説明

ミネラル吸収促進剤及びその用途

ミネラル吸収促進剤及びミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物を提供することを課題とし、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤、及び、このミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物を提供することにより解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なミネラル吸収促進剤及びその用途に関し、より詳細には、グルコースが4個、α−1,3とα−1,6結合で環状に結合した非還元性の糖質、即ち、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される糖質(以下、単に「環状四糖」という。)、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有する新規なミネラル吸収促進剤及びそのミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カルシウム、マグネシウム、リン、鉄をはじめとするミネラル類は生体内で重要な生理機能を担う栄養素であることが明らかになってきている。しかしながら、現代人の食生活において、これらミネラルの一日の目標摂取量を、継続して達成することは相当の努力を要する。また、極端なダイエットや加齢に伴うホルモンのアンバランス、インスタント食品、外食の増加などの食習慣によるミネラルの慢性的な不足などが原因となって、例えば、骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨や歯などの含カルシウム組織から重要な構成成分であるカルシウムが減少し、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の骨疾患を発症したり、あるいは虫歯、歯周病などの歯疾患、腎結石などの泌尿器系、高血圧、虚血性心疾患などの循環器系の疾患、貧血、糖尿病、或いは、生体の恒常性機能の低下などを生じやすくなる。
【0003】
このミネラル不足を解消するために、各種ミネラル製剤に加えて、ビタミンD、カルシトニン製剤、エストロゲン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤、ビスホスホネートなどの油性ビタミンやホルモン剤を投与することも行われている。この方法は、単にミネラルを摂取する場合よりも効果的であるものの、油溶性ビタミン剤やホルモン剤を使用する場合、その投与スケジュールが煩雑であり、過剰投与等による副作用の恐れもあり、必ずしも満足する方法とはいえない状況である。また各種ミネラル製剤も、過剰摂取により、逆に、高ミネラル血症を引き起こすなどの弊害も問題となっている。
【0004】
このような状況をふまえて、日常の食生活において、美味しくて、毎日摂取しても安全な食事、間食、或いは健康食品を摂取しながら、同時に、効果的に一日に必要な量のミネラル類の摂取を可能とすべく、食品業界では、それ単独で摂取しても、或いは、食事として摂取しても美味で、且つ、ミネラル吸収促進作用を有する素材の開発が進められている。例えば、特開平7−67575号公報、2002−306093号公報及び特開平6−205653号公報には、キシロオリゴ糖、マンノオリゴ糖、或いは、ラクチュロースオリゴ糖を有効成分とするミネラル吸収促進剤が、特開平7−69902号公報には、マグルシウムと、難消化性少糖、難消化性糖アルコール及び食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有する、マグネシウム補給材が記載されており、特開平7−33668号公報にはラクトシュクロース、コンドロイチン硫酸カルシウムを含有する骨強化剤が記載されている。しかしながら、これらのものの中には、飲食品の原料として使用した場合には、その飲食品の味、香り、食感等の風味の低下をきたすものや、大量に摂取しないと効果が認められないなどの問題のある食品素材も少なくない。また、ミネラル類を飲食品に添加すると、その特有の苦味や金属味のために、飲食品自体の嗜好性が低下する場合もある。現在の多様な食生活に対応するためには、継続的に摂取しても、摂取時の食品の味、香り、食感等の風味の低下をもたらすことなく、しかも、安全で、且つ、ミネラル吸収促進効果を有する機能性に優れた食品素材のさらなる開発が望まれている。
【0005】
一方、本出願人は、国際公開WO 01/090338号明細書、国際公開WO 02/010361号明細書及び国際公開WO 02/072594号明細書において、環状四糖、又は、これの糖質誘導体との混合物を含有する糖質の新規製造方法とこれらの糖質を含有する組成物を開示し、さらに、これらの糖質が、腸内細菌によって代謝され難く、食物繊維作用を有していることを開示した。しかしながら、特開平7−67575号公報乃至国際公開WO 02/072594号明細書には、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体、或いは、これらの糖質を含有する組成物にミネラル吸収促進作用があることについてはなんら開示されていない。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、摂取しても、安全で、且つ、ミネラル吸収促進効果に優れたミネラル吸収促進剤を提供することを第一の課題とし、ミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物を提供することを第二の課題とするものである。
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決する目的で、糖質を有効成分とするミネラル吸収促進剤について長年に渡り研究を進めてきた。その結果、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体が、ミネラル吸収促進に強く働くこと、さらには、骨強化作用に代表されるカルシウム組織の強化作用を有することを見出し、新規なミネラル吸収促進剤、及び、このミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物を確立し、本発明を完成するに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいう組成物とは、飲食品、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料、ペットフードであって、これらの製造に利用される、原料、中間原料、それら原料に手を加えて製造される製品、或いは、それらを使用して製造される製品であれば何れでもよい。
【0009】
本発明でいう環状四糖とは、国際公開WO 01/090338号明細書及び国際公開WO 02/010361号明細書など開示された、グルコースが4個、α−1,3とα−1,6結合で環状に結合した非還元性の糖質、即ち、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される糖質をいう。
【0010】
また、本発明でいう環状四糖の糖質誘導体とは、環状四糖に1種又は2種以上のグリコシル基が1又は2個以上結合した糖質をいう。その具体例としては、例えば、α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素及びα−イソマルトシル転移酵素を組み合わせて澱粉に作用させて得られる糖液のように、環状四糖及び環状四糖分子の1又は2個以上のOH基に、1又は2個以上のグルコースが結合した糖質を挙げることができる。また、これらの糖質に、例えば、本発明者らが国際公開WO 02/010361号明細書において開示した方法などにより、サイクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、リゾチームなどの糖転移能を有する酵素の1種又は2種以上を、該酵素の基質となる単糖、オリゴ糖及び/又は多糖の存在下で作用させて、環状四糖及び/又はこれに1又は2個以上のグルコースの結合した糖質分子の1又は2個以上の任意のOH基に、1又は2個以上のα−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基、β−D−キトサミニル基などのグリコシル基の1又は2種以上を転移させて得られる糖質、さらには、これらの環状四糖の糖質誘導体に転移した、α−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基及び/又はβ−D−キトサミニル基などのグリコシル基に、さらに、α−D−グルコピラノシル基、β−D−ガラクトピラノシル基、β−D−キトサミニル基などのグリコシル基の1種又は2種以上を1又は2個以上転移した糖質であってもよい。
