説明

ミラーキャビネットの扉取付構造

【課題】キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮が生じても蝶番に大きな負荷がかからず、鏡扉が正常な開閉動作を維持できるミラーキャビネットの扉取付構造を提供する。
【解決手段】樹脂製キャビネット本体2に上下の蝶番8A,8Bを用いて鏡扉3Aを取り付ける構造において、下側の蝶番には、鏡扉3Aの開き角度を規制するストッパーが備えられ、上側の蝶番8Aにはストッパーは存在せず、上側の蝶番8Aは、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮に対応して上下方向に摺動可能に縦長の軸部83により本体取付側部材81と扉取付側部材82が上下摺動可能に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のミラーキャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付けたミラーキャビネットが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭58−12337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているミラーキャビネットでは、下側の蝶番にストッパーが設けられ、このストッパーにより鏡扉の開き角度を規制する構造となっているが、キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮に対応できる構造のものではなかった。
即ち、キャビネット本体を耐薬品性に優れたポリプロピレン(PP)製にしたような場合、ポリプロピレンは、後収縮および線膨張係数が大きく、温度変化による伸縮が大きいために、このPP製のキャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮により、ミラーキャビネット本体に固定されている上下2つの蝶番間の距離にも大きな変化が生じて、蝶番に大きな負荷がかかるようになり、鏡扉が正常な開閉動作を維持できなくなる可能性があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、蝶番に大きな負荷がかからず、鏡扉が正常に開閉動作を維持できるミラーキャビネットの扉取付構造の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられ、前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は、前記キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮に対応して上下摺動可能に構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
キャビネット本体が温度変化により上下方向に伸縮した場合でも、上側の蝶番は、この伸縮に対応して上下方向に摺動する。即ち、蝶番が良好に上下方向に摺動することで、キャビネット本体の上下方向の伸縮が生じても上下の蝶番に大きな負荷がかかることがなく、鏡扉は正常な開閉動作を維持できる。
また、下側の蝶番にはストッパーが備えられているため、鏡扉の開閉時に生ずる衝撃は下側の蝶番に加わり、ストッパーの存在しない上側の蝶番は衝撃を受けることがなく、上側の蝶番は破損されることがないため、蝶番の破損時に鏡扉が脱落するような事態が良好に防がれる。
【0007】
また、本発明は、樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられ、前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は、前記キャビネット本体に固定される本体取付側部材と、前記鏡扉に固定される扉取付側部材が縦長の軸部で連結され、該軸部を介し前記本体取付側部材が前記扉取付側部材に対し上下摺動可能に構成されていることを要旨とする。
【0008】
こうすれば、上側の蝶番は、本体取付側部材と扉取付側部材が縦長の軸部で連結されているため、キャビネット本体に温度変化による上下方向の伸縮が生じた際に、軸部を介して本体取付側部材が扉取付側部材に対して上下方向に摺動するため、キャビネット本体の上下方向の伸縮が生じても上下の蝶番に大きな負荷がかかることはなく、蝶番の破損が防がれ、鏡扉は正常な開閉動作を維持できるものとなる。
また、下側の蝶番にはストッパーが備えられているため、鏡扉の開閉時に生ずる衝撃は下側の蝶番に加わり、ストッパーの存在しない上側の蝶番は衝撃を受けることがなく、上側の蝶番は破損されることがないため、蝶番の破損時に鏡扉が脱落するような事態が良好に防がれる。
