説明

ミリ波誘電体内伝送装置とその製造方法及びミリ波誘電体内伝送方法

【課題】信号処理基板の振動を低減させ、コネクタやケーブルを使わないで信号処理基板間のミリ波の信号を高速に伝送させるようにする。
【解決手段】ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板101と、第1の信号処理基板101に対して信号結合され、ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板201と、第1の信号処理基板101と第2の信号処理基板201との間に設けられた所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材107とを備え、粘弾性部材107が誘電体伝送路を構成する。この構成により、粘弾性部材107が当該信号処理基板101,201に外力が加わったときの振動を吸収するので、第1の信号処理基板101と第2の信号処理基板201の振動を低減させることができ、コネクタやケーブルを使わないで当該信号処理基板間のミリ波の信号を、粘弾性部材107を介して高速に伝送させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体を伝送路として、ミリ波の信号の伝送を行う自動車の衝突防止レーダシステムに適用可能なミリ波誘電体内伝送装置とその製造方法及びミリ波誘電体内伝送方法に関するものである。
【0002】
詳しくは、ミリ波の信号を送受信する信号処理基板間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材を設けることにより、粘弾性部材が信号処理基板で構成されているミリ波誘電体内伝送装置自体の振動を吸収し、当該粘弾性部材を介して、信号処理基板間でミリ波の信号を用いた高速データ伝送を可能にしたものである。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車産業が発達し、自動車生産台数が年々増え続けており、2007年、全世界で約7000万台/年もの自動車が生産されている。その中で、カーナビゲーション装置やカーオーディオ機器等の車載機器が世界中の自動車に搭載されている。それらの車載機器は、気象環境試験である温度試験や湿度試験、機械的環境試験である振動試験や衝撃試験等の環境試験に合格し、地球上のあらゆる地域で正常動作することが求められている。これらの環境試験において、特に機械的環境試験である振動試験は、車載機器が振動のある環境下で使用されることが多いことから、必須の環境試験として行われている。
【0004】
車載機器において、耐振動性を確保することは非常に重要である。そのような車載機器の中で、例えば、ミリ波の信号を用いて高速データ伝送を行う自動車の衝突防止レーダシステムのような電子機器が増え始めている。衝突防止レーダシステムは、ミリ波帯域の電磁波を利用して、前車との衝突を避けるため、前方監視レーダとして前車との車間距離を速度に応じて制御する適応速度制御装置である。
【0005】
衝突防止レーダシステムは、当該衝突防止レーダシステム内に信号処理基板を複数備え、それら信号処理基板間でミリ波の信号の高速データ伝送を行うことで信号を処理している。このような車載機器等で用いられるミリ波の信号で高速データ伝送を行う装置は、外部からの振動や装置自体の動作振動により、信号処理基板に接続されているコネクタやケーブル等が外れてしまう可能性がある。
【0006】
特に、高速データ伝送用のコネクタやケーブルはピン数が多く、構造が複雑なため、コネクタやケーブルが信号処理基板から外れる傾向が高くなる。特許文献1には、コネクタの構造を強固にすることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−275345
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、コネクタ内に接着性硬化型の高誘電体樹脂を充満して硬化させることでコネクタの構造を強固にしているが、高速データ伝送用のコネクタやケーブルはピン数が多いことから、電子機器のサイズが大きくなり高コストとなってしまう問題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を解決したものであって、外部から与えられる振動や電子機器自体の動作による振動を低減できるようにすると共に、高速データ伝送用のコネクタやケーブルを削減できるようにした高速データ伝送が可能なミリ波誘電体内伝送装置とその製造方法及びミリ波誘電体内伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題は、ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板と、第1の信号処理基板に対して信号結合され、ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板と、第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に設けられた所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材とを備え、粘弾性部材が誘電体伝送路を構成するミリ波誘電体内伝送装置によって解決される。
【0011】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置によれば、第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材が設けられるので、当該粘弾性部材は当該信号処理基板に外力が加わったときの振動を吸収する。
【0012】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置の製造方法は、ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板を形成する工程と、第1の信号処理基板からミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板を形成する工程と、第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有した粘弾性部材を設け、当該粘弾性部材で誘電体伝送路を形成する工程とを有するものである。
