説明

ミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置

【課題】装置の小型化および低コスト化を図りつつ、駆動の際、可動板に撓みが生じることを防止または抑制することができ、可動板を第1の軸および第1の軸に直交する第2の軸の周りに回動(搖動)させることのできるミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】ミラーデバイス1は、枠状部材14と、1対の第2の軸部材15a、15bと、光反射性を有する光反射部12を備える可動板11と、1対の第1の軸部材13a、13bと、枠状部材14に設けられ、長手形状をなす第2永久磁石20a、20bと、可動板11に設けられ、長手形状をなす第1永久磁石20cとを備え、第2永久磁石20a、20bは、その軸線が第2の軸部材15a、15bの軸線に対して傾斜するように配置され、第1永久磁石20cは、その軸線が第1の軸部材13a、13bの軸線に対して直交するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プロジェクター、プリンター等にて光走査により描画を行うための光スキャナーとして、特許文献1に、2次元的に光を走査する光スキャナーが開示されている。
特許文献1に記載の光スキャナーは、枠状部材と、枠状部材を第1の軸周りに回動可能とするように、枠状部材の第1の軸に沿う方向の両端に設けられた1対の第1の軸部材と、枠状部材の内側に設けられ、光反射性を有する光反射部を備える可動板と、可動板を第1の軸に直交する第2の軸周りに回動可能とするように、可動板の第2の軸に沿う方向の両端に設けられ、可動板を枠状部材に支持する1対の第2の軸部材と、枠状部材に設けられ、両極が第1の軸を挟んで配置された2つの第1永久磁石と、可動板に設けられ、両極が第1の軸を挟んで配置された第2永久磁石と、枠状部材に対向するように配置され、電圧の印加により第1永久磁石および第2永久磁石に作用する磁界を発生するコイルと、コイルに電圧を印加する電圧印加手段とを備えている。そして、第1永久磁石および第2永久磁石は、第1の軸(第2の軸)に対して傾斜し、かつ第1永久磁石の方向と第2永久磁石の磁極の方向とが同じになるように配置されている。
【0003】
しかながら、特許文献1に記載の光スキャナーでは、第2永久磁石の軸線が第2の軸に対して傾斜しているので、可動板と第2永久磁石と各第2の軸部材とで構成され、第2の軸部材を回動軸とする振動系における質量の分布が第2の軸に対して対称にはならず、これにより、駆動の際、可動板に撓みが生じるという問題がある。
また、第2永久磁石の軸線が第2の軸に対して傾斜しているので、可動板が第2の軸の周りに回動するモードに加えて、可動板がその面内において回動するモードが生じ、これにより、駆動の際、可動板は、第1の軸および第2の軸の周りに回動しつつ、その面内においても回動してしまうという問題がある。
また、第2永久磁石の軸線が第2の軸に対して傾斜しているので、可動板を第2の軸周りに回動させる駆動力が小さく、このため、可動板の第2の軸周りの回動角が小さいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−79266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、装置の小型化および低コスト化を図りつつ、駆動の際、可動板に撓みが生じることを防止または抑制することができ、可動板を第1の軸および第1の軸に直交する第2の軸の周りに回動(搖動)させることのできるミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のミラーデバイスは、光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに搖動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、装置の小型化および低コスト化を図りつつ、可動板を第1の軸および第1の軸に直交する第2の軸の周りに回動(搖動)させることができる。また、簡単かつ小型な構成でありながら、第1永久磁石と第2永久磁石が設けられているため、コイルの数が少なくても大きな駆動力を得ることができる。これにより、振動系の走査角を大きくすることができるとともに、高速走査も可能となる。
【0008】
また、第1永久磁石は、その軸線が第1の軸部材の軸線に対して直交するように配置されているので、駆動の際、可動板に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板の第1の軸周りの回動角を大きくすることができる。
また、第2永久磁石は、その軸線が第2の軸部材の軸線に対して傾斜するように配置され、これにより第1永久磁石の軸線と第2永久磁石の軸線とが直交しないので、第1永久磁石用の硬磁性体および第2永久磁石用の硬磁性体をそれぞれ枠状部材および可動板に設置した状態で、着磁を確実に行うことができる。
【0009】
本発明のミラーデバイスでは、前記第2の軸部材の軸線と、前記第2永久磁石の軸線とのなす角θは、30°以上60°以下であることが好ましい。
これにより、円滑かつ確実に可動板を第2の軸の周りに回動させることができ、また、前記着磁を確実に行うことができる。
本発明のミラーデバイスでは、前記第1永久磁石は、前記第1の軸部材の軸線に対して線対称に配置されていることが好ましい。
これにより、駆動の際、可動板に撓みが生じることをより確実に防止または抑制することができ、また、可動板がその面内において回動するモードが生じることをより確実に防止または抑制することができる。
【0010】
本発明のミラーデバイスでは、前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、一方の前記第2永久磁石の一方の端部と他方の前記第2永久磁石の一方の端部とが前記第2の軸部材の軸線に対して線対称に配置されていることが好ましい。
これにより、可動板をより円滑に第2の軸の周りに回動させることができる。
本発明のミラーデバイスでは、前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の一方の端部が前記第1の軸部材の軸線上に配置されていることが好ましい。
