ミラーデバイス
【課題】非共振周波数で駆動する静電駆動型ミラーデバイスにおいて、振れ角を大きくする。
【解決手段】2軸ミラーデバイスにおいて、第二の可動フレーム8を動かすアクチュエータ13が、第一と第二の2つのアクチュエータ9,13から構成されており、可動フレームの回転角がゼロである状態からは第一のアクチュエータ9で第二の可動フレーム8を回転させはじめ、特定の回転角までいったところで第二のアクチュエータ13で第二の可動フレームを回転させることで非共振駆動でも大きな振れ角を得る。
【解決手段】2軸ミラーデバイスにおいて、第二の可動フレーム8を動かすアクチュエータ13が、第一と第二の2つのアクチュエータ9,13から構成されており、可動フレームの回転角がゼロである状態からは第一のアクチュエータ9で第二の可動フレーム8を回転させはじめ、特定の回転角までいったところで第二のアクチュエータ13で第二の可動フレームを回転させることで非共振駆動でも大きな振れ角を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型プロジェクタなどの画像投影装置に搭載されて画像を投影するミラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプロジェクタ装置は、映画館や会議室などで巨大なスクリーンに画像を投影することで、一度に多くの人が情報を共有できる設備として利用されるものである。
【0003】
ところが、近年LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)を利用したピコ・プロジェクタという、携帯電話への搭載が可能な超小型プロジェクタの製品化が進んでいる。
【0004】
これは、どこでも好きな場所に画像を投影できる装置として近年注目を浴びており、日経エレクトロニクス2010年8−9月号では、2014年には年間2000万台以上が出荷されると予測している。
【0005】
このピコ・プロジェクタ向けの表示素子としては、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)とDMD(Digital Micro-mirror Device)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーデバイスの3つあり、現段階ではLCOSやDMDが主流となっている。しかし、LDとの組合せで焦点レスの光学系を構築できるというメリットがあることから、MEMSミラーデバイスの開発が進んでいる。
【0006】
MEMSミラーデバイスには、プロジェクタでの動画投影のため、水平と垂直の2軸のミラーが必要であり、かつ、WVGA対応(800×480)で水平方向±11°@18kHzと垂直方向±6°@60Hzと大きく異なる走査速度で駆動することが求められる。
【0007】
一例として、特許文献1に開示されたMicrovision社の電磁駆動型ミラーデバイスは、2軸のミラーデバイスで、外側の可動フレームは非共振周波数で垂直方向に、内側のミラーを共振周波数で水平方向に駆動する。ローレンツ力を発生させるためのコイルは、外側の可動フレーム上に形成してあり、ミラーデバイスの2つの可動軸方向に対して45°の軸線上に磁石を配置することで、2軸に対するローレンツ力を外側の可動フレームに発生させている。
【0008】
圧電駆動型ミラーデバイスの例として、特許文献2に開示されたスタンレー電気の2軸ミラーデバイスがある。この例では、ミラー面が形成される可動部と、この可動部を支持する可動フレームと、この可動フレームを支持する固定フレームとがある。そして、可動部と可動フレームはヒンジにより連結されており、可動フレームと固定フレームは廿楽折り状に連なった片持ち梁により連結されている。ミラーと可動フレームを連結するヒンジには圧電アクチュエータが形成されており、共振周波数で駆動することで大きな振れ角を得ている。また、可動フレームは、隣り合う片持ち梁上に形成した圧電材に極性の異なる電圧を印加することができる。
【0009】
静電駆動型ミラーデバイスの例としては、特許文献3に開示されたパナソニック電工の1軸ミラーデバイスがある。この例では、ミラー面が形成される可動部と、この可動部を支持する固定フレームとがあり、可動部と固定フレームとは互いにヒンジにて連結されている。また可動部と固定フレームとの間に形成され、互いに噛合う一対の櫛歯電極が取り付けられ、この一対の櫛歯に電圧を印加した時の静電力を駆動力とし、ヒンジを捻りながら固定フレームに対し回動し、ヒンジを軸として揺動する。
【0010】
この例では、小さな駆動電圧で光を走査するのに必要な振れ角を確保するため、光走査ミラーの可動部やヒンジが設けられている部位を低圧力で気密封止し、高いQ値(共振周波数における振幅増幅率)を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−522529号公報
【特許文献2】特開2008−40240号公報
【特許文献3】特開2010−8613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ミラーデバイスの駆動方式として有望なのは、先にも述べた電磁・圧電・静電の3種類であるが、最もシンプルで低コスト化がはかれるのは静電駆動型である。
この静電駆動型の欠点は駆動電圧が高いことであるが、水平方向の±11°@18kHz駆動に関しては、特許文献3により開示されている方法で対処できる。しかし、垂直方向の±6°@60Hz駆動に関しては、表示素子としての耐外乱性などの観点から共振周波数を60Hzまで低くすることはできないため、非共振駆動で大きな振れ角を得る必要がある。
【0013】
本発明の目的は、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られるミラーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、レーザ光をスクリーンとなる面に走査して画像を投影するためのミラーと、このミラーを取り付けた第一の可動フレームと、この第一の可動フレームに第一の梁を介して連結された第二の可動フレームと、この第二の可動フレームに第二の梁を介して連結された固定フレームとを備えたミラーデバイスにおいて、前記第一の可動フレームに形成された櫛歯と前記第二の可動フレームに形成された櫛歯とを組み合わせ、前記第二の可動フレームに形成された櫛歯と前記固定フレームに形成された櫛歯との組み合わせで第一の静電アクチュエータを形成し、前記第一の可動フレームと前記第二の可動フレームの下方に傾斜電極からなる第二の静電アクチュエータを設けるとともに、前記第一と第二のアクチュエータによって前記ミラーを左右と上下に動作させることにより達成される。
【0015】
また上記目的は、前記ミラーは第一の梁と第二の梁による2軸で回転することが好ましい。
【0016】
また上記目的は、前記第一のアクチュエータは平行平板型静電アクチュエータを片持ち梁で支えており、この片持ち梁先端に連結された平行平板電極が静電力により前記固定電極に引き寄せさられて接触れた状態から前記平行平板電極側から前記第二の可動フレームに前記片持ち梁が接触域を移動し、前記第二の可動フレームが所定の回転角を超えたところから傾斜した前記固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの静電力が大きくなって前記ミラーを更に回転させることが好ましい。
【0017】
また上記目的は、前記第一のアクチュエータは櫛歯電極型静電アクチュエータであり、前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記固定フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第二の可動フレームを回転させて所定の回転角を超えたところから傾斜した固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの力が大きくなって前記ミラーを回転させることが好ましい。
