ミリ波帯非可逆素子
【課題】従来の磁性材料であるスピネルフェライトやガーネットフェライトを用いて30GHzから300GHz帯の非可逆素子を実現しようとすると、巨大な永久磁石が必要であり、実用に適したミリ波帯非可逆素子を実現することが極めて難しかった。
【解決手段】この問題を解決するために、本発明では、化学式がMxFe2-xO3(ただし、0<x<2)で、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなり、かつε相ヘマタイトの結晶構造を有する磁性材料を用いたミリ波帯非可逆素子を提案する。このε相ヘマタイトを主相とする磁性材料は、室温で巨大な保磁力と異方性磁界を有しており、この素子を動作させるための永久磁石を含む磁気回路の寸法を著しく低減できるだけでなく、最適設計によっては全く不要とすることが可能である。
【解決手段】この問題を解決するために、本発明では、化学式がMxFe2-xO3(ただし、0<x<2)で、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなり、かつε相ヘマタイトの結晶構造を有する磁性材料を用いたミリ波帯非可逆素子を提案する。このε相ヘマタイトを主相とする磁性材料は、室温で巨大な保磁力と異方性磁界を有しており、この素子を動作させるための永久磁石を含む磁気回路の寸法を著しく低減できるだけでなく、最適設計によっては全く不要とすることが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30GHz以上300GHz以下のミリ波帯で使用される磁気デバイスの分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯(30〜300GHz)の電磁波は、高速無線LANや車の衝突防止用レーダーなどの応用研究が盛んに行われている。特に、35, 94, 140GHzはいわゆる「空気の窓」と呼ばれる周波数帯であり、この周波数では空気は電磁波に対して高い透明性を有し、無線LANやレーダーなどへの応用に好適である。また、実用状態になった場合を想定すると、このようなミリ波帯でも電磁波相互干渉(EMC)問題は避けて通ることができず、この対策のための電波吸収体や非可逆素子などのデバイスが要求されることは間違いない。しかし、ミリ波帯では、効果的に電磁相互干渉(EMC)を抑える適当なる磁性材料が報告されていない。
【0003】
EMC対策デバイスを非可逆素子について見れば、従来はガーネット型やスピネル型フェライトが多く使用されてきた。これらの磁性材料をミリ波帯で使用しようとすると、磁化するための非常に大きな永久磁石が不可欠となり、磁気回路が大型化するためデバイスの小型化を達成するという面で実用性には問題があった。
【0004】
このような状況の中で、EMC対策に適した良好なる磁性材料の開発が注目されている。特に、高い共鳴周波数を示す大きな保磁力(Hc)を有する磁性材料の出現が期待される。これに対して、近年、100nmサイズであるε-Fe2O3(ε相ヘマタイト)の単相のナノ粒子が作成されるようになった。このナノ粒子は室温で高い保磁力を有することを特徴としてもつ。
【0005】
Fe2O3の化学式を有する物質としては、γ相もしくはα相からなるヘマタイトの二種類がよく知られている。その中間的な存在としてε相ヘマタイトの報告は早くからなされていたが、それはあくまで中間相としての報告であり、単相として得られたという報告は最近までなかった。それはε相ヘマタイトが準安定相であり、特殊な条件でのみ存在するからである。最近、発明者の一人は、逆ミセル法とゾル−ゲル法を組み合わせた方法を用いて、この単相をナノ粒子の状態で安定に作成できることを見いだし、非特許文献1ないし4において発表した。
【非特許文献1】黒木、桜井、橋本、大越;「ε−Fe2O3ナノ磁性体におけるスピン再配列現象制御」第29回日本応用磁気学会学術講演集(2005) 21pPS-16
【非特許文献2】桜井、小田、縫田、橋本、大越;「ε−Fe2O3の示す室温巨大保磁力とスピン再配列」第29回日本応用磁気学会学術講演集(2005) 21pPS-17
【非特許文献3】桜井、下山、橋本、大越;「室温巨大保磁力を示すε−Fe2O3ナノ微粒子の磁場配向体作製」第30回日本応用磁気学会学術講演集(2006) 13pD-3
【非特許文献4】大越;「酸化物ナノ微粒子」セラミックス 41 (2006) No.4 pp.296-299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ミリ波帯のEMC問題を解決するための非可逆素子を実現しようとすると、従来の磁性材料では強力な永久磁石による補助を必要とし、非可逆素子全体の寸法が大型になるという問題や巨大すぎてデバイスそのものを実現できないという課題があった。そこで、本発明では、この技術的課題を解決するため、ミリ波帯において有効な自然共鳴吸収を有した磁性材料を利用することにより、コンパクトな構成を有するミリ波帯非可逆素子を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上述のε-Fe2O3(ε相ヘマタイト)を骨格とし、Fe元素の一部を別元素で置換した磁性材料を非可逆素子用材料として使用することにより、従来では得られなかった短波長領域における非可逆性能を発現させ、これを非可逆素子として適用すれば、上述の技術的課題が解決できうる可能性について検討を重ね、本発明を完成させた。
【0008】
このような従来技術の背景の中で、本発明のミリ波帯非可逆素子は、化学式がMxFe2-xO3(ただし、0<x<2)で、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなり、ε相ヘマタイトの結晶構造を有する磁性材料を主構成要素とすることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の前記磁性体の磁化容易軸が一方向に優先的に配向され、かつ一方向に磁化された磁性材料であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記磁性材料は、粒子で構成され、前記粒子の磁化容易軸が一方向に配向されたものであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明が適用できるミリ波帯非可逆素子は、ファラデー回転型アイソレータ、導波管型共鳴吸収型アイソレータ、導波管Y型接合サーキュレータ、導波管型電界変位型アイソレータ、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータ、ストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非可逆素子を用いることにより、ミリ波帯で動作する無線LANシステムや各種レーダーシステム、センサーシステムの電磁波干渉問題(EMC)を、小型簡便かつ廉価な方法で軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の形態について参考文献と添付図面を用いて説明する。
【0014】
前述したFe2O3の化学式で示される従来材料、γ相ヘマタイトは空格子点を含む逆スピネル構造に、α相ヘマタイトは六方晶系に属するのに対して、本発明の骨格となる磁性材料としてのε相ヘマタイトは少し歪んだ斜方晶系に属する。このために、ε相ヘマタイトは高い結晶磁気異方性(K>2×106erg/cc)を示し、自発磁化がMs=15emu/gと比較的小さいことから、大きな異方性磁界Ha=2K/Msを期待できる。また、ナノ粒子は100nmと小さく、その中では単磁区が形成され、磁性体が本来もっている異方性磁界Haに近い保磁力Hcを発現させることができる。
