細胞周期状態と相関することができる。
【0066】
取り込まれ得る別のDNA結合色素は、レーザ色素スチリル−751(LDS−751)である。さらに、生存細胞または死細胞の染色パターンとは異なる染色パターンを提示する、アポトーシス細胞の能力を利用し得る。
【0067】
レーザ捕捉顕微解剖(LCM)は、種々の組織由来の純粋な細胞を獲得するために使用される、比較的新しい技術である。単離された組織を使用して、ペプチドを内在化させたかまたはペプチドを外面レセプターに結合した細胞に対して、そのペプチドが有し得る効果を同定し得る。移動フィルムを特定の組織切片の表面に塗布した後、続いて、パルス化したレーザビームを作動させ得る。このレーザビームは、目的の細胞のすぐ周辺のフィルムを活性化させる(形態学的変化は、容易に同定され、細胞は、これに基づいて選択され得る)。このフィルムは、内在する細胞を、融解して融合する。次いで、このフィルムは取り除かれ得、そしてフィルム内に含まれない残存する細胞が後に残る。一旦、細胞が単離されると、次いで、この細胞由来のDNA、RNAまたはタンパク質が精製され得る。LCMを介する細胞の単離は、その細胞に損傷を与えない。なぜなら、レーザエネルギーが、フィルムによって吸収されるからである。この特定の技術は、前で言及した、蛍光分子を使用する、タンパク質の任意の検出方法と組み合わせて、有用であり得る。
【0068】
動物モデルを使用するインビボ分析を使用して、インタクトな系内でのペプチドの効果を決定する。例えば、免疫学の分野において、ペプチドは、動物に投与され得、その末梢血単球は、そのペプチドに対する抗体の産生において使用される。
【0069】
ウイルスタンパク質の場合において(例えば、ウイルスベクター、治療ウイルス、およびウイルスカプシド送達組成物とともに使用するために)、保持されるべき所望の特徴としては、ウイルス粒子またはカプシド内で構築する能力、および細胞を感染させるかまたは細胞に侵入する能力が挙げられ得る。このような特徴は、ウイルスタンパク質の送達特性が目的である場合に有用である。
【0070】
開示される方法の1つの適用は、ペプチドの同定および開発、ならびにその後の遺伝子置換療法および/または遺伝子増強療法における使用のための、これらのペプチドをコードするオリゴヌクレオチドの同定および開発である。例えば、腫瘍の転移性伝播に関与するレセプターを特異的に標識する抗腫瘍ペプチドを同定する。標的と相互作用するペプチドは、ミニ細胞技術を使用して、首尾良く単離および同定されている。
【0071】
浸潤複合体は、細胞活性において顕著な役割(例えば、アクチンの調節、および標的細胞内でのマイクロフィラメントの再配置、従って、偽足形成において重要な役割を果たすこと、ならびにDNA合成およびDNA複製を停止すること)を果たすことが示されている。次いで、DNA複製の阻害は、アポトーシスに対して直接影響する。
【0072】
浸潤複合体はまた、正常細胞増殖および異常細胞増殖(例えば、癌細胞転移および癌細胞複製)も調節する。細胞漸増および細胞運動の、走化性、移動および他の様式もまた、浸潤複合体との細胞性相互作用によって調節される。例えば、卵の受精は、このような相互作用によって阻害または増強され得る。
【0073】
本明細書中に記載される方法および材料を使用して、当業者は、浸潤複合体が標的として、正常にかまたは異常に結合するタンパク質を使用して、この複合体を単離し得る。例えば、MCP−1、RAMF(ヒアルロン酸に対するレセプター)、グリコサミノグリカン(GAG)、およびオステオポンチン(CD44スプライス改変体を単離するため)を使用して、複合体全部または複合体の一部を単離し得る。この単離された複合体を使用して、本明細書中に記載されるミニ細胞ライブラリー技術を用いて、活性化のインヒビターについてスクリーニングし得る。あるいは、浸潤複合体活性に結合し、かつこの複合体活性を阻害するかまたは増強するペプチドが、開示のミニ細胞ディスプレイ技術を使用して、同定され得る。
【0074】
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例および添付の図面によって、以下に記載される。
【0075】
(実施例1:ミニ細胞ディスプレイのための、17K抗原融合プラスミドの構築)
1つの系を構築して、一般に、Rickettsia rickettsiiの17K抗原に融合されるオリゴヌクレオチドライブラリーの制御された発現を可能にする。R.rickettsiiの17K抗原は、E.coli内にクローニングする場合、外膜に提示される。脂質改変部位を含むN末端フラグメントを、唯一のHindIII部位の上流にtacプロモーターを挿入することによって、以下のプライマーから構築し、pZHA1.3(pUC19から誘導されたプラスミド)内にクローニングした。
