説明

ムスカリン受容体アンタゴニストとしての1−(アルキルアミノアルキル−ピロリジン−/ピペリジニル)−2,2−ジフェニルアセタミド誘導体

本発明は、式(I)(式中、R〜Rおよびa〜eは明細書の定義に従う)で表される化合物、または薬学的に許容されるその塩または溶媒和物または立体異性体に関する。さらに本発明は、そのような化合物を含む医薬組成物、そのような化合物を製造するために有用な方法ならびに中間体、およびそのような化合物を使用して、ムスカリン受容体が関係する医学的状態を治療する方法にも関する。本発明の化合物は、さまざまな性質に加えて、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対して、関連化合物と比較して予想外に高い結合親和性を有することが判明した。加えて、本発明の化合物は、吸入投与した場合、予想外に高い肺選択性を有するため、全身的な副作用が少ないことも判明した。さらに、本発明の化合物は、吸入投与した場合、予想外に高い気管支保護効果を有することも判明した。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ムスカリン受容体拮抗物質としての活性または抗コリン作用活性を有する置換ピロリジンおよびその関連化合物に関する。さらに本発明は、そのような化合物を含む医薬組成物、そのような化合物を使用して、ムスカリン受容体が関与する医学的状態を治療する方法、およびそのような化合物を製造するために有用な方法および中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
(当該分野の現状)
世界には何百万人もの人々が、肺が関係する障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息で苦しんでおり、この種の疾患は罹病率および死亡率の上位を占めている。
【0003】
ムスカリン受容体拮抗物質は気管支保護効果を発揮することが知られており、そのためこの種の化合物は呼吸系障害、たとえばCOPDや喘息などの治療に有用である。ムスカリン受容体拮抗物質をこうした障害の治療に使用する場合は、吸入によって投与するのが普通である。しかし、吸入投与の場合でも、ムスカリン受容体拮抗物質は、しばしば全身循環系にも吸収され、全身的な副作用、たとえば口の渇き、尿閉、散瞳および心臓血管系への副作用などを引き起こす。
【0004】
さらに、吸入による多くのムスカリン受容体拮抗物質は、作用時間が比較的短いため、一日に数回投与する必要がある。このように一日に何回も服用することは、単に不便というばかりでなく、要求される頻繁な服用法を患者が守らないために治療が十分に行われない危険性も無視できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした点から、新規ムスカリン受容体拮抗物質の開発が望まれる。特に、吸入投与した場合に、効果が高く、かつ全身的な副作用が軽減された新規ムスカリン受容体拮抗物質に対する需要が存在する。加えて、吸入による作用持続時間が長く、その結果、一日一回、あるいはさらに一週間に一回の投与が可能なムスカリン受容体拮抗物質に対する需要が存在する。このような化合物は、口の渇きといった副作用を軽減または解消しながら、肺が関係する障害、たとえばCOPDおよび喘息などの治療に対して特に有効であることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、ムスカリン受容体拮抗物質としての活性または抗コリン作用活性を有する新規置換ピロリジンおよびその関連化合物を提供する。本発明の化合物は、さまざまな性質に加えて、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対して、関連化合物と比較して予想外に高い結合親和性を有することが判明した。加えて、本発明の化合物は、吸入投与した場合、予想外に高い肺選択性を有するため、全身的な副作用が少ないことも判明した。さらに、本発明の化合物は、吸入投与した場合、予想外に高い気管支保護効果を有することも判明した。
【0007】
このように、本発明による組成物のさまざまな面の一つにおいて、本発明は式Iで表される化合物
【0008】
【化14】

(式中、
各RおよびRが、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−ORSR−S(O)R−S(O)および−NRから選択されるか、または二つの隣接するR基もしくは二つの隣接するR基が連結してC3−6アルキレン、−(C2−4アルキレン)−O−または−O−(C1−4アルキレン)−O−を形成し、
各Rが、それぞれ独立に、C1−4アルキルおよびフルオロから選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−CH−Rおよび−CHCH−Rから選択されるか、または二つのR基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され(ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換される)、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−OH、−O(C1−6アルキル)、−O(C3−6シクロアルキル)、−O(C6−10アリール)、−O(C2−9ヘテロアリール)、−S(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(C2−9ヘテロアリール)、−SO(C2−9ヘテロアリール)および−S(O)(C2−9ヘテロアリール)から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各R、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC3−6シクロアルキルから選択され、
各RおよびRが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
aが0〜3の整数であり、
bが0〜3の整数であり、
cが0〜4の整数であり、
dが1か2であり、
eが8か9である化合物
(ここで、各R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、任意選択的に、1〜5個のフルオロ置換基で置換され、各R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換される(ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される))または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を提供する。
【0009】
本発明による組成物の別の一つの面において、本発明は式II
【0010】
【化15】

(式中、Rおよびeは、本明細書の定義に従う)
で表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体。
【0011】
別個の実施形態において、本発明は、式IIにおいて、ピロリジン環3位の立体化学が(R)配置である式IIで表される化合物、およびピロリジン環3位の立体化学が(S)配置である式IIで表される化合物にも関する。
【0012】
本発明による組成物の別の一つの面において、本発明は、薬学的に許容される担体および治療的に有効な量の、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を含む医薬組成物を提供する。このような医薬組成物は、任意選択的に他の治療薬を含むことができる。従って、一つの実施形態において、本発明は、治療的に有効な量のステロイド系抗炎症薬、たとえばコルチコステロイド、βアドレナリン受容体作動物質、ホスホジエステラーゼ−4阻害物質またはそれらの組み合わせをも含む、そのような医薬組成物に関する。
【0013】
本発明の化合物はムスカリン受容体拮抗物質である。それゆえ本発明の方法の一つの面において、本発明はムスカリン受容体拮抗物質による治療で軽減される医学的状態にある哺乳動物を治療するための方法を提供し、その方法は、治療的に有効な量の、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を哺乳動物に投与することを含む。
【0014】
本発明の方法の別の一つの面において、本発明は、肺が関係する障害を治療する方法を提供し、その方法は、治療的に有効な量の、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を、治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0015】
本発明の方法のさらに別の一つの面において、本発明は、患者の気管支を拡張させる方法を提供し、その方法は、気管支を拡張させる量の、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を、患者に吸入投与することを含む。
【0016】
本発明の方法のさらに別の一つの面において、本発明は、慢性閉塞性肺疾患または喘息を治療するための方法を提供し、その方法は、治療的に有効な量の、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を、治療を必要とする患者に投与することを含む。
【0017】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗物質としての活性を有するため、そのような化合物は、ムスカリン受容体を有する生物系または生物試料を調べるための研究手段として、またはその他の化合物の活性を調べるための研究手段としても有用である。したがって、本発明の方法のさらに別の一つの面において、本発明は、生物系または生物試料を調べるための研究手段として、またはムスカリン受容体拮抗物質としての活性を有する新規化合物を発見するための研究手段として、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を使用する方法を提供する。
【0018】
本発明は、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を製造するために有用な方法および新規中間体にも関する。したがって、本発明の方法の別の一つの面において、本発明は、式Iで表される化合物を製造する方法を提供し、その方法は、
(a)式IIIで表される化合物と、式IVで表される化合物とを、還元剤の存在下で反応させるか、または
(b)式Vで表される化合物と、式VIで表される化合物とを、還元剤の存在下で反応させるか、または
(c)式VIIで表される化合物と、式IVで表される化合物とを反応させるか、または、
(d)式Vで表される化合物と、式VIIIで表される化合物とを反応させ、それから
(e)保護基を除去して式Iで表される化合物またはその塩を形成させることを含む(ここで、式IおよびIII〜VIIIで表される化合物は、本明細書の定義に従う)。
【0019】
一つの実施形態において、本発明の製造方法は、さらに式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を形成する工程をも含む。
【0020】
本発明の方法の別の一つの面において、本発明は、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を製造するための方法を提供し、その方法は、式IX
【0021】
【化16】

(式中、R〜Rおよびa〜eは本明細書の定義に従う。Pは酸で切断されるアミノ保護基)で表される化合物と薬学的に許容される酸とを接触させて、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を形成することを含む。
【0022】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載する別の製造方法および本明細書に記載する製造方法のいずれかによって製造される生成物に関する。
【0023】
本発明の組成物の別の一つの面において、本発明は、式Iで表される化合物を製造するための中間体として使用する、式X
【0024】
【化17】

(式中、R〜Rおよびa〜eは本明細書の定義に従う。Pはアミノ保護基)で表される化合物またはその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を提供する。
【0025】
本発明の組成物の別の一つの面において、本発明は、式Iで表される化合物を製造するための中間体として使用する、式XI
【0026】
【化18】

(式中、Rおよびeは本明細書の定義に従う。Pはアミノ保護基であり、Gは−CHO、−CH(OR、−CHOHおよび−CH−L(式中、各Rは、それぞれ独立にC1−6であるか、両Rが一緒になって、C2−6アルキレンを形成する)から選択され、Lは脱離基である)で表される化合物またはその塩もしくは立体異性体(ただし、Lがクロロのときは、Pはエトキシカルボニル(すなわちCHCHOC(O)−)ではない)を提供する。
【0027】
さらに別個の面において、本発明は、
治療に使用するための、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体、
医薬として使用するための、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体、
肺が関係する障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患および喘息などを治療するために使用する、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体、
式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を含む医薬、
肺が関係する障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患および喘息などを治療するために、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用、
肺が関係する障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患および喘息などを治療するための医薬として、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用、
医薬を製造するために、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用、および
肺が関係する障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患および喘息などを治療するための医薬を製造するために、式Iで表される化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体の使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式Iで表される新規置換ピロリジンおよびその関連化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を提供する。これらの化合物には、一個以上のキラル中心を含むことができ、このようなキラル中心が存在する場合、特に断らない限り、本発明はラセミ混合物、純粋な立体異性体(すなわち、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマー)および立体異性体に富むこのような異性体の混合物に関する。特定の立体異性体について言及する場合、組成物全体の有用性が、そのような異性体の存在によって排除されなければ、特に断らない限り、本発明の組成物中に他の立体異性体が少量存在する可能性があることは、当業者であれば了解することができよう。
【0029】
本発明の化合物は、数個の塩基性基(たとえばアミノ基)も含むため、式Iで表される化合物は、遊離塩基としても存在できるし、はさまざまな塩の形でも存在できる。そのようなすべての形が本発明の範囲内に含まれる。さらに、式Iで表される化合物の薬学的に許容される溶媒和物または塩も、本発明の範囲内に含まれる。
【0030】
さらに、該当する場合は、特に断らない限り、式Iで表される化合物すべてのシス−トランスまたはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性体形およびトポ異性体形も本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
本発明の化合物に名前をつけるために本明細書で使用される命名法は、本明細書の実施例に例示されている。一般には、この命名法は市販のソフトウェア、AutoNomを使って誘導されている(MDL、San Leandro、カリフォルニア)。
【0032】
(代表的実施形態)
以下で述べる置換基および数値は、本発明のさまざまな面の代表例および実施形態を述べるために使用されるものである。さらに、これらの代表値はそのような面を規定するために使用されるものであって、他の実施例や本発明の範囲を除外するものではない。この点において、本明細書で使用される、特定の数値または置換基が好ましいという表現は、特に指示がない限り、他の数値や置換基を本明細書から何ら排除するものではない。
【0033】
一つの具体的な実施形態において、RまたはRが存在する場合、それらは、それぞれ独立にC1−4アルキル、フルオロ、クロロおよび−OR(ここで、各アルキル基は任意選択的に1〜3個のフルオロ置換基で置換される)から選択される。別の一つの具体的な実施形態において、各R1およびRは、C1−2アルキルまたはフルオロである。代表的なR1およびRとしてメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ジフルオロメチル、トリフルオロ、2,2,2−フルオロエチル、フルオロ、クロロ、メトキシ、エトキシ、ジフルオロメトキシおよびトリフルオロメトキシを挙げることができるが、もちろんこれらに限られるものではない。
【0034】
一つの具体的な実施形態において、Rが存在する場合、各Rは、それぞれ独立にC1−2アルキルおよびフルオロ(ここで、各アルキル基は任意選択的に1〜3個のフルオロ置換基で置換される)から選択される。R置換基が2個存在する場合、それらは、同じ炭素上にあってもよいし、異なる炭素上にあってもよい。代表的なR基は、メチル、エチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよびフルオロであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0035】
具体的な実施形態において、各Rはそれぞれ独立に水素もしくはC1−4アルキルであるか、または各Rはそれぞれ独立に水素もしくはC1−2アルキルであるか、または各Rは水素である。代表的なR基はメチルおよびエチルであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
あるいは、別の一つの具体的な実施形態において、両Rは、それらが結合する窒素原子と一緒になってC3−5ヘテロ環を形成し、その環は、窒素、酸素または硫黄から選択される1個のヘテロ原子を任意選択的に含む。代表的なヘテロ環は、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−ピペラジニル、4−モルホリニルおよび4−チオモルホリニルであるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
具体的な実施形態において、RはC1−5であるか、またはRはC1−4であるか、またはRはC1−3であるか、またはRはC1−2である(ここで、アルキル基は−OHまたは1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。この実施形態における代表的なRは、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、n−プロピル、イソプロピル、1−ヒドロキシ−2−プロピル、n−ブチルおよびイソブチルであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。一つの実施形態において、Rはメチルである。
【0038】
別の具体的な実施形態において、RはC3−5シクロアルキルであるか、またはRはC3−4シクロアルキルである(ここで、シクロアルキル基は−OHまたは1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。この実施形態における代表的なRは、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0039】
別の一つの具体的な実施形態において、Rは−CH−Rである(ここで、Rは本明細書に記載された定義に従う)。この実施形態における別個の面において、R(すなわち−CH−R)は、
(a)−CH−(C3−5シクロアルキル)か、または−CH−(C3−4シクロアルキル)(ここで、シクロアルキル基は−OHまたは1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)
(b)−CH−(フェニル)、すなわちベンジル(ここで、フェニル基はC1−4アルキル、シアノ、フルオロ、クロロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)および−S(O)(C1−4アルキル)からそれぞれ独立に選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、各アルキル基は1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。
【0040】
この実施形態における代表的なR基は、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチルおよびシクロペンチルメチル、ベンジル、4−シアノベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、4−トリフルオロメトキシベンジル、3−フルオロベンジルおよび4−フルオロベンジルなどであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0041】
一つの具体的な実施形態において、各Rはそれぞれ独立にフェニルである(ここで、各フェニル基はC1−4アルキル、シアノ、フルオロ、クロロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)および−S(O)(C1−4アルキル)からそれぞれ独立に選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、各アルキル基は1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。
【0042】
一つの具体的な実施形態において、各Rは、フェニル、−OHおよび−O(C1−2アルキル)(ここで、各アルキル基は1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、各フェニル基はC1−4アルキル、シアノ、フルオロ、クロロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)および−S(O)(C1−4アルキル)(ここで、各アルキル基は1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)からそれぞれ独立に選択される1〜3個の置換基で任意選択的に選択される)からそれぞれ独立に選択される。
【0043】
具体的な実施形態において、各Rは、水素およびC1−3アルキルからそれぞれ独立に選択されるか、または水素およびC1−2アルキルからそれぞれ独立に選択される(ここで、各アルキル基は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。代表的なR基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ジフルロロメチル、トリフルオロメチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルなどであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0044】
具体的な実施形態において、各RおよびRは、水素およびC1−3アルキルからそれぞれ独立に選択されるか、または水素およびC1−2アルキルからそれぞれ独立に選択される(ここで、各アルキル基は、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される)。代表的なRおよびR基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ジフルロロメチル、トリフルオロメチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルなどであるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0045】
あるいは、別の一つの具体的な実施形態において、RおよびRは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−5ヘテロ環を形成し、その環は、窒素、酸素または硫黄から選択される1個のヘテロ原子を任意選択的に含む。代表的なヘテロ環は、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−ピペラジニル、4−モルホリニルおよび4−チオモルホリニルであるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
具体的な実施形態において、aは0、1もしくは2であるか、またはaは0もしくは1であるか、またはaは0である。
【0047】
具体的な実施形態において、bは0、1もしくは2であるか、またはbは0もしくは1であるか、またはbは0である。
【0048】
具体的な実施形態において、cは0、1もしくは2であるか、またはcは0もしくは1であるか、またはcは0である。
【0049】
dが1の場合、すなわちdによって規定される環がピロリジン環である場合は、一つの実施形態において、ピロリジン環3位の立体中心(すなわち、1−カルバモイル−1,1−ジフェニルメチル基が結合した炭素原子)の立体化学は(S)配置である。別の実施形態において、この立体中心の立体化学は(R)配置である。
【0050】
一つの実施形態において、eは8である。別の一つの実施形態において、eは9である。
【0051】
本発明の一特定実施形態は、式Iで表される化合物であって、両R基が水素、a、bおよびcが0、dが1、eが8または9、そしてRがC1−3アルキルか、C1−2アルキルである化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0052】
本発明の他の一実施形態は、式Iで表される化合物であって、両R基が水素、a、bおよびcが0、dが1、eが8または9、そしてRがC3−5アルキルか、C3−4アルキルである化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0053】
本発明のさらに別の一特定実施形態は、式Iで表される化合物であって、R基がメチル;R、R、R、R、a、b、c、dおよびeが0、dが、本明細書に記載の定義に従う化合物か、1、eが8または9、そしてRがC1−3アルキルか、C1−2アルキルである化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0054】
本発明の別の具体的な実施形態は、式IIa
【0055】
【化19】

(式中、Rおよびeは表Iの定義に従う)で表される化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0056】
【表1−1】

【0057】
【表1−2】

本発明のさらに別の具体的な実施形態は、式IIb
【0058】
【化20】

(式中、Rおよびeは表IIの定義に従う)で表される化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0059】
【表2−1】

【0060】
【表2−2】

本発明のさらに別の具体的な実施形態は、式XII
【0061】
【化21】

(式中、Rおよびeは表IIIの定義に従う)で表される化合物か、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体である。
【0062】
【表3−1】