【0013】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置の製造方法によれば、信号処理基板間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有した粘弾性部材を介在して電磁波の伝送が可能なミリ波誘電体内伝送装置を作製することができる。
【0014】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送方法は、ミリ波誘電体内伝送装置が、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するステップと、生成されたミリ波の信号を電磁波に変換するステップと、変換された電磁波を誘電体伝送路を構成する所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材の一部位に当該電磁波を伝送するステップと、誘電体伝送路を構成する粘弾性部材の他部位に伝送された電磁波を受信するステップと、受信された電磁波をミリ波の信号に変換するステップと、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成するステップとを有するものである。
【0015】
本発明に係るミリ波誘電体内伝送方法によれば、コネクタやケーブルを使わないで第1の信号処理基板から第2の信号処理基板へ所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のミリ波誘電体内伝送装置とその製造方法及びミリ波誘電体内伝送方法よれば、第1の信号処理基板と第2の信号処理基板との間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材が設けられるものである。この構成によって、粘弾性部材が当該信号処理基板に外力が加わったときの振動を吸収するので、第1の信号処理基板と第2の信号処理基板の振動を低減させることができる。
【0017】
また、コネクタやケーブルを使わないで第1の信号処理基板から第2の信号処理基板へその粘弾性部材を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。これにより、信号の高速伝送が可能な信頼性の高いミリ波誘電体内伝送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態としてのミリ波誘電体内伝送装置とその製造方法及びミリ波誘電体内伝送方法について説明する。図1は、本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示す斜視図であり、図2は、その断面図である。図1及び図2に示すミリ波誘電体内伝送装置100は、自動車の衝突防止レーダシステム等に適用可能なものである。
【0019】
ミリ波誘電体内伝送装置100は、第1の信号処理基板(以下、信号処理基板101と称す)、第2の信号処理基板(以下、信号処理基板201と称す)及び粘弾性部材107で構成されている。
【0020】
ミリ波誘電体内伝送装置100は、信号処理基板101に対して信号処理基板201が信号結合されており、それら基板間には所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材107が設けられている。この粘弾性部材107は当該信号処理基板101,201に外力が加わったときの振動を吸収し、当該粘弾性部材107内にミリ波帯域の電磁波が高速に伝送される。
【0021】
信号処理基板101と信号処理基板201との間には、当該信号処理基板101,201の四隅に支柱10が設けられており、当該信号処理基板間を固定する役割を有している。支柱10には金属材料を使用してもよいし、樹脂材料を使用してもよい。
【0022】
信号処理基板101,201と支柱10との固定方法は、当該信号処理基板101,201と支柱10が当接されている箇所に、半田で固着させてもよいし、ネジを当該支柱10の所定部分に螺合させてもよいし、かしめを使用してもよい。また、支柱10自体にバネ性を持たせることで(例えば、コイルバネ等を使用する。)当該支柱10によってミリ波誘電体内伝送装置100の振動を吸収することができる。これにより、粘弾性部材107と相互に振動を吸収することができる。
【0023】
本実施形態では、支柱10を用いて信号処理基板101と信号処理基板201とを固定しているが、当該支柱10を取り外して粘弾性部材107のみで固定してもよい。
【0024】
前述の信号処理基板101は、第1の信号生成部(以下、信号生成部102と称す)、第1の伝送線路(以下、伝送線路103と称す)、第1のアンテナ部(以下、アンテナ部104と称す)、第1の絶縁体層(以下、絶縁体層105と称す)及び第1のグランド配線パターン(以下、グランド配線パターン106と称す)で構成されている。
【0025】
信号処理基板101を構成している絶縁体層105の上面側の全面には、グランド配線パターン106が配設されている。このグランド配線パターン106は伝送線路103のグランド配線の役割及び信号処理基板101のグランド配線として機能する。絶縁体層105の下面側の所定箇所には、信号生成部102、伝送線路103及びアンテナ部104が配設されている。
【0026】
また、信号処理基板201は、第2の信号生成部(以下、信号生成部202と称す)、第2の伝送線路(以下、伝送線路203と称す)、第2のアンテナ部(以下、アンテナ部204と称す)、第2の絶縁体層(以下、絶縁体層205と称す)及び第2のグランド配線パターン(以下、グランド配線パターン206と称す)で構成されている。
【0027】
