説明

ミラミスチンを含有する薬剤

本発明は、一水和物の形態又は非水和の形態のベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムクロリドを含めた薬剤に関する。前記薬剤は、さらに加えて、適した医薬溶媒中のジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又はジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アミンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品及び製薬業の分野に関する。本発明は、ヒト及び動物用の治療製剤及び予防製剤の開発、製造及び使用に利用されることができる。
【0002】
同時にアミド基を含有する第四級アンモニウム塩の合成及び使用は、US特許2459062(D1)に初めて記載されている。殊に実施例1には、ベンゼン中での[(ミリスタミド)プロピル]ジメチルアミンと塩化ベンジルとの反応による[ミリスタミド]−プロピル)−ジメチルベンジル−アンモニウムクロリドの合成が記載されている。
【0003】
この特許には、製造された生成物の活性がStafの標準菌株を基準にして示されている。発明者によって記載された生成物は、室温にて、54℃の融点を有する半硬物(第3欄、第69行目〜第70行目)である。ここで、実施例1には、得られた生成物の構造を確認する他の試験は記されない。しかし、医用に適した純粋な製剤の分離に関するこの発明による試験は、[ミリスタミド]−プロピル)−ジメチルベンジル−アンモニウムクロリドが、室温にて、90℃を超える融点を有する結晶質であることを示す。
【0004】
そのことから想定して、主生成物と、塩化ベンジルからの残留物と、溶媒(ベンゼン)とからの混合物を得て、そして該混合物の作用を発明者は試験するものと考えることができる。それにも関わらず、係る生成物の医療目的のための使用は、塩化ベンジル及びベンゼンの高い毒性に基づき不可能である。
【0005】
第3欄、第62行目によれば、基礎となる[(ミリスタミド−)プロピル]−ジメチルアミンはまた固体であり、このことは、この発明による試験からも証明される。この理由から、実施例1で得られた生成物は、基礎となるアミドアミンと最終化合物とからの混合物ではない。そのうえ、基礎となるアミドアミンからの残留物が存在することは可能ではなく、それというのも、実施例1では十分な量の塩化ベンジルが反応において用いられているからである。
【0006】
さらになお、水中での純粋な[ミリスタミド]−プロピル)−ジメチルベンジル−アンモニウムクロリドは20%を超える濃度を有する溶液をもたらさないことと、基礎となる[(ミリスタミド−)プリピル]−ジメチルアミンは水に全く溶解せず、また水によって他の溶媒から他の溶媒中に分離させられることを一言しておきたい。これは同様に、実施例1に従った最終生成物が[(ミリスタミド−)プロピル]−ジメチルアミンからの混合物を含むことができないことの証拠として当てはまる。なぜなら、第3欄、第73行目〜第74行目では、25%の透明な水溶液の製造について記載されているからである。
【0007】
一水和物の形態又は非水和の形態のベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムクロリドをベースとする一連の薬剤が公知である。これらの薬剤は、特定種の病気の治療及び予防に役立っている(SU1796185(D2)、EP1634590(D3)、WO93/00892(D4)、RU2157214(D5)、UA67795(D6)、UA64800(D7)、RU2161961(D8)、RU2188005(D13)、RU2184534(D14)、RU2164135(D15)、RU2177314(D16)、RU2185157(D17)、RU2185156(D18)、RU2173142(D19)、UA30143(D20))。これらの薬剤の欠点は、そのつどの溶液の有効範囲が非常に限られているか又は他の適用における効果が不十分であるか又は提案された技術的な解決策と比べて効果がより低いことである。具体的ではあるものの、しかしながら、包括的ではない幾つかの比較データが、本明細書の実施例に挙げられている。
【0008】
さらなる提案は、生物学的活性化合物中での第三級アミンの使用を予定している。これらのアミンは、ジメチル[3−ミリストイルアミノ]−プロピル]アミン([(ミリスタミド−)プロピル]−ジメチルアミン)を含むアミド基を含有する(例えばUS WO2007/136558)(D10)。ポリヘキサメチレンビグアニジンを有する組成物中での係る化合物は、多成分組成物中で様々の表面の殺菌のために用いられる。しかし、それらは係る濃度の場合、高い毒性ゆえに薬剤として用いられることはできない。US2004/0058924(D9)は、眼の純粋な真菌性感染の治療のためにアミドアミンを該組成物中で用いること並びにアカントアメーバとそれらの組合せ物を用いることが可能であることを示している。US特許2004/0033208(D21)では、アミドアミンを眼及び鼻の真菌病の治療及び予防のために抗生物質との組成物中で用いることが提案されている。しかし、これらの組成物は、細菌性感染の場合には低い効果を示し、かつ内臓の治療のために又は例えば殺精子製剤として用いられることはできない。