これにより、可動板をより円滑に第2の軸の周りに回動させることができる。
【0011】
本発明のミラーデバイスでは、前記可動板は、凹部を有しており、
前記第1永久磁石は、前記凹部内に配置されていることが好ましい。
これにより、第1永久磁石と、可動板と、第1の軸部材とで構成される、第1の軸部材を回動軸とする第1の振動系の慣性モーメントを小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0012】
本発明の光スキャナーは、光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに揺動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、
前記枠状部材に対向して配置され、電圧の印加により前記第1永久磁石および前記第2永久磁石に作用する磁界を発生するコイルと、
前記コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されており、
前記電圧印加手段は、第1周波数の第1の電圧を発生させる第1電圧発生部と、前記第1周波数と周波数の異なる第2周波数の第2の電圧を発生させる第2電圧発生部と、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを重畳する電圧重畳部とを備え、前記電圧重畳部で重畳された電圧を前記コイルに印加することにより、前記可動板を前記第1周波数で前記第2の軸周りに揺動させるとともに、前記第2周波数で前記第1の軸周りに揺動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
これにより、装置の小型化および低コスト化を図りつつ、可動板を第1の軸および第1の軸に直交する第2の軸の周りに回動(搖動)させることができる。また、簡単かつ小型な構成でありながら、第1永久磁石と第2永久磁石が設けられているため、コイルの数が少なくても大きな駆動力を得ることができる。これにより、振動系の走査角を大きくすることができるとともに、高速走査も可能となる。
【0014】
また、第1永久磁石は、その軸線が第1の軸部材の軸線に対して直交するように配置されているので、駆動の際、可動板に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板の第1の軸周りの回動角を大きくすることができる。
また、第2永久磁石は、その軸線が第2の軸部材の軸線に対して傾斜するように配置され、これにより第1永久磁石の軸線と第2永久磁石の軸線とが直交しないので、第1永久磁石用の硬磁性体および第2永久磁石用の硬磁性体をそれぞれ枠状部材および可動板に設置した状態で、着磁を確実に行うことができる。
【0015】
本発明の画像形成装置は、光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに揺動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、
前記枠状部材に対向して配置され、電圧の印加により前記第1永久磁石および前記第2永久磁石に作用する磁界を発生するコイルと、
前記コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されており、
前記電圧印加手段は、第1周波数の第1の電圧を発生させる第1電圧発生部と、前記第1周波数と周波数の異なる第2周波数の第2の電圧を発生させる第2電圧発生部と、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを重畳する電圧重畳部とを備え、前記電圧重畳部で重畳された電圧を前記コイルに印加することにより、前記可動板を前記第1周波数で前記第2の軸周りに揺動させるとともに、前記第2周波数で前記第1の軸周りに揺動させるよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、装置の小型化および低コスト化を図りつつ、可動板を第1の軸および第1の軸に直交する第2の軸の周りに回動(搖動)させることができる。また、簡単かつ小型な構成でありながら、第1永久磁石と第2永久磁石が設けられているため、コイルの数が少なくても大きな駆動力を得ることができる。これにより、振動系の走査角を大きくすることができるとともに、高速走査も可能となる。
【0017】
また、第1永久磁石は、その軸線が第1の軸部材の軸線に対して直交するように配置されているので、駆動の際、可動板に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板の第1の軸周りの回動角を大きくすることができる。
また、第2永久磁石は、その軸線が第2の軸部材の軸線に対して傾斜するように配置され、これにより第1永久磁石の軸線と第2永久磁石の軸線とが直交しないので、第1永久磁石用の硬磁性体および第2永久磁石用の硬磁性体をそれぞれ枠状部材および可動板に設置した状態で、着磁を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光スキャナーの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す光スキャナーが備える駆動手段の電圧印加手段を示すブロック図である。
【図4】図3に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部での発生電圧の一例を示す図である。
【図5】本発明の光スキャナーの第2実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の画像形成装置の実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態では、代表的に、本発明のミラーデバイスを光スキャナーに適用した場合について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の光スキャナーの第1実施形態を示す平面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図1に示す光スキャナーが備える駆動手段の電圧印加手段を示すブロック図、図4は、図3に示す第1の電圧発生部および第2の電圧発生部での発生電圧の一例を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言い、図2中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0020】
