説明

ミリ波撮像装置及び撮像画像表示装置

【課題】被写体から放射されるミリ波を利用して被写体を撮像するミリ波撮像装置において、受信部の小型化及びコストダウンを図る。
【解決手段】被写体2から放射されるミリ波から被写体2を撮像することで、衣服などで隠された検査対象物4を透視した透視画像の画像データを生成し、ディスプレイ35に表示する装置において、画像データは、レンズアンテナ12により結像された被写体像を、ポリゴンミラー14を介して水平方向(x軸方向)及び垂直方向(y軸方向)に走査させることで、被写体像の各画素に対応する各ミリ波を順次受信部20に入射させ、受信部20から出力される検波信号を順次サンプリングする、といった手順で生成する。また、画像データは、周波数の異なるミリ波を受信することで複数の画像データを生成し、これを合成することで最終的な画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体などの被写体から放射されるミリ波を受信することにより被写体を撮像するミリ波撮像装置、及び、その撮像画像を表示する撮像画像表示装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体などの被写体から放射されるミリ波を受信することによって、被写体を撮像し、その撮像画像から、被写体に隠された金属・非金属類の武器や、密輸品を検知することが提案されている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
また、この種のミリ波撮像装置では、通常、ミリ波受信用のアンテナとして、多数のアンテナ素子を2次元配置した平面アンテナが使用され、この平面アンテナの表面に、レンズアンテナを介してミリ波からなる被写体像を結像させることで、平面アンテナの各アンテナ素子から被写体像を取り込むようにされている。
【特許文献1】特開平9−197042号公報
【特許文献2】特開2003−177175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のように、被写体像の撮像に平面アンテナを使用すると、ミリ波の受信部に、大量のアンテナ素子を2次元配置しなければならず、受信部の大型化及びコストアップを招くという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、被写体から放射されるミリ波を利用して被写体を撮像するミリ波撮像装置において、受信部の小型化及びコストダウンを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のミリ波撮像装置は、被写体から放射されるミリ波を透過させて後方の所定位置にミリ波からなる被写体像を結像させるレンズアンテナと、該レンズアンテナによる被写体像の結像位置付近に配置され、回転軸周りで多面体を形成する側壁が、前記被写体像を形成しているミリ波を反射する鏡面として形成されたポリゴンミラーと、該ポリゴンミラーの鏡面にて反射されたミリ波を受信して、その信号レベルを検出する受信部と、該ポリゴンミラーを前記回転中心軸周りに回転させると共に、該回転中心軸に直交する軸周りに回動させることで、被写体像各位置のミリ波を前記受信部へ反射させる走査手段と、該走査手段を介して前記ポリゴンミラーを駆動しつつ前記受信部から検出信号を取り込むことで、前記被写体像を表す画像データを生成する画像データ生成手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また次に、請求項2に記載のミリ波撮像装置は、請求項1に記載のものにおいて、前記受信部は、前記信号レベルを検出するミリ波の周波数を変更可能に構成されており、前記画像データ生成手段は、前記受信部が信号レベルを検出するミリ波の周波数を変更することで、複数種類の画像データを生成し、該画像データを合成することで、最終的な画像データを生成することを特徴とする。
【0008】
一方、請求項3、4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のミリ波撮像装置にて撮像された撮像画像を表示手段に表示する画像表示装置に関する発明である。