【0009】
WO95/08266(D22)では、コンタクトレンズの清浄用の相応する組成物中で、係るタイプのアミドアミンを用いることが提案されている。しかし、これらの組成物は、眼又は例えば耳及び頸部の病気の治療のために用いられることはできない。該組成物はまた、腔内手術において又は性病の予防手段として用いられることはできず、それというのも、それらは多成分性であり、かつ該成分の高い濃度を有しているからである。
【0010】
係るタイプのアミンオキシドの適用は、US4093711(D11)に記載されている。この特許では、種々のアミンオキシド、殊にジメチルアミノプロピルミリスタミドN−オキシドの1%水溶液を、歯の衛生治療用の組成物中で、歯石除去を容易にし、かつ歯石形成を予防するために用いることが提案されている。この場合、用いられたアミドアミンオキシドは、歯垢の軟化剤及び乳化剤の機能を果たし、かつ薬剤ではない。
【0011】
アミドアミンオキシド並びに同時に第四級アンモニウム塩及び第三級アミドアミン及び/又はこのアミンのオキシドが用いられている医薬組成物を、我々は、入手可能な文献ソースから引き出すことはできなかった。
【0012】
本発明に最も近い先行技術は、欧州特許005132(D23)に開示された薬剤である。それは、ベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムクロリド([ミリスタミド]−プロピル)−ジメチルベンジル−アンモニウムクロリド)の一水和物の形態の第四級アンモニウム化合物から成る。製薬的に溶解する媒質として、この薬剤は水及び/又はアルコールを、製剤の液体形態用に含有する。この薬剤の他の投薬形態の場合、それは、植物性由来、動物性由来又は合成由来の任意の基剤を含有する。この製剤は、良好な抗菌効果並びに抗真菌効果を有している。この薬剤の"インビトロ"実験中の抗菌作用は相当高かった。しかしながら、該抗菌作用は、様々な配合物が"インビトロでの"予防及び治療のために用いられる場合、高いタンパク質負荷の影響下で本質的に減少する。他方で、実質的な濃度増加が、刺激作用を強める原因となる。そのうえまた、この薬剤は、多くの基剤及び他の目的に適った作用を有する薬剤と効果的に組み合わせられることはできないが、なぜなら、その際に、複雑な化合物が形成され、この化合物は沈殿するからである。
【0013】
ヒト及び動物における様々の由来の病気の治療及び予防のための薬剤として、以下の組成物が提案される:適した医薬溶媒中のジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又はジメチル[3−[ミリストイルアミノ)プロピル]アミンを有する、一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル3[ミリストイルアミノ]プロピル)−アンモニウムクロリド。
【0014】
外用においては、この場合、許容毒性にて、該組成物は、以下の成分の割合(質量%)で最大効果を示す:
− 一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル3[ミリストイルアミノ]プロピル)−アンモニウムクロリド0.008〜5.0
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又はジメチル[3−(ミリストイルアミノ−)プロピル)]アミン0.00005〜1.0
− 製薬的に溶解する適した媒質100まで。
【0015】
十分な効果を示しつつヒト及び動物にとって最小の刺激作用及び毒性は、以下の成分の割合(質量%)における粘膜又は口腔使用への適用のための組成物が示す:
− 一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル3[ミリストイルアミノ]プロピル)−アンモニウムクロリド0.008〜2.0
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又はジメチル[3−(ミリストイルアミノ−)プロピル)]アミン0.00005〜0.01
− 製薬的に溶解する適した媒質100まで。
【0016】
医薬溶媒として、水及び/又はアルコール並びに植物性由来、動物性由来又は合成由来の任意の液状、ゲル状の軟膏基剤、洗浄基剤又は固体基剤を、投与の仕方若しくは使用箇所に応じて用いることが提案される。
【0017】