【0076】
プライマーを、10mM Tris(pH8.5)中に、100nmol/μlの濃度まで溶解し、次いで、各10μlを混合し、80℃まで5分間加熱し、25℃まで冷却し(下降時間;1時間)、そして25℃にて1時間インキュベートした。アニールしたオリゴヌクレオチドを、クレノウで満たし、そして制限消化の前に、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)を使用して精製した。得られた2本鎖DNAを、XbaI/BamHIで切断し、pZHA1.3のXbaI/BamHI内で、14℃にて一晩ライゲーションして、pZHA2.0を形成した。
【0077】
プライマー1の太字の小文字は、Xba1の認識部位を表わす。プライマー4の太字の小文字の塩基は、BamHI認識部位を表わす。太字の大文字の塩基は、アニーリングの際に二本鎖配列を生成するのに使用される相補的な塩基を表わす。プライマー1は、プライマー2のみに相補的な塩基を含む。プライマー2は、プライマー1およびプライマー3に相補的な塩基を含む。プライマー3は、プライマー2およびプライマー4に相補的な塩基を含む。プライマー4は、プライマー3のみに相補的な塩基を含む。
【0078】
【化1】


得られたプラスミド(PZHA2.0)は、IPTG誘導性プロモーター(tacプロモーター)の制御下で、R.Rickettsii(最初の71アミノ酸をコードするDNAは、配列番号6に示される)の17K抗原の最初の71アミノ酸(配列番号5)を発現する。このベクターを、ディスプレイライブラリーの構築のために使用した。
【0079】
(実施例2:ライブラリーの構築)
プライマーを、Applied Biosystemsシンセサイザー(Forest
City,CA)によって合成した。
【0080】
1mMの各プライマーを、5mM MgCl、0.5mM dNTPおよび5UのTacポリメラーゼを含有する、100μlの10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)において、個別にインキュベートした。反応物を、80℃まで5分間加熱し、25℃まで冷却し(下降時間;1時間)、そして40℃にて15分間インキュベートした。この手順を、5サイクル行った。5日目のサイクルの後、10μlの各反応ミックスを、以下のように、他の反応からの10μlのサンプルと2つ1組にして混合した。各反応物の全容量を、5mM MgCl、0.5mM dNTPおよび5Uのtacポリメラーゼを含有する、Tris緩衝液(pH8.0)を用いて100μlに調節し、上記のようにサイクルした。5日目のサイクルの後、新たな5μlの100mM dNTPミックスを、各チューブに加え、連鎖反応を、さらに10サイクル続けた。
【0081】
42本全てのチューブ(最初の6つのプライマーおよび36の対ごとのチューブ)からの反応混合物を混合し(以下の表を参照のこと)、そして相補性領域のアニーリングから生成した二本鎖オリゴヌクレオチドを、上記のように精製した。次いで、この精製した二本鎖オリゴヌクレオチドを、10μgのpZHA2.0(予めSmaIで消化し、そしてdTTPおよびターミナルトランスフェラーゼで末端を付着され(5’T突出部を作製され)ている)と共に、13℃で一晩インキュベートし、そして連結した。
【0082】
ミニ細胞E.coli株DS410を、得られたプラスミドpDIP1.0の5μgで形質転換した。この形質転換した細菌を、200μg/mlのアンピシリンを含む10mlのLBブロス中で一晩インキュベートした。この培養物は、ディスプレイライブラリーを提示した。
【0083】
(実施例3:ミニ細胞の精製および標識)
プラスミドpDIP1.0を、E.coli DS410に形質転換した。形質転換した細胞を、250mlの培養において、定常期まで増殖させた(この培養を一晩増殖させ得るが、良好な通気がなければならない)。濃厚な培地中で細胞を増殖させることにより、全細胞によるミニ細胞の汚染が最小になる。この培養物を8200×g(Sorvall GSAローターで7500rpm)で20分間、4℃でスピンダウンした。細胞ペレットを、5mlの上清中に再懸濁させた。再懸濁を極めて徹底的に行い、スクロース勾配工程の間の、細胞ペレット中のミニ細胞の損失を防止した。磁気撹拌子を遠心チューブの底部に配置し、そして10分間4℃で強く攪拌することによって、ペレットを完全に再懸濁させた。この懸濁物を、30mlのスクロース勾配(10〜30%)上に注意深く層にした。この勾配を硝酸セルロース超遠心分離機で、4000×g(例えば、SW27ローターで5500rpm)で20分間、4℃で遠心分離した。