説明

ミネラル調整水

【課題】 本発明は、ヒトが安心して日常的に飲用できるミネラル調整水であって、呈味に優れ、口当たり、喉ごしがよく、その品質を安定に保持し得るミネラル調整水であって、工業的に安価かつ大量に、しかも、容易に製造できるミネラル調整水を提供することを課題とする。
【解決手段】 カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、及びリチウム(Li)を下記濃度範囲で含むことを特徴とするミネラル調整水を提供することにより、前記課題を解決する。
カルシウム(Ca) : 50,000〜150,000ng/ml
ナトリウム(Na) : 8,000〜30,000ng/ml
マグネシウム(Mg): 5,000〜20,000ng/ml
カリウム(K) : 1,000〜4,000ng/ml
マンガン(Mn) : 0.1〜10.0ng/ml
ホウ素(B) : 0.1〜6.0ng/ml
リチウム(Li) : 0.1〜6.0ng/ml

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、及びリチウム(Li)を所定の濃度範囲で含むことを特徴とするミネラル調整水に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康への関心が高まるにつれ、水への関心が増大しつつある。我々が日常的に利用している水としては、河川水、水道水、地下水、井戸水、湧き水、鉱水、温泉水、冷泉水、湖沼水、海水、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターなどの水を例示できる。その内、水道水は、日本国内においては、非特許文献1に示された水道法第4条第2項の規定に基づく『水質基準に関する省令』に定められた基準を満たす水である。水道水を含め、上記他の水のいずれも、ヒトを含む生体が必要とする各種ミネラルを含んでいる。ヒトにおいては、特定のミネラル(約30種類)が欠乏すると機能異常や代謝異常が惹起されることが知られている。これらミネラルは必須ミネラルと呼ばれ、例えば、特許文献1、2には、斯かる必須ミネラルなどを強化した飲用水が開示されている。ところが、ミネラル強化水には、ミネラルの機能性を重視するあまり、必須ミネラルなどの各種ミネラルが、とかく必要量以上に配合される傾向にあり、そのために水の呈味、口当たり、喉ごしが悪くなったり、また、そのような水を日常的に多飲する場合には、ミネラルの過剰摂取による障害が危惧されている。また、現在市販されている飲用水の中には、それら飲用水の原水を採取する気象状況、季節等の違いによりミネラル含有量が変動し、その結果、呈味、口当たり、喉ごしに変化を生し、品質を安定に保持できないなどの欠点があった。
【0003】
斯かる状況下、ヒトが安心して日常的に飲用することのできるミネラル調整水であって、呈味、口当たり、喉ごしに優れ、その品質を安定に保持し得るミネラル調整水であって、しかも、安価に製造し得る新規なミネラル調整水が鶴首されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−60506号公報
【特許文献2】特開2005−7362号公報
【非特許文献1】厚生労働省令第百一号、『水質基準に関する省令』(平成15年5月30日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒトが安心して日常的に飲用でき、呈味に優れ、口当たり、喉ごしがよく、その品質が安定に保持されたミネラル調整水であって、工業的に安価かつ大量に、しかも、容易に製造できるミネラル調整水を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決することを目的とし、飲用水中に含まれている各種ミネラル含量に着目して鋭意研究を続けた結果、ミネラルの内、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、及びリチウム(Li)を特定の濃度範囲で含むミネラル調整水が前記課題を解決することを新規に見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明のミネラル調整水は、ヒトが比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い、ヒトが安心して日常的に飲用できるミネラル調整水であって、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、その品質が安定に保持されたミネラル調整水であって、工業的に安価かつ大量に、しかも、容易に製造できるミネラル調整水である。