【0011】
本発明で使用される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、その由来や製法は問わず、発酵法、酵素法、有機合成法などにより製造されたものでもよく、例えば、環状四糖の製造工程において共存するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどその製造原料に由来する環状四糖及びこれの糖質誘導体以外の糖質を含有していてもよい。また、本発明で使用される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、前記の方法により得られる反応液を、そのままで、或いは、イオン交換樹脂などで、部分精製して、さらには、高純度に精製して不純物を除去したものであってもよいし、高純度に精製した環状四糖又はこれの糖質誘導体の個々の成分の1種又は2種以上を混合したものであってもよい。この環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、例えば、本出願人が、国際公開WO 01/090338号明細書に開示した、パノースをα−イソマルトシル転移酵素によって環状四糖に変換する方法、或いは、国際公開WO 02/010361号明細書に開示した、澱粉から直接α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素及びα−イソマルトシル転移酵素を組み合わせて環状四糖を製造する方法などの、澱粉質或いはそれ由来の糖質を原料とした酵素法により製造することができる。また、この環状四糖の糖質誘導体は、例えば、本出願人が国際公開WO 02/072594号明細書に開示した方法によっても製造することができる。これらの製造方法は、豊富で安価な澱粉質を原料とし、高効率且つ安価に環状四糖やこれの糖質誘導体を製造できることから、工業的に有利に実施できる。また、環状四糖には、無水非晶質、無水結晶、1含水結晶、5含水結晶が存在し、その何れを使用することも可能である。さらに、環状四糖のうち無水結晶、1含水結晶及び無水非晶質のものは、優れた脱水能を有していることから、不飽和化合物を含有する含水物を粉末、固化する場合には、該含水物に添加することにより脱水剤としても作用し、環状四糖を有効成分として含有する高品質の粉末、固形製品の製造に有利に使用できる。
【0012】
本発明でいうミネラルとは、生体内で必要とされるカルシウム、マグネシウム、リン、鉄、マンガン、ナトリウム、カリウム、銅、モリブデン、亜鉛、マンガン、コバルト、セレン、ヨウ素、フッ素などをいう。
また、本発明でいうミネラル吸収促進剤に環状四糖及び/又はこれらの糖質誘導体と共に含有せしめるミネラル化合物としては、生体に吸収可能な形態の前記ミネラルの化合物、これらのミネラルを高含有する天然物、或いは、これらのミネラルを含有する加工品をいう。具体的には、例えば、カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、オルトリン酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウムなどのカルシウム化合物や、乳清カルシウム、苦汁、卵殻カルシウム、牛骨カルシウム、魚骨粉、サンゴ末、貝殻やそれらの加工品を挙げることができる。
【0013】
マグネシウム化合物としては、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、グルコン酸マグルシウム、グリセロリン酸マグネウム、乳酸マグネシウム、オルトリン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物やマグネシウムを高含有するカカオ豆、アーモンド、大豆、ピーナッツ、苦汁、米糠、ひじき、昆布などの海草類やこれらの加工品を挙げることができる。
【0014】
カリウム化合物としては、オルトリン酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、グルコン酸カリウム、グリセロリン酸カリウム、乳酸カリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができる。
【0015】
ナトリウム化合物としては、オルトリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトウム、グルコン酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0016】
鉄化合物としては、クエン酸第一鉄、炭酸第一鉄、クエン酸第二鉄アンモニウム、重炭酸カリウムグルコン酸第一鉄、乳酸第一鉄、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄、リン酸鉄ナトリウム(二リン酸第二鉄)、一リン酸第二鉄(ピロリン酸第二鉄)、含糖酸化鉄、元素鉄などを挙げることができる。
【0017】
マンガン化合物としては、炭酸マンガン、硫酸マンガンなどを挙げることができる。
【0018】
コバルト化合物としては、塩化コバルト、炭酸コバルト、硫酸コバルトなどを挙げることができる。
【0019】
銅化合物としては、炭酸第二銅、クエン酸第二銅、グルコン酸第二銅、硫酸第二銅、リジン−銅複合体などを挙げることができる。
【0020】
亜鉛化合物としては、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫酸亜鉛などを挙げることができる。
【0021】
モリブデン化合物としては、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0022】
セレン化合物としては、セレン酸ナトリウム、亜セレン酸水素ナトリウム、亜セレン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0023】
フッ素化合物としては、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムなどを挙げることができる。
【0024】
ヨウ素化合物としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ素酸カリウムなどを挙げることができる。なお、リン、鉄、マンガン、カリウム、銅、モリブデン、ヨウ素、フッ素については、それらを高含有する天然物或いは加工品を、具体的に例示はしないけれど、それらも、当然、本発明のミネラル吸収促進剤にミネラル化合物として有利に配合することができる。また、これらのミネラル化合物は、その1種又は2種以上を、本発明のミネラル吸収促進剤の使用目的により、適宜配合することができ、その組み合わせは、同じ種類のミネラル化合物を2種以上組み合わせることも、及び/又は、異なる複数の種類のミネラル化合物を2種以上組み合わせることも、随意である。
【0025】
また、本発明のミネラル吸収促進剤に、環状四糖及び/又はこれらの糖質誘導体と共に使用するミネラル吸収促進剤としては、それ自身がミネラル吸収促進作用を有するもの、及び/又は、環状四糖及び/又はこれらの糖質誘導体の持つミネラル吸収促進作用を増強する作用を有するものであれば、何れでもよく、例えば、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キトオリゴ糖、ビートオリゴ糖、α,α−トレハロース、特開平7−143876号公報などに開示されたα−グルコシルα,α−トレハロースやα−マルトシルα,α−トレハロースなどのα,α−トレハロースの糖質誘導体、ラクトスクロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、エリスリトール、環状のジフラクトースなどの糖質、ビタミンD、フィロキノン、メナキノン、メナジオンなどのビタミンK類、アスコルビン酸、アスコルビン酸などのビタミン類やその誘導体、カルシトニン製剤、エストロゲン製剤、蛋白質同化ホルモン製剤、ビスホスホネートなどホルモン剤やポリフェノールなどを挙げることができる。また、ポリフェノールとしては、具体的には、フラボン類、フラボノール類、フラバノン類、フラバノノール類、アントシアニジン類、フラバノール類、カルコン類及びオーロン類など、それらの前駆体、アグリコン、配糖体、或いは、これらをメチル化、エチル化、メトキシ化、エトキシ化、硫酸化、配糖化などした誘導体などを挙げることができ、これらから選ばれる1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することも随意である。中でも、ヘスペレチン、ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジン、メチル化ヘスペリジン、ナリンゲニン、ナリンジン、酵素処理ナリンジン、ケルセチン、ルチン、酵素処理ルチン、エリオジクチン、エリオジクチオール、プロアントシアニジン、カテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、タンニン、ハマメリタンニンなどが、環状四糖及び/又はその糖質誘導体のもつミネラル吸収促進作用を効果的に増強することから、特に望ましい。また、カルシウムの吸収促進作用を有する亜鉛やマグネシウムなどのミネラル類も、当然、ミネラル吸収促進剤として、本発明のミネラル吸収促進剤に使用できる。