【0015】
また、ε相ヘマタイトの結晶構造では、Feイオンの入るサイトがA、B、C、及びDの4個存在し、他の元素を置換した場合、Dサイトに優先的に入る傾向があり、自発磁化を制御することが可能である。
【0016】
一般に、異方性磁界Haを有する強磁性体に、f=(γHa)/(2π)という周波数の電磁波を供給すると、その周波数で強磁性共鳴吸収の一種である自然共鳴が起こる。ここで、γ=2.8MHz/Oeはジャイロ磁気定数である。本ε相ヘマタイトはHaが大きいことから、100GHz帯を超える周波数帯でこの自然共鳴が生ずることが期待される。
【0017】
因みに、このような性質を有するε−Fe2O3は、例えば、以下のように逆ミセル法及びゾルーゲル法を組み合わせて製造することができる。具体的には、先ず始めにn−オクタンを油相とする溶液の水相に、硝酸鉄(III)と界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)とを溶解することにより原料溶液を作製する。
【0018】
尚、原料溶液の水相に形状制御剤として、適量のアルカリ土類元素(Ba、Sr、Caなど)の硝酸塩を溶解させておくこともできる。この形状制御剤添加を行うことで、単相のε−Fe2O3粒子を棒状の形状とすることができる。
【0019】
また、原料溶液の作製とは別に、n−オクタンを油相とする溶液の水相に界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)を溶解したミセル溶液に、アンモニア水溶液等の中和剤を混合して中和剤溶液を作製する。
【0020】
次いで、逆ミセル法によって、原料溶液と中和剤溶液とを攪拌混合することにより混合溶液を作製し、これにより混合溶液内において水酸化鉄系化合物粒子の沈殿反応を進行させる。
【0021】
次いで、混合溶液に対して、シラン化合物の溶液を適宜添加することで、ゾル−ゲル法により、棒状、もしくはそれ以外の形状を有する水酸化鉄系化合物粒子の表面にシリカによる被覆を施す。
【0022】
このような反応は混合溶液内で行われ、混合溶液内では、ナノオーダーの微細な水酸化鉄系化合物粒子の表面において加水分解が起こり、表面がシリカで被覆された水酸化鉄系化合物粒子(以下、これをシリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子と呼ぶ)を作製できる。
【0023】
次いで、シリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子を混合溶液から分離して、大気雰囲気下において所定の温度(700〜1300℃の範囲内)で焼成処理する。この焼成処理により、シリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子のシリカ殻内部での酸化反応により、微細なε−Fe2O3粒子を生成できる。
【0024】
100GHz帯を超える周波数帯でこの自然共鳴が生ずることを確かめるために、図1に示すような測定系でε相ヘマタイトの電磁波吸収実験を行った。1はミリ波帯信号源であり、96GHzから142GHzまでの掃引が可能である。2はミリ波信号検出器である。3aは送信用ホーンアンテナ、3bは受信用ホーンアンテナである。4は試料を保持する試料容器固定台であり、5は試料を入れる試料容器、6は粉末試料である。容器の直径は約52mm、試料の充填厚みは5mm程度である。試料の充填方法は自然に粉末が重なる状態とし、特別な圧力をかけて成型したものではない。最初に試料を入れない状態で信号を検出し、その後に試料を充填し、減衰量をdB換算で測定した。
【0025】
ここで、上述した製造工程において原料溶液を作製する際に、当該原料溶液にMxを適量溶解させることにより、ε−Fe2O3と同じ結晶構造を有しながら、Fe3+イオンサイトの一部が置換されたε−MxFe2−xO3(MはFeを除く元素、xは0<x<2の範囲)粒子の単相粒子を生成できる。Mとしては、3価の元素を用いることが好ましい。具体的には、Mとして、In,Ga,Al,Sc,Cr,Sm,Yb,Ce,Ru,Rh,Ti,Co,Ni,Mn,Zn,Zr,Yから選択される1種の元素を挙げることができる。
【0026】
図2はGa置換(GaxFe2-xO3; x=0.15)したε相ヘマタイト粉体の電磁波減衰量測定結果を示す。126GHz帯に自然磁気共鳴周波数が存在することを確認できた。
【0027】
図3はAl置換(AlxFe2-xO3; x=0.15)したε相ヘマタイト粉体の電磁波減衰量測定結果を示す。この材料も126GHz帯に自然磁気共鳴周波数が存在する。
【0028】
このように、種々の元素を置換することにより、100GHz帯の自然共鳴周波数を移動させることができる。これは、置換元素の種類を変えてもいいし、また同じ元素で置換量を変えても可能である。他元素置換により自然共鳴周波数が変わる原因は、結晶異方性定数Kが主に結晶構造に起因することから余り変化せず、自発磁化Msが変化するためと考えられる。特に非磁性体を置換すると、自発磁化が増え、自然共鳴周波数は低周波側にシフトする。
【0029】
これを化学式MxFe2-xO3で見ると、今回の実施例では、Mとして、Ga, Alのみを示したが、その他に In, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yなどの元素の置換が可能である。これらは、単独置換もしくは複数元素の複合置換された状態でも実現が可能である。
【0030】
図2、図3の測定結果は無秩序に積み重ねられた粉体としての特性であるので、これ自体の応用としては、ミリ波帯の電波吸収体が考えられる。しかし、これらの材料は、一つ一つの粒子が磁化容易軸を有するナノサイズの単結晶であり、単磁区構造を有することから、これを一方向に揃えたバルク状の固体材料を作成すると、さらなる応用の範囲が拡大する。ここで、磁化容易軸とは、物質の磁気的性質、特にその物質の磁化の安定性が結晶方位によって異なるという結晶磁気異方性を持つ磁性体において、磁化され易い結晶方位をいう。
【0031】
図4には、ナノサイズ粉体の磁化容易軸方向が揃った固体材料を作るための、磁場中成型装置の概略断面図を示す。7aが下パンチ、7bが上パンチであり、8aが下ソレノイドコイル、8bが上ソレノイドコイルである。9は非磁性体のダイスであり、ナノ粒子11とバインダー12の混合した試料10とはダイス9の中に充填され、ソレノイドコイル8a, 8bに流した電流により発生する磁場中にさらされたまま矢印の方向から上パンチで圧縮される。粉体の各ナノ粒子11は磁場により配向された状態で圧縮されるのでバインダー12により固定されダイス3の中から固体材料として取り出すことができる。
【0032】
図5の(a)は、ε相ヘマタイトのナノ粒子11とバインダー12が無秩序に混合された状態でダイス9の中に充填された状態を示し、図5(b)は図4の装置を用いて磁場中成型した後の配向された複合磁性体13の状態を示す。ナノ粒子11の容易軸方向と磁化方向が印加磁界の方向に配列され、その間隙をバインダー12が占める構造となっている。この場合のバインダー12の性質としては、成型時は液状で流動性がよく、成型後は圧力や熱処理などで固体化され、ナノ粒子11の回転を拘束するようなものが選ばれる。この拘束が十分でない状態で放置すると、静磁エネルギーを下げるために、ナノ粒子11の一部が反転し、前記複合磁性体13を用いた本発明のミリ波帯非可逆素子の特性は劣化する。ナノ粒子11の配向状態を、温度、湿度、周辺ガス雰囲気の変化に対して安定的に保つ役割をバインダー12が担う。
【0033】
