説明

ミラーアレイ、ミラー素子およびミラーアレイのアライメント方法

【課題】より容易にアライメントを行うことができるミラーアレイ、ミラー素子およびアライメント方法を提供する。
【解決手段】基板51上には、ミラー52’の下面を押圧する突起51bが設けられている。この突起51bによりミラー52’が予め所定の角度に傾向しているので、そのミラー52’を所定の角度に傾向させるための駆動電圧を供給しなくてもMEMSミラーアレイのアライメントを行うことができる。この結果、簡易な装置構成でアライメントを容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーアレイ、ミラー素子およびアライメント方法に関し、特に、アライメントパタンを有するミラーアレイ、ミラー素子およびそのアライメント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信の分野では、1つの波長に1つの光信号を対応させ、波長多重して伝送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)技術により、1本の光ファイバにより大容量の光伝送を行うことが実現されている。このような光通信技術の発展に伴って、光信号を電気信号等に変換することなく経路を切り替える光スイッチが脚光を浴びている。この光スイッチを実現するための技術として、MEMS(Micro Electro Mechanical system)技術によるマイクロミラーを用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。このマイクロミラーを用いた光スイッチの一例を、図14に示す。
【0003】
図14に示す光スイッチは、入力ポート101と、出力ポート102a〜102dと、レンズ103と、このレンズ103を介して入力ポート101から導入される信号光を偏向させ、レンズ103を介して任意の出力ポート102a〜102dに選択的に入射させるミラー104aを備えたMEMSミラー素子104と、ミラー104aの偏向角を制御する制御装置105とを備えている。この入力ポート101、出力ポート102a〜102dおよびレンズ103は、スイッチング機能を持たない光デバイス群であり、説明の便宜上、スイッチング素子であるMEMSミラー素子と区別し、光学系と言うこととする。ここで、MEMSミラー素子104は、ミラー104aと、このミラー104aに対向する駆動電極(図示せず)とから構成され、駆動電極に制御装置105から駆動電圧が印加されると、ミラー104aと駆動電極との間の電位差により発生する静電引力によりミラー104aを吸引して、ミラー104を任意の方向へ回動させる。
【0004】
MEMSミラー素子104は、制御装置105に電源が供給されていない状態において、入力ポート101から導入される信号光を入力ポート101および出力ポート102a〜102dのいずれにも入射させない方向に偏向するように配置されている。ミラー104aの初期傾斜角が設定されている。これにより、光スイッチの電源がオフの場合に、ハイパワーの光信号を伝搬している光ファイバを入力ポート101に接続しても、光信号が入力ポート101および出力ポート102a〜102dのいずれにも到達しないので、出力ポート102a〜102dに接続されているデバイスの破壊や通信障害等を防ぐことができる。
さらに、上記光学系からMEMSミラー104aに入射する光の入射角を、MEMSミラー104aの駆動電極への印加電圧(V)と傾斜角(θ)との関係における二次微分係数d2θ/dV2の符号と、光学系の光透過率(L:対数表示)とMEMSミラー104aの傾斜角との関係における二次微分係数d2L/dθ2の符号とが、互いに反対となるようにシフトさせることにより、MEMSミラー駆動電極への印加電圧と光学系の光透過率との関係(L−V特性)の線形性を向上させ、より広い光透過率範囲にわたってVOA精度と安定性を高めることができる。
【0005】
このような光スイッチを組み立てる場合、入力ポート101から導入される光は、MEMSミラー素子104のミラー104aを駆動しなければ、出力ポート102a〜102dのいずれにも光結合しない。このため、ASE光等のモニタ光を入力ポート101から導入して、ミラー104aからの反射スペクトル形状を観察し、MEMSミラー素子104の最適位置を確認するといった、簡便なアライメント手法を採ることは難しい。その一方で、入力ポート101から導入された光がミラー104aの反射面からわずかでも外れて漏光を発生すると、光学系が先に述べたような光入射角のシフトを有していても、光学系を構成する各部品や周辺の構造物の間で迷光となり、予期しない反射を引き起こす。これらは、挿入損失の増加量としては0.5dBに満たないレベルであって、クロストーク、損失リップル、群遅延特性など、様々な光学特性を劣化させる要因となる。このため、光スイッチの組み立てにおいては、信号光のビームがミラー104aによってクリッピングされないように、MEMSミラー素子104と他の光学系との高精度なアライメントを行うことが重要となる。
【0006】
例えば、光スイッチの光学系が、図15に示すように、MEMSミラー素子104に対して上述したような光入射角のシフトを持たない場合は、入力ポート101から導入された光はミラー104aで反射され、ミラー104aが駆動されていない状態、すなわちMEMSミラー素子104に電圧が印加されていない状態では、入力ポート101と対抗する出力ポート102dに結合する。また、図16に示すように、入力ポート101がレンズ103の光軸上に配置されている場合は、入力ポート101から導入された光は、そのまま戻って入力ポート101に結合する。
【0007】
そこで、従来では、複数のMEMSミラー素子104を備えたMEMSミラーアレイの基部にアライメントパタンを設け、入力ポート101から導入した光をそのアライメントパタンに照射して、その反射光を所定の光ポートから出力させ、光スペクトルアナライザにより観察されるその反射光の光スペクトル形状に基づいてMEMSミラーアレイのアライメントを行う方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−244753号公報
【特許文献2】特開2009−104081号公報
【特許文献3】特開2009−229916号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】H.Ishii, et al.,"Fabrication of optical MEMS swithes having multilevel mirror-drive electrodes",Optical MEMS,2003 IEEE/LEOS International Conference on Digital Object Identifier,10.1109/OMEMS.2003.1233496 Publication Year 2003,Pages 121-122