【0026】
本発明のミネラル吸収促進剤は、ヒトのみでなく、ウシ、ウマ、ブタなどの家畜、鶏、アヒルなどの家禽、タイ、ヒラメ、ハマチ、アサリ、ハマグリなどの養殖魚介類、エビ、カニなど養殖甲殻類、カイコ、ミツバチなどの昆虫類、ペットとして飼育されている甲殻類、犬、猫などの哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚介類などが使用の対象となる。
【0027】
また、本発明で使用する環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤は、そのままで、または必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤などと混合して、シラップ、ペースト、マスキット、粉末、結晶顆粒、球状、短棒状、板状、立方体、錠剤など各種形状に成型して使用することも随意である。
【0028】
さらに、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を含有する本発明のミネラル吸収促進剤は、酸味、塩から味、渋味、旨味、苦味などの他の呈味を有する各種物質とよく調和し、また、異味、異臭を低減することができ、更に、耐酸性、耐熱性も大きいので、一般の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの原料として有利に利用できる。そして、本発明のミネラル吸収促進剤を含有させた製品は、これを含有させない場合と同様に使用できる上に、これらの製品にはミネラル吸収促進作用、骨や歯などのカルシウム組織の強化作用が付与されることから、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の骨疾患、虫歯、歯周病などの歯疾患、腎結石などの泌尿器系疾患、高血圧、虚血性心疾患などの循環器系疾患、貧血、糖尿病、或いは、生体の恒常性機能の低下などの治療や予防の目的で、飲食品、医薬部外品、医薬品、その中間加工品や原材料として有利に利用でき、さらには、骨強化剤、カルシウム組織強化剤、異味、異臭の低減剤として利用することも随意である。また、本発明のミネラル吸収促進剤は、家畜、家禽、ペットなどの、飼料、餌料、ペットフードなどにも、同様に利用することができる。
【0029】
また、本発明のミネラル吸収促進剤は、例えば、調味料、複合調味料、各種の和菓子・洋菓子、パン、氷菓、シロップ、ペースト、野菜の加工食品、漬物、漬物の素、畜肉製品、魚介製品、珍味、惣菜食品、乳製品、清涼飲料水、各種プレミックス、即席食品、冷蔵食品、冷凍食品、チルド食品、レトルト食品、乾燥食品、さらには、離乳食、治療食、ドリンク剤、ペプチド食品、冷凍食品などの各種飲食物の製造に使用することができる。また、これらの飲食品は、ミネラル吸収促進能及び/又は骨強化能が付与されているので、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の組成物として有利に利用できる。また、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤を、家畜、家禽、その他蜜蜂、蚕、淡水魚或いは海水魚、甲殻類などの飼育動物用の飼料、餌料、ペットフードなどに含有させて、これらにミネラル吸収促進能及び又はカルシウム組織強化能を付与することも随意である。
【0030】
本発明のミネラル吸収促進剤を、対象とする組成物に含有させる方法に、特に制限はなく、目的の組成物が完成されるまでに、或いは、完成品に対して、含有させればよい。その方法としては、例えば、混和、混捏、溶解、融解、分散、懸濁、乳化、浸透、晶出、散布、塗布、付着、噴霧、被覆(コーティング)、注入、晶出、固化などの公知のものが適宜に選ばれる。
【0031】
本発明のミネラル吸収促進剤は、その有効成分の環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で、約0.1質量%(以下、本明細書では特に断らない限り、「質量」%を単に%と表記する。)以上、望ましくは、0.5%以上、さらに望ましくは1.0%以上含有するものが好適である。また、本発明のミネラル吸収促進剤は、ミネラルの吸収促進作用及び/又は骨強化作用を発揮できればよく、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体のみで構成されていてもよいし、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体の製造方法に由来するグルコース、イソマルトース、マルトース、オリゴ糖、デキストリンなどの糖質を含有していてもよい。逆に、本発明のミネラル吸収促進剤を含有する組成物が、アミノ酸などの分子内にアミノ基を含む生理活性物質などを有効成分として含む場合には、グルコースをはじめとする還元性糖質が混在するとメイラード反応などによりこの有効成分が変化し、該組成物の品質低下が予想される場合には、本発明のミネラル吸収促進剤は、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を、合計で98%以上、望ましく99%以上、さらに望ましくは99.5%以上含有するものが好適であり、或いは、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体と共存する還元性の糖質を水素添加して、その還元性を低減したものを使用することも可能である。また、環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体は安定な糖質なので、本発明のミネラル吸収促進剤を使用する組成物の効果や品質を低下させない限り、必要に応じて、分散性を高めたり、増量などの目的に応じて、還元性糖質、環状四糖及びこれの糖質誘導体を除く非還元性糖質、サイクロデキストリン、糖アルコール、食物繊維、水溶性多糖などの糖質、上記以外の甘味料、香辛料、酸味料、旨味料、酒、有機酸、無機酸、アルカリ剤、乳化剤、香料、色素、酸化防止剤、キレート作用を有する物質から選ばれるいずれか1種又は2種以上と併用することも随意である。さらに必要であれば、公知の保存料、旨味料、甘味料、安定剤、アルコール、殺菌剤などから選ばれるいずれか1種又は2種以上を適宜組み合わせて、適量併用することも随意である。
【0032】
さらに、本発明のミネラル吸収促進剤は、例えば、粉飴、ブドウ糖、マルトース、蔗糖、異性化糖、蜂蜜、メープルシュガーなどの糖質、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、レバウディオシド、グリチルリチン、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、サッカリン、グリシン、アラニン、アセスルファムK、スクラロースなどのような糖質、甘味料などから選ばれるいずれか1種または2種以上を適宜、適量、混合して使用してもよく、デキストリン、澱粉、乳糖などのような増量剤と混合して使用することもできる。
【0033】
また、本発明のミネラル吸収促進剤の1日当たり必要な摂取量は、ミネラル吸収促進剤が、ミネラル吸収促進作用及び/又は骨強化作用を発揮できる量であればよく、特に制限はないが、通常、体重1kg当たり、その有効成分である環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で約0.01g以上、望ましくは、約0.5g以上、さらに望ましくは、約1.0g以上が好適である。通常0.01g未満では、ミネラル吸収促進作用を効果的に発揮するには不充分である。また、本発明のミネラル吸収促進剤の1日当たり必要な摂取回数は、ミネラル吸収促進剤が、ミネラル吸収促進作用を発揮できる量の環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を摂取できる回数であればよく、特に制限はなく、一度に一日の必要量の全量を摂取してもよいし、数回に分けて摂取してもよい。また、本発明のミネラル吸収促進剤は、体質によっては、一度に摂取する量が多い場合に、おなかが緩くなる場合があるので、通常は、数回に分けて摂取するのが望ましく、とりわけ、食事の原材料として使用するか、食事と前後して摂取するのが望ましい。なお、本発明のミネラル吸収促進剤は、通常、そのままで、或いは、飲食品、医薬品、医薬部外品などの組成物として経口的に摂取すればよく、それが不可能な場合には、カテーテルなどを使用して、直接、胃や腸管内に注入することも随意である。