また、本発明のミネラル調整水は、河川水、水道水、地下水、井戸水、湧き水、鉱水、温泉水、冷泉水、湖沼水、海水、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、及びボトルドウォーターから選ばれる1種又は2種以上のヒトが飲用することのできるミネラル含有水を原料とし、これを蒸留水、脱イオン水、及び超純水から選ばれる1種又は2種以上の水で希釈する工程を経由して得られるものであることから、万一、原料として用いるミネラル含有水中に極微量と雖も環境ホルモンやダイオキシンなどの生体にとって有害な物質が含まれている場合であっても、これら有害物質は希釈されることから、本発明のミネラル調整水は、原料のミネラル含有水と比べ、生体にとってより安全な水である。しかも、本発明のミネラル調整水は、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点をも有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のミネラル調整水は、ヒトが飲用することのできる河川水、水道水、地下水、井戸水、湧き水、鉱水、温泉水、冷泉水、湖沼水、海水(深層海水を含む)、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、ボトルドウォーターなどの水(以下、纏めて「原水」と言う。)を原料として製造することができる。前記原水の内、日本国内において供給されている水道水は、水道法第4条第2項の規定に基づく『水質基準に関する省令』に定められた水質基準を満たす、ヒトが安心して飲用することのできる安全な水である。その詳細については割愛するが、前記水質基準によれば、例えば、水道水に含まれるミネラルとして許容されるマンガン(Mn)濃度は0.05mg/L以下、ホウ素(B)濃度は1.0mg/L以下、亜鉛(Zn)濃度は1.0mg/L以下、セレン(Se)濃度は0.01mg/L以下、カルシウム(Ca)濃度は300mg/L以下、ナトリウム(Na)濃度は200mg/L以下、マグネシウム(Mg)濃度は300mg/L以下とされている。なお、本発明のミネラル調整水に配合されているリチウム(Li)濃度については特に規定されていない。本発明において、水道水を原水として用いる場合には、通常、微生物を殺菌するために添加されている、次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンなどの遊離塩素を公知の手法により、予め除去して用いるのが望ましい。
【0009】
また、前記原水の内、ナチュラルウォーター、ミネラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、及びボトルドウォーターは、日本国内においては、食品衛生法によりその水質と安全性が規定されている、ヒトが安心して利用することのできる安全な水である。
【0010】
上記原水中には、通常、本発明のミネラル調整水が必須とするミネラルの一部と、必須とはしない他の複数のミネラルが量の多寡は別にして含まれている。その内、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルは、一般に、水の呈味に影響し、少な過ぎると淡泊な味となり、逆に、多過ぎると苦味、渋味などがでるとともに、胃腸障害を引き起こすことが知られている。上記原水中に含まれるミネラルの種類や濃度は、通常、その由来、調製方法に依存して異なるものの、本発明のミネラル調整水を調製するに際し、原水として用いる水を含め、従来公知のミネラル含有水の中に、本発明のミネラル調整水と同じ組成を有するものは一つとして存在しない。その理由として、本発明のミネラル調整水は、通常、1種又は2種以上の原水からなる水を準備し、これを、必要に応じて、本発明のミネラル調整水が必須とするミネラルが所定の濃度範囲となるように、ミネラルを含まない水を用いて希釈するか、必要に応じて、希釈する前及び/又は後に、公知の活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂、イオン交換膜、逆浸透膜などを用いる1種又は2種以上の脱塩方法を適用して、原水中に含まれる一部又は全部のミネラル濃度を低減ないしは除去し、必要に応じて、食品添加物として添加することのできるカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、及びマンガンから選ばれる1種又は2種以上のミネラルを含むミネラル給源を添加して人為的にミネラル濃度を所定の濃度範囲に調整して製造されるものだからである。
【0011】