【0018】
また上記目的は、水平方向に駆動するアクチュエータは前記第一の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第一の可動フレームを回転させる静電アクチュエータであり、前記第一の可動フレームと前記ミラーとを一体とした系の共振周波数で駆動することが好ましい。
【0019】
また上記目的は、前記ミラーと前記第一の可動フレーム、前記第二の可動フレームが前記固定フレーム部で接合された蓋によって空間が気密封止されており、この気密封止された空間の圧力が1000Pa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】レーザ走査式プロジェクタの動作原理を示す図である。
【図2】調圧密閉空間内に収納された2軸静電駆動ミラーデバイスの断面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】本発明の実施例1にかかる傾斜電極の拡大図である。
【図7】本発明の実施例2に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図8】本発明の実施例3に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図9】本発明の実施例4に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図10】本発明の各実施例に係る傾斜電極の拡大図である。
【図11】櫛歯型アクチュエータの部分拡大図である。
【図12】図11のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
さて、レーザ走査式プロジェクタについて図1、図2を使って簡単に説明する。
【0023】
図1はレーザ走査式プロジェクタの動作原理を示す図である。
図2は調圧密閉空間内に収納された2軸静電駆動ミラーデバイスの断面図である。
図1において、レーザーソース1からRGBそれぞれのレーザ光源からの光をコリメートし、色合成したビームをミラー2に入射させて二次元的に走査することにより二次元像をスクリーン3に描くものである。ミラー2はスキャンされたレーザスポットはスクリーン3に対して水平方向に蛇行しながら上下方向に動作させて二次元像を描くことになる。
【0024】
ミラー2について図2を使って説明する。
【0025】
図2において、ミラー2は密閉容器4で形成された調圧気密空間4a内に収納されている。この密閉容器4はレーザスポットを通過させるために上面開口がガラス板4bで閉塞されている。ミラー2の直下には傾斜電極5が取り付けられている。ミラー2の外周には後述する可動フレーム(詳細は図3で説明する)が接続されており、傾斜電極5とラップする部分が櫛歯電電極6(詳細は図3で説明する)となっている。これらの電極は交流電圧を印加させることにより動作させている。
【0026】
以下、本発明の一実施例に係るミラーデバイスの詳細を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例では画像描画に用いる場合を例に、図3〜図9を用いて説明する。
図3は本発明の第一の実施例に係るミラーデバイスの正面図である。
図4は図3のA−A断面図である。
図5は図3のB−B断面図である。
図3において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され、同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防止している。
【0028】
第一の可動フレーム7は、ミラーの中心を通る軸線上に対称に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されている。また第一の可動フレーム7は回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心として回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0029】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成された櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動させるようになっている。
【0030】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。
なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラーを含んだ駆動系を図2に示したように、真空状態になる調圧気密空間4aに気密封止するようになっている。
【0031】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。
【0032】
共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させるための構成について、以下で説明する。
【0033】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に固定した櫛歯電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0034】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを数度しか振ることができない。
【0035】
そこで、第二の可動フレーム8に傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けるようにした。
傾斜型静電アクチュエータ14について図4、図5で説明する。
【0036】
図4、図5において、光を反射するミラー2は、歪分離構造2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0037】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極と第二の可動フレーム8に固定した櫛歯電極間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0038】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。
【0039】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の揺動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。
【0040】
共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させるための構成を以下で説明する。
【0041】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に固定した櫛歯電極間11aに60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0042】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを数度しか振ることができない。
【0043】
そこで、第二の可動フレーム8に傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けた。