このような複合体は、ε相ヘマタイトの保磁力が非常に大きいために一方向に磁化された状態となっているので、自然共鳴現象も方向性を持つようになる。すなわち、図6に示すように、板厚方向に磁化されたε相ヘマタイトの磁性材料で形成した板状の複合磁性体13を、入力用ホーンアンテナ14aと出力用ホーンアンテナ14bの間に入れ、磁化された方向と電磁波の伝搬方向(z)をほぼ平行にする。入力用ホーンアンテナ14aには、直線偏波を形成するため偏光子15aが固定されている。偏光子15aは導体のすだれ状フィルターであり、すだれの長手方向に電界のある電波は吸収し、これと直角方向にある電波を透過させる性質がある。この偏光子15aのすだれ状導体の長手方向は入力用ホーンアンテナ14aの電界とは直交しており、入力した電波はほぼ無損失で透過することができる。一方、同じように出力用ホーンアンテナ14bにもすだれ状のフィルターが検光子15bとして取り付けられている。この検光子15bは出力ホーンアンテナ14bに固定されており、出力アンテナ14bを回転すると同じように回転する。このすだれ状導体は、出力側ホーンアンテナ14bの電界方向と直交しており、このすだれ状導体を通過した電波を出力側ホーンアンテナ14bはほぼ無損失で受信できる。
【0034】
さて、図6の配置で、入力用ホーンアンテナ14aから放出された電波は偏光子15aを直線偏波となって通過し、配向されたナノ粒子のε相ヘマタイトよりなる複合磁性体13に入るが、このとき複合磁性体13が一方向に磁化されているために直線偏波の偏波面の回転が起こる。いわゆるファラデー効果が生ずる。このファラデー回転角θは
θ=Ct ----- (1)
と試料の厚みtに比例する。Cはファラデー定数といわれる。今、図6の配置で、θ=45度になるように、試料の厚みtを設定し、検光子15bも同じ方向に45度傾けて置くと、電波は入力側から出力側にスムースに伝わる。一方、なんらかの理由で出力側から入った電波は磁化された複合磁性体13によりさらに45個回転し、入力側に再び入るときは偏光子15aのすだれ状導体と電磁波の電界が平行となり、偏光子15aにて吸収され、入力側に戻らない。いわゆるファラデー回転型アイソレータを実現することができる。
【0035】
このようなファラデー回転型アイソレータはミリ波帯で使われる無線LANや各種レーダーシステムではEMC対策として不可欠なデバイスとなる可能性がある。これが本発明の主要なポイントである。アイソレータは、電波を入力側から出力側には伝えるが、逆に出力側から入力側には伝えないという点で、電波の逆止弁であり、非可逆素子といわれる。
【0036】
ファラデー定数Cは周波数の関数でもある。実際にデバイスを動作させる周波数は、通常は自然共鳴周波数よりも低い周波数で動作させる。偏波面が回転する現象は、直線偏波を右回りと左回りの円偏波に分解した場合、それぞれの伝搬速度が磁性材料の自然共鳴現象の作用によって異なるからである。自然共鳴周波数に近づくにつれてファラデー定数Cは大きくなるが、損失も増えるので適当なる動作周波数を選択する。
【0037】
この種のミリ波帯非可逆素子は他に、図7、図8に示すような導波管型共鳴吸収型アイソレータがある。この場合は、図に示すように、矢印の方向に磁化された複合磁性体16a, 16b, 18a, 18bが、矩形導波管17の長手方向の端から約1/4の位置に取り付けられる。この位置は、電磁波が伝わる場合、円偏波が発生する部分である。電磁波の進行する方向を逆にすると、この位置の円偏波の回転方向は反転する。この場合の動作周波数は自然共鳴周波数そのものに設定する。このようにすると、配向された複合磁性体16a, 16b, 18a, 18bの磁化の首振り運動は一方向しか回転しないので、一方向の回転の電磁波のみ吸収される。すなわち、一方向に伝搬する電磁波は吸収され、反対方向に伝播する電磁波は吸収されない素子、アイソレータを実現できる。これは強磁性共鳴の吸収特性そのものを利用することから共鳴吸収型と呼ばれる。このようなデバイスにも新しく開発された本発明の配向されたε相へマタイト複合材料は使用可能である。
【0038】
図9は、三分岐矩形導波管20の中央に、配向されたε相ヘマタイトで形成した複合磁性体19を装荷し、その磁化方向を分岐面に垂直にしたときの適用例を示している。これは一般に導波管Y型接合サーキュレータと呼ばれる。この原理は、ポートP1から入射した電波は、ポートP2に伝わるがポートP3には伝わらない。同じように、ポートP2から入射した電波はポートP3伝わるがポートP1には伝わらない。ポートP3から入射した電波は、ポートP1に伝わるがポートP2には伝わらない。すなわち回転する一方向にのみ電波が伝わり、逆回転方向には電波は伝わらない。このようなデバイスをサーキュレータと呼ぶ。このようなデバイスは、ポートP3に吸収体を接続することにより、ポートP1からポートP2に電波は伝わるが、逆方向には電波が伝わらないというアイソレータに変換させることができる。
【0039】
上記以外に、自然共鳴周波数以上で動作させる非可逆素子がある。これは電界変位型アイソレータと呼ばれるものである。また、その他のミリ波帯非可逆素子としては、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータやストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータなどがあるが、これにも本発明のε相ヘマタイトを主相とする磁性材料が使用可能であることは、これまでの説明でこの分野の専門家には容易に理解されるであろう。
【0040】
以上、ε相ヘマタイトを主相とする磁性材料で形成した複合磁性体を用いたミリ波帯非可逆素子の例について図面を用いて説明したが、従来技術と最も異なる点は、永久磁石の存在なくして、このようなデバイスが実現できることである。例えば、ガーネットフェライトやスピネルへライトを用いた従来技術では100GHzで動作する非可逆素子を実現しようとすると約30,000Oeの磁界が必要である。これを永久磁石で実現しようとすると、巨大な磁気回路が必要であることはこの分野の専門家であれば容易に想像できることである。これに対して、本発明の主要なポイントである、ε相ヘマタイトを主相とする磁性材料をミリ波帯非可逆素子に応用する技術を用いれば、巨大な磁気回路が全く不要になるか、もしくは極めて小型の磁気回路で済むことになる。図2、図3の測定結果からこのことを予想することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。上記したように得られた磁性材料を図4に示す磁場中成型装置を用いて、直径52mm、試料の充填厚みは5mm程度のペレットを作製した。このように作製されたε-Ga0.4Fe1.6O3のペレットの面に対し、垂直に6テスラ程度のパルス磁場を掛けて磁化させた試料を用いた。残留磁化による磁場は表面において40gauss程度である。
【0042】
上記のようにして磁化された試料に対し、横偏光のテラヘルツ波を垂直入射させテラヘルツ波時間領域分光法にて透過波形の測定を行った。以下に示す実験では、外部磁化を与えずに、残留磁化による影響を確認した。
【0043】
ここで、テラヘルツ波時間領域分光法について、図10に示す測定装置を参照して説明する。フェムト秒レーザー発生装置21で発生したレーザー光は、ビームスプリッター22で2分割される。当該2分割されたレーザー光の一方は、テラヘルツ波発生器(SiレンズとGaAs基板からなる光伝導スイッチ素子により構成される。)23へ導光され、当該テラヘルツ波発生器23がテラヘルツ波を発生する。発生したテラヘルツ波は、放物面鏡30によりテラヘルツ波検出器(SiレンズとGaAs基板からなる光伝導スイッチ素子により構成される。)25へ導かれる。
【0044】