そのうえまた、この薬剤と他の作用を有する薬剤との多数の組合せ物が提案される。他の作用を有する薬剤は、例えば、局所麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン、ピロメカイン又はトリメカイン)、塩化ナトリウム、抗浮腫剤(Antioedemmittel)(キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン又はプソイドエフェドリン)、コルチコステロイド(トリアムシノロン、ベタメタゾン、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、ハロメタゾン又はデキサメタゾン)、殺菌剤及び/又は殺ウイルス製剤(メトロニダゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、アシクロビル又はリマンタジン)を包含する。
【0018】
本発明は、予防及び治療のための多様な作用物を発展させることを可能にする。これらの作用物は、広範な作用スペクトル及び高い効率、僅かな刺激作用及び毒性作用並びに免疫調節作用、麻酔作用、抗浮腫作用及び消炎作用を示す。これにより、薬剤を、より多くの数の疾患のために適用することが可能になる。該製剤は、伝染性疾患及び炎症性疾患の治療及び予防のための作用物として推奨される。それらには、泌尿生殖器系、腸領域及び胃領域の特異性疾患並びに非特異性疾患も、鼻咽頭及び眼の疾患も含まれる。性行為感染症、ヘルペス及びHIV感染症予防のための作用物として、並びに殺精子剤、殺菌剤及び消毒剤としても適している。
【0019】
技術的な本解決策は、利用した成分を一緒に適用した場合に、公知の先行技術からは容易に推測することができない意想外の相乗効果が現れることを明らかにした。
【0020】
本製剤の効用及び確認された効果は、以下の実施例を用いて説明されるが、ただし、これらの実施例に制限されない。
【0021】
実施例1
技術的な本解決策を裏付けるために、本特許出願の製剤の組成物の種々のヴァリエーションを用いた。第1表には、いくつかの試験した組成物、具体的には、下記で説明する実施例において用いた組成物を挙げている。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2
ヒト胎児由来の腎臓細胞のインビトロでのコロナウイルス(ヒトコロナウイルス OC43)の試験培養に関する最小発育阻止濃度(MHK)の測定。組成物Z1(6:1の比における2つの成分)及び比較のためのプロトタイプとしてD3に従った製剤(純粋なベンジルメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムクロリド)と純粋なジメチル[3−(ミリストイルアミノ−)プロピル]アミンオキシド(AA)とを用いた。実験は、以下の図解に従って平行して実施した:
【表2】

【0024】
3つの一連の実験を、製剤を4回希釈して行った。引き続き、コロナウイルスに対するそれぞれのMHKを突き止めた。実験の結果は、第2表に挙げている。
【0025】
【表3】

【0026】
第2表に記したデータから明らかなように、Z1は、コロナウイルスの不活性化作用に関して双方の個々の主剤より優れており、かつ相乗効果を示す。
【0027】
実施例3
皮膚並びに結合組織膜及び膣粘膜への本出願の製剤の局所刺激作用をデンジクネズミ及びウサギを使って試験した。尿道及び膀胱の粘膜への局所刺激作用はイヌを使って試験した。
【0028】
測定したデータからわかることは、皮膚への組成物Z4及びZ9の適用が、40日間の経過の中で、目に見える変化も組織変化も誘発しなかったことである。製剤中の成分の全濃度を5.0質量%まで高めると、適用30日目に僅かな乾皮症と表皮の些末な萎縮症が生じた。
【0029】
同時に、D8、D20及びD23では、純粋なAChの溶液がすでに1質量%を超える濃度で皮膚刺激性をもたらし、その際、より高い濃度(2〜3質量%)では10〜15日目からずっと高い皮膚変化を引き起こした。
【0030】
70%アルコール中の純粋なAAの0.01%溶液を適用した場合、皮膚刺激性はすでに適用10日間で現れた。
【0031】
塩化ナトリウム等張溶液中での本特許出願の組成物(Z5)の溶液を、ウサギ及びテンジクネズミの眼に10日間にわたり0.15質量%の成分の全濃度で滴下した。これは粘膜に何らの刺激作用も誘発しなかった(ドレイズ尺度に従った評価=0、Ogur等級分け(the Ogur classification)に従った評価=グループA)。同時に、D23に従った0.05質量%を超える製剤の濃度は、結合組織膜の刺激作用を引き起こした(ドレイズ尺度に従うと8〜10点、Ogur等級分け(the Ogur classification)に従う評価=グループB)。水中での本特許出願の組成物(AZ、Z10)の0.05%溶液20mlずつを、10日間にわたり1日に4回、雄犬の尿道に滴下した。この治療後、動物の振る舞いに何らの変化も観察されなかった。尿分析、血液検査及びイヌの尿道、膀胱及び他の器官の結合組織膜の組織学的検査の結果は、基準から逸脱していなかった。
【0032】
同様に、Z7及びZ8(軟膏及びエーロゾル)を滴注した場合、雌の動物の膣の粘膜における形態的及び組織的な変化は確認されなかった。
【0033】
同時に、D4、D8及びD23は、すでに2分の1〜5分の1の濃度で刺激をもたらし、このことは相乗効果の存在を示すものである。
【0034】
実施例4
