説明

ミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置

【課題】ミネラルウォーターを温水又は冷水状態で飲用に供するディスペンサにおいて、加熱殺菌のための専用のヒーターを設けることなく貯溜タンクや配管系統を加熱殺菌する。そして、加熱殺菌中であることをランプの点灯で表示する。
【解決手段】配管系統2中に冷却装置6を有する冷水タンク4と加熱装置5を有する温水タンク3とを有するミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置である。加熱殺菌装置は、冷水タンク4と温水タンク3とを接続する連通配管11と、該連通配管11中に設けられる循環ポンプ9及び電磁弁10と、配管系統の加熱殺菌をするときに点灯するサニテーションランプ85と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ミネラルウォーターを供給するディスペンサの加熱殺菌装置に関するものであり、ディスペンサ中の貯留タンク及び配管系統内の加熱殺菌を可能とするとともに、ディスペンサ内への雑菌の侵入を抑制する構成とすることにより、更に衛生管理上の安全性を高め、またディスペンサから供給されるミネラルウォーターの本来の官能性を維持させ、更に飲料水容器の装着等の操作性向上、ディスペンサのコンパクト化を図ったものである。
【背景技術】
【0002】
ミネラルウォーターを供給するディスペンサ、すなわちウォーターサーバーは、さまざまなタイプが市販されているが、ミネラルウォーターに対する使用者の関心が高くなるにつれ、ミネラルウォーターの安全性の確保と、ミネラルウォーターの官能面での品質追求が高く要求されるようになってきた。ミネラルウォーターの安全性の確保は、水道水を供給するディスペンサの場合、水道水に殺菌のために添加されている塩素により水道水自身がある程度の殺菌性を有するため、水道水中での微生物の増殖は抑制され、さほど問題とならない。しかし、ミネラルウォーターの場合は、殺菌のための塩素等は添加されておらず、ミネラルウォーター中での微生物の増殖が重要な問題である。
【0003】
ミネラルウォーター中での微生物の増殖は、微生物が病原性を有するものであれば人体に有害であるし、病原性がなくとも、ミネラルウォーターに異味異臭を付加したり、或はミネラルウォーターが混濁したりする場合がある。ディスペンサは常にミネラルウォーターを連続的に供給していれば、ディスペンサ内での微生物の増殖は起こりにくいが、例えばオフィス等での使用の場合は夜間又は週末等は使用されないように、長時間にわたってディスペンサ中でミネラルウォーターが停滞するような状態があれば、微生物が増殖する可能性がある。また、長時間にわたって使用されているディスペンサ内で、微生物の菌叢を徐々に生成してしまう場合もある。
【0004】
従来は、ディスペンサ内での微生物の増殖を抑制するために、ディスペンサ内の配管系統にディスペンサの外部から殺菌剤や高温の熱水を注入し循環させて殺菌したり、ディスペンサ内に除菌ろ過装置を設けたりするものが多かった。しかしながら、ディスペンサ内の配管系統に殺菌剤や熱水を注入するのは、殺菌剤等をディスペンサ内に流入し、循環後に排水する器具や装置を要し、また殺菌剤等の注入及び排出のためにスペースを要し、作業も複雑で、手間を要するという問題点があった。さらに殺菌剤等を使用する場合は、殺菌剤使用後の洗浄が必要であった。殺菌ろ過装置の場合は、ろ過装置のフィルター等のメンテナンスが繁雑であり、更にろ過装置内で捕捉された微生物が増殖し、菌叢を生成する可能性があるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明者らは先に飲料水が詰められた容器から飲料水を提供するディスペンサで、飲料水が詰められた容器を冷却する装置と配管系統中に飲料水を貯溜するタンクとを有し、上記配管系統、貯溜タンクを、ヒーターによる加熱装置又は熱水を通入させる装置により加熱殺菌する装置を備え、又、これらの加熱殺菌する装置が、自動的に行われる装置を介してコントロールでき、このような内部を殺菌する装置を備えたことにより、ディスペンサ中で増殖する雑菌を殺菌し、また簡便で効率的な殺菌方法を提供、かつ衛生的な飲料水を常時冷水又は温水の状態で供給できるようにした飲料水のディスペンサを提供した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−48488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の飲料水のディスペンサでは、加熱殺菌する装置を配管系統の一部、及び、冷水タンクと温水タンクにそれぞれヒーターを付設して構成したので、ヒーターの取り付け箇所が多くて使用する電力量も大きく、したがって、機器製造コスト及びランニングコストの上昇を招来する。
【0007】
また、上記公開公報記載の発明で開示されたディスペンサ中の加熱殺菌方法は雑菌の殺菌方法としては十分に効果があるが、ディスペンサの細部の構造により加熱が及ばない部位があり、その部位の殺菌が不十分となる場合があった。例えば、上記公開公報記載の発明では、I型ジョイントを用いて、飲料水容器との接続部位から配管系統までが接続されている。これはホースの取り回しを簡単にし、ディスペンサ内の構造をシンプルにするために通常用いられる構造であるが、このI型ジョイントの部分には、熱水が通水しないため、殺菌を行うことができなかった。
【0008】
また一般には微生物の微量の侵入或は非病原性の微生物の侵入の場合は、ディスペンサ内に侵入した微生物を加熱殺菌することで、飲料水の安全性を確保できる場合もあるが、多量の微生物の侵入或は病原性の微生物の侵入の場合はディスペンサ内への侵入が飲料水の安全性を損なったり、飲料水の官能面での品質を低下させる場合がある。飲料水の安全性や官能面での品質の保持のためには、殺菌手段を完備すると共に、元々のディスペンサ内への微生物の侵入を出来るだけ阻止し、また頻繁な加熱殺菌を避けることがディスペンサのメンテナンスを省略する、或はディスペンサの各部位の劣化を防ぐために必要である。
【0009】
更に、ミネラルウォーターをディスペンサで供給する場合に、ミネラルウォーターは非常に微妙な風味を有し、また官能的に影響を受け易いので、ディスペンサ内での、特にミネラルウォーターが接する部分からのミネラルウォーターへの異味異臭の僅かな付着でも問題となる。
【0010】