【0034】
以下、実験例に基づいて環状四糖又はこの環状四糖とこれの糖質誘導体の混合物を使用したミネラル吸収促進剤についてより詳細に説明する。
【0035】
実験例1
<環状四糖摂取によるラットのミネラル吸収への影響>
国際公開WO 01/090338号明細書に開示されているとおり、環状四糖は、食物繊維作用を有することが知られている。食物繊維は、ミネラルの吸収を阻害し、糞便中へのミネラルの排出を増強することが知られていることから(例えば、『食物繊維−基礎と臨床−』、株式会社朝倉書店(1997年出版)参照)、環状四糖はミネラルの吸収に何らかの影響を与えていると考えて、ラットのミネラル吸収に及ぼす環状四糖の影響を調べる実験を以下のように行った。
【0036】
<実験例1−1>
<ラットの飼育と体重の測定>
体重110g〜120gのウイスター系ラット(日本チャールズリバー株式会社販売、雄、5週齢)40匹を、表1に示す配合組成(%)の飼料で1週間馴化のために飼育した。馴化後、ラットをアットランダムに10匹ずつ4群に分け、各々、表1に示す、環状四糖を配合していない飼料(以下、「基本飼料」飼料という)、基本飼料に後述する実施例A−3の方法で調製した純度99.5%の環状四糖の無水結晶粉末を、無水物換算で、1%、2%或いは5%となるように配合した飼料の何れか1種を与えて、8週間の飼育試験を行った。基本飼料及び3種類の環状四糖含有飼料は、環状四糖とコーンスターチとの合計の配合割合が、何れの飼料でも、飼料の総質量の44.75%となるように調製した。また、試験終了1週間前から、カルシウム、マグネシウム、鉄、ナトリウム、カリウム、リン(以下、まとめて「ミネラル類」という場合がある)の代謝を検討するために、ミネラル類の非吸収マーカーとして、4種類の飼料の何れにも、0.5%の酸化クロム(Cr)を配合した飼料を、試験終了1週間前から使用した。ラットの飼育は、室温25℃で、12時間の明暗サイクルとし、飼料及び水は、自由摂取とし、試験終了時に、各群の各々の個体の体重を計測して、各群の個体の平均体重と試験期間中の増加体重の平均を求めた。その結果を表2に示す。飼育試験期間の8週間に、各群のラット1匹当たりに与えた飼料の総量、及び、一日体重当たりの環状四糖の平均摂取量を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
試験終了2日前に、ラットを代謝ケージに移し、2日分の糞を回収して、環状四糖の量、ミネラル類の量、及び、クロム量の測定を行った。また、試験終了後、各々のラットをエーテル麻酔下で解剖し、消化管を摘出して、空腸、回腸、盲腸、及び、結腸・直腸の各々臓器重量、並びに、各々臓器の内容物について、その内容物重量、環状四糖の量、ミネラル類の量、及び、クロム量の測定を行った。消化管を摘出したラットを、頚椎を脱臼させた後、右大腿骨を摘出して、その灰分量、カルシウム量、マグネシウム量、及び、リン量を測定した。環状四糖の定量法、ミネラル類、及び、クロムの測定法を以下に示す。
【0040】
<環状四糖の定量法>
飼料1gに85℃に加温した80%エタノール5mlを加え、15分間還流して糖質を抽出し、常法に従いTMS誘導体化して、ガスクロマトグラフィー装置(GC−16A、島津株式会社製造)に、OV−17充填カラム(2%Silicone OV−17 Chromosorb W/AW DMSC 80−100mesh、3mmID×2m、SUS、GLサイエンス社製造)を装着し、3μlの試料をチャージして、カラム温度を160℃で2分間保持した後、7.5℃/分で320℃まで昇温し、キャリアーとして窒素ガス(35ml/分)を使用して、環状四糖を定量した。また、空腸、回腸、盲腸及び結腸・直腸の各々の内容物、並びに、糞については、その0.05gをガスクロマトグラフィー用ミクロチューブに精秤し、五酸化リン入りのデシケーターに放置して乾燥後、飼料の場合と同様に、常法に従いTMS誘導体化して、ガスクロマトグラフィー装置で定量した。
【0041】
<カルシウム、マグネシウム、鉄、リン、クロムの定量法>
飼料2gを磁性ルツボに精秤し、加熱して炭化した後、さらに600℃に加熱して灰化し、灰分を恒量し、精密分析用塩酸(濃度20%、和光純薬株式会社)を、最終濃度が1%となるように加えて、ミネラルを抽出し試験試料とした。試験試料中の、カルシウム、マグネシウム、鉄、クロム量を、原子吸光光度法(Zeeman5100、パーキンエルマー株式会社販売)により定量した。なお、クロムについてはフレームレスを使用した。また、リンは、常法により、モリブデン青吸光光度法を用いて定量した。さらに、空腸、回腸、盲腸及び結腸・直腸の各々の内容物、並びに、糞は、その0.1gを、湿式灰化して、飼料の場合と同様に試験試料を調製して、定量した。また、解剖して取り出した右大腿骨を、105℃で15時間乾燥後、その乾燥重量を測定し、磁性ルツボに精秤して、飼料の場合と同様の方法により、灰化して、灰分量を測定後、そのカルシウム量、マグネシウム量、リン量を定量した。
【0042】
飼料、回腸内容物、盲腸内容物、及び、糞の中の環状四糖量の測定結果を表3に示す。また、これらの結果と下記表5に示す、飼料、回腸内容物、盲腸、及び糞の中のクロム量の測定結果に基づき、回腸内容物、盲腸内容物、及び糞の中の環状四糖の残存率を求め、その計算結果を表3に示す。環状四糖の残存率(%)は、クロムは全く生体に吸収されないものとして、飼料中のクロム量に対する環状四糖量の比率と、各々の内容物中或いは糞中のクロム量に対する環状四糖量の比率を基に、計算式:{(各々の内容物或いは糞中の環状四糖量/各々の内容物或いは糞中のクロム量)/(飼料中の環状四糖の量/飼料中のクロム量)}×100で求めた。
【0043】
【表3】

【0044】
表3から明らかなように、環状四糖を1%、2%或いは5%となるように配合した飼料で飼育したラットは、いずれも、回腸までは、90%以上の環状四糖が、分解をうけることなく残存していたものの、盲腸及び糞では、環状四糖が全く認められなかった。また、盲腸では、飼料に添加した環状四糖の量に依存した、乳酸をはじめとする有機酸量の増加と、pHの低下が観察された。これらのことから、環状四糖は、ラットの盲腸内の微生物により資化されることが示唆された。
【0045】
飼料中のミネラル類の量及びクロム量の測定結果を表4に示す。また、回腸、盲腸及び結腸・直腸の内容物中、並びに、糞中の、カルシウム量、マグネシウム量及びクロム量の測定結果を表5に、鉄量及びリン量の測定結果を表6に、各々示す。また、これらの結果に基づき、回腸内容物、盲腸内容物、及び糞の中のミネラル類の、積算の残存率を求め、各消化管までの積算の吸収率を計算した。その結果を表5、表6に示す。ミネラル類の吸収率(%)は、クロムは全く生体に吸収されないものとして、飼料中のクロム量に対するミネラル類の量の比率と、各々の内容物中或いは糞中のクロム量に対するミネラル類の量の比率を基に、計算式:100−{[(各々の内容物或いは糞中のミネラル類の量/各々の内容物或いは糞中のクロム量)/(飼料中のミネラル類の量/飼料中の環状四糖のクロムの量)]×100}で求めた。さらに、大腿骨の、乾燥重量、灰分量、カルシウム量、マグネシウム量、及び、リン量の測定結果を、表7に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
表5及び表6から明らかなように、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄の回腸及びそれより下部の消化管おける吸収率は、何れも、環状四糖の添加量に依存して、有意に増加した。また、表7から明らかなように、骨の乾燥重量、灰分量、カルシウム量、マグネシウム量、リン量が、何れも、環状四糖の飼料への配合量に依存して、対照に比して有意の増加を示した。この場合には、環状四糖の飼料への配合量が、2%と5%とでは、骨の乾燥重量には、差が認められなかった。これらのことから、環状四糖は、その摂取量に応じて、回腸或いはそれより下部の消化管におけるカルシウム、マグネシウム、リン及び鉄の吸収を促進する効果を有し、さらに、骨の、乾燥重量、灰分量、ミネラル類の量、骨密度を増加させ、骨を強化する作用を有することが確認された。また、環状四糖を摂取した場合のミネラル吸収の促進効果は、回腸で認められるにもかかわらず、回腸では環状四糖は、殆ど資化されていないことから、環状四糖の摂取によるミネラル類の吸収促進のメカニズムは、マルチトール、ラクトスクロースやフラクトオリゴ糖で報告されている大腸発酵とは別のメカニズムが関与していることが示唆された。
【0051】
実験例2
