説明

ミリ波撮像装置、ミリ波撮像システムおよびプログラム

【課題】観察領域の温度変化に拘わらず、画素間のコントラストが適切に維持された被写体像を生成するための技術を提供する。
【解決手段】放射体3にて放射されたミリ波を基準ミリ波センサ22で受信し、その検出値と基準検出値との誤差を補正値として、各ミリ波センサの検出値を補正する。放射体3は、基準となるミリ波を放射すべく観察領域100に配置されていることから、例えば、観察領域100の温度が上昇すれば、ミリ波としての熱雑音も大きくなる結果、基準ミリ波センサ22の検出値も大きくなる。つまり、基準ミリ波センサ22の検出値と基準検出値との誤差は、観察領域100の温度変化に応じて変動するものであるため、この誤差を補正値として各ミリ波センサ22の検出値を補正すれば、各検出値から観察領域100の温度変化の影響を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体から放射されるミリ波を受信して被写体を撮像するミリ波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人物などの被写体から放射されるミリ波を受信することによって、被写体を撮像し、その撮像画像から被写体において隠された金属・非金属類の武器や、密輸品を検出することが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の技術では、被写体となる人物とそれ以外の領域とで放射されるミリ波の信号レベルが異なることを利用し、その信号レベルに応じた成分(例えば色相、明度、彩度など)の値で画素を配置することにより、被写体の撮像画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−258496号公報
【特許文献2】特許第2788519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように複数のミリ波センサを利用して被写体の撮像画像を生成するミリ波撮像装置では、観察対象となる観察領域の温度が変化すると、画像における画素間のコントラストが適切に維持できなくなり、鮮明な画像が得られなくなることがある。
【0006】
例えば、観察領域の温度が上昇した場合には、熱雑音として放射されるミリ波の信号レベルが大きくなるため、ミリ波センサそれぞれからの検出値も同様に大きくなってしまう。このとき、温度がある程度高くなると、ミリ波センサそれぞれからの検出値も大きくなり、この検出値に応じて決めるべき各画素の成分が全て最大値(または最小値)となってしまい、画像における画素間のコントラストが維持できなくなる。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、観察領域の温度変化に拘わらず、画素間のコントラストが適切に維持された被写体像を生成するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため第1の構成(請求項1)は、観察対象となる領域であり、該領域の一部において基準となるミリ波を放射する放射体が配置された観察領域について、該観察領域から放射されるミリ波を取り込んで被写体像を結像させるレンズアンテナと、前記レンズアンテナに取り込まれたミリ波が被写体像を結像する結像領域に配置された1以上のミリ波センサからなり、該ミリ波センサそれぞれが、受信したミリ波の信号レベルに応じた検出値を出力するミリ波センサ群と、前記1以上のミリ波センサから出力された検出値それぞれに基づいて、該検出値に応じた成分の画素を配置してなる被写体像を生成する画像生成手段と、前記1以上のミリ波センサのうち、前記放射体から放射されたミリ波を受信するミリ波センサとして定められた基準ミリ波センサの検出値について、あらかじめ定められた基準検出値との誤差を、前記ミリ波センサそれぞれに対する補正値として設定する補正値設定手段と、前記1以上のミリ波センサそれぞれの検出値を、前記補正値設定手段により設定された補正値により補正する検出値補正手段と、前記1以上のミリ波センサそれぞれの検出値を、前記画像生成手段による被写体像の生成に先立って、前記補正値設定手段により設定された補正値により補正する検出値補正手段と、を備えている。
【0009】
この構成において、1以上のミリ波センサそれぞれの検出値を補正するに際しては、補正値が、基準ミリ波センサの検出値と基準検出値との誤差であることから、この誤差が相殺されるように検出値から補正値を加減算することとすればよい。
【0010】
