説明

ムスカリン性アゴニスト

本発明は、M−1ムスカリン受容体のアゴニストである式(I):


で示される化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、薬化学および有機化学の分野に関し、ムスカリン受容体に対して活性な化合物を提供する。
【0002】
本発明の化合物は、ムスカリンアゴニストである。より具体的には、本発明の化合物は、ムスカリンM−1受容体の選択的アゴニストである。従って、それらは中枢神経系および他の身体システムの様々な障害の処置に有用である。これらの障害には、認知障害、ADHD、肥満症、アルツハイマー病、統合失調症を含む精神病、および緑内障においてみられるような眼圧の軽減が含まれる。
【0003】
PCT公開第WO 97/25983(公開日1997年7月24日)およびWO 99/04778(公開日1999年2月4日)には、ある特定のインダン様化合物がムスカリンコリン作動性系の機能不良に関連する状態の処置に有用であると記載されている。
【0004】
本発明は、式I:
【化1】

[式中、
Q、X、YおよびZは、CR1およびNからなる群から選択され、Q、X、YおよびZのうちの2つまでがNであり、Q、X、YおよびZのうちの少なくとも2つがCHであるか;またはYはCHであり、ZがCHであり「Q=X」がSを示してチオフェン環を形成し;
1はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択され;
2は、ハロゲン;C1−C4アルコキシ;C1−C4アルキル;C3−C8シクロアルキル;シアノ;トリフルオロメチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシおよびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1〜2個の置換基で置換されていることもあるピリジニル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていることもあるチエニル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、およびシアノからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていることもあるフェニル;およびハロゲン、C1−C4アルコキシおよびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1〜2個の置換基で置換されていることもあるピロリル
からなる群から選択され;
3は水素、C1−C4アルキル、ジェミナルなジメチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていることもあるフェニル;フェニル環が、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で場合により置換されているベンジル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいナフチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の置換基で置換されていることもあるヘテロアリール;およびフェニル環がハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい1,3−ベンゾジオキソリル
からなる群から選択され;
4は水素、ヒドロキシ、およびフルオロからなる群から選択され;
5は水素、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択され;
aは水素およびメチルからなる群から選択され;
tは0または1であり;
mは1または2であり;
X’は、O、S、およびCR’R”からなる群から選択され、ここにR’は水素であり、R”は水素、メチルおよびエチルからなる群から選択されるか、もしくはR’とR”が一緒になってオキソを形成し;そして
Y’はCH2、O、S、およびNRからなる群から選択され、ここにRは水素またはメチルであり;
但し、
X’がOまたはSであるとき、tは1であり;
Y’がO、S、またはNRであるとき、X’はCR’R”であり;
X’がCH2であり、Y’がCH2であるとき、R3は水素ではない]
で示される化合物またはその製薬的に許容し得る塩を提供する。
【0005】
本発明はさらに、式Iで示される化合物および製薬的に許容し得る希釈剤を含有する医薬組成物を提供する。
【0006】
式Iで示される化合物はM−1ムスカリン受容体のアゴニストであるので、式Iで示される化合物は、以下のものを含むムスカリン受容体に関連する様々な障害の処置に有用である:認知障害(加齢性認知障害、軽度認識障害、統合失調症に関連する認知障害、および化学療法起因性認知障害を含む)、ADHD、気分障害(鬱、躁、躁うつ病を含む)、精神病(特に統合失調症)、痴呆(アルツハイマー病、AIDS起因性痴呆、血管性痴呆、およびDLDH(dementia lacking distinctive histology)を含む)、パーキンソン病、およびハンチントン舞踏病。また、本化合物は、クローン病を含む慢性大腸炎の処置に有用である。さらに、本化合物は、疼痛(急性疼痛および慢性疼痛を含む)、口内乾燥(ドライマウス)、レヴィー小体病(びまん性レヴィー小体病を含む)、失語症(原発性失語症および原発性失語症候群)、および低血圧症候群の処置に有用である。
