説明

ミンチの分割装置

【課題】帯状のミンチを搬送する変速コンベヤの終端部に、出退自在とされた受板が設けられ、受板上まで搬送されたミンチの先端部を所定の長さ毎に切断し、受板が退去して切断されたミンチを受板の下方位置の受具に落下させるミンチの分割装置において、品温の高いミンチであっても受板に粘着して姿勢を乱すことのないミンチの分割装置を提供する。
【解決手段】受板5がエンボス加工により表面に複数の凸部10が形成されたステンレス鋼板であって、表面にフッ素樹脂コーティングが施されているミンチの分割装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパーなどから連続して供給される帯状のミンチを所定寸法毎に切断し分割するミンチの分割装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミンチの分割装置には、例えば特許文献1がある。この特許文献1には、連続して供給されるミンチを所定の長さに切断し分割したミンチを、ミンチの送り出し速度にあわせて突出する受取板上に受けてから受取板を没入させて下方の受け体(トレー)に落下させる分割装置が開示されている。
【0003】
上述したミンチの分割装置における受取板には、表面が平滑なステンレス鋼板などが用いられているが、ミンチの品温が比較的高い場合には受取板にミンチが粘着し滑りが悪くなる。受取板はエアーシリンダーに連結されて出し入れされるが、エアーシリンダーの特性上ミンチの送り出し速度の変化に受取板を同調させることは困難であり、両者の速度の違いによりミンチを受け取る際に、受取板の表面にミンチが粘着した状態で移動するので姿勢が乱れる。
また、受取板を没入させる際にもミンチが受取板の表面に粘着して姿勢を乱すのでトレーに受け取る場合に整然とした盛付姿勢が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献1】特開平2−291315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような問題を解消しようとして成されたものであって、ミンチに対する非粘着性が高く滑りのよい受板にすることによって、品温の高いミンチにおいても受板に粘着して分割されたミンチの姿勢が乱されることのないミンチの分割装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、連続して供給される帯状のミンチを受けて搬送する変速コンベヤの終端部に、出退自在とされた受板が設けられ、進出した状態の受板上まで搬送されたミンチの先端部をカッターによって所定の長さ毎に切断し、受板が退去して切断されたミンチを受板の下方位置の受具に落下させるミンチの分割装置において、受板がエンボス加工により表面に複数の凸部が形成されたステンレス鋼板であって、表面にフッ素樹脂コーティングが施されているミンチの分割装置により上述の目的を達成する。
【0006】
また、受板における凸部は、滑らかな曲面で形成され、平面視において受板の出退方向に長軸を配した楕円形であって、突出する高さ寸法は0.1mm以上、投影面積は1箇所あたり0.02〜0.8cmで投影面積の総和は全体面積の30〜90%の範囲内にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、受板がエンボス加工により表面に複数の凸部が形成されたステンレス鋼板であって、表面にフッ素樹脂コーティングが施されているので品温の高いミンチであっても受板に粘着して分割されたミンチの姿勢を乱すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を模式的に示した側面図。
【図2】(ア)受板の一部と、凸部の平面形状を示す平面図。(イ)同図のA−A断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図面を参照しながら本発明装置の一実施例について説明する。
本実施例の基本的な構成は公知であり詳細な説明は省略するが、チョッパーなどの吐出口1から連続して供給される帯状のミンチMは、ミンチMの両側に接してミンチMの幅を規制するガイド板(図示なし)と、コンベヤ2の上方位置からミンチMの上面をエアーシリンダー3で間欠的に押圧する押圧板4とによって所定の断面形状に成形されながら、若干前下がりのコンベヤ2によって終端部に向けて搬送される。コンベヤ2は、図示しないがサーボモーターなどに連結されて変速自在とされ切断寸法を自由に変更することが可能とされる。
【0010】
コンベヤ2の終端部には、ミンチMのミンチの移送方向に出退自在な受板5が、上方位置には、ミンチの移送方向に直交して往復動する板状のカッター6が設けられている。受板5とカッター6はそれぞれエアーシリンダー7,8のピストンに取り付けられている。
尚、受板5を出退させるために必ずしもエアーシリンダー7を用いることに限定されるものでなく他の伸縮機構によって出退させるようにしても良い。
受板5の直下には、適宜周回する移送帯11によって供給される受具としてのトレー9が待機している。
この受具はトレーでなくとも移送帯11をベルトコンベヤで構成して直接コンベヤ上に受けて次工程に移送するようしても良い。
【0011】
コンベヤ2によって終端部まで搬送された帯状のミンチMの先頭は、ミンチMの搬送に関連して進出した受板5上に押出されて所定位置にまで到達すると、エアーシリンダー8が駆動されカッター6が下降してミンチMを切断する。次いでエアーシリンダー7が駆動されて受板5が図1に示す仮想線位置まで退去すると、切断されたミンチmは直下で待機するトレー9内に落下して収容される。このような動作を連続して繰り返すように適宜、制御されている。