殺精子作用の調査を、WHOにより推奨された方法に従って行った。そのために、ヒト精子を様々の濃度のAZと混合した。引き続き、精子の運動性を顕微鏡で調べた。他の特性値(pH、メチレンブルーの減少率、子宮頸粘液との接触面の検査、フルクトース値(Fruktosespiegel)等)も調査した。18〜23歳の男性の計17人分の精子を調べた。実験結果は、本特許出願の製剤の最適な濃度、すなわち、精子の運動が20秒以内に止む濃度が、0.02質量%であることを示していた。製剤のより高い濃度では、精子が即時に動かなくなるのみならず、精液溶解も引き起こした。
【0035】
実施例5
性病における本特許出願の予防作用を、ウサギの実験梅毒をモデルとして用いて調査した。実験は、56匹のチンチラ種のウサギを使って実施した。ウサギは、経皮的方法によって、蒼白性スピロヘータ(ニコルス株及びZKVI−8[Zentrales Institute fuer Haut und Geschlechtskrankheiten])の新たに調製された懸濁液で感染させた。感染から30分、60分、120分、180分及び240分後に、患部の皮膚をZ6又はD23で治療した。対照グループからのウサギは、蒸留水で治療した。全ての動物は、6〜12ヶ月にわたり臨床制御及び血清制御下のもとにあった。制御のために、ワッセルマン反応(RW)、梅毒トレポネーマ運動抑制試験及び免疫蛍光反応を用いた。それらは感染から1.5ヶ月後に2〜3ヶ月毎で行った。同様に、同じ菌株からのスピロヘータの懸濁液によるリンパ節の不活化及び陰嚢皮膚の再感染の方法も用いた。実験結果が示していたのは、実験用ウサギをZ6並びにD23で感染の時点から30分〜2.5時間以内に処理すると、梅毒からこれらの動物を100%保護できることである。同時に、D23について、0.01%より低い濃度だと、感染の時点から30分後に100%の結果は得られない。
【0036】
実施例6
実験用動物(ネズミ、ウサギ、テンジクネズミ、イヌ、計100匹を超える動物)における化膿した傷及び腹膜炎のモデルの治癒効果を、一般に承認された方法に従って調査した。その際、細菌学的試験法、形態学的試験法、組織学的試験法及び免疫学的試験法を用いた。
【0037】
得られたデータは、AZの高い治癒活性を示していた。AZは、水溶液、軟膏及びエーロゾルとして、実験用動物における化膿性炎症性疾患及び腹膜炎用に適用される。AZは、プロトタイプ及び純粋な成分と比較して、化膿した傷の治療に際してより効き目のある製剤であることがわかった(第3表)。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例7
本特許出願の製剤のネズミにおける火傷モデルの治癒効果を調べた。ネズミの除毛した背中の面に市販の器具を使って接触的に熱による火傷をもたらした。治療を火傷から24時間後に開始した。その際、軟膏及びエーロゾル(Z7及びZ8)を用いた。比較のために、プロトタイプによるD6及びD17も適用した。測定した結果は、第4表に挙げている。
【0040】
第4表のデータから、Z7及びZ8による治療の場合に創面の確かな減少が8日後に開始することが結論される。これはD6及びD17の場合より4日早い。この減少は相乗効果に因るものと言うことができる。
【0041】
【表5】

【0042】
実施例8
角膜の化膿性疾患及び炎症性疾患における効果を調べた。実験は、16匹のチンチラ種のウサギを使って実施した。ウサギの重さは2〜2.5kgであった。角膜への化膿性及び炎症性の作用は、黄色ブドウ球菌株 209 Pの24時間培養の懸濁液を角膜中に投与することで発生させた。2日〜4日目に、13匹のウサギの角膜に潰瘍が生じた。潰瘍は3×6mmの大きさを持っており、その基部に化膿した分泌物を有していた。同時に炎症反応を観察した:結膜炎、眼瞼痙攣等。
【0043】
試験のために選別したウサギを3つのグループに分けた。第一のグループからの動物はZ2で治療した。第二のグループからの動物はD7及びD15による点眼(プロトタイプ、ATPによる点眼)で治療した。第三のグループ、つまり対照グループからの動物の患眼に、塩化ナトリウムの等張溶液を滴下した。製剤は一日3回試験全体にわたって滴下した。
【0044】
全ての動物を毎日観察した。その際、実験用動物及び対照動物の角膜における変化の推移を、先に記載した方法に従って調べた。さらに、黄色ブドウ球菌株 209 Pの存在を確かめるために、ミートブロス−ペプトン−培養基にウサギの角膜の洗浄液接種を行った。この実験の結果は、第5表に挙げている。
【0045】
【表6】

【0046】
ここに挙げたデータは、化膿した分泌物及び黄色ブドウ球菌の検出が、Z2で治療した全ての動物の場合4日目に、そしてATPで治療した全ての動物の場合6日目に終わることを証明している。同時に、治療しなかった全ての動物においても、化膿した分泌物を実験時間全体にわたり観察した。
【0047】