【0007】
別の態様では、本発明は、有効量の式Iで示される化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなるムスカリン受容体に関連する障害の処置の方法を提供する。すなわち、本発明は、ムスカリン受容体に関連する障害の処置のための医薬の製造のための式Iで示される化合物または医薬組成物の使用を提供する。本発明はさらに、治療において使用するための式Iで示される化合物を提供する。
【0008】
本明細書において使用する以下の用語は以下に示す意味を有する。
【0009】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、クロロ、フルオロ、ブロモまたはヨード原子を意味する。
【0010】
用語「C1−C4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖を意味し、その例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、およびt−ブチルが挙げられる。用語「C1−C4アルカンジイル」は、合計1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルカンジイルを意味し、その例としてはメチレン、エチレン、テトラメチレン、1−メチルプロパン−1,3−ジイル、2−メチルプロパン−1,3−ジイル、およびブタン−2,3−ジイルが挙げられる。用語「C3−C8シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを意味する。
【0011】
用語「C1−C4アルコキシ」は、酸素原子に結合した1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル鎖を意味し、その例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソ−ブトキシ、sec−ブトキシ、およびt−ブトキシが挙げられる。
【0012】
用語「ヘテロアリール」は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜2のヘテロ原子を含む安定な不飽和の5員環または6員環を意味する。ヘテロアリールの例としては、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、ピリダジニル、フリル、チエニル、などが挙げられる。好ましいヘテロアリール基は、チエニル、ピリジニルおよびフリルである。
【0013】
用語「複素環」は、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含む安定な飽和の5員環または6員環を意味する。複素環の例としては、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロフリル、モルホリノなどが挙げられる。
【0014】
本発明の化合物は、様々な有機および無機の酸と製薬的に許容し得る酸付加塩を形成し、薬化学においてしばしば用いられる生理学的に許容し得る塩を包含する。そのような塩もまた本発明の一部である。「製薬的に許容し得る塩」は、当分野で周知とおり、製薬的に許容し得る酸から形成される。そのような塩としては、当業者に知られているJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2-19 (1977)に記載されている医薬上許容される塩が挙げられる。そのような塩を形成するための用いられる典型的な無機の酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸、メタリン酸、ピロリン酸などが含まれる。脂肪族のモノおよびジカルボン酸、フェニルで置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸およびヒドロキシアルカン二酸、芳香族の酸、脂肪族および芳香族スルホン酸等の、有機酸から誘導される塩もまた使用することができる。そのような医薬上許容される塩としては、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息国産塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸塩、ヘキシン−1、4−ジカルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テトラフタル酸塩、プロピオル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩などが挙げられる。
【0015】
本発明は、式Iで示される化合物の立体異性体および互変異性体を包含する。本明細書では、関連する立体化学の(R)-および(S)-およびcisおよびtrans法のCahn-Prelog-Ingold則を用いて具体的な異性体および関連の立体化学を表示する。
【0016】
薬学的に活性な化合物のある群のように、いくつかの群はその最終用途の応用において好ましい。以下の段落に好ましいクラスを定義する。
a)R4が水素でないとき、1位と2位の立体化学がトランスである化合物が好ましい。
b)R4が水素でないとき、以下に示す1位および2位がトランスの立体化学を有する化合物がより好ましい。
【化2】

c)Raはメチルである。