更にディスペンサは操作性が良く、取り扱いが簡便であることが肝要であり、また、あまり設置場所を要しないコンパクトな機器としての体裁が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、飲料水容器からミネラルウォーターを配管系統を介して飲用に供するディスペンサであって、配管系統中に冷却装置を有する冷水タンクと加熱装置を有する温水タンクとを有するミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、前記加熱殺菌装置は、前記冷水タンクと前記温水タンクとを接続する連通配管と、該連通配管中に設けられる循環ポンプ及び電磁弁と、配管系統の加熱殺菌をするときに点灯するサニテーションランプと、を有していることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、循環用電磁弁を開き循環ポンプを作動させると、温水タンクに貯溜された温水が配管系統を循環し、貯溜タンク及び配管系統内が加熱殺菌される。そして、殺菌中はサニテーションランプが点灯して、殺菌中であることを表示して飲用しようとする者に対して注意を促す。
【0013】
請求項2の発明は、飲料水容器からミネラルウォーターを配管系統を介して飲用に供するディスペンサであって、配管系統中に冷却装置を有する冷水タンクと加熱装置を有する温水タンクとを有するミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、前記加熱殺菌装置は、前記冷水タンクと前記温水タンクとを接続する連通配管と、該連通配管中に設けられる循環ポンプ及び電磁弁と、該電磁弁と循環ポンプを定期的に作動させるタイマーと、配管系統の加熱殺菌をするときに点灯するサニテーションランプと、を有していることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、タイマーの設定時刻になると電磁弁が開かれると共に循環ポンプが作動し、温水タンクに貯溜された温水が配管系統を循環するので、貯溜タンク及び配管系統内が自動的に加熱殺菌される。そして、殺菌中はサニテーションランプが点灯して、殺菌中であることを表示して飲用しようとする者に対して注意を促す。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、温水タンクの温水を配管系統内で循環させることにより、貯溜タンク及び配管系統内を加熱殺菌するように構成されているので、ヒーターを配管系統の一部や冷水タンクに付設する必要性を無くしたので、ヒーターの取り付け箇所が少なくでき使用する電力量も小さく、したがって、機器製造コスト及びランニングコストの低下を図ることができる。ミネラルウォーターの温度は必ずしも飲用に適する温度ではない虞があるが、本発明においては、サニテーションランプが点灯して、ディスペンサ内を加熱殺菌中であることを表示して飲用しようとする者の注意を喚起する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態につき図を参照して説明する。図1に構成概要を示すように、冷蔵庫25に収納したバッグインボックス型容器等の飲料水容器1から供給配管2を介して2種類の貯溜タンクである温水タンク3と冷水タンク4に、それぞれミネラルウォーターをその自重にて導き、温水タンク3に付設したヒーター5でミネラルウォーターを加熱し、冷水タンク4に付設した冷却機6でミネラルウォーターを冷却する。そして、温水は温水タンク3に接続された温水注出バルブ7から注出でき、また、冷水は冷水タンク4に接続された冷水注出バルブ8から注出できる。さらに、温水タンク3と冷水タンク4とは、循環用ポンプ9と循環用電磁弁10を介在させた連通配管11で接続されている。したがって加熱殺菌時は、温水注出バルブ7と冷水注出バルブ8を閉じて循環用電磁弁10を開き、循環用ポンプ9を駆動すると、冷水タンク4、供給配管2及び連通配管11内を温水タンク3からの温水が循環し、更に配管等を循環してきた温水は温水タンク3中で付設されたヒーター5により温度が70℃以上に維持するように加熱されることにより、加熱殺菌に必要な温度を維持した温水により配管等の内部の殺菌を行うことができる。
【0017】
なお、図1において12は温水タンク3の蒸気抜きパイプ、13は温水ドレンバルブ、14は冷水ドレンバルブ、15は冷媒供給配管、16は切替電磁弁、17は凝縮器、18は凝縮器ファンモータ、19は電動圧縮機、20,21は冷媒戻り配管、22は冷媒供給配管、23は冷蔵庫内の蒸発機(冷却機)、24は冷蔵庫内ファンモータ、25は冷蔵庫、26は冷蔵庫25の扉、27は冷蔵庫25内の隔壁、28は飲料水容器1を載置する棚板を、それぞれ示す。切替電磁弁16は冷蔵庫内の室温又は冷水タンク4の温度が設定値以上になるのを防止して調節するために、冷媒を供給する装置である。
【0018】
この装置において、飲料水容器1はバッグインボックス型容器(以下、BIB容器と言う)の密封容器であり、BIB容器の内袋に連結されて成形されている注出口を、ディスペンサ側の供給配管と接続する。注出口は首部を有し、首部天面は剥離可能なシールが貼付されており、首部内部の奥部には封緘膜が設けられており、無菌状態で充填されているミネラルウォーターの無菌化を保全している。ディスペンサ側の供給配管との接続時には、飲料水容器1は注出口の首部天面のシールを剥して取り付ける。ディスペンサ中のBIB容器が取り付けられる冷蔵庫25は冷却装置を装備しており、BIB容器のまま容器中のミネラルウォーターを約4〜10℃に冷却することができる。これは、ミネラルウォーターを飲用に好ましい低温にするためと、BIB容器中のミネラルウォーターの汚染の可能性を低減させるために雑菌の繁殖しにくい低温でミネラルウォーターを保存するためである。また、BIB容器とディスペンサの接続部位も冷蔵庫内で外気とは遮断された状態で、かつ低温雰囲気下におかれるため、雑菌が侵入、繁殖しにくい。従来は、BIB容器側の注出口に、ディスペンサ側から供給ホースを介して設けられたコネクタを接続させる機構が多かったが、これはコネクタを手で扱うため飲料水容器接続時の雑菌の侵入あるいはコネクタ部の汚染が発生し、不衛生であった。また、欧米でよく見かけられるボトルを飲料水容器として使用する場合は、ボトルの口に設けられている注出口の栓を開け、ボトルを逆さまにしてディスペンサの上部に設けられた給水リザーバーにボトルの注出口を差し込む機構であるが、ディスペンサ側の給水リザーバー及びボトル側の注出口は露出しており、また接続した場合も接続部位も外気と遮断されておらず、非常に雑菌の侵入、付着が多かった。
【0019】