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータ14で傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力が得られるようにしている。
【0044】
図6は傾斜電極の拡大図である。
【0045】
図6において、傾斜電極14面には、この表面より突出した絶縁体52が複数設けられている。この絶縁体52は、静電力で第二の可動フレーム8が傾斜電極14側に引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
換言すると、絶縁体52で第二の可動フレーム8が傾斜電極14の表面に密着してしまうことを防止している。
【0046】
以上のごとく、本実施例では櫛歯電極だけでは可動フレームを十分に傾斜させることができないため、傾斜電極を組み合わせたものである。つまり、櫛歯電極で可動フレームの傾斜の切っ掛けを作った上で、傾斜電極で所望の傾斜でミラーを揺動させるものである。
【実施例2】
【0047】
図7は本発明の実施例2に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
図7において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離構造2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。
【0048】
第一の可動フレーム7は、ミラーの中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0049】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0050】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラーを含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。
【0051】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラーの挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させる機構について、以下で説明する。
【0052】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に形成した櫛歯電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0053】
ここで、ミラーの振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラー2を数度しか振ることができない。
【0054】
そこで、第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設ける。傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0055】
図10に示すように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
【実施例3】
【0056】
図8は本発明の実施例3に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
図8において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラーが変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0057】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に固定した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0058】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で振ることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。
【0059】
このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム6を回転させる方法について、以下で説明する。
【0060】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した平行平板型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。平行平板型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に片持ち梁8bを介して連結した平行平板可動電極8aと固定フレーム11と一体となった平行平板固定電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0061】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラー2を大きく振ることはできない。
【0062】
そこで、平行平板可動電極11aを支える片持ち梁8bを薄くし、その剛性を小さくすることで、大きな電極間距離でも低い電圧で平行平板電極8aが接触できるようにし、平行平板電極8aが接触した後は、可動電極を支えていた片持ち梁8bを平行平板電極8a側から徐々に固定電極に静電力で吸着していくことで、ミラー2を大きく振り、ある特定の振れ角以降は、第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けて、更に大きな振れ角まで持っていく。
【0063】
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0064】
図6に示したように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
【実施例4】
【0065】
図9は本発明の実施例4に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【0066】
図9において、光を反射するミラー2は、歪分離構造2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離構造2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0067】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0068】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で振ることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。
【0069】
このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させる方法について、以下で説明する。
【0070】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した平行平板型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。平行平板型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に片持ち梁8bを介して連結した平行平板可動電極8aと固定フレーム11と一体となった平行平板固定電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0071】
ここで、ミラーの振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを大きく振ることはできない。