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、光学系がMEMSミラー素子104に対して光入射角のシフトを有する場合、上述したようなMEMSミラーアレイの基部に設けられたアライメントパタンに光を照射しても、ミラー104aからの反射光が入力ポート101および出力ポート102a〜102dのいずれにも結合しないため、反射光の光スペクトル形状を指標として位置合わせを行うことは難しい。上述したようなアライメントパタンを、MEMSミラーアレイの基部ではなく、ミラー104aの反射面上に設けた場合も、ミラー104aを駆動する電極に電圧を印加しない状態では、同様に反射光を結合させることができない。したがって、光学系とMEMSミラーの位置合わせを行うためには、ミラー104a上にアライメントパタンを設け、駆動電極に電圧を供給してミラー104aを駆動し、入力ポート101または出力ポート102a〜102dのいずれかにアライメントパタンからの反射光を結合させる必要があった。このため、光スイッチを組み立てる際にも、MEMSミラーアレイを制御装置15と電気的に接続して電圧を供給しなければならず、組立装置に制御装置を組み込む必要があった。これにより、装置構成に制約が生じたり、装置全体が高額になるという問題があった。また、光学系の調芯工程の中で、アライメントパタンを設けらミラー104aを駆動させ所定の光ポートに反射光を結合させる作業を実施するため、調芯に要する時間が増大する結果となっていた。
【0011】
そこで、本願発明は、より容易にアライメントを行うことができるミラーアレイ、ミラー素子およびミラーアレイのアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述したような課題を解決するために、本発明に係るミラーアレイは、複数の板状のミラーが配列され、当該ミラーを回動可能に支持する第1の基板と、この第1の基板と対向配置され、ミラーと対向する位置に少なくとも1つの電極が設けられた第2の基板と、ミラーの少なくとも1つの第2の基板と対向しない一方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンと、第2の基板上に設けられ、アライメントパタンが設けられたミラーの他方の面を押圧する突起とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
上記ミラーアレイにおいて、突起は、ミラーの回動中心を除く位置に当接するようにしてもよい。
【0014】
また、上記ミラーアレイにおいて、ミラーは、波長に応じて分離された入力光を偏向するミラーであり、アライメントパタンは、波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交しかつ入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化しかつ第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明に係るミラー素子は、基板と、この基板から離間して、回動可能に支持された板状のミラーと、基板上に設けられ、ミラーの基板と対向する一方の面を押圧する突起と、ミラーの他方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンとを備えることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係るミラーアレイのアライメント方法は、複数の板状のミラーが配列され、当該ミラーを回動可能に支持する第1の基板と、この第1の基板と対向配置され、ミラーと対向する位置に少なくとも1つの電極が設けられた第2の基板と、ミラーの少なくとも1つの第2の基板と対向しない一方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンと、第2の基板上に設けられ、アライメントパタンが設けられたミラーの他方の面を押圧する突起とを備えたミラーアレイのアライメント方法であって、ミラーは、波長に応じて分離された入力光を偏向するミラーであり、波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交しかつ入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて波長分離方向の幅が変化しかつ第1の軸上に波長分離方向の幅の極値を有するアライメントパタンに対して第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように第1の軸に直交し、入力光の光軸と交わる第2の軸の方向におけるミラーアレイの位置を調整する第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アライメントパタンが設けられたミラーの他方の面を押圧する突起を備えることにより、この突起により当該ミラーが予め所定の角度に傾向しているので、そのミラーを所定の角度に傾向させるための駆動電圧を供給せずに、光学系とミラーアレイとのアライメントを行うことが可能となる。この結果、簡易な装置構成でアライメントを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係る波長選択型光スイッチの構成を模式的に示す正面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態に係るマイクロミラーアレイの構成を模式的に示す平面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子の構成を模式的に示す平面図である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子の構成を模式的に示す側面図である。
【図4C】図4Cは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子の構成を模式的に示す側面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンの構成を模式的に示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイをアライメントする際の装置構成を模式的に示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るMEMSミラーアレイのアライメント方法を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図9A】図9Aは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す平面図である。