信号処理基板201を構成している絶縁体層205の上面側の全面には、グランド配線パターン206が配設されている。このグランド配線パターン206もグランド配線パターン106と同様に、伝送線路203のグランド配線の役割及び信号処理基板201のグランド配線として機能する。また、絶縁体層205の下面側の所定箇所には、信号生成部202、伝送線路203及びアンテナ部204が配設されている。
【0028】
次に本実施形態に係るミリ波誘電体内伝送装置100の接続と動作を説明する。図1及び図2に示すように、信号生成部102には入力信号が入力され、当該信号生成部102は入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部102には伝送線路103が電気的に接続され、当該伝送線路103を介してその生成されたミリ波の信号が伝送される。
【0029】
この伝送線路103は、図1及び図2では、マイクロストリップラインを例示しているが、ストリップライン、コプレーナライン及びスロットライン等で構成してもよい。
【0030】
伝送線路103にはアンテナ部104が電気的に接続され、当該アンテナ部104は伝送されたミリ波の信号を電磁波に変換し、当該電磁波を送出する機能を有する。このアンテナ部104には、例えばパッチアンテナが使用される。図1及び図2では、パッチアンテナを例示している。
【0031】
アンテナ部104には誘電体伝送路を構成する粘弾性部材107が当接されており、当該粘弾性部材107の一部位にアンテナ部104で変換された電磁波が伝送される。この粘弾性部材107は所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有しており、ミリ波帯域の電磁波を効率良く伝送させる特性を有している。粘弾性部材107の比誘電率及び誘電正接に関しては表1で後述する。
【0032】
粘弾性部材107にはアンテナ部204が当接されており、当該アンテナ部204は粘弾性部材107の他部位に伝送された電磁波を受信し、当該電磁波をミリ波の信号に変換する。アンテナ部204には伝送線路203が電気的に接続されており、当該伝送線路203は変換されたミリ波の信号を伝送する。伝送線路203には信号生成部202と電気的に接続されており、当該信号生成部202は伝送されたミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する。
【0033】
上述の伝送線路203は、図1及び図2では、マイクロストリップラインを例示しているが、伝送線路103と同様にストリップライン、コプレーナライン及びスロットライン等で構成してもよい。
【0034】
さらに、信号生成部102,202の詳細について説明する。図3は、ミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示すブロック図である。図3に示すように、信号生成部102は、変調回路111及び第1の周波数変換回路(以下、周波数変換回路112と称す)で構成されている。
【0035】
変調回路111に入力信号が入力され、当該変調回路111はその入力された入力信号を変調する。変調回路111には周波数変換回路112が接続され、当該周波数変換回路112は変調された入力信号を周波数変換してミリ波の信号を生成する。周波数変換回路112には前述の伝送線路103が接続されている。ミリ波の信号を増幅させるために、信号生成部102内に増幅器113を実装してもよい。例えば、図3では、周波数変換回路112と伝送線路103の間に増幅器113を配設させている。
【0036】
信号生成部202は、第2の周波数変換回路(以下、周波数変換回路212と称す)及び復調回路211で構成されている。前述の伝送線路203には周波数変換回路212が接続され、当該周波数変換回路212は伝送線路203から伝送されたミリ波の信号を周波数変換して出力信号を出力する。周波数変換回路212には復調回路211が接続され、当該復調回路211は出力された出力信号を復調する。信号生成部102と同様に、ミリ波の信号を増幅させるために、当該信号生成部202内に増幅器213を実装してもよい。例えば、図3では、周波数変換回路212と伝送線路203の間に増幅器213を配設させている。
【0037】
本実施形態では、入力信号を信号処理基板101から送信させて、その送信された入力信号を信号処理基板201が受信して、出力信号を生成したが、信号処理基板101の機能を信号処理基板201に持たせ、信号処理基板201の機能を信号処理基板101に持たせることで、当該信号処理基板間で双方向にミリ波の信号を伝送させることもできる。
【0038】
次に本発明に係る粘弾性部材107の詳細について説明する。粘弾性部材107は、所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有している。例えば、粘弾性部材107には、表1に示すように、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系及びポリイミド系からなる誘電体素材が使用される。
【0039】
また、粘弾性部材107内にミリ波の信号を高速に伝送させるためには、当該粘弾性部材107の比誘電率は3〜6程度とし、その誘電正接は0.0001〜0.001程度とすることが望ましい。表1に粘弾性部材107に使用される誘電体素材の代表例を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1によれば、アクリル樹脂系の比誘電率は2.5〜4.5であり、その誘電正接は、0.001〜0.05である。ウレタン樹脂系の比誘電率は2.8〜4であり、その誘電正接は、0.001〜0.05である。エポキシ樹脂系の比誘電率は4〜6であり、その誘電正接は、0.001〜0.01である。シリコーン系の比誘電率は3〜6であり、その誘電正接は、0.0001〜0.001である。ポリイミド系の比誘電率は3〜4であり、その誘電正接は、0.001〜0.01である。
【0042】