【0009】
また、本発明は、樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられているとともに、該下側の蝶番は、前記キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮に対応して上下摺動可能に構成され、前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は上下摺動不能に構成されていることを要旨とする。
【0010】
このように構成することで、キャビネット本体に温度変化による上下方向の伸縮が生じた時に、これに対応して下側の蝶番は上下方向に摺動し、蝶番に大きな負荷がかかることがなく、キャビネット本体に上下方向の伸縮があっても鏡扉は正常な開閉動作を維持できるものとなる。
また、下側の蝶番にはストッパーが備えられているため、鏡扉の開閉時に生ずる衝撃はこの下側の蝶番で受けることとなり、衝撃に対し上側の蝶番には負荷がかからず、上側の蝶番は破壊されることはないため、鏡扉の脱落が生ずることはない。
また、上側の蝶番はストッパーおよび摺動機能のない安価な蝶番で構成することができる。
【0011】
また、本発明は、樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられているとともに、該下側の蝶番は、前記キャビネット本体に固定される本体取付側部材と、前記鏡扉に固定される扉取付側部材が縦長の軸部で連結され、該軸部を介し前記本体取付側部材が前記扉取付側部材に対し上下摺動可能に構成され、前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は上下摺動不能に構成されていることを要旨とする。
【0012】
こうすれば、下側の蝶番は、本体取付側部材と扉取付側部材が縦長の軸部で連結されているため、キャビネット本体に温度変化による上下方向の伸縮が生じた際に、軸部を介して本体取付側部材が扉取付側部材に対して上下方向に摺動するため、キャビネット本体の上下方向の伸縮が生じても上下の蝶番に大きな負荷がかかることはなく、蝶番の破損が防がれ、鏡扉は正常な開閉動作を維持できるものとなる。
また、下側の蝶番にはストッパーが備えられているため、鏡扉の開閉時に生ずる衝撃は下側の蝶番に加わり、ストッパーの存在しない上側の蝶番は衝撃を受けることがなく、上側の蝶番は破損されることがないため、蝶番の破損時に鏡扉が脱落するような事態が良好に防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】上下の蝶番を用いて鏡扉が取り付けられたミラーキャビネットの斜視構成図である。
【図2】扉取付構造の第1実施例の下蝶番の斜視構成図である。
【図3】図2の下蝶番の断面構成図である。
【図4】第1実施例の扉取付構造における上蝶番の斜視構成図である。
【図5】図4の上蝶番の断面構成図である。
【図6】第1実施例の上蝶番の変更例を示す断面構成図である。
【図7】第1実施例の上蝶番の変更例を示す断面構成図である。
【図8】第1実施例の上蝶番の変更例を示す断面構成図である。
【図9】第1実施例の上蝶番の変更例を示す断面構成図である。
【図10】第1実施例の上蝶番の変更例を示す断面構成図である。
【図11】第1実施例の変更例を示し、キャビネット本体にボス部を設けた場合のキャビネット本体の要部拡大斜視構成図である。
【図12】第1実施例の変更例を示し、縦長孔を形成した上蝶番の斜視構成図である。
【図13】図12の上蝶番を図11のボス部に嵌め込んだ状態の斜視図である。
【図14】さらにボス部にネジを締め付けて上蝶番を取り付けた状態の斜視構成図である。
【図15】第1実施例の変更例を示し、キャビネット本体にリブを有する縦長孔を形成した場合の要部斜視構成図である。
【図16】図15の縦長孔に対し上蝶番を摺動部材を介して取り付ける前の分解斜視図である。
【図17】第2実施例の扉取付構造における上蝶番の斜視構成図である。
【図18】図17の上蝶番の断面構成図である。
【図19】第2実施例の扉取付構造における下蝶番の斜視構成図である。
【図20】図19の下蝶番の断面構成図である。
【図21】第2実施例の下蝶番の変更例を示す縦断面構成図である。
【図22】第2実施例の下蝶番の変更例を示す縦断面構成図である。
【図23】第2実施例の下蝶番の変更例を示す縦断面構成図である。
【図24】第2実施例の下蝶番の変更例を示す縦断面構成図である。
【図25】第2実施例の下蝶番の変更例を示す縦断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、ミラーキャビネットの鏡扉を開いた状態の斜視構成図である。