図1および図2に示すように、光スキャナー10は、ミラーデバイス1と、ホルダー17と、コイル30と、コイル30に電圧を印加する電圧印加手段40とを備えている。ミラーデバイス1は、可動板本体110および光反射性を有する光反射部12を備える可動板11と、1対の軸部材(第1の軸部材)13a、13bと、枠状部材14と、1対の軸部材(第2の軸部材)15a、15bと、支持枠16と、1対の永久磁石(第2永久磁石)20a、20bと、永久磁石(第1永久磁石)20cとを備えている。光反射部12は、可動板本体110の上面に設けられている。
【0021】
永久磁石20cと、可動板11(光反射部12)と、軸部材13a、13bと、永久磁石20a、20bと、枠状部材14と、軸部材15a、15bとで、軸部材15a、15bを回動軸とする第2の振動系が構成され、永久磁石20cと、可動板11(光反射部12)と、軸部材13a、13bとで、軸部材13a、13bを回動軸とする第1の振動系が構成される。
【0022】
枠状部材14は、軸部材15a、15bによって支持枠16に支持されている。また、可動板11は、枠状部材14の内側に配置され、軸部材13a、13bによって枠状部材14に支持されている。すなわち、枠状部材14は、可動板11を囲んでいる。また、支持枠16は、ホルダー17に支持されている。
可動板11の形状は、図示の構成では、平面視で円形をなしているが、これに限定されず、平面視で、例えば、楕円形、四角形等の多角形であってもよい。また、枠状部材14の形状は、図示の構成では、平面視でその外形形状が四角形をなしているが、枠状であれば特に限定されず、平面視で外形形状が、例えば、円形、楕円形、五角形等の他の多角形であってもよい。
【0023】
軸部材13a、13bおよび軸部材15a、15bは、それぞれ、弾性変形可能である。軸部材15a、15bは、枠状部材14を図1に示すX軸(第2の軸)周りに回動(搖動)可能とするように、枠状部材14と支持枠16を連結している。この場合、軸部材15a、15bは、枠状部材14のX軸に沿う方向の両端に接続され、枠状部材14を支持枠16に両持ち支持する。また、軸部材13a、13bは、可動板11を図1に示すY軸(第1の軸)周りに回動(搖動)可能とするように、可動板11と枠状部材14を連結している。この場合、軸部材13a、13bは、可動板11のY軸に沿う方向の両端に接続され、可動板11を枠状部材14に両持ち支持する。なお、X軸とY軸は、互いに直交している。また、枠状部材14の中心および可動板11の中心は、図1の平面視にて、X軸とY軸の交点上に位置している。なお、軸部材15a、15bの軸線は、X軸と一致し、軸部材13a、13bの軸線は、Y軸と一致している。
枠状部材14をX軸周りに回動可能とし、可動板11をY軸周りに回動可能とすることにより、可動板11をX軸およびY軸の直交する2軸周りに回動させることができる。
【0024】
可動板11、軸部材13a、13b、枠状部材14、軸部材15a、15b、および支持枠16は、例えばシリコンを主材料として一体に形成されている。シリコンを主材料とすることにより、優れた回動特性を実現できるとともに、優れた耐久性を発揮することができる。また、微細な処理(加工)が可能であり、光スキャナー10の小型化を図ることができる。なお、SOI基板等の積層構造を有する基板を用いてこれらを形成してもよく、この場合、可動板11、軸部材13a、13b、枠状部材14、軸部材15a、15b、および支持枠16が一体となるように、積層構造基板の1つの層で形成するのが好ましい。
【0025】
ホルダー17は、例えば、ガラスやシリコンを主材料として構成されている。ホルダー17の形状は、図示の構成では、凹状をなし、また、平面視で四角形をなしているが、支持枠16を支持することができれば特に限定されない。支持枠16とホルダー17との接合方法は、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合してもよいし、陽極接合により接合してもよい。また、例えば、支持枠16とホルダー17との間にSiOを主材料として構成されたSiO層が介在していてもよい。
【0026】
枠状部材14の下面(ホルダー17と対向する面)には、1対の永久磁石20a、20bが設けられており、可動板11の下面(光反射部12とは反対側の面)には、永久磁石20cが設けられている。なお、永久磁石20a、20bと枠状部材14との接合方法、永久磁石20cと可動板11との接合方法は、それぞれ、特に限定されず、例えば接着剤を用いて接合することができる。また、ホルダー17の上面には、永久磁石20a、20bおよび20cに作用する磁界を発生するコイル30が設けられている。コイル30は電圧印加手段40に電気的に接続されている。永久磁石20a、20b、20c、コイル30、および電圧印加手段40によって可動板11および枠状部材14を回動させる駆動手段が構成される。
【0027】
永久磁石20a、20bは、それぞれ、長手形状、図示の構成では、板状でかつ真っ直ぐな棒状をなしており、その長手方向に磁化されている。すなわち、永久磁石20aのS極とN極とを結ぶ線分の方向が、永久磁石20aの長手方向と一致している。換言すれば、永久磁石20aのS極とN極とを結ぶ線分が、永久磁石20aの軸線と一致している。永久磁石20bについても同様である。
永久磁石20aと永久磁石20bとは、形状、寸法等が異なっていてもよいが、本実施形態では、永久磁石20aと永久磁石20bとは、形状および寸法が同一に設定されている。なお、永久磁石20a、20bの形状は、それぞれ、長手形状であれば、特に限定されるものではない。
永久磁石20a、20bは、それぞれ、その両極がX軸を挟んで配置されている。すなわち、永久磁石20a、20bは、それぞれ、両端部(各磁極)が、X軸で分割される2つの領域に位置するように配置されている。そして、永久磁石20a、20bは、それぞれ、その軸線がX軸およびY軸に対して傾斜するように配置されている。
【0028】