【0063】
【表3−2】

式XおよびXIで表される化合物において、Pはアミノ保護基である。一つの実施形態において、Pは酸で切断される保護基(Pa)である。別の一つの実施形態において、Pは、ベンジル、4−メトキシベンジル、2,4−ジメチルベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、ホルミル、アセチル、トリメチルシリルおよびtert−ブチルジメチルシリルから選択される。一特定実施形態において、Pはtert−ブトキシカルボニルである。
【0064】
式XIで表される化合物において、Lは脱離基である。一つの実施形態において、Lはクロロ、ブロモまたはヨードである。別の一実施形態において、Lはメタンスルホニルオキシ(メシレート)またはp−トルエンスルホニルオキシ(トシレート)である。一特定実施形態において、Lはp−トルエンスルホニルオキシである。
【0065】
一つの実施形態において、Rはメチルまたはエチルである。別の一実施形態において、両Rは一つになって−(CH−または−(CH)3−を形成する。
【0066】
興味の対象となる、式Xで表される特定の化合物は、
2−[(S)−1−(8−N−ベンジル−N−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドおよび
2−{(S)−1−〔8−(tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチル〕ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミドである。
【0067】
興味の対象となる、式XIで表される特定の化合物は、
8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オール、
8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オールおよび
トルエン−4−スルホン酸=8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチルエステルである。
【0068】
(定義)
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記述するとき、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有する。
【0069】
「アルキル」との用語は、一価飽和炭化水素基であって、直鎖または分枝であり得るものを意味する。特に明記しない限り、このようなアルキル基は、典型的には、1個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキル基には、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、第二級ブチル、イソブチル、第三級ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0070】
「アルキレン」との用語は、二価飽和炭化水素基であって、直鎖または分枝であり得るものを意味する。特に明記しない限り、このようなアルキレン基は、典型的には、1個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルキレン基には、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。
【0071】
「アルケニル」との用語は、一価不飽和炭化水素基であって、直鎖または分枝であり得、そして少なくとも1個、典型的には、1個、2個または3個の炭素−炭素二重結合を有するものを意味する。特に明記しない限り、このようなアルケニル基は、典型的には、2個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基には、例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテ−2−エニル、n−ヘキシ−3−エニルなどが挙げられる。「アルケニレン」との用語は、二価アルケニル基を意味する。
【0072】
「アルキニル」との用語は、一価不飽和炭化水素基であって、直鎖または分枝であり得、そして少なくとも1個、典型的には、1個、2個または3個の炭素−炭素三重結合を有するものを意味する。特に明記しない限り、このようなアルケニル基は、典型的には、2個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基には、例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブテ−2−イニル、n−ヘキシ−3−イニルなどが挙げられる。「アルキニレン」との用語は、二価アルキニル基を意味する。
【0073】
「アリール」との用語は、単一環(すなわち、フェニル)または縮合環(すなわち、ナフタレン)を有する一価芳香族炭化水素を意味する。特に明記しない限り、このようなアリール基は、典型的には、6個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なアリール基には、例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。
【0074】
「シクロアルキル」との用語は、一価飽和炭素環式炭化水素基を意味する。特に明記しない限り、このようなシクロアルキル基は、典型的には、3個〜10個の炭素原子を含有する。代表的なシクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0075】
「ハロ」との用語は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0076】
「ヘテロアリール」との用語は、一価芳香族基であって、単一環のまたは縮合環を有し、そして環内に、窒素、酸素またはイオウから選択される少なくとも1個ヘテロ原子(典型的には、1個〜3個のヘテロ原子)を含有するものを意味する。特に明記しない限り、このようなヘテロアリール基は、典型的には、5個〜10個の環原子を含有する。代表的なヘテロアリール基には、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾール。ベンズチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価種が挙げられ、この場合、その結合点は、利用できる任意の炭素または窒素環原子である。
【0077】
「ヘテロシクリル」または「複素環」との用語は、一価飽和または不飽和(非芳香族)基であって、単一環または複数縮合環を有し、そして環内に、窒素、酸素またはイオウから選択される少なくとも1個ヘテロ原子(典型的には、1個〜3個のヘテロ原子)を含有するものを意味する。特に明記しない限り、このような複素環基は、典型的には、2個〜9個の全環炭素原子を含有する。代表的な複素環基には、例として、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、1,4−ジオキサン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、3−ピロリンなどの一価種が挙げられ、この場合、その結合点は、利用できる任意の炭素または窒素環原子である。
【0078】
「薬学的に受容可能な塩」との用語は、患者(例えば、哺乳動物)に投与することが許容できる塩基または酸から調製した塩を意味する。このような塩は、薬学的に受容可能な無機または有機塩基および薬学的に受容可能な無機または有機酸から誘導できる。薬学的に受容可能な塩が誘導される無機塩基には、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、第一マンガン、第二マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特に、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムの塩が好ましい。薬学的に受容可能な塩が誘導される有機塩基には、第一級、第二級および第三級アミン(置換アミン、環状アミンおよび天然に生じるアミンを含めて)が挙げられ、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなとが挙げられる。薬学的に受容可能な酸から誘導された塩には、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、エディシリック(edisylic)酸、フマル酸、ゲンチシン酸、グルコン酸、グルコロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オロト酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、キナホイック(xinafoic)酸などが挙げられる。クエン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、マレイン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、リン酸、硫酸および酒石酸は、特に好ましい。
【0079】
「その塩」との用語は、酸の水素をカチオン(例えば、金属カチオンまたは有機カチオンなど)で置き換えたときに形成される化合物を意味する。好ましくは、この塩は、薬学的に受容可能な塩であるが、このことは、患者に投与する目的ではない中間体化合物の塩には、必要ではない。
【0080】
「溶媒和物」との用語は、溶質(すなわち、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩)の1個またはそれ以上の分子と溶媒の1個またはそれ以上の分子とにより形成された錯体または凝集体を意味する。このような溶媒和物は、典型的には、実質的に不変のモル比の溶質および溶媒を有する結晶化した固形物である。代表的な溶媒には、例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水であるとき、形成される溶媒和物は、水和物である。
【0081】
「気管支保護(bronchoprotection)」または「気管支保護の(bronchoprotective)」との用語は、呼吸性疾患または呼吸性障害の症状を防止、改善、抑制または緩和する手段を意味する。別に示されなければ、気管支保護の継続期間を決定する目的のために、アセチルコリン誘導性気管支収縮のモルモットモデルを用いる。
【0082】
「治療有効量」とは、治療が必要な患者に投与したとき、治療を起こすのに十分な量を意味する。
【0083】
本明細書中で使用する「治療する」または「治療」との用語は、患者(例えば、哺乳動物(特に、ヒト))における疾患または病態(例えば、COPD)を治療することまたは治療を意味し、これには、以下が挙げられる:
(a)疾患または病態が起こるのを防止すること(すなわち、患者の予防的治療);
(b)疾患または病態を緩和すること(すなわち、患者における疾患または病態をなくすかその退行を引き起こすこと);
(c)疾患または病態を抑制すること(すなわち、患者における疾患または病態の進行を遅くするか阻止すること);または
(d)患者における疾患または病態の症状を軽減すること。
【0084】
「脱離基」との用語は、置換反応(例えば、求核置換反応)において他の官能基または原子で置き換えることができる官能基または原子を意味する。例として、代表的な脱離基には、クロロ基、ブロモ基およびヨード基;スルホン酸エステル基(例えば、メシレート、トリレート、ブロシレート、ノシレートなど);およびアシルオキシ基(例えば、アセトキシ、トリフルオロアセトキシなど)が挙げられる。
【0085】
「それらの保護誘導体」との用語は、その化合物の1個またはそれ以上の官能基を保護基またはブロッキング基で望ましくない反応から保護した特定化合物の誘導体を意味する。保護され得る官能基には、一例として、カルボン酸基、アミノ基、水酸基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。カルボン酸に代表的な保護基には、エステル(例えば、p−メトキシベンジルエステル)、アミドおよびヒドラジンが挙げられる;アミノ基には、カーバメート(例えば、第三級ブトキシカルボニル)およびアミドが挙げられる;水酸基には、エーテルおよびエステルが挙げられる;チオール基には、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられる;カルボニル基には、アセタールおよびケタールが挙げられる;など。このような保護基は、当業者に周知であり、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999で記述されている。
【0086】
「アミノ保護基」との用語は、アミノ基との望ましくない反応を防止するのに適当な保護基を意味する。代表的なアミノ保護基には、第三級ブトキシカルボニル(Boc);トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc);トリメチルシリル(TMS)、第三級ブチルジメチルシリル(TBS))などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
「カルボキシ保護基」との用語は、カルボキシ基での望ましくない反応を防止するのに適当な保護基を意味する。代表的なカルボキシ保護基には、エステル(例えば、メチル、エチル、第三級ブチル、ベンジル(Bn)、トリメチルシリル(TMS)、第三級ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM))などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
「必要に応じて置換された」との用語は、特定の基または部分(例えば、アルキル基、フェニル基など)が、置換されていないかまたは特定の置換基で置換されていることを意味する。
【0089】
(一般合成手順)
本発明の置換ピロリジンおよびその関連化合物は、容易に入手できる出発物質から下記一般合成法および手順によって合成することができる。本発明の一特定実施形態を下記スキームに示し、または記述することができるが、当業者であれば、本発明のすべての実施形態または面が、本明細書に記載する方法により、あるいは当業者によく知られた別の方法、試薬および出発物質を使って合成可能であることを理解できよう。また、典型的なプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力など)が指示された場合であっても、特に断らない限り、他のプロセス条件も使用できることも理解できよう。最適反応条件は使用される個々の反応物質または溶媒によって変化するかもしれないが、当業者であれば、日常的に行われる最適化の手順によって容易に決めることができる。
【0090】
また、当業者には明らかなこととなろうが、ある官能基が望ましくない反応を受けないようにするためには、通常の保護基が必要となるか、望まれるかもしれない。ある特定の官能基に適した保護基を選択することと、そのような官能基を保護し、脱保護するために適する条件も、従来の技術の中でよく知られている。本明細書に記載する手順に例示した以外の保護基であっても、希望によって使用することができる。たとえば、数多くの保護基、その導入法、および除去に関しては、T.W.GreeneおよびG.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,第3版、Wiley、New York、1999および同書に引用されている参照文献に記載されている。
【0091】
式Iで表される化合物またはその塩は、
(a)式III
【0092】
【化22】

で表される化合物と、式IV
【0093】
【化23】

(式中、Pはアミノ保護基)で表される化合物とを、還元剤の存在下で反応させるか、または
(b)式V
【0094】
【化24】

で表される化合物と、式VI
【0095】
【化25】

(式中、Pはアミノ保護基)で表される化合物とを、還元剤の存在下で反応させるか、または
(c)式VII
【0096】
【化26】

(式中、Lは脱離基)で表される化合物と、式IVで表される化合物とを反応させるか、または、
(d)式Vで表される化合物と、式VIII
【0097】
【化27】

(式中、Lは脱離基であり、Pはアミノ保護基)で表される化合物とを反応させることと、
(e)保護基P、PまたPを除去し、式Iで表される化合物またはその塩を形成させることを含む方法によって合成することができる(上記式中、R1−5およびa−eは、本発明書に記載の定義に従う)。
【0098】
任意選択的に、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩は、直接、工程eによって直接合成するか、工程eの生成物から別の工程を追加して合成することができる。
【0099】
工程(a)において、Pは、たとえばベンジルのような、適当なアミノ保護基であればいかなる保護基であっても使用可能である。還元剤は、たとえばナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムシアノボロヒドリドなど、金属水素化物還元剤を含め、適当な還元剤であればいかなる還元剤であっても使用可能である。反応が終結したら、アミノ保護基、Pは通常の手順および試薬を使用して除去することができる。たとえば、ベンジル保護基は、パラジウムのような触媒の存在下に水素化して除去することができる。
【0100】
工程(b)において、Pは、たとえばベンジル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、tert−ブチルジメチルシリルのような、適当なアミノ保護基であればいかなる保護基であっても使用可能である。還元剤は、たとえばナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムシアノボロヒドリドなど、金属水素化物還元剤を含め、適当な還元剤であればいかなる還元剤であっても使用可能である。反応が終結したら、アミノ保護基、Pは通常の手順および試薬を使用して除去することができる。たとえば、ベンジル保護基は、パラジウムのような触媒の存在下に水素化して除去することができ、tert−ブトキシカルボニル基は、酸、たとえば塩酸、p−トルエンスルホン酸などで処理して除去することができる。tert−ブチルジメチルシリル基はフッ化物イオン源、たとえばトリエチルアミン・三フッ化水素塩で処理して除去することができる。
【0101】
工程(c)において、Lは、ハロゲン、たとえばクロロ、ブロモもしくはヨード、またはスルホン酸エステル基、たとえばメシレートやトシレートなど、これらに限定されず、適当な脱離基であればいかなる脱離基であっても使用可能である。Pは本明細書に記載する定義に従う。
【0102】
工程(d)において、Lは、ハロゲン、たとえばクロロ、ブロモもしくはヨード、またはスルホン酸エステル基、たとえばメシレートやトシレートなど、これらに限定されず、適当な脱離基であればいかなる脱離基であっても使用可能である。Pは、アミノ保護基、たとえばベンジル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、tert−ブチルジメチルシリルのような、適当なアミノ保護基であればいかなる保護基であっても使用可能である。還元剤は、たとえばナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムシアノボロヒドリドなど、金属水素化物還元剤を含め、適当な還元剤であればいかなる還元剤であっても使用可能である。反応が終結したら、アミノ保護基、Pは通常の手順および試薬を使用して除去することができる。たとえば、ベンジル保護基は、パラジウムのような触媒の存在下に水素化して除去することができ、tert−ブトキシカルボニル基は、酸、たとえば塩酸、p−トルエンスルホン酸などで処理して除去することができる。tert−ブチルジメチルシリル基はフッ化物イオン源、たとえばトリエチルアミン・三フッ化水素塩で処理して除去することができる。
【0103】
工程(b)および(d)の特定実施例において、PおよびPは、tert−ブトキシカルボニル基であって、薬学的に許容される酸で処理すると除去され、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩がin situで発生する。
【0104】
別の例示として、式Iで表される代表的化合物の合成をスキームAに示す(下記スキームに示す置換基および変数は、特に断らない限り本明細書に記載する定義に従う)。
【0105】
(スキームA)
【0106】
【化28】

スキームAに従い、式Iの化合物をまずアルコール2と反応させ、中間体3を得る。式中、Lは、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、トシル、メシルなど、適当な脱離基である。通常、この反応は、1と、少なくとも1当量、好ましくは約1.0〜約1.1当量のアルコール2とを、不活性希釈剤、たとえばアセトニトリルなどの中で接触させて行われる。この反応は一般に過剰塩基、好ましくは約2〜約4当量の塩基、たとえばトリアルキルアミン、好ましくはトリエチルアミンの存在で行われる。通常この反応は、約0℃〜約80℃、好ましくは、約40°C〜約50℃で約1〜24時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。得られる中間体3は、もし望めば、標準的な方法で、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などの方法で容易に精製することができる。
【0107】
この反応に使用される式2のアルコールは、市販品を入手してもよいし、市販の出発物質と試薬を使用し、よく知られた方法で合成することもできる。式2の代表的なアルコールの例を挙げれば、8−クロロ−1−オクタノール、9−クロロ−1−ノナノール、8−ブロモ−1−オクタノール、9−ブロモ−1−ノナノール、8−ヨード−1−オクタノール、9−ヨード−1−ノナノールなどである。
【0108】
次ぎに、中間体3のヒドロキシル基を対応するアルデヒドに酸化すれば、中間体4が得られる。この反応は通常、3と、過剰量の適当な酸化剤とを接触させて行われる。ヒドロキシル基をアルデヒドに酸化できる酸化剤であれば、クロム(VI)、たとえば酸化クロム(VI)ジピリジン、ピリジニウムクロロクロメート、ピリジニウムジクロメートなど、および活性化したジメチルスルホキシド、たとえば塩化オキサリル/DMSO、三酸化硫黄・ピリジン錯体/DMSO/トリアルキルアミンなどを含め、いかなる酸化剤でも反応に使用することができる。
【0109】
好ましくは、この反応は、トリアルキルアミン、たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの存在下に、過剰量の三酸化硫黄・ピリジン錯体およびジメチルスルホキシドを使って行うことができる。この反応は、通常、不活性希釈剤、たとえばジクロロメタン中で、3と、約2.5〜約3.5当量の三酸化硫黄・ピリジン錯体および過剰量の、好ましくは約10当量のジメチルスルホキシドとを、過剰量の、好ましくは約5当量のジイソプロピルエチルアミンの存在下に接触させることにより行われる。一般にこの反応は、約−30℃〜約0℃、好ましくは、約−10℃〜約−20℃で約0.25〜約2時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。得られたアルデヒド中間体4は、任意選択的に、標準的な方法、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などによって精製することができる。
【0110】
あるいは、アルデヒド中間体4は、まず1と次式
【0111】
【化29】

または
【0112】
【化30】

または
【0113】
【化31】

(式中、LおよびLは適当な脱離基、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、トシル、メシルなど、eは本明細書の記載に従い、各Rはそれぞれ独立にC1−6アルキルか、または両R基は、一緒になってC2−6アルキレンを形成する)で表される化合物とを反応させて合成することができる。次の工程として、アセタールを(酸性水溶液で)加水分解するか、オレフィンをオゾン分解(すなわち、O3を使用し、それからオゾニドを還元剤、たとえば亜リン酸トリメチル、ジメチルスルフィドなどで分解)すればアルデヒド4が得られる。
【0114】
次ぎに、アルデヒド中間体4とアミン5とを反応させ、式6の化合物を得る。通常この反応は、アルデヒド4と、過剰量の、たとえば約1.0〜約1.2当量の5とを、過剰量の、好ましくは約1.2〜約1.5当量の適当な還元剤の存在下に、不活性希釈剤、たとえばジクロロメタン中で接触させることにより行われる。適当な還元剤としては、たとえばナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムシアノボロヒドリドなどを挙げることができる。好ましい還元剤はナトリウムトリアセトキシボロヒドリドである。通常この反応は、約0℃〜約30℃で約6〜約24時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。得られた式6の化合物は、普通、標準的な方法で、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などで精製することができる。
【0115】
つづいて、通常の試薬と反応条件で6からベンジル基を除去すれば7が得られる。一例を挙げれば、触媒、たとえばパラジウム/Cおよび/または酸化パラジウムを使用して6を水素化分解すれば容易にベンジル基が脱保護され、7が得られる。通常、この反応は6と、圧力約40〜約60psiの水素とを、触媒、たとえば10%Pd/Cの存在下に接触させることによって行うことができる。一般にこの反応は、不活性な溶媒、たとえばエタノールまたはイソプロピルアルコール中、室温で約12〜120時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。
【0116】
あるいは、アルデヒド中間体5を式R−NH(式中、Rは本明細書に記載する定義に従う)で表されるアミンと反応させ、直接化合物7を得ることができる。また、望めば、スキームAのベンジル基の代わりに他のアミノ保護基を使用することもできる。
【0117】
本明細書に記載する反応への使用に適するアミノ化合物は、市販品を入手してもよいし、市販の出発物質と試薬を使用し、よく知られた方法で合成することもできる。使用に適する代表的なアミンとしては、これらに限定されるものではないが、N−メチル−N−ベンジルアミン、N−エチル−N−ベンジルアミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミン、DL−2−アミノ−1−プロパノール、(R)−(−)−2−アミノ−1−プロパノール、(S)−(+)−2−アミノ−1−プロパノール、2,2,2−トリフルオロエチルアミン、ベンジルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミンなどを挙げることができる。
【0118】
本明細書に記載する反応に使用される、式Iで表される化合物は、スキームBに例示する合成手順によって容易に合成される。
【0119】
(スキームB)
【0120】
【化32】