以下、本発明のミネラル調整水の製造方法の代表例について具体的に述べる。まず、原料として用いる1種又は2種以上の原水を準備し、原水中に含まれる各種ミネラル含有量を斯界において公知の誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)などの手段により正確に分析する。分析対象ミネラルとしては、本発明のミネラル調整水に係るミネラルの他、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、タリウム(Tl)などのミネラル濃度を測定する。また、必要に応じて、上記以外のミネラルの濃度についても適宜測定する。
【0012】
ところで、日本国内における原水は、一般にカルシウムやマグネシウム含有量が比較的少ない軟水と呼ばれる水であるのに対し、欧州などにおける原水は、一般に、カルシウムやマグネシウム含有量が比較的多い硬水と呼ばれる水である。本発明のミネラル調整水を製造するに際しては、国産及び欧州産の1種又は2種以上の原水を適宜組み合わせて用いることも随意である。
【0013】
次いで、目的とする本発明のミネラル調整水が所定のミネラル組成となるように、上記分析結果に基づいて、適宜の原水を1種選択するか、2種以上の原水を適宜の配合割合で混合した後、これをミネラルや他の不純物を実質的に含まない、例えば、脱イオン水、蒸留水、及び超純水などから選ばれる1種又は2種以上の希釈用の水(以下、単に「希釈水」と言う。)を用いて、通常、体積比で数倍から数百倍以上希釈する。必要に応じて、希釈工程の前及び/又は後に、公知の活性炭、ゼオライト、イオン交換樹脂、イオン交換膜、逆浸透膜などを用いる1腫又は2種以上の脱塩方法を適用して、原水中に含まれる一部又は全部のミネラル濃度を低減したり、希釈工程の前及び/又は後に、食品原料として使用することが認められ、市販されているミネラル給源として、例えば、マンガン化合物を酵母に取り込ませたマンガン酵母、及び、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、及びカリウムの水酸化物や塩類(硝酸塩、硫酸塩、臭素酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、乳酸塩など)から選ばれる1種又は2種以上を添加して、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、ホウ素、及びリチウムが下記濃度範囲となるように調整する。なお、本発明のミネラル調整水における前記ミネラルの一部又は全部が下記濃度範囲を外れる場合には、本発明における所期の作用効果の一部又は全部が著しく低減するか全く発揮されなくなる。
【0014】
カルシウム(Ca) : 50,000〜150,000ng/ml
ナトリウム(Na) : 8,000〜30,000ng/ml
マグネシウム(Mg): 5,000〜20,000ng/ml
カリウム(K) : 1,000〜4,000ng/ml
マンガン(Mn) : 0.1〜10.0ng/ml
ホウ素(B) : 0.1〜6.0ng/ml
リチウム(Li) : 0.1〜6.0ng/ml
【0015】
本発明のミネラル調整水の内、下記のミネラルを下記濃度範囲で含むものは、本発明のより好ましい実施態様である。
【0016】
カルシウム(Ca) : 8,000〜140,000ng/ml
ナトリウム(Na) : 8,000〜25,000ng/ml
マグネシウム(Mg): 8,000〜16,000ng/ml
カリウム(K) : 2,000〜4,000ng/ml
マンガン(Mn) : 0.2〜8.0ng/ml
ホウ素(B) : 0.2〜5.0ng/ml
リチウム(Li) : 0.1〜5.0ng/ml
【0017】
本発明のミネラル調整水は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、ホウ素、及びリチウムを特定の濃度範囲で含むことを必須とするものであって、上記ミネラル以外の他のミネラルは必須とはしない。しかしながら、本発明のミネラル調整水においては、本発明の所期の目的を逸脱しない範囲であれば、上記ミネラル以外の他のミネラルを含むことを妨げない。
【0018】
本発明のミネラル調整水の安全性、保存安定性を高めるために、最終製品を得るまでの工程において、通常、斯界において公知の膜濾過法、遠心分離法などにより不純物を除去した後、紫外線滅菌法、加熱滅菌法、放射線滅菌法、加圧滅菌法、及び蒸気滅菌法から選ばれる公知の1種又は2種以上の滅菌方法により滅菌した後、適宜の形状、容量の容器に無菌的に充填し、密栓して、本発明のミネラル調整水とする。本発明のミネラル調整水を充填する容器としては、ガラス製容器、金属製容器、紙製容器、更には、ポリエチレン製容器、ポリエチレンテレフタレート製容器、及びポリプロピレン製容器などのプラスチック容器などを例示できる。これら容器の容量に制限はないが、必要に応じて、例えば、10ml以上、0.1乃至2L、5乃至25L、或いは100乃至2,000Lの容器を適宜選択して用いことができる。