【0072】
そこで、平行平板可動電極を支える片持ち梁を薄くし、その剛性を小さくすることで、大きな電極間距離でも低い電圧で平行平板電極が接触できるようにし、平行平板電極が接触した後は、可動電極を支えていた片持ち梁8bを平行平板電極8a側から徐々に固定電極に静電力で吸着していくことで、ミラー2を大きく振り、ある特定の振れ角以降は、大きな第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けて、更に大きな振れ角まで持っていく。
【0073】
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0074】
図6に示したように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極51の傾斜角度になるようにしている。
【0075】
櫛歯型静電アクチュエータについて図11と図12を使って説明する。
図11は櫛歯型アクチュエータの部分拡大図である。
図12は図11のC−C断面図である。
図11において、固定枠73には櫛歯状に形成された櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71が形成されている。この櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71の櫛歯に噛み合うように第二の可動フレーム74の櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72が取り付けられている。櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72は櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71の櫛歯間を上下に可動する。
【0076】
図12において、櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71を基準位置として櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72が可動する前の位置の差(オフセット75)を有している。76は櫛歯型静電アクチュエータ可動電極の高さを示している。
【0077】
以上のごとく本発明によれば、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・レーザーソース、2・・・ミラー、2a・・・歪分離部、3・・・スクリーン、4・・・密閉容器、4a・・・調圧気密空間、4b・・・ガラス板、5・・・傾斜電極、7・・・第一の可動フレーム、7a・・・櫛歯電極、8・・・第二の可動フレーム、8a・・・櫛歯電極、9・・・櫛歯電極型静電アクチュエータ、10・・・捩じり梁、11・・・固定フレーム、11a・・・櫛歯電極、12・・・捩じり梁、13・・・櫛歯電極型静電アクチュエータ、14・・・傾斜電極型アクチュエータ、52・・・絶縁体、71・・・櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極、72・・・櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極、73・・・固定枠、74・・・第二の可動フレーム、75・・・オフセット、76・・・櫛歯型静電アクチュエータ可動電極高さ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超小型プロジェクタなどの画像投影装置に搭載されて画像を投影するミラーデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にプロジェクタ装置は、映画館や会議室などで巨大なスクリーンに画像を投影することで、一度に多くの人が情報を共有できる設備として利用されるものである。
【0003】
ところが、近年LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)を利用したピコ・プロジェクタという、携帯電話への搭載が可能な超小型プロジェクタの製品化が進んでいる。
【0004】
これは、どこでも好きな場所に画像を投影できる装置として近年注目を浴びており、日経エレクトロニクス2010年8−9月号では、2014年には年間2000万台以上が出荷されると予測している。
【0005】
このピコ・プロジェクタ向けの表示素子としては、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)とDMD(Digital Micro-mirror Device)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーデバイスの3つあり、現段階ではLCOSやDMDが主流となっている。しかし、LDとの組合せで焦点レスの光学系を構築できるというメリットがあることから、MEMSミラーデバイスの開発が進んでいる。
【0006】
MEMSミラーデバイスには、プロジェクタでの動画投影のため、水平と垂直の2軸のミラーが必要であり、かつ、WVGA対応(800×480)で水平方向±11°@18kHzと垂直方向±6°@60Hzと大きく異なる走査速度で駆動することが求められる。
【0007】
一例として、特許文献1に開示されたMicrovision社の電磁駆動型ミラーデバイスは、2軸のミラーデバイスで、外側の可動フレームは非共振周波数で垂直方向に、内側のミラーを共振周波数で水平方向に駆動する。ローレンツ力を発生させるためのコイルは、外側の可動フレーム上に形成してあり、ミラーデバイスの2つの可動軸方向に対して45°の軸線上に磁石を配置することで、2軸に対するローレンツ力を外側の可動フレームに発生させている。
【0008】
圧電駆動型ミラーデバイスの例として、特許文献2に開示されたスタンレー電気の2軸ミラーデバイスがある。この例では、ミラー面が形成される可動部と、この可動部を支持する可動フレームと、この可動フレームを支持する固定フレームとがある。そして、可動部と可動フレームはヒンジにより連結されており、可動フレームと固定フレームは廿楽折り状に連なった片持ち梁により連結されている。ミラーと可動フレームを連結するヒンジには圧電アクチュエータが形成されており、共振周波数で駆動することで大きな振れ角を得ている。また、可動フレームは、隣り合う片持ち梁上に形成した圧電材に極性の異なる電圧を印加することができる。
【0009】
静電駆動型ミラーデバイスの例としては、特許文献3に開示されたパナソニック電工の1軸ミラーデバイスがある。この例では、ミラー面が形成される可動部と、この可動部を支持する固定フレームとがあり、可動部と固定フレームとは互いにヒンジにて連結されている。また可動部と固定フレームとの間に形成され、互いに噛合う一対の櫛歯電極が取り付けられ、この一対の櫛歯に電圧を印加した時の静電力を駆動力とし、ヒンジを捻りながら固定フレームに対し回動し、ヒンジを軸として揺動する。
【0010】
この例では、小さな駆動電圧で光を走査するのに必要な振れ角を確保するため、光走査ミラーの可動部やヒンジが設けられている部位を低圧力で気密封止し、高いQ値(共振周波数における振幅増幅率)を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2007−522529号公報
【特許文献2】特開2008−40240号公報
【特許文献3】特開2010−8613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ミラーデバイスの駆動方式として有望なのは、先にも述べた電磁・圧電・静電の3種類であるが、最もシンプルで低コスト化がはかれるのは静電駆動型である。