スキームBに従い、ジフェニルアセトニトリル8を中間体9(式中、Lは適当な脱離基、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、トシル、メシルなどであり、Pはアミノ保護基、たとえばベンジル、4−メトキシベンジル、4−ニトロベンジル、エトキシカルボニル、フェニルカルボニルなどである)と反応させ中間体10を得る。通常この反応は、8と、過剰量、好ましくは約1.4〜約1.6当量の強塩基、たとえばカリウムtert−ブトキシドとを、不活性な希釈剤、たとえばテトラヒドロフラン中、約−10℃〜10℃の温度で約0.5〜約2.0時間接触させ、まず化合物8のアニオンを発生させることにより行われる。生成するアニオンは、in situで、約0.95〜約1.05当量の9と、約20℃〜50℃の温度で約10〜約48時間反応させるか、または反応が実質的に完結するまで行われる。式9で表される化合物(式中、Lはスルホン酸エステル脱離基)は対応するアルコールから通常の手順と試薬を使って容易に行うことができる。一例を挙げれば、(S)−1−ベンジル−3−ピロリジノールは、1.1当量のp−トルエンスルホニルクロリドとおよび1.2当量の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)と処理することにより、容易に(S)−1−ベンジル−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ピロリジンに変換される。式9で表される他の化合物も、市販の出発物質および試薬を使用し、同様にして合成することができる。
【0121】
次ぎに、通常の手順と試薬によって化合物10を脱保護し、化合物11を得る。たとえば、化合物10のPがベンジル保護基の場合、ベンジル基は、水素源、たとえばギ酸アンモニウムと触媒、たとえばPd/Cを使用して、移動水素化分解によって容易に除くことができる。好ましくは、この反応は、化合物10の塩酸塩または臭化水素酸塩を使用して行うか、酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、ギ酸、硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸などの存在下に行われる。この水素化分解反応は、水素および触媒を使用し、酸の存在下に行うこともできる。たとえばMoriらに付与された1999年12月21日発行の米国特許第6,005,119号を参照。
【0122】
次ぎに、化合物11のニトリル基を対応するアミド(すなわち、−C(O)NH)に加水分解して式10の化合物を得る。普通この反応は、11と硫酸水溶液、好ましくは80%硫酸とを、約70℃〜約100℃、好ましくは約90℃で約12〜約36時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。スキームBに従い、ニトリルからアミドへの加水分解は、保護基を除去する前に行って13を得ることもでき、13は脱保護すると化合物12を与える。
【0123】
もし望めば、たとえば約6〜約12%過酸化水素を含む水酸化ナトリウム水溶液を使って、化合物10または11のニトリル基を加水分解し、相当するカルボン酸(すなわち、−COOH)に変換することができる。ここで得られるカルボン酸に、よく知られた手順と試薬を使用して各種アミン(すなわち、RNH、ここでRは本明細書に記載の定義に従う)を結合させれば、置換アミドを得ることができる。
【0124】
本発明の化合物は、スキームCに例示する合成手順によって合成することもできる。
【0125】
(スキームC)
【0126】
【化33】

スキームCに従い、アルコール2(式中、Lは適当な脱離基、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、トシル、メシルなど)にベンジルアミン5を反応させ、中間体14を得ることができる。普通この反応は、アルコール2と、少なくとも1当量、好ましくは約1.0〜約1.1当量のベンジルアミン5とを、不活性な希釈剤、たとえばアセトニトリルなどの中で接触させて行うことができる。一般にこの反応は、過剰の塩基そ存在下、好ましくは約2〜約4当量の塩基、たとえばトリアルキルアミン、好ましくはトリエチルアミンの存在下に行うことができる。普通この反応は、約0℃〜約80℃、好ましくは、約40℃〜約60℃で約1〜24時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。もし望めば、得られた中間体14は、標準的な方法、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などによって容易に精製することができる。
【0127】
次ぎに、中間体14のヒドロキシル基を対応するアルデヒドに酸化すれば中間体15が得られる。普通この反応は、14と、過剰量の適当な酸化剤と接触させて行うことができる。ヒドロキシル基をアルデヒドに酸化できる酸化剤であれば、クロム(VI)、たとえば酸化クロム(VI)ジピリジン、ピリジニウムクロロクロメート、ピリジニウムジクロメートなど、および活性化したジメチルスルホキシド、たとえば塩化オキサリル/DMSO、三酸化硫黄・ピリジン錯体/DMSO/トリアルキルアミンなどを含め、いかなる酸化剤でも反応に使用することができる。
【0128】
好ましくは、この反応は、トリアルキルアミン、たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの存在下に、過剰量の三酸化硫黄・ピリジン錯体およびジメチルスルホキシドを使って行うことができる。この反応は、通常、不活性希釈剤、たとえばジクロロメタン中で、14と、約2.5〜約3.5当量の三酸化硫黄・ピリジン錯体および過剰量の、好ましくは約10当量のジメチルスルホキシドとを、過剰量の、好ましくは約5当量のジイソプロピルエチルアミンの存在下に接触させることにより行われる。一般にこの反応は、約−30℃〜約0℃、好ましくは、約−10℃〜約−20℃で約0.25〜約6時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。得られるアルデヒド中間体15は、任意選択的に、標準的な方法、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などによって精製することができる。
【0129】
次ぎに、アルデヒド中間体15に1を反応させ、式6の化合物を得る。通常この反応は、アルデヒド15と、少なくとも約1当量の1とを、過剰量の、好ましくは約1.2〜約1.5当量の適当な還元剤の存在下に、不活性希釈剤、たとえばジクロロメタン中で接触させることによって行われる。適当な還元剤としては、たとえばナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、ナトリウムシアノボロヒドリドなどを挙げることができる。好ましい還元剤はナトリウムトリアセトキシボロヒドリドである。通常この反応は、約0℃〜約30℃で約2〜約24時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。得られた式6の化合物は、普通、標準的な方法で、たとえばクロマトグラフィ、再結晶などで精製することができる。つづいて、上記に従って、6からベンジル基を除去することができる。
【0130】
また、スキームA、BおよびCに例示されている合成工程を、上記とは異なる順序で行い、あるいは上記とは異なる試薬を使って行っても式7の化合物を合成できることは、当業者であれば理解できよう。たとえば、中間体3または14のヒドロキシル基をアルデヒドに酸化する代わりに、通常の試薬および反応手順を使って、これらのヒドロキシル基を脱離基、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、メシレートまたはトシレートに変換することができる。得られた脱離基は、アミン5または中間体1によって容易に置換され、化合物6を与える。
【0131】
さらに別の例として、スキームDにより、式Iの代表化合物を合成することができる。
【0132】
(スキームD)
【0133】
【化34】

スキームDに従い、通常の合成手順および試薬を使って(すなわち、ベンジル基を除去するための水素化分解およびtert−ブトキシカルボニル基を形成するための二炭酸=ジ−tert−ブチル)、化合物14のベンジルアミノ保護基を除去するか、tert−ブトキシカルボニルアミノ保護基で置換することができる。
【0134】
次ぎに、通常の試薬および反応手順を使って、化合物16のヒドロキシル基を脱離基、たとえばクロロ、ブロモ、ヨード、メシレートまたはトシレートに変換し、式17の化合物を得る。一例を挙げれば、第三アミンなどの塩基、たとえば、ヒドロキシル基を1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下に、トシルクロリドと反応させれば、トシル脱離基に変換される。普通この反応は、不活性希釈剤中、たとえばメチルtert−ブチルエーテル中、約0℃〜約30℃で、0.5〜6時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。
【0135】
次ぎに、化合物17の脱離基を式1の化合物で置換し、式18を得る。普通この反応は、第三アミン、たとえばジイソプロピルエチルアミンの存在下に、17と約0.95〜約1.1モル当量の1とを接触させることによって行われる。一般にこの反応は、不活性希釈剤中、たとえばアセトニトリル中、約25℃〜約100℃で、約2〜約12時間、または反応が実質的に完結するまで行われる。
【0136】
次ぎに、通常の試薬および反応条件を使って化合物18のtert−ブトキシカルボニルアミノ保護基を除去し、式7の化合物またはその塩を得る。たとえば、tert−ブトキシカルボニルアミノ保護基は、酸、たとえば塩酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸などで処理すれば容易に除去することができる。
【0137】
一つの実施形態において、式18の化合物を薬学的に許容される酸と接触させれば、遊離塩基を単離しなくても、化合物7の薬学的に許容される塩を直接作り出すことができる。一例を挙げれば、18にナフタレン−1,5−ジスルホン酸を接触させると、化合物7のナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩が形成される。普通この反応は、18と約1〜約3当量、たとえば2当量のナフタレン−1,5−ジスルホン酸とを不活性溶媒中、たとえばイソプロピルアルコール中で接触させることによって行われる。一つの実施形態において、希釈剤に約2〜約10体積%の水を含むイソプロピルアルコールが使用され、結晶性ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩が得られる。
【0138】
本発明の代表的な化合物またはその中間体を合成するための具体的反応条件およびその他の手順に関する詳細は、以下で述べる「実施例」に記述されている。
【0139】
(医薬組成物)
本発明の置換ピロリジンおよびその関連化合物は、通常、医薬組成物の形で患者に投与される。このような医薬組成物は、経口、吸入、経鼻、外用(経皮を含む)および非経口投与法など、これらに限定されるものではないが、許容される投与経路であれば、いかなる経路によってでも、患者に投与可能である。
【0140】
本発明の化合物は、特定の投与法に適する形であれば、いかなる形(すなわち、遊離塩基、薬学的に許容される塩または溶媒和物)であっても医薬組成物に使用できることは了解されよう。
【0141】
従って、その組成物局面の1つでは、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤と、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩の治療有効量とを含有する薬学的組成物に関する。必要に応じて、このような薬学的組成物は、もし望ましいなら、他の治療剤および/または処方剤を含有し得る。
【0142】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩の治療有効量を含有する。典型的には、このような薬学的組成物は、約0.01〜約95重量%の活性剤(約0.01〜約30重量%(例えば、約0.01〜約10重量%)の活性剤を含めて)を含有する。
【0143】
本発明の薬学的組成物では、任意の通常のキャリアまたは賦形剤が使用され得る。特定のキャリアまたは賦形剤、またはキャリアまたは賦形剤の組合せの選択は、特定の患者または病気または疾患状態を治療するのに使用される投与様式に依存している。このことに関して、特定の投与様式に適当な薬学的組成物の調製は、十分に、医薬分野の当業者の範囲内である。さらに、このような化合物の成分は、例えば、Sigma,P.O.Box 14508,St.Louis,MO 63178から市販されている。さらなる例として、通常の処方技術は、Remington:The Science and Practiceof Pharmacy,20th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(2000);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th Edition,Lippincott Williams & White,Baltimore,Maryland(1999)で記述されている。
【0144】
薬学的に受容可能なキャリアとして働くことができる物質の代表例には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(1)糖類(例えば、ラクトース、グルコースおよびショ糖);(2)デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン);(3)セルロースおよびその誘導体(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロースおよびセルロース酢酸塩));(4)粉末化トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)滑石;(8)賦形剤(例えば、カカオバターおよび座薬ワックス);(9)オイル(例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、とうもろこし油および大豆油);(10)グリコール(例えば、プロピレングリコール);(11)ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);(12)エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル);(13)寒天;(14)緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);(15)アルギン酸;(16)発熱物質−遊離の水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)圧縮推進剤ガス(例えば、クロロフルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン);および(22)薬学的組成物で使用される他の無毒の適合性物質。
【0145】
本発明の薬学的組成物は、典型的には、本発明の化合物を薬学的に受容可能なキャリアおよび1種またはそれ以上の任意の成分と十分かつ密接に混合またはブレンドすることより、調製される。もし必要または望ましいなら、得られる均一にブレンドした混合物は、次いで、通常の手順および装置を使用して、錠剤、カプセル剤、丸薬、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサーなどに成形または装填できる。
【0146】
1つの実施形態では、本発明の薬学的組成物は、吸入投与に適当である。吸入投与に適当な薬学的組成物は、典型的には、エアロゾルまたは粉末の形状である。このような組成物は、一般に、周知の送達装置(例えば、噴霧吸入器、定量吸入器(MDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)または類似の送達装置)を使用して、投与される。
【0147】
本発明の特定の実施形態では、この活性剤を含有する薬学的組成物は、噴霧吸入器を使用して、吸入により投与される。このような噴霧吸入装置は、典型的には、高速の空気流れを生じ、これにより、この活性剤を含有する薬学的組成物は、患者の気道に運ばれるミストとして、噴霧される。従って、この活性剤は、噴霧吸入器で使用するように処方されるとき、典型的には、溶液を形成するように、適当なキャリアに溶解される。あるいは、この活性剤は、微粉化され、そして適当なキャリアと混ぜ合わされて、吸入可能な大きさの微粉化粒子の懸濁液を形成でき、この場合、微粉化は、典型的には、約10μm未満の直径を有する粒子を約90%以上で有するとして、定義される。適当な噴霧装置は、例えば、PARI GmbH(Starnberg,German)により、商業的に提供される。他の噴霧装置には、Respimat(Boehringer Ingelheim)および例えば、米国特許第6,123,068およびWO97/12687で開示されたものが挙げられる。
【0148】
噴霧吸入器で使用する代表的な薬学的組成物は、約0.05μg/ml〜約10mg/mLの式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体を含む等張性水溶液を含有する。
【0149】
本発明の他の特定の実施形態では、この活性剤を含有する薬学的組成物は、乾燥粉末吸入器を使用する吸入により、投与される。このような乾燥粉末吸入器は、典型的には、この活性剤を、自由流動粉末(これは、呼気中にて、患者の気流に分散される)として、投与する。自由流動粉末を得るためには、この活性剤は、典型的には、適当な賦形剤(例えば、ラクトースまたはデンプン)と共に、処方される。
【0150】
乾燥粉末吸入器で使用する代表的な薬学的組成物は、約1μmと約100μmの間の粒径を有する乾燥ラクトースと、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体の微粉化粒子とを含有する。
【0151】
このような乾燥粉末処方は、例えば、このラクトースを活性剤と混ぜ合わせることにより、次いで、それらの成分を乾燥ブレンドすることにより、製造できる。あるいは、もし望ましいなら、この活性剤は、賦形剤なしで、処方できる。この薬学的組成物は、次いで、典型的には、乾燥粉末ディスペンサー、または乾燥粉末送達装置と併用するための吸入カートリッジまたはカプセルに装填される。
【0152】
乾燥粉末吸入器送達装置の例には、Diskhaler(GlaxoSmithKline,Research Triangle Park,NC)(例えば、米国特許第5,035,237号を参照);Diskus(GlaxoSmithKline)(例えば、米国特許第6,378,519号を参照);Turbuhaler(AstraZeneca,Wilmington,DE)(例えば、米国特許第4,524,769号を参照);Rotahaler(GlaxoSmithKline)(例えば、米国特許第4,353,365号を参照)およびHandihaler(Boehringer Ingelheim)が挙げられる。適当なDPI装置のさらに他の例は、米国特許第5,415,162号、第5,239,993号および第5,715,810号で記述されており、それらの内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0153】
本発明のさらに他の特定の実施形態では、この活性剤を含有する薬学的組成物は、定量吸入器を使用して、投与される。このような定量吸入器は、典型的には、圧縮推進剤ガスを使用して、計量した量の活性剤またはそれらの薬学的に受容可能な塩を排出する。従って、定量吸入器を使用して投与される薬学的組成物は、この活性剤の液化推進剤溶液または懸濁液を含有する。任意の適当な液化推進剤が使用され得、これには、クロロフルオロカーボン(例えば、CClF)およびヒドロフルオロアルカン(HFA)(例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134a)および1,1,1,2,3,3,3,−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA 227)が挙げられる。クロロフルオロカーボンがオゾン層に悪影響を与える懸念があるために、一般に、HFAを含有する処方が好ましい。HFA処方の任意の追加成分には、共溶媒(例えば、エタノールまたはペンタン)および界面活性剤(例えば、ソルビタントリオレエート、オレイン酸、レシチンおよびグリセリン)が挙げられる。例えば、米国特許第5,225,183号、EP 0717987 A2およびWO92/22286を参照。
【0154】
定量吸入器で使用する代表的な薬学的組成物は、約0.01重量%〜約5重量%の式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体;約0重量%〜約20重量%のエタノール;および約0重量%〜約5重量%の界面活性剤を含有し、その残りは、HFA推進剤である。
【0155】
このような組成物は、典型的には、適当な容器(これは、この活性剤、エタノール(もし存在するなら)および界面活性剤(もし存在するなら)を含む)に冷却または加圧したヒドロフルオロアルカンを加えることにより、調製される。この処方は、次いで、エアロゾルキャニスターに装填され、これは、定量吸入器装置の一部をなす。HFA推進剤と併用するように特別に開発されたMDI装置の例は、米国特許第6,006,745号および第6,143,277号で提供されている。あるいは、活性化合物の医薬塩の微粉粒子上で界面活性剤の被覆を噴霧乾燥することにより、懸濁液処方が調製される。例えば、WO99/53901およびWO00/61108を参照。
【0156】
吸入可能粒子を調製する方法および吸入投薬に適当な処方および装置の別の例については、米国特許第6,268,533号、第5,983,956号、第5,874,063号および第6,221,398号、およびWO99/55319およびWO00/30614を参照。
【0157】
他の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、経口投与に適当である。経口投与に適当な薬学的組成物は、カプセル剤、錠剤、丸薬、薬用ドロップ、カシュ剤、糖衣錠、粉剤、顆粒;または水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液;または水中油形または油中水形液状乳濁液;またはエリキシル剤たまはシロップなどの形態であり得る;各々は、活性剤として、所定量の本発明の化合物を含有する。
【0158】
固形剤形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸薬など)で経口投与する目的のとき、本発明の薬学的組成物は、典型的には、活性剤としての本発明の化合物および1種またはそれ以上の薬学的に受容可能なキャリア(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)を含有する。必要に応じて、または代替的に、このような固形剤例はまた、以下を含有し得る:(1)充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸);(2)結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアカシア);(3)湿潤剤(例えば、グリセリン);(4)崩壊剤(例えば、寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩および/または炭酸ナトリウム;(5)溶液遅延剤(例えば、パラフィン);(6)吸収促進剤(例えば、四級アンモニウム化合物);(7)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよび/またはグリセリンモノステアレート;(8)吸収剤(例えば、カオリンおよび/またはベントナイト粘土);(9)潤滑剤(例えば、滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはそれらの混合物;(10)着色剤;および(11)緩衝剤。
【0159】
本発明の薬学的組成物では、離型剤、湿潤剤、被覆剤、甘味料、香料および芳香剤、防腐剤および酸化防止剤もまた、存在できる。薬学的に受容可能な酸化防止剤の例には、以下が挙げられる:(1)水溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ硫酸水素ナトリウムなど);(2)油溶性酸化防止剤(例えば、バルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど);および(3)金属キレート化剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。錠剤、カプセル剤、丸薬などの被覆剤には、腸溶コーティングに使用されるもの(例えば、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)、酢酸ケイ酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS)などが挙げられる。
【0160】
もし望ましいなら、本発明の薬学的組成物はまた、一例として、割合を変えたヒドロキシメチルセルロース;または他の高分子マトリックス、リポソームおよび/または微小球体を使用して、その活性成分の遅延または制御放出を生じるように、処方され得る。
【0161】
それに加えて、本発明の薬学的組成物は、必要に応じて、制圧剤を含有し得、活性成分のみを放出するか、または優先的に、胃腸管の一部にて、必要に応じて、遅延様式で放出するように、処方され得る。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質およびワックスが挙げられる。この活性成分はまた、もし適当なら、上記賦形剤の1種またはそれ以上と共に、マイクロカプセルの形態であり得る。
【0162】
経口投与に適当な液状剤形には、例として、薬学的に受容可能な乳濁液、微小乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。このような液状剤形は、典型的には、この活性成分および不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳濁液(例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール)、オイル(特に、綿実油、落花生油、とうもろこし油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物)を含有する。懸濁液は、この活性成分に加えて、懸濁剤(例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天およびトラガカントおよびそれらの混合物)を含有し得る。
【0163】
経口投与向けのとき、本発明の薬学的組成物は、好ましくは、単位剤形に包装される。「単位剤形」との用語は、患者に投薬するのに適当な物理的に別個の単位を意味し、すなわち、各単位は、単独でまたは1種またはそれ以上の追加単位と組み合わせて、いずれかで所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性剤を含有する。例えば、このような単位剤形は、カプセル剤、錠剤、丸薬などであり得る。
【0164】
本発明の化合物はまた、公知の経皮送達システムおよび賦形剤を使用して、経皮的に投与できる。例えば、本発明の化合物は、浸透向上剤(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノラウレート、アザシクロアルカン−2−オンなど)と混合でき、そしてパッチまたは類似の送達システムに取り込まれる。このような経皮組成物には、もし望ましいなら、ゲル化剤、乳濁液および緩衝液を含めた追加賦形剤が使用され得る。
【0165】
本発明の薬学的組成物はまた、式Iの化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩または溶媒和物または立体異性体と共に投与される他の治療薬を含有し得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、さらに、1種またはそれ以上の治療薬を含有し得、これは、他の気管支拡張薬(例えば、PDE阻害剤、アデノシン2bモジュレーターおよびβアドレナリン作用性レセプターアゴニスト)抗炎症薬(例えば、ステロイド性抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)および非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)およびPDE阻害剤);他のムスカリン性レセプターアンタゴニスト(すなわち、抗コリン薬)、抗感染薬(例えば、グラム陽性およびグラム陰性抗生物質または抗ウイルス薬);抗ヒスタミン薬;プロテアーゼ阻害剤;および求心神経遮断薬(例えば、Dアゴニストおよびニューロキニンモジュレーター)からなる群から選択される。他の治療薬は、薬学的に受容可能な塩または溶媒和物の形態で使用できる。さらに、もし適当なら、これらの他の治療薬は、光学的に純粋な立体異性体として、使用できる。
【0166】
本発明の化合物と併用できる代表的なβアドレナリン作用性レセプターアゴニストには、サルメテロール、サルブタモール、フォルモテロール、サルメファモール、フェノテロール、テルブタリン、アルブテロール、イソエタリン、メタプロテレノール、ビトルテロール、ピルブテロール、レバルブテロール、またはそれらの薬学的に受容可能な塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物と併用できる他のβアドレナリン作用性レセプターアゴニストには、以下が挙げられるが、これらに限定されない:3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘプチル]オキシ}−プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物(これらは、2002年8月29日に公開されたWO02/066422で開示されている);3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)フェニル]イミダゾリジン−2,4−ジオンおよび関連化合物(これらは、2002年9月12日に公開されたWO02/070490で開示されている);3−(4{[6−([(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル]アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−([(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル]アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−{[(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(第三級ブチル)−3−(4−{[6([(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(第三級ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(第三級ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物(これらは、2002年10月3日に公開されたWO02/076933で開示されている);4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよび関連化合物(これらは、2003年3月27日に公開されたWO03/024439で開示されている);N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンおよび関連化合物(これらは、2003年6月10日に発行された米国特許第6,576,793号で開示されている);N−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび関連化合物(これらは、2003年11月25日に発行された米国特許第6,653,323号で開示されている);ならびにそれらの薬学的に受容可能な塩。このβ−アドレノレセプタアゴニストは、使用するとき、この薬学的組成物中にて、治療有効量で存在している。典型的には、このβ−アドレナリン作用性レセプターアゴニストは、1用量あたり、約0.05μg〜約500μgを供給するのに十分な量で、存在している。
【0167】
本発明の化合物と併用できる代表的なステロイド性抗炎症薬には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、デキサメサゾン、フルチカゾン、6,9−ジフルオロ−17−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11−ヒドロキシ−16−メチル−3−オキソ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17−カルボチオ酸S−フルオロメチルエステル、6、9−ジフルオロ−11−ヒドロキシ−16−メチル−3−オキソ−17−プロピオニルオキシ−アンドロスタ−1,4−ジエン−17−カルボチオ酸S(2−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3S−イル)エステル、ベクロメタゾンエステル(例えば、その17−プロピオネートエステルまたは17,21−ジプロピオネートエステル)、ブデソニド、フルニソリド、モメタゾンエステル(例えば、そのフロ酸エステル)、トリアムシノロンアセトニド、ロフレポニド、シクレソニド、ブチキソコルトプロピオネート、RPR−106541、ST−126など、またはそれらの薬学的に受容可能な塩。典型的には、このステロイド性抗炎症薬は、1用量あたり、約0.05μg〜約500μgを供給するのに十分な量で、存在している。
【0168】
他の適当な組合せには、例えば、以下が挙げられる:他の抗炎症薬(例えば、NSAIDs(例えば、クロモグリク酸ナトリウム);ネドクロミルナトリウム;ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤または混合PDE3/PDE4阻害剤);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテルカスト);ロイコトリエン合成の阻害剤;iNOS阻害剤;タンパク質分解酵素阻害剤(例えば、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤);ベータ−2−インテグリンアンタゴニストおよびアデノシンレセプタアゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト);サイトカインアンタゴニスト(例えば、ケモカインアンタゴニスト(例えば、インターロイキン抗体(aIL抗体)、具体的には、aIL−4療法、aIL−13療法、またはそれらの組み合わせ));またはサイトカイン合成の阻害剤。
【0169】
本発明の化合物と併用できる例えば、代表的なホスホジエステラーゼ−4(PDE4)阻害剤または混合PDE3/PDE4阻害剤には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:シス−4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オン;シス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン−1−オール];シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸など、またはそれらの薬学的に受容可能な塩。他の代表的なPDE4または混合PDE4/PDE3阻害剤には、以下が挙げられる:AWD−12−281(elbion);NCS−613(INSERM);D−4418(ChiroscienceおよびSchering−Plough);CI−1018またはPD−168787(Pfizer);WO99/16766(Kyowa Hakko)で開示されたベンゾジオキソール化合物;K−34(Kyowa Hakko);V−11294A(Napp);ロフルミラスト(Byk−Gulden);WO99/47505で開示されたフタラジノン化合物(Byk−Gulden);Pumafentrine(Byk−Gulden、現在、Altana);アロフィリン(Almirall−Prodesfarma);VM554/UM565(Vernalis);T−440(Tanabe Seiyaku);およびT2585(Tanabe Seiyaku)。
【0170】
本発明の化合物と共にまたはそれに加えて使用できる代表的なムスカリンアンタゴニスト(すなわち、抗コリン剤)には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アトロピン、硫酸アトロピン、酸化アトロピン、硫酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒヨスチアミン(d,l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化水素酸イプラトロピウム、臭化水素酸オキシトロピウム、チオトロピウム臭化物、メタンテリン、臭化水素酸プロパンテリン、アニソトロピン臭化メチル、臭化クリジニウム、コピロレート(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキシエチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソシクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX 116およびメトクトラミンなど、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;または塩として列挙した化合物、それらの代替の薬学的に受容可能な塩。
【0171】
本発明の化合物と併用できる代表的な抗ヒスタミン剤(すなわち、H−レセプターアンタゴニスト)には、エタノールアミン(例えば、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリネート);エチレンジアミン(例えば、マレイン酸ピリラミン、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン);アルキルアミン(例えば、クロルフェニラミンおよびアクリバスチン);ピペラジン(例えば、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン);ピペリジン(例えば、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシ類似物、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン);塩酸アゼラスチンなど、またはそれらの薬学的に受容可能な塩;または塩として列挙した化合物については、それらの代替的な薬学的に受容可能な塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
本発明の化合物と併用して投与される他の治療薬の適当な用量は、約0.05g/日〜約100mg/日の範囲である。
【0173】
以下の処方は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示する。
【0174】
(配合例A)
経口投与用硬質ゼラチンカプセルの調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 250mg
乳糖(スプレードライ品) 200mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
代表的調剤法: 配合成分をよく混合してから、硬質ゼラチンカプセルに充填する(1カプセルに組成物460mg)。
【0175】
(配合例B)
経口投与用硬質ゼラチンカプセルの調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 20mg
デンプン 89mg
微結晶性セルロース 89mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
代表的調剤法: 配合成分をよく混合してから、No.45メッシュ米国ふるいにかけ、通過したものを硬質ゼラチンカプセルに充填する(1カプセルに組成物200mg)。
【0176】
(配合例C)
経口投与用カプセルの調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 100mg
ポリオキシエチレン・ソルビタン・モノオレエート 50mg
デンプン末 250mg
代表的調剤法: 配合成分をよく混合してから、ゼラチンカプセルに充填する(1カプセルに組成物300mg)。
【0177】
(配合例D)
経口投与用錠剤の調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 10mg
デンプン 45mg
微結晶性セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン(10重量%水溶液) 4mg
カルボキシメチルデンプンナトリウム塩 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
タルク 1mg
代表的調剤法: 本発明の化合物、デンプンおよびセルロースをNo.45メッシュ米国ふるいにかけ、通過したものをよく混合する。得られた粉末にポリビニルピロリドン溶液を混合し、その混合物をNo.14メッシュ米国ふるいにかけ、通過させる。得られた顆粒を50〜60℃で乾燥したのち、No.18メッシュ米国ふるいにかけ、通過させる。にかけカルボキシメチルデンプンナトリウム塩、ステアリン酸マグネシウムおよびタルク(あらかじめNo.60メッシュ米国ふるいを通過させたもの)を顆粒に加える。混合し、得られた混合物を打錠機にかけて錠剤に成形し、重さ100mgの錠剤を得る。
【0178】
(配合実施例E)
経口投与用錠剤の調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 250mg
微結晶性セルロース 400mg
フュームド二酸化ケイ素 10mg
ステアリン酸 5mg
代表的調剤法: 配合成分をよく混合したのち、打錠機にかけて錠剤にする(錠剤当たり組成物665mg)。
【0179】
(配合実施例F)
経口投与用単溝入り錠剤の調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 400mg
コーンスターチ 50mg
クロスカルメロース 25mg
乳糖 120mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
代表的調剤法: 配合成分をよく混合したのち、単溝入り錠剤打錠機にかけて錠剤に成形する(錠剤当たり組成物600mg)。
【0180】
(配合実施例G)
経口投与用懸濁液の調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 1.0g
フマル酸 0.5g
塩化ナトリウム 2.0g
マチルパラベン 0.15g
プロピルパラベン 0.05g
顆粒糖 25.5g
ソルビトール(70%溶液) 12.85g
Veegum k(Vanderbilt Co.) 1.0g
フレーバリング 0.035mL
着色剤 0.5mg
蒸留水 添加して100mLとする
代表的調剤法: 配合成分を混合して、懸濁液10mL当たり有効成分100mgを含む懸濁液とする。
【0181】