d)R5は水素である。
e)R4はヒドロキシである。
f)tは0である。
g)tは1である。
h)mは0である。
i)Raはメチルであり、R5は水素であり、R4はヒドロキシであり、tは0であり、mは1である。
j)Raはメチルであり、R5は水素であり、R4はヒドロキシであり、tは1であり、mは1である。
k)Q、X、YおよびZはそれぞれCR1であり、Q、X、YおよびZの少なくとも2つがCHである。
l)R1は水素である。
m)R1はハロゲンである。
n)R1はフルオロである。
o)Q、X、YおよびZはそれぞれCHである。
p)Q、X、YおよびZの1つがCFであり、それ以外はCHである。
q)QはCFであり、X、YおよびZはそれぞれCHである。
s)R2はハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチルおよびシアノからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていることもあるフェニルである。
t)R2はフェニルである。
u)X’はOであり、Y’はCH2であり、tは1である。
v)X’はSであり、Y’はCH2であり、tは1である。
w)X’はCH2であり、Y’はOであり、tは0である。
x)X’はCH2であり、Y’はSであり、tは0である。
y)R3は水素である。
z)R3は、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から選択される1個の置換基で置換されたフェニルである。
aa)R3は1個のハロゲンで置換されたフェニルである。
bb)R3は1個のフルオロで置換されたフェニルである。
cc)R3はパラの位置で1個のフルオロにより置換されたフェニルである。
dd)Raはメチルであり、R5は水素であり、R4はヒドロキシであり、mは1であり、R2はフェニルであり、Q、X、YおよびZはそれぞれCHである。
ee)Raはメチルであり、R5は水素であり、R4はヒドロキシであり、mは1であり、R2はフェニルであり、QはCFであり、X、YおよびZはそれぞれCHである。
ff)Raはメチルであり、R5は水素であり、R4はヒドロキシであり、mは1であり、R3はパラの位置で1個のフルオロにより置換されたフェニルである。
【0017】
上の段落を組み合わせてさらに好ましい化合物のクラスを定義し得る。
【0018】
4がヒドロキシである式Iで示される化合物は、反応式Aに記載した手順よって製造する。反応式Aでは、特に記載しない限り、置換基はすべて上記で定義したとおりであり、試薬は当分野においてよく知られ認識されているものである。
【0019】
【化3】

反応式A、工程aでは、式(1)の化合物を分割して式(2)の実質的に純粋な化合物を得る。式(1)の化合物は、PCT公開第WO97/25983(公開日1997年7月24日)およびWO99/04778(公開日1999年2月4日)に記載されているような当分野でよく知られ認識されている方法によって容易に製造する。本明細書において用いられる用語「実質的に純粋な」はエナンチオマー純度を意味する。最終の式Iで示される化合物における望ましい立体化学は、式(1)の化合物の分割によって、反応式A、工程aに便利に導入することができる。以下に記載する工程b、c、dおよび所望により工程eによる分割された式(1)の化合物のさらなる処理によって実質的に純粋な式Iで示される化合物が得られる。実質的に純粋な式Iで示される化合物は、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは97%のエナンチオマー純度である。式(1)の化合物は、ジアステレオマーの酸付加塩のキラルクロマトグラフィーまたは分別結晶により分割することができる。そのような様々な塩がこの目的に適していると考えられる。実際、マンデル酸の異性体は、特に有用であることが分かった。
【0020】
例えば、式(1)の化合物を選択した酸と接触させる。一般に、選択した酸の約0.4モル当量〜大過剰を用いることができ、約0.4〜1.5モル当量が好ましく、約0.5〜1.1モル当量がより好ましい。分割は、典型的には、酸付加塩を溶液から結晶化することによって行う。特に、メタノールを含む低級アルコール等の溶液が有用である。適当な容量で分割を行うために、少量の水を選択した酸と共に用いるのが有用であるかもしれない。貧溶媒の使用もまた有用である。本明細書において用いられる用語「貧溶媒」とは、その塩が他の選択した溶媒と比較して有意に溶解度が低いような溶媒を意味する。好ましくは、貧溶媒を用いる場合、その溶媒は他の選択された溶媒と混和する。適当な貧溶媒としては、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル等のエーテル類、および酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等の低級アルキルアセテート、およびペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等のアルカン類が挙げられる。ラセミ混合物を用いる場合、貧溶媒を用いる際には、注意して望ましくないジアステレオマー塩の結晶化を避ける。
【0021】