ミラーキャビネット1は、キャビネット本体2の前面に上蝶番8A,下蝶番8Bを介して開閉可能に中央鏡扉3Aと、その左右に袖鏡扉3B,3Bが取り付けられている。
キャビネット本体2はポリプロピレン(PP)製であり、耐薬品性が高く、内部には収納室S,S,Sが形成されて、各収納室S内には複数の収納トレイ4,4が設けられている。また、キャビネット本体2の上端側には照明ランプ5,5が設けられ、照明ランプ5,5の前面には照明カバー6,6が設けられている。
【0015】
このキャビネット本体2前面の上下の取付面2a,2aにそれぞれ上蝶番8A,下蝶番8Bが取り付けられ、上蝶番8A,下蝶番8Bは、鏡扉3A,3B,3Bのそれぞれの上端側の上フレーム7aおよび下端側の下フレーム7bに連結されている。
鏡扉3A,3B,3Bは、それぞれガラスミラーで構成されており、温度変化により伸縮することは殆どないが、キャビネット本体2はポリプロピレン製であるため、後収縮および線膨張係数が大であり、温度変化により伸縮するものである。例えば冬季には、このキャビネット本体2の上下寸法が収縮する。
【0016】
キャビネット本体2が伸縮すると、上下の取付面2a,2a間の上下寸法が変化するため、上下の上蝶番8A,下蝶番8Bに無理な捩れなどの負荷がかかることとなり、鏡扉3A,3B,3Bがスムーズに開閉できなくなる場合が生ずるが、本例では、キャビネット本体2が温度変化により伸縮しても上下の上蝶番8A,下蝶番8B間の寸法は変化せず、上下の上蝶番8A,下蝶番8B間は常に同じ間隔となり、上蝶番8A,下蝶番8Bに無理な負荷がかからないように工夫されている。
【0017】
以下、中央鏡扉3Aの取付構造を例に挙げて説明するが、袖鏡扉3B,3Bの取付構造も同様なものである。
【実施例1】
【0018】
中央鏡扉3Aは、その上端側が上蝶番8Aを介してキャビネット本体2に取り付けられており、また、中央鏡扉3Aの下端側は下蝶番8Bを介してキャビネット本体2に取り付けられている。
先ず、下蝶番8Bの構成を、図2の斜視図で、また図3の断面図で説明する。
下蝶番8Bは、本体取付側部材81と、扉取付側部材82と、両者を回動可能に連結する軸部83で構成されている。
本体取付側部材81は、キャビネット本体の取付面2aに3本のネジ11,11,11で取り付けられる固定部81aの下端に、略水平状にアーム部81bが一体状に突出しており、このアーム部81bに軸部83を遊挿できる軸孔85が形成されている。
【0019】
一方の扉取付側部材82は、2本のビス10,10で中央鏡扉3Aの下端の下フレーム7bに取り付けられるものであり、軸部83の上端がカシメて固定されており、扉取付側部材82の軸部83側の先端には垂下状に回転規制用のストッパー84が一体形成されており、ストッパー84の下端に略水平に軸受アーム部82aが形成されている。この軸受アーム部82aに軸部83の下端がカシメ固定部83aでカシメ固定されている。
また、軸孔85の上下面には扉取付側部材82との間に摺動材13が介装されており、この摺動材13により本体取付側部材81に対し扉取付側部材82がスムーズに水平面内で回動できるように構成されている。
このように、軸部83を中心として本体取付側部材81に対し扉取付側部材82が回動し、所定角度になるとストッパー84に当接して回動が規制される。即ち、中央鏡扉3Aの開き角度がこのストッパー84で規制されるように構成されている。
【0020】
次に、上蝶番8Aの構成を、図4の斜視図で、また図5の断面図で説明する。
上蝶番8Aは、本体取付側部材81と、扉取付側部材82が、軸部83で回動可能に連結されている。
本体取付側部材81は、ネジ11でキャビネット本体の取付面2aに取付固定される固定部81aの上端から略水平に一体状に突出してアーム部81bが形成されている。
扉取付側部材82は、軸部83が遊挿される軸孔85が形成されており、ビス10,10で中央鏡扉3Aの上フレーム7a上に取付固定されるものである。
軸部83は、その上端がカシメ固定部83aでカシメられて本体取付側部材のアーム部81bに固定されており、軸部83の下端には、鍔状に外側へ突出した抜止部83bが形成されている。
【0021】
本例では、軸孔85からアーム部81bに至る上クリアランスaは、例えば上蝶番8Aと下蝶番8B間の上下寸法の0.6%以上となるクリアランスに設定されており、また、軸孔85から抜止部83bに至る下クリアランスbは、上蝶番8Aと下蝶番8B間の寸法の0.3%以上のクリアランスとなるように設定されている。
即ち、上クリアランスaは、温度の低い寒い時にキャビネット本体2が上下方向に縮む場合の縮みを吸収できるクリアランスに設定され、下クリアランスbは、高温時にキャビネット本体2の伸びを吸収できるクリアランスに設定されている。