ここで、後述するように、永久磁石20cは、その軸線がY軸に対して直交するように配置されているので、永久磁石20aの軸線および永久磁石20bの軸線がX軸に対して傾斜していることにより、永久磁石20aの軸線および永久磁石20bの軸線と、永久磁石20cの軸線とは直交しない。これによって、永久磁石20a用の着磁前の硬磁性体、永久磁石20b用の着磁前の硬磁性体および永久磁石20c用の着磁前の硬磁性体をそれぞれ枠状部材14および可動板11に設置した状態で、各硬磁性体の着磁を確実に行うことができる。
【0029】
また、X軸、すなわち軸部材15a、15bの軸線と、永久磁石20a、20bの軸線とのなす角(X軸に対する永久磁石20a、20bの軸線の傾斜角)θは、それぞれ、特に限定されないが、30°以上60°以下であるのが好ましく、45°以上60°以下であることがより好ましく、45°であるのがさらに好ましい。このように永久磁石20a、20bを設けることで、円滑かつ確実に可動板11をX軸の周りに回動させることができ、また、前記着磁を確実に行うことができる。これに対し傾斜角θが前記下限値未満であると、電圧印加手段40によりコイル30に印加される電圧の強さなどの諸条件によっては、可動板11を十分にX軸周りに回動させることができない場合がある。一方、傾斜角θが前記上限値を超えると、諸条件によっては、着磁前の硬磁性体を枠状部材14および可動板11に設置した状態でその硬磁性体を同時に着磁して永久磁石20a、20b、20cとする際、十分に着磁することができない場合がある。また、永久磁石20a、20bを着磁した後に永久磁石20cの他方を着磁する場合や、永久磁石20cを着磁した後に永久磁石20a、20bを着磁する場合は、着磁のための磁界によって着磁済の永久磁石に大きな力が加わり、軸部材が破壊されるため、着磁ができない場合がある。
【0030】
永久磁石20aの傾斜角θと、永久磁石20bの傾斜角θとは、同一でもよく、また、異なっていてもよいが、本実施形態では、同一に設定されている。すなわち、永久磁石20a、20bは、それぞれの軸線が互いに平行となるように配置されている。そして、本実施形態では、永久磁石20a、20bは、平面視にて、永久磁石20aと永久磁石20bとが枠状部材14(可動板11)の中心に対して点対称となるように配置されている。これにより、可動板11を円滑にX軸周りおよびY軸周りに回動させることができる。なお、永久磁石20aのN極と永久磁石20bのS極とが点対称となり、永久磁石20aのS極と永久磁石20bのN極とが点対称となっている。
【0031】
また、永久磁石20a、20bは、それぞれ、永久磁石20aの一方の端部(N極端)と、永久磁石20bの一方の端部(S極端)とが、X軸、すなわち軸部材15a、15bの軸線に対して線対称となるように配置されている。また、永久磁石20aは、一方の端部(N極)がY軸、すなわち軸部材13a、13bの軸線上に位置するように配置され、永久磁石20bは、一方の端部(S極)がY軸上に位置するように配置されている。
【0032】
具体的には、永久磁石20aは、枠状部材14における軸部材13aの接続部(軸部材13aと枠状部材14の接続部)に、一方の端部(N極端)が位置するように配置されている。同様に、永久磁石20bは、枠状部材14における軸部材13bの接続部(軸部材13bと枠状部材14の接続部)に、一方の端部(S極端)が位置するように配置されている。これにより、これにより、円滑かつ確実に可動板11をX軸の周りに回動させることができる。
【0033】
また、永久磁石20a、20bは、それぞれ、永久磁石20a、20bの長手方向(磁極方向)の長さをL、枠状部材14のY軸方向の長さをdとしたとき、L×Sinθ>0.5dの関係を満たすように、その寸法、姿勢(配置)等が設定されている。これにより、永久磁石20a、20bの両端部をX軸で分割される2つの領域に配置することができる。
【0034】
また、永久磁石20cは、長手形状、図示の構成では、板状でかつ真っ直ぐな棒状をなしており、その長手方向に磁化されている。すなわち、永久磁石20cのS極とN極とを結ぶ線分の方向が、永久磁石20cの長手方向と一致している。換言すれば、永久磁石20cのS極とN極とを結ぶ線分が、永久磁石20cの軸線と一致している。なお、永久磁石20cの形状は、長手形状であれば、特に限定されるものではない。
【0035】
この永久磁石20cは、その両極がY軸を挟んで配置されている。そして、永久磁石20cは、その軸線がY軸に対して直交するように配置されている。また、永久磁石20cは、両極がX軸を挟んで配置されている。すなわち、永久磁石20cは、両端部(各磁極)が、Y軸で分割される2つの領域に位置するように配置されている。永久磁石20cの軸線がY軸に対して直交していることにより、円滑かつ確実に可動板11をY軸の周りに回動させることができる。すなわち、駆動の際、可動板11に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板11がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができる。また、可動板11のY軸周りの回動角を大きくすることができる。
【0036】
また、永久磁石20cは、平面視にて、Y軸、すなわち軸部材13a、13bの軸線に対して線対称となるように配置されている。これにより、駆動の際、可動板11に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板11がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができる。
また、永久磁石20cは、平面視にて、X軸、すなわち軸部材15a、15bの軸線に対して線対称となるように配置されており、その中心が可動板11の中心と一致している。これにより、駆動の際、可動板11に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板11がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができる。
【0037】