実験例1で、環状四糖による、ラットの消化管からのミネラル類の吸収促進が、回腸或いはそれより上部の消化管で起きていることが確認されたことから、ラットにおける、環状四糖のミネラル類の吸収促進作用が、消化管のどの部位に及ぼす影響なのかを確認する実験を以下のようして行った。すなわち、ウイスター系ラット(日本チャールズリバー株式会社販売、雄、9週齢)20匹を購入後、通常のラット用固形飼料で、3日間飼育し、エーテル麻酔下で、頚静脈より放血させた後、開腹して消化管を取り出した。この消化管を、空腸、回腸、結腸・直腸に分け、内容物を生理食塩水で洗浄した。空腸、回腸、結腸・直腸のそれぞれの中央部約10cmを切り出し、ガラス棒を用いて各々の腸管を反転させ、95%酸素と5%の二酸化炭素を含むガスでバブリングしている生理食塩水中に浸漬した。反転した腸管を5cm毎に切断し、その両端を、縫合糸で縛り、反転腸管sacを作成し、注射器を用いて、そのsac内に、30mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、125mM塩化ナトリウム、4mM塩化カリウム、10mMグルコース、1.25mM塩化カルシウム(2水塩)からなるsac内溶液を約0.5ml注入し、その重量を測定した。各腸管sacを、各々30mMトリス塩酸緩衝液(pH7.4)、125mM塩化ナトリウム、4mM塩化カリウム、10mMグルコース、10mM塩化カルシウム(2水塩)の溶液に、実験例1で使用したものと同じ環状四糖を50mM、100mM、或いは200mMとなるように添加したsac外液(95%酸素と5%の二酸化炭素を含むガスでバブリングしている)に浸漬した。浸漬後、15分或いは30分で、反転腸管sac取り出して、蒸留水で洗浄後、その内液を回収し、蒸留水を加えて、全量を25mlとして、この溶液中のカルシウム量を、カルシウムテストCワコー(和光純薬株式会社販売)を用いて、比色法で測定した。陰性対照として、糖質を添加していないsac外液を使用し、陽性対照として、環状四糖に代えて、腸管からのミネラルの吸収促進効果のあることが知られているマルチトールを200mMとなるように添加したsac外液を使用して、同様の実験を行った。カルシウムの吸収速度(nmol/分・cm)と、対照のカルシウムの吸収速度を100とした相対値を求めた。結果を表8に示す。
【0052】
【表8】

【0053】
表8から明らかなように、空腸、回腸、及び結腸・直腸をから調製した反転sacを、環状四糖及びマルチトールを含有するsac外液に浸漬した場合には、糖質を含まないsac外液に浸漬した場合に比して、何れもその濃度に依存して、カルシウムの吸収が促進された。また、環状四糖は、空腸及び回腸でのカルシウムの吸収を強く促進し、結腸・直腸では、200mMの添加でわずかに吸収を促進したのに対して、マルチトールは、回腸及び結腸・回腸でのカルシウムの吸収を強く促進した。この結果は、環状四糖が、回腸部におけるミネラル類の吸収を促進する効果があることを示した、実験例1の結果とよく一致している。また、消化管でのカルシウムの吸収は、空腸、回腸などの上部消化管では、細胞内のカルシウムトランスポーターによる能動輸送により行われ、結腸・直腸では、受動拡散的に行われることが知られており、マルチトールは、腸内発酵により有機酸を生成し、この受動拡散によるカルシウムの吸収を促進することが知られている。これらのことから、環状四糖は、マルチトールとは異なり、空腸、回腸などの上部消化管の細胞に作用して、細胞内のカルシウムトランスポーターによる能動輸送によるカルシウムの吸収を促進していると考えられる。また、実験例1において、環状四糖は、カルシウムと同様に、マグネシウム、リンなどのミネラル類の上部消化管での吸収も促進したことから、環状四糖は空腸、回腸などの上部消化管における、ミネラル類の能動的な吸収促進効果を有していると結論された。
【0054】
以上の実験結果から、環状四糖を含有する組成物は、生体内のミネラル吸収促進及び/又は骨強化に利用できることが判明した。
【0055】
以下に、本発明の環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤の具体的な例を実施例1〜実施例8で、このミネラル吸収促進剤を含有させた組成物を実施例9〜実施例29で具体的に例を挙げて説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
国際公開WO 01/090338号明細書に開示された実施例2の方法に準じて、馬鈴薯澱粉から、濃度80%、固形物当たり、グルコース0.6%、イソマルトース1.5%、マルトース12.3%、環状四糖63.5%、環状四糖にさらに1又は2個以上のグルコースが結合した環状四糖の糖質誘導体5.2%及びその他の糖質16.9%を含有するシラップ状のミネラル吸収促進剤を調製した。本品は、そのままで、ミネラル吸収促進剤及び/又は骨強化剤として用いるか、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例2】
【0057】
国際公開WO 01/090338号明細書に開示された実施例9に開示された方法に準じて(α−グルコシダーゼ及びグルコアミラーゼ処理はせず。)、トウモロコシ澱粉から、濃度73%、固形物当たり、グルコース4.1%、マルトース、イソマルトースなどの二糖類8.1%、マルトトリオースなどの三糖類4.6%、環状四糖35.2%、環状四糖にさらに1又は2個のグルコースの結合した環状四糖の糖質誘導体15.6%、その他の糖質32.4%を含有するシラップ状のミネラル吸収促進剤を調製した。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌料の材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例3】
【0058】
国際公開WO 01/090338号明細書に開示された実施例4の方法に準じて、コーンスターチを原料として調製した環状四糖含有シラップを、国際公開WO 01/090338号明細書の実施例6及び実施例7記載の方法に準じて精製、濃縮、乾燥・結晶化して、純度99.6%の環状四糖5含水結晶からなる粉末状のミネラル吸収促進剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【0059】
前記環状四糖5含水結晶をさらに、国際公開WO 01/090338号明細書に開示された実験例31或いは実験例32の方法に準じて乾燥し、環状四糖1含水結晶粉末、或いは、環状四糖無水結晶粉末からなるミネラル吸収促進剤を調製した。これらは、何れも、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例4】
【0060】
実施例3で得た環状四糖5含水結晶60質量部に対して、市販の無水結晶マルチトール(株式会社林原商事販売、商品名『マビット』)40質量部を混合して粉末状のミネラル吸収促進剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例5】
【0061】
実施例3で得た環状四糖5含水結晶50質量部に対して、市販のα,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)50質量部を混合し、粉末状のミネラル吸収促進剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
【実施例6】
【0062】
市販の食品級含水結晶α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)を、水に溶解し、60℃に加熱しながら、減圧濃縮して、トレハロースの濃度が75%の溶液を調製し、室温に放置して結晶を析出させ、該結晶を水で洗浄する操作を2回くり返した後、乾燥、粉砕して調製した、純度99.8%の含水結晶α,α−トレハロース粉末50質量部と実施例3で得た環状四糖5含水結晶50質量部とを均質に混合して、粉末状のミネラル吸収促進剤を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。また、本品は、高純度の環状四糖及びα,α−トレハロースで構成されているので、反応性が極めて低く安定なので、特に、分子内にアミノ基を含み、還元性の糖とメイラード反応を起こし、その品質に劣化を来すような組成物に対して好適に使用できる。また、本品は、直接、或いは、シュガーエステルなどを添加して、造粒、さらには、打錠して、顆粒、錠剤の形態での利用も容易である。
【実施例7】
【0063】
実施例1で得た環状四糖とこれの糖質誘導体との混合物を含有するシラップ70質量部に対して、アスコルビン酸2質量部、ビタミンE1質量部、グリセリン脂肪酸エステル0.5質量部を含有するシラップ状のミネラル吸収促進剤を調製した。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例8】
【0064】