【0022】
このように、図2および図3に示す下蝶番8Bと、図4および図5に示す上蝶番8Aを用いて、鏡扉3Aを取り付けた場合には、キャビネット本体2が温度変化により上下方向に伸縮すると、これに対応して上蝶番8Aの本体取付側部材81が軸部83を介して上下方向に摺動移動することとなり、これにより上蝶番8Aおよび下蝶番8Bには何ら負荷がかかることはなく、そのためキャビネット本体が上下方向に伸縮しても鏡扉3Aは正常な開閉動作を維持できるものである。
上蝶番8Aにはストッパーが存在せず、下蝶番8Bにストッパー84が備えられているため、鏡扉3Aを開閉する時の衝撃は、このストッパー84の部分に加わり、大きな衝撃により破損するのは下蝶番8B側であり、上蝶番8Aには何ら衝撃が加わらないために上蝶番8Aは破損するようなことはなく、この上蝶番8Aにより良好に鏡扉3Aはキャビネット本体2側に支持されるため、従来のように、上蝶番8A側の破損によりキャビネット本体2から鏡扉3Aが脱落するような事態は生じないものとなる。
【0023】
なお、この第1実施例において、上蝶番8Aは、図6,図7,図8,図9,図10に断面図で示すような構造のものを採用することもできる。
図6で示す上蝶番8Aは、軸部83の外周に筒状の摺動材13を設けたものであり、この摺動材13は軸孔85内に挿通されるものである。
このような摺動材13を設けておけば、摺動材13を介して軸部83の上下摺動がスムーズに行われて、軸部83或いは軸孔85の摩耗を良好に防げるものとなり、また、キャビネット本体2の温度変化による上下方向への伸縮時にスムーズに上蝶番8Aが上下摺動できるものとなる。
【0024】
次に、図7で示すものは、軸孔85の内周に摺動材13を設けたものであり、この摺動材13内に軸部83が上下摺動可能に配置されたものである。
このような構造でも、摺動材13を介在させてスムーズに軸部83が上下方向に摺動できるものとなる。
【0025】
また、図8で示すものは、扉取付側部材82に軸部83の下端をカシメ固定部83aでカシメ固定したものであり、本体取付側部材81のアーム部81bに軸部83が遊挿される軸孔85が形成されており、軸孔85から上方へ突出した軸部83の上端に、鍔状の抜止部83bが形成されたものである。
このような構造の上蝶番8Aにおいても、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮時に、本体取付側部材81が良好に上下方向に摺動移動して、温度変化による伸縮を良好に上蝶番8Aで吸収できるものとなる。
【0026】
次に、図9で示すものは、図8の軸部83の外周に、軸孔85内に挿通される摺動材13を設けたものであり、摺動材13によりスムーズな上下摺動が得られるものである。
さらに図10は、軸孔85の内周に摺動材13を設けて、この摺動材13に軸部83を通したものであり、摺動材13を介してスムーズに軸部83が上下動できるものとなる。
【0027】
なお、図11〜図14では、上蝶番8Aが軸部83を介さずに上下方向に摺動できるように構成した場合を示す。
この図11〜図14の場合は、下蝶番8Bは図2および図3に示すような構造のものが用いられる。
【0028】
図11に示すように、キャビネット本体の取付面2aに突出状に、ビス孔2c,2cを有するボス部2b,2b,2bを3個形成させておく。一方、上蝶番8Aの本体取付側部材81の固定部81aには、3個の上下に長い縦長孔81c,81c,81cを形成させておく。
この各縦長孔81c内に、図13のように各ボス部2bを遊挿させ、この状態で、各ボス部2bのビス孔2cに図14のようにネジ11をそれぞれ締め付けて、ネジ11により本体取付側部材81をキャビネット本体の取付面2aに取り付けることができる。
なお、ネジ11を強く締め付けても、ボス部2bの前端にネジ11が当接するため、本体取付側部材81の固定部81aは縦長孔81c,81c,81cを介して上下方向に摺動することができる。
【0029】
即ち、このような構造を採用しても、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮時に、上蝶番8Aが上下摺動できるものとなり、上蝶番8Aおよび下蝶番8Bには何ら負荷が加わることがなく、鏡扉3Aは正常な開閉動作を維持できるものとなる。
なお、図12,図13,図14に示す上蝶番8Aでは、軸部83は何ら摺動するものではなく、また、上蝶番8Aにはストッパーが設けられていないものである。
【0030】
さらに図15,図16で示すような取付構造で、上蝶番8Aを取り付けた場合でも、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮を良好に吸収できて、鏡扉3Aの正常な開閉動作を維持できるものとなる。