膿浸潤物の吸収は、Z2で処理した全ての動物の場合には3日早く開始して終わり、ATPで治療した全ての動物の場合には治療の開始から3日目に開始しかつ5日目に終わった。Z2及びATPで治療した全ての動物において、膿浸潤物の吸収の初めから終わりまでの期間は、治療の開始からそれぞれ4日間と10日間であった。角膜の上皮化は、全ての動物において、Z2及びATPそれぞれの治療の開始から約10日目と約16日目とに始まった。
【0048】
したがって、上記のデータから、Z2が角膜の化膿性炎症の治療に際して高活性な作用物を示すことを結論付けることができる。その際、Z2の治癒効果は、工業的に製造されている(商品名"Okomistin")ATP(プロトタイプによる点眼)より高い。
【0049】
実施例9
消炎性効果を調べた。その際、Z3及びベータメゾン0.025%を含有する組み合わされた軟膏の合理的な組成物を、アレルギー性皮膚疾患の外面治療のために用いた。プロトタイプとの同じ組成物は、均一な調和性をもたらさず、かつ薬剤として用いられることはできない。
【0050】
それゆえ、ネズミにおけるエーロゾルによる浮腫のモデルにおける消炎効果を調べた。その際、その効果と、消炎ために一般に用いられる軟膏"Lorinden S"及び対照グループ(治療していない)とを比較した。Z3で治療したネズミにおける浮腫の現れ方は、参照動物におけるより2.67倍小さく、かつ参照製剤を用いた場合より1.14倍小さかった。この実験結果は、第6表に示している。
【0051】
【表7】

【0052】
第6表に挙げたデータは、Z3の軟膏が特に消炎効果を示すことを証明している。それはエーロゾルによる浮腫を平均して62.4%減少させ、またその効果は、比較に値する"Lorinden S"軟膏の効果よりいくぶん上回る。
【0053】
実施例10
坐剤物(Suppositorienmasse)の殺菌特性の試験
Z11の抗菌作用を、成分の効果と比較して、固体培養基への拡散による"インビトロ"実験の間に試験した。
【0054】
実験的調査中、試験用微生物として以下のものを選択した:
・ グラム陽性球菌(黄色ブドウ球菌 ATCC 6538);
・ 酵母様菌類(カンジダ・アルビカンス ATCC 885−653)
抗菌効果を調べるために、試験培養として、参照菌株の黄色ブドウ球菌 ATCC 6538を使用した。この菌株は、ウクライナのD.K.SabolotnyーInstitut for Mikrobiologie und Virusologieから得ている。
【0055】
抗真菌効果を調べるために、試験培養として、同所で得られた参照菌株のカンジダ・アルビカンス ATCC 885−653を用いた。実験を行う前に、各々の培養の純度について調べた。さらに、培養毎に、形態的特性及び培養特性に関してのその標準特性を調べた。
【0056】
抗菌効果は、寒天培養基に拡散させることによって以下の通りに確かめた:培養基を溶かし、45℃の温度まで冷却し、かつ試験培養の懸濁液で感染させた。微生物負荷は、約1×107KBE/mlであった。微生物で汚染された培地20ml毎にペトリ皿に注いだ。その後、この培地を固めたままにした。寒天培養基の層には、平均8mmの凹みができていた。試験されるべき製剤Z11を、60℃の温度で溶かし、かつ前もって準備していた凹みに0.1ml毎で加えた。
【0057】
比較のために、D20(D23)0.07%若しくはAO 0.07%若しくはAA 0.07%を有する坐剤を調合した。
【0058】
比較のために、ミラミスチン(MYRAMISTIN)物質(D23)の水溶液を、テストされるべき製剤に相応する濃度で調べた。接種し、かつサーモスタット中で24時間にわたり35℃の温度で培養した。
【0059】
培養時間が経過した後、微生物の生長が示さない(阻止域)箇所の平均を測った。製剤を有する凹みを周辺全体で0.1mmの精度で測定した。各実験を3回行った。
【0060】
調べられるべき製剤の抗菌作用の結果は、拡散法による"インビトロ"実験の間に突き止め、該結果は第7表から読み取ることができる。
【0061】
【表8】

【0062】
第7表から、この特許出願の組成物の相乗効果も同様に読み取ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムクロリドを含む薬剤において、該薬剤が、さらに、適した医薬溶媒中のジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又はジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アミンを有することを特徴とする薬剤。
【請求項2】
前記成分の比が、以下のように:
− 一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]プロピル)−アンモニウムクロリド0.008〜5.0質量%
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又は
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アミン0.00005〜1.0質量%
− 適した医薬溶媒100質量%まで
で形成されていることを特徴とする、請求項1記載の薬剤。
【請求項3】