【図9B】図9Bは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す側面図である。
【図9C】図9Cは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す側面図である。
【図10A】図10Aは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す平面図である。
【図10B】図10Bは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す側面図である。
【図10C】図10Cは、本発明の実施の形態に係るアライメント用MEMSミラー素子における突起の構成の変形例を模式的に示す側面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の波長スペクトルおよび帯域幅の変化を説明するための図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態に係る変形例のアライメントパタンとビームウェストの位置関係による反射光の帯域幅の変化を説明するための図である。
【図14】図14は、波長選択型光スイッチの一構成例を模式的に示す図である。
【図15】図15は、波長選択型光スイッチの一構成例を模式的に示す図である。
【図16】図16は、波長選択型光スイッチの一構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
<波長選択型光スイッチの構成>
図1,図2に示すように、本実施の形態に係る偏向素子を備えた波長選択型光スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)は、光軸がZ軸に沿って配設された光ファイバアレイ1と、マイクロレンズアレイ2と、回折格子3と、集光レンズ4と、上述した偏向素子として機能するMEMSミラーアレイ5とがこの順番でZ軸に沿って配列されたものである。
【0021】
光ファイバアレイ1は、各々の光軸をZ軸方向に沿わせたN+1本の光ファイバをZ軸と直交するY軸の方向に並設し、そのうちの1本を入力ポート、他を出力ポート、または、1本を出力ポート、他を入力ポートとする。これにより、1xNのDrop型WSSまたはNx1のAdd型WSSとして使用することができる。なお、図1,図2においては、光ファイバアレイ1は、入力ポート1aと、出力ポート1b〜1eとを備えたDrop形WSSの場合を例に説明する。
【0022】
このような光ファイバアレイ1は、入力ポート1aおよび出力ポート1b〜1eのX軸方向の位置が、集光レンズ4の光軸からΔXだけずれるように配置されている。ここで、X軸とは、Y軸およびZ軸に直交する軸である。
【0023】
マイクロレンズアレイ2は、複数のマイクロレンズ2a〜2eをY軸の方向に並設したものである。このようなマイクロレンズアレイ2は、図1に示すように光ファイバアレイ1に対してZ軸方向の正の側に、各マイクロレンズ2a〜2eが対応する光入出力ポートと対向するように配設される。各マイクロレンズ2a〜2eは、それぞれに対応する光入出力ポートの光ファイバ1a〜1eと共に、光コリメータとして機能する。
【0024】
回折格子3は、入射光を空間的に所定の周波数帯域毎に所定のチャネルに分波する公知の回折格子から構成される。本実施の形態において、回折格子3は、入射光をX軸方向に分波する。
【0025】
集光レンズ4は、焦点距離fの公知の凸レンズから構成され、Z軸方向において回折格子3とMEMSミラーアレイ5との間に配設される。
【0026】
MEMSミラーアレイ5は、図1〜図3および図4A〜図4Cに示すように、例えばシリコン基板などから構成され、長辺がx軸、短辺がこのx軸と直交するy軸に平行な平面視略矩形の電極基板51と、x軸およびy軸に直交するz軸の方向に電極基板51から離間して電極基板51と略平行に対向配置され、例えばSOI(Silicon-On-Insulator)基板などから構成される電極基板51と同等の平面形状のミラー基板52とを備えている。このようなMEMSミラーアレイ5は、ミラー基板52の一方の面が集光レンズ4の焦点面に位置するように集光レンズ4と対向配置されている。このミラー基板52における集光レンズ4と対向配置された側の面を「上面」と言う。
なお、MEMSミラーアレイ5の構成をx軸、y軸およびz軸からなる座標系、波長選択型光スイッチの構成をX軸、Y軸およびZ軸からなる座標系で説明するが、これらは同一であってもよいことは言うまでもない。
【0027】
電極基板51は、ミラー基板52と対向する面上に、x軸方向に複数の電極51aが配設されている。これらの電極51aのうちx軸方向の最も負の側に位置する電極51aの隣には、ミラー基板52に向かって突出した突起51bが形成されている。
【0028】
ミラー基板52は、長辺がx軸に平行な平面視略矩形の開口が形成されており、その開口内には、x軸方向にミラーピッチPchで均等に配列された平面視略矩形の複数のミラー52aが形成されている。このミラー52aは、可撓性を有するばね(図示せず)によりミラー基板52に連結されており、これによりx軸およびy軸回りに回動可能にとなっている。本実施の形態において、各ミラー52aの中心(y軸方向の長さの中点)は、x軸に沿った同一直線上に位置している。
【0029】
複数のミラー52aのうち、x軸方向の最も負の側に位置するミラー52a’を除くミラー52aは、電極基板51上に設けられた少なくとも1つの電極51aと対向配置されており、この電極51aとともに1つのMEMSミラー素子53を構成する。
また、x軸方向の最も負の側に位置するミラー52a’は、電極基板51上に設けられた突起51bと対向配置されており、この突起51bとともにアライメント用MEMSミラー素子54を構成している。そのミラー52a’の上面には、アライメントパタン6が形成されている。
【0030】
ここで、MEMSミラー素子53のミラー52aは、その上面に、例えば金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されている。このようなミラー52aは、対向配置された電極51aに電圧を印加することで生じる静電引力によって、x軸およびy軸回りに回動させられる。したがって、ミラー52aをx軸回りに回動させると、ミラー52aに入射してそのミラー52aの上面により反射された反射光の光軸がy軸方向に変化する。また、ミラー52aをy軸回りに回動させると、ミラー52aの上面による反射光の光軸がx軸方向に変化する。