更に、本発明のミネラル調整水を大量に輸送する場合には、タンクローリーなどに充填して輸送することも随意である。また、本発明のミネラル調整水は、公知の手法により、脱気したり、適量の酸素を添加したり、炭酸ガスを添加して炭酸水とすることも随意である。本発明のミネラル調整水のpHは、通常、5.8乃至8.6の範囲にあり、本発明の目的を逸脱しない範囲で、公知の飲用水用のpH調整剤又は電気分解などの手法を適用して、所望のpHに調整することも随意である。また、本発明のミネラル調整水は、その目的を逸脱しない範囲で、原水に含まれる他のミネラルを含むことを妨げない。更に、必要に応じて、グルコース、フラクトース、マルトース、イソマルトース、スクロース、ラクトース、ラクトスクロース、パラチノース、α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、β,β−トレハロース、パノース、ラフィノース、オリゴ糖(例えば、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースなどの三乃至十糖類)、グルコシルトレハロース、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳糖果糖オリゴ糖及び異性化糖などの単糖類、二糖類、三糖類以上の糖質及びこれらの糖質を含む糖質組成物;シクロデキストリン、環状四糖、分岐環状四糖などの糖類;エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、パラチニット、及び還元澱粉分解物などの糖アルコール;甘味剤としてのスクラロース、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、グリチルリチン、α−グリコシルグリチルリチン、ラカンカ甘味物、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル、及びサッカリンなどの高甘味度甘味料;ヘスペリジン、α−グリコシルヘスペリジン、ナリンジン、α−グリコシルナリンジン、ルチン及びα−グリコシルルチンなどのバイオフラボノイド及びそれらの誘導体;L−アスコルビン酸やL−アスコルビン酸2−グルコシドとその塩類及びエステルなどのL−アスコルビン酸誘導体;及び食物繊維などの1種又は2種以上の他の成分を、通常、20質量%以下、好適には、10質量%以下、より好適には、0.01乃至1質量%配合することも随意である。
【0019】
しかしながら、本発明のミネラル調整水における所定のミネラルが所定の濃度範囲を逸脱する場合には、本発明における所期の作用効果の一部又は全部が著しく低減するか発揮されなくなることから、本発明のミネラル調整水を製造するに際しては、希釈工程及びミネラル濃度調整工程において得られる中間製品及び最終製品のミネラル濃度を既述のICP−AESやICP−MSなどの手段により正確に分析し、その分析結果に基づいて、本発明のミネラル調整水における所定のミネラルが所定の濃度範囲となるように調整する。
【0020】
以上述べたとおり、本発明のミネラル調整水は、生体にとって安全で、安価かつ大量に、しかも、容易に入手可能な原料を用いて製造されるものであること、また、製造に必要な装置類としては、斯界において日常的に用いられている液体混合容器・混合装置、濾過装置、殺菌装置、液体充填装置などを用いて製造できることから、本発明のミネラル調整水は、工業的に安価かつ大量に、しかも、容易に製造することができる。
【0021】
以下、実験に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0022】
実験1:官能試験
健康な成人男女20名(20乃至50歳の男性8名、女性12名)を被験者として、後述する実施例2で得た本発明のミネラル調整水(試験水)の呈味、口当たり、及び喉ごしについて調べる官能試験を行った。対照の水としては、日本国内におけるX市の水道水(対照1)、日本国内におけるY市の水道水(対照2)、市販のA社のミネラルウォーター(対照3)、及び市販のB社のミネラルウォーター(対照4)を用いた。なお、試験水及び対照1乃至4の水のミネラル組成は、表1に示すとおりのものであった。試験手順としては、まず、被験者を無作為にグループI乃至IVの4群(各群男性2名、女性3名)に分け、グループIは試験水と対照1の水、グループIIは試験水と対照2の水、グループIIIは試験水と対照3の水、グループIVは試験水と対照4の水とを比較する群とした。各グループの被験者5人に対し、昼食前、一人当たり、試験水及び対照1乃至4のいずれかの水を各50ml(10℃)ずつ飲用させ、試験水の呈味、口当たり、及び喉ごしについて総合的に評価させ、対照1乃至4の水と比べ、「非常に良好:(◎)」、「良好:(○)」、「変わらない:(△)」、及び「不良:(×)」の4段階の評価をさせた。結果は表2に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表2の結果から明らかなとおり、グループI乃至IVのいずれにおいても、試験水は、対照1乃至4の水と比べ、呈味、口当たり、及び喉ごしについての総合評価において「非常に良好:(◎)」、「良好:(○)」又は「変わらない:(△)」と評価され、被験者20人中、試験水を「不良:(×)」と評価した者は一人もいなかった。