なお、本実施形態では、永久磁石20a、20bは、枠状部材14の下面(ホルダー17と対向する面)に設けられているが、これに限らず、永久磁石20aは、枠状部材14の上面(光反射部12が設けられている側の面)に設けられていてもよく、また、枠状部材14の下面と上面の両方に設けられていてもよい。同様に、永久磁石20bは、枠状部材14の上面に設けられていてもよく、また、枠状部材14の下面と上面の両方に設けられていてもよい。なお、永久磁石20aが枠状部材14の上面に設けられる場合は、永久磁石20bも枠状部材14の上面に設けられることが好ましく、また、永久磁石20aが枠状部材14の下面と上面の両方に設けられる場合は、永久磁石20bも枠状部材14の下面と上面の両方に設けられることが好ましい。
【0038】
永久磁石20a、20b、20cとしては、例えば、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、ボンド磁石などの硬磁性体を着磁したものを好適に用いることができる。また、硬磁性体を着磁して永久磁石20a、20b、20cとする際は、着磁前の硬磁性体を枠状部材14および可動板11に設置した後に着磁を行う。既に着磁がなされて永久磁石20a、20b、20cとなったものを枠状部材14および可動板11に設置しようとすると、永久磁石20a、20b、20cを枠状部材14および可動板11上に配置した際に、永久磁石20a、20b、20cのうちのいずれか2つまたは3つが磁力によって引き寄せ合い、その力によって枠状部材14および可動板11の構造が破壊されたり、また、永久磁石20a、20b、20cのうちのいずれか2つまたは3つが吸着し、永久磁石20a、20b、20cを設置できないからである。
【0039】
なお、この光スキャナー10では、永久磁石20a、20bの軸線と永久磁石20cの軸線とが直交していないので、前記着磁を確実に行うことができる。
永久磁石20a、20b、20cの直下には、コイル30が設けられている。すなわち、可動板11および枠状部材14の下面に対向するように、コイル30が設けられている。これにより、コイル30から発生する磁界を効率的に永久磁石20a、20b、20cに作用させることができる。これにより、光スキャナー10の省電力化および小型化を図ることができる。
【0040】
コイル30は、電圧印加手段40と電気的に接続されている。そして、電圧印加手段40によりコイル30に電圧が印加されることで、コイル30からX軸およびY軸に直交する磁束を有する磁界が発生する。なお、コイル30は磁心に巻き付けられていてもよい。
電圧印加手段40は、図3に示すように、可動板11をX軸周りに回動させるための第1の電圧V1を発生させる第1の電圧発生部41と、可動板11をY軸周りに回動させるための第2の電圧V2を発生させる第2の電圧発生部42と、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを重畳し、その電圧をコイル30に印加する電圧重畳部43とを備えている。
【0041】
第1の電圧発生部41は、図4(a)に示すように、周期T1で周期的に変化する第1の電圧V1(垂直走査用電圧)を発生させるものである。
第1の電圧V1は、鋸波のような波形をなしている。そのため、光スキャナー10は効果的に光を垂直走査(副走査)することができる。なお、第1の電圧V1の波形は、これに限定されない。ここで、第1の電圧V1の周波数(1/T1)は、垂直走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、30〜80Hz(60Hz程度)であるのが好ましい。
【0042】
本実施形態では、第1の電圧V1の周波数は、永久磁石20cと、可動板11と、軸部材13a、13bと、永久磁石20a、20bと、枠状部材14と、軸部材15a、15bとで構成された第2の振動系のねじり共振周波数(共振周波数)と異なる周波数となるように調整されている。
一方、第2の電圧発生部42は、図4(b)に示すように、周期T1と異なる周期T2で周期的に変化する第2の電圧V2(水平走査用電圧)を発生させるものである。
【0043】
第2の電圧V2は、正弦波のような波形をなしている。そのため、光スキャナー10は効果的に光を主走査することができる。なお、第2の電圧V2の波形は、これに限定されない。
このような第2の電圧V2の周波数(第2周波数)は、第1の電圧V1の周波数(第1周波数)よりも大きいことが好ましい。すなわち、周期T2は、周期T1よりも短いことが好ましい。これにより、より確実かつより円滑に、可動板11をX軸周りに第1周波数で回動させつつ、Y軸周りに第2周波数で回動させることができる。
【0044】
また、第2周波数は、第1周波数と異なり、かつ、水平走査に適した周波数であれば、特に限定されないが、10〜40kHzであるのが好ましい。このように、第2の電圧V2の周波数を10〜40kHzとし、前述したように第1の電圧V1の周波数を60Hz程度とすることで、ディスプレイでの描画に適した周波数で、可動板11を互いに直交する2軸(X軸およびY軸)のそれぞれの軸周りに回動させることができる。ただし、可動板11をX軸およびY軸のそれぞれの軸周りに回動させることができれば、第1の電圧V1の周波数と第2の電圧V2の周波数との組み合わせは、特に限定されない。
【0045】
本実施形態では、第2周波数は、永久磁石20cと、可動板11と軸部材13a、13bとで構成される軸部材13a、13bを回動軸とする第1の振動系のねじり共振周波数(f2)と等しくなるように設定されている。つまり、第1の振動系は、そのねじり共振周波数f2が水平走査に適した周波数になるように設計(製造)されている。これにより、可動板11のY軸周りの回動角を大きくすることができる。また、第1周波数は、永久磁石20cと、可動板11と、軸部材13a、13bと、永久磁石20a、20bと、枠状部材14と、軸部材15a、15bとで構成される軸部材15a、15bを回動軸とする第2の振動系のねじり共振周波数(f1)の10分の1以下であることが望ましい。第2の振動系を非共振状態(振幅ゲインが1)で駆動するためには、第1周波数はf1の10分の1以下に設定する必要がある。10分の1より大きい周波数で駆動すると、第2の振動系の共振を起こす可能性があるからである。
【0046】