なお、各MEMSミラー素子53におけるばねの構造や配置については、例えば特許文献3に記載されているので、本明細書ではさらなる詳細な説明を省略する。また、MEMSミラー素子53の駆動機構は、上述した平行平板型に限定されず、例えば、垂直櫛歯構造などを適用することもできる。また、アッテネーションレベルの制御としては、y軸回りの回動に限定されず、x軸回りの回動によって制御するようにしてもよい。
【0031】
また、アライメント用MEMSミラー素子54の突起51bは、電極基板51上のミラー52a’と対向する位置、具体的には、ミラー52a’の回動中心を除く位置に配設される。例えば、突起51bのz軸方向の長さ(電極51aの表面からの高さ)が、電極基板51とミラー基板52との距離よりも長く形成されている場合、MEMSミラーアレイ5を組み立てて、電極基板51とミラー基板52とを所定の距離に対向配置した際、図4B、図4Cに示すように、突起51bの開放端がミラー52a’の下面に接触してそのミラー52a’を押圧するので、ミラー52a’が所定の角度に傾くこととなる。そこで、突起51bの長さおよび電極基板51上の位置は、ミラー52a’に入射した光を反射させて、この反射光を出力させるポートの位置に応じて適宜設定される。本実施の形態において、突起51bは、図1に示すように、入力ポート1aから入力されアライメント用MEMSミラー素子54に導入された光が、再び入力ポート1aから出力されるように、ミラー52a’がy軸回りに所定の角度だけ回動するように、その位置および長さが設定されている。
【0032】
なお、突起51bのz軸方向の長さは、必ずしも電極基板51とミラー基板52との距離より長くする必要はない。例えば、突起51bの表面が絶縁体で覆われていない場合、アライメントパタン6が形成されているミラー52a’に、設計した最大回転角度を超えて回動するレベルの電圧を印加することにより、ミラー52a’を意図的にプルインさせ、突起51bと固着させて、ミラー52a’がy軸回りに所定の角度だけ傾くようにすることも可能である。この場合、ミラー52a’が所定の角度に傾いたときに突起51bが接触すればよいため、突起51bのz軸方向の長さは、電極基板51とミラー基板52との距離より短くすることができる。
【0033】
アライメントパタン6は、例えば金やアルミなど周囲の材料よりも反射率が高い材料からなり、例えば菱形に形成されている。この菱形は、図5に示すように、その対角線の一方がx軸、他方がy軸に平行で、これらの対角線の交点に対して点対称に形成されている。また、そのx軸に平行な対角線は、各MEMSミラー素子53のミラー52aの中心と同一直線上に位置している。なお、ミラー52aの上面におけるアライメントパタン6の周囲には、このアライメントパタン6よりも反射率が低い低反射領域6aが形成されている。この低反射領域6bは、例えばSi,SiO2,Ti,Crなどアライメントパタン6よりも低い反射率を有する材料で形成されている。
なお、アラインメントパタン6は、必ずしも周囲の材料よりも反射率が高い材料からなる必要はなく、周囲の材料よりも反射率が低い材料でパターン形成してもよい。この場合、アライメントパタン6の周囲には、のような反射率が高い材料で高反射率領域を形成すれば、y軸に沿ってx軸方向の幅が変化するため、先に示した高反射率材料からなるアラインメントパタン6と同様の効果が得られる。
【0034】
このようなMEMSミラーアレイ5は、特許文献1−3および非特許文献1に記載された公知のMEMS技術やフォトリソグラフィ技術によって形成することができる。なかでも、突起51bについては、例えば、非特許文献1に記載されている駆動電極を作成するメッキ工程により、駆動電極とともに作成することができる。突起51bのz軸方向の長さが駆動電極51aより高くなる場合は、駆動電極51aをメッキ工程で形成した後に、電極基板51全体をフォトレジストやポリイミドからなる有機膜で覆い、その有機膜が駆動電極51aの表面から所定の高さを有する膜厚となるように形成する。このような成膜は、スピンコート法などの公知の技術で可能である。次に、公知のフォトリソグラフィ技術を用いて上記の有機膜をパターニングし、突起を形成する箇所の有機膜を取り除き、メッキの鋳型を形成する。続いて、有機膜を除去した箇所をメッキで埋め込み、最後に公知のフォトリソグラフィー技術やドライエッチング技術を用いて、鋳型である有機膜層を除去することにより、駆動電極51aより所定の高さだけ突き出した突起を形成することができる。
また、厚膜のレジストやポリイミド、シリコンを高アスペクト比でエッチングする技術、X線リソグラフィとメッキを組み合わせたLIGAプロセス、他成分ガラスの陽極接合等により、作成することもできる。
また、アライメントパタン6は、公知のフォトリソグラフィ技術によって形成することができる。本実施の形態において、アライメントパタン6は、ミラー52a’の上面に高い反射率を有する材料を菱形に配置することによって形成される。この場合、アライメントパタン6は、その高い反射率を有する材料が配置された領域から構成され、低反射領域6bは、ミラー52aの下地、すなわちその高い反射率を有する材料が配置されていない、ミラー基板52の構成材料が露出した領域から構成される。なお、アライメントパタン6の製造方法はこれに限定されず、各種方法を定義自由に適用することができる。例えば、金やアルミなどの高い反射率を有する材料が全体に亘って形成されたミラー52aの上面に、上述した低い反射率を有する材料を所定のパタンで形成することにより製造してもよい。
【0035】
<波長選択型光スイッチの動作>
このような波長選択型光スイッチにおいて、所定の周波数帯域毎に所定のチャネル数だけ波長分離されたWDM信号光がファイバアレイ1の入力ポート1aに入力されると、そのWDM信号光は、マイクロレンズ2aにより平行光とされて回折格子3に到達し、この回折格子3を通過する際に周波数に応じてX軸方向に分波され、集光レンズ4により互いに平行な光軸を有する信号光群となり、MEMSミラーアレイ5上にビームウェストを形成する。したがって、分波された信号光のビームウェストの配列と、各周波数帯域に対応して適切なピッチでx軸方向に配列された各MEMSミラー素子53およびアライメント用MEMSミラー素子54とが空間的に一致している状態で、MEMSミラー素子53のミラー52aをx軸およびy軸回りに所定の角度だけ傾動させると、そのミラー52aに到達した信号光は、このミラーの角度に応じて反射され、集光レンズ4により収束されて回折格子3により合波された後、その少なくとも一部がマイクロレンズ2b〜2eにより収束されて何れかの出力ポート1b〜1eより出力されるか、または、マイクロレンズ2b〜2eに到達しない。