そして、請求項3に記載の画像表示装置は、検査対象となる物品の形状データが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された形状データに基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データを検索することにより、前記撮像画像に物品が含まれているか否かを判断する物品認識手段と、該物品認識手段にて前記撮像画像に前記物品が含まれていると判断されると、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき前記表示手段に前記撮像画像を表示すると共に、該表示画像中に、前記物品を模式的に表すシンボルマークを表示し、前記物品認識手段にて前記撮像画像に前記物品が含まれていると判断されなければ、前記表示手段に前記撮像画像のみを表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の画像表示装置は、被写体及び検査対象となる物品の各々の熱雑音に基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成される画像データの画素値から被写体及び物品を特定するための識別データが記憶された記憶手段と、該記憶手段に記憶された識別データに基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データを検索することにより、前記撮像画像内の被写体の位置及び物品の位置を特定する位置特定手段と、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき前記表示手段に前記撮像画像を表示すると共に、該表示画像中で前記位置特定手段にて位置特定された被写体及び物品については、他の表示領域と識別可能に強調表示する表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載のミリ波撮像装置においては、レンズアンテナによる被写体像の結像位置付近にポリゴンミラーが配置されている。
そして、本発明では、画像データ生成手段が、走査手段を介して、ポリゴンミラーを、その回転中心軸周りに回転させることで、ミリ波からなる被写体像をポリゴンミラーの回転中心軸に直交する第1軸(x軸)方向に走査し、被写体像のx軸上のミリ波を順次受信部へ反射させる。
【0011】
また、画像データ生成手段は、走査手段を介して、ポリゴンミラーを、その回転中心軸に直交する軸周りに回動させることで、ミリ波からなる被写体像をポリゴンミラーの回転中心軸に平行な第2軸(y軸)方向に走査して、被写体像のy軸上のミリ波を順次受信部へ反射させる。
【0012】
この結果、受信部からは、被写体像をx−y軸方向に走査することにより得られる被写体像各部のミリ波の信号レベルを表す検出信号が出力されることになる。そして、画像データ生成手段は、この検出信号を順次取り込むことで、被写体像を表す画像データを生成する。
【0013】
従って、本発明のミリ波撮像装置によれば、ポリゴンミラーと一つの受信部とを利用して、ミリ波画像を撮像することができるようになり、従来のように、多数のアンテナ素子を2次元配置した平面アンテナを用いる必要がないため、ミリ波撮像装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0014】
次に、請求項2に記載のミリ波撮像装置において、画像データ生成手段は、受信部が信号レベルを検出するミリ波の周波数を変更することで、複数種類の画像データを生成し、その生成した複数の画像データを合成することで、最終的な画像データを生成する。
【0015】
このため、本発明のミリ波撮像装置によれば、例えば、被写体周囲に、特定周波数のミリ波を吸収するような部材が存在するような場合でも、最終的に得られる画像データは、被写体像に対応した画像データとなり、被写体をより良好に撮像することが可能となる。
【0016】
次に、請求項3に記載の画像表示装置においては、ミリ波撮像装置にて撮像された被写体の画像(撮像画像)から被写体に隠された物品の有無を自動で判定できるように、検査対象となる物品の形状データが記憶された記憶手段が設けられており、物品認識手段が、その形状データに基づき画像データを検索することにより、撮像画像に物品が含まれているか否かを判断する。
【0017】
そして、物品認識手段にて撮像画像に物品が含まれていると判断されると、表示制御手段が、ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき表示手段に撮像画像を表示すると共に、その表示画像中に、物品を模式的に表すシンボルマークを表示する。また、表示制御手段は、物品認識手段にて撮像画像に物品が含まれていると判断されなければ、表示手段に撮像画像のみを表示する。
【0018】
このため、本発明の画像表示装置によれば、被写体に検査対象となる物品が隠されている場合に、その旨を自動で検知して、被写体像の表示画面上に、その物品のシンボルマークを表示することができ、検査者は、その表示画像から、被写体に隠された物品を簡単に見つけることができる。