前記ビームスプリッター22で2分割されたレーザー光の他方は、時間遅延回路26を通過した後、テラヘルツ波検出器25へ導かれる。この結果、テラヘルツ波検出器25では、試料容器24を通過しないレーザー光の波形を参照波形とし、試料容器24を通過したテラヘルツ波の波形を信号波形として、当該テラヘルツ波の電場振幅の時間波形が観測される。当該観測結果は、カレントアンプ29を通過した後、ロックインアンプ28へ入る。ロックインアンプ28と、時間遅延回路26とは、ワークステーション27に接続されており、テラヘルツ波の波形を信号波形と、テラヘルツ波の電場振幅の時間波形とのフーリエ変換スペクトル(各々Sref,Ssigとする。)の比(Ssig/Sref)を求め、試料容器24に設置された試料の電磁波吸収率を算定する。
【0045】
尚、試料容器は、図11に示すように、10mm×10mm×5mmの紙製の箱である。本実施例においては、試料を試料容器24内に設置した。テラヘルツ波は、試料容器24における一方の10mm×10mmの面から入射し、他方の10mm×10mmの面から透過波として出て行く。
【0046】
図12は、測定した透過波の振幅の時間依存性を示す。ここで、Hは横偏光、Vは縦偏光を表している。また、NSとは、試料のN極面からテラヘルツ波を入射した場合、SNとは、試料のS極面からテラヘルツ波を入射した場合を表している。つまり、図12(a)中、A(NS−H)はN極面からテラヘルツ波を入射した場合の横偏光、B(NS−V)はN極面からテラヘルツ波を入射した場合の縦偏光を表し、図12(b)中、C(SN−H)はS極面からテラヘルツ波を入射した場合の横偏光、D(SN−V)はS極面からテラヘルツ波を入射した場合の縦偏光を表している。本実験は、横偏光のテラヘルツ波を垂直入射させているが、図12(a)と図12(b)を比較した場合(つまり、試料のN極とS極を入れ替えた場合)、出射された横偏光波(AとC)の位相は、同じである。これに対して、出射された縦偏向波(BとD)は、位相が90℃ずれていることが解る。
【0047】
図13は、測定した透過波形の全時間領域のうち、振動がはっきりとしている時間領域(50〜140ps)のみを切り出したフーリエ変換スペクトルである。また、振動成分以外は、データ処理で削除している。この波形を3次元的にプロットしたグラフを図14及び図15に示す。
【0048】
図13から、試料無しとしたA(Ref―H)に対して、試料のN極面からテラヘルツ波を入射した場合(NS)、試料のS極面からテラヘルツ波を入射した場合(SN)のいずれも、横偏光波(NS−HとSN−H)の強度は、低下している。また、いずれの場合も、入射していない縦偏向波(NS−VとSN−V)が、観測されていることより、直線偏光波が回転させられていること(いわゆるファラデー効果を生じること)が解る。
【0049】
図14及び図15から、テラヘルツ波は、試料を透過する際、NSの試料では左回り偏光が吸収され、残った右回り偏光が観測できたものと考えられる。ここで、右回りとは、テラヘルツ波の進行方向に進む右ねじの回る向きをいう。同様に、テラヘルツ波は、試料を透過する際、SNの試料では右回り偏光が吸収され、残った左回り偏光が観測できたものと考えられる。
【0050】
上記実施例により、本発明に係るミリ波帯非可逆素子は、外部磁化によって事前に磁化させた磁性材料を用い、残留磁化のみによって直線偏光波を回転させるという、ファラデー効果を生じることが確認できた。従って、永久磁石を用いて外部磁化を与えることによって、中心周波数を調整することができるようになることは、容易に推測することができる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、永久磁石を用いず磁性材料のみの磁化によってミリ波帯非可逆素子として適用する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、永久磁石を用いたミリ波帯非可逆素子としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の説明から明らかなように、本発明の技術である配向されたε相ヘマタイトを主相とする磁性材料を非可逆素子に応用すれば、30GHz〜300GHzの周波数帯域で動作する小型のミリ波帯非可逆素子の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の基本となった新材料の特性する測定装置概略図
【図2】本発明の基本となった新材料の特性図(1)
【図3】本発明の基本となった新材料の特性図(2)
【図4】本発明の配向新材料を作成するための成型装置の概略断面図
【図5】本発明の配向新材料の構造概略図
【図6】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(1)
【図7】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(2)
【図8】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(3)
【図9】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(4)
【図10】本発明の実施例で用いた測定装置の概略図
【図11】本発明の実施例で用いた測定装置に係る試料容器の概略図
【図12】本発明の実施例で測定した透過波振幅の時間依存性を示し、(a)N極面から入射した場合、(b)S極面から入射した場合の図
【図13】本発明の実施例で測定した透過波形のフーリエ変換スペクトル(2)
【図14】本発明の実施例で測定した透過波形を3次元的にプロットしたグラフ(1)
【図15】本発明の実施例で測定した透過波形を3次元的にプロットしたグラフ(2)
【符号の説明】
【0054】
1; ミリ波帯信号源
2; ミリ波信号検出器
3a; 送信用ホーンアンテナ
3b; 受信用ホーンアンテナ
4; 試料容器固定台
5; 試料容器
6; 粉末試料
7a; 下パンチ
7b; 上パンチ
8a; 下ソレノイドコイル
8b; 上ソレノイドコイル
9; ダイス
10; 試料
11; ナノ粒子
12; バインダー
13; 複合磁性体
14a; 入力用ホーンアンテナ
14b; 出力用ホーンアンテナ
15a; 偏光子
15b; 検光子
16a; 複合磁性体
16b; 複合磁性体
17; 矩形導波管
18a; 複合磁性体
18b; 複合磁性体
19; 複合磁性体
20; 三分岐矩形導波管
【技術分野】
【0001】
本発明は、30GHz以上300GHz以下のミリ波帯で使用される磁気デバイスの分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波帯(30〜300GHz)の電磁波は、高速無線LANや車の衝突防止用レーダーなどの応用研究が盛んに行われている。特に、35, 94, 140GHzはいわゆる「空気の窓」と呼ばれる周波数帯であり、この周波数では空気は電磁波に対して高い透明性を有し、無線LANやレーダーなどへの応用に好適である。また、実用状態になった場合を想定すると、このようなミリ波帯でも電磁波相互干渉(EMC)問題は避けて通ることができず、この対策のための電波吸収体や非可逆素子などのデバイスが要求されることは間違いない。しかし、ミリ波帯では、効果的に電磁相互干渉(EMC)を抑える適当なる磁性材料が報告されていない。
【0003】
EMC対策デバイスを非可逆素子について見れば、従来はガーネット型やスピネル型フェライトが多く使用されてきた。これらの磁性材料をミリ波帯で使用しようとすると、磁化するための非常に大きな永久磁石が不可欠となり、磁気回路が大型化するためデバイスの小型化を達成するという面で実用性には問題があった。