【0036】
ここで、図1に示すように、入力ポート1aおよび出力ポート1b〜1eの光軸は、X軸方向において、集光レンズ4の光軸およびMEMSミラーアレイ5のx軸方向における中央に位置するMEMSミラー素子53の回動軸の交点からΔXだけずれるように設定されている。これにより、入力ポート1aから入射された信号光は、ミラー52a,52a’の法線に対して斜めに入射されることになる。
【0037】
このとき、MEMSミラー素子53では、電極51aに駆動電圧を印加していないと、ミラー52aで反射された光が、図1の点線で示す方向に進み、出力ポート1b〜1eには結合されない。電極51aに駆動電圧を印加して、ミラー52aをY軸に対して反時計回りに回動させてゆくと、ミラー52aで反射された光は、出力ポート1b〜1eに結合してゆき、光透過率が増大してゆくこととなる。
【0038】
一方、アライメント用MEMSミラー素子54では、ミラー52a’により反射された光が入力ポート1aに結合するように、突起51bによりミラー52a’が所定の角度に傾向させられている。したがって、MEMSミラー素子53の電極51aに駆動電圧を印加しているか否かに関わらず、ミラー52aで反射された光は、入力ポート1aに結合することとなる。これにより、波長選択型光スイッチを組み立てる際、駆動電圧を供給しなくても、後述するMEMSミラーアレイ5のアライメントを行うことができる。
【0039】
<アライメント方法>
次に、図6,図7を参照して、MEMSミラーアレイ5と光学系とのアライメント方法を説明する。
【0040】
まず、MEMSミラーアレイ5のX軸方向およびY軸方向のアライメントを行うには、図6に示すように、入力光ファイバ1aに対してASE(Amplified Spontaneous Emission)による広帯域光(以下、「ASE光」と言う。)や所定の波長帯域の光を出力する光源7と、MEMSミラーアレイ5を保持するホルダならびにこのホルダをX軸、Y軸およびZ軸方向に移動させるステージを備えた調心ステージ8と、その入力光ファイバ1aから出力される光のスペクトルを測定するスペクトルアナライザ9とを用意する。
【0041】
次に、X軸方向のアライメントを行うために、図7に示すように、光源7からASE光を波長選択型光スイッチに入力し、MEMSミラー素子53からの反射光のスペクトルをスペクトルアナライザ9により観測する(ステップS1)。このとき、光源7から入力ポート1aを介して入力されたASE光は、マイクロレンズアレイ2を介して回折格子3に入射し、この回折格子3によって周波数分離され、X軸に平行な帯状の光となってMEMSミラーアレイ5のMEMSミラー素子53およびアライメント用MEMSミラー素子54に照射される。上述したように、アライメント用MEMSミラー素子54のミラー52a’は、突起51bによって、集光レンズ4を介して入射する光を入力ポート1aに向けて反射する角度に傾けられている。一方、MEMSミラー素子53のミラー52aは、電極51aに電圧が印加されていないので、図1の点線で示すように、集光レンズ4を介して入射した光を反射させた反射光が、入力ポート1aおよび出力ポート1b〜1eに結合されない角度となっている。したがって、MEMSミラーアレイ5に照射された帯状の光のうち、ミラー52a’による反射光だけが、集光レンズ4、回折格子3およびマイクロレンズアレイ2を介して、入力ポート1aに入射するので、光スペクトルアナライザ9では、その反射光の光スペクトル形状が観測されることとなる。
【0042】
光スペクトルアナライザ9では、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、アライメント用MEMSミラー素子54によって反射される光の周波数にピークを持つ矩形状のスペクトル形状が観測される。この矩形状のスペクトルは、MEMSミラーアレイ5をX軸方向に移動させると、周波数軸方向に移動する。したがって、矩形状のスペクトルの中央が所望する周波数位置に一致するように、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイ5をX軸方向に移動させることにより、X軸方向のMEMSミラーアレイ5の位置を調整する(ステップS2)。これにより、MEMSミラーアレイ5のX軸方向のアライメントが完了する。
なお、MEMSミラーアレイ5のZ軸方向のアライメントは、上述したように反射光のスペクトル形状を観測し、その通過帯域が広くなるようにMEMSミラーアレイ5のZ軸方向の位置を調整することにより行うことができる。このとき、一般的に波長選択スイッチの光学系において、信号光のビーム径は、通過帯域を確保するために、X軸方向に小さく絞られている、すなわち、Y軸方向のビーム径がX軸方向のビーム径よりも大きくされている。したがって、上述したように反射光の通過帯域が広くなるようにMEMSミラーアレイ5のZ軸方向の位置を調整することにより、信号光のY軸方向のビーム径も自ずと最良点にアライメントされることとなる。
【0043】
X軸方向のアライメントを完了すると、Y軸方向のアライメントを行うために、光源7から入力光を入力ポート1aに入力させ、光スペクトルアナライザ9によりアライメントパタン6によって反射された反射光の光スペクトル形状を観察しながら、その反射光の周波数帯域の幅(以下、「帯域幅」と言う。)が極大となるように調心ステージ8によりMEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置を調整する(ステップS3)。このとき、光源7からは、ASE光に替えて、所定の周波数帯域毎に所定のチャネル数だけ波長分離されたWDM信号光が入力される。この信号光には、アライメントパタン6が形成されたミラー52a’の位置に対応する周波数帯域が含まれている。このような信号光は、回折格子3によって周波数分離され、集光レンズ4を介してそのアライメントパタン6上に、長軸がY軸方向に沿い、短軸がX軸上に位置する楕円状のビームウェストを形成する。このビームウェストを形成した入力光はアライメントパタン6により反射され、この反射光が集光レンズ4、回折格子3およびマイクロレンズアレイ2を介して入力ポート1aに入射し、光スペクトルアナライザ9によってその光スペクトル形状が出力される。光スペクトルアナライザ9では、周波数軸と光強度軸とから構成される座標平面上において、アライメントパタン6によって反射された光の周波数にピークを持つスペクトル形状となって観測される。そこで、このスペクトル形状に基づいて、アライメントパタン6からの反射光の帯域幅が最大となるように、そのスペクトル形状を観察しながらMEMSミラーアレイ5のY軸方向のアライメントを行う。