次に、図2に配管系統の詳細を示す。図2において、供給配管2は飲料水容器1の注出口29に挿入し、Oリング30でシールして接続する三方コネクタ31に、一対のホース32,32を締結具33,33で堅く接続し、ホース32,32にはそれぞれパイプ34を締結具35で堅く接続する。ここで、三方コネクタ31はステンレス製であり、図3に示すように、本体36の両側に突出する接続管部37,37を有してT字形の貫通孔38を形成し、本体36にBIB容器の注出口29の封緘膜を突き破るべき先鋭端部39aが設けられた尖鋭筒部39を有する構造となっている。三方コネクタ31は飲料水容器の注出口29との接続部位の近傍に設けられており、温水の循環による加熱殺菌がディスペンサの末端近くまで行えるようになっており、また、三方コネクタ31を金属製にすることにより熱伝導により注出口周辺の殺菌が可能となっている。Oリング30はシリコンゴムからなり、三方コネクタ31の尖鋭筒部39の凹部に摺接して、Oリング30が容易に上下方向へ移動することが阻止されている。Oリング30は先鋭筒部39と飲料水容器の注出器の注出口29と接続した際に、ミネラルウォーターの洩れを防止する。また、ホース32はゴム又は合成樹脂からなり、図4に示すように、その縦断面構造において、SEBSの材質からなるホース本体32の内外両面にLLDPEのコーティング32a,32bが施され、外面側のコーティング32bは内面側のそれよりも肉厚が薄く仕上げられている。パイプ34はステンレスからなる。
【0020】
ついで、図2において、パイプ34,34にはそれぞれホース40が締結具41で堅く接続され、ホース40,40はそれぞれ温水タンク3と冷水タンク4に突設したパイプ42,42が締結具43,43で堅く接続される。そして、連通配管系統11は、温水タンク3の底部に突設したT字形管44にホース45を締結具46で堅く接続し、ホース45にパイプ47を締結具48で堅く接続し、パイプ47にホース49を締結具50で堅く接続する。そして、ホース49は循環用ポンプ9の入口ポート51に締結具52で堅く接続され、この循環用ポンプ9の出口ポート53にはホース54が締結具55で堅く接続される。さらに、ホース54にはパイプ56が締結具57で堅く接続される。さらに、パイプ56にはホース58が締結具59で堅く接続され、ホース58には循環用電磁弁10の入口ポート60aに締結具61で堅く接続される。ここで、ホース40,45,49,54,58は前記ホース32と同一材質からなり、また、パイプ42,47,56は前記パイプ34と同一材質からなる。循環用ポンプ9はケーシングとインペラがともにグラスファイバー入り強化PPからなり、また、スピンドルがセラミック、スラストがポリエチレン、Oリングがフッ素ゴム、軸受がルーロンアロイからなる。循環用電磁弁10は、ボディがポリアセタール、バルブシートとパッキンがシリコンゴム、ガイドとスプリングがステンレス、プランジャがステンレスからなる。
【0021】
循環用電磁弁10の出口ポート60bにはホース62が締結具63で堅く接続され、ホース62には冷水タンク4に突設したパイプ66に枝状に接続したパイプ64が締結具65で堅く接続される。この時、冷水注出バルブ8は、配管系統の近傍に設けられており、温水の循環による加熱殺菌が行いやすくなっている。パイプ66には冷水注出バルブ8がパッキン67を介在して接続される。冷水注出バルブ8は、温水タンク3に突設したパイプ68にパッキン69を介在して接続される温水注出バルブ7と同じものであって、図5に示すようにいずれも、本体79に接続管部78がL字形に一体成形され、本体79にはレバー79bを有するキャップ79aが冠して結合され、本体79の水出口79cの先端部にはスリット79d等の切り欠き部が形成されて、水出口の先端部の表面張力を阻害するようになっており、水出口79c付近の滞留水が排除されやすく所謂水切りが良くなっている。水出口79c周辺は外気に接しており、水が停滞すると非常に雑菌が侵入、増殖しやすい環境のためこの構成は非常に効果的である。なお、冷水タンク4の底部にドレンパイプ70が垂下して突設され、このドレンパイプ70には冷水ドレンバルブ14が接続されている。この冷水ドレンバルブ14は温水ドレンバルブ13と同じものである。なお、蒸気抜きパイプ12は、温水タンク3に突設したステンレス製のパイプ71にホース72を締結具73で堅く接続し、ホース72はパイプ74に締結具75で堅く接続し、パイプ74にはホース76が締結具77で堅く接続される。ここで、注出バルブ7,8はポリサルフォンからなり、温水タンク3と冷水タンク4はそれぞれステンレス製であって、パイプ64,66もこれと同一材質であり、パッキン67,69はシリコンゴムからなる。
【0022】
ドレンバルブのボディは黄銅製であり、温水の循環による加熱殺菌の際に材質の熱伝導を利用して、加熱殺菌を行うことができる。
【0023】
ディスペンサ内のミネラルウォーターが接触する部位の部品の材質の選定は、装置内での部品としての機能を有することのほか、ミネラルウォーターに対して衛生的であること、そして、ミネラルウォーターに対して官能的な影響を与えないことが肝要である。しかし従来のディスペンサは、ミネラルウォーターに対する官能的な影響の面は全く考慮されておらず、金属臭やゴム臭等の異臭や、金属イオン等による異味がミネラルウォーターについている場合が見受けられる。特に、ミネラルウォーター等の微妙な香味を有するミネラルウォーターの場合は、その香味の保全が必要である、そこで、温水タンク、冷水タンク及び配管系統のパイプは、耐腐食性、熱伝導性、耐経時劣化性の点を満足させ、かつミネラルウォーターに官能的に影響を与えない材質としてステンレスが選択され、例えば、SUS316,SUS304等が好ましく用いられる。ホースは、柔軟性、曲げた場合に内部が潰れない、耐熱耐寒性の点を満足させ、かつ異味異臭の材質への吸着が低い点から、シリコンゴムやSEBSが好ましい。また、更に官能面での影響を極力抑えるために、これらの材質を更にLLDPEでコーティングしたものを使用することが好ましい。コーティング方法としては、接着剤等の使用は安全面と官能面での影響を考えると不適切であり、共押し出し法により行うことが好ましい。
【0024】
Oリング、パッキン、電磁弁のバルブ類は、耐熱耐寒性の点を満足させ、かつ異味異臭の材質への吸着が低い点から、シリコンゴム或はフッ素ゴムが選択される。温水注出バルブ及び冷水注出バルブは、耐熱耐寒性、寸法精度、外観の見栄えの点を満足させ、かつ異味異臭の材質への吸着が低い点から、ポリサルフォン或はPPが選択される。注出バルブのバルブは、変形の形状回復性、耐クラック性、耐熱耐寒性の点を満足させ、かつ異味異臭の材質への吸着が低い点から、シリコンゴム或はフッ素ゴムが選択される、循環用ポンプのケーシングやインペラ及び循環用電磁弁のボディは、耐熱耐寒性、耐クラック性、寸法精度、寸法安定性の点を満足させ、かつ異味異臭の材質からの発生と、材質への吸着が低い点から、ポリアセタール、グラスファーバー入り強化PP又はポリサルフォンを選択することができる。三方コネクタは、熱伝導性、耐熱耐寒性、寸法精度、BIB容器の注出口の封緘膜への突き刺しのための鋭さ及びそのための耐久性、かつ異味異臭の材質からの発生がない点から、ステンレス又はポリサルフォンが選択できる。ステンレスであれば、例えば、SUS316,SUS304等が好ましく用いられる。なお、冷水ドレンバルブ、温水ドレンバルブ及びドレンパイプは熱伝導性の良いステンレス製、黄銅製などの金属等の材質を選択することが好ましい。