また、この構成における「基準検出値」は、熱雑音が充分に小さい状態における基準ミリ波センサからの検出値を設定しておくことが望ましく、この場合、画素間のコントラストを適切に維持できている状態での検出値を「基準検出値」とすることができる。
【0011】
また、この「基準検出値」はあらかじめ設定した値であってもよいし、任意に設定できる値としてもよい。この後者のためには、例えば、第2の構成(請求項2)のようにすることが考えられる。
【0012】
第2の構成では、所定のタイミングで前記基準ミリ波センサに検出された検出値を基準検出値として設定する基準設定手段、を備えている。そして、前記補正値設定手段は、前記基準ミリ波センサの検出値と前記基準設定手段により設定された基準検出値との誤差を、前記ミリ波センサそれぞれに対する補正値として設定する。
【0013】
この構成における「所定のタイミング」については、どのようなタイミングであってもよく、例えば、ユーザが特定の操作をしたタイミングや、ミリ波撮像装置を起動して撮像を開始したタイミングとすることなどが考えられる。
【0014】
また、上記各構成において、ミリ波センサ群は、複数のミリ波センサがマトリクス状に配置されたミリ波センサアレイを採用すればよい。また、複数のミリ波センサが一列に配置されたミリ波ラインセンサを採用してもよい。
【0015】
ミリ波センサ群としてラインセンサを採用するためには、上記各構成を第3の構成(請求項3)のようにするとよい。
第3の構成の前記ミリ波センサ群は、前記結像領域において複数のミリ波センサが一列に配置されてなり、該ミリ波センサにより受信されたミリ波により一列分の被写体像に対応する検出値を出力するラインセンサとされている。
【0016】
さらに、前記レンズアンテナに取り込まれたミリ波を反射させて前記ミリ波センサ群へと導く反射面を有するリフレクタと、前記リフレクタの反射面で反射したミリ波による被写体像の結像領域を、前記ミリ波センサの配置された方向と交差する方向に沿って変位させるべく、前記反射面による反射角を順次変更させることにより、前記ミリ波センサ群に、一列分の被写体像に対応する検出値として、前記反射面の反射角に応じた列の被写体像に対応する検出値群を順に出力させる反射角変更手段と、を備えている。
【0017】
そして、前記画像生成手段は、前記ミリ波センサ群から検出値群が出力される毎に、該検出値群における各検出値に応じたパラメータの画素を一列に配置した一列分の被写体像を生成する。
【0018】
また、上記課題を解決するため第4の構成(請求項4)は、観察対象となる領域(観察領域)に配置され、該観察領域の一部において基準となるミリ波を放射する放射体と、上述したいずれかに記載のミリ波撮像装置と、からなることを特徴とするミリ波撮像システムである。
【0019】
また、この構成における放射体は、第5の構成(請求項5)のように、基準となる熱雑音を発生する熱雑音源,または,電波吸収体により構成されているとよい。
また、上記課題を解決するためには、上述した各構成における全ての手段として機能させるためのプログラム(請求項6)としてもよい。
【0020】
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介してミリ波撮像装置や、これを利用するユーザ等に提供されるものである。
【発明の効果】
【0021】
上記各構成にかかるミリ波撮像装置では、放射体から放射されたミリ波を基準ミリ波センサで受信し、この基準ミリ波センサの検出値と基準検出値との誤差を補正値として、各ミリ波センサの検出値を補正している。放射体は、基準となるミリ波を放射すべく観察領域に配置されていることから、例えば、観察領域の温度が上昇すれば、ミリ波としての熱雑音も大きくなる結果、基準ミリ波センサの検出値も大きくなる。
【0022】
つまり、基準ミリ波センサの検出値と基準検出値との誤差は、観察領域の温度変化に応じて変動するものであるため、この誤差を補正値として各ミリ波センサの検出値を補正すれば、各検出値から観察領域の温度変化の影響を除去することができる。
【0023】
例えば、観察領域の温度が上昇し、各ミリ波センサの検出値に応じて決めるべき画素の成分が全て最大値(または最小値)となってしまうような場合でも、ここから温度変化に応じた誤差が減算(または加算)される結果、本来的な検出値に戻される。
【0024】
こうして、補正された検出値に基づいて被写体像を生成すれば、観察領域の温度変化に拘わらず、画素間のコントラストが適切に維持された鮮明な被写体像とすることができる。
【0025】