遠心分離後、厚い、いくらか拡散した、ミニ細胞の白色のバンドを、チューブの中央付近で可視化した。ミニ細胞(バンド)を、側面から20ccのシリンジで収集した。ミニ細胞を、20,000×g(Sorvall SS−34で13,000rpm)での、10分間、4℃での遠心分離によって、スクロール溶液から取り出した。ミニ細胞のペレットを、1mlのメチオニンアッセイ培地(Difco)中に再懸濁させた。この懸濁物を、10mlまたは30mlのスクロール勾配(10〜30%勾配)の上に、層にした。このスクロース勾配を、4000×g(例えば、10ml勾配に対しては、SW40ローターにおいて5700rpmで)で20分間、4℃で遠心分離した。ミニ細胞のバンドを、上記のように取り出した。ミニ細胞を、汚染について顕微鏡で検査した。いくらかの全細胞が顕微鏡の視野において観察される場合、ミニ細胞は、さらなるスクロース勾配によって精製されなければならない。汚染が観察されず、そしてミニ細胞が、上記のようにスピンダウンされた。ペレットを、1mlのメチオニンアッセイ培地中に再懸濁させた。光学密度を、600nmにおいて読み取った。ミニ細胞をすぐに使用する場合、アッセイ培地を添加して、A600 2.0/mlの濃度を与える。そうでない場合、ミニ細胞をマイクロ遠心において1〜2分スピンさせ、そしてペレットを、30%のグリセロールを含む十分なアッセイ培地に再懸濁させ、O.D.600=2を与える。−70℃で保存する。ミニ細胞は、一般に、少なくとも6週間活性である。
【0084】
(実施例4:ミニ細胞の標識および発現の誘導)
標識されるべきミニ細胞が新たに調製された場合、これらのミニ細胞を直接使用し得る(O.D.600=2の濃度で)。予め凍結させたミニ細胞は、最初にグリセロールを除去される必要がある。この場合には、ミニ細胞を、マイクロ遠心分離機での遠心分離によって、1〜2分間ペレット化する。ミニ細胞ペレットを、十分なメチオニンアッセイ培地に溶解させて、O.D.600=2を与える。標識されるべき各サンプルに対して、250μlをマイクロ遠心チューブに入れた。5〜10μCiの35S−メチオニン(あるいは、非放射性メチオニンが使用され得る)を、1〜2μlの容量まで添加し、次いで0.1mM IPTGを添加して、ライブラリーを誘導した。細胞を、37℃で90分間インキュベートした。細胞を氷上で冷却し、そして1〜1.5分間、マイクロ遠心機においてスピンさせた。上清を除去し、そして放射能廃棄物中に処分した。ペレットを、50〜100μlの0.12M Tris(pH7.1)中に再懸濁させた。工程5および6をさらに2回繰り返して、合計で3回の洗浄を行った。最後の洗浄の後に、ペレットを、20μlの0.12M Tris(pH7.1)中に再懸濁させた。
【0085】
(実施例5:生物活性ペプチドについてのライブラリーのスクリーニング)
いくつかのスクリーニング方法を利用した。これらの方法の大部分は、以下に概説する類似のプロトコルに従う。
【0086】
a.標的レセプターを免疫沈降させる
b.このレセプターを免疫プレートに固定する
c.このプレートを、新たに単離したミニ細胞と共にインキュベートする
d.結合していないミニ細胞を洗浄除去する
e.ミニ細胞をこのプレートから溶出し、そして2回目のスクリーニングのために、単離したプラスミドを、新たなミニ細胞株DS410に形質転換する。次いで、選択された「陽性」クローンを、二次ライブラリーに構築する。
【0087】
三次ライブラリーを、3回目のスクリーニングから構築し得、そして選択されるペプチドを、機能的スクリーニングアッセイにおいて使用して、特定の活性のペプチドをさらに単離し得る。
【0088】
(実施例6:単離されたディスプレイペプチドのアミノ酸分析)
ミニ細胞(2A600/ml)を1mlの0.5Mギ酸(これは、プロリンとグリシンとの間を切断し、そしてディスプレイタンパク質からライブラリーを放出する)中に再懸濁させ、次いで1KDカットオフのフィルトロン(filtron)NANOSEPTMフィルタを通して濾過して、1000ダルトンのMWより大きいペプチドを単離した。サンプルを、減圧下6N HCl中で、104℃で18時間加水分解した。この加水分解したサンプルを減圧下で乾燥させ、次いでアミノ酸分析緩衝剤中に0.5mlに再懸濁させた。これらのサンプルを、Beckman自動アミノ酸分析器で、0.2Mクエン酸ナトリウム(pH1.5)を溶出緩衝液として使用して、アミノ酸含有量について分析した。その結果(表1、以下に示される)は、予測どおりに、アミノ酸がこのサンプル全体に均一に分布していたことを示す(ser、thr、trpおよびmetは、これらの条件下では不安定であり、そして過度の分解を受ける)。
【0089】
(表1 ディスプレイライブラリーのアミノ酸分析)