このようなY軸方向のアライメントを行う原理について、図8を参照して説明する。なお、図8は、MEMSミラーアレイ5をY軸方向に移動させたときの、ビームウェストとアライメントパタン6との位置関係、このときの各波長の光強度および帯域幅を示すグラフである。
【0044】
MEMSミラーアレイ5をY軸方向に移動させると、アライメントパタン6に照射されるビームウェストの位置関係に伴って、そのアライメントパタン6による反射光のスペクトル形状が変化する。このとき、アライメントパタン6に照射されるビームウェストのX軸方向における長さの変化に伴って、そのアライメントパタン6による反射光の帯域幅が変化する。これは、回折格子3による波長分離方向がX軸方向であるので、反射光の帯域幅がアライメントパタン6に照射されるビームウェストBのX軸方向の長さに依存するためである。なお、アライメントパタン6に照射されるビームウェストの面積の変化に伴って、そのアライメントパタン6による反射光の光強度も変化する。
【0045】
図8に示すように、例えば、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン6のx軸に平行な対角線上に位置する場合、そのビームウェストBは、ほとんど全ての領域(領域6−2)がアライメントパタン6に照射される。この場合において、光スペクトルアナライザ9により測定される反射光のスペクトル形状6−2’は、領域6−2のX軸方向の長さに対応する帯域幅に亘って所定の光強度を示すものとなる。このとき、アライメントパタン6に照射されるビームウェストBのX軸方向の長さが極大となるので、反射光の帯域幅(w2,6−2”)も極大となる。なお、アライメントパタン6に照射されるビームウェストBの面積も極大となるので、上述した反射光のスペクトル形状6−2’は、その帯域幅に亘って高い値を示すものとなっている。
【0046】
一方、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン6のx軸に平行な対角線上に位置しない場合、そのビームウェストBは、一部がアライメントパタン6に照射され(領域6−1,6−3)、残りが低反射領域6aを含むアライメントパタン6以外の領域に照射される。この場合においても、光スペクトルアナライザ9により測定される反射光のスペクトル形状6−1’、6−3’は、領域6−1,6−3のX軸方向の長さに対応する帯域幅に亘って所定の光強度を示すものとなる。このとき、アライメントパタン6に照射されるビームウェストBのX軸方向の長さは、上述した領域6−2の場合よりも小さくなるので、反射光の帯域幅(w1,6−1”;w3,6−3”)も、領域6−2の場合よりも小さくなる。
【0047】
上述したように、菱形のアライメントパタン6における一方の対角線は、各MEMSミラー素子53のミラー52aの中心と、x軸に平行な同一直線上に位置するように形成されている。このため、アライメントパタン6による反射光の帯域幅が極大になるとき、すなわち、その一方の対角線がX軸上に位置するとき、MEMSミラーアレイ5に含まれる各MEMSミラー素子53のミラー52aの中心も、X軸上に位置することとなる。そこで、本実施の形態では、調心ステージ8によりMEMSミラーアレイ5をY軸方向に移動させ、スペクトルアナライザ9によりこのときの波長スペクトル形状における帯域幅を観察し、この帯域幅が最大となるようにMEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置を調整することにより、MEMSミラーアレイ5のY軸方向のアライメントを実現することができる。
【0048】
Y軸方向のずれ量と帯域幅の変化との関係は、アライメントパタン6の形状とアライメントパタン6に照射される光ビームのプロファイルに依存する。本実施の形態においては、アライメントパタン6が菱形に形成されており、かつ、このアライメントパタン6に照射されるビームウェストのビームプロファイルが楕円形であるので、MEMSミラーアレイ5をY軸方向に移動させたとき、アライメントパタン6に照射されるビームプロファイルにおけるX軸方向の長さの変化は、急峻なものとなる。このため、図8の符号αで示す曲線のように、帯域幅の変化も急峻なものとなる。具体的には、アライメントパタン6の一方の対角線がX軸上に位置したときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に下に凸の二次関数のように減少する、いわゆる裾広がり状に変化することとなる。このように、帯域幅が極大値に向かって鋭く変化するので、その極大値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ミラー52’の下面を押圧する突起51bを備えることにより、この突起51bによりミラー52’が予め所定の角度に傾向しているので、そのミラー52’を所定の角度に傾向させるための駆動電圧を供給しなくてもMEMSミラーアレイ5のアライメントを行うことができる。この結果、簡易な装置構成でアライメントを容易に行うことができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、突起51bにより、ミラー52a’をy軸回りに傾ける場合を例に説明したが、ミラー52a’を傾ける方向はy軸回りに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図9A〜図9Cに示すように、突起51bを、ミラー52a’の回動中心を通るx軸およびy軸に沿った直線上を除く位置に設けることにより、ミラー52a’をx軸およびy軸に対して斜めに傾けるようにしてもよい。これにより、MEMSミラー素子が2次元的に配列されたMEMSミラーアレイを用いた場合であっても、ミラー52a’による反射光を所望するポートに結合させることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、1つの突起51bを設ける場合を例に説明したが、その突起51bの数量は1つに限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、図10A〜図10Cに示すように、2つの突起51b−1,51b−2を設けるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、菱形のアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタン6と同様、X軸上に位置するときにアライメントパタンやこのアライメントパタンの周囲による反射光の帯域幅がピークとなるアライメントパタンであるならば、その形状は菱形に限定されず、適宜自由に設定することができる。言い換えると、X軸方向に平行な所定の軸から離れるにつれて波長分離方向の長さが短くなる形状であれば、アライメントパタンの形状を適宜自由に設定することができる。その変形例について以下に示す。