また、上記第2の構成では、補正値を設定するための基準となる基準検出値を、所定のタイミングで都度設定することができる。そのため、観察領域の温度が充分に低い状態の時に、基準ミリ波センサの検出値を基準検出値として設定しておけば、ミリ波としての熱雑音が小さい時の検出値を基準検出値とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ミリ波撮像装置の全体構成を示すブロック図
【図2】ラインセンサを構成するミリ波センサの構成を示すブロック図
【図3】第1実施形態における撮像処理を示すフローチャート
【図4】第1実施形態において、ミリ波放射部から放射されるミリ波がリフレクタに反射される様子を示す図
【図5】第2実施形態における撮像処理を示すフローチャート
【図6】第2実施形態において、ミリ波放射部から放射されるミリ波がリフレクタに反射される様子を示す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1) 第1実施形態
(1−1) 全体構成
ミリ波撮像システム1は、図1に示すように、ミリ波撮像装置2と、撮影対象となる撮影領域100においてミリ波を放射する放射体3と、で構成される。
【0028】
ミリ波撮像装置2は、観察領域100から放射されるミリ波を取り込んで被写体像を結像させるレンズアンテナ10と、レンズアンテナ10に取り込まれたミリ波が被写体像を結像する結像領域に配置されたミリ波センサアレイ20と、ミリ波撮像装置2全体の動作を制御する制御部50と、を備えている。なお、このミリ波センサアレイ20が本発明におけるミリ波センサ群である。
【0029】
これらのうち、ミリ波センサアレイ20は、結像領域内において、ミリ波の到来方向に向けられた複数のミリ波センサ22それぞれを、ミリ波の到来方向と交差する平面に沿ってマトリクス状に配置したものであり、ミリ波センサ22それぞれが、受信したミリ波の信号レベルに応じた検出値を出力する。各ミリ波センサ22の検出値は、結像領域に結像される被写体像のうち、そのミリ波センサ22の配置された位置に対応する被写体像の画素情報(本実施形態においては該当画素の濃淡を示す情報)となる。
【0030】
また、ミリ波センサ22は、図2に示すように、ミリ波を受信するための受信アンテナ102と、受信アンテナ102からの受信信号を増幅するローノイズアンプ(LNA)104と、LNA104にて増幅された受信信号を検波し、その信号レベルを検出する検波器108と、から構成されている。
【0031】
放射体3は、観察領域100の一部領域に配置されており、こうして配置された位置からレンズアンテナ10に向けて基準となるミリ波を放射する。こうして放射体3から放射されたミリ波は、ミリ波センサアレイ20におけるミリ波センサ22のうち、あらかじめ定められたいずれかのミリ波センサ(以降「基準ミリ波センサ」という)22により受信される。
【0032】
なお、本実施形態において、放射体3は、基準となる熱雑音を発生する熱雑音源,または,電波吸収体により構成されている。
(1−2) 制御部50による撮像処理
以下に、制御部50が、内蔵するメモリに格納されたプログラムに従って実行する撮像処理の処理手順を図3に基づいて説明する。
【0033】
この撮像処理では、まず、ミリ波センサアレイ20におけるミリ波センサ22のうち、基準ミリ波センサ22の検出値、つまり放射体3から放射されるミリ波の信号レベルを示す検出値が取得される(s120)。ここで、放射体3を電波吸収体で構成した場合には、ここからのミリ波の放射量が著しく少ないことから、検出値としても「0」に近い検出値が取得されることとなる。
【0034】
次に、上記s120にて取得された検出値に基づき、以降の処理で補正値を算出するための基準となる基準検出値が決定される(s130)。ここでは、上記s120にて取得された検出値が基準検出値として決定される。
【0035】
次に、上記s130にて決定された基準検出値に基づいて、検出値を補正するための補正値が決定される(s140)。ここでは、上記s130にて決定された基準検出値rと、この時点で基準ミリ波センサに検出された検出値dと、の誤差(r−d)が算出され、これが各ミリ波センサ22の補正値として決定される。
【0036】
なお、このs140が撮像処理の起動後最初に行われる場合は、上記s130にて決定された基準検出値と、上記s120にて取得された検出値と、の誤差が補正値として決定されることとなるが、これら検出値は一致するため、「0」が補正値として決定される。
【0037】
次に、上記s140にて決定された補正値が、ミリ波センサ22それぞれの検出値に対する補正値として設定される(s150)。
次に、被写体像の撮像を継続すべきか否かがチェックされる(s170)。ここでは、ミリ波撮像装置2に対し、外部から撮像を終了するための指令(ユーザによる操作を含む)を受けた場合に、撮像を終了つまり撮像を継続すべきでないと判定される。