実施例3で得た環状四糖5含水結晶70質量部に対して、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所販売)2質量部、酵素処理ヘスペリジン2質量部(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)を混合し、粉末混合物を得た。本品は、そのままで、或いは、これを、可食材料、医薬材料、飼餌材料などの原材料、又は、中間製品などに含有させることにより、ミネラル吸収促進用及び/又は骨強化用の飲食物、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料などの組成物の調製に有利に利用できる。
【実施例9】
【0065】
<ミネラル吸収促進用テーブルシュガー>
実施例3の方法で調製した環状四糖の5含水結晶からなる粉末状のミネラル吸収促進剤50質量部に対して、無水結晶マルチトール46質量部、糖転移ヘスペリジン(東洋精糖株式会社販売、商品名「αGヘスペリジン」)3質量部、スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社販売)1質量部を200質量部の水に溶解し、常法により、噴霧乾燥してミネラル吸収促進用の粉末甘味料を調製した。本品は、環状四糖及び糖転移ヘスペリジンを配合していることから、他の飲食品から摂取したミネラル類の吸収を促進することができる。
【実施例10】
【0066】
<ミネラル吸収促進用甘味料>
実施例3で調製した環状四糖の1含水結晶からなる粉末状のミネラル吸収促進剤5質量部、無水結晶マルチトール粉末(株式会社林原商事販売、商標『マビット』)94.5質量部、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(味の素株式会社販売、商品名「アスパルテーム」)0.5質量部を均質に混合後、常法により造粒して、ミネラル吸収促進用の顆粒状甘味料を調製した。本品は、環状四糖が、他の飲食品として摂取したミネラルの腸管からの吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用の甘味料として好適である。また、本品は、医薬品などの甘味付与剤としても好適である。
【実施例11】
【0067】
<ミネラル吸収促進用粉末油脂>
大豆サラダ油100質量部及びレシチン1質量部に水10質量部を室温で混合した後、これに実施例5で調製した粉末状のミネラル吸収促進剤100質量部を混合して粉末化し、篩にかけて、ミネラル吸収促進用の粉末油脂を得た。本品は、環状四糖を含有しているので、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、他の飲食品として摂取したミネラルの腸管からの吸収を促進されることから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードなどの原材料として好適である。
【実施例12】
【0068】
<ミネラル吸収促進用野菜ジュース>
市販野菜ジュース97.5質量物に、キシログルカン部分分解物1質量部、実施例2で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤1質量部、糖転移ナリンジン0.5質量部を加えて混合し、ミネラル吸収促進用の野菜ジュースを調製した。本品は、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、本品或いは本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。また、本品は、野菜特有のエグ味が低減されており、美味しい野菜ジュースであった。
【実施例13】
【0069】
<ミネラル吸収促進用ビール>
市販のビール調製キット(東急ハンズ通販クラブ販売、商品名「NBビール基本セット」)を購入し、その発酵用の溶液に、100質量部に対して、実施例1の方法で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤2質量部を添加、混合して、添付のマニュアルに従い、ビールを調製した。本品を飲むことにより、他の飲食品から摂取したミネラルの吸収が促進されることから、本品は、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、原材料として有利に利用できる。また、本品は、ビール特有の不快味及び/又は不快臭が低減されており、切れの良い、美味しいビールであった。
【実施例14】
【0070】
<ミネラル吸収促進用ニンジンエキス粉末>
ニンジンエキス1質量部を5倍濃縮したもの1質量部に対して、含水結晶トレハロース2質量部と実施例1で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤4質量部を添加して撹拌溶解したものを、常法により噴霧乾燥して、ミネラル吸収促進用ニンジンエキス粉末を調製した。本品は、環状四糖及びこれの糖質誘導体を含有しているので、本品、或いは、本品を用いて調製する飲食品、飼料、餌料などを摂取すると、他の飲食品から摂取されたミネラル類の吸収が促進されることから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。また、本品は、ニンジンエキスのエグ味が低減した美味しいニンジンエキス粉末であった。
【実施例15】
【0071】
<ミネラル吸収促進用粉末ローヤルゼリー>
冷凍生ローヤルゼリー1質量部に対して、粉末状のプロポリス0.2質量部、実施例3で調製した環状四糖の1含水結晶と無水結晶からなる粉末状のミネラル吸収促進剤を等量混合したもの9質量部を混合し、常法より粉砕して、ミネラル吸収促進用生ローヤルゼリーの粉末品を調製した。本品は、環状四糖及びローヤルゼリーが、他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。また、本品は、ローヤルゼリー特有の臭いが低減されており、食べ易い粉末ローヤルゼリーであった。
【実施例16】
【0072】
<ミネラル吸収促進用チョコクッキー>
小麦粉(薄力粉)140質量部、バター90質量部、チョコレート115質量部、砂糖360質量部、全卵200質量部、アーモンド200質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖の1含水結晶からなる粉末状のミネラル吸収促進剤50質量部、サンゴカルシウム2質量部を使用して、常法によりミネラル吸収促進用チョコクッキーを製造した。本品は、環状四糖により、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収が促進されることから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用に有利に利用できる。本品は、チョコレートを加熱する際に発生する2,3−ブタンジオンなどに起因する特有のムレ臭が低減された、美味しいチョコレートであった。
【実施例17】
【0073】
<ミネラル吸収促進用ゼリー>
フランボワーズ・ピューレ200質量部、グラニュー糖46質量部、実施例2の方法で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤12質量部、水飴50質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事、商標『トレハ』)122質量部、ペクチン5質量部、50%クエン酸水溶液3質量部、異性化糖27質量部、水適量を加えて混合し、溶解し、ブリックスが約78になるまで、ゆっくり煮詰めて、適当な型に流し込み、室温で冷却してミネラル吸収促進用のハードゼリーを調製した。本品は、環状四糖、これの糖質誘導体が、他の飲食などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用に有利に利用できる。
【実施例18】
【0074】
<ミネラル吸収促進用ハードキャンディ>
砂糖60質量部、α,α−トレハロース(株式会社林原商事販売、商標『トレハ』)20質量部、実施例1の方法で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤35質量部、アミノ酸混合物1.5質量部、水85質量部を加えて、常法により、ミネラル吸収促進用ハードキャンディを製造した。本品は、環状四糖及びこれの糖質誘導体が、他の飲食品から摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用などに有利に利用できる。
【実施例19】
【0075】
<ミネラル吸収促進用米粉パン>