【0025】
次に上記装置をウォーターサーバーとして組み立てた例を、図6以下に示す。図6は正面図、図7は平面図、図8は断面側面図、図9は背壁を除いた背面図、図10は図9のA−A断面図、図11は図8の部分拡大図(横板周辺部)、図12は図11の底面図であり、図において、80は高さ約140cm、正面幅約35cm及び奥行き約45cm程度の縦長の筐体で、上部に冷蔵庫25ドア26を有して図1,8に示すように密閉可能な箱状に形成され、その下部に連通した機器収納部81が形成されている。そして中部の前面には、ドア26の下部にパネル82が取り付け固定され、そのパネル82には温水適温ランプ83、冷水適温ランプ84及びサニテーションランプ85が配設されている。さらに、そのパネル82の下部には、凹部86が形成され、凹部86の上部に温水注出バルブ7と冷水注出バルブ8が配置され、下部にはコップ等の載置も可能な着脱可能なドレンパン87が配置されている。
【0026】
冷蔵庫25は、図8に示すように、蒸発器23と庫内ファンモータ24を背壁側に固定し、その前面に垂下する内板隔壁27を設け、その隔壁27の下部に棚板28を水平に設けてあり、この棚板28上に飲料水容器1が載置される。
【0027】
図11〜15に示すように、棚板28には飲料水容器の注出口29の首部を嵌め込むための、ドア側の方向に開いた半円型の切り欠け部98を有しており、切り欠け部98の手前には、棚板前面から切り欠け部98に繋がる三角形状のテーパー部99が設けられており、棚板28にはドア側の前面のテーパー部99の両脇に、半円状の凸部である指掛け部100が設けられている。更に、棚板28に設けられたテーパー部99の下部には、棚板28に対して平行な位置に固定レバー101が一端を固定され、水平方向に左右に回動可能に設けられており、固定レバー101を締めた状態で、ロックされるようになっている。飲料水容器1を棚板28に載置する場合、固定レバー101のロックを外し開いた状態として、飲料水容器1を棚板手前に仮置きし、飲料水容器1の注出口29の首部をこのテーパー部99に大略合わせた状態で、飲料水容器1の位置を棚板後方に押し込むことにより、テーパー部99によって飲料水容器1の注出口29の首部が切り欠け部98に向って正確に導かれ、切り欠け部98に容易に嵌め込むことができ、注出口29がディスペンサとの接続のために必要な位置に固定される。更に、固定レバー101を閉じてロックすることにより、飲料水容器1の注出口29の位置が動かないようになっている。
【0028】
また切り欠け部98の最奥部の中心下部には、三方コネクタ31を固定支持した接続レバー92が軸93を中心として上下方向へ回動可能に設けられており、三方コネクタ31の先端には尖鋭端部39aが設けられている。また、接続レバー92の手前端部の把持部92aは軸95を中心として左右(水平)方向へ回動可能に設けられている。また接続レバー92の可動可能周域の外周辺には、略T字型のガイド102が設けられ、このガイド102の縦方向部分は上方に開口した略U字形を成しており接続レバー92の上下動案内をする。軸93は、棚板28の下方で奥部中央に固定した支持板94に設けられている。
【0029】
したがって飲料水容器1とディスペンサを接続する場合は、図13に示すように、飲料水容器1を棚板28上に載置し、飲料水容器1の注出口29を切り欠け部98に差し込んでその首部に形成されている溝部29aをテーパー部99,99に嵌め込み、図14に示すように固定レバー101を締めてロックした状態で、棚板28に設けられた指掛け部100に指をかけて手を安定させて、指により接続レバー92の把持部92aを持ってガイド102の縦方向部分に沿って上方向に移動させる。それにより三方コネクタ31の尖鋭端部39aが上方に移動して注出口29の内部に入り込み、内部に設けられた封緘膜を突き破り、飲料水容器1内のミネラルウォーターが自重により三方コネクタ31に流入する。接続レバー92は、図15に示すように、尖鋭端部39aが飲料水容器1の注出口29の内部の封緘膜を突き破った後、接続レバー92の把持部92aをガイド102の横方向部分に沿って左右のいずれかに移動させ、畳んだ状態とする。接続レバー92が取り付けられている軸93は、奥部に固定されているので、そこを支点とし、接続レバー92の把持部92aの力点とは距離があり、その間の三方コネクタ31の尖鋭端部39aの作用点に対して、小さな力で確実に注出口29の内部の封緘膜を突き破ることが出来る。また、接続レバー92はガイド102に沿って移動させれば良く、その操作を誤ることなく行える。また接続レバー92は注出口29の内部の封緘膜を突き破った後は、図15に示すように接続レバー92の把持部92aを軸95を中心として左右いずれか一方に移動させてガイド102の水平方向部分に支承させるので、ガイド102で接続レバー92が落下することが防止され、接続が解かれることがなく、また接続レバー92の把持部92aはコンパクトに畳まれた状態となり、冷蔵庫内に無駄なスペースを必要としない。
【0030】
飲料水容器1とディスペンサとの接続を解く場合は、反対に、接続レバー92の把持部92aを持ってガイド102に沿って横方向に移動させ、接続レバー92をガイド102の縦方向部分にあわせて下方向に移動させることにより、飲料水容器1とディスペンサとの接続が解かれる。
【0031】
冷蔵庫25の下部の機器収納部81には、図8〜図10に示すように、循環用電磁弁10を上に配置して温水タンク3と冷水タンク4が対角線上に配置されて収納され、温水タンク3と冷水タンク4の付近に循環用ポンプ9が配置されている。かさばる温水タンク3と冷水タンク4を対角線上に配置したことによりディスペンサ全体がコンパクトに設計でき、また配管等もコンパクトに収まる。そして、これらの下部に、電装ボックス103が設けられてその前面側にはサニテーション用タイマー96が設けられている。サニテーション用タイマー96は所定時間間隔で循環用電磁弁10を開動作させ、かつ、循環用ポンプ9を駆動するもので、配管系統を殺菌するために必要な時間が経過すると全てOFF動作して元の状態に戻す電気的回路を有する。電装ボックス103の側方には温水ドレンバルブ13が配置され、これらの下部には前面側に凝縮器17、凝縮器ファンモータ18が配置され、最奥部には電動圧縮機19が配置されている。なお、温水ドレンバルブ13とサニテーション用タイマー96を操作するために、機器下部全面にはカバー97が脱着可能に取り付けられている。なお、ドア26の表面には飲料水容器1内のミネラルウォーターの品質や製造者を示す表示等を自由に施すことができる。
【0032】