【0038】
このs170で撮像を継続すべきと判定された場合(s170:YES)、ミリ波センサアレイ20のミリ波センサ22による検出値それぞれが取得される(s180)。
次に、上記s180にて取得された検出値それぞれが、この時点で設定されている補正値に基づいて補正される(s190)。ここでは、設定済みの補正値が正の値であれば、上記s180にて取得された検出値それぞれから補正値の絶対値が減算され、補正値が負の値であれば、上記s180にて取得された検出値それぞれに補正値の絶対値が加算される。
【0039】
次に、上記s190にて補正された検出値で示される画素情報それぞれを、その検出値を検出したミリ波センサ22の位置に対応する画素の画素情報とし、各画素情報で示される画素(画素情報で示される成分の画素)を配置してなる被写体像が生成される(s200)。こうして生成された被写体像は、表示装置への表示を行うべく画像メモリに格納される。
【0040】
このs200が行われたら、上記s120と同様、基準ミリ波センサ22から検出値が取得された後(s210)、プロセスがs140へと戻る。この場合のs140では、s210で取得された検出値と、上記s130にて決定された基準検出値との誤差が補正値として決定される。
【0041】
以降、撮像を継続すべきと判定されている間(s170「YES」)、s140〜s210が繰り返され、上記s170で撮像を終了すべきと判定された場合(s170:NO)、本撮像処理が終了する。
【0042】
このように、撮像処理では、初期設定された検出値(基準検出値)を基準として(s130)、基準ミリ波センサにおける検出値の変動分を補正値として各ミリ波センサ22の検出値を補正したうえで(s190)、被写体像を生成している(s200)。
(2) 第2実施形態
(2−1) 全体構成
本実施形態におけるミリ波撮像システム4は、図4に示すように、ミリ波撮像装置5と、撮影対象となる撮影領域においてミリ波を放射する放射体3と、で構成される。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成は、第1実施形態と同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
ミリ波撮像装置5は、レンズアンテナ10と、複数のミリ波センサ22が一列に配置されてなるミリ波ラインセンサ60と、レンズアンテナ10に取り込まれたミリ波を反射させてミリ波ラインセンサ60へと導く反射面32を有するリフレクタ30と、ミリ波撮像装置5全体の動作を制御する制御部50と、を備えている。なお、このミリ波ラインセンサ60が本発明におけるミリ波センサ群である。
【0044】
これらのうち、ミリ波ラインセンサ60は、結像領域内において、ミリ波の到来方向に向けられた複数のミリ波センサ22それぞれを、ミリ波の到来方向と交差する平面に沿って一方向に並べたものであり、ミリ波センサ22それぞれが、受信したミリ波の信号レベルに応じた検出値を出力する。
【0045】
リフレクタ30には、反射面32によるミリ波の反射角を、ミリ波センサ22の配置された方向と交差する方向に沿って変位させるための変位機構34が備えられている。
(2−2) 制御部50による撮像処理
以下に、制御部50が、内蔵するメモリに格納されたプログラムに従って実行する撮像処理の処理手順を図5に基づいて説明する。
【0046】
この撮像処理では、まず、放射体3から放射されるミリ波により結像する像の領域がミリ波センサ22の配置された領域に重複するまで、リフレクタ30の反射面32による反射角が変更される(s110)。ここでは、リフレクタ30の変位機構34に対し、反射面32によるミリ波の反射角を所定の初期角度θ’まで変位させるべく指令がなされ、この指令を受けた変位機構34は、放射体3から放射されるミリ波により結像する像の領域が、ミリ波センサ22の配置された領域に重複するまで、反射面32によるミリ波の反射角を初期角度θ’まで変更させる(図6参照)。
【0047】
次に、上記s110にて反射角が初期角度まで変更された時点において、ミリ波ラインセンサ60におけるミリ波センサ22のうち、基準ミリ波センサの検出値、つまり放射体3から放射されるミリ波の信号レベルを示す検出値が取得される(s120)。
【0048】
次に、上記s120にて取得された検出値に基づき、以降の処理で補正値を算出するための基準となる基準検出値が決定される(s130)。
次に、上記s130にて決定された基準検出値に基づいて、検出値を補正するための補正値が決定され(s140)、この補正値が補正値として設定される(s150)。