【0090】
【表1】


Hyp=ヒドロキシ−プロリン;HyLys=ヒドロキシ−リジン;Cys1/2=シスチン
FACS緩衝液(1% BSAまたは5% FBSのいずれかで補充され、そして0.05%のNaNを含むPBS)を用いる回数。ペレットを、約50μl(または1回より多い分析が、単一のサンプルについて行われる場合、それ以上)のFACS緩衝液での最終洗浄から懸濁する。約50μlの細胞懸濁物を、10μlの抗体溶液に添加し、そして穏やかに懸濁する。使用に適切な抗体濃度を、この工程の前に決定する。この懸濁物を約30分間にわたって氷上に置く。次いで、細胞をFACS緩衝液で2〜3回洗浄し、そして200〜300μlのFACS緩衝液中に懸濁する。細胞を、(約1:100の細胞:ミニ細胞(minicell)の比で)FITC標識ミニ細胞(PBS中、2O.D./mlで)と共に、室温で15分間インキュベートする(生/死の識別のために、約10μlのヨウ化プロピジウム(PI)溶液(ストック溶液、10μg/ml)を添加する)。細胞が固定されている場合、PIは添加しなかった。
【0091】
これらの細胞は、FACS緩衝液で2〜3回洗浄し、そして200〜300μlのFACS緩衝液中に懸濁されると、分析の用意ができる。
【0092】
これらの細胞は、測定の時点で生きていても固定されていてもよいが、単分散(単一細胞)懸濁物中にある。これらの細胞は、懸濁物の微細な流れを連続的に流すことによって、レーザビームを介して一列縦隊で通過する。各細胞は、いくらかのレーザ光を散乱し、そしてまた、レーザによって励起された蛍光を放射する。サイトメーターは、代表的に、各細胞について、いくつかのパラメータ(細胞の直径にほぼ比例する散乱強度についての低い角度、細胞内の顆粒構造の量にほぼ比例する直角(90度)の散乱強度、およびいくつかの波長での蛍光強度)を同時に測定する。
【0093】
光の散乱自体は、非常に有用である。これは、蛍光データから、死細胞、細胞凝集および細胞細片を除外するために一般に使用される。これは、血液白血球サンプル中の顆粒球由来の単球から、リンパ球を識別するのに十分である。
【0094】
蛍光強度は、代表的に、各細胞について、いくつかの異なる波長で同時に測定される。蛍光プローブは、細胞の特定の成分の量を報告するために使用される。蛍光抗体は、しばしば、特定の表面レセプターの密度を報告するために使用され、従って、導入遺伝子を発現する細胞を含む分化した細胞型の亜集団を識別するために使用される。これらを蛍光にすることによって、表面レセプターに対するディスプレイライブラリーの結合が、測定され得る。細胞内成分(総DNA/細胞(細胞周期の分析を可能にする)、分析、新たに合成されたDNA、DNAまたはmRNA中の特定のヌクレオチド配列、線維状アクチンおよびそれに対する抗体が入手可能である任意の構造を含む)がまた、蛍光プローブによって報告され得る。フローサイトメトリーがまた、細胞内遊離カルシウム、膜電位、pHまたは遊離脂肪酸における迅速な変化をモニタリングし得る。
【0095】
フローサイトメーターは、フルイディクス、レーザオプティックス、電子検出器、アナログ/デジタル変換器およびコンピューターを含む。このオプティックスは、ビームに集束されたレーザ光を、数細胞直径だけ送達する。このフルイディクスは、細胞ストリームを水力学的に、ある不確実性の細胞直径の小さな画分に、そしてこの中に集束し、そして選別器中で、トラムを破壊して、均一なサイズの液滴にして、個々の細胞を分離する。このエレクトロニクスは、散乱した蛍光のかすかな閃光を定量し、そしてコンピューター制御下で、目的の細胞を含む液滴を電気的に荷電し、その結果、この細胞は、分離試験管または培養ウェルの方に歪められ得る。このコンピューターは、1サンプルあたりの細胞数(千)のデータを記録し、そしてこのデータを図解的に表示する。
【0096】
(実施例8:幹細胞に結合するペプチドについてのスクリーンディスプレイライブラリー)
マウスの大腿および脛骨由来の骨髄を、当業者に公知の方法によって調製する。この骨髄を、フラッシュし、そして23ゲージ針を使用して、5mlの染色培地に懸濁し、そしてナイロンメッシュを通して、5mlのチューブに濾過する。この細胞を、遠心分離(300×g)によりペレット化し、そしてACK低浸透圧性溶解溶液(赤血球溶解緩衝液−0.15M NH4Cl、1mM KHCO3、0.1mM Na2EDTA、pH7.3−100μl/マウス)に再懸濁し、約5分間氷上に置き、そして5mlのHBSS(またはPBS+2%FCS)で洗浄し、そしてスピンする。次いで、この溶液を、滴定により決定される適切な抗体希釈物および緩衝液の「系統カクテル」に再懸濁する。次いで、この混合物を、4℃で、回転プラットホームで、30分間インキュベートする。系統抗体の非特異的結合を最小にするために、この混合物を、最初に血清クッション(FCS)を通して、2回洗浄およびスピンする。得られたペレットを、約3mlのHBSSに再懸濁する。DYNABEADSTMを、1:1のビーズ/細胞比に添加し(1ml)、そして回転プラットホームで、30分間4℃でインキュベートする。