【0026】
本試験結果から、本発明のミネラル調整水は、呈味、口当たり、喉ごしが優れた水であることが判明した。なお、具体的なデータは示さないが、本試験において対照として用いたミネラルウォーター以外の複数種類の市販のナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、及びボトルドウォーターについても本試験と同様にして試験したところ、本発明のミネラル調整水は、市販の水と比べ、呈味、口当たり、喉ごしが優れていると評価された。ちなみに、上記市販水のいずれも、本発明のミネラル調整水が必須とするミネラルを含まないか、それらミネラルの一部又は全部が所定の濃度範囲から外れており、本発明のミネラル調整水とはミネラル組成が異なっていた。なお、具体的なデータは示さないが、後述する実施例2乃至5に示す本発明のミネラル調整水のいずれも、実施例1のミネラル調整水と同様、本発明における所期の作用効果を発揮する。
【0027】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例になんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
<ミネラル調整水>
原水として、市販のミネラルウォーターである『コントレックス(Contrex)』(ネスレウォーターズフランス社製)1,250質量部に超純水98,750質量部を添加して混合し、これに、予めマンガン給源としてのマンガン酵母(メディエンス株式会社製)1gを超純水200mlに添加し混合し、膜濾過(0.22μm)して除菌しておいたものを2質量部添加し、次いで、塩化カルシウム4.96質量部、塩化ナトリウム5.60質量部、塩化マグネシウム六水和物7.50質量部、及び塩化カリウム0.700質量部、を添加して均一に攪拌混合した後、膜濾過(0.22μm)して除菌し、10L容容器に無菌的に充填して本発明のミネラル調整水を得た。
【0029】
本品をサンプリングしてそのミネラル組成を『マルチ CCD−ICP発光分析装置』(スペクトロ社製)を用いる誘導結合プラズマ発光分析法により分析した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
本品は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有している。
【実施例2】
【0032】
<ミネラル調整水>
塩化カルシウム0.927質量部、塩化ナトリウム1.36質量部、塩化マグネシウム六水和物0.00038質量部、塩化カリウム0.77質量部、塩化マンガン四水和物0.0018質量部、ホウ酸0.0060質量部、及び塩化リチウム0.0027質量部を超純水50,000質量部に均一に攪拌混合し、膜濾過(0.22μm)して除菌し、500ml容ガラス製容器に無菌的に充填して、本発明のミネラル調整水を得た。
【0033】
本品をサンプリングしてそのミネラル組成を『マルチ CCD−ICP発光分析装置』(スペクトロ社製)を用いる誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により分析した。その結果を表4に示す。
【0034】
【表4】

【0035】
本品は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有している。
【実施例3】
【0036】
<ミネラル調整水>
実施例2に準じて、理論値で、カルシウム濃度が150,000ng/ml、ナトリウム濃度が30,000ng/ml、マグネシウム濃度が20,000ng/ml、カリウム濃度が4,000ng/ml、マンガン濃度が10.0ng/ml、ホウ素濃度6.0ng/ml、及びリチウム濃度が6.0ng/mlとなるように、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム六水和物、塩化カリウム、塩化マンガン四水和物、ホウ酸、及び塩化リチウムを超純水に均一に攪拌混合して、膜濾過(0.22μm)して除菌し、2L容ペットボトルに無菌的に充填して、本発明のミネラル調整水を得た。
【0037】
本品のミネラル組成を『マルチ CCD−ICP発光分析装置』(スペクトロ社製)を用いる誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により分析した。その結果を表5に示す。