【0012】
受板5は、厚みが0.5〜4mmの範囲内で、好ましくは2mm程度の耐食性に優れたステンレス鋼板とされ、表面(ミンチmの載置面、図1における上面)には全面に亘りエンボス加工により複数の凸部10を形成する。
この凸部10は、滑らかな曲面で形成され、受板5が出退する際に凸部10がミンチmに対して滑り易いように、図2に示される受板5の出退方向(図2の矢印方向)に長軸を配した楕円形とされ、隣接するそれぞれの凸部10の一部が互いに接近して規則正しく配列されている。少なくとも出退方向においては凸部10の一部が入り込むように配置されて、出退方向に隣接する凸部10間には隙間が生じないようしてミンチとの摩擦抵抗を減らせている。
凸部10の投影面積(凸部10の平面視における平面部との境界線で囲われた面積)は1箇所あたり0.02〜0.8cmの範囲内であって、楕円形の短軸が3mm程度、長軸が7mm程度、投影面積が0.16cm程度が最適である。また、凸部10の投影面積の総和は全体面積の30〜90%の範囲内が好ましく、更に、受板5の表面からの突出する高さ寸法は0.1mm以上あれば良く、エンボス加工時において可能な範囲で大きい方が望ましいが、板厚が1.5mmのステンレス鋼板であれば0.5mm程度が最適である。
【0013】
このように受板5の表面には全面に亘りエンボス加工によって複数の凸部10を形成し、さらにフッ素樹脂コーティングを施す。これは、フッ素樹脂が持つ非粘着性、低摩擦性を利用してミンチmと受板5との接触面が粘着することなくスムーズに滑るようにするためのものであって、代表的なフッ素樹脂のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを50〜100μm程度の膜厚となるよう適宜の手段でコーティングする。尚、フッ素樹脂は食品衛生上においても適合しているので安心して使用できる。
【0014】
上述したように受板5の表面にエンボス加工により複数の凸部10を形成し、尚且つフッ素樹脂をコーティングしたことにより、例え品温の比較的高いミンチMであったとしても、ミンチmと受板5との接触面が粘着しないでスムーズに滑るので、コンベヤ2の終端部においてミンチMの先頭を受ける際に、特許文献1に示されたように受板5をコンベヤ2の送りに必ずしも同期して進出させるように構成しなくとも本実施例のように、エアーシリンダー7を用いることも可能である。
【0015】
又、受板5でミンチMの先端部を受けて所定寸法に切断されたミンチmをトレー9内に落下させる際には、受板5を図1に示す仮想線位置まで退去させるが、そのときにもミンチmと受板5と接触面に粘着することなくスムーズに滑るので切断されたミンチmが変形することなくトレー9内に落下して収納される。
尚、受板5を退去させる際にミンチmの上面から針状突起などを突き刺して保持すればより確実に粘着による引かれが防止されて確実に定位置に落下させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明に係る技術は、上述したように、従来のミンチの分割装置における受板5を、エンボス加工により表面に複数の凸部10が形成されたステンレス鋼板とし、表面にフッ素樹脂コーティングが施されたものに交換するだけで、ミンチMに対する適応性を拡大することができるので従来の装置へ容易に実施可能である。
更には、帯状のミンチMの両側に接してミンチMの幅を規制するガイド板(図示なし)や、コンベヤ2の上方位置からミンチMの上面をエアーシリンダー3で間欠的に押圧する押圧板4なども、エンボス加工により表面に楕円形の凸部10を形成するとともに、フッ素樹脂でコーティングして、ミンチMの搬送方向に凸部10の楕円形の長軸を配して用いることにより表面にミンチMが粘着することなくスムーズな搬送を行うことができる。
【符号の説明】
【0017】
2 コンベヤ
5 受板
6 カッター
9 トレー
10 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して供給される帯状のミンチを受けて搬送する変速コンベヤの終端部に、出退自在とされた受板が設けられ、進出した状態の受板上まで搬送されたミンチの先端部をカッターによって所定の長さ毎に切断し、受板が退去して切断されたミンチを受板の下方位置の受具に落下させるミンチの分割装置において、受板がエンボス加工により表面に複数の凸部が形成されたステンレス鋼板であって、表面にフッ素樹脂コーティングが施されているミンチの分割装置。
【請求項2】
受板における凸部は、滑らかな曲面で形成され、平面視において受板の出退方向に長軸を配した楕円形であって、突出する高さ寸法は0.1mm以上、投影面積は1箇所あたり0.02〜0.8cmで、投影面積の総和は全体面積の30〜90%の範囲内にある請求項1に記載のミンチの分割装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193043(P2012−193043A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83133(P2011−83133)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000152815)株式会社日本キャリア工業 (61)
【Fターム(参考)】