また、第2周波数は、第2の振動系を非共振状態(振幅ゲインが1)で駆動するため、第1周波数の10倍以上に設定することが望ましい。第2周波数が第1周波数に対して10倍未満であると、第2の電圧V2をコイル30に印加した時に、第2の振動系も回転運動してしまい、駆動信号のクロストークが発生してしまう。なお、上述のように、第1周波数はf1の10分の1以下が望ましいので、これらの関係から第2周波数は第1周波数よりも大きいことが望ましい。
【0047】
また、第2の振動系のねじり共振周波数をf1[Hz]とし、第1の振動系のねじり共振周波数をf2[Hz]としたとき、f1とf2とが、f2>f1の関係を満たすことが好ましく、f2≧10f1の関係を満たすことがより好ましい。これにより、より円滑に、可動板11をX軸周りに第1の電圧V1の周波数で回動させつつ、Y軸周りに第2の電圧V2の周波数で回動させることができる。f2≦f1とした場合は、第1周波数による第1の振動系の振動が起こる可能性がある。
【0048】
このような第1の電圧発生部41および第2の電圧発生部42は、それぞれ、制御部7に接続され、この制御部7からの信号に基づき駆動する。このような第1の電圧発生部41および第2の電圧発生部42には、電圧重畳部43が接続されている。
電圧重畳部43は、コイル30に電圧を印加するための加算器43aを備えている。加算器43aは、第1の電圧発生部41から第1の電圧V1を受けるとともに、第2の電圧発生部42から第2の電圧V2を受け、これらの電圧を重畳しコイル30に印加するようになっている。
【0049】
次に、光スキャナー10の駆動方法について説明する。なお、本実施形態では、前述したように、第1の電圧V1の周波数は、第2の振動系のねじり共振周波数と異なる値に設定されており、第2の電圧V2の周波数は、第1の振動系のねじり共振周波数と等しく、かつ、第1の電圧V1の周波数よりも大きくなるように設定されている(例えば、第1の電圧V1の周波数が60Hzで、第2の電圧V2の周波数が15kHz)。
例えば、図4(a)に示すような第1の電圧V1と、図4(b)に示すような第2の電圧V2とを電圧重畳部43にて重畳し、重畳した電圧をコイル30に印加する。
【0050】
すると、第1の電圧V1によって、枠状部材14と永久磁石20a、20bのN極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのN極との接合部付近をコイル30に引き付けようとするとともに、枠状部材14と永久磁石20a、20bのS極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのS極との接合部付近をコイル30から離間させようとする磁界(この磁界を「磁界A1」という)と、枠状部材14と永久磁石20a、20bのN極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのN極との接合部付近をコイル30から離間させようとするとともに、枠状部材14と永久磁石20a、20bのS極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのS極との接合部付近をコイル30に引き付けようとする磁界(この磁界を「磁界A2」という)とが交互に切り換わる。
【0051】
ここで、上述したように、永久磁石20a、20bは、それぞれの端部(磁極)が、X軸で分割される2つの領域に位置するように配置される。すなわち図1の平面視において、X軸を挟んで一方側に永久磁石20a、20bのN極が位置し、他方側にS極が位置している。そのため、磁界A1と磁界A2とが交互に切り換わることで、軸部材15a、15bを捩れ変形させつつ、枠状部材14が可動板11とともに、第1の電圧V1の周波数でX軸周りに回動する。なお、永久磁石20a、20bの両極が、X軸で分割される2つの領域のうち片方の領域のみに配置されている場合には、磁界A1またはA2によって永久磁石20a、20bに作用する回転トルクは、N極側とS極側でそれぞれX軸に対して逆回転の方向の力となる。このため、永久磁石20a、20bに対して全体として作用する回転トルクはいちじるしく減少することになり、枠状部材14および可動板11の回動効率が悪くなる。
【0052】
また、第1の電圧V1の周波数は、第2の電圧V2の周波数に比べて極めて低く設定されている。また、第2の振動系のねじり共振周波数は、第1の振動系のねじり共振周波数よりも低く設計されている(例えば、第1の振動系のねじり共振周波数の1/10以下)。つまり、第2の振動系は、第1の振動系よりも振動しやすいように設計されているため、枠状部材14は第1の電圧V1によってX軸周りに回動する。すなわち、第2の電圧V2によって、枠状部材14がX軸周りに回動してしまうことを防止することができる。
【0053】
一方、第2の電圧V2によって、枠状部材14と永久磁石20a、20bのN極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのN極との接合部付近をコイル30に引き付けようとするとともに、枠状部材14と永久磁石20a、20bのS極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのS極との接合部付近をコイル30から離間させようとする磁界(この磁界を「磁界B1」という)と、枠状部材14と永久磁石20a、20bのN極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのN極との接合部付近をコイル30から離間させようとするとともに、枠状部材14と永久磁石20a、20bのS極との接合部付近、および可動板11と永久磁石20cのS極との接合部付近をコイル30に引き付けようとする磁界(この磁界を「磁界B2」という)とが交互に切り換わる。
【0054】
ここで、上述したように、永久磁石20cは、それぞれの端部(磁極)が、Y軸で分割される2つの領域に位置するように配置される。すなわち図1の平面視において、Y軸を挟んで一方側に永久磁石20cのN極が位置し、他方側にS極が位置している。そのため、磁界B1と磁界B2とが交互に切り換わることで、軸部材13a、13bを捩れ変形させつつ、可動板11が第2の電圧V2の周波数でY軸まわりに回動する。
なお、永久磁石20cの軸線がY軸に対して傾斜している従来例では、磁界B1と磁界B2とが交互に切り換わると、可動板11に撓みが生じ、また、可動板11がその面内においても回動してしまう。