【0038】
【表5】

【0039】
本品は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有している。
【実施例4】
【0040】
<ミネラル調整水>
実施例2に準じて、理論値で、カルシウム濃度が50,000ng/ml、ナトリウム濃度が8,000ng/ml、マグネシウム濃度が5,000ng/ml、カリウム濃度が1,000ng/ml、マンガン濃度が0.1ng/ml、ホウ素濃度0.1ng/ml、及びリチウム濃度が0.1ng/mlとなるように、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム六水和物、塩化カリウム、塩化マンガン四水和物、ホウ酸、及び塩化リチウムを超純水に均一に攪拌混合して、膜濾過(0.22μm)して除菌し、250ml容スチール缶に無菌的に充填して、本発明のミネラル調整水を得た。
【0041】
本品のミネラル組成を『マルチ CCD−ICP発光分析装置』(スペクトロ社製)を用いる誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)により分析した。その結果を表6に示す。
【0042】
【表6】

【0043】
本品は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有している。
【実施例5】
【0044】
<ミネラル調整水>
実施例2及び実施例3で得た本発明のミネラル調整水を体積比で等量混合して、均一に攪拌混合し、膜濾過(0.22μm)して除菌し、10L容ポリエチレン製容器に無菌的に充填して、本発明のミネラル調整水を得た。
【0045】
本品は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有している。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したとおり、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、マンガン、ホウ素、及びリチウムを特定の濃度範囲で含む本発明のミネラル調整水は、呈味に優れ、口当たり、喉ごしもよく、ヒトが日常的に比較的多量飲用しても、腹痛や下痢などを誘発し難い安全なミネラル調整水であって、工業的に大量かつ安価に、しかも、容易に製造できる利点を有する。本発明のミネラル調整水は、そのまま飲料水として利用することも、また、緑茶、紅茶、コーヒー、ココアなどの各種飲料用水として、また、食品製造用水として有利に用いることができる。
【0047】
本発明は、斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、及びリチウム(Li)を下記濃度範囲で含むことを特徴とするミネラル調整水。
カルシウム(Ca) : 50,000〜150,000ng/ml
ナトリウム(Na) : 8,000〜30,000ng/ml
マグネシウム(Mg): 5,000〜20,000ng/ml
カリウム(K) : 1,000〜4,000ng/ml
マンガン(Mn) : 0.1〜10.0ng/ml
ホウ素(B) : 0.1〜6.0ng/ml
リチウム(Li) : 0.1〜6.0ng/ml
【請求項2】
ヒトが飲用することのできるミネラル含有水を、蒸留水、脱イオン水、及び超純水から選ばれる1種又は2種以上の水で希釈する工程を経由して得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のミネラル調整水。
【請求項3】
ヒトが飲用することのできるミネラル含有水が、河川水、水道水、地下水、井戸水、湧き水、鉱水、温泉水、冷泉水、湖沼水、海水、ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター、及びボトルドウォーターから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項2に記載のミネラル調整水。
【請求項4】
飲用水としての請求項1乃至3のいずれかに記載のミネラル調整水。
【請求項5】
ガラス製容器、金属製容器、紙製容器、ポリエチレン製容器、ポリエチレンテレフタレート製容器、又はポリプロピレン製容器に充填されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のミネラル調整水。

【公開番号】特開2010−116327(P2010−116327A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288738(P2008−288738)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【Fターム(参考)】