【0004】
このような状況の中で、EMC対策に適した良好なる磁性材料の開発が注目されている。特に、高い共鳴周波数を示す大きな保磁力(Hc)を有する磁性材料の出現が期待される。これに対して、近年、100nmサイズであるε-Fe2O3(ε相ヘマタイト)の単相のナノ粒子が作成されるようになった。このナノ粒子は室温で高い保磁力を有することを特徴としてもつ。
【0005】
Fe2O3の化学式を有する物質としては、γ相もしくはα相からなるヘマタイトの二種類がよく知られている。その中間的な存在としてε相ヘマタイトの報告は早くからなされていたが、それはあくまで中間相としての報告であり、単相として得られたという報告は最近までなかった。それはε相ヘマタイトが準安定相であり、特殊な条件でのみ存在するからである。最近、発明者の一人は、逆ミセル法とゾル−ゲル法を組み合わせた方法を用いて、この単相をナノ粒子の状態で安定に作成できることを見いだし、非特許文献1ないし4において発表した。
【非特許文献1】黒木、桜井、橋本、大越;「ε−Fe2O3ナノ磁性体におけるスピン再配列現象制御」第29回日本応用磁気学会学術講演集(2005) 21pPS-16
【非特許文献2】桜井、小田、縫田、橋本、大越;「ε−Fe2O3の示す室温巨大保磁力とスピン再配列」第29回日本応用磁気学会学術講演集(2005) 21pPS-17
【非特許文献3】桜井、下山、橋本、大越;「室温巨大保磁力を示すε−Fe2O3ナノ微粒子の磁場配向体作製」第30回日本応用磁気学会学術講演集(2006) 13pD-3
【非特許文献4】大越;「酸化物ナノ微粒子」セラミックス 41 (2006) No.4 pp.296-299
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ミリ波帯のEMC問題を解決するための非可逆素子を実現しようとすると、従来の磁性材料では強力な永久磁石による補助を必要とし、非可逆素子全体の寸法が大型になるという問題や巨大すぎてデバイスそのものを実現できないという課題があった。そこで、本発明では、この技術的課題を解決するため、ミリ波帯において有効な自然共鳴吸収を有した磁性材料を利用することにより、コンパクトな構成を有するミリ波帯非可逆素子を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上述のε-Fe2O3(ε相ヘマタイト)を骨格とし、Fe元素の一部を別元素で置換した磁性材料を非可逆素子用材料として使用することにより、従来では得られなかった短波長領域における非可逆性能を発現させ、これを非可逆素子として適用すれば、上述の技術的課題が解決できうる可能性について検討を重ね、本発明を完成させた。
【0008】
このような従来技術の背景の中で、本発明のミリ波帯非可逆素子は、化学式がMxFe2-xO3(ただし、0<x<2)で、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなり、ε相ヘマタイトの結晶構造を有する磁性材料を主構成要素とすることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の前記磁性体の磁化容易軸が一方向に優先的に配向され、かつ一方向に磁化された磁性材料であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記磁性材料は、粒子で構成され、前記粒子の磁化容易軸が一方向に配向されたものであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明が適用できるミリ波帯非可逆素子は、ファラデー回転型アイソレータ、導波管型共鳴吸収型アイソレータ、導波管Y型接合サーキュレータ、導波管型電界変位型アイソレータ、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータ、ストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非可逆素子を用いることにより、ミリ波帯で動作する無線LANシステムや各種レーダーシステム、センサーシステムの電磁波干渉問題(EMC)を、小型簡便かつ廉価な方法で軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の形態について参考文献と添付図面を用いて説明する。
【0014】
前述したFe2O3の化学式で示される従来材料、γ相ヘマタイトは空格子点を含む逆スピネル構造に、α相ヘマタイトは六方晶系に属するのに対して、本発明の骨格となる磁性材料としてのε相ヘマタイトは少し歪んだ斜方晶系に属する。このために、ε相ヘマタイトは高い結晶磁気異方性(K>2×106erg/cc)を示し、自発磁化がMs=15emu/gと比較的小さいことから、大きな異方性磁界Ha=2K/Msを期待できる。また、ナノ粒子は100nmと小さく、その中では単磁区が形成され、磁性体が本来もっている異方性磁界Haに近い保磁力Hcを発現させることができる。
【0015】
また、ε相ヘマタイトの結晶構造では、Feイオンの入るサイトがA、B、C、及びDの4個存在し、他の元素を置換した場合、Dサイトに優先的に入る傾向があり、自発磁化を制御することが可能である。
【0016】
一般に、異方性磁界Haを有する強磁性体に、f=(γHa)/(2π)という周波数の電磁波を供給すると、その周波数で強磁性共鳴吸収の一種である自然共鳴が起こる。ここで、γ=2.8MHz/Oeはジャイロ磁気定数である。本ε相ヘマタイトはHaが大きいことから、100GHz帯を超える周波数帯でこの自然共鳴が生ずることが期待される。
【0017】
因みに、このような性質を有するε−Fe2O3は、例えば、以下のように逆ミセル法及びゾルーゲル法を組み合わせて製造することができる。具体的には、先ず始めにn−オクタンを油相とする溶液の水相に、硝酸鉄(III)と界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)とを溶解することにより原料溶液を作製する。
【0018】
尚、原料溶液の水相に形状制御剤として、適量のアルカリ土類元素(Ba、Sr、Caなど)の硝酸塩を溶解させておくこともできる。この形状制御剤添加を行うことで、単相のε−Fe2O3粒子を棒状の形状とすることができる。
【0019】
また、原料溶液の作製とは別に、n−オクタンを油相とする溶液の水相に界面活性剤(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム)を溶解したミセル溶液に、アンモニア水溶液等の中和剤を混合して中和剤溶液を作製する。
【0020】
次いで、逆ミセル法によって、原料溶液と中和剤溶液とを攪拌混合することにより混合溶液を作製し、これにより混合溶液内において水酸化鉄系化合物粒子の沈殿反応を進行させる。
【0021】
次いで、混合溶液に対して、シラン化合物の溶液を適宜添加することで、ゾル−ゲル法により、棒状、もしくはそれ以外の形状を有する水酸化鉄系化合物粒子の表面にシリカによる被覆を施す。
【0022】
このような反応は混合溶液内で行われ、混合溶液内では、ナノオーダーの微細な水酸化鉄系化合物粒子の表面において加水分解が起こり、表面がシリカで被覆された水酸化鉄系化合物粒子(以下、これをシリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子と呼ぶ)を作製できる。
【0023】
次いで、シリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子を混合溶液から分離して、大気雰囲気下において所定の温度(700〜1300℃の範囲内)で焼成処理する。この焼成処理により、シリカ被覆水酸化鉄系化合物粒子のシリカ殻内部での酸化反応により、微細なε−Fe2O3粒子を生成できる。