予めグルテンを配合したパン用の米粉(斎藤製粉株式会社販売、商品名「こめの粉(パン用)」)400質量部、食塩8質量部、実施例3で調製した環状四糖5含水結晶を有効成分として含有する粉末状のミネラル吸収促進剤40質量部、上白糖12質量部、脱脂粉乳12質量部、生イースト1質量部、プルラン8質量部、水320質量部を加えて、縦型ミキサーで撹拌混合後、バター20質量部を添加してさらに捏ねパン生地を調製した。生地を25℃で50分間発行した後、適当な大きさに分割し、湿度75%、室温35℃で50間保持し、オーブンに入れて、上火温度180℃、下火温度180℃で40分間焼成し、ミネラル吸収促進用米粉パンを調製した。本品は、環状四糖を含有しているので、この米粉パンを食べることにより、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収が促進されることから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用などに有利に利用できる。本品は、酵母による特有の発酵臭が低減された美味しい米粉パンであった。
【実施例20】
【0076】
<ミネラル吸収促進用米飯>
水375質量部と実施例4で調製した粉末状のミネラル吸収促進剤13.5質量部を混合して調製した液に対して、予め水洗いして水切りした米300質量部をいれて1時間浸漬後、家庭用の炊飯器でそのまま炊飯してミネラル吸収促進用米飯を得た。本品は、環状四糖を含有しているので、この米飯を食べると、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラルの吸収が促進されることから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。本品は、米糠臭が低減された美味しい米飯であった。
【実施例21】
【0077】
<ミネラル吸収促進用魚肉練製品>
水晒ししたスケトウダラの生肉2,000質量部に対し、実施例5の方法で調製した粉末状のミネラル吸収促進剤105質量部、乳酸ナトリウム3質量部、プロアントシアニジン0.2質量部を加えて、スリ身を製造し、−20℃で凍結して冷凍スリ身を製造した。冷凍スリ身を90日間−20℃で冷凍保存後に解凍し、氷水150質量部に対して、グルタミン酸ナトリウム40質量部、馬鈴薯澱粉100質量部、ポリリン酸ナトリウム3質量部、食塩50質量部及びソルビトール5質量部を溶解しておいた水溶液100質量部を添加して擂漬し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80℃になるように蒸し上げた。次いで、室温で放冷した後、4℃で24時間放置してミネラル吸収促進用魚肉練製品を得た。本品は、環状四糖及びプロアントシアニジンが、体内のミネラル吸収促進をすることから、ダイエットの目的や、生活習慣病の予防或いは、脂質の摂取を制限された、肥満、高脂血症などの生活習慣病の患者用の食品、或いは、その素材として好適である。本品は、脂質の酸化や分解等に起因する異臭が低減された美味しい練り製品であった。
【実施例22】
【0078】
<ミネラル吸収促進用ベーコン>
食塩22質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有するミネラル吸収促進剤4質量部、砂糖1質量部、乳酸ナトリウム2質量部、ポリリン酸ナトリウ2.0質量部、アスコルビン酸0.5質量部、亜硝酸ナトリウム0.2質量部、水68.8質量部を混合して溶解し、ピックル液を調製した。豚の肋肉9質量部に対してピックル液1質量部を、肉全体にまんべんなく浸透するように時間をかけて注入後、常法によりスモークして、ミネラル吸収促進用ベーコンを調製した。スモーク後、一夜室温に放置し、スライスしたベーコンを真空包装して、10℃で保存した。本品は、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。
【実施例23】
【0079】
<ミネラル含有飲料>
砂糖25質量部、ラクトスクロース5質量部、キサンタンガム4.64質量部、ローカストビーンガム4.0質量部、タラガム3.4質量部、サイリュウムシードガム1.7質量部、アスコルビン酸1.2質量部、塩化ナトリウム1.2質量部、クエン酸(結晶)1.2質量部、クエン酸ナトリウム0.12質量部、塩化カリウム0.12質量部、乳酸カルシウム0.5質量部、硫酸マグネシウム0.03質量部、スクラロース0.05質量部香料、及び、実施例2の方法で調製したミネラル吸収促進剤50質量部を均一に混合した。この混合物8質量部を水92質量部に溶解し、ゲル状のミネラル飲料を調製した。本品は、環状四糖及びラクトスクロースが、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、スポーツ時のミネラルや水分の効率の良い補給に有利に利用できる。また、本品は、ゲル状であることから、水のように誤って気管に入ることも少なく、嚥下が困難な病者、老人、子供向けの水分補給、ミネラル補給剤としても好適である。また、本品は、ミネラル自体が示す苦味が低減され、砂糖やスクラロースの後味も改善されるので、嗜好性が改善された、風味のよい飲料である。
【実施例24】
【0080】
<苦汁>
実施例2の方法により調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤144質量部と市販の苦汁(讃岐塩業株式会社製)202質量部とを加え、70℃に加熱しながら完全に溶解させ、これを減圧濃縮して、固形物の濃度が63%の溶液を得た。本品は、ミネラル自体が示す苦味が低減されており、また、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、マグネシウム及び/又はカルシウムなどのミネラルを強化した、スポーツ飲料、健康食品、高齢者や病者向け食品の原料として好適であるばかりでなく、豆腐の用の凝固剤やその他飲食品はもとより、化粧品、医薬部外品、医薬品、飼料、餌料用の原料として利用することも随意である。
【実施例25】
【0081】
<マルチビタミン剤>
パルミチン酸レチノール5質量部、エルゴカルシフェロール5質量部、塩酸フルスルチアミン10質量部、リボフラビン5質量部、塩酸ピリドキシン10質量部、アスコルビン酸60質量部、酢酸トコフェロール10質量部、ニコチン酸アミド30質量部、シアノコバラミン0.01質量部、パントテン酸カルシウム40質量を撹拌混合し、これの1質量部に対して、実施例A−5の方法により調製した粉末状のミネラル吸収促進剤24質量部を混合して撹拌し、打錠機にて打錠して、マルチビタミンの錠剤を調製した。本品は、ビタミン特有の薬品臭が低減されており、また、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、加工原材料として有利に利用できる。また、本品は、長期保存後も、ビタミン類に特有の薬臭などの不快味及び/又は不快臭が低減され、吸湿もなく、ビタミン類の酸化や分解も抑制された、服用しやすいビタミン剤である。
【実施例26】
【0082】
<ミネラル吸収促進用の錠剤>
ガンマーオリザノール200質量部に対して、実施例3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有するミネラル吸収促進剤650質量部、糖転移ヘスペリジン50質量部、炭酸カルシウム4質量部、ステアリン酸マグネシウム2質量部を均質に混合し、常法により打錠して、1錠が250mgの錠剤を調製した。本品は、環状四糖及び糖転移ヘスペリジンが、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進し、カルシウム組織を強化することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の、予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして、そのままで、或いは、原材料として有利に利用できる。
【実施例27】
【0083】
<ミネラル含有錠剤>
沈降炭酸カルシウム75質量部、フマル酸第一鉄3質量部、炭酸マグネシウム12質量部、酢酸トコフェロール3質量部、アスコルビン酸5質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有するミネラル吸収促進剤200質量部、シュガーエステル1質量部を均質に混合し、常法により打錠して、1錠が250mgの錠剤を調製した。本品は、ミネラル自体が示す苦味が低減されており、また、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進し、カルシウム組織を強化することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化の目的、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして有利に利用できる。
【実施例28】
【0084】
<ミネラル剤>