かくして構成されたウォーターサーバーは、事務室や食堂等に設置し電源に接続しておくと、冷蔵庫25内は蒸発器23により適度に冷却されて飲料水容器1内のミネラルウォーターW内での雑菌の増殖を抑制して安全に保存できるとともに、図1における配管系統で太線矢示方向に流れて、温水タンク3に流入したミネラルウォーターはヒーター5によって加熱され、冷水タンク4に流入したミネラルウォーターWはさらに冷却機6によって冷却され、パネル82の温水適温ランプ83及び冷水適温ランプ84が点灯すると、温水注出バルブ7のレバーを押し下げて開操作すれば適度の温水が、また、冷水注出バルブ8のレバーを押し下げて開操作すれば適度に冷えた冷水が、注がれ出るというものである。
【0033】
そして、一定期間毎に温水タンクと冷水タンクを含む配管系統の加熱殺菌を自動的に行うことができるようにサニテーション用タイマー96をセットしておけば、その設定時刻が到来したとき、パネル82のサニテーションランプ85が点滅して温水適温ランプ83と冷水適温ランプ84が消灯し、常時は閉じられている循環用電磁弁10が開動作するとともに、循環用ポンプ9が動作するため、図1における配管系統で細線矢示方向に流れて、温水タンク3の加熱されたミネラルウォーターWは連通配管11を介して冷水タンク4内に流入し、供給配管2内を流入して元の温水タンク3内に還流する。加熱殺菌時には、温水タンク3内のミネラルウォーターWの温度が70度以上になるように設定されており、温水タンクに循環してきた温水の温度が維持され供給配管2やタンク3,4内に侵入した雑菌を全て死滅させることができるというものである。また、温水が循環した際に部位の熱伝導を利用して末部まで殺菌することができる。設定した一定時間後には、循環用電磁弁が閉動作すると共に、循環用ポンプ9が停止し、温水タンクに付設したヒーター5の温度設定が通常にもどされ、自動的に加熱殺菌は終了する。
【実施例】
【0034】
図1ないし図15にて示す本発明のディスペンサ(A)を製造した。対照として、ディスペンサと飲料水容器の注出口との接続部分の近傍に設けられている三方コネクタをプラスチック製とした以外はディスペンサ(A)と同様のディスペンサ(B)を製造して、該三方コネクタを、従来のディスペンサで用いられている飲料水容器側に尖鋭筒部が設けられたステンレス製I型ジョイントに替えて配管系統と接続し、I型コネクタを冷蔵庫内に位置させた構成とした以外はディスペンサ(A)と同様のディスペンサ(C)を製造した。更に、冷水注出バルブに切り欠け部を有しない従来のバルブを用いた以外はディスペンサ(A)と同様のディスペンサ(D)を対照として製造した。
【0035】
なお、いずれのディスペンサも、冷蔵庫内の飲料水容器中のミネラルウォーター温度は10℃以下に、冷水は4℃〜10℃、温水は80℃〜90℃となるように設定されている。また、冷水タンク及び温水タンクの有効内容積は各々2.7リットルであり、温水タンクに付設させたヒーターは401Wであった。
(実施例1)ディスペンサの加熱殺菌性能の評価
水棲微生物として知られているスピンゴモナス パウチモビリ(Spingomonas paucimobilis)(ATCC29837)とシュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens Migula)(ATCC13525)を用いて、ミネラルウォーター中で増殖することを確認した。これらの微生物をそれぞれ標準寒天培地で27℃で5日間培養後に、それらを各々1白金耳ずつ市販のミネラルウォーター10ml中に懸濁し、更にそれを同じミネラルウォーターで約102CFU/mlまで希釈して、27℃で5日間培養した。培養後に、菌液を市販の未開封のバッグインボックス型容器に詰められたミネラルウォーター10リットルにそれぞれ懸濁させ、25℃で48時間培養して、ミネラルウォーター菌液を2種類調整した。この時、スピンゴモナス パウチモビリを含むミネラルウォーター菌液の濃度は1.76×105CFU/mlで、シュードモナス フルオレセンスを含むミネラルウォーター菌液の濃度は3.04×106CFU/mlであった。
【0036】
この2種類のミネラルウォーター菌液をそれぞれ用いて、本発明のディスペンサ(A)で以下の実験を行った。ディスペンサ(A)内に70%エタノール水溶液を5分間循環させ殺菌した後、市販の未開封であった10リットルのミネラルウォーターが詰められたBIB型容器を接続し、ディスペンサ内にミネラルウォーターを循環させながら注出し、ディスペンサ中のエタノール水溶液を洗浄した。この後、ドレンバルブも開き、ディスペンサ内にミネラルウォーターが残らないように全て排水させた。その後、ミネラルウォーター菌液の入ったBIB型容器をディスペンサに接続し、冷水タンクが満杯状態になったのを確認してから、冷水注出バルブより200mlを注出し、検体アとした。この時、ディスペンサ内にはミネラルウォーター菌液の入ったBIB容器からのミネラルウォーター菌液のみが充満しており、冷水注出バルブより注出させたことにより、ミネラルウォーター菌液がディスペンサ全体に行き渡り、注出バルブ先端まで流通したことになる。
【0037】
次にディスペンサからミネラルウォーター菌液の入ったBIB型容器を取り外し、市販の未開封であった10リットルのミネラルウォーターが詰められたBIB型容器を接続し、加熱殺菌装置を稼動させた。ディスペンサの加熱殺菌装置はいずれも温水タンクに付設させたヒーターが温水タンク中の温水の温度が70℃以上となったら加熱を中止するように設定し、循環ポンプは60分間稼動させるように設定した。この時ディスペンサ中のタンク、配管系統には、先に接続されていたミネラルウォーター菌液の入ったBIB型容器からのミネラルウォーター菌液が充満されている状態である。
【0038】
加熱殺菌直後に冷水注出バルブよりコップ1杯分の注出量相当分200mlを検体イとして、殺菌終了後2時間後に冷水注出バルブよりコップ1杯分の注出量相当分として200mlを検体ウとして、引続いて冷水タンク内のミネラルウォーターの半量以上を注出させるために、1500mlを検体エとして、注出した。
【0039】
得られた各検体については微生物検査を行った。微生物検査は、各検体のうち0.1mlを1〜100倍に希釈して標準寒天培地に塗沫して、23℃、7日間培養してコロニー数を計測して行った。その結果を表1に示す。
【0040】
従って、本発明のディスペンサは、加熱殺菌装置の稼動により、ディスペンサ内で微生物の増殖等があっても、十分な殺菌効果が得られることが判った。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例2)ディスペンサ内の部位の加熱殺菌による加熱効果の確認
本発明のディスペンサ(A)及び、対照として製造したディスペンサ(B)、(C)を用いて、ディスペンサ内の各部位の加熱殺菌時の加熱効果を以下の実験で確認した。加熱殺菌の目安として、温度55℃で5分間以上の維持とした。
【0043】