(配合例H)
吸入投与用乾燥粉末の調製は次のとおりである:
成分 量
本発明の化合物 0.2mg
乳糖 25mg
代表的調剤法: 本発明の化合物を微粉末にしたのち乳糖と混合する。得られた混合物をゼラチン製吸入カートリッジに充填する、カートリッジ内容物は、粉末吸入器を使って投与される。
【0182】
(配合例I)
乾燥粉末吸入器で使用される乾燥粉末製剤の調製は次のとおりである:
代表的調剤法: 本発明の化合物を微粉末化したものと乳糖のバルク配合比が1:200の医薬組成物を調製する。調製した組成物を、1回使用当たり約10〜約100μgを送達できる乾燥粉末吸入器に詰める。
【0183】
(配合例J)
計量式吸入器による吸入投与用乾燥粉末の調製は次のとおりである:
代表的調剤法: レシチン0.2gを脱イオン水200mLに溶解して調製した溶液に、平均粒子経が10μm未満になるまで微粉末化した本発明の化合物10gを分散させて、本発明の化合物を5重量%およびレシチン0.1重量%含む懸濁液を調製する。懸濁液をスプレードライヤーで乾燥して乾燥粉末となし、得られた粉末を平均粒子経が1.5μm未満になるまでさらに微粉末化する。加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンと一緒に粒子をカートリッジに充填する。
【0184】
(配合例K)
計量式吸入器で使用するための医薬組成物の調製は次のとおりである:
代表的調剤法: テトラハロース0.5gおよびレシチン0.5gを脱イオン水に溶かしてなるコロイド溶液に、微粒子化して平均粒子経を10μm未満とした有効成分5gを分散させて、本発明の化合物を5%、レシチンを0,5%、トレハロースを0.5%含む懸濁液を調製する。懸濁液をスプレードライヤーで乾燥して乾燥粉末となし、得られた粉末を平均粒子経が1.5μm未満になるまでさらに微粉末化する。加圧した1,1,1,2−テトラフルオロエタンと一緒に粒子をカニスターに充填する。
【0185】
(配合例L)
噴霧式吸入器で使用するための医薬組成物の調製は次のとおりである:
代表的調剤法: クエン酸で酸性にした0.9%塩化ナトリウム溶液1mLに、本発明の化合物0.1mgを溶解して、噴霧器で使用するための水性エアロゾル配合物を調製する。得られた混合物を攪拌しながら超音波を照射して、有効成分を溶解する。NaOH溶液をゆっくり加えて溶液のpHを約5とする。
【0186】
(配合例M)
注射用配合物の調製は次のとおりである。
成分 量
本発明の化合物 0.2g
酢酸ナトリウム緩衝液(0.4M) 2.0mL
HCl(0.5N)またはNaOH(0.5N) 適量加えてpH4とする
滅菌蒸留水 添加して20mLとする
代表的調剤法: 上記成分を混合し、0.5N HClまたは0.5N NaOHを加えてpHを4±0.5となるよう調節する。
【0187】
(有用性)
本発明の置換ピロリジンおよびその関連化合物は、ムスカリン受容体拮抗物質として有用であり、それゆえ、そのような化合物はムスカリン受容体が関係する医学的状態、すなわち、ムスカリン受容体拮抗物質で治療することによって改善される医学的状態を治療するために有用である。このような医学的状態として、たとえば、気道障害、たとえば慢性閉塞性肺疾患、喘息、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏、尿生殖路障害、たとえば膀胱過活動または排尿筋過敏症および膀胱排尿筋症候群、胃腸管障害、たとえば過敏性腸管症候群、憩室異常症、無弛緩症、胃腸運動過度および下痢、心臓不整脈、たとえば洞性頻脈、パーキンソン病、認知症、たとえばアルツハイマー病、月経不順などを挙げることができる。
【0188】
一つの実施形態において、本発明の化合物は、ヒトのほか、愛玩動物(たとえばイヌ、ネコなど)を含む哺乳動物の平滑筋障害の治療に有用である。このような平滑筋障害の例としては、膀胱の過活動、慢性閉塞性肺疾患および過敏性超症候群などがある。
【0189】
平滑筋障害、またはムスカリン受容体が関係するその他の状態の治療に使用する場合、通常、本発明の化合物は、経口、経直腸、非経口または吸入によって、1日に1回または複数回投与される。1回当たり投与される有効成分の量または1日に投与される総量は、普通、主治医によって決定され、患者の状態の特徴や程度、治療対象となる状態、患者の年齢および全般的健康状態、有効成分に対する患者の忍容度、投与経路など、さまざまな要因によって左右される。
【0190】
一般に、平滑筋障害、またはムスカリン受容体が関係するその他の状態の治療に適する用量は、約0.15μg/kg/日〜5mg/kg/日を含み、約0.14μg/kg/日〜7mg/kg/日である。平均的な70kgのヒトに対しては、この有効成分の適量は1日当たり約10μg〜約500mgとなろう。
【0191】
一つの具体的な実施形態において、本発明の化合物は、ヒトを含め、哺乳動物の呼吸器疾患、たとえばCOPDまたは喘息の治療に有用である。呼吸器疾患の治療に使用する場合、本発明の化合物は、普通、1日に複数回、1日に1回、または1週間に1回の割合で吸入投与される。一般的に言って、呼吸器疾患の治療に使用される用量は、約10μg/日〜約200μg/日であろう。
【0192】
呼吸器疾患の治療に使用する場合、本発明の化合物は、任意選択的に他の治療薬、たとえばβアドレナリン受容体作動物質、コルチコイド、非ステロイド系抗炎症薬またはそれらの組み合わせと組み合わせて投与される。
【0193】
別の一つの実施形態において、本発明の化合物は膀胱過活動の治療に使用される。膀胱過活動の治療に使用される場合、本発明の化合物は、通常、経口により、1日に1回または1日に複数回、好ましくは1日に1回投与される。膀胱過活動の治療に使用される用量は、好ましくは約1.0mg/日〜約500mg/日であろう。
【0194】
さらに別の一つの実施形態において、本発明の化合物は過敏性腸症候群の治療に使用される。過敏性腸症候群の治療に使用される場合、本発明の化合物は、通常、経口または経直腸により、1日に1回または1日に複数回、好ましくは1日に1回投与される。膀胱過活動の治療に使用される用量は、好ましくは約1.0mg/日〜約500mg/日であろう。
【0195】
本発明の化合物はムスカリン受容体拮抗物質であるため、そのような化合物はムスカリン受容体を有する生物系または生物試料を調べるための研究手段としても有用である。このような生物系または試料は、M1、M、M3、Mおよび/またはMムスカリン受容体を含んでいてもよい。ムスカリン受容体を有する適当な生物系または生物試料であれば、このような研究に使用することができ、in vitroまたはin vivoのいずれかで行うことができよう。そのような研究に適する代表的な生物系または生物試料としては、たとえば細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織試料、哺乳動物(マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタなど)を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0196】
この実施形態において、ムスカリン受容体を含む生物系または生物試料と、ムスカリン受容体と拮抗する量の本発明の化合物とを接触させる。それから、通常の手順と機器、たとえば放射性リガンド結合アッセイおよび機能アッセイを使って、ムスカリン受容体が拮抗する効果を決定する。そのような機能アッセイには、リガンドを介して生じる細胞内環状アデノシン一リン酸(cAMP)の変化、リガンドを介して生じる酵素アデニリルシクラーゼ(cAMPを合成する酵素)の活性の変化、受容体によって触媒されるグアノシン5’−O−(γ−チオ)三リン酸([35S]GTPγS)とGDPとの交換を経由する、リガンドを介して生じる、分離された膜への[35S]GTPγSの取り込みの変化、リガンドを介して生じる細胞内遊離カルシウムイオンの変化(たとえば、蛍光とリンクした画像プレートリーダーまたはMolecular Device,Inc.のFLIPRで測定される)などがある。本発明の化合物は、前記機能的アッセイのいずれにおいても、あるいは性格の似たアッセイにおいて、ムスカリン受容体の活性化に拮抗するか低下させる。本発明の化合物のムスカリン受容体に拮抗する量は、通常、約0.1ナノモル〜約100ナノモルである。
【0197】
また、本発明の化合物は、ムスカリン受容体拮抗活性を有する新規化合物を発見するための研究用ツールとして使用できる。この実施形態において、ほぼ同等か、それ以上のムスカリン受容体結合力を有する試験化合物を確認するために、試験化合物または試験化合物群のスカリン受容体結合力データ(たとえば、in vitroの放射性リガンド置換アッセイによって決定)と、本発明の化合物のムスカリン受容体結合力データとの比較が行われる。発明のこの面には、対象となる試験化合物を確認するため、(適当なアッセイによる)比較データの発生と試験データの分析の両方が別個の実施形態として含まれる。
【0198】
本発明の化合物は、その他の性質の中で、Mムスカリン受容体活性を阻害する強力な阻害剤であることが発見された。従って、具体的な実施形態において、本発明は、M3ムスカリン受容体サブタイプに対する阻害解離定数(in vitroの放射性リガンド置換アッセイによって決定)が100nM以下、または50nM以下、または10nM以下である、式Iの化合物に関する。
【0199】
また、本発明の化合物は、吸入投与した場合に、予想外に長い気管支保護持続時間を有することも発見された。従って、別の一つの具体的な実施形態において、本発明は、吸入投与した場合に、気管支保護持続時間が、約24時間〜約72時間を含め、約24時間より長い式Iの化合物に関する。「気管支保護持続時間」という用語は、ある化合物が、アセチルコリンによって気管支の収縮を誘発させたモルモットのモデルに気管支保護効果を発揮する時間的長さを意味する。
【0200】
さらに、本発明の化合物は、吸入投与した場合に、予想外に大きな肺選択性を有することも発見された。従って、別の一つの具体的な実施形態において、本発明は、吸入投与から1.5時間後、または24時間後の見かけの肺選択性指数が10を超える式Iの化合物に関する。「見かけの肺選択性指数」という用語は、(a)抗唾液分泌促進剤ID0(ピロカリピンによって誘発される唾液の分泌を50%抑制するために必要な投与量)と、気管支保護ID0(アセチルコリンによって誘発される気管支収縮を50%抑制するために必要な投与量)との比か、(b)抗降圧剤ID0(メタコリンによって誘発される平均動脈圧低下を50%抑制するために必要な投与量)と、気管支保護ID0(アセチルコリンによって誘発される気管支収縮を50%抑制するために必要な投与量)との比を意味する。
【0201】
本発明の化合物の有用性に加えて、これらの性質は、当業者によく知られたさまざまなin vitroおよびin vivoのアッセイによって示すことが可能である。例として、代表的なアッセイは、下記「実施例」の中で詳しく説明される。
【実施例】
【0202】
本発明をさらに例示するため、以下に合成例および生物学的な実施例を記載するが、これによって本発明の範囲を限定するものではない。下記実施例で使用される略語の意味は、特に断らない限り、以下のとおりである。下記に記載されていない略語は、広く認められている意味を持つ。
AC=アデニルシクラーゼ
ACN=アセトニトリル
BSA=ウシ血清アルブミン
BOC=tert−ブトキシカルボニル
cAMP=環状アデノシン一リン酸
CHO=チャイニーズハムスター卵巣
cpm=1分当たりカウント数
DCM=ジクロロメタン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DME=エチレングリコールジメチルエーテル
DMF=N,N−ジメチルホルマミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
dPBS=ダルベッコのCaClおよびMgCl無添加生理食塩水
EDC=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジミド塩酸塩
EDDA=エチレンジアミン四酢酸
EtOAc=酢酸エチル
FBS=ウシ胎児血清
GDP=グアノシン5’−二リン酸
HEPES=4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジン−エタンスルホン酸
hM1=ヒトムスカリン受容体サブタイプ1
hM=ヒトムスカリン受容体サブタイプ2
hM=ヒトムスカリン受容体サブタイプ3
hM=ヒトムスカリン受容体サブタイプ4
hM=ヒトムスカリン受容体サブタイプ5
HOAT=1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HPLC=高性能液体クロマトグラフィ
Ki=阻害解離定数
MS=質量分析
MTBE=メチル=tert−ブチル=エーテル
H]NMS=l−[N−メチル−H]スコポラミン=メチルクロミド
OIS=オキソトレモリン誘発唾液分泌
PMB=p−メトキシベンジル
PyBOP=ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピポリジノホスホニウム=ヘキサフルオロホスフェート
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィ
TFA=トリフルオロ酢酸。
【0203】
下記実施例に記載されている温度は、特に断らない限り、すべて摂氏(℃)で表示されている。また、試薬、出発物質および溶媒は、特に断らない限り、市販品(Aldrich、Fluka、Sigmaなど)を購入し、特に精製しないで使用した。
【0204】
(実施例A)
2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミドの合成
工程A: (S)−1−ベンジル−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ピロリジン合成
(S)−1−ベンジル−3−ピロリジノール(44.3g、0.25mol)および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(33.7g、0.3mol)をtert−ブチルメチルエーテル250mLに溶かした溶液に窒素雰囲気下、0℃でp−トルエンスルホニルクロリド(52.4g、0.275mol)を少しずつ20分かけて加えた。反応混合物を0℃1時間攪拌した。氷浴を取り去り、混合物を室温で一昼夜(20±5時間)攪拌した。酢酸エチル(100mL)を加え、つづいて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL)を加えた。生成した混合物を室温で1時間攪拌した。相を分離し、有機相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(250mL)、飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(250mL)で洗浄し、それから硫酸ナトリウム(80g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、酢酸エチル(20mL)で洗浄し、溶媒を減圧留去して、淡灰白色固体として標題中間体78.2gを得た(収率94%; HPLCによる純度95%)。
【0205】
工程B: (S)−1−ベンジル−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジンの合成
ジフェニルアセトニトリル(12.18g、61.8mmol)の無水THF(120mL)溶液に、攪拌しながら0℃でカリウムtert−ブトキシド(10.60g、94.6mmol)を5分間かけて加えた。反応混合物を0°で1時間攪拌した。混合物に0℃で(S)−1−ベンジル−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)ピロリジン(20.48g、61.3mmol)を一度に加えた。氷浴を取り去り、反応混合物を510分間攪拌した。この間に反応混合物は褐色の均一溶液に変化した。つづいて、反応混合物を40℃に一昼夜(20±5時間)加熱した。反応混合物(鮮やかな黄色懸濁液)を室温まで冷却したのち、水を加えた(150mL)。大部分のTHFを減圧留去したのち、酢酸イソプロピル(200mL)を加えた。相を分離し、有機相を飽和塩化アンモニウム水溶液(150mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄し、それから硫酸ナトリウム(50g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、酢酸イソプロピル(20mL)で洗浄し、溶媒を減圧留去し、淡褐色油状物として標題中間体23.88gを得た(収率>99%; HPLCによる純度75%、主として過剰ジフェニルアセトニトリルが不純物として含まれる)。
【0206】
工程C: (S)−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジンの合成
(S)−1−ベンジル−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジンを酢酸イソプロピル(約1g/10mL)を溶解し、得られた溶液に等体積の1N塩酸を混合物した。生成した相を分離し、水相を等体積の酢酸イソプロピルで抽出した。有機相を一つに合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し濾過した。溶媒を減圧留去し、(S)−1−ベンジル−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジン塩酸塩を淡黄色の多孔質固体を得た(注:この塩酸塩は工程(B)の後処理工程でも調製することができる)。
【0207】
(S)−1−ベンジル−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジン塩酸塩(8.55g、21.98mmol)のメタノール(44mL)溶液に攪拌しながら、Pd/C(1.71g)およびギ酸アンモニウム(6.93g、109.9mmol)を加えた。反応混合物を攪拌しながら50℃に3時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却して水(20mL)を加えた。得られた混合物をCelite層を通して濾過し、メタノール(20mL)で洗浄した。濾液を集めて、大部分のメタノールを減圧留去した。残留物に酢酸イソプロピル(100mL)および10%炭酸ナトリウム水溶液(50mL)を混合した。得られた相を分離し、水相を酢酸イソプロピル(50mL)で抽出した。有機相を合わせて硫酸ナトリウム(20g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、酢酸イソプロピル(20mL)で洗浄した。溶媒を減圧留去し、淡褐色油状物として標題中間体5.75gを得た(収率99.7%; HPLCによる純度71%)。
【0208】
工程D: 2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド
磁気攪拌子および窒素ガス導入管を備えた200mLフラスコに、(S)−3−(1−シアノ−1,1−ジフェニルメチル)ピロリジン(2.51g)および80%硫酸(19.2mL;96%HSO 16mLとHO 3.2mLとから調製)を入れた。反応混合物を90℃に24時間加熱し、HPLCで出発物質が消費されたことを確認した。反応混合物を室温まで冷却したのち、氷(体積で約50mL)の上に注加した。攪拌しながら、50%水酸化ナトリウム水溶液を氷浴中の混合物に、pH約12を示すまでゆっくり加えた。ジクロロメタン(200mL)を加えて水溶液と混合した。析出した硫酸ナトリウムを濾去した。濾液を集め、相を分離した。水相をジクロロメタン(100mL)で抽出し、有機相を合わせて硫酸ナトリウム(5g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、ジクロロメタン(10mL)で洗浄した。溶媒を減圧留去し、淡黄色の多孔質固体として粗生成物を得た(約2.2g; HPLCによる純度86%)。
【0209】
攪拌しながら粗生成物をエタノール(18mL)に溶解した。L−酒石酸(1.8g)をエタノール(14mL)に溶かした温溶液をこの溶液に溶かし、生成した混合物を一昼夜(15±5時間)攪拌した。生成した沈殿を濾過により分離し、灰白色固体を得た(約3.2g; HPLCによる純度>95%)。この固体にメタノール(15mL)を加え、生成したスラリーを70℃に一昼夜(15時間)攪拌した。スラリーを室温まで放冷し、白色固体を濾取した(〜2.6g; HPLCによる純度>99%)。この固体に酢酸エチル(30mL)および1N 水酸化ナトリウム水溶液を加えた(25mL)。はっきりした2相を形成するまでこの混合物を混合したのち、形成した相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した(20mL)。有機相を合わせて硫酸ナトリウム(10g)で乾燥した。硫酸ナトリウムを濾去し、溶媒を減圧留去し、灰白色の多孔質固体として中間体を得た(収率58%; HPLCによる純度>99%)。
【0210】
(実施例1)
2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程A: 8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オールの合成