沈降炭酸カルシウム75質量部、フマル酸第一鉄3質量部、炭酸マグネシウム12質量部、酢酸亜鉛0.2質量部、炭酸マンガン0.01質量部、セレン酸ナトリウム0.001質量部、アスコルビン酸2−グルコシド5質量部、糖転移ルチン1質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有するミネラル吸収促進剤200質量部を均質に混合してミネラル剤を調製した。本品は、カルシウム、鉄、マグネシウムをはじめとするミネラル自体が示す苦味、金属味、金属臭などの異味、異臭が低減されており、また、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進しカルシウム組織を強化することから、そのままで、或いは、常法により打錠して、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化の目的、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の予防或いは治療用の飲食品、医薬品、医薬部外品などとして、或いは、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして利用することも、さらには、それらの加工原料としても有利に利用できる。
【実施例29】
【0085】
<ミネラル含有ビタミン飲料>
硝酸チアミン10質量部、リボフラビン5質量部、塩酸ピリドキシン10質量部、アスコルビン酸2−グルコシド(株式会社林原生物化学研究所製)55質量部、ニコチン酸アミド30質量部、シアノコバラミン0.01質量部、パントテン酸カルシウム40質量部を混合したもの0.15質量部、アミノエチルスルホン酸1質量部、市販の苦汁(讃岐塩業株式会社製)0.1質量部、アセスルファムK0.01質量部、実施例3の方法で調製した環状四糖5含水結晶を含有するミネラル吸収促進剤5質量部を精製水93.7質量部に加えて攪拌、溶解し、ミネラル含有ビタミン飲料を調製した。本品は、ミネラル及びビタミン類自体が示す苦味や薬品臭が低減されており、また、環状四糖が、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進し、カルシウム組織を強化することから、ミネラルの不足しがちな食生活のヒト、骨強化の目的、さらには、骨粗鬆症や代謝異常などの、ミネラルの不足により発生する生活習慣病などの疾患の予防或いは治療用、ミネラルを補給する必要のある動物の飼料、餌料、ペットフードとして有利に利用できる。
【実施例30】
【0086】
<ミネラル吸収促進用配合飼料>
小麦麩30質量部、脱脂粉乳35質量部、米糠10質量部、ラクトスクロース高含有粉末10質量部、総合ビタミン剤10質量部、魚粉5質量部、第二リン酸カルシウム5質量部、炭酸カルシウム3質量部、液状油脂3質量部、酢酸マグネシウム2質量部、糖転移ルチン1質量部、食塩2質量部、硫酸コバルト0.001質量部、モリブデン酸アンモニウム0.001質量部、実施例2の方法で調製したシラップ状のミネラル吸収促進剤5質量部を配合して、ミネラル吸収促進用配合飼料を製造した。本品は、環状四糖、これの糖質誘導体及び糖転移ルチンが、本品或いは他の飲食品などから摂取したミネラル類の吸収を促進することから、ミネラルの補給を必要とする動物用の飼料として好適であり、家畜、家禽、ペットなどのための飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したとおり、本発明は、ヒトを含む動物のミネラル吸収促進に使用することのできる、グルコースを構成糖とする非還元性糖質である環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤、及び、このミネラル吸収促進剤を含有するミネラル吸収促進用の組成物に関するものである。しかも、環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体は、経口摂取しても安全で、且つ、非常に安定であることから、本発明による環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤の利用分野は、飲食品分野、化粧品分野、医薬部外品、医薬品分野など多岐に渡る。本発明は、この様に顕著な作用効果を有する発明であり、産業上の貢献は誠に大きく、意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を有効成分として含有するミネラル吸収促進剤。
【請求項2】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体とともに、ミネラル化合物及び/又はミネラル吸収促進作用を有する物質から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求の範囲第1項に記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項3】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖及び/又はこれの糖質誘導体とともに、これらの糖質を除く単糖、オリゴ糖、糖アルコール、サイクロデキストリン、ビタミン、水溶性多糖、香辛料、酸味料、旨味料、酒、有機酸、無機酸、乳化剤、香料、色素の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項4】
ミネラル化合物が、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、リン、セレン、フッ素、ヨウ素の化合物から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項又は第3項記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項5】
ミネラル吸収促進作用を有する物質が、カゼインホスホペプチド、ビタミン、ポリフェノール及び/又はオリゴ糖から選ばれるいずれか1種又は2種であることを特徴とする請求の範囲第2項乃至第4項に記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項6】
ビタミンが、ビタミンD、ビタミンK、L−アスコルビン酸及び/又はその誘導体から選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項乃至第5項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項7】
ポリフェノールが、ヘスペレチン、ナリンゲニン、ケルセチン、ヘスペリジン、酵素処理ヘスペリジン、ナリンジン、酵素処理ナリンジン、ルチン、酵素処理ルチン、プロアントシアニジンなどのフラボノイド、及び、カテキン、エピガロカテキンから選ばれるいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項乃至第6項に記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項8】
オリゴ糖が、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ラクトスクロース、大豆オリゴ糖、コージオリゴ糖、ガラクトシルグルコシド、α,α−トレハロースの糖質誘導体、α,α−トレハロース及び/又はα,β−トレハロースのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求の範囲第2項乃至第7項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項9】
サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}で示される環状四糖、及び/又は、これの糖質誘導体を、合計で、無水物換算で、0.1質量%以上含有することを特徴とする請求の範囲第1項乃至第8項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項10】
含カルシウム組織強化剤としての請求の範囲第1項乃至第9項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項11】
骨強化剤としての請求の範囲第1項乃至第9項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項12】
異味及び/又は異臭の低減剤としての請求の範囲第1項乃至第9項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤。
【請求項13】
請求の範囲第1項乃至第12項のいずれかに記載のミネラル吸収促進剤を含有することを特徴とするミネラル吸収促進用の組成物。

【国際公開番号】WO2005/007171
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511818(P2005−511818)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009809
【国際出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】