この粘弾性部材107を前述の信号処理基板101と信号処理基板201との間に設けることにより、当該粘弾性部材107が当該信号処理基板101,102に外力が加わったときの振動を吸収することができる。また、コネクタやケーブルを使わないで信号処理基板101から信号処理基板201へ粘弾性部材107を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。
【0043】
次に、本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置100の製造方法を説明する。図4は、ミリ波誘電体内伝送装置100の組立例(その1)を示す分解斜視図である。図4に示すように、絶縁体層105の上面側にグランド配線パターン106を全面に形成させ、絶縁体層105の下面側に伝送線路103及びアンテナ部104が形成させる。
【0044】
アンテナ部104はミリ波の信号を電磁波に変換し、後述の粘弾性部材107の一部位に当該電磁波を伝送する機能を有する。また、絶縁体層105にはエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の樹脂材料が用いられる。伝送線路103、アンテナ部104及び図示しない回路パターンの形成は、絶縁体層105の上面と下面の両面に銅等の金属材料を配設させ、当該金属材料をエッチングすることにより形成させている。
【0045】
この組立例のアンテナ部104はパッチアンテナを例示している。パッチアンテナは、伝送線路103や回路パターンと同様に薄く作製できるので、アンテナ部104と粘弾性部材107の密着性を増加させることができ、効率のよい電磁結合が実現される。また、パッチアンテナは、単純で2次元的な物理的形状を持つため、低コストで作製できる。
【0046】
入力信号を処理してミリ波の信号を生成する信号生成部102は、図3に示した、変調回路111、周波数変換回路112及び増幅器113を1つの集積回路で形成させ、絶縁体層105の下面側に配設させる。
【0047】
このようにして、信号処理基板101が作製される。また、説明は省略するが、信号処理基板201は、前述の信号生成部102、伝送線路103、アンテナ部104、グランド配線パターン106、変調回路111、周波数変換回路112及び増幅器113が、信号生成部202、伝送線路203、アンテナ部204、グランド配線パターン206、復調回路211、周波数変換回路212及び増幅器213にそれぞれ置き換わったものであり、信号処理基板101と同様にして作製することができる。
【0048】
図5は、ミリ波誘電体内伝送装置100の組立例(その2)を示す分解斜視図である。図5に示すように、ミリ波誘電体内伝送装置100は、前述のように作製された信号処理基板201の上面側(信号生成部202、伝送線路203及びアンテナ部204が配設されている側)に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する誘電体伝送路の粘弾性部材107を当接させる。その際、粘弾性部材107は、所定の粘度を有しているため、信号処理基板201と当該粘弾性部材107との間に空気等が入って空隙ができないように当接させることができる。
【0049】
次に、信号処理基板101及び信号処理基板201の四隅に図示しないネジを挿入させるための穴を穿設させる。信号処理基板201の四隅に開いた穴に金属材料又は樹脂等で作製された支柱10を立設させる。信号処理基板201の下面側から穴の開いた四隅にネジを挿入させて、ネジと支柱10を螺合させて信号処理基板201と支柱10を固定させる。
【0050】
信号処理基板201と粘弾性部材107が当接されている面と反対側の当該粘弾性部材107の面に、信号処理基板101の信号生成部102、伝送線路103及びアンテナ部104が配設されている面を下側にして、当該信号処理基板101を当接させる。そして、信号処理基板101の上面側から当該信号処理基板101の四隅に穿設させた穴にネジを挿入させて、ネジと支柱10を螺合させて信号処理基板101と支柱10を固定させる。
【0051】
支柱10の固定に、ネジで螺合させる方法を示したが、前述のように、半田で固着させてもよいし、かしめを使用してもよい。
【0052】
このような製造方法によれば、信号処理基板間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有した粘弾性部材107を介在して電磁波の伝送が可能なミリ波誘電体内伝送装置100を作製することができる。
【0053】
次に、本発明に係るミリ波誘電体内伝送方法を説明する。前述のような製造方法で作製されたミリ波誘電体内伝送装置100の伝送方法は、信号処理基板101が入力信号からミリ波の信号を生成し信号処理基板201に送信して、当該信号処理基板201が出力信号を生成することを前提とする。
【0054】
図3に示したように、入力信号が信号生成部102を構成している変調回路111に入力され、当該変調回路111によって変調される。変調された入力信号は、周波数変換回路112によってミリ波の信号に周波数変換される。ミリ波の信号に周波数変換された入力信号は、増幅器113で増幅されて伝送線路103を伝送する。
【0055】
伝送した入力信号はアンテナ部104に送出される。アンテナ部104に送出された入力信号は、当該アンテナ部104によって電磁波に変換される。変換された電磁波は、所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する誘電体伝送線路を構成する粘弾性部材107の一部位に伝送され、当該粘弾性部材107内を伝播する。
【0056】
粘弾性部材107内を伝播し当該粘弾性部材107の他部位に伝送された電磁波は、アンテナ部204によって受信され、ミリ波の信号に変換される。変換されたミリ波の信号は、伝送線路203を伝送して、信号生成部202を構成している増幅器213によって増幅される。増幅されたミリ波の信号は、周波数変換回路212によって周波数変換されて出力信号が生成される。生成された出力信号は、復調回路211によって復調され、出力される。
【0057】