前記成分の比が、以下のように:
− 一水和物の形態若しくは非水和の形態のベンジルジメチル(3−[ミリストイルアミノ]プロピル)−アンモニウムクロリド0.008〜2.0質量%
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アンモニウムオキシド及び/又は
− ジメチル(3−[ミリストイルアミノ]−プロピル)−アミン0.00005〜0.01質量%
− 適した医薬溶媒100質量%まで
で形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の薬剤。
【請求項4】
前記薬剤が、さらに、以下の一連の塩酸塩からの局所麻酔薬:リドカイン、ブピバカイン、ピロメカイン又はトリメカインを0.1〜5.0質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項5】
前記薬剤が、さらに、塩化ナトリウムを0.6〜1.0質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項6】
前記薬剤が、さらに、キシロメタゾリン、オキシメタゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン又はプソイドエフェドリンの一群からの抗浮腫剤を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項7】
前記薬剤が、さらに、トリアムシノロン、ベタメタゾン又はフルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、ハロメタゾン又はデキサメタゾンの一群からのコルチコステロイドを0.1〜3.0質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項8】
前記薬剤が、さらに、メトロニダゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、アシクロビル又はリマンタジンの一群からの殺菌剤及び/又は殺ウイルス製剤を0.01〜5.0質量%の量で含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項9】
医薬溶媒としてアルコール及び/又は水を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項10】
医薬溶媒として、植物性由来、動物性由来又は合成由来の任意の液状、ゲル状の軟膏基剤、洗浄基剤又は固体基剤を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の薬剤。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の薬剤を用いて、様々の病因及び局在化による伝染性疾患及び化膿性炎症性疾患を治療及び予防するための方法。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の薬剤を用いて、眼、外耳及び内耳、口腔、頸部及び鼻咽頭の並びに歯科医学における伝染性疾患、真菌性疾患及び化膿性炎症性疾患を治療及び予防するための方法。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の薬剤を用いて、胃腸管及び泌尿生殖器系の伝染性疾患、真菌性疾患及び化膿性炎症性疾患を治療及び予防するための方法。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の薬剤を用いて、腔内手術及び他の手術における術後期間中の伝染性疾患及び化膿性炎症性疾患を治療及び予防するための方法。
【請求項15】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の薬剤を用いて、伝染性疾患、真菌性疾患及び化膿性炎症性疾患並びに皮膚火傷及び粘膜火傷を治療及び予防するための方法。
【請求項16】
請求項1から10までのいずれか1項記載の薬剤を用いて、ウイルス起源の疾患を治療及び予防するための方法。

【公表番号】特表2013−519695(P2013−519695A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553213(P2012−553213)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000691
【国際公開番号】WO2011/101113
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512216126)メガインファーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【氏名又は名称原語表記】Megainpharm GmbH
【住所又は居所原語表記】Woerthersee−Sueduferstrasse 163 c5, 9082 Maria Woerth, Austria
【Fターム(参考)】