即ち、図15に示すように、キャビネット本体2の取付面2aに、裏側へ突出するリブ20aを外周に有する縦長孔20,20,20を3個形成させ、その両側に、裏側へ突出するボス部21,21を形成させておく。
【0031】
図16に示すように、取付面2aの裏側から、摺動部材9に突出形成した3個の突部91,91,91をそれぞれ縦長孔20,20,20内に挿通させ、取付面2aの表側から上蝶番8Aの本体取付側部材81を整合させ、表側からネジ11,11をそれぞれ縦長孔20,20,20を通して摺動部材9の各突部91にねじ込んで、摺動部材9と上蝶番8Aの本体取付側部材81をネジ11で連結する。
また、取付面2aの裏側から、頭部12aの大径のネジ12を、摺動部材9の左右側面側に形成されている縦長孔92を通してそれぞれキャビネット本体2のボス部21に締め付けて、摺動部材9を上下方向に摺動可能となるように取り付ける。
【0032】
このような上蝶番8Aの取付構造を採用した場合でも、縦長孔20,縦長孔92を介してキャビネット本体2に対し上蝶番8Aが上下方向に摺動可能となり、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮時に、上蝶番8Aが上下摺動できるものとなり、上蝶番8Aおよび下蝶番8Bには何ら負荷が加わることがなく、鏡扉3Aは正常な開閉動作を維持できるものとなる。
【実施例2】
【0033】
次に、第2実施例を図17〜図25において説明する。
図17は、上蝶番8Aの斜視図であり、図18は、上蝶番8Aの断面構成図である。また図19は、下蝶番8Bの斜視図であり、図20は、下蝶番8Bの断面図である。
この図17の上蝶番8Aおよび図19の下蝶番8Bを用いて、図1に示すように、キャビネット本体2に鏡扉3A,3Bを取り付けることができる。
【0034】
図17および図18において、上蝶番8Aを説明する。
上蝶番8Aは、本体取付側部材81と扉取付側部材82が軸部83で回動可能に連結されており、軸部83は上下に摺動するものではなく、また、上蝶番8Aにはストッパーは設けられていない。
なお、軸部83の外周側の扉取付側部材82とアーム部81b間およびアーム部81bと軸受アーム部82a間には摺動材13が介装されており、軸部83は軸受アーム部82aにカシメ固定部83aでカシメ固定されている。また、アーム部81bに形成された軸孔85内に軸部83が遊挿されている。
【0035】
図19の斜視図で、また図20の断面図で示す下蝶番8Bは、本体取付側部材81と扉取付側部材82が、上下に長い軸部83で上下方向に摺動可能に連結されており、また、扉取付側部材82の端部には、垂下状にストッパー84が設けられ、このストッパー84により回転が規制され、鏡扉3Aの開き角度がこのストッパー84で規制されるように構成されている。
【0036】
また、図20に示すように、扉取付側部材82に形成されている軸孔85内に遊挿された軸部83の上端には、鍔状に抜止部83bが形成されており、軸部83の下端は本体取付側部材81のアーム部81bにカシメ固定部83aでカシメ固定されている。
このような構造の下蝶番8Bによれば、軸部83を介して本体取付側部材81が扉取付側部材82に対し上下方向に摺動できるものであるため、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮に対応して、下蝶番8Bが上下方向へ摺動することができ、これにより上蝶番8Aおよび下蝶番8Bには何ら負荷が加わることがなく、鏡扉3Aは正常な開閉動作を維持できるものとなる。
【0037】
また、下蝶番8Bにはストッパー84が設けられており、鏡扉3Aを開閉する時の衝撃は、このストッパー84の部分に加わり、大きな衝撃により破損するのは下蝶番8B側であり、上蝶番8Aには何ら衝撃が加わらないために上蝶番8Aは破損するようなことはなく、上蝶番8Aにより良好に鏡扉3Aはキャビネット本体2側に支持されるため、従来のように、上蝶番8A側の破損によりキャビネット本体2から鏡扉3Aが脱落するような事態は生じないものとなる。
【0038】
なお、この第2実施例において、下蝶番8Bは、図21,図22,図23,図24,図25に断面図で示すような構造のものを採用することもできる。
図21に断面図で示す下蝶番8Bは、軸部83の外周に筒状の摺動材13を設けたものであり、この摺動材13は軸孔85内に挿通されるものである。
このような摺動材13を設けておけば、摺動材13を介して軸部83の上下摺動がスムーズに行われて、軸部83或いは軸孔85の摩耗を良好に防げるものとなり、また、キャビネット本体2の温度変化による上下方向への伸縮時にスムーズに下蝶番8Bが上下摺動できるものとなる。
【0039】