このような伝送方法によれば、コネクタやケーブルを使わないで信号処理基板101から信号処理基板201へ所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材107を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。
【0058】
次に、本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置100のミリ波の信号伝送に関するシミュレーション結果を説明する。図6は、シミュレーションによるミリ波誘電体内伝送装置100の特性例を示すグラフである。図6に示すシミュレーション結果は、図1に示した構成のミリ波誘電体内伝送装置100を用いて、表2のようなパラメータ値によって算出された結果である。
【0059】
また、図6に示すように、このシミュレーション結果は、横軸を電磁波信号の周波数(GHz)とし、縦軸をSパラメータの強度(dB)としている。Sパラメータとは、電磁波の伝達と反射を表したパラメータであり、図6に示すように、実線は伝達特性301を示し、破線は反射特性302を示す。
【0060】
【表2】

【0061】
このシミュレーションでは、図1に示すアンテナ部104,204にはパッチアンテナが使用される。パッチアンテナの一辺は1mmの正方形とし、その厚みは0.1mmとする。伝送線路103,203は、マイクロストリップラインとしており、その線路幅は0.2mmとしている。また、信号処理基板101と信号処理基板201に設けられている粘弾性部材107の厚みは10mmである。ここで、パッチアンテナ及び粘弾性部材107の厚みとは、信号処理基板101,201の所定の面の垂直方向の大きさと定義する。
【0062】
絶縁体層105,205はガラスエポキシ樹脂を使用し、その比誘電率は3.5であり、その誘電正接は0.005である。また、粘弾性部材107は液状のシリコーンゴムを使用し、その比誘電率は5.4であり、その誘電正接は0.0006である。
【0063】
図6に示すように、このシミュレーション結果から、電磁波の周波数が58GHzから58.7GHz付近で反射特性302よりも伝達特性301がSパラメータの強度において大きくなっている。これは、電磁波の周波数が58GHzから58.7GHzの周波数帯域でデータ伝送が可能なことを示している。
【0064】
このように、実施形態に係るミリ波誘電体内伝送装置100によれば、信号処理基板101と信号処理基板201との間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材107が設けられるものである。この構成によって、粘弾性部材107が当該信号処理基板101,102に外力が加わったときの振動を吸収するので、信号処理基板101と信号処理基板201の振動を低減させることができる。
【0065】
また、コネクタやケーブルを使わないで信号処理基板101から信号処理基板201へその粘弾性部材107を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。これにより、信号の高速伝送が可能な信頼性の高いミリ波誘電体内伝送装置100を提供することができる。
【0066】
また、信号処理基板101と信号処理基板201との間に設けられた粘弾性部材107とは異なる誘電体伝送路を与える第2の粘弾性部材(図示せず)を介して、信号処理基板101の外側及び/又は信号処理基板201の外側に1枚以上の第3の信号処理基板(図示せず)を設けて、当該第2の粘弾性部材が誘電体伝送路を構成してもよい。第2の粘弾性部材は所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有するものである。
【0067】
これにより、信号処理基板101,201及び第3の信号処理基板の振動を低減させることでき、ミリ波の信号をコネクタやケーブルを使わないで当該信号処理基板間の所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する第2の粘弾性部材を介して高速に伝送させることができる。
【実施例1】
【0068】
図7は、第1の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Aの構成例を示す斜視図であり、図8は、その断面図である。図7及び図8に示すミリ波誘電体内伝送装置100Aは、前述のミリ波誘電体内伝送装置100の信号処理基板201の下面側に粘弾性部材207を介して、筐体20が設けられるものである。実施形態と同じ名称及び符号のものには同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0069】
図7及び図8に示すように、ミリ波誘電体内伝送装置100Aは、前述のミリ波誘電体内伝送装置100の信号処理基板201に形成されているグランド配線パターン206の面に粘弾性部材207が当接されている。また、グランド配線パターン206の面と粘弾性部材207が接している面と対面方向に当該粘弾性部材207と筐体20が当接されている。
【0070】
この粘弾性部材207は前述の粘弾性部材107と同様、所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有しており、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系及びポリイミド系からなる誘電体素材が使用される。
【0071】
このように、第1の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Aによれば、筐体20と信号処理基板201との間で粘弾性部材207が設けられ、ミリ波誘電体内伝送装置100に比べ、耐振動や耐衝撃がさらに強化されたものである。
【0072】
これにより、信号処理基板201と筐体20との間に粘弾性部材207が設けられるので、筐体20を有するミリ波誘電体内伝送装置100Aに外力が加わったときの振動を抑えることができる。
【実施例2】
【0073】