8−ブロモ−1−オクタノール(25g、119.6mmol)のアセトニトリル(50mL)溶液を、N−ベンジル−N−メチルアミン(43,49g、358.9mmol)および炭酸カリウム(49.52g、358.9mmol)のアセトニトリル(250mL)の攪拌溶液に35℃で加えた。反応混合物を35℃で7時間攪拌したのち、室温まで冷却した。炭酸カリウムを濾去し、濾液を減圧濃縮した。粗製残留物をMTBE(400mL)に溶解して有機相を水および食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥した。N−メチル−2−ピロリドンを加え、混合物を減圧濃縮して過剰N−ベンジル−N−メチルアミンを除いた。MTBE(400mL)を加え、有機相を水および食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過後、減圧濃縮し、標題中間体を油状物として得た(変換率〜100%)。
分析データ:MS m/z250.3(MH)。
【0211】
工程B: 8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタナール
工程Aで合成した中間体(20g、80mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に攪拌しながら、−10℃でジメチルスルホキシド(22.71mL、320mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(55.74mL、320mmol)を加えた。反応混合物を−10℃で30分間攪拌したのち、三酸化硫黄・ピリジン錯体(38g、240mmol)を少しずつ加えた。反応混合物を−10℃でさらに1時間攪拌した。有機相を分離し、水(200mL)および食塩水(30mL)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥したのち、減圧濃縮した。トルエン(100mL)を加え、減圧留去し、標題中間体を油状物として得た(変換率〜100%)。
【0212】
工程C: 2−[(S)−1−(8−N−ベンジル−N−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程Bで合成した中間体(5.95g、24mmol)および2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(7.4g、26.4mmol)のジクロロメタン(250mL)溶液を0℃で冷却し、10分間攪拌した。0℃でナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(8.4g、36mmol)を少しずつ加え、反応混合物を室温で4時間攪拌した。ジクロロメタンを加え、有機相を炭酸水素ナトリウム(2回)、塩化ナトリウム水溶液(1回)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮した。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィ(DCM/MeOH/NHOH=90/9/1)で精製し、油状物として標題中間体9g(収率75%)を得た。
分析値;MSm/z512.8(MH)。
【0213】
工程D: 2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程Cで合成した中間体(9g、17.6mmol)の酢酸(170mL)溶液に窒素雰囲気下、攪拌しながらPd/C(10重量%、600mg)および酸化パラジウム/C(20重量%、湿潤、600mg)を加えた。反応混合物を3回窒素置換したのち、水素を入れた風船を取り付けて3日間室温で反応させた。反応混合物をCeliteを通して濾過し、酢酸で洗浄し、溶媒を減圧留去した。残留物をHPLC既製カラムで精製し、油状ビストリフルオロ酢酸塩として標題化合物を4.02g(収率35%)を得た。
分析値;MSm/z422.2(MH)。
【0214】
別法として、標題化合物を次のようにして合成した。
工程A: 8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オールの合成
8−ブロモ−1−オクタノールから: 250mLフラスコに、N−ベンジル−N−メチルアミン(24.3g、200mmol)、炭酸カリウム(28g、200mmol)、8−ブロモ−1−オクタノール(14g、67mmol)、およびアセトニトリル(150mL)を入れた。この反応混合物を35〜40℃で5時間攪拌した。固体物質を濾過し、高真空下に濾液を蒸留し、過剰N−ベンジル−N−メチルアミンを除去し、油状物を得た。油状残留物をMTBE150mLに溶かし、15%塩化アンモニウム溶液(2×100mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム20gで乾燥、濾過し、真空蒸留して標題中間体を油状物として得た(収率79%)。
【0215】
8−クロロ−1−オクタノールから: 2Lフラスコに、ベンジルメチルアミン(270g、2.23mol)、炭酸ナトリウム(157g、1.48mol)、ヨウ化ナトリウム(11.1g、0.074mmol)、8−クロロオクタノール(122g、0.74mmol)、およびアセトニトリル(1000mL)を入れ、生成した懸濁液を80℃で20〜30時間攪拌した。次ぎに、液量が約500mLになるまで、反応混合物を濃縮し、水(600mL)およびtert−ブチルメチルエーテル(1000mL)を加えた。MTBE相を分離し、水(500mL)で洗浄した。MTBE溶液を減圧蒸留によって濃縮し、油状物を得た。この油状物を高真空下でさらに濃縮し、過剰のベンジルメチルアミンを除去した。次ぎに、残留油状物にN−メチル−2−ピロリドン(300mL)を加え、得られた溶液を高真空下で蒸留して油状物を得た。油状物をMTBE(1000mL)に溶かし、得られた溶液を水(2×500mL)、食塩水(500mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(100g)で乾燥、濾過し、蒸留により濃縮し、標題化合物を油状物として得た(178g、収率96%、純度>95%)。
【0216】
工程B: トルエンスルホン酸=8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタン−1−イルエステルの合成
250mLフラスコに、工程Aで合成した中間体(10g)、DABCO(6.72g)およびMTBE(100mL)を入れた。反応混合物を<10℃まで冷却し、トルエンスルホニルクロリド(9.2g)をMTBE 60mLに溶かした溶液を<15℃で加えた。この反応混合物を室温で2時間攪拌したのち、ヘプタン(40mL)を加え、混合物を濾過した。濾液を減圧下に蒸留して標題中間体16gを油状物として得た(収率99%)。
【0217】
工程C: 2−[(S)−1−(8−N−ベンジル−N−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
窒素ガス導入口を備えた1000mLフラスコに、工程Bで合成した中間体(16g)、2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(10g)、ジイソプロピルエチルアミン(10.3g)およびアセトニトリル(200mL)を入れた。反応混合物を45〜50℃で20時間攪拌したのち、無水酢酸(2g)を加え、混合物を室温で2時間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテル(300mL)および水(400mL)を加え、MTBE相を分離して、水(2×150mL)、つづいて1N HCl(1×150mL)で洗浄した。水相を分離し、MTBE(3×100mL)で洗浄したのち、27%アンモニア水でpH>12の塩基性にした。塩基性の相をMTBE(2×200mL)で抽出し、MTBE相を水(200mL)、食塩水(200mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(20g)で乾燥後、濾過し、蒸留して、標題化合物16.5gを油状物として得た(収率90%)。もし望めば、この反応をN−メチルピロリドン溶媒中で行うこともできる。また、ジイソプロピルエチルアミンの代わりに炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムを使用することができ、反応混合物中に、任意選択的にヨウ化ナトリウムを添加することもできる。
【0218】
工程D: 2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
250mLフラスコに、工程Cで合成した中間体(24g)、Pd/C(10%Pd/C、水を50%含有、5.3g)、イソプロピルアルコール(160mL)および3M HCl溶液(30mL)を入れた。反応混合物を窒素で脱ガスを行い、それから室温で16時間水素化(45〜50psi)した。混合物をCeliteを通して濾過し、濾液を液量が約50mLになるまで蒸留した。残留物を1N HCl(100mL)に溶解し、ジクロロメタン(2×100mL)で洗浄した。アンモニア水を加えて、水相のpHを>12に調整したのち、MTBE(2×150mL)で抽出した。つづいて、MTBE溶液を水(100mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(30g)で乾燥後、濾過し、高真空下で蒸留、乾燥し、標題化合物16.5gを得た(収率91%)。
【0219】
別法として、標題化合物を次のようにして合成した。
【0220】
工程A: 8,8−ジメトキシオクタナールの合成
1Lフラスコにシクロオクテン(50g)、メタノール(250mL)およびジクロロメタン(250mL)を入れた。溶液に−70℃でオゾンを8時間導入した。つづいて、トルエンスルホン酸(3g)を添加し、反応混合物を−70℃で6時間攪拌した。つづいて、炭酸水素ナトリウム(20g)を加え、反応混合物を−60℃でさらに2時間攪拌した。最後に、亜硫酸ジメチル(56g)を−60℃で加え、反応混合物を室温で16時間攪拌した。生成した固体を濾過し、濾液を蒸発させて油状物を得た。油状物をジクロロメタン(300mL)に溶解し、1%炭酸水素ナトリウム(2×150mL)で洗浄した。つづいて、ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム(50g)で乾燥し、濾過し、蒸留して標題中間体60.3gを油状物として得た(収率71%)。
【0221】
工程B: 2−[(S)−1−(8−オキソオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
100mLフラスコに2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(2.8g)、8,8−ジメトキシオクタナール(2.1g)およびジクロロメタン(20mL)を入れ、この混合物を室温で1時間攪拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.18g)を加え、反応混合物を室温で14時間攪拌した。つづいて、5%炭酸水素ナトリウム溶液を加えて、この混合物を0.5時間攪拌した。相を分離し、水相をジクロロメタン(20mL)で抽出した。ジクロロメタン溶液を合わせ、体積が約20mLになるまで濃縮し、シリカゲル層(10g)を通して濾過し、ジクロロメタンに溶かした10%メタノール(100mL)で洗浄した。生成物溶液を濃縮して油状物とし、さらに油状物をアセトニトリル50mLに溶かし、1%HCl(30mL)と16時間攪拌した。混合物に28%アンモニア水を加えて混合物のpHをおよそ>12としたのち、MTBEで抽出した(2×100mL)。MTBE相を食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(10g)で乾燥後、濾過し、真空下に濃縮して標題中間体3.8gを油状物として得た(収率93%)。
【0222】
工程C: 2−[(S)−1−(8−N−ベンジル−N−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
窒素ガス導入口を備えた100mLフラスコに、工程Bで合成した中間体(3g)、N−ベンジル−N−メチルアミン(2.1g)およびジクロロメタン(20mL)を入れ、この混合物を室温で1時間攪拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.18g)を加え、反応混合物を室温で14時間攪拌した。つづいて、5%HCl 50mLを加えて反応を停止させ、生成した混合物を0.5時間攪拌した。相を分離し、水相をジクロロメタン(20mL)で洗浄した。水相に50%水酸化カリウムを加えて液のpHを>13とし、MTBE(2×100mL)で抽出した。MTBE抽出液を合わせ、食塩水(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(10g)で乾燥後、濾過し、濃縮して標題中間体2.8gを油状物として得た(収率75%)。工程Dに記載した手順を使用して、この中間体を標題化合物に変換した。
【0223】
別法として、下記手順を使用すれば標題化合物をナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩として合成することができる。
【0224】
工程A: 8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オール
1Lフラスコに8−(ベンジルメチルアミノ)オクタン−1−オール(49g、0.20mmol)、イソプロピルアルコール(400mL)、2N 塩酸(100mL)および活性炭(5g、DARCO)を入れ、混合物を30分間攪拌した。つづいて、混合物を濾過して活性炭を除去し濾液にPd/C(5g、乾燥重量で10%)を加えた。得られた混合物を窒素で3回脱ガスし、つづいて水素で2回脱ガスした。それから、Parr社製振盪機を使用し、混合物を水素圧20〜30psiで12〜24時間水素化した。つづいて、混合物をCelite 20gの相を通して濾過し、蒸留して約100mLまで濃縮した。イソプロピルアルコール(200mL)を加え、溶液を真空蒸留して再度約100mLまで濃縮した。この手順をさらに2回くり返し、8−メチルアミノオクタン−1−オール塩酸塩を含む溶液を得た。
【0225】
1Lフラスコに上で得た8−メチルアミノオクタノール塩酸塩のイソプロピルアルコール溶液およびトリエチルアミン(30.3g、0.30mol)を入れ、この混合物にジ−tert−ブチルジカーボネート(48g、0.22mol)を何回かに分けて加えた。生成した混合物を室温で2〜5時間攪拌し、それから混合物を、液量が約300mLになるまで濃縮した。水(200mL)および酢酸エチル(400mL)を加え、この混合物を15分間攪拌した。つづいて、有機相を分離し、水(300mL)、食塩水(300mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(50g)で乾燥後、濾過し、溶媒を減圧留去して標題化合物を淡黄色油状物として得た(40g、収率77%、純度〜95%)。
【0226】
工程B: トルエン−4−スルホン酸=8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチルエステル
250mLフラスコ中、工程Aで合成した生成物(5.2g、20mmol)およびDABCO(3.13g、2.8mmol)をMTBE(30mL)に溶かした溶液を約10℃まで冷却し、反応混合物の温度を20℃以下に維持しながら、p−トルエンスルホニルクロリド(4.2g、22mmol)のMTBE溶液を加えた。つづいて、生成した溶液を室温で2時間攪拌した。水(100mL)を加え、混合物を15分間攪拌した。有機相を分離し、水(100mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、蒸留して濃縮し、標題化合物を油状物として得た。
【0227】
工程C: 2−{(S)−1−[8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド
500mLフラスコに、工程Bで合成した生成物(17.68g、43mmol)、合成1で得られた生成物(12g、43mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(16.55g、128mmol)およびアセトニトリル(100mL)を加えた。生成した混合物を60〜65℃で5〜7時間攪拌し、それから室温まで冷却した。溶媒を減圧留去したのち、酢酸イソプロピル(100mL)を加えて残留物を溶解した。生成した溶液を水(100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)、食塩水(100mL)で洗浄し、MgSO(5g)で乾燥し、濾過して橙色溶液を得た。
【0228】
シリカゲル層(115g、280〜400メッシュ)を、トリエチルアミンを1%含有する酢酸イソプロピル400mLで、それから酢酸イソプロピル250mLであらかじめ処理した(シリカゲル層は直径が約6.4cm、高さが約10.2cm)。上で得た濾液をあらかじめ処理したシリカゲル層に直接注加し、酢酸エチル(400mL)で溶離し、つづいてイソプロピルアルコールを20%含む酢酸イソプロピル(1000mL)で溶離した。生成物フラクションを一つに合わせて濃縮し、標題化合物を油状物として得た(17.16g、収率77%、純度97%)。
【0229】
工程D: 2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド=ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩
1000mLフラスコに工程Cで合成した生成物(9.88g、19mmol)、1,5−ナフタレンスルホン酸四水和物(13.69g、38mmol)および水を3%(497mL)含むイソプロピルアルコールを加えた。この混合物を85℃に3〜5時間加熱し、それから4時間かけてゆっくり室温まで冷却し、さらに室温で12〜24時間攪拌した。生成した固体を濾過し、水を3体積%含むイソプロピルアルコール(400mL)で洗浄し、室温で10〜15時間真空乾燥し、標題化合物を結晶性固体として得た(12.59g、収率95%、純度〜99%)。
【0230】
もし望めば次のようにして、この塩をさらに精製することができる:
1Lフラスコに2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド=ナフタレン−1,5−ジスルホン酸塩(21.4g、30.1mmol)および水を3%(637mL)含むイソプロピルアルコールを加えた。生成したスラリーを80℃で2時間攪拌し、それからゆっくり室温まで冷却し、さらに室温で12時間攪拌した。生成した結晶性固体を濾過し、イソプロピルアルコール(600mL)で洗浄し、室温で16時間真空および窒素下で乾燥し、標題化合物を白色結晶性固体として得た(20.4g、収率96%)。
【0231】
(実施例2)
2−[(S)−1−(8−イソプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程A: 2−[(S)−1−(8−ヒドロキシオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(2.8g、10mmol)およびトリエチルアミン(4.27mL、30mmol)をアセトニトリル(90mL)に溶解した溶液に、攪拌しながら8−ブロモ−1−オクタノール(2.51g、12mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液を40℃で加えた。反応混合物を55℃で16時間攪拌したのち、室温まで冷却した。溶媒を減圧留去した。粗製残留物を酢酸エチル(100mL)に溶解して有機相を飽和炭酸水素ナトリウム(50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し、減圧濃縮した。粗製生成物をフラッシュクロマトグラフィ(溶離液:DCM/MeOH/NHOH=90/9/1)によって生成し、標題中間体1.8gを油状物として得た(収率44%)。
【0232】
工程B: 2−[(S)−1−(8−オキソオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程Aで合成した中間体(1.8g、4.4mmol)のジクロロメタン(44mL)溶液に、攪拌しながら、0℃でジメチルスルホキシド(1.57mL、22.1mmol)、つづいてジイソプロピルエチルアミン(3.85mL、22.1mmol)を加えた。反応混合物を−10℃で15分間攪拌したのち、三酸化硫黄・ピリジン錯体(2.1g、13.2mmol)を加えた。反応混合物を−10°でさらに2時間攪拌した。水(50mL)およびDCM(50mL)を加えたのち、有機相を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(2×30mL)、飽和硫酸銅(II)水溶液(2×15mL)および食塩水(30mL)で洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して標題中間体1.5gを油状物として得た(収率84%)。
【0233】
工程C: 2−[(S)−1−(8−イソプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程Bで合成した中間体(40.6mg、0.1mmol)およびイソプロピルアミン(10.2μL、0.12mmol)のジクロロメタン(1mL)溶液を室温で1時間攪拌したのち、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(35.1mg、1.5mmol)を加えた。反応混合物を16時間攪拌したのち、溶媒を減圧留去した。残留物をフラッシュクロマトグラフィで精製し、標題化合物をビストリフルオロ酢酸塩として得た。
分析値:MSm/z450.3(MH
本明細書に記載する手順および該当する出発物質を使って表IVに記載する化合物を合成した。
【0234】
【表4−1】