【0019】
つまり、上記各特許文献1、2に記載されているように、ミリ波撮像装置は、人体などの被写体から放射されるミリ波を用いて被写体の画像を撮像することで、衣服などに隠され、目に見えない金属・非金属類の武器や密輸品を撮像できるようにするものであり、空港のセキュリティチェックなどで使用されることが多い。
【0020】
しかし、ミリ波を使って得られる撮像画像(所謂透視画像)は、可視光画像に比べて不鮮明であり、その撮像画像から検査対象となる物品を見つけ出すには、検査者の経験が必要になり、経験の浅い者は撮像画像から物品を見つけるのが難しい。
【0021】
そこで、本発明では、検査対象となる物品の形状データを予め登録しておき、この形状データを使って、撮像画像中に物品が写っているか否かを判定して、その判定結果を、物品のシンボルマークとして、撮像画像と共に表示手段に表示することで、検査者が被写体に隠された物品を簡単に見つけることができるようにしているのである。
【0022】
よって、本発明(請求項3)の画像表示装置によれば、空港などで行うセキュリティチェックに使用することで、被写体に隠された不正物品を簡単にしかも精度よく検出することができるようになり、航空機などの安全性を向上することができる。
【0023】
次に、請求項4に記載の画像表示装置においては、被写体及び検査対象となる物品の各々の熱雑音に基づき、ミリ波撮像装置にて生成される画像データの画素値から被写体及び物品を特定するための識別データが記憶された記憶手段が設けられており、位置特定手段が、その識別データに基づき画像データを検索することにより、撮像画像内の被写体の位置及び物品の位置を特定する。
【0024】
そして、表示制御手段は、ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき表示手段に撮像画像を表示し、しかも、その表示画像中で位置特定手段にて位置特定された被写体及び物品については、他の表示領域と識別できるように強調表示する。
【0025】
従って、この請求項4に記載の画像表示装置によれば、ミリ波撮像装置にて生成された画像データをそのまま用いて被写体の画像を表示(所謂階調表示)した場合に比べて、被写体に隠された物品を解り易く表示することができるようになり、検査者は、その表示画像から、検査対象となる物品を簡単に見つけることができるようになる。
【0026】
よって、本発明(請求項4)の画像表示装置においても、空港などで行うセキュリティチェックに使用することで、被写体に隠された不正物品を簡単にしかも精度よく検出することができるようになり、航空機などの安全性を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明の一実施形態について説明する。
図1は本発明が適用されたセキュリティチェック装置10の構成を表すブロック図である。
【0028】
本実施形態のセキュリティチェック装置10は、空港などで乗客が危険物を隠し持っていないかどうかをチェックするのに使用されるものであり、乗客を被写体2として撮像する撮像装置としての機能と、その撮像した被写体2の画像(撮像画像)をディスプレイ35に表示する表示装置としての機能を有する。
【0029】
すなわち、本実施形態のセキュリティチェック装置10には、図1に示すように、被写体2から放射されたミリ波を装置内に取り込み、ミリ波からなる被写体像を結像させるレンズアンテナ12と、このレンズアンテナ12による被写体像の結像位置付近に配置され、側壁が被写体像を形成しているミリ波を反射する金属製の鏡面として形成されたポリゴンミラー14と、ポリゴンミラー14の鏡面にて反射されたミリ波を受信してその信号レベルを検出する受信部20と、ポリゴンミラー14の鏡面にて反射されたミリ波を受信部20に導く対物レンズ18と、が備えられている。
【0030】
ここで、ポリゴンミラー14は、ミリ波を反射可能に形成された平板上の側壁を複数枚(本実施形態では6枚)組み合わせることで、上方からみた形状が正多面体(本実施形態では正六面体)となるように構成されている。なお、図1では、ポリゴンミラー14については、その鏡面形状を解り易くするために、上方からみた状態を表しているが、被写体2は、横方向(水平方向)からみた状態を表している。
【0031】
そして、このポリゴンミラー14は、図2に示すように、基台15に対し、正多面体の中心を回転中心軸Vとして回転可能に設けられており、基台15には、ポリゴンミラー14をこの回転中心軸V周りに一方向(図1に示す矢印方向)に回転させる方位角調整用モータ16が設けられている。