室温35℃で、ディスペンサに市販の未開封であった10リットルのミネラルウォーターが詰められたBIB型容器を接続して、1時間後に実験を開始した。この時、ディスペンサの冷蔵庫内に載置された飲料水容器中のミネラルウォーターの温度は14℃であった。
【0044】
いずれのディスペンサの加熱殺菌装置も、温水タンクに付設させたヒーターを温水タンク中の温水が70℃以上となったら加熱を中止するように設定し、循環ポンプは70分間稼動させるように設定した。循環ポンプを稼動させてから、稼動開始後90分後までのディスペンサ各部位の温度を測定し、その経時的変化を観察した。この時、ディスペンサ(A)は三方コネクタの尖鋭筒部基部部位a、三方コネクタの本体中央部部位b、冷蔵庫内に位置する温水タンクへ接続する配管系統のパイプ部位c、ディスペンサ(B)は三方コネクタの尖鋭筒部基部部位a’、三方コネクタの本体中央部部位b’、冷蔵庫内に位置する温水タンクへ接続する配管系統のパイプ部位c’、ディスペンサ(C)においてはI型コネクタの飲料水容器注出口付近部部位d、I型コネクタの中央部部位e、I型コネクタの配管系統付近部部位f、I型コネクタと配管系統との接続部部位gを測定した。
【0045】
本発明のディスペンサ(A)及び、三方コネクタの材質の比較のために製造したディスペンサ(B)のいずれのディスペンサの三方コネクタの本体中央部b,b’、冷蔵庫内に位置する温水タンクへ接続する配管系統のパイプc,c’は、循環ポンプ稼動開始時から温度は上昇し、17分で55℃に達した後も上昇して、最高75℃に達して、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始めたが、90分後でも63℃であった。本発明のディスペンサ(A)の三方コネクタの尖鋭筒部基部aは、ポンプ稼動開始時から温度は上昇し、開始後33分で55℃に達した後も上昇して、最高65℃に達して、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始めたが、90分後でも57℃であったが、ディスペンサ(B)のディスペンサのプラスチック製三方コネクタの尖鋭筒部基部a’は、最高52℃から28℃の範囲で温度がばらついた。
【0046】
ディスペンサ(C)においては、I型コネクタと配管系統との接続部gは、循環ポンプ稼動開始時から温度は上昇し、22分で55℃に達した後も上昇して、最高74℃に達して、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始めたが、90分後でも61℃であったが、I型コネクタの飲料水容器注出口付近部dは、循環ポンプ稼動開始後26分後に温度は上昇し始めたが、最高45℃にしか達せず、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始め90分後には26℃であった。I型コネクタの中央部内eは、循環ポンプ稼動開始後26分後に温度は上昇し始めたが、最高45℃にしか達せず、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始め90分後には26℃であった。I型コネクタの配管系統付近部fは循環ポンプ稼動開始後8分後に温度は上昇し始めたが、最高57℃で、55℃以上を継続的に維持した時間は4分間であり、温水タンクに付設させたヒーターがオフになった時点で温度は下降し始め90分後には45℃であった。
【0047】
この結果、殺菌可能温度及び時間を55℃以上で5分間の維持とした場合、ディスペンサ(A)においては、三方コネクタの尖鋭筒部基部a、三方コネクタの本体中央部b、冷蔵庫内に位置する温水タンクへ接続する配管系統のパイプcはいずれの部位でも55℃以上で5分間以上の維持が達せられていた。
【0048】
ディスペンサ(B)のディスペンサでは、プラスチック製の三方コネクタの尖鋭筒部基部a’のみが55℃を超える温度には全く達しえず、加熱殺菌の効果が得られなかった。
【0049】
本発明のディスペンサ(A)では、三方コネクタ自身が金属製のため循環されてきた温水により温度が上昇し、また熱伝導により三方コネクタ端部まで温度がある程度上昇したため、三方コネクタの尖鋭筒部基部aの温度が55℃以上で5分間以上維持できたと思われる。しかしディスペンサ(B)のプラスチック製の三方コネクタの尖鋭筒部基部a’は、三方コネクタ自身の温度がほとんど上昇せず、また飲料水容器から流入する冷却されたミネラルウォーターによる温度の影響を大きく受け、温度が上昇しなかったと思われる。
【0050】
ディスペンサ(C)では、I型コネクタのいずれの部分でも、55℃以上で5分間の維持を行うことが出来ず、加熱殺菌の効果が得られなかった。これは、I型コネクタ内に温水が循環せず、I型コネクタ内には飲料水容器からの冷却されたミネラルウォーターが流入しており、更にI型コネクタが冷蔵庫内に位置するために冷却効果を受けた状態でミネラルウォーターが停滞しているため、温水が循環する配管系統近傍からの温水の熱によりI型コネクタ自身の温度の上昇及び材質の熱伝導性を利用しても、I型コネクタの温度を上昇されることができなかったためと思われる。なお、I型コネクタはディスペンサ内の最上流に位置するため、この部分での雑菌の汚染、増殖が発生した場合には、ディスペンサの使用と共にディスペンサ内全般が汚染されることになるため、殺菌の最も必要な部位である。
【0051】
また、本発明のディスペンサ(A)においては、同様に冷水注出バルブ基部、循環用電磁弁、循環用ポンプ、温水タンク底部、冷水タンク底部、冷水タンクにドレンパイプを介して接続して設けられた冷水ドレンバルブの温度を測定したが、いずれも循環ポンプ稼動開始後に温度は上昇し始め、55℃以上の温度を継続的に最短30分間を維持した。更に、本発明のディスペンサ(A)において、冷蔵庫内に載置された飲料水容器中のミネラルウォーター及び冷蔵庫内の温度も測定したが、飲料水容器中のミネラルウォーター及び冷蔵庫内の温度はいずれも5℃範囲内の温度の上昇は見られたものの、著しい温度変化は観察されなかった。従って、冷蔵庫内及び冷蔵庫内に載置された飲料水容器中の飲料は、低温が保たれた状態であり、加熱殺菌後の余分な冷却も不要で、また飲料水容器中のミネラルウォーター内での微生物の増殖抑制のための低温も維持できる。
(実施例3)冷水注出バルブの水出口先端部の切り欠け部の効果