【0235】
【表4−2】

さらに、本明細書に記載する手順および該当する出発物質を使って表Vに記載する化合物を合成した。
【0236】
【表5−1】

【0237】
【表5−2】

【0238】
【表5−3】

【0239】
【表5−4】

(比較実施例A)
2−[(S)−1−(8−ジメチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
乾燥した50mL丸底フラスコに2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(200mg、0.714mmol)およびクロロホルム(20mL)を入れ、それから窒素でフラスコ内の空気を置換した。ジメチルアミン(535μL、1.071mmol)を添加し、つづいて1,8−ジブロモオクタン(131μL、0.714mmol)を滴下した。反応混合物を50℃まで昇温し、約60時間攪拌した。黄色の均一混合物を室温まで冷却し、1.0M 塩酸で抽出し、蒸留し立てのクロロホルムで洗浄した。酸性の水相に酢酸エチルを加え、混合物を10.0M 水酸化ナトリウム水溶液でpH13の塩基性とした。塩基性水相を酢酸エチル(2×15mL)でさらに抽出した。有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過したのち、蒸発させ粗生成物を得た。粗生成物(223.0mg)を分取HPLCで精製し、凍結乾燥して標題化合物を白色吸湿性固体のビス(トリフルオロ酢酸)塩として得た。
分析データ:MSm/z436.4(C2841O+H); 計算値426.3。
【0240】
(比較実施例B)
2−[(S)−1−(9−ジメチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
本明細書に記載の手順および出発物質を使用して標題化合物を白色吸湿性固体のビス(トリフルオロ酢酸)塩として合成した。
分析データ:MSm/z450.4(C2943O+H);計算値450.3。
【0241】
(比較実施例C)
2−[(S)−1−(8−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
本明細書に記載の手順および出発物質を使用して標題化合物を白色吸湿性固体のビス(トリフルオロ酢酸)塩として合成した。
分析データ:MSm/z480.2;計算値480.4。
【0242】
(比較実施例D)
2−[(S)−1−(8−アミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
工程A: 2−[(S)−1−(8−ブロモオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
2,2−ジフェニル−2−(S)−ピロリジン−3−イルアセタミド(1.2g、0.004mol)およびジイソプロピルエチルアミン(0.74mL、0.004mol)をアセトンとDMFの1:1(v/v)混合物(20mL)に溶かした溶液に1,8−ジブロモオクタン(0.99mL、0.005mol)を加えた。混合物を40℃に5時間加熱した後、蒸発乾固し、ジクロロメタン(20mL)で希釈した。生成した混合物を飽和炭酸水素ナトリウム(2×20mL)、食塩水(1×20mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィにより、5%メタノール/ジクロロメタンを溶離液として精製し、標題中間体315mgを白色固体として得た(収率15%)。
分析データ:MSm/z472.5(MH);計算値472.2。
【0243】
工程B: 2−[(S)−1−(8−ジ−tert−BOC−アミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
ジ−tert−ブチルイミノジカーボキシレート(61mg、0.28mmol)をDMF 5mLに溶解した溶液に−10℃で水素化ナトリウム(11mg、0.28mmol; 60%鉱油懸濁物)を加えた。溶液の温度をゆっくり室温まで戻し、2時間攪拌した後、工程Aで合成した中間体(0.095mg、0.20mol)のジメチルホルムアミド(5mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で一昼夜攪拌したのち、減圧濃縮し、ジクロロメタン10mLを加えて希釈した。この混合物を飽和炭酸水素ナトリウム(2×10mL)、食塩水(1×110mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し、濃縮して、標題中間体120mgを白色固体として得た(収率99%)。
分析データ:MSm/z608.8(MH);計算値608.5。
【0244】
工程C: 2−[(S)−1−(8−アミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドの合成
ジクロロメタン(0.720mL)にトリフルオロ酢酸(0.08mL)を加えた混合物に、工程Bで合成した中間体(120mg、0.16mmol)を加え、反応混合物を室温で4時間攪拌した。つづいて、反応混合物を減圧乾固し、ジクロロメタン(10mL)で希釈したのち、pHが14に達するまで1N 水酸化ナトリウムをゆっくり加えた。有機相を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム(2×10mL)、食塩水(1×110mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過し、濃縮した。残留物を分取HPLCによって精製し、標題化合物27mgを白色吸湿性固体のビス(トリフルオロ酢酸)塩として
分析データ:MSm/z408.6(MH);計算値408.3。
【0245】
(アッセイ1)
放射性リガンド結合アッセイ
A.hM1、hM、hM3およびhMムスカリン受容体サブタイプを発現する細胞から膜の調製
クローン化したヒトhM1、hM、hM3およびhMムスカリン受容体サブタイプをそれぞれ安定して発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)株化細胞を、10%FBS(ウシ胎児血清および250μg/mLジェネチシン)を添加したHAM F−12からなる培地でほぼ集密化するまで増殖させた。細胞をインキュベーターの中で、5%CO、37℃で培養し、dPBS中、2mm EDTAで引き上げた。細胞を650×gで5分間遠心分離して採取した。細胞ペレットを−80℃で凍結保存するか、直ちに膜を調製した。膜を調製するには、細胞ペレットを溶解緩衝液に懸濁させ、ポリトロンPT−2100組織破砕器(Kinematica AG;20秒間×バースト2回)にかけてホモジナイズした。粗製の膜を、4℃で、40,000×gで15分間遠心分離にかけた。得られた膜ペレットを再懸濁用緩衝液に懸濁させ、再度ポリトロンPT−2100組織破砕器でホモジナイズした。Lowry,O.ほか、Journal of Biochemistry:193,265(1951)に記載の方法で膜懸濁液のタンパク質濃度を決定した。すべての膜はアリコート量に分けて−80℃で凍結保存するか、ただちに使用した。調製されたhM受容体膜のアリコート量は、Perkin Elmer社から直接購入して、使用するまで−80℃で保存した。
【0246】
B.ムスカリン受容体サブタイプhM1、hM、hM3、hMおよびhMの放射性リガンド結合アッセイ
放射性リガンド結合アッセイは、96槽微量タイタープレートを使用して、総アッセイ体積100μLで行った。hM1、hM、hM3、hMまたはhMムスカリン受容体サブタイプを安定して発現するCHO細胞膜をアッセイ緩衝液で次ぎに示す標的タンパク質濃度となるように希釈した(μg/槽):hM1に対しては10μg、hMに対しては10〜15μg、hM3に対しては10〜20μg、hMに対しては10〜20μg、そしてhMに対しては10〜12μg。膜は、検査プレートに添加する前にポリトロンPT−2100組織破砕器にかけて短時間(10秒間)ホモジナイズした。放射性リガンドのKp値を決定するための飽和結合実験には0.001nM〜20nM濃度のL−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド(H−NMS)(英国、Buckinghamshire、Amersham Pharmacia Biotech社、TRK666、84.0Ci/mmol)を使用した。試験化合物のKi値を決定する置換アッセイは、1nM濃度の[H]−NMSを使用し、試験化合物の濃度を11種類変えて行った。試験化合物は、まず希釈用緩衝液に溶解して400μM濃度とし、さらにこれを希釈用緩衝液で5倍系列希釈し、最終濃度を10pM〜100μMとした。検査用プレートへの添加順序と添加体積は次のとおりとした: 放射性リガンド25μL、希釈した試験化合物25μL、そして膜50μL。検査用プレートを37℃に60分間保温した。1%BSAであらかじめ処理したGF/Bガラス繊維フィルタープレート(米国、Wellesley、PerkinElmer Inc.)で高速濾過して結合反応を停止した。フィルタープレートを洗浄用緩衝液(10mm HEPES)で3回洗浄して、結合しなかった放射能を除去した。プレートを空気乾燥したのち、Microscint−20液体シンチレーション液50μL(米国、Wellesley、PerkinElmer Inc.)を各槽に加えた。プレートを液体シンチレーションカウンター、PerkinElmer Topocount(米国、Wellesley、PerkinElmer Inc.)にかけた。結合データは、ワンサイト競争モデルを使ったGraphPad Prism Softwareパッケージ(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software Inc.)を使用し、非線形回帰分析によって分析した。観察されたID0値と放射性リガンドのKp値から、Cheng−Prusoffの式(Cheng Y;Prusoff WH、Biochemical Pharmacology、22(23):3099〜108(1973))を使って試験化合物のKi値を計算した。幾何平均値および95%信頼区間を決定するためKI値をKp値に変換した。つづいて、データを報告するためこれらの要約統計値を再変換してKi値に戻した。
【0247】
このアッセイでは、Ki値が小さいほど、試験される受容体に対する試験化合物の結合親和性が高いことを示す。このアッセイにおいて、式Iの化合物のM3ムスカリン受容体サブタイプに対するKi値は、約0.96nMであった。
【0248】
このアッセイでは、Ki値が低いほど、ムスカリン受容体に対するその試験化合物の親和性は高い。このアッセイにおいて、試験された本発明の化合物の、hMに対するKi値は約200nM〜1nM未満、典型的には約100nM〜1nM、そしてhM3に対するKi値は約100nM〜1nM未満、典型的には約50nM〜1nMであった。たとえば、実施例1〜11、14、26、27および39の化合物hM3に対するKi値は50nM未満であった。このように、このアッセイにおいて、本発明の化合物は、hMおよびhM3に強く結合することが明らかになった。
【0249】
また、次式で表される化合物の結合親和性を表Vに示す(式中のR、Rxおよびeは表Vに定義されている)。
【0250】
【化35】