【0032】
この回転中心軸Vは、鉛直方向の軸となっており、本実施形態では、方位角調整用モータ16を介してポリゴンミラー14をV軸周りに回転させることにより、ポリゴンミラー14のレンズアンテナ12側の鏡面を、その回転中心軸Vに直交するx軸方向に走査して、被写体像の水平軸(x軸)上のミリ波を順次受信部20へ入射させることができる。
【0033】
また、ポリゴンミラー14の基台15には、基台15を、ポリゴンミラー14の回転中心軸Vに直交するH軸(水平軸)周りに回動させる仰角調整用モータ17も設けられている。
【0034】
このため、本実施形態では、仰角調整用モータ17を介して基台15をH軸周りに回動させることにより、ポリゴンミラー14のレンズアンテナ12側の鏡面を、回転中心軸Vに平行なy軸方向に走査して、被写体像の垂直軸(y軸)上のミリ波を順次受信部20へ入射させることができる。
【0035】
つまり、本実施形態では、方位角調整用モータ16及び仰角調整用モータ17を駆動す
ることにより、ポリゴンミラー14のレンズアンテナ12側の鏡面にて反射されて受信部20へ入射するミリ波の、当該装置10に対する入射方位角と仰角とを各々調整することができる。
【0036】
なお、方位角調整用モータ16及び仰角調整用モータ17には、それぞれ、その回転位置を検出するロータリエンコーダ(図示せず)が内蔵されている。そして、各モータ16、17のロータリエンコーダからの回転位置信号は、各モータ16、17の回転位置を制御することで、ポリゴンミラー14の鏡面の向きを調整する位置制御装置32に入力される。
【0037】
また、この位置制御装置32は、ロータリエンコーダから入力される回転位置信号と後述の画像処理装置30から入力される目標位置信号とに基づき、各モータ16、17の回転位置(延いてはポリゴンミラー14の鏡面の向き)を、画像処理装置30が目標位置信号にて指令してきた所定位置に制御する。
【0038】
次に、受信部20は、図3に示すように、受信アンテナ21と、受信アンテナ21からの受信信号を増幅する増幅回路22と、増幅回路22にて増幅された受信信号の中から、第1周波数帯f1(例えば75GHz)の受信信号と第2周波数帯f2(例えば50GHz)の受信信号とをそれぞれ選択的に通過させる2種類のバンドパスフィルタ(BPF)24、25と、増幅回路22からの受信信号を2つのBPF24、25の何れかに入力すると共に、その受信信号が入力されたBPF24又は25から受信信号を取り出すための経路切換スイッチ23、26と、この経路切換スイッチ23を介して形成される信号経路上のBPF24又は25を通過した第1周波数帯f1又は第2周波数帯f2の受信信号を検波し、その信号レベルを検出する検波回路27と、から構成されている。
【0039】
そして、この受信部20において、経路切換スイッチ23、26を介して第1周波数帯f1の受信信号を検波するか第2周波数帯f2の受信信号を検波するかは、図1に示す画像処理装置30から入力される受信周波数切換信号にて切り換えられる。また、検波回路27から出力される検波信号は、A/D変換器等からなる入力装置34を介して、画像処理装置30に入力される。
【0040】
次に、画像処理装置30は、マイクロコンピュータにて構成されており、位置制御装置32を介してポリゴンミラー14を駆動することにより、受信部20に入射するミリ波を被写体像のx軸及びy軸方向に変化させつつ、入力装置34を介して、受信部20からの検波信号を取り込み、被写体2の2次元画像を表す画像データを生成する。
【0041】
また、画像処理装置30には、生成した画像データに基づき、被写体2の画像(撮像画像)をディスプレイ35に表示させるための表示制御装置36や、その画像データを記憶しておくための、メモリ、ハードディスク等からなる外部記憶装置38が接続されている。
【0042】
次に、図4は、この画像処理装置30にて実行される被写体検査処理を表すフローチャートである。
なお、この被写体検査処理を実行するに当たって、記憶手段としての外部記憶装置38に、検査対象物4(図1参照)である銃、ナイフなどの武器の形状を表す画像のパターンデータ(形状データ)が記憶されているものとする。
【0043】
この被写体検査処理は、被写体2の画像を撮像して、その撮像画像から、被写体2である乗客が機内への持ち込みが禁止された物品(例えば、銃、ナイフなどの武器)を隠し持
っているかどうかを検査し、その検査結果を撮像画像と共にディスプレイ35に表示するための処理であり、画像処理装置30の電源投入後、繰り返し実行される。
【0044】