【0049】
次に、リフレクタ30の反射面32による反射角を、一定の角度範囲θ”で繰り返し連続的に変更する走査制御が開始される(s160)。ここでは、リフレクタ30の変位機構34に対し、反射面32によるミリ波の反射角を連続的に変更すべき旨の指令がなされ、この指令を受けた変位機構34は、一定の角度範囲θ”で反射面32によるミリ波の反射角を連続的に繰り返し変更するようになる。これにより、ミリ波ラインセンサ60による観察領域100の走査が行われる。
【0050】
なお、ここで反射角が変更される角度範囲θ”は、レンズアンテナ10に取り込まれたミリ波による被写体像の結像領域が、ミリ波センサ22の配置された領域に重複するようにあらかじめ設定されたものである。
【0051】
次に、被写体像の撮像を継続すべきか否かがチェックされ(s170)、撮像を継続すべきと判定された場合(s170:YES)、ミリ波ラインセンサ60のミリ波センサ22による検出値それぞれが取得される(s180)。
【0052】
次に、上記s180にて取得された検出値それぞれが、この時点で設定されている補正値に基づいて補正され(s190)、補正された検出値で示される画素情報それぞれを、その検出値を検出したミリ波センサ22の位置に対応する画素の画素情報として、各画素情報で示される画素(画素情報で示される濃度の画素)を配置してなる一列分の被写体像が生成される(s200)。こうして生成された被写体像は、画像メモリのうち、該当する列に対応する記憶領域に格納される。
【0053】
このs200が行われたら、上記s120と同様、基準ミリ波センサ22から検出値が取得された後(s210)、プロセスがs140へと戻る。
そして、上記s170で撮像を終了すべきと判定された場合(s170:NO)、本撮像処理が終了する。
(3) 作用,効果
上述したミリ波撮像装置2,5では、放射体3にて放射されたミリ波を基準ミリ波センサ22で受信し、この基準ミリ波センサ22からの検出値と基準検出値との誤差を補正値として、各ミリ波センサの検出値を補正している(図3,図5のs120〜s210)。
【0054】
放射体3は、基準となるミリ波を放射すべく観察領域100に配置されていることから、例えば、観察領域100の温度が上昇すれば、ミリ波としての熱雑音も大きくなる結果、基準ミリ波センサ22の検出値も大きくなる。
【0055】
つまり、基準ミリ波センサ22の検出値と基準検出値との誤差は、観察領域100の温度変化に応じて変動するものであるため、この誤差を補正値として各ミリ波センサ22の検出値を補正すれば、各検出値から観察領域100の温度変化の影響を除去することができる。
【0056】
例えば、観察領域100の温度が上昇し、各ミリ波センサ22の検出値に応じて決めるべき画素の成分が全て最大値(または最小値)となってしまうような場合でも、ここから温度変化に応じた誤差が減算(または加算)される結果、本来的な検出値に戻される。
【0057】
こうして、補正された検出値に基づいて被写体像を生成すれば、観察領域100の温度変化に拘わらず、画素間のコントラストが適切に維持された鮮明な被写体像とすることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、補正値を設定するための基準となる基準検出値を、撮像処理が起動する都度設定することができる(図3,図5のs120)。そのため、観察領域100の温度が充分に低い状態の時に、撮像処理を起動させれば、ミリ波としての熱雑音が小さい時の検出値を基準検出値として設定することができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、撮像処理において「基準検出値」を設定するように構成されている。しかし、画素間のコントラストを適切に維持できている状態での検出値を、あらかじめ固定的に「基準検出値」として設定しておいてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、撮像処理が起動された直後のタイミングで「基準検出値」を設定するように構成されている(図3,図5のs120)。しかし、「基準検出値」を設定するタイミングは、これに限らず、例えば、ユーザが特定の操作をしたタイミングとしてもよい。
(5)本発明との対応関係
以上説明した実施形態において、図3,図5におけるs200が本発明における画像生成手段であり、同図s140,s150が本発明における補正値設定手段であり、同図s190が本発明における検出値補正手段であり、同図s120,s130が本発明における基準設定手段であり、図5のs110,s160が本発明における反射角変更手段である。