この静電駆動型の欠点は駆動電圧が高いことであるが、水平方向の±11°@18kHz駆動に関しては、特許文献3により開示されている方法で対処できる。しかし、垂直方向の±6°@60Hz駆動に関しては、表示素子としての耐外乱性などの観点から共振周波数を60Hzまで低くすることはできないため、非共振駆動で大きな振れ角を得る必要がある。
【0013】
本発明の目的は、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られるミラーデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、レーザ光をスクリーンとなる面に走査して画像を投影するためのミラーと、このミラーを取り付けた第一の可動フレームと、この第一の可動フレームに第一の梁を介して連結された第二の可動フレームと、この第二の可動フレームに第二の梁を介して連結された固定フレームとを備えたミラーデバイスにおいて、前記第一の可動フレームに形成された櫛歯と前記第二の可動フレームに形成された櫛歯とを組み合わせ、前記第二の可動フレームに形成された櫛歯と前記固定フレームに形成された櫛歯との組み合わせで第一の静電アクチュエータを形成し、前記第一の可動フレームと前記第二の可動フレームの下方に傾斜電極からなる第二の静電アクチュエータを設けるとともに、前記第一と第二のアクチュエータによって前記ミラーを左右と上下に動作させることにより達成される。
【0015】
また上記目的は、前記ミラーは第一の梁と第二の梁による2軸で回転することが好ましい。
【0016】
また上記目的は、前記第一のアクチュエータは平行平板型静電アクチュエータを片持ち梁で支えており、この片持ち梁先端に連結された平行平板電極が静電力により前記固定電極に引き寄せさられて接触れた状態から前記平行平板電極側から前記第二の可動フレームに前記片持ち梁が接触域を移動し、前記第二の可動フレームが所定の回転角を超えたところから傾斜した前記固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの静電力が大きくなって前記ミラーを更に回転させることが好ましい。
【0017】
また上記目的は、前記第一のアクチュエータは櫛歯電極型静電アクチュエータであり、前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記固定フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第二の可動フレームを回転させて所定の回転角を超えたところから傾斜した固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの力が大きくなって前記ミラーを回転させることが好ましい。
【0018】
また上記目的は、水平方向に駆動するアクチュエータは前記第一の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第一の可動フレームを回転させる静電アクチュエータであり、前記第一の可動フレームと前記ミラーとを一体とした系の共振周波数で駆動することが好ましい。
【0019】
また上記目的は、前記ミラーと前記第一の可動フレーム、前記第二の可動フレームが前記固定フレーム部で接合された蓋によって空間が気密封止されており、この気密封止された空間の圧力が1000Pa以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】レーザ走査式プロジェクタの動作原理を示す図である。
【図2】調圧密閉空間内に収納された2軸静電駆動ミラーデバイスの断面図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】本発明の実施例1にかかる傾斜電極の拡大図である。
【図7】本発明の実施例2に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図8】本発明の実施例3に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図9】本発明の実施例4に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【図10】本発明の各実施例に係る傾斜電極の拡大図である。
【図11】櫛歯型アクチュエータの部分拡大図である。
【図12】図11のC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
さて、レーザ走査式プロジェクタについて図1、図2を使って簡単に説明する。
【0023】
図1はレーザ走査式プロジェクタの動作原理を示す図である。
図2は調圧密閉空間内に収納された2軸静電駆動ミラーデバイスの断面図である。
図1において、レーザーソース1からRGBそれぞれのレーザ光源からの光をコリメートし、色合成したビームをミラー2に入射させて二次元的に走査することにより二次元像をスクリーン3に描くものである。ミラー2はスキャンされたレーザスポットはスクリーン3に対して水平方向に蛇行しながら上下方向に動作させて二次元像を描くことになる。
【0024】
ミラー2について図2を使って説明する。
【0025】
図2において、ミラー2は密閉容器4で形成された調圧気密空間4a内に収納されている。この密閉容器4はレーザスポットを通過させるために上面開口がガラス板4bで閉塞されている。ミラー2の直下には傾斜電極5が取り付けられている。ミラー2の外周には後述する可動フレーム(詳細は図3で説明する)が接続されており、傾斜電極5とラップする部分が櫛歯電電極6(詳細は図3で説明する)となっている。これらの電極は交流電圧を印加させることにより動作させている。
【0026】
以下、本発明の一実施例に係るミラーデバイスの詳細を図にしたがって説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例では画像描画に用いる場合を例に、図3〜図9を用いて説明する。
図3は本発明の第一の実施例に係るミラーデバイスの正面図である。
図4は図3のA−A断面図である。
図5は図3のB−B断面図である。
図3において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され、同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防止している。
【0028】
第一の可動フレーム7は、ミラーの中心を通る軸線上に対称に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されている。また第一の可動フレーム7は回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心として回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0029】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成された櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動させるようになっている。
【0030】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。
なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラーを含んだ駆動系を図2に示したように、真空状態になる調圧気密空間4aに気密封止するようになっている。
【0031】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。
【0032】
共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させるための構成について、以下で説明する。