図4に示すように、この被写体検査処理では、まずS110(Sはステップを表す)にて、受信部20に出力する受信周波数切換信号を、例えばローレベルに設定することにより、経路切換スイッチ23、26をBPF24側に切り換え、検波回路27にて検波される受信信号を第1周波数帯f1に設定する。
【0045】
次に、S120では、位置制御装置32へ出力する目標位置信号を順次変化させることで、ポリゴンミラー14の鏡面の方位角をx軸方向に変化させて被写体像を水平方向に走査させつつ、その水平走査1回毎にポリゴンミラー14の鏡面の仰角をy軸方向に所定角度だけ変化させて被写体像を垂直方向に走査させる、ポリゴンミラー14の駆動処理を開始する。
【0046】
そして、続くS130では、このポリゴンミラー14の駆動処理に連動して、入力装置34を介して入力される検波信号(換言すれば検波電圧)を取り込むサンプリング処理を実行し、S140にて、このサンプリング処理を被写体像の1画面分実行したか否かを判断することにより、被写体像1画面分の走査が終了したか否かを判断する。
【0047】
そして、被写体像1画面分の走査が終了していなければ、再度S130に移行し、逆に、被写体像1画面分の走査が終了していれば、S150に移行して、S130にてサンプリングした被写体像一画面分の検波電圧から、第1周波数帯f1のミリ波に基づく第1画像データを生成して、外部記憶装置38に一時記憶する。
【0048】
こうして、第1画像データが生成・記憶されると、今度は、S160に移行して、受信部20に出力する受信周波数切換信号を、例えばハイベルに変更することで、経路切換スイッチ23、26をBPF25側に切り換え、検波回路27にて検波される受信信号を第2周波数帯f2に変更する。
【0049】
そして、続くS170では、上記S120と同様、ポリゴンミラー14の駆動処理を開始し、続くS180にて、上記S130と同様のサンプリング処理を実行する。
次に、S190では、S140と同様に、このサンプリング処理を被写体像の1画面分実行したか否かを判断することにより、被写体像1画面分の走査が終了したか否かを判断し、被写体像1画面分の走査が終了していなければ、再度S180に移行し、逆に、被写体像1画面分の走査が終了していれば、S200に移行して、S180にてサンプリングした被写体像一画面分の検波電圧から、第2周波数帯f2のミリ波に基づく第2画像データを生成して、外部記憶装置38に一時記憶する。
【0050】
次に、S210では、S150及びS200にて外部記憶装置38に一時記憶された第1画像データと第2画像データとを合成することで、被写体2の画像を表す最終画像データを生成して、外部記憶装置38に記憶すると共に、図5に例示するように、その生成した最終画像データに基づき、表示制御装置36を介して被写体2の画像(撮像画像)をディスプレイ35に表示する。
【0051】
また、このように最終画像データを生成して、ディスプレイ35に表示すると、今度は、S220にて、検査対象物4(銃、ナイフなど)の形状データを外部記憶装置38から読み出し、その形状データに基づき、最終画像データを検索することにより、その形状データに一致又は類似した画像が撮像画像中に存在するか否かを判断する。
【0052】
そして、続くS230では、S220の判定処理にて、撮像画像中に検査対象物4の画像が存在することが認識されたか否かを判断し、検査対象物4の画像が認識されていなければ、そのまま当該処理を一旦終了して、再度S110に移行し、逆に、検査対象物4の画像が認識されていれば、図5に例示するように、その認識した検査対象物4を模式的に表すシンボルマークを、ディスプレイ35に表示している撮像画像上に重ねて表示し、再度S110に移行する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のセキュリティチェック装置10においては、被写体2から放射されるミリ波から被写体2の画像を撮像することで、被写体2の衣服などで隠された検査対象物を透視した透視画像の画像データを生成し、これをディスプレイ35に表示するようにされている。
【0054】
そして、この画像データを生成する際には、レンズアンテナ12により結像された被写体像を、ポリゴンミラー14を介して水平方向(x軸方向)及び垂直方向(y軸方向)に走査させることで、被写体像の各画素に対応する各ミリ波を順次受信部20に入射させ、その受信部20から出力される検波信号を順次サンプリングすることで、画像データを生成するようにされている。
【0055】
このため、本実施形態によれば、従来のように、多数のアンテナ素子を2次元配置した平面アンテナを用いることなく、ミリ波画像を撮像することができるようになり、その撮像部の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0056】