【0053】
<第1の変形例>
図11に示すアライメントパタン10は、周囲よりも低い反射率の材料から構成され、菱形に形成されている。この菱形のアライメントパタン10における一方の対角線は、x軸に平行に形成されるとともに、各MEMSミラー素子53のミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。また、アライメントパタン10の周囲には、アライメントパタン10よりも反射率が高い材料から構成される矩形の高反射領域10aが形成されている。このような構成を採ることによっても、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置を変化させると、アライメントパタン10に照射されるビームウェストの位置関係に伴って、反射光のスペクトル形状が変化する。このとき、アライメントパタン10に照射されるビームウェストのX軸方向における長さの変化に伴って、反射光の帯域幅も変化する。
【0054】
例えば、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるx軸に平行な対角線上に位置する場合、ビームウェストBの外縁部(領域10−2)のみが高反射領域10aに照射される。このため、その高反射領域10aによる反射光のスペクトル形状10−2’は、ビームウェストBの周波数帯域における中央部において光強度が検出されず、その中央部の両脇に光強度が検出される2つの山状のプロファイルとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さが極小となるので、反射光の帯域幅も極小となる。
一方、ビームウェストBの短軸が、菱形に形成されたアライメントパタン10におけるx軸に平行な対角線上に位置しない場合、そのビームウェストBは、外縁部以外の部分も高反射領域10aに照射される(領域10−1,10−3)。このため、反射光のスペクトル形状10−1’、10−3’は、スペクトル形状10−2’の場合よりも、ビームウェストBの周波数帯域における中央部寄りに光強度が検出されることとなる。このとき、高反射領域10aに照射されるビームウェストBのX軸方向の長さは、上述した領域10−2の場合よりも大きな値となるので、反射光の帯域幅もその領域10−2の場合よりもよりも大きな値となる。
【0055】
したがって、光スペクトルアナライザ9により測定される高反射領域10aによる反射光の帯域幅は、図11の符号βで示す曲線のように、アライメントパタン10の一方の対角線がX軸上に位置したときが極小となり、この極小値からY軸方向の正負それぞれの側に上に凸の二次関数のように増大することとなる。言い換えると、図6の符号αで示したアライメントパタン6による反射光の帯域幅と上下逆の曲線を描くように変化する。このように帯域幅が極小値に向かって鋭く変化するので、その極小値を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0056】
<第2の変形例>
また、図12に示すアライメントパタン11は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、五角形に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン11よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域11aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン11による反射光の帯域幅は、図12の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン11に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときに極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれて、その極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このように、アライメントパタンをX軸に対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く、かつ、Y軸方向に非対称に変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0057】
<第3の変形例>
また、図13に示すアライメントパタン12は、周囲よりも高い反射率の材料から構成され、半円形またはかまぼこ型に形成されている。このアライメントパタン11の周囲には、アライメントパタン12よりも低い反射率の材料から構成された矩形の低反射領域12aが形成されている。このような構成を採ると、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置を変化させたとき、光スペクトルアナライザ9により測定されるアライメントパタン12による反射光の帯域幅は、図13の符号γで示す曲線のように、アライメントパタン12に照射されるビームウェストのX軸方向の長さが極大となるときが極大となり、Y軸方向のずれが大きくなるにつれてその極大からY軸方向の正負それぞれの側に非対称に減少することとなる。このようにY軸に非対称な形状とすることによっても、帯域幅が極大に向かって鋭く変化するので、その極大を容易に識別することが可能となり、結果として、MEMSミラーアレイ5のY軸方向の位置についてより正確なアライメントを実現することができる。
【0058】
なお、上述したアライメントパタン10〜12は、ビームウェストの短軸が、各アライメントパタンが形成されたミラー52aの中心を通るときに、そのアライメントパタンによる反射光の帯域幅が最大または最小となるように形成されることは言うまでもない。このとき、MEMSミラーアレイ5に含まれる各MEMSミラー素子53のミラー52aの中心は、アライメントパタン10〜12が形成されたミラー52aの中心と同一直線上に位置するように形成されている。
【0059】