【0033】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に固定した櫛歯電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0034】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを数度しか振ることができない。
【0035】
そこで、第二の可動フレーム8に傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けるようにした。
傾斜型静電アクチュエータ14について図4、図5で説明する。
【0036】
図4、図5において、光を反射するミラー2は、歪分離構造2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0037】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極と第二の可動フレーム8に固定した櫛歯電極間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0038】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。
【0039】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の揺動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。
【0040】
共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させるための構成を以下で説明する。
【0041】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に固定した櫛歯電極間11aに60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0042】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを数度しか振ることができない。
【0043】
そこで、第二の可動フレーム8に傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けた。
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータ14で傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力が得られるようにしている。
【0044】
図6は傾斜電極の拡大図である。
【0045】
図6において、傾斜電極14面には、この表面より突出した絶縁体52が複数設けられている。この絶縁体52は、静電力で第二の可動フレーム8が傾斜電極14側に引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
換言すると、絶縁体52で第二の可動フレーム8が傾斜電極14の表面に密着してしまうことを防止している。
【0046】
以上のごとく、本実施例では櫛歯電極だけでは可動フレームを十分に傾斜させることができないため、傾斜電極を組み合わせたものである。つまり、櫛歯電極で可動フレームの傾斜の切っ掛けを作った上で、傾斜電極で所望の傾斜でミラーを揺動させるものである。
【実施例2】
【0047】
図7は本発明の実施例2に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
図7において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離構造2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。
【0048】
第一の可動フレーム7は、ミラーの中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0049】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0050】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で揺動させることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラーを含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。
【0051】
第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラーの挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させる機構について、以下で説明する。
【0052】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。櫛歯電極型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8aと固定フレーム11に形成した櫛歯電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0053】
ここで、ミラーの振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラー2を数度しか振ることができない。
【0054】
そこで、第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設ける。傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0055】
図10に示すように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
【実施例3】
【0056】
図8は本発明の実施例3に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
図8において、光を反射するミラー2は、歪分離部2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離部2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラーが変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0057】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に固定した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0058】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で振ることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。
【0059】
このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム6を回転させる方法について、以下で説明する。
【0060】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した平行平板型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。平行平板型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に片持ち梁8bを介して連結した平行平板可動電極8aと固定フレーム11と一体となった平行平板固定電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0061】