【0097】
この時点で、細胞の大きなロゼットは、DYNABEADTMインキュベーションの後に、目で見えるはずである。この混合物を、HBSSで5mlにし、そして製造者の仕様書に従って、マグネット上に配置する。結合したビーズを洗浄し、スピンし、そして上清を新しいチューブに移し、そして再びスピンする。抗ラットIgG PEを添加し、氷上で20〜30分間インキュベートし、そして2回洗浄する。ラットIgGのブロック溶液(約50μl)を添加し、そして氷上で、約15分間インキュベートする。Thy1.1、c−KitおよびSca−1の染色カクテルを使用して、混合物を再懸濁し(マウス1
匹あたり約100μlを使用し、滴定により決定される抗体希釈物を使用する)、そして4℃で30分間インキュベートする。死んだ細胞および死にかけの細胞を、染色培地中のヨウ化プロピジウム(1μg/mlのPI)で標識する。
【0098】
この手順は、一般に、2〜5×10の結合ペプチドを生じる(平均5000幹細胞/マウス)。
【0099】
(実施例9:生体活性ペプチドおよびミニ細胞ディスプレイおよび活性アッセイから誘導される機能)
以下は、上記のように単離および特徴付けされた生体活性ペプチドの表(表2)である。
【0100】
【表2】







開示される本発明は、記載される特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されないことが理解される。なぜなら、これらは変化し得るからである。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためのみであり、添付の特許請求の範囲のみにより限定される本発明の範囲を限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。
【0101】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」および「the」は、その文脈が明らかにそうでないことを明記しない限り、複数の言及を含むことに注意すべきである。従って、例えば、「宿主細胞(a host cell)」との言及は、複数のこのような宿主細胞を含み、「抗体(the antibody)」との言及は、1つ以上の抗体および当業者に公知のこれらの等価物を含み、以下同様である。
【0102】
他に規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、開示される本発明が属する当業者により一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書中で記載される材料および方法と類似または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、デバイスおよび材料は、記載される通りである。本明細書中のいずれの記載も、本発明が従来の発明によるこのような開示に先行する権利を与えられていないという承認として解釈されるべきではない。
【0103】
当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書中に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認し得る。このような等価物は、上記の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、ミニ細胞の表面上のランダムライブラリーペプチドをディスプレイするためのストラテジーのフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2009−17887(P2009−17887A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243424(P2008−243424)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【分割の表示】特願2002−571815(P2002−571815)の分割
【原出願日】平成14年3月6日(2002.3.6)
【出願人】(500092480)チルドレンズ メディカル センター コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】