また、本発明では、受信部20が、受信・検波するミリ波の周波数を第1周波数帯f1と第2周波数帯f2との何れかに変更できるように構成されており、画像処理装置30が実際に画像データを生成する際には、各周波数帯f1,f2の受信信号を検波することにより得られた検波信号を順次取り込むことで、2種類の画像データを生成し、これら各画像データを合成することで、表示用の最終画像データを生成するようにされている。
【0057】
このため、本実施形態によれば、被写体2の周囲や衣服に、特定周波数のミリ波を吸収するような部材が存在するような場合でも、最終的に得られる画像データがその部材の影響を受けて、検査対象物4の検出に悪影響を与えるのを防止できる。
【0058】
また更に、本実施形態では、画像処理装置30が最終画像データに基づくディスプレイ35に被写体2の撮像画像を表示したときには、外部記憶装置38に記憶された検査対象物の形状データに基づき最終画像データを検索することにより、最終画像データに形状データに一致又は類似する画像が含まれているか否かを判断し、形状データに一致又は類似する画像(つまり銃やナイフなどの検査対象物4の画像)が含まれている場合には、その検査対象物を模式的に表すシンボルマークを撮像画像に重ねて表示する。
【0059】
このため、本実施形態のセキュリティチェック装置によれば、被写体2が検査対象物4を隠し持っている場合に、その旨を自動で検知して、撮像画像の表示画面上に、その検査対象物4のシンボルマークを表示することができ、検査者は、その表示画像から、被写体2が隠し持っている検査対象物4を簡単に見つけることができるようになる。
【0060】
なお、本実施形態においては、ポリゴンミラー14の基台15、方位角調整用モータ16、仰角調整用モータ17、及び、位置制御装置32が、本発明の走査手段に相当する。また、本実施形態においては、画像処理装置30にて実行される被写体検査処理のうち、S110〜S210の処理が、本発明の画像データ生成手段に相当し、S220の処理が、本発明の物品認識手段に相当し、表示制御装置36と、画像処理装置30が撮像画像及びシンボルマークを表示するために実行するS210及びS230、S240の処理が、
本発明の表示制御手段に相当する。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内にて種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施形態では、検査対象物4の形状データを、メモリ、ハードディスクなどからなる外部記憶装置38に記憶しておき、この形状データを使って、撮像画像中に物品が写っているか否かを判定して、その判定結果を、物品のシンボルマークとして、撮像画像と共にディスプレイに表示するものとして説明したが、形状データを利用した検査対象物4の認識処理を行うことなく、検査対象物4の有無を検査者に通知することもできる。
【0062】
つまり、被写体2が検査対象物4となる銃やナイフを隠し持っている場合、図6(a)に示すように、銃やナイフの熱雑音が被写体2である人体の熱雑音と異なり、撮像画像の各画素の画素値を決定する検波電圧も異なることから、被写体2が検査対象物4を隠し持っているときの被写体2及び各検査対象物4の熱雑音(換言すれば検波電圧)を予め測定して、記憶手段である外部記憶装置38にこれらの識別データとして記憶しておく。
【0063】
そして、図4のS210にて最終画像データから撮像画像を表示する際には、その識別データを用いて撮像画像中の被写体2及び各検査対象物4の位置を特定する位置特定手段としての処理を実行し、その特定した被写体及び各検査対象物4の画像領域については、検波電圧に基づく通常の階調表示とは異なる識別表示用の色で、撮像画像を表示する。
【0064】
そして、このようにすれば、図6(b)に例示するように、ディスプレイ35に、被写体2の画像と検査対象物4の画像が強調表示されることになり、検査者は、その表示画像から、検査対象物4を簡単に見つけることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施形態のセキュリティチェック装置の構成を表すブロック図である。
【図2】ポリゴンミラー及びその駆動系の構成を表す説明図である。
【図3】受信部の構成を表すブロック図である。
【図4】画像処理装置にて実行される被写体検査処理を表すフローチャートである。
【図5】ディスプレイに表示された撮像画像及び検査対象物のシンボルマークの一例を表す説明図である。