【0024】
100GHz帯を超える周波数帯でこの自然共鳴が生ずることを確かめるために、図1に示すような測定系でε相ヘマタイトの電磁波吸収実験を行った。1はミリ波帯信号源であり、96GHzから142GHzまでの掃引が可能である。2はミリ波信号検出器である。3aは送信用ホーンアンテナ、3bは受信用ホーンアンテナである。4は試料を保持する試料容器固定台であり、5は試料を入れる試料容器、6は粉末試料である。容器の直径は約52mm、試料の充填厚みは5mm程度である。試料の充填方法は自然に粉末が重なる状態とし、特別な圧力をかけて成型したものではない。最初に試料を入れない状態で信号を検出し、その後に試料を充填し、減衰量をdB換算で測定した。
【0025】
ここで、上述した製造工程において原料溶液を作製する際に、当該原料溶液にMxを適量溶解させることにより、ε−Fe2O3と同じ結晶構造を有しながら、Fe3+イオンサイトの一部が置換されたε−MxFe2−xO3(MはFeを除く元素、xは0<x<2の範囲)粒子の単相粒子を生成できる。Mとしては、3価の元素を用いることが好ましい。具体的には、Mとして、In,Ga,Al,Sc,Cr,Sm,Yb,Ce,Ru,Rh,Ti,Co,Ni,Mn,Zn,Zr,Yから選択される1種の元素を挙げることができる。
【0026】
図2はGa置換(GaxFe2-xO3; x=0.15)したε相ヘマタイト粉体の電磁波減衰量測定結果を示す。126GHz帯に自然磁気共鳴周波数が存在することを確認できた。
【0027】
図3はAl置換(AlxFe2-xO3; x=0.15)したε相ヘマタイト粉体の電磁波減衰量測定結果を示す。この材料も126GHz帯に自然磁気共鳴周波数が存在する。
【0028】
このように、種々の元素を置換することにより、100GHz帯の自然共鳴周波数を移動させることができる。これは、置換元素の種類を変えてもいいし、また同じ元素で置換量を変えても可能である。他元素置換により自然共鳴周波数が変わる原因は、結晶異方性定数Kが主に結晶構造に起因することから余り変化せず、自発磁化Msが変化するためと考えられる。特に非磁性体を置換すると、自発磁化が増え、自然共鳴周波数は低周波側にシフトする。
【0029】
これを化学式MxFe2-xO3で見ると、今回の実施例では、Mとして、Ga, Alのみを示したが、その他に In, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yなどの元素の置換が可能である。これらは、単独置換もしくは複数元素の複合置換された状態でも実現が可能である。
【0030】
図2、図3の測定結果は無秩序に積み重ねられた粉体としての特性であるので、これ自体の応用としては、ミリ波帯の電波吸収体が考えられる。しかし、これらの材料は、一つ一つの粒子が磁化容易軸を有するナノサイズの単結晶であり、単磁区構造を有することから、これを一方向に揃えたバルク状の固体材料を作成すると、さらなる応用の範囲が拡大する。ここで、磁化容易軸とは、物質の磁気的性質、特にその物質の磁化の安定性が結晶方位によって異なるという結晶磁気異方性を持つ磁性体において、磁化され易い結晶方位をいう。
【0031】
図4には、ナノサイズ粉体の磁化容易軸方向が揃った固体材料を作るための、磁場中成型装置の概略断面図を示す。7aが下パンチ、7bが上パンチであり、8aが下ソレノイドコイル、8bが上ソレノイドコイルである。9は非磁性体のダイスであり、ナノ粒子11とバインダー12の混合した試料10とはダイス9の中に充填され、ソレノイドコイル8a, 8bに流した電流により発生する磁場中にさらされたまま矢印の方向から上パンチで圧縮される。粉体の各ナノ粒子11は磁場により配向された状態で圧縮されるのでバインダー12により固定されダイス3の中から固体材料として取り出すことができる。
【0032】
図5の(a)は、ε相ヘマタイトのナノ粒子11とバインダー12が無秩序に混合された状態でダイス9の中に充填された状態を示し、図5(b)は図4の装置を用いて磁場中成型した後の配向された複合磁性体13の状態を示す。ナノ粒子11の容易軸方向と磁化方向が印加磁界の方向に配列され、その間隙をバインダー12が占める構造となっている。この場合のバインダー12の性質としては、成型時は液状で流動性がよく、成型後は圧力や熱処理などで固体化され、ナノ粒子11の回転を拘束するようなものが選ばれる。この拘束が十分でない状態で放置すると、静磁エネルギーを下げるために、ナノ粒子11の一部が反転し、前記複合磁性体13を用いた本発明のミリ波帯非可逆素子の特性は劣化する。ナノ粒子11の配向状態を、温度、湿度、周辺ガス雰囲気の変化に対して安定的に保つ役割をバインダー12が担う。
【0033】
このような複合体は、ε相ヘマタイトの保磁力が非常に大きいために一方向に磁化された状態となっているので、自然共鳴現象も方向性を持つようになる。すなわち、図6に示すように、板厚方向に磁化されたε相ヘマタイトの磁性材料で形成した板状の複合磁性体13を、入力用ホーンアンテナ14aと出力用ホーンアンテナ14bの間に入れ、磁化された方向と電磁波の伝搬方向(z)をほぼ平行にする。入力用ホーンアンテナ14aには、直線偏波を形成するため偏光子15aが固定されている。偏光子15aは導体のすだれ状フィルターであり、すだれの長手方向に電界のある電波は吸収し、これと直角方向にある電波を透過させる性質がある。この偏光子15aのすだれ状導体の長手方向は入力用ホーンアンテナ14aの電界とは直交しており、入力した電波はほぼ無損失で透過することができる。一方、同じように出力用ホーンアンテナ14bにもすだれ状のフィルターが検光子15bとして取り付けられている。この検光子15bは出力ホーンアンテナ14bに固定されており、出力アンテナ14bを回転すると同じように回転する。このすだれ状導体は、出力側ホーンアンテナ14bの電界方向と直交しており、このすだれ状導体を通過した電波を出力側ホーンアンテナ14bはほぼ無損失で受信できる。
【0034】
さて、図6の配置で、入力用ホーンアンテナ14aから放出された電波は偏光子15aを直線偏波となって通過し、配向されたナノ粒子のε相ヘマタイトよりなる複合磁性体13に入るが、このとき複合磁性体13が一方向に磁化されているために直線偏波の偏波面の回転が起こる。いわゆるファラデー効果が生ずる。このファラデー回転角θは
θ=Ct ----- (1)
と試料の厚みtに比例する。Cはファラデー定数といわれる。今、図6の配置で、θ=45度になるように、試料の厚みtを設定し、検光子15bも同じ方向に45度傾けて置くと、電波は入力側から出力側にスムースに伝わる。一方、なんらかの理由で出力側から入った電波は磁化された複合磁性体13によりさらに45個回転し、入力側に再び入るときは偏光子15aのすだれ状導体と電磁波の電界が平行となり、偏光子15aにて吸収され、入力側に戻らない。いわゆるファラデー回転型アイソレータを実現することができる。
【0035】
このようなファラデー回転型アイソレータはミリ波帯で使われる無線LANや各種レーダーシステムではEMC対策として不可欠なデバイスとなる可能性がある。これが本発明の主要なポイントである。アイソレータは、電波を入力側から出力側には伝えるが、逆に出力側から入力側には伝えないという点で、電波の逆止弁であり、非可逆素子といわれる。
【0036】
ファラデー定数Cは周波数の関数でもある。実際にデバイスを動作させる周波数は、通常は自然共鳴周波数よりも低い周波数で動作させる。偏波面が回転する現象は、直線偏波を右回りと左回りの円偏波に分解した場合、それぞれの伝搬速度が磁性材料の自然共鳴現象の作用によって異なるからである。自然共鳴周波数に近づくにつれてファラデー定数Cは大きくなるが、損失も増えるので適当なる動作周波数を選択する。