ここで、ミラー2の振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラー2を大きく振ることはできない。
【0062】
そこで、平行平板可動電極11aを支える片持ち梁8bを薄くし、その剛性を小さくすることで、大きな電極間距離でも低い電圧で平行平板電極8aが接触できるようにし、平行平板電極8aが接触した後は、可動電極を支えていた片持ち梁8bを平行平板電極8a側から徐々に固定電極に静電力で吸着していくことで、ミラー2を大きく振り、ある特定の振れ角以降は、第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けて、更に大きな振れ角まで持っていく。
【0063】
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0064】
図6に示したように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極14の傾斜角度になるようにしている。
【実施例4】
【0065】
図9は本発明の実施例4に係る2軸静電駆動ミラーデバイスの正面図である。
【0066】
図9において、光を反射するミラー2は、歪分離構造2aを介して第一の可動フレーム7に連結され同じ平面内に固定されている。歪分離構造2aは、温度変化や実装時に加わる力などによりミラー2が変形することを防いでいる。第一の可動フレーム7は、ミラー2の中心を通る軸線上に対象に配置された捩じり梁10により第二の可動フレーム8に連結されており、回転方向端部に形成した櫛歯電極型静電アクチュエータ9により捩じり梁10からなる軸を中心に回転する。第一の可動フレーム7を水平方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は10kHz以上と高い。
【0067】
このように共振周波数が高い場合には、櫛歯電極型静電アクチュエータ9は、第一の可動フレーム7に形成した櫛歯電極7aと第二の可動フレーム8に形成した櫛歯電極8a間に、第一の可動フレーム7の内側にある構造を含んだ系の共振周波数と同じ周波数を持つ交流電圧を印加することで駆動する。
【0068】
これにより、共振現象による振れ角の増幅が図れ、10V以下の低い電圧でも捩じり梁10を回転軸としてミラー2を大きな振れ角で振ることができる。なお、共振現象による振れ角の増幅率は、周辺の圧力に依存しており、増幅率を大きくするためにミラー2を含んだ駆動系を低い圧力にした空間に気密封止する。第二の可動フレーム8は、垂直方向の画像の描画に用いると、その駆動周波数は60Hzとなる。
【0069】
このように駆動周波数が低い場合には、共振周波数を低くしてしまうと外乱振動などの影響でミラー2の挙動が不安定になり、画像の描画には適さなくなる。そのため、非共振駆動とし、その系の共振周波数は外乱振動などの影響を受けにくいように数百Hz以上にする。共振現象による振れ角が増幅する現象を利用せずに第二の可動フレーム8を回転させる方法について、以下で説明する。
【0070】
第二の可動フレーム8は、固定フレーム11にミラー2の中心を通る軸線上に形成した捩じり梁12で連結しており、回転方向端部に形成した平行平板型静電アクチュエータ13により捩じり梁12からなる軸を中心に回転する。平行平板型静電アクチュエータ13は、第二の可動フレーム8に片持ち梁8bを介して連結した平行平板可動電極8aと固定フレーム11と一体となった平行平板固定電極11a間に60Hzの交流電圧を印加することで駆動する。
【0071】
ここで、ミラーの振れ角は、静電アクチュエータで作り出した静電力と捩じり梁12が捩じれることにより発生する反力のバランスで決まるため、数百Hz以上の共振周波数を持つように捩じり梁12の剛性を設計すると、10V以下の交流電圧ではミラーを大きく振ることはできない。
【0072】
そこで、平行平板可動電極を支える片持ち梁を薄くし、その剛性を小さくすることで、大きな電極間距離でも低い電圧で平行平板電極が接触できるようにし、平行平板電極が接触した後は、可動電極を支えていた片持ち梁8bを平行平板電極8a側から徐々に固定電極に静電力で吸着していくことで、ミラー2を大きく振り、ある特定の振れ角以降は、大きな第二の可動フレーム8に図10に示す傾斜電極型静電アクチュエータ14を設けて、更に大きな振れ角まで持っていく。
【0073】
傾斜電極型を用いる理由は、静電力が電極間の距離の二乗に反比例するため、固定電極を傾斜させることで可動電極との距離を限りなくゼロに近づけることで、大きな静電力を得られるためである。ただし、大きな振れ角を得るには、傾斜角度もその振れ角分だけ傾斜している必要があるため、初期には大きな静電力を得られないため、静電アクチュエータで傾斜電極間の距離を狭くして、大きな力を得られるようにしている。
【0074】
図6に示したように傾斜電極14の表面には絶縁体52が形成してあり、静電力で第二の可動フレーム8を引き寄せた時のストッパとして機能させることで、常に第二の可動フレーム8の振れ角を傾斜電極51の傾斜角度になるようにしている。
【0075】
櫛歯型静電アクチュエータについて図11と図12を使って説明する。
図11は櫛歯型アクチュエータの部分拡大図である。
図12は図11のC−C断面図である。
図11において、固定枠73には櫛歯状に形成された櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71が形成されている。この櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71の櫛歯に噛み合うように第二の可動フレーム74の櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72が取り付けられている。櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72は櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71の櫛歯間を上下に可動する。
【0076】
図12において、櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極71を基準位置として櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極72が可動する前の位置の差(オフセット75)を有している。76は櫛歯型静電アクチュエータ可動電極の高さを示している。
【0077】
以上のごとく本発明によれば、特性の異なる第一の静電アクチュエータと第二の静電アクチュエータを組み合わせて第二の可動フレームを動かすことで、低い電圧でもミラーを駆動することができ、かつ、傾斜電極上に形成した絶縁体にミラーが接触するまで可動フレームの動かすことで、大きな振れ角を再現性良く得られる。
【符号の説明】
【0078】
1・・・レーザーソース、2・・・ミラー、2a・・・歪分離部、3・・・スクリーン、4・・・密閉容器、4a・・・調圧気密空間、4b・・・ガラス板、5・・・傾斜電極、7・・・第一の可動フレーム、7a・・・櫛歯電極、8・・・第二の可動フレーム、8a・・・櫛歯電極、9・・・櫛歯電極型静電アクチュエータ、10・・・捩じり梁、11・・・固定フレーム、11a・・・櫛歯電極、12・・・捩じり梁、13・・・櫛歯電極型静電アクチュエータ、14・・・傾斜電極型アクチュエータ、52・・・絶縁体、71・・・櫛歯型静電アクチュエータ用固定電極、72・・・櫛歯型静電アクチュエータ用可動電極、73・・・固定枠、74・・・第二の可動フレーム、75・・・オフセット、76・・・櫛歯型静電アクチュエータ可動電極高さ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光をスクリーンとなる面に走査して画像を投影するためのミラーと、このミラーを取り付けた第一の可動フレームと、この第一の可動フレームに第一の梁を介して連結された第二の可動フレームと、この第二の可動フレームに第二の梁を介して連結された固定フレームとを備えたミラーデバイスにおいて、