【0251】
【表6】

表Vのデータから、末端アミノ基がアルキル基、たとえばメチルで追加的に置換されるとhMおよびhM3受容体サブタイプでの結合親和性が大きく低下することがわかる。また、末端アミノ基からアルキル基、たとえばメチルを取り去ると、hMおよびhM3受容体サブタイプでの結合親和性が大きく低下することがわかる。
【0252】
(アッセイ2)
ムスカリン受容体の機能的効力のアッセイ
A.作動物質が関係するcAMP蓄積阻害の封鎖
このアッセイでは、hM受容体を発現するCHO−K1細胞においてフォルスコリンが関係するcAMP蓄積のオキソトレモリンによる阻害を、試験化合物が封鎖する能力を測定することにより、試験化合物の機能的効力が決定された。
【0253】
cAMPアッセイは、メーカーの使用説明書に従い、125I−cAMPを使用するFlashplate Adenylyl Cyclase Activation Assay System(マサチューセッツ州、ボストン、PerkinElmer Life Sciences Inc.,NEN SMP004B)による放射性免疫検定法のフォーマットで行われる。
【0254】
細胞は、上記「細胞の培養および膜の調製」の項に記載したように、dPBSで1回洗浄し、トリプシン−EDDA溶液(0.05%トリプシン/0.53mm EDDA)で引き上げた。剥離した細胞は、50mL dPBS中、650×gで5分間遠心分離にかけて2回洗浄した。つづいて、細胞ペレットを10mL dPBSに再懸濁させ、Coulter Z1 Dual Particle Counter(カリフォルニア州、Fullerton、Beckman Coulter)で細胞数をカウントした。再度細胞を650×gで5分間遠心分離にかけたのち、刺激緩衝液にアッセイ濃度を細胞数1.6×10〜2.8×10個/mLで再懸濁した。
【0255】
まず、試験化合物を希釈緩衝液(1mg/mL BSA(0.1%)を添加したdPBS)に溶解して400μM濃度溶液を調製し、希釈緩衝液でさらに系列希釈して最終モル濃度が100μM〜0.1nMの試料溶液を調製した。オキソトレモリンも同様にして希釈した。25μLのフォルスコリン(dPBSで溶解希釈され、最終濃度は25μM)、25μLの希釈オキソトレモリンおよび50μLの細胞を作動物質検定槽に添加した。
【0256】
試験化合物が、オキソトレモリンによって阻害されるAC活性を封鎖する能力を測定するため、25μLのフォルスコリンおよびオキソトレモリン(dPBSで溶解希釈され、最終濃度はそれぞれ25μMおよび5μM)、25μLの希釈試験化合物および50μLの細胞を残った検定槽に添加した。
【0257】
10分間37℃に保温して反応させたのち、氷冷した検出用緩衝液100μLを加えて反応を停止した。プレートを密封し、一昼夜室温に保ち、翌朝、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(米国、Wellesley、PerkinElmer Inc.)でカウントした。メーカーの使用説明書の記載に従い、試料およびcAMP標準に対して得られたカウント数から、cAMP生成量を計算した。データは、非線形回帰ワンサイト競争式を使ったGraphPad Prism Softwareパッケージ(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software Inc.)を使用し、非線形回帰分析によって分析した。観察されたID0値と放射性リガンドのKp値から、Cheng−Prusoffの式を使用し、オキソトレモリン濃度−応答曲線のEC0値および検定時オキソトレモリン濃度をそれぞれKpおよび[L]としてKi値を計算した。幾何平均値および95%信頼区間を決定するためKI値をKp値に変換した。つづいて、データを報告するためこれらの要約統計値を再変換してKi値に戻した。
【0258】
このアッセイは、Ki値が小さいほど、試験される受容体に対して、試験化合物の結合親和性が高いことを示す。hM受容体を発現するCHO−K1において、フォルスコリンが関係するcAMPの蓄積に対してオキソトレモリンが示す阻害作用の封鎖に対して、実施例1の化合物は、5nMより小さいKi値を有することがわかった。
【0259】
B.作動物質が関係するGTPγ[35S]結合の封鎖
第二の機能アッセイでは、hM受容体を発現するCHO−K1細胞中で進行するオキソトレモリンの刺激による[35S]GTPγSの結合を、試験化合物が封鎖する能力を測定することにより、試験化合物の機能的効力が決定される。使用にあたっては、凍結保存していた膜を解凍し、最終標的組織濃度が槽当たり5〜10μgとなるようにアッセイ緩衝液で希釈した。Polytron PT−21000組織破砕器で膜を短時間ホモジナイズし、それから検定プレートに移した。
【0260】
作動物質オキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合刺激に対して、各実験ごとにEC90値(90%最大応答を示す有効濃度)を決定した。
【0261】
オキソトレモリンによって刺激される[35S]GTPγSの結合を試験化合物が阻害する能力を決定するため、96槽プレートの各槽に次のものを添加した。すなわち、[35S]GTPγS(0.4nM)を含むアッセイ緩衝液25μL、オキソトレモリン(EC90)25μL、およびhM受容体を発現するCHO細胞膜25μL。つづいて、検定プレートを37℃に60分間保温した。PerkinElmer 96槽ハーベスターを使用し、1%BSAで前処理したGF/Bフィルターで検定プレートを濾過した。氷冷した洗浄用緩衝液でプレートを3×3秒間洗ったのち、空気乾燥または真空乾燥した。各槽にMicroscint−20シンチレーション液(50μL)を加え、各プレートを密封し、トップカウンター(PerkinElmer)で放射能を測定した。データは、ワンサイト競争モデルを使ったGraphPad Prism Softwareパッケージ(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software Inc.)を使用し、非線形回帰分析によって分析した。観察されたID0値と放射性リガンドのKp値から、Cheng−Prusoffの式を使用し、試験化合物に対するオキソトレモリン濃度−応答曲線のIC0値および検定時のオキソトレモリン濃度をそれぞれKおよびリガンド濃度[L]としてKi値を計算した。
【0262】
このアッセイでは、Ki値が小さいほど、試験される受容体に対して、試験化合物の結合親和性が高いことを示す。hM受容体を発現するCHO−K1において、オキソトレモリンが刺激する[35S]GTPγSの結合の封鎖に対して、実施例1の化合物は、5nMより小さいKi値を有することがわかった。
【0263】
C.FLIPRアッセイによる作動物質が関係するカルシウムの放出に対する封鎖能力の定量
Gqタンパク質と共役するムスカリン受容体サブタイプ(M1、M3およびM受容体)は、作動物質が受容体に結合すると、ホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。その結果、活性化されたPLCは、ホスファチルイノシトール二リン酸(PIP)を、ジアシルグリセロール(DAG)とホスファチジル−1,4,5−三リン酸(IP3)とに加水分解する。IP3は細胞内、すなわち小胞体および筋小胞体に蓄積されたカルシウムを放出させる。FLIPR(カリフォルニア州、Sunnyvale、Molecular Devices社)検定法は、このような細胞内のカルシウムが増加することを利用した検定法で、カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム応答色素(オレゴン州、Eugene、Molecular Probes社、Fluo−4AM)を使用する。この蛍光発生現象は、FLIPRによってリアルタイムで測定され、クローン細胞の単層から放出される蛍光の変化は、FLIPRによって検出される。拮抗物質の効力は、作用物質が関係する細胞内カルシウムの増加を拮抗物質が阻害する能力によって決定される。
【0264】
FLIPRカルシウム刺激アッセイを行うため、検定を実施する前の晩に、hM1、hM3およびcM受容体を発現する安定したCHO細胞を、96槽FLIPRプレートに添加した。接種された細胞は、Cellwash(MTX Labsystems、Inc.)を使用し、FLIPR緩衝液(カルシウムおよびマグネシウム無添加のハンクスの緩衝塩溶液(HBSS)にHEPES 10mm、pH7.4、塩化カルシウム 2mm、probenecid 2.5mm)で2回洗浄して培地を洗い流し、1槽当たりFLIPR緩衝液50μLを残した。つづいて、細胞を1槽当たり4μM FLUO−4AM(2倍溶液を調製)50μLとともに、5%二酸化炭素存在下、37℃に40分間保温した。色素インキュベーション期につづいて、FLIPR緩衝液で2回細胞を洗い、最終体積を1槽当たり50μLとした。
【0265】
拮抗物質の効力を決定するため、まず、細胞内Ca2+放出の用量依存性刺激を決定し、それからオキソトレモリンに対する拮抗物質の効力をEC90濃度で測定した。FLIPRにより、最初に細胞を化合物希釈緩衝液と20分間保温し、それから作動物質を添加した。オキソトレモリンのEC90値は、後述のFLIPR測定およびデータ縮小の項で詳しく述べる方法に従い、式ECF=((F/100−F)1H)EC50と組み合わせて発生させた。拮抗物質阻害検定プレートの各槽にオキソトレモリンのEC90濃度が添加されるように、刺激プレートで3×ECFオキソトレモリン濃度を調製した。
【0266】
FLIPRのパラメーターとして、露出時間0.4秒、レーザー強度0.5ワット、励起波長488nm、発光波長550nmを使用した。作動物質を加える前に蛍光強度変化を10秒間測定してベースラインを決定した。作動物質で刺激したあと、0.5秒〜1秒ごとに蛍光強度変化を1.5分間にわたって連続測定し、最大蛍光強度変化を入手した。
【0267】
各槽について、蛍光強度変化を(最大蛍光強度−ベースライン蛍光強度)として表示した。生データは、モデルとしてS字形用量−応答曲線を標準装備したGraphPad Prism(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software,Inc.)を使用し、薬物濃度の対数に対して、非線形回帰分析によって分析した。Cheng−Prusoffの式(Cheng & Prusoff,1973)に従い、KDとしてオキソトレモリンのEC0値を使用し、リガンド濃度に対してオキソトレモリンのEC90を使用し、ソフトウェアPrismを使って拮抗物質のKi値を決定した。
【0268】
このアッセイでは、Ki値が小さいほど、試験される受容体に対して、試験化合物の結合親和性が高いことを示す。hM3受容体を発現するCHO安定細胞において、作動物質が関係するカルシウム放出の封鎖に対して、式Iの化合物は5nMより小さいKi値を有することがわかった。
【0269】
(アッセイ3)
アセチルコリンによって誘発される気管支収縮のモルモットモデルにおける気管支保護持続時間の決定
このin vivoアッセイは、ムスカリン受容体拮抗活性を示す試験化合物の気管支保護効果を評価するために使用した。
【0270】
体重が250〜350gのオスのマンモス6頭を一つのグループとする群にケージカードを付けてそれぞれ識別できるようにした。試験期間中は試験動物が自由に食餌および水を接種できるようにした。
【0271】
試験化合物は、全身を露出する投与室(カリフォルニア州、サンカルロス、R&S Molds)で吸入投与した。投与室は、中心部のマニホールドを通して同時に6室それぞれにエアロゾルが送られるように配置した。モルモットは、試験化合物か賦形剤(WFI)のエアロゾルに曝露した。これらのアエロゾルは、22psiに加圧した混合ガス(CO=5%、O=21%、N=74%)を噴射ガスとし、LC Star Nebulizer Set(バージニア州、Midlothian、PARI Respiratory Equipment,Inc.,Model 22F51)を使って、水溶液から発生させた。この動作圧で噴霧器を通過するガス流量は、約3L/分であった。発生させたアエロゾルは正圧で吸入室に送られた。アエロゾル化した溶液を供給するときに希釈空気は使用しなかった。10分間の噴霧で約1.8mLの溶液が霧となった。この噴霧量は試料を充填した噴霧器の重さを噴霧の前後に測定して求めた。
【0272】
吸入を通して投与された試験化合物の気管支保護効果は、全身のプレチスモグラフィ(体積測定)を使って、投与から1.5,24,48および72時間後に評価した。
【0273】
肺検査開始45分前には、各モルモットにケタミン(43.75mg/kg)、キシラジン(3.50mg/kg)およびアセプロマジン(1.05mg/kg)を筋肉注射して麻酔をかけた。外科部位の毛を剃ったのち、70%アルコールで消毒したのち、頸の腹側中央線を23cm切開した。それから頸静脈を分離し、生理食塩を満たしたポリエチレンカテーテル(メリーランド州、Sparks、Becton Dickinson社、PE−50)をカニューレ挿入し、アセチルコリン(Ach)(ミズーリ州、セントルイス、Sigma社)の生理食塩溶液を静注した。つづいて、気道を切除し、14Gテフロン(登録商標)チューブ(フロリダ州、ナイアミレークス、Small Parts、#NE014、)をカニューレ挿入した。必要に応じて前記麻酔薬混合物の筋肉注射を追加し、麻酔を維持した。麻酔の深さをモニターし、動物がその足を縦方向に動かしたときに反応を示したり、あるいは呼吸数が100回/分より速くなった場合には麻酔の深さを調節する。
【0274】
カニューレの挿入が終了したら、動物をプレチスモグラフ(コネチカット州、シャロン、Buxco Electronics,Inc.,#PLY3114)に移し、食道圧迫カニューレを挿入して肺駆動圧(圧力pressure)を測定した。プレチスモグラフの開口部にテフロン(登録商標)製気道管を取り付け、モルモットが投与室外から部屋の空気を呼吸できるようにした。それから投与室を密封した。加熱ランプを使って体温を維持し、10mLシリンジ(ミズーリ州、カンザスシティ、Hans Rudolf、#5520)を使って空気4mLを3回送入して膨らまし、気道下部がつぶれないように、またモルモットが過呼吸に陥らないように確保した。
【0275】
ベースライン値が、コンプライアンスに対して0.3〜0.9mL/cm HOの範囲内に、そして抵抗に対して0.1〜0.199cm HO/mLの範囲内にあることが決定されたら、肺の評価を開始した。Buxco社の肺機能測定用コンピュータープログラムによって肺機能パラメーター値の収集と算出が可能になった。
【0276】
このプログラムを起動すると実験のプロトコルが開き、データの収集が開始された。呼吸のたびにプレチスモグラフ内で起こる体積の時間的変化を、Buxcoの圧力変換器を通して測定した。信号を時間に対して積分し、各呼吸に対する流量(flow)測定値を計算した。Sensym圧力変換器(#RD4100)を使って収集した肺駆動圧(圧力pressure)の変化と合わせて、この信号を、Buxco(MAX2270)プレアンプを介して、データ収集インターフェースに接続した(#SFT3400および#SFT3813)。
【0277】
ベースライン値を5分間集めたのち、モルモットにAchをチャレンジさせた。シリンジポンプ(フロリド州、サラソータ、World Precision Instruments,Inc.,sp210iw)からAch(ミズーリ州、セントルイス、Sigma−Aldrich)(0.1mg/mL)を1分間、下記の用量および実験開始時から指定された時間に静脈内注入した。すなわち、5分後に1.9μg/分、10分後に3.8μg/分、15後に7.5μg/分、20分後に15.0μg/分、25分後に30μg/分、そして30後に60μg/分。各Ach投与から3分後に抵抗またはコンプライアンスがベースライン値に復帰しなかった場合には、10mL校正シリンジから空気4mLをモルモットの肺に3回供給して膨らませた。肺パラメーターとして、呼吸数(回/分)、コンプライアンス(mL/cm HO)および肺抵抗値(cm HO/mL/秒)を記録した。このプロトコルの35分で肺機能測定を終了したら、モルモットをプレチスモグラフから取り出し、二酸化炭素で窒息させて安楽死させた。
【0278】
次ぎに挙げる2つの方法のうちの一方または両方でデータを評価した。
【0279】
(a)肺抵抗値(RL、cm HO/mL/秒)「圧力変化」と「流量変化」との比から計算した。
【0280】
のACh(60μg/分、IH)に対する応答をビヒクル(賦形剤)群と試験化合物群に対して計算した。ビヒクルで治療した動物の各前処理時における平均ACh応答を計算し、それを使って、対応する前処理時、各試験化合物投与時におけるACh応答阻害百分率を計算した。ウインドウズ用GraphPad Prism、バージョン3.00(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software,Inc.)を使って、「RL」に対する阻害用量−応答曲線を4パラメーターロジステック式にフィットさせ、気管支保護物質のID0(ACh(60μg/分)による気管支収縮応答を50%阻害するために必要な用量)を推算した。使用した式は次のとおりである。
【0281】
【化36】

式中、Xは用量の対数、Yは応答(AChによって誘発されるR増加の阻害百分率)である。YはMinで開始し、S字形を描いてMaxに漸近する。
【0282】
(b)次式(米国胸部学会のGuidelines for metacholine and exercise challenge testing−1999. Am J Respir Crit Care Med.2000;161:309〜329に記載されている、PC0値を計算するための式から誘導される)を使用し、Achまたはヒスタミンのチャレンジ範囲にわたって、流量(flow)および圧力(pressure)から導出した肺抵抗値を使って、ベースライン肺抵抗値を2倍に高めるために必要なAchまたはヒスタミンの量として定義される量、PDを計算した。
【0283】
【化37】