【0055】
しかし、この光スキャナー10では、永久磁石20cは、その軸線がY軸に対して直交するように配置されているので、前記可動板11の撓みおよびその面内における回動をそれぞれ抑制または防止することができ、また、可動板11のY軸周りの回動角を大きくすることができる。
なお、第2の電圧V2の周波数は、第1の振動系のねじり共振周波数と等しい。そのため、第2の電圧V2によって可動板11をY軸まわりに回動させることができる。つまり、第1の電圧V1によって、可動板11がY軸まわりに回動してしまうことを防止することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1の電圧V1と第2の電圧V2とを重畳させた電圧をコイル30に印加することで、可動板11をX軸周りに第1の電圧V1の周波数で回動させつつ、Y軸周りに第2の電圧のV2の周波数で回動させることができる。これにより、装置の低コスト化および小型化を図るとともに、可動板11をX軸およびY軸のそれぞれの軸周りに回動させることができる。また、簡単かつ小型な構成でありながら、永久磁石20a、20b、20cが設けられているため、コイルの数が少なくても大きな駆動力を得ることができる。これにより、振動系の走査角を大きくすることができるとともに、高速走査も可能となる。
【0057】
また、永久磁石20cは、その軸線が軸部材13a、13bの軸線に対して直交するように配置されているので、駆動の際、可動板11に撓みが生じることを防止または抑制することができ、また、可動板11がその面内において回動するモードが生じることを防止または抑制することができ、また、また、可動板11のX軸周りの回動角を大きくすることができる。
【0058】
また、永久磁石20a、20bは、それぞれ、その軸線が軸部材15a、15bの軸線に対して傾斜するように配置され、これにより永久磁石20aの軸線および永久磁石20bの軸線と、永久磁石20cの軸線とは直交しないので、永久磁石20a用の硬磁性体、永久磁石20b用の硬磁性体および永久磁石20c用の硬磁性体をそれぞれ枠状部材14および可動板11に設置した状態で、着磁を確実に行うことができる。
また、第1の電圧V1および第2の電圧V2を適宜変更することで、第2の振動系および第1の振動系の構造を変更することなく、所望の振動特性を得ることができる。
【0059】
また、光スキャナー10は、枠状部材14に永久磁石20a、20bを設け、可動板11に永久磁石20cを設け、永久磁石20a、20b、20cに対向するようにホルダー17上にコイル30を設けている。つまり、第2の振動系および第1の振動系上には発熱体であるコイル30が設けられていない。そのため、通電によってコイル30から発生する熱による振動系の撓みや共振周波数の変化を防止または抑制することができる。その結果、光スキャナー10は、長時間の連続使用であっても所望の振動特性を発揮することができる。
【0060】
<第2実施形態>
図5は、本発明の光スキャナーの第2実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図5中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、第2実施形態の光スキャナー10では、ミラーデバイス1の可動板11の下面(光反射部12とは反対側の面)に、凹部111が形成されており、その凹部111内に、永久磁石20cが設置されている。本実施形態では、永久磁石20cの中心軸と、軸部材13a、13bの中心軸とが交差している。すなわち、永久磁石20cの中心軸と、軸部材13a、13bの中心軸との図5中の上下方向の位置が一致している。これにより第1の振動系の慣性モーメントを小さくすることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0062】
なお、凹部111は、本実施形態では、可動板本体110に形成されているが、これに限らず、例えば、可動板本体110に貫通孔が形成され、光反射部12が凹部111の底部となるように構成されていてもよい。
また、枠状部材14の下面(ホルダー17と対向する面)に、2つの凹部または枠状部材14を厚さ方向に貫通する孔を設け、その凹部内または孔内に、それぞれ、永久磁石20a、20bを設置してもよい。
【0063】
以上説明したような光スキャナー10は、光反射部12を備えているため、例えば、レーザープリンター、バーコードリーダー、走査型共焦点レーザー顕微鏡や、プロジェクター、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)のようなイメージング用ディスプレイ等の画像形成装置が備える光スキャナーに好適に適用することができる。
【0064】
<画像形成装置の実施形態>
図6は、本発明の画像形成装置の実施形態を模式的に示す図である。
本実施形態では、画像形成装置の一例として、光スキャナー10をイメージング用ディスプレイの光スキャナーとして用いた場合を説明する。なお、スクリーンSの長手方向を「横方向」といい、長手方向に直角な方向を「縦方向」という。また、X軸、すなわち回動中心軸XがスクリーンSの横方向と平行であり、Y軸、すなわち回動中心軸YがスクリーンSの縦方向と平行である。
【0065】
画像形成装置(プロジェクター)9は、レーザーなどの光を照出する光源装置(光源)91と、複数のダイクロイックミラー92、92、92と、光スキャナー10とを有している。
光源装置91は、赤色光を照出する赤色光源装置911と、青色光を照出する青色光源装置912と、緑色光を照出する緑色光源装置913とを備えている。
各ダイクロイックミラー92は、赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913のそれぞれから照出された光を合成する光学素子である。
【0066】
このようなプロジェクター9は、図示しないホストコンピューターからの画像情報に基づいて、光源装置91(赤色光源装置911、青色光源装置912、緑色光源装置913)から照出された光をダイクロイックミラー92で合成し、この合成された光が光スキャナー10によって2次元走査され、スクリーンS上でカラー画像を形成するように構成されている。
【0067】