また、本実施の形態では、x軸方向に配列された複数のMEMSミラー素子のうち、一端のMEMSミラー素子にアライメントパタン6を設ける場合を例に説明したが、MEMSミラーアレイ5に設けられたMEMSミラー素子53であるならばアライメントパタン6を設ける位置は端部のMEMSミラー素子53に限定されず、適宜自由に設定することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、アライメントパタンをMEMSミラー素子54に設ける場合を例に説明したが、そのアライメントパタンを設ける位置はMEMSミラー素子54に限定されず、例えば、MEMSミラーアレイ5の基部51に設けるようにしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、ミラー52aの表面に高反射領域または低反射領域からなるアライメントパタンと、この周囲に設けられた高反射領域または低反射領域とを備える場合を例に説明したが、Y軸上に帯域幅のピークが形成されるのであればアライメントパタン等の構成はそのような構成に限定されず、適宜自由に設定することができる。例えば、全面が高反射領域からなるミラー52aの外形自体を、上述したような菱形や五角形などに形成するようにしてもよい。また、ミラー52aに開口を設け、この開口を低反射領域として用いるようにしてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、MEMSミラーアレイ5に適用した場合を例に説明したが、例えば透過型および反射型液晶スイッチアレイなど、他の微小スイッチアレイを用いたWSSにも適用することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、MEMSミラー素子53が一次元に配列されたMEMSミラーアレイ5について説明したが、二次元に配列されたMEMSミラーアレイについても適用できることは言うまでもない。この場合、回折格子により分波されたチャネルの何れかの位置に上述したアライメントパタンを配置することにより、本実施の形態と同等の作用効果を実現することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態では、波長選択型光スイッチに適用した場合を例に説明したが、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える光学系であるならば、適宜自由に適用できることは言うまでもない。また、その素子は、所定の軸回りに回動可能であるか否かを問わず、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、波長分離された入力光を偏向する素子やこの素子を備える各種光学系に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…光ファイバアレイ、1a…入力ポート、1b〜1e…出力ポート、2…マイクロレンズアレイ、2a〜2e…マイクロレンズ、3…回折格子、4…集光レンズ5…MEMSミラーアレイ、6,10〜12…アライメントパタン、6a,11a,12a…低反射領域、10a…高反射領域、6−1〜6−3,10−1〜10−3…領域、6−1’〜6−3’,10−1’〜10−3’…スペクトル形状、6−1”〜6−3”,w1〜w3…帯域幅、7…広帯域光源、8…調心ステージ、9…スペクトルアナライザ、41…第1レンズ、42…第2レンズ、43…回折格子、51…電極基板、51a…電極、51b,51b−1,51b−2…突起、52…ミラー基板、52a,52a’…ミラー、53…MEMSミラー素子、54…アライメント用MEMSミラー素子、B…ビームウェスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状のミラーが配列され、当該ミラーを回動可能に支持する第1の基板と、
この第1の基板と対向配置され、前記ミラーと対向する位置に少なくとも1つの電極が設けられた第2の基板と、
前記ミラーの少なくとも1つの前記第2の基板と対向しない一方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンと、
前記第2の基板上に設けられ、前記アライメントパタンが設けられた前記ミラーの他方の面を押圧する突起と
を備えることを特徴とするミラーアレイ。
【請求項2】
前記突起は、前記ミラーの回動中心を除く位置に当接する
ことを特徴とする請求項1記載のミラーアレイ。
【請求項3】
前記ミラーは、波長に応じて分離された入力光を偏向するミラーであり、
前記アライメントパタンは、波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交しかつ入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化しかつ前記第1の軸上に前記波長分離方向の幅の極値を有する
ことを特徴とする請求項1記載のミラーアレイ。
【請求項4】
基板と、
この基板から離間して、回動可能に支持された板状のミラーと、
前記基板上に設けられ、前記ミラーの前記基板と対向する一方の面を押圧する突起と、
前記ミラーの他方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンと
を備えることを特徴とするミラー素子。
【請求項5】
複数の板状のミラーが配列され、当該ミラーを回動可能に支持する第1の基板と、この第1の基板と対向配置され、前記ミラーと対向する位置に少なくとも1つの電極が設けられた第2の基板と、前記ミラーの少なくとも1つの前記第2の基板と対向しない一方の面に設けられ、周囲と異なる反射率を有するアライメントパタンと、前記第2の基板上に設けられ、前記アライメントパタンが設けられた前記ミラーの他方の面を押圧する突起とを備えたミラーアレイのアライメント方法であって、
前記ミラーは、波長に応じて分離された入力光を偏向するミラーであり、
波長分離方向に平行な所定の第1の軸から、この第1の軸と直交しかつ入力光の光軸と交わる第2の軸に沿って離れるにつれて前記波長分離方向の幅が変化しかつ前記第1の軸上に前記波長分離方向の幅の極値を有する前記アライメントパタンに対して前記第1の軸方向に波長分離された光を照射する第1のステップと、
前記アライメントパタンからの反射光の周波数帯域の幅を測定し、この幅が極値となるように前記第1の軸に直交し、前記入力光の光軸と交わる第2の軸の方向における前記ミラーアレイの位置を調整する第2のステップと
を有することを特徴とするミラーアレイのアライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−83855(P2013−83855A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224645(P2011−224645)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】