式中、
C1=Cに先立つAchまたはヒスタミンの濃度
=肺抵抗値(RL)を少なくとも2倍高めるAchまたはヒスタミンの濃度
R0=ベースラインR
=C後のR
=C後のR
「有効量」は、Achの用量50μg/mLに対する気管支収縮応答をベースライン肺抵抗値の2倍(PD2(50))に抑制した用量を有効量と定義した。
【0284】
データの統計分析は、two−tailedスチューデントt検定を使用して行った。P値<0.05を有意とした。
【0285】
一般に、このアッセイでは、Ach誘発気管支収縮に対する、投与から1.5時間後の、PD2(50)が約200μg/mLの試験化合物が好ましい。式Iで表される化合物は、Ach誘発気管支収縮に対する、投与から1.5時間後の、PD2(50)が約200μg/mLより小さいことがわかった。
【0286】
(アッセイ4)
吸入モルモットの唾液分泌アッセイ
体重が200〜350gのモルモット(マサチューセッツ州、ウィルミントン、Charles River)を受入から少なくとも3日間自家モルモットコロニーに馴らした。パイの形をした吸入室(カリフォルニア州、サンカルロス、R+S Molds)に入れて、試験化合物またはビヒクル(賦形剤)を10分間にわたって吸入投与(IH)した。試験溶液を滅菌水に溶かし、投与液5.0mLを噴霧器に入れて供給した。モルモットを吸入室に30分間入れたままにしておいた。この間、モルモットは約110平方センチメートルの面積に制限した。この広さはモルモットが自由に動き回ったり、グルーミングするには十分であった。20分間順応させたのち、22psiの室内空気でLS Star Nebulizer Set(バージニア州、Midlothian、PARI Respiratory Equipment,Inc.,Model 22F51)から発生させたアエロゾルに曝露した。噴霧が終わったら、治療から1.5,6,12,24,48または72時間後にモルモットを評価した。
【0287】
試験の1時間前に、0.88mL/kgの体積で、ケタミン 43.75mg/kg、キシラジン 3.5mg/kgおよびアセプロマジン 1.05mg/kgの混合物を筋肉(IM)注射して麻酔をかけた。下向き斜面に腹側を上にし、頭を20°傾けて加熱(37℃)毛布上にモルモットを置いた。4枚重ねにした2×2インチのガーゼ(テキサス州、アーリントン、Johnson−Johnson社、Nu−Gauze General−use sponges)をモルモットの口に挿入した。5分後にムスカリン作動物質のピロカルピン(3.0mg/kg、皮下)を投与し、ガーゼを直ちに廃棄し、新しいガーゼを入れ替えた。唾液を10分間集めて、ガーゼの重さを測った。重さの差を記録して溜まった唾液量(mg単位)を求めた。ビヒクルを投与されたモルモットと、試験化合物を各用量を投与されたモルモットに対して、収集した平均唾液量を計算した。ビヒクル投与群の平均値を唾液分泌量100%とした。結果の平均値(n=3以上)から結果を計算した。2方式ANOVAを使用して、各時点の各用量に対して信頼区間(95%)を計算した。このモデルは、Rechter、「ピロカルピンによって誘発される唾液分泌に対する拮抗による、マウスにおける抗コリン作動性薬物の効果の評価」Acta Pharmacol Toxicol,1996,24:243〜254に記載されている手順に一部変更を加えたものである。
【0288】
ビヒクルで治療した動物の各前処理時における平均唾液量を計算し、それを使って、対応する前処理時、各投与時における唾液分泌阻害百分率の計算に使用した。ウインドウズ用GraphPad Prism、バージョン3.00(カリフォルニア州、San Diego、GraphPad Software,Inc.)を使って、阻害用量−応答データを4パラメーターロジステック式にフィットさせ、抗唾液分泌物質のID50(ピロカルピンによって促進される唾液の分泌を50%阻害するために必要な用量)を推算した。使用した式は次のとおりである。
【0289】
【化38】

式中、Xは用量の対数、Yは応答(唾液分泌阻害百分率)である。YはMinで開始し、S字形を描いてMaxに漸近する。
【0290】
抗唾液分泌物質のID50と気管支保護物質のID50との比を使用して試験化合物の見かけの肺選択性指数を計算した。一般に、見かけの肺選択性指数が5より大きな化合物が好ましい。このアッセイでは、式Iで表される化合物の肺選択性指数は5より大きかった。
【0291】
(アッセイ5)
意識のあるモルモットにおけるメタコリン誘発性降圧物質の応答
これらの試験には、体重が200〜300gのSprague−Dawley系モルモットの健康なオスの成体を使用した。イソフルランで(効果的に)麻酔をかけ、被験モルモットの頸動脈および頸静脈にカテーテル(PE−50チューブ)を装着した。皮下トンネルを使ってカテーテルを肩胛下部位の外まで出した。切開部位はすべて4−0Ethicon Silkで縫合し、カテーテルはヘパリン(1000単位/mL)でロックした。外科手術終了時には各動物に生理食塩水(3mL、皮下)およびブプレノルフィン(0.05mg/kg、筋肉内)を投与した。収容室に戻す前に加温パッド上で回復させた。
【0292】
手術から約18〜20時間経過したら体重を測り、各モルモットの頸動脈カテーテルと動脈圧を記録する変換器とを接続した。Biopac MP−100 Acquisition Systemを使って動脈圧と心拍圧とを記録した。モルモットを順応させ、20分間安定させた。
【0293】
各動物に頸静脈ラインを通してメチルコリン(MCh)(0.3mg/kg、静脈内)を投与し、心臓血管の応答を10分間モニターした。つづいて、モルモットを試験化合物溶液またはビヒクル溶液を入れた噴霧器に接続された全身噴霧室に移した。呼吸ができる空気と5%二酸化炭素のガス混合物を3リットル/分の流速で溶液を10分間噴霧した。それから、モルモットを全身噴霧室から取り出し、それぞれのケージに戻した。噴霧の1.5時間後および24時間後に、再度MChを動物に注射した(0.3mg/kg、静脈内)。それからペントバルビタールナトリウム(150mg/kg、静脈内)で安楽死させた。
【0294】
MChは平均動脈圧(MAP)および心拍数(徐脈)を低下させた。ベースラインからの動脈圧ピークの低下(降圧物質応答)を各MChチャレンジに対して測定した(IH投与の前後)。これらの応答はしっかりしたものでなく再現性がなかったため、結果の分析に徐脈効果は採用しなかった。MCh応答に対する治療効果は、対照である降圧物質応答の阻止百分率(平均値±SEM)で表される。適当な事後試験を行う2方式ANOVAを使って処理時間および前処理時間の効果を調べた。MChに対する降圧物質の応答は、ビヒクルを吸入投与して1.5時間後と24時間後で比較的変化が少ない。
【0295】
試験化合物の見かけの肺選択性の計算に抗降圧物質ID50と気管支保護物質ID50との比を使用した。一般に、見かけの肺選択性指数が5より大きな化合物が好ましい。ここアッセイでは、実施例1の化合物の見かけの肺選択性指数は、5より大きかった。
【0296】
本発明はその実施形態の具体的ないくつかの面について説明してきたが、通常の当業者であれば、本発明の真の精神および範囲を逸脱することなく、さまざまな変更や等価物による置き換えが可能であることは了解されよう。さらにまた、現行の特許法および規則が許す範囲で、すべての刊行物、特許および特許出願明細書は、参照することにより、あたかも各書類が、参照することによって、本明細書に組み込まれたものとして、それらの全体が組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iにおいて、
【化1】

各RおよびRが、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、および−NRから選択されるか、または二つの隣接するR基もしくは二つの隣接するR基が連結してC3−4アルキレン、−(C2−6アルキレン)−O−または−O−(C1−4アルキレン)−O−を形成し、
各Rが、それぞれ独立に、C1−4アルキルおよびフルオロから選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−CH−Rおよび−CHCH−Rから選択されるか、または二つのR基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され(ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換される)、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−OH、−O(C1−6アルキル)、−O(C3−6シクロアルキル)、−O(C6−10アリール)、−O(C2−9ヘテロアリール)、−S(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(C2−9ヘテロアリール)、−S(O)(C2−9ヘテロアリール)および−S(O)(C2−9ヘテロアリール)から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC3−6シクロアルキルから選択され、
各RおよびRが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
aが0〜3の整数であり、
bが0〜3の整数であり、
cが0〜4の整数であり、
dが1か2であり、
eが8か9である化合物であって、
ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、任意選択的に、1〜5個のフルオロ置換基で置換され、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRcの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項2】
が、C1−5アルキルであって、該アルキル基が、−OH置換基か、または1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、C1−5アルキルであって、該アルキル基が、−OH置換基か、または1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、メチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、n−プロピル、イソプロピル、1−ヒドロキシプロピル−2−イル、n−ブチルおよびイソブチルから選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
が、メチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、C3−5シクロアルキルであって、該シクロアルキル基が、−OH置換基か、または1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、シクロプロピル、シクロブチルおよびシクロペンチルから選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が、
(a)−CH−(C3−5シクロアルキル)であって、ここで、該シクロアルキル基は、−OH置換基か、または1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、−CH−(C3−5シクロアルキル);および
(b)−CH−(フェニル)であって、ここで、該フェニル基は、C1−4アルキル、シアノ、フルオロ、クロロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)および−S(O)(C1−4アルキル)からそれぞれ独立に選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、各アルキルは、1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、−CH−(フェニル)
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、ベンジル、4−シアノベンジル、3−メチルベンジル、4−メチルベンジル、4−トリフルオロメトキシベンジル、3−フルオロベンジルおよび4−フルオロベンジルから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
各Rが、水素である、請求項1〜9のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項11】
a、bおよびcが0である、請求項1〜10のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項12】
dが1である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項13】
dが2である、請求項1〜11のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項14】
eが8である、請求項1〜13のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項15】
eが9である、請求項1〜13のいずれか一つに記載の化合物。
【請求項16】
式IIにおいて、
【化2】

が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され,ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
eが8か9である化合物であって、
ここで、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換される(ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、−OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項17】
ピロリジン環の3位の立体化学が(S)である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
ピロリジン環の3位の立体化学が(R)である、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
が、C1−3アルキルであって、ここで、該アルキル基は、−OHまたは1〜3個のフルオロ置換基で任意選択的に置換される、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項20】
がメチルである、請求項17または18に記載の化合物。
【請求項21】
2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−イソプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−(8−プロプ−1−イルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−シクロプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−シクロブチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−シクロペンチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−エチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[8−(2−ヒドロキシエチル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[8−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[8−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[8−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[8−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(8−ベンジルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−イソプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−(8−プロプ−1−イルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−シクロプロピルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−シクロブチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−シクロペンチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−エチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[8−(2−ヒドロキシエチル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[8−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[8−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[8−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[8−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノオクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(8−ベンジルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−メチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−イソプロピルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−(9−プロプ−1−イルアミノノニル)ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−シクロプロピルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−シクロブチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−シクロペンチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−エチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[9−(2−ヒドロキシエチル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[9−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[9−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[9−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(S)−1−[9−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(S)−1−(9−ベンジルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−メチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−イソプロピルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−(9−プロプ−1−イルアミノノニル)ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−シクロプロピルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−シクロブチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−シクロペンチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−エチルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[9−(2−ヒドロキシエチル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[9−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[9−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[9−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{(R)−1−[9−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノノニル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[(R)−1−(9−ベンジルアミノノニル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−イソプロピルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−(8−プロプ−1−イルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−シクロプロピルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−シクロブチルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−シクロペンチルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−エチルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[8−(2−ヒドロキシエチル)アミノオクチル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[8−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[8−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[8−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノオクチル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[8−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノオクチル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(8−ベンジルアミノオクチル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−メチルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−イソプロピルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−(9−プロプ−1−イルアミノノニル)ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−シクロプロピルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−シクロブチルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−シクロペンチルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−[1−(9−エチルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[9−(2−ヒドロキシエチル)アミノノニル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[9−(R)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[9−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[9−(S)−(1−ヒドロキシプロプ−2−イル)アミノノニル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミド、
2−{1−[9−(2,2,2−トリフルオロエチル)アミノノニル]ピペリジン−4−イル}−2,2−ジフェニルアセタミドおよび
2−[1−(9−ベンジルアミノノニル)ピペリジン−4−イル]−2,2−ジフェニルアセタミド、
から選択される化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項22】
2−[(S)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドまたは薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項23】
2−[(R)−1−(8−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドまたは薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項24】
薬学的に許容される担体と、治療的に有効な量の、請求項1〜23のいずれか一つの化合物とを含む医薬組成物。
【請求項25】
前記組成物が、吸入投与に適する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記組成物が、さらに治療的に有効な量のβアドレナリン受容体アゴニストを含む、請求項24または25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記組成物が、さらに治療的に有効な量のステロイド系抗炎症薬を含む、請求項24〜26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記組成物が、さらに治療的に有効な量のホスホジエステラーゼ−4阻害物質を含む、請求項24〜27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ムスカリン受容体アンタゴニストで治療することによって緩和される医学的状態にある哺乳動物を治療する方法であって、請求項1〜23のいずれか一つの化合物の治療的に有効な量を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項30】
肺障害を治療する方法であって、請求項1〜23のいずれか一つの化合物の治療的に有効な量を、治療を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項31】
患者の気管支を拡張する方法であって、請求項1〜23のいずれか一つの化合物の気管支を拡張する量を、患者に吸入投与する工程を包含する、方法。
【請求項32】
慢性閉塞性肺病または喘息を治療する方法であって、請求項1〜23のいずれか一つに記載の化合物の治療的に有効な量を、治療を必要とする患者に投与する工程を包含する、方法。
【請求項33】
ムスカリン受容体を含む生物系または生物試料を試験する方法であって、
(a)該生物系または生物試料を、請求項1〜23のいずれか一つに記載の化合物と接触させる工程;および
(b)該化合物が、該生物系または生物試料にもたらす効果を決定する工程を包含する、方法。
【請求項34】
式Iにおいて、
【化3】

各RおよびRが、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、および−NRから選択されるか、または二つの隣接するR基もしくは二つの隣接するR基が連結してC3−6アルキレン、−(C2−4アルキレン)−O−または−O−(C1−4アルキレン)−O−を形成し、
各Rが、それぞれ独立に、C1−4アルキルおよびフルオロから選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−CH−Rおよび−CHCH−Rから選択されるか、または二つのR基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され、ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−OH、−O(C1−6アルキル)、−O(C3−6シクロアルキル)、−O(C6−10アリール)、−O(C2−9ヘテロアリール)、−S(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(C2−9ヘテロアリール)、−S(O)(C2−9ヘテロアリール)および−S(O)(C2−9ヘテロアリール)から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC3−6シクロアルキルから選択され、
各RおよびRが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
aが0〜3の整数であり、
bが0〜3の整数であり、
cが0〜4の整数であり、
dが1か2であり、
eが8か9である化合物であって、
ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、任意選択的に、1〜5個のフルオロ置換基で置換され、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される化合物またはその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体を製造する方法であって、該方法は、
(a)式III
【化4】


で表される化合物と、式IV
【化5】

で表され、式中、Pはアミノ保護基である化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程
(b)式V
【化6】

で表される化合物と、式VI
【化7】

で表され、式中、Pはアミノ保護基である化合物とを、還元剤の存在下で反応させる工程
(c)式VII
【化8】

で表され、式中、Lは脱離基である化合物と、式IVで表される化合物とを反応させる工程または
(d)式Vで表される化合物と、式VIII
【化9】

で表され、式中、Lは脱離基であり、Pはアミノ保護基である化合物とを反応させる工程、そして次いで、
(e)保護基P、PまたPを除去し、式Iで表される化合物またはその塩を形成させる工程を包含する、方法。
【請求項35】
さらに、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を形成する工程を包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
式Iにおいて、
【化10】

各RおよびRが、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、および−NRから選択されるか、または二つの隣接するR基もしくは二つの隣接するR基が連結してC3−6アルキレン、−(C2−4アルキレン)−O−または−O−(C1−4アルキレン)−O−を形成し、
各Rが、それぞれ独立に、C1−4アルキルおよびフルオロから選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−CH−Rおよび−CHCH−Rから選択されるか、または二つのR基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され、ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−OH、−O(C1−6アルキル)、−O(C3−6シクロアルキル)、−O(C6−10アリール)、−O(C2−9ヘテロアリール)、−S(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(C2−9ヘテロアリール)、−S(O)(C2−9ヘテロアリール)および−S(O)(C2−9ヘテロアリール)から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC3−6シクロアルキルから選択され、
各RおよびRが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
aが0〜3の整数であり、
bが0〜3の整数であり、
cが0〜4の整数であり、
dが1か2であり、
eが8か9である化合物の薬学的に許容される塩であって、
ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、任意選択的に、1〜5個のフルオロ置換基で置換され、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される、化合物の薬学的に許容される塩またはその溶媒和物もしくは立体異性体を製造する方法であって、該方法は、式IX
【化11】

で表され、式中、Pは酸で切断されるアミノ保護基である化合物と、薬学的に許容される酸とを接触させて、式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩を形成する工程を包含する、方法。
【請求項37】
請求項34、35および36のいずれか一つに記載の方法によって製造される生成物。
【請求項38】
式Xにおいて、
【化12】

Pが、アミノ保護基であり、
各RおよびRが、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)、および−NRから選択されるか、または二つの隣接するR基もしくは二つの隣接するR基が連結してC3−6アルキレン、−(C2−4アルキレン)−O−または−O−(C1−4アルキレン)−O−を形成し、
各Rが、それぞれ独立に、C1−4アルキルおよびフルオロから選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−CH−Rおよび−CHCH−Rから選択されるか、または二つのR基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され、ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリール、C3−6ヘテロ環、−OH、−O(C1−6アルキル)、−O(C3−6シクロアルキル)、−O(C6−10アリール)、−O(C2−9ヘテロアリール)、−S(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(O)(C1−6アルキル)、−S(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(O)(C3−6シクロアルキル)、−S(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(O)(C6−10アリール)、−S(C2−9ヘテロアリール)、−SO(C2−9ヘテロアリール)および−S(O)(C2−9ヘテロアリール)から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
各Rが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニルおよびC3−6シクロアルキルから選択され、
各RおよびRが、それぞれ独立に、水素、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C3−6シクロアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合する窒素原子と一緒になって、C3−6ヘテロ環を形成し、
aが0〜3の整数であり、
bが0〜3の整数であり、
cが0〜4の整数であり、
dが1か2であり、
eが8か9である化合物であって、
ここで、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基は、任意選択的に、1〜5個のフルオロ置換基で置換され、R、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換され、ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換される、化合物またはその塩もしくは溶媒和物もしくは立体異性体。
【請求項39】
2−[(S)−1−(8−N−ベンジル−N−メチルアミノオクチル)ピロリジン−3−イル]−2,2−ジフェニルアセタミドまたはその塩。
【請求項40】
2−{(S)−1−[8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチル]ピロリジン−3−イル}−2,2−ジフェニルアセタミドまたはその塩。
【請求項41】
式XIにおいて
【化13】

Pが、アミノ保護基であり、
Gが、−CHO、−CH(OR、−CHOHおよび−CH−Lから選択され、(ここで、各Rは、それぞれ独立にC1−6アルキルであるか、両R基が一緒になってC2−6アルキレンを形成し、Lは脱離基である)、
が、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C3−6シクロアルキル、および−CH−Rから選択され(ここで、各アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、任意選択的に−OHまたは1〜5個のフルオロ置換基で置換される)、
各Rが、それぞれ独立に、C3−6シクロアルキル、C6−10アリール、C2−9ヘテロアリールおよびC3−6ヘテロ環から選択され、
eが8または9である化合物であって、
ここで、RおよびRの各アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロ環基は、それぞれ独立に、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シアノ、ハロ、−O(C1−4アルキル)、−S(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−S(O)(C1−4アルキル)、−NH、−NH(C1−4アルキル)および−N(C1−4アルキル)から選択される1〜3個の置換基で任意選択的に置換される、ここで、各アルキル、アルキレン、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜5個のフルオロ置換基で任意選択的に置換され、そして−(CH−における各−CH−基は、それぞれ独立に、C1−2アルキル、OHおよびフルオロから選択される1個または2個の置換基によって、任意選択的に置換され、ただし、Lがクロロのときは、Pはエトキシカルボニルではない、化合物またはその塩もしくは立体異性体。
【請求項42】
8−(N−ベンジル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オールまたはその塩。
【請求項43】
8−(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクタン−1−オール。
【請求項44】
トルエン−4−スルホン酸−8(N−tert−ブトキシカルボニル−N−メチルアミノ)オクチルエステル。

【公表番号】特表2007−507496(P2007−507496A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533776(P2006−533776)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018813
【国際公開番号】WO2005/003090
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ウィンドウズ
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】