次に、図22に断面図で示す下蝶番8Bは、軸孔85の内周に摺動材13を設けたものであり、この摺動材13内に軸部83が上下摺動可能に配置されたものである。
このような構造でも、摺動材13を介してスムーズに軸部83が上下方向に摺動できるものとなる。
【0040】
また、図23に断面図で示す下蝶番8Bでは、軸部83の上端を扉取付側部材82にカシメ固定部83aで固定し、本体取付側部材81のアーム部81bに軸孔85を形成して軸部83を遊挿させ、軸部83の下端に鍔状の抜止部83bを形成させたものである。
このような構造の下蝶番8Bにおいても、キャビネット本体2の温度変化による上下方向の伸縮時に、本体取付側部材81が良好に上下方向に摺動移動して、温度変化による伸縮を良好に下蝶番8Bで吸収できるものとなる。
【0041】
なお、図24に断面図で示すものは、図23の軸部83の外周に、軸孔85内に挿通される摺動材13を設けたものであり、摺動材13によりスムーズな上下摺動が得られるものである。
さらに図25に断面図で示す下蝶番8Bは、図23の軸孔85の内周に摺動材13を設けて、この摺動材13に軸部83を通したものであり、摺動材13を介してスムーズに軸部83が上下動できるものとなる。
【符号の説明】
【0042】
1 ミラーキャビネット
2 キャビネット本体
2a 取付面
2b ボス部
2c ビス孔
3A 中央鏡扉
3B 袖鏡扉
7a 上フレーム
7b 下フレーム
8A 上蝶番
8B 下蝶番
9 摺動部材
10 ビス
11 ネジ
12 ネジ
13 摺動材
20 縦長孔
20a リブ
21 ボス部
81 本体取付側部材
81a 固定部
81b アーム部
81c 縦長孔
82 扉取付側部材
82a 軸受アーム部
83 軸部
83a カシメ固定部
83b 抜止部
84 ストッパー
85 軸孔
91 突部
92 縦長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、
前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられ、
前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は、前記キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮に対応して上下摺動可能に構成されている
ことを特徴とするミラーキャビネットの扉取付構造。
【請求項2】
樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、
前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられ、
前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は、前記キャビネット本体に固定される本体取付側部材と、前記鏡扉に固定される扉取付側部材が縦長の軸部で連結され、該軸部を介し前記本体取付側部材が前記扉取付側部材に対し上下摺動可能に構成されている
ことを特徴とするミラーキャビネットの扉取付構造。
【請求項3】
樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、
前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられているとともに、該下側の蝶番は、前記キャビネット本体の温度変化による上下方向の伸縮に対応して上下摺動可能に構成され、
前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は上下摺動不能に構成されている
ことを特徴とするミラーキャビネットの扉取付構造。
【請求項4】
樹脂製キャビネット本体に上下の蝶番を用いて鏡扉を取り付ける取付構造において、
前記下側の蝶番には、前記鏡扉の開き角度を規制するストッパーが備えられているとともに、該下側の蝶番は、前記キャビネット本体に固定される本体取付側部材と、前記鏡扉に固定される扉取付側部材が縦長の軸部で連結され、該軸部を介し前記本体取付側部材が前記扉取付側部材に対し上下摺動可能に構成され、
前記上側の蝶番にはストッパーは存在せず、該上側の蝶番は上下摺動不能に構成されている
ことを特徴とするミラーキャビネットの扉取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−10780(P2011−10780A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156427(P2009−156427)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】