2次元走査の際、光スキャナー10の可動板11の、回動中心軸Y回りの回動により光反射部12で反射した光がスクリーンSの横方向に走査(主走査)される。一方、光スキャナー10の可動板11の、回動中心軸X回りの回動により光反射部12で反射した光がスクリーンSの縦方向に走査(副走査)される。
なお、図6中では、ダイクロイックミラー92で合成された光を光スキャナー10によって2次元的に走査した後、その光を固定ミラーKで反射させてからスクリーンSに画像を形成するように構成されているが、固定ミラーKを省略し、光スキャナー10によって2次元的に走査された光を直接スクリーンSに照射してもよい。
【0068】
以上、本発明のミラーデバイス、光スキャナーおよび画像形成装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1…ミラーデバイス 10…光スキャナー 11…可動板 110…可動板本体 111…凹部 12…光反射部 13a、13b…軸部材 14…枠状部材 15a、15b…軸部材 16…支持枠 17…ホルダー 20a、20b、20c…永久磁石 30…コイル 40…電圧印加手段 41…第1の電圧発生部 42…第2の電圧発生部 43…電圧重畳部 43a…加算器 7…制御部 9…プロジェクター 91…光源装置 911…赤色光源装置 912…青色光源装置 913…緑色光源装置 92…ダイクロイックミラー K…固定ミラー S…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに搖動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されていることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項2】
前記第2の軸部材の軸線と、前記第2永久磁石の軸線とのなす角θは、30°以上60°以下である請求項1に記載のミラーデバイス。
【請求項3】
前記第1永久磁石は、前記第1の軸部材の軸線に対して線対称に配置されている請求項1または2に記載のミラーデバイス。
【請求項4】
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、一方の前記第2永久磁石の一方の端部と他方の前記第2永久磁石の一方の端部とが前記第2の軸部材の軸線に対して線対称に配置されている請求項1ないし3のいずれかに記載のミラーデバイス。
【請求項5】
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の一方の端部が前記第1の軸部材の軸線上に配置されている請求項1ないし4のいずれか記載のミラーデバイス。
【請求項6】
前記可動板は、凹部を有しており、
前記第1永久磁石は、前記凹部内に配置されている請求項1ないし5のいずれかに記載のミラーデバイス。
【請求項7】
光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに揺動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、
前記枠状部材に対向して配置され、電圧の印加により前記第1永久磁石および前記第2永久磁石に作用する磁界を発生するコイルと、
前記コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されており、
前記電圧印加手段は、第1周波数の第1の電圧を発生させる第1電圧発生部と、前記第1周波数と周波数の異なる第2周波数の第2の電圧を発生させる第2電圧発生部と、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを重畳する電圧重畳部とを備え、前記電圧重畳部で重畳された電圧を前記コイルに印加することにより、前記可動板を前記第1周波数で前記第2の軸周りに揺動させるとともに、前記第2周波数で前記第1の軸周りに揺動させるよう構成されていることを特徴とする光スキャナー。
【請求項8】
光を出射する光源と、
前記光源からの光を走査する光スキャナーと、を備え、
前記光スキャナーは、
光反射性を有する光反射部を備え、第1の軸周りに揺動可能な可動板と、
前記可動板の前記第1の軸に沿う方向の両端に接続された第1の軸部材と、
前記可動板を囲んでおり、前記第1の軸部材が接続され、前記第1の軸に直交する第2の軸周りに揺動可能な枠状部材と、
前記枠状部材の前記第2の軸に沿う方向の両端に接続された第2の軸部材と、
前記可動板に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第1の軸を挟んで配置された長手形状をなす第1永久磁石と、
前記枠状部材に配置され、一方の磁極と他方の磁極とが前記第2の軸を挟んで配置された長手形状をなす1対の第2永久磁石と、
前記枠状部材に対向して配置され、電圧の印加により前記第1永久磁石および前記第2永久磁石に作用する磁界を発生するコイルと、
前記コイルに電圧を印加する電圧印加手段と、を備え、
前記第1永久磁石は、前記第1永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線に対して直交して配置され、
前記1対の第2永久磁石は、それぞれ、前記第2永久磁石の軸線が前記第1の軸部材の軸線および前記第2の軸部材の軸線に対して傾斜して配置されており、
前記電圧印加手段は、第1周波数の第1の電圧を発生させる第1電圧発生部と、前記第1周波数と周波数の異なる第2周波数の第2の電圧を発生させる第2電圧発生部と、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを重畳する電圧重畳部とを備え、前記電圧重畳部で重畳された電圧を前記コイルに印加することにより、前記可動板を前記第1周波数で前記第2の軸周りに揺動させるとともに、前記第2周波数で前記第1の軸周りに揺動させるよう構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−101199(P2013−101199A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244213(P2011−244213)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】