前記第一の可動フレームに形成された櫛歯電極と前記第二の可動フレームに形成された櫛歯電極とを組み合わせ、前記第二の可動フレームに形成された櫛歯電極と前記固定フレームに形成された櫛歯電極との組み合わせで第一の静電アクチュエータを形成し、
前記第一の可動フレームと前記第二の可動フレームの下方に傾斜電極からなる第二の静電アクチュエータを設けるとともに、
前記第一と第二のアクチュエータによって前記ミラーを左右と上下に動作させることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記ミラーは第一の梁と第二の梁による2軸で回転することを特徴とするミラーデバイス。
【請求項3】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記第二の可動フレーム、前記第一の静電アクチュエータは平行平板型静電アクチュエータを弾性を有する片持ち梁で支えてなり、
前記平行平板型静電アクチュエータが動作することで、前記片持ち梁が弾性変形して前記第二の可動フレームが前記第二の梁を軸として回転運動によって傾斜するように構成され、かつ前記第二の静電アクチュエータの傾斜電極は、前記第二の可動フレームが前記第二の静電アクチュエータの動作によって更に傾斜接近した時の最大傾斜とほぼ同一の傾斜となるように形成されていることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項4】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記第一のアクチュエータは櫛歯電極型静電アクチュエータであり、前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記固定フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、
その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第二の可動フレームを回転させて所定の回転角を超えたところから傾斜した固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの力が大きくなって前記ミラーを回転させることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のミラーデバイスにおいて、
水平方向に駆動するアクチュエータは前記第一の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、
その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第一の可動フレームを回転させる静電アクチュエータであり、前記第一の可動フレームと前記ミラーとを一体とした系の共振周波数で駆動することを特徴とするミラーデバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のミラーデバイスにおいて、
前記ミラーと前記第一の可動フレーム、前記第二の可動フレームが前記固定フレーム部で接合された蓋によって空間が気密封止されており、
この気密封止された空間の圧力が1000Pa以下であることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項1】
レーザ光をスクリーンとなる面に走査して画像を投影するためのミラーと、このミラーを取り付けた第一の可動フレームと、この第一の可動フレームに第一の梁を介して連結された第二の可動フレームと、この第二の可動フレームに第二の梁を介して連結された固定フレームとを備えたミラーデバイスにおいて、
前記第一の可動フレームに形成された櫛歯電極と前記第二の可動フレームに形成された櫛歯電極とを組み合わせ、前記第二の可動フレームに形成された櫛歯電極と前記固定フレームに形成された櫛歯電極との組み合わせで第一の静電アクチュエータを形成し、
前記第一の可動フレームと前記第二の可動フレームの下方に傾斜電極からなる第二の静電アクチュエータを設けるとともに、
前記第一と第二のアクチュエータによって前記ミラーを左右と上下に動作させることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項2】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記ミラーは第一の梁と第二の梁による2軸で回転することを特徴とするミラーデバイス。
【請求項3】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記第二の可動フレーム、前記第一の静電アクチュエータは平行平板型静電アクチュエータを弾性を有する片持ち梁で支えてなり、
前記平行平板型静電アクチュエータが動作することで、前記片持ち梁が弾性変形して前記第二の可動フレームが前記第二の梁を軸として回転運動によって傾斜するように構成され、かつ前記第二の静電アクチュエータの傾斜電極は、前記第二の可動フレームが前記第二の静電アクチュエータの動作によって更に傾斜接近した時の最大傾斜とほぼ同一の傾斜となるように形成されていることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項4】
請求項1記載のミラーデバイスにおいて、
前記第一のアクチュエータは櫛歯電極型静電アクチュエータであり、前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記固定フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、
その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第二の可動フレームを回転させて所定の回転角を超えたところから傾斜した固定電極を用いた前記第二の静電アクチュエータの力が大きくなって前記ミラーを回転させることを特徴とするミラーデバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のミラーデバイスにおいて、
水平方向に駆動するアクチュエータは前記第一の可動フレーム側にある櫛歯電極と前記第二の可動フレーム側にある櫛歯電極の高さ方向の位置がオフセットを持っており、
その櫛歯電極間に電圧を印加した時の静電力により前記第一の可動フレームを回転させる静電アクチュエータであり、前記第一の可動フレームと前記ミラーとを一体とした系の共振周波数で駆動することを特徴とするミラーデバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のミラーデバイスにおいて、
前記ミラーと前記第一の可動フレーム、前記第二の可動フレームが前記固定フレーム部で接合された蓋によって空間が気密封止されており、
この気密封止された空間の圧力が1000Pa以下であることを特徴とするミラーデバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−3560(P2013−3560A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138131(P2011−138131)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】
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