図9は、第2実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Bの構成例を示す斜視図であり、図10はその断面図である。図9及び図10に示すミリ波誘電体内伝送装置100Bは、第1の実施例で示したミリ波誘電体内伝送装置100Aの粘弾性部材107,207と信号処理基板101、信号処理基板201及び筐体20との間のそれぞれの接着に接着剤30を使用したものである。第1の実施例と同じ名称及び符号のものには同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0074】
図9及び図10に示すように、ミリ波誘電体内伝送装置100Bは、粘弾性部材107と信号処理基板101との間、粘弾性部材107と信号処理基板201との間、粘弾性部材207と信号処理基板201との間、及び粘弾性部材207と筐体20との間に接着剤30が塗布されている。
【0075】
この接着剤30は、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系及びシアノアクリレート系等の誘電体素材が使用される。アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系及びシアノアクリレート系等は接着性や密着性が良好であり、表1で示した所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有している。そのため、接着剤30は、粘弾性部材107に伝送されるミリ波帯域の電磁波を妨げない。
【0076】
本実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Bの製造方法は、実施形態で前述したミリ波誘電体内伝送装置100の粘弾性部材107,207の所定の面とその反対側の面に接着剤30を塗布する工程を追加したものである。実施形態と同じ名称及び符号のものは同じ製造方法を有するので、その説明を省略する。
【0077】
粘弾性部材107,207の所定の面及び所定の面と反対側の面に接着剤30を1mm以下の厚みで塗布する。その塗布方法には、例えば、ディスペンサーや、印刷機、インクジェット等が挙げられる。接着剤30が塗布された粘弾性部材107,207を、信号処理基板101と信号処理基板201との間に設けることで、図9及び図10に示す本実施例のようなミリ波誘電体内伝送装置100Bが作製される。
【0078】
このように、第2の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Bによれば、接着剤30を粘弾性部材107,207に塗布することにより、信号処理基板101,201と粘弾性部材107,207、及び筐体20と粘弾性部材207の密着性が増すので、粘弾性部材107,207はより振動を吸収し、信号処理基板101,201及び筐体20の振動をより低減させることができる。また、信号処理基板101,201と粘弾性部材107の密着性が増加し、電磁波の吸収や反射及び外部への漏れが少なくなるので、効率良くミリ波の信号を高速に伝送させることができる。
【実施例3】
【0079】
図11は、第3の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Cの構成例を示す斜視図であり、図12はその断面図である。図11及び図12に示すミリ波誘電体内伝送装置100Cは、第2の実施例で示したミリ波誘電体内伝送装置100Bのアンテナ部104とアンテナ部204を、第1のスロット(以下、スロット110と称す)と第2のスロット(以下、スロット210と称す)にそれぞれ置き換えたものである。第2の実施例と同じ名称及び符号のものには同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0080】
図11及び図12に示すように、ミリ波誘電体内伝送装置100Cは、信号処理基板401、信号処理基板501及び粘弾性部材107で構成されている。
【0081】
第1の信号処理基板(以下、信号処理基板401と称す)は、信号生成部102、伝送線路103、絶縁体層105、グランド配線パターン106及びスロット110で構成されている。絶縁体層105の上面側に信号生成部102及び伝送線路103がそれぞれ配設されている。絶縁体層105の下面側には、グランド配線パターン106が全面に形成されている。
【0082】
伝送線路103と対面側にあるグランド配線パターン106の所定箇所に、スロット110が設けられている。例えば、スロット110のサイズは、伝送線路103方向の長さは0.1mm〜0.2mm程度であり、伝送線路103と垂直方向の長さは使用されるミリ波の信号の波長の2分の1である。
【0083】
スロット110は、スロットアンテナの役割を果たす。スロットアンテナは、スロット110によって、伝送線路103の表面を流れる電流が断ち切られて、その断ち切られた部分に電界を生じさせる。このようにしてスロットアンテナは、ミリ波の信号を電磁波に変換する。
【0084】
スロットアンテナは、パッチアンテナの作製方法と同様に信号処理基板401及び後述の第2の信号処理基板501の伝送線路103,203及び図示しない回路パターンをエッチングして作製する際、同時に作製される。
【0085】
このスロットアンテナをミリ波誘電体内伝送装置100C内に使用することにより、当該スロットアンテナはパッチアンテナより指向性が狭いので、粘弾性部材107内を伝播する電磁波の外部への漏れが低減でき、外部からのノイズの影響も低減できる。
【0086】
第2の信号処理基板(以下、信号処理基板501と称す)は、信号生成部202、伝送線路203、絶縁体層205、グランド配線パターン206及びスロット210で構成されている。
【0087】
絶縁体層205の下面側には、信号生成部202及び伝送線路203がそれぞれ配設されている。絶縁体層205の上面側には、グランド配線パターン206が全面に形成されている。また、伝送線路203と対面側にあるグランド配線パターン206の所定箇所に、スロット210が設けられている。このスロット210もスロット110と同様にスロットアンテナの役割を果たす。スロット210のサイズは、スロット110と同じサイズである。
【0088】