【符号の説明】
【0061】
1…ミリ波撮像システム、2…ミリ波撮像装置、3…放射体、4…ミリ波撮像システム、5…ミリ波撮像装置、10…レンズアンテナ、20…ミリ波センサアレイ、22…ミリ波センサ、22…基準ミリ波センサ、30…リフレクタ、32…反射面、34…変位機構、50…制御部、60…ミリ波ラインセンサ、100…観察領域、102…受信アンテナ、104…ローノイズアンプ、108…検波器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象となる領域であり、該領域の一部において基準となるミリ波を放射する放射体が配置された観察領域について、該観察領域から放射されるミリ波を取り込んで被写体像を結像させるレンズアンテナと、
前記レンズアンテナに取り込まれたミリ波が被写体像を結像する結像領域に配置された1以上のミリ波センサからなり、該ミリ波センサそれぞれが、受信したミリ波の信号レベルに応じた検出値を出力するミリ波センサ群と、
前記1以上のミリ波センサから出力された検出値それぞれに基づいて、該検出値に応じた成分の画素を配置してなる被写体像を生成する画像生成手段と、
前記1以上のミリ波センサのうち、前記放射体から放射されたミリ波を受信するミリ波センサとして定められた基準ミリ波センサの検出値について、あらかじめ定められた基準検出値との誤差を、前記ミリ波センサそれぞれに対する補正値として設定する補正値設定手段と、
前記1以上のミリ波センサそれぞれの検出値を、前記補正値設定手段により設定された補正値により補正する検出値補正手段と、
前記1以上のミリ波センサそれぞれの検出値を、前記画像生成手段による被写体像の生成に先立って、前記補正値設定手段により設定された補正値により補正する検出値補正手段と、を備えている
ことを特徴とするミリ波撮像装置。
【請求項2】
所定のタイミングで前記基準ミリ波センサに検出された検出値を基準検出値として設定する基準設定手段、を備え、
前記補正値設定手段は、前記基準ミリ波センサの検出値と前記基準設定手段により設定された基準検出値との誤差を、前記ミリ波センサそれぞれに対する補正値として設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のミリ波撮像装置。
【請求項3】
前記ミリ波センサ群は、前記結像領域において複数のミリ波センサが一列に配置されてなり、該ミリ波センサにより受信されたミリ波により一列分の被写体像に対応する検出値を出力するラインセンサとして構成されており、
さらに、
前記レンズアンテナに取り込まれたミリ波を反射させて前記ミリ波センサ群へと導く反射面を有するリフレクタと、
前記リフレクタの反射面で反射したミリ波による被写体像の結像領域を、前記ミリ波センサの配置された方向と交差する方向に沿って変位させるべく、前記反射面による反射角を順次変更させることにより、前記ミリ波センサ群に、一列分の被写体像に対応する検出値として、前記反射面の反射角に応じた列の被写体像に対応する検出値群を順に出力させる反射角変更手段と、を備え、
前記画像生成手段は、前記ミリ波センサ群から検出値群が出力される毎に、該検出値群における各検出値に応じたパラメータの画素を一列に配置した一列分の被写体像を生成する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミリ波撮像装置。
【請求項4】
観察対象となる領域(観察領域)に配置され、該観察領域の一部において基準となるミリ波を放射する放射体と、
請求項1から3のいずれかに記載のミリ波撮像装置と、からなる
ことを特徴とするミリ波撮像システム。
【請求項5】
前記放射体は、基準となる熱雑音を発生する熱雑音源,または,電波吸収体により構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載のミリ波撮像システム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から3のいずれかに記載の全ての手段として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−127914(P2011−127914A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284080(P2009−284080)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、文部科学省、「安全・安心科学技術プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】