ディスペンサで外部に露出している部分として、冷水注出バルブの水出口先端部及び温水注出バルブの水出口先端部の2箇所の微生物の汚染について、事務所の室内に設置されていた市販のディスペンサを調査した。調査方法は、無菌水で湿らせた綿棒で、検査箇所を拭い、拭った綿棒を1mlの無菌水を入れた試験管の中で濯ぎ、すすぎ液の0.1mlを混釈培養し、コロニー数を数えて行った。調査の結果、ディスペンサの冷水注出バルブの水出口先端部において103CFU/ml以上の微生物が検出され、温水注出バルブの水出口先端部では、微生物は10CFU/ml以下しか検出されなかった。冷水注出バルブの水出口先端部で微生物が検出された要因としては、水出口先端部でミネラルウォーターの停滞が観察されるので、外部から微生物が水出口先端部に付着し、その滞留水中での微生物の増殖が考えられる。そこで、冷水注出バルブでの微生物の増殖を抑制する効果を本発明のディスペンサ(A)と、対照として製造した冷水注出バルブに切り欠け部が設けられていないディスペンサ(D)とを用いて以下の実験を行った。
【0052】
実施例1で用いたスピンゴモナス パウチモビリ(Spingomonas paucimobilis)(ATCC29837)とシュードモナス フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens Migula)(ATCC13525)の菌株をそれぞれ標準寒天培地で27℃で5日間培養後に、それらを各々1白金耳ずつ市販のミネラルウォーター10ml中に混合して懸濁し、更にそれを同じミネラルウォーターで約102CFU/mlまで希釈して、27℃で5日間培養した。これを市販の未開封であったバッグインボックス型容器に詰められたミネラルウォーター10リットルに混合し、25℃で48時間培養して、ミネラルウォーター混合菌液を調整した。この時、微生物の濃度は2.40×105CFU/mlであった。
【0053】
いずれのディスペンサ内にもミネラルウォーターが全く入っていない状態にしてから、ミネラルウォーター混合菌液の入ったBIB型容器を接続し、冷水タンクが満杯状態になったのを確認してから、冷水注出バルブより500mlを注出させた。この時、ディスペンサ内にはミネラルウォーター混合菌液の入ったBIB容器からのミネラルウォーター混合菌液のみが充満しており、冷水注出バルブより注出させたことにより、ミネラルウォーター混合菌液がディスペンサ全体に行き渡り、注出バルブ先端まで完全に流通したことになる。
【0054】
その後、いずれのディスペンサからもミネラルウォーター混合菌液の入ったBIB型容器を取り外し、市販の未開封であった10リットルのミネラルウォーターが詰められたBIB型容器を接続し、加熱殺菌装置を稼動させた。ディスペンサの加熱殺菌装置はいずれも温水タンクに付設させたヒーターを70℃以上となったら加熱を中止するように設定し、循環ポンプは120分間稼動させるように設定した。この時ディスペンサ中のタンク、配管系統には、先に接続されていたミネラルウォーター混合菌液の入ったBIB型容器からのミネラルウォーター混合菌液が充満されている状態である。
【0055】
加熱殺菌後はそのままの状態で1日間ディスペンサを使用しない状態で放置し、ディスペンサ内でミネラルウォーターが全く動かずに停滞している状態を維持させた。
【0056】
1日の放置後、1日1回、冷水注出バルブから1リットルずつ注出し、1リットルのうち初めの10mlと、最終の10mlをサンプリングし、微生物検査を行った。また、10日後に、市販の新しい未開封であった10リットルのミネラルウォーターが詰められたBIB型容器に取り替えて、更に10日間同様にサンプリングを行い、微生物検査を行った。これは、加熱殺菌後のディスペンサ内でのミネラルウォーターの停滞時間による微生物数の経時変化を確認するためである。また、注出した1リットル中の初めの10mlは、冷水注出バルブの水出口先端部の滞留水を含み、最終の10mlには水出口先端部の滞留水は完全に注出された後のタンク中のミネラルウォーターを含むサンプルとなる。
【0057】
なお、ディスペンサの加熱殺菌装置は1日間の放置後には一切稼動させなかった。
【0058】
微生物検査は、各検体のうち0.1mlを標準寒天培地に塗沫して、23℃、7日間培養してコロニー数を計測して行った。
【0059】
その結果、ディスペンサ(D)では、1日目の初めの10mlで1.68×106CFU/mlの、最終の10mlで9.52×103CFU/mlの微生物が検出されたのに対して、本発明のディスペンサ(A)では、1日目の初めの10mlで220CFU/mlの、最終の10mlで11CFU/mlの微生物が検出されたに過ぎなかった。その後もディスペンサ(D)では、2日目の初めの10mlで2.20×105CFU/mlの、最終の10mlで1.15×103CFU/mlの微生物が、3日目の初めの10mlで2.18×105CFU/mlの、最終の10mlで1.06×103CFU/mlの微生物が、4日目で初めの10mlで1.71×104CFU/mlの、最終の10mlで556CFU/mlの微生物が検出された。5日目以降も20日目まで、4日目と同様の菌数の微生物が検出された。
【0060】
本発明のディスペンサ(A)では、2日目以降も5日目まで、1日目と同様の菌数の微生物が検出されたが、6日目以降は初めの10mlでも、最終の10mlでも微生物は0から最大14の範囲で検出されたにすぎなかった。
【0061】
以上のように、本発明のディスペンサは冷水注出バルブの水出口先端部に切り欠け部を設けたことにより、冷水注出バルブの水出口先端部におけるミネラルウォーターの滞留が防止され、その結果、微生物がその部位で増殖することがなかった。冷水注出バルブの水出口は加熱殺菌の際に、十分に加熱が行き渡らない場合が有り、付着した微生物が滞留するミネラルウォーター中で増殖するものと思われる。
【0062】
なお、温水注出バルブの水出口先端部で、微生物が検出されなかったのは、温水注出バルブより注出される温水が最低55℃以上の温度が維持されているため、温水注出バルブの水出口先端部分に微生物が付着しても、温水の注出により常に加熱殺菌状態にあるため、死滅し増殖していなかったと思われる。
【0063】
以上説明した実施の形態によれば、加熱殺菌する装置、すなわち、ヒーターを温水タンクにのみ付設して、配管系統の一部や冷水タンクに付設する必要性を無くしたので、ヒーターの取り付け箇所が少なくでき使用する電力量も小さく、したがって、機器製造コスト及びランニングコストの低下を図ることができる。
【0064】
また、三方コネクタを飲料水容器の注出口との接続部位近傍に設け、また冷水注出バルブは配管系統の近傍に設けたことにより、温水の循環による加熱殺菌をより効果的にディスペンサ全体に行えるようになった。さらに、三方コネクタ、ドレンバルブを熱伝導性の高い金属製としたことにより、これらの部位の周辺の加熱も行えるようになった。またディスペンサ内でミネラルウォーターが接する部位の中で、温水の循環による加熱殺菌が行えない三方コネクタより接続部位に近い部分は、いずれも密閉状態の冷蔵庫内に設けられ低温の雰囲気下にあり、雑菌の増殖が困難な状態になっている。また、飲料水容器も冷蔵庫内に収納される構成になっている。これらの各構成と、温水の循環による加熱殺菌により、ディスペンサ内でのミネラルウォーターの微生物に対する安全性の確保は厳密に行われることとなる。飲料水容器の取付又は取外しにおいても、ミネラルウォーターが接する部位には、通常は人間は直接触ることがなく、雑菌の侵入の可能性もほとんどない。