上述のように構成された信号処理基板401と信号処理基板501の間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材107が設けられる。その際、粘弾性部材107の所定の面と所定の面と反対側の面に接着剤30をそれぞれ塗布する。
【0089】
粘弾性部材107及び接着剤30は、所定の粘度を有しているため、空気等で空隙ができないように当該信号処理基板間に挿入させることができ、スロット110,210内に当該接着剤30が入り込むことがない。
【0090】
このように、第3の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Cによれば、スロット110,210はスロットアンテナの役割を果たし、コネクタやケーブルを使わないで信号処理基板401から信号処理基板501へ粘弾性部材107を介在し、しかも、振動環境下でミリ波の信号を高速に伝送させることができる。これにより、スロットアンテナを用いたミリ波の信号の高速伝送が可能な信頼性の高いミリ波誘電体内伝送装置100Cを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、自動車の衝突防止レーダシステム等に用いられるミリ波誘電体内伝送装置に適用して極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係るミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示す斜視図である。
【図2】ミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示す断面図である。
【図3】ミリ波誘電体内伝送装置100の構成例を示すブロック図である。
【図4】ミリ波誘電体内伝送装置100の組立例(その1)を示す分解斜視図である。
【図5】ミリ波誘電体内伝送装置100の組立例(その2)を示す分解斜視図である。
【図6】シミュレーションによるミリ波誘電体内伝送装置100の特性例を示すグラフである。
【図7】第1の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Aの構成例を示す斜視図である。
【図8】ミリ波誘電体内伝送装置100Aの構成例を示す断面図である。
【図9】第2の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Bの構成例を示す斜視図である。
【図10】ミリ波誘電体内伝送装置100Bの構成例を示す断面図である。
【図11】第3の実施例に係るミリ波誘電体内伝送装置100Cの構成例を示す斜視図である。
【図12】ミリ波誘電体内伝送装置100Cの構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0093】
20・・・筐体、30・・・接着剤、100,100A,100B,100C・・・ミリ波誘電体内伝送装置、101,401・・・第1の信号処理基板、102・・・第1の信号生成部、103・・・第1の伝送線路、104・・・第1のアンテナ部、105・・・第1の絶縁体層、106・・・第1のグランド配線パターン、107,207・・・粘弾性部材、110・・・第1のスロット、111・・・変調回路、112・・・第1の周波数変換回路、113,213・・・増幅器、201,501・・・第2の信号処理基板、202・・・第2の信号生成部、203・・・第2の伝送線路、204・・・第2のアンテナ部、205・・・第2の絶縁体層、206・・・第2のグランド配線パターン、210・・・第2のスロット、211・・・復調回路、212・・・第2の周波数変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板と、
前記第1の信号処理基板に対して信号結合され、前記ミリ波の信号を受信して信号処理する第2の信号処理基板と、
前記第1の信号処理基板と前記第2の信号処理基板との間に設けられた所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材とを備え、
前記粘弾性部材が誘電体伝送路を構成するミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項2】
前記第1の信号処理基板は、
入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する第1の信号生成部と、
前記第1の信号生成部によって生成された前記ミリ波の信号を電磁波に変換し、前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材の一部位に当該電磁波を伝送する第1のアンテナ部とを有し、
前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材を介在して設けられる前記第2の信号処理基板は、
前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材の他部位に伝送された前記電磁波を受信し、当該電磁波を前記ミリ波の信号に変換する第2のアンテナ部と、
前記第2のアンテナ部によって変換された前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する第2の信号生成部とを有する請求項1に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項3】
前記第1の信号処理基板は、
前記第1の信号生成部と前記第1のアンテナ部との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する第1の伝送線路を有し、
前記第2の信号処理基板は、
前記第2の信号生成部と前記第2のアンテナ部との間に電気的に接続されてミリ波の信号を伝送する第2の伝送線路を有する請求項2に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項4】
前記粘弾性部材には、