【0037】
この種のミリ波帯非可逆素子は他に、図7、図8に示すような導波管型共鳴吸収型アイソレータがある。この場合は、図に示すように、矢印の方向に磁化された複合磁性体16a, 16b, 18a, 18bが、矩形導波管17の長手方向の端から約1/4の位置に取り付けられる。この位置は、電磁波が伝わる場合、円偏波が発生する部分である。電磁波の進行する方向を逆にすると、この位置の円偏波の回転方向は反転する。この場合の動作周波数は自然共鳴周波数そのものに設定する。このようにすると、配向された複合磁性体16a, 16b, 18a, 18bの磁化の首振り運動は一方向しか回転しないので、一方向の回転の電磁波のみ吸収される。すなわち、一方向に伝搬する電磁波は吸収され、反対方向に伝播する電磁波は吸収されない素子、アイソレータを実現できる。これは強磁性共鳴の吸収特性そのものを利用することから共鳴吸収型と呼ばれる。このようなデバイスにも新しく開発された本発明の配向されたε相へマタイト複合材料は使用可能である。
【0038】
図9は、三分岐矩形導波管20の中央に、配向されたε相ヘマタイトで形成した複合磁性体19を装荷し、その磁化方向を分岐面に垂直にしたときの適用例を示している。これは一般に導波管Y型接合サーキュレータと呼ばれる。この原理は、ポートP1から入射した電波は、ポートP2に伝わるがポートP3には伝わらない。同じように、ポートP2から入射した電波はポートP3伝わるがポートP1には伝わらない。ポートP3から入射した電波は、ポートP1に伝わるがポートP2には伝わらない。すなわち回転する一方向にのみ電波が伝わり、逆回転方向には電波は伝わらない。このようなデバイスをサーキュレータと呼ぶ。このようなデバイスは、ポートP3に吸収体を接続することにより、ポートP1からポートP2に電波は伝わるが、逆方向には電波が伝わらないというアイソレータに変換させることができる。
【0039】
上記以外に、自然共鳴周波数以上で動作させる非可逆素子がある。これは電界変位型アイソレータと呼ばれるものである。また、その他のミリ波帯非可逆素子としては、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータやストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータなどがあるが、これにも本発明のε相ヘマタイトを主相とする磁性材料が使用可能であることは、これまでの説明でこの分野の専門家には容易に理解されるであろう。
【0040】
以上、ε相ヘマタイトを主相とする磁性材料で形成した複合磁性体を用いたミリ波帯非可逆素子の例について図面を用いて説明したが、従来技術と最も異なる点は、永久磁石の存在なくして、このようなデバイスが実現できることである。例えば、ガーネットフェライトやスピネルへライトを用いた従来技術では100GHzで動作する非可逆素子を実現しようとすると約30,000Oeの磁界が必要である。これを永久磁石で実現しようとすると、巨大な磁気回路が必要であることはこの分野の専門家であれば容易に想像できることである。これに対して、本発明の主要なポイントである、ε相ヘマタイトを主相とする磁性材料をミリ波帯非可逆素子に応用する技術を用いれば、巨大な磁気回路が全く不要になるか、もしくは極めて小型の磁気回路で済むことになる。図2、図3の測定結果からこのことを予想することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明する。上記したように得られた磁性材料を図4に示す磁場中成型装置を用いて、直径52mm、試料の充填厚みは5mm程度のペレットを作製した。このように作製されたε-Ga0.4Fe1.6O3のペレットの面に対し、垂直に6テスラ程度のパルス磁場を掛けて磁化させた試料を用いた。残留磁化による磁場は表面において40gauss程度である。
【0042】
上記のようにして磁化された試料に対し、横偏光のテラヘルツ波を垂直入射させテラヘルツ波時間領域分光法にて透過波形の測定を行った。以下に示す実験では、外部磁化を与えずに、残留磁化による影響を確認した。
【0043】
ここで、テラヘルツ波時間領域分光法について、図10に示す測定装置を参照して説明する。フェムト秒レーザー発生装置21で発生したレーザー光は、ビームスプリッター22で2分割される。当該2分割されたレーザー光の一方は、テラヘルツ波発生器(SiレンズとGaAs基板からなる光伝導スイッチ素子により構成される。)23へ導光され、当該テラヘルツ波発生器23がテラヘルツ波を発生する。発生したテラヘルツ波は、放物面鏡30によりテラヘルツ波検出器(SiレンズとGaAs基板からなる光伝導スイッチ素子により構成される。)25へ導かれる。
【0044】
前記ビームスプリッター22で2分割されたレーザー光の他方は、時間遅延回路26を通過した後、テラヘルツ波検出器25へ導かれる。この結果、テラヘルツ波検出器25では、試料容器24を通過しないレーザー光の波形を参照波形とし、試料容器24を通過したテラヘルツ波の波形を信号波形として、当該テラヘルツ波の電場振幅の時間波形が観測される。当該観測結果は、カレントアンプ29を通過した後、ロックインアンプ28へ入る。ロックインアンプ28と、時間遅延回路26とは、ワークステーション27に接続されており、テラヘルツ波の波形を信号波形と、テラヘルツ波の電場振幅の時間波形とのフーリエ変換スペクトル(各々Sref,Ssigとする。)の比(Ssig/Sref)を求め、試料容器24に設置された試料の電磁波吸収率を算定する。
【0045】
尚、試料容器は、図11に示すように、10mm×10mm×5mmの紙製の箱である。本実施例においては、試料を試料容器24内に設置した。テラヘルツ波は、試料容器24における一方の10mm×10mmの面から入射し、他方の10mm×10mmの面から透過波として出て行く。
【0046】
図12は、測定した透過波の振幅の時間依存性を示す。ここで、Hは横偏光、Vは縦偏光を表している。また、NSとは、試料のN極面からテラヘルツ波を入射した場合、SNとは、試料のS極面からテラヘルツ波を入射した場合を表している。つまり、図12(a)中、A(NS−H)はN極面からテラヘルツ波を入射した場合の横偏光、B(NS−V)はN極面からテラヘルツ波を入射した場合の縦偏光を表し、図12(b)中、C(SN−H)はS極面からテラヘルツ波を入射した場合の横偏光、D(SN−V)はS極面からテラヘルツ波を入射した場合の縦偏光を表している。本実験は、横偏光のテラヘルツ波を垂直入射させているが、図12(a)と図12(b)を比較した場合(つまり、試料のN極とS極を入れ替えた場合)、出射された横偏光波(AとC)の位相は、同じである。これに対して、出射された縦偏向波(BとD)は、位相が90℃ずれていることが解る。
【0047】
図13は、測定した透過波形の全時間領域のうち、振動がはっきりとしている時間領域(50〜140ps)のみを切り出したフーリエ変換スペクトルである。また、振動成分以外は、データ処理で削除している。この波形を3次元的にプロットしたグラフを図14及び図15に示す。
【0048】
図13から、試料無しとしたA(Ref―H)に対して、試料のN極面からテラヘルツ波を入射した場合(NS)、試料のS極面からテラヘルツ波を入射した場合(SN)のいずれも、横偏光波(NS−HとSN−H)の強度は、低下している。また、いずれの場合も、入射していない縦偏向波(NS−VとSN−V)が、観測されていることより、直線偏光波が回転させられていること(いわゆるファラデー効果を生じること)が解る。