【0065】
また、飲料水容器の取付及び取外しも、テーパー、切り欠け部、ガイド及び接続レバーにより、簡便に小さな力で確実に接続でき、また飲料水容器が使用中に外れることはない。また、接続レバーは取付及び取外し以外では、おりたたまれた状態にあり、無駄なスペースを要しない。
【0066】
ミネラルウォーター等の非常に官能的に影響を受けやすいミネラルウォーターを本発明のディスペンサで用いても、ディスペンサ内のミネラルウォーターが接する部位には、ミネラルウォーターに異味異臭を付与しない、また異味異臭が部位に付着しない材質を選択して使用しているため、長期にわたって使用続けても、ミネラルウォーター本来の微妙な風味を損なうことなく、異味異臭がつくことがない。
【0067】
更に、ディスペンサ内で容積が嵩張る飲料水容器を上部に収納し、下部に温水タンクと冷水タンクとを対角線上に設けたことにより、ディスペンサ全体の装置をコンパクトに組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の構成概要図
【図2】本発明の配管系統図
【図3】本発明の一構成部品を示す正面図(A)、底面図(B)及び側面図(C)
【図4】本発明の一構成部品を示す部分縦断面図
【図5】本発明の一構成部品を示す側面図(A)、平面図(B)及び背面図(C)
【図6】本発明を実施したウォーターサーバーの正面図
【図7】本発明を実施したウォーターサーバーの平面図
【図8】本発明を実施したウォーターサーバーの断面側面図
【図9】本発明を実施したウォーターサーバーの背壁を除いた背面図
【図10】図9のA−A断面図
【図11】図8の部分拡大側面図
【図12】図11の底面図
【図13】飲料水容器をディスペンサに装着する手順を示す斜視図(A)及びその図中a部拡大図(B)
【図14】飲料水容器をディスペンサに装着する手順を示す斜視図
【図15】飲料水容器をディスペンサに装着する手順を示す斜視図
【符号の説明】
【0069】
1…飲料水容器
2…供給配管
3…温水タンク
4…冷水タンク
5…ヒーター
6…冷却機
7…温水注出バルブ
8…冷水注出バルブ
9…循環用ポンプ
10…循環用電磁弁
11…連通配管
12…蒸気抜きパイプ
13…温水ドレンバルブ
14…冷水ドレンバルブ
15…冷媒供給配管
16…切替電磁弁
17…凝縮器
18…凝縮器ファンモータ
19…電動圧縮機
20,21…冷媒戻り配管
22…冷媒供給配管
23…蒸発機(冷却機)
24…冷蔵庫内ファンモータ
25…冷蔵庫
26…扉
27…隔壁
28…棚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水容器からミネラルウォーターを配管系統を介して飲用に供するディスペンサであって、配管系統中に冷却装置を有する冷水タンクと加熱装置を有する温水タンクとを有するミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記加熱殺菌装置は、前記冷水タンクと前記温水タンクとを接続する連通配管と、該連通配管中に設けられる循環ポンプ及び電磁弁と、配管系統の加熱殺菌をするときに点灯するサニテーションランプと、を有することを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項2】
飲料水容器からミネラルウォーターを配管系統を介して飲用に供するディスペンサであって、配管系統中に冷却装置を有する冷水タンクと加熱装置を有する温水タンクとを有するミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記加熱殺菌装置は、前記冷水タンクと前記温水タンクとを接続する連通配管と、該連通配管中に設けられる循環ポンプ及び電磁弁と、該電磁弁と循環ポンプを定期的に作動させるタイマーと、配管系統の加熱殺菌をするときに点灯するサニテーションランプと、を有することを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記冷水タンクと前記温水タンクのミネラルウォーターがそれぞれ設定された温度になった時に点灯し、設定された温度を外れた時および前記サニテーションランプが点灯した時に消灯する冷水適温ランプと温水適温ランプとを備えていることを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記作動から一定時間後には、前記電磁弁が閉動作すると共に、前記循環ポンプが停止し、前記温水タンクの前記加熱装置の温度設定が通常に戻され、自動的に加熱殺菌が終了することを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記連通配管におけるパイプ、バルブ、循環ポンプ及び循環用電磁弁の材質がミネラルウォーターに異味異臭を付与しない材質にて形成され、パイプを結ぶホースにはミネラルウォーターに異味異臭を付与しない合成樹脂のコーティングが施されて成ることを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記連通配管におけるパイプはステンレスで形成され、前記循環ポンプのケーシング及びインペラ並びに前記電磁弁のボディは、ポリアセタール、グラスファイバー入り強化PP又はポリサルフォンの選択された材料で形成され、前記電磁弁のバルブはシリコンゴム又はフッ素ゴムの選択された材料で形成され、前記パイプを結ぶホースはシリコンゴム又はSEBSの選択された材料で形成されかつLLDPEでコーティングされていることを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。
【請求項7】
請求項5記載のミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置であって、
前記コーティングが共押し出し法により行われていることを特徴とするミネラルウォーターのディスペンサの加熱殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−156001(P2008−156001A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72832(P2008−72832)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【分割の表示】特願2005−316352(P2005−316352)の分割
【原出願日】平成9年12月26日(1997.12.26)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】