少なくとも、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系及びポリイミド系からなる誘電体素材が使用される請求項2に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項5】
前記第1の伝送線路及び前記第2の伝送線路には、
少なくとも、ストリップライン、マイクロストリップライン、コプレーナライン及びスロットラインのうちいずれか1つが使用される請求項3に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項6】
前記第1のアンテナ部及び前記第2のアンテナ部には、
少なくとも、パッチアンテナ又はスロットアンテナが使用される請求項3に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項7】
前記粘弾性部材が、
前記第1の信号処理基板又は前記第2の信号処理基板と筐体との間に設けられる請求項2に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項8】
前記第1の信号処理基板及び前記第2の信号処理基板と前記粘弾性部材との接着、及び前記筐体と前記粘弾性部材との接着に接着剤を用いて接着させる請求項7に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項9】
前記接着剤には、
少なくとも、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シアノアクリレート系、シリコーン系及びポリイミド系からなる誘電体素材が使用される請求項8に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項10】
前記第1の信号生成部には、
入力信号を変調する変調回路と、
前記変調回路によって変調された入力信号を周波数変換してミリ波の信号を生成する第1の周波数変換回路とが実装され、
前記第2の信号生成部には、
前記ミリ波の信号を周波数変換して出力信号を出力する第2の周波数変換回路と、
前記第2の周波数変換回路から出力される前記出力信号を復調する復調回路とが実装される請求項3に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項11】
前記第1の信号生成部及び前記第2の信号生成部には、
前記ミリ波の信号を増幅する増幅器が各々実装される請求項10に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項12】
前記第1の信号処理基板と前記第2の信号処理基板との間に設けられた第1の粘弾性部材とは異なる誘電体伝送路を与え、所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する第2の粘弾性部材を介して、前記第1の信号処理基板の外側及び/又は前記第2の信号処理基板の外側に1枚以上の第3の信号処理基板が設けられ、前記第2の粘弾性部材が誘電体伝送路を構成する請求項1に記載のミリ波誘電体内伝送装置。
【請求項13】
ミリ波の信号を処理する第1の信号処理基板を形成する工程と、
前記第1の信号処理基板から前記ミリ波の信号を受信して信号を処理する第2の信号処理基板を形成する工程と、
前記第1の信号処理基板と前記第2の信号処理基板との間に所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有した粘弾性部材を設け、当該粘弾性部材で誘電体伝送路を形成する工程とを有するミリ波誘電体内伝送装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1の信号処理基板を形成する際に、
入力信号を処理してミリ波の信号を生成する第1の信号生成部と、前記第1の信号生成部によって生成された前記ミリ波の信号を電磁波に変換し、前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材の一部位に当該電磁波を伝送する第1のアンテナ部とを基板の所定の面に配置し、
前記第2の信号処理基板を形成する際に、
前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材の他部位に伝送された前記電磁波を受信し、当該電磁波を前記ミリ波の信号に変換する第2のアンテナ部と、前記第2のアンテナ部によって変換された前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成する第2の信号生成部とを基板の所定の面に配置する請求項13に記載のミリ波誘電体内伝送装置の製造方法。
【請求項15】
前記粘弾性部材の一面及び他面に接着剤を塗布し、当該接着剤が塗布された前記粘弾性部材を、前記第1の信号処理基板と前記第2の信号処理基板との間に設ける請求項14に記載のミリ波誘電体内伝送装置の製造方法。
【請求項16】
ミリ波誘電体内伝送装置が、
入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するステップと、
生成された前記ミリ波の信号を電磁波に変換するステップと、
変換された前記電磁波を誘電体伝送路を構成する所定の比誘電率及び所定の誘電正接を有する粘弾性部材の一部位に当該電磁波を伝送するステップと、
前記誘電体伝送路を構成する前記粘弾性部材の他部位に伝送された前記電磁波を受信するステップと、
受信された前記電磁波を前記ミリ波の信号に変換するステップと、
変換された前記ミリ波の信号を信号処理して出力信号を生成するステップとを有するミリ波誘電体内伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−78430(P2010−78430A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246511(P2008−246511)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】