【図6】ディスプレイへの撮像画像の表示方法の変形例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
2…被写体、4…検査対象物、10…セキュリティチェック装置、12…レンズアンテナ、14…ポリゴンミラー、15…基台、16…方位角調整用モータ、17…仰角調整用モータ、18…対物レンズ、20…受信部、21…受信アンテナ、22…増幅回路、23,26…経路切換スイッチ、24,25…バンドパスフィルタ(BPF)、27…検波回路、30…画像処理装置、32…位置制御装置、34…入力装置、35…ディスプレイ、36…表示制御装置、38…外部記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体から放射されるミリ波を透過させて後方の所定位置にミリ波からなる被写体像を結像させるレンズアンテナと、
該レンズアンテナによる被写体像の結像位置付近に配置され、回転軸周りで多面体を形成する側壁が、前記被写体像を形成しているミリ波を反射する鏡面として形成されたポリゴンミラーと、
該ポリゴンミラーの鏡面にて反射されたミリ波を受信して、その信号レベルを検出する受信部と、
該ポリゴンミラーを前記回転中心軸周りに回転させると共に、該回転中心軸に直交する軸周りに回動させることで、被写体像各位置のミリ波を前記受信部へ反射させる走査手段と、
該走査手段を介して前記ポリゴンミラーを駆動しつつ前記受信部から検出信号を取り込むことで、前記被写体像を表す画像データを生成する画像データ生成手段と、
を備えたことを特徴とするミリ波撮像装置。
【請求項2】
前記受信部は、前記信号レベルを検出するミリ波の周波数を変更可能に構成されており、
前記画像データ生成手段は、前記受信部が信号レベルを検出するミリ波の周波数を変更することで、複数種類の画像データを生成し、該画像データを合成することで、最終的な画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載のミリ波撮像装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のミリ波撮像装置にて撮像された撮像画像を表示手段に表示する撮像画像表示装置であって、
検査対象となる物品の形状データが記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された形状データに基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データを検索することにより、前記撮像画像に物品が含まれているか否かを判断する物品認識手段と、
該物品認識手段にて前記撮像画像に前記物品が含まれていると判断されると、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき前記表示手段に前記撮像画像を表示すると共に、該表示画像中に、前記物品を模式的に表すシンボルマークを表示し、前記物品認識手段にて前記撮像画像に前記物品が含まれていると判断されなければ、前記表示手段に前記撮像画像のみを表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像画像表示装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のミリ波撮像装置にて撮像された撮像画像を表示手段に表示する撮像画像表示装置であって、
被写体及び検査対象となる物品の各々の熱雑音に基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成される画像データの画素値から被写体及び物品を特定するための識別データが記憶された記憶手段と、
該記憶手段に記憶された識別データに基づき、前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データを検索することにより、前記撮像画像内の被写体の位置及び物品の位置を特定する位置特定手段と、
前記ミリ波撮像装置にて生成された画像データに基づき前記表示手段に前記撮像画像を表示すると共に、該表示画像中で前記位置特定手段にて位置特定された被写体及び物品については、他の表示領域と識別可能に強調表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−241352(P2008−241352A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79842(P2007−79842)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】