【0049】
図14及び図15から、テラヘルツ波は、試料を透過する際、NSの試料では左回り偏光が吸収され、残った右回り偏光が観測できたものと考えられる。ここで、右回りとは、テラヘルツ波の進行方向に進む右ねじの回る向きをいう。同様に、テラヘルツ波は、試料を透過する際、SNの試料では右回り偏光が吸収され、残った左回り偏光が観測できたものと考えられる。
【0050】
上記実施例により、本発明に係るミリ波帯非可逆素子は、外部磁化によって事前に磁化させた磁性材料を用い、残留磁化のみによって直線偏光波を回転させるという、ファラデー効果を生じることが確認できた。従って、永久磁石を用いて外部磁化を与えることによって、中心周波数を調整することができるようになることは、容易に推測することができる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、永久磁石を用いず磁性材料のみの磁化によってミリ波帯非可逆素子として適用する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、永久磁石を用いたミリ波帯非可逆素子としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上の説明から明らかなように、本発明の技術である配向されたε相ヘマタイトを主相とする磁性材料を非可逆素子に応用すれば、30GHz〜300GHzの周波数帯域で動作する小型のミリ波帯非可逆素子の提供が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の基本となった新材料の特性する測定装置概略図
【図2】本発明の基本となった新材料の特性図(1)
【図3】本発明の基本となった新材料の特性図(2)
【図4】本発明の配向新材料を作成するための成型装置の概略断面図
【図5】本発明の配向新材料の構造概略図
【図6】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(1)
【図7】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(2)
【図8】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(3)
【図9】本発明の実施例を示す非可逆素子の構造概略図(4)
【図10】本発明の実施例で用いた測定装置の概略図
【図11】本発明の実施例で用いた測定装置に係る試料容器の概略図
【図12】本発明の実施例で測定した透過波振幅の時間依存性を示し、(a)N極面から入射した場合、(b)S極面から入射した場合の図
【図13】本発明の実施例で測定した透過波形のフーリエ変換スペクトル(2)
【図14】本発明の実施例で測定した透過波形を3次元的にプロットしたグラフ(1)
【図15】本発明の実施例で測定した透過波形を3次元的にプロットしたグラフ(2)
【符号の説明】
【0054】
1; ミリ波帯信号源
2; ミリ波信号検出器
3a; 送信用ホーンアンテナ
3b; 受信用ホーンアンテナ
4; 試料容器固定台
5; 試料容器
6; 粉末試料
7a; 下パンチ
7b; 上パンチ
8a; 下ソレノイドコイル
8b; 上ソレノイドコイル
9; ダイス
10; 試料
11; ナノ粒子
12; バインダー
13; 複合磁性体
14a; 入力用ホーンアンテナ
14b; 出力用ホーンアンテナ
15a; 偏光子
15b; 検光子
16a; 複合磁性体
16b; 複合磁性体
17; 矩形導波管
18a; 複合磁性体
18b; 複合磁性体
19; 複合磁性体
20; 三分岐矩形導波管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ε−MxFe2-xO3(ただし、0<x<2)として表され、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなる磁性材料を主構成要素としたミリ波帯非可逆素子。
【請求項2】
前記磁性材料の磁化容易軸が一方向に配向されたものである請求項1に記載のミリ波帯非可逆素子。
【請求項3】
前記磁性材料は、粒子で構成され、前記粒子の磁化容易軸が一方向に配向されたものである請求項1に記載のミリ波帯非可逆素子。
【請求項4】
ファラデー回転型アイソレータ、導波管型共鳴吸収型アイソレータ、導波管Y型接合サーキュレータ、導波管型電界変位型アイソレータ、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータ、ストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータのいずれか一種である請求項1に記載されたミリ波帯非可逆素子。
【請求項1】
ε−MxFe2-xO3(ただし、0<x<2)として表され、MはIn, Ga, Al, Sc, Cr, Sm, Yb, Ce, Ru, Rh, Ti, Co, Ni, Mn, Zn, Zr, Yの少なくとも1種からなる磁性材料を主構成要素としたミリ波帯非可逆素子。
【請求項2】
前記磁性材料の磁化容易軸が一方向に配向されたものである請求項1に記載のミリ波帯非可逆素子。
【請求項3】
前記磁性材料は、粒子で構成され、前記粒子の磁化容易軸が一方向に配向されたものである請求項1に記載のミリ波帯非可逆素子。
【請求項4】
ファラデー回転型アイソレータ、導波管型共鳴吸収型アイソレータ、導波管Y型接合サーキュレータ、導波管型電界変位型アイソレータ、ストリップ線路型の三分岐のサーキュレータ、ストリップ線路型エッジガイドモード型アイソレータのいずれか一種である請求項1に記載されたミリ波帯非可逆素子。
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図4】
【図7】
【図8】
【図14】
【図15】
【図3】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図4】
【図7】
【図8】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−124691(P2009−124691A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268637(P2008−268637)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年10月17日 インターネットアドレス「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/home」「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/fulltext/116331825/PDFSTART」に発表
【出願人】(502383889)キーコム株式会社 (28)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年10月17日 インターネットアドレス「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/home」「http://www3.interscience.wiley.com/cgi−bin/fulltext/116331825/PDFSTART」に発表
【出願人】(502383889)キーコム株式会社 (28)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【Fターム(参考)】
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