典型的には、約40℃〜その選択された溶媒の還流温度の初発温度にて結晶化を行う。次いで、混合物を冷却して塩を得る。種結晶添加(seeding)が有用な場合もある。好ましくは、結晶化溶液をゆっくりと冷却する。結晶化は、常温〜約−20℃の温度に冷却するのが最も都合が良い。塩は、濾過、傾斜、遠心、留去、乾燥など、当分野でよく知られている技術を用いて回収することができる。式(2)の化合物を選択された酸の酸付加塩として直接用いることができる。あるいは、使用前に、式(2)の化合物を酸交換の後に別の酸付加塩として単離するか、または当分野でよく知られ認識されているように塩基性条件下での抽出により塩基として単離することができる。
【0022】
当業者には明かなように、式(2)で示される化合物は、インダン骨格の1位および2位でtransの立体配置を有するものである。Cis化合物は、アミンの保護、ヒドロキシ中心の反転、次いで必要により脱保護によってそのようなtrans化合物から容易に製造される。例えば、酢酸および安息香酸を含む適当なカルボン酸との光延反応、次いで加水分解による、ヒドロキシ中心の反転が可能な多くの方法が存在する。あるいは、適当に分割されたアミノインダノールを選択的に式(2)で示される化合物にニトロ化することができる。例えば、分割されたアミノ-インダノールを硝酸または硝酸ナトリウム等のニトロ化剤に加える。この反応はトリフルオロ酢酸または硫酸等の強酸の存在下で行う。次いで、この反応物を水酸化ナトリウム等の適当な塩基で中和することができる。ニトロ化の方法は当分野でよく知られている。例えばOrganic Chemistry, Morrison & Boyd, 5th Ed (Allyn & Bacon, Inc.)を参照。
【0023】
反応A、工程bは、式(3)で示される化合物の形成を示す。式(3)の化合物は、Rが上で定義した式Iの最終生成物において望ましい基である化合物であると理解される。Rはまた、カルボニルと組み合わせて、t−BOC等の保護基を形成し、脱離した後、式Iの最終生成物における所望のR基を導入することができる。適当な保護基の選択および使用は当分野でよく知られており認識されている(Protecting Groups in Organic Synthesis, Theodora Greene (Wiley-Interscience))。
【0024】
例えば、Rが最終生成物における所望の基である場合、工程bに示すカップリング反応を適当な酸またはその酸から誘導された酸ハライドを用いて行う。適当な酸としては、様々な置換された安息香酸や酸ハライド、ヘテロアリール酸および酸ハライド、および様々なビアリールカルボン酸および酸ハライドが挙げられる。例としては、ビフェニルカルボン酸および3−フルオロビフェニル−4−カルボン酸が挙げられる。
【0025】
例えば、式(2)の化合物を適当な酸と接触させて式(3)で示される化合物を得る。そのようなカップリング反応はペプチド合成において一般的であり、本発明において用いる合成方法を用いることができる。例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、などの周知の添加剤有りまたは無しで、樹脂に結合させた試薬およびカルボジイミド等の周知のカップリング試薬を用いてこのアシル化を促進することができる。反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン(ジクロロメタン)、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、などの不活性な非プロトン性極性希釈剤中で慣用的に行う。典型的には反応を約0℃〜約60℃の温度で行い、典型的には約1〜24時間要する。反応が完了したら、式(3)の生成物を、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、トリチュレーション、結晶化などの慣用の方法により再変換する。
【0026】
あるいは、例えば、式(2)の化合物を、適当な酸の酸ハライドと接触させて式(3)で示される化合物を得る。そのような酸ハライドは、一般的に入手可能であるか、または当分野で周知の方法、例えば少量のジメチルホルムアミドを用い、トルエン、塩化メチレン、またはクロロホルム等の不活性な溶媒中、約0〜80℃の温度にて三塩化リン、三臭化リン、オキシ塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、臭化チオニルまたは塩化オキサリルの作用により、対応する酸から容易に調製する。反応は、典型的には1〜24時間の間行う。酸ハライドを単離し、生成することができ、またはしばしば直接、即ち、単離および/または精製有りまたは無しで用いることができる。カップリング反応は一般に、適当な塩基を用いて反応中に生成した酸を捕捉する。適当な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジン、トリエチルアミン、N、N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、などが挙げられる。反応は、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等の溶媒中で慣用的に、または塩化メチレン、酢酸エチル、トルエンおよび水等の溶媒混合物中、Schotten-Baumann条件下で行われる。典型的にはカップリング反応を約20℃〜約80℃の温度で行い、典型的には約1〜24時間を要する。反応が完了したら、式(3)の生成物を抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、トリチュレーション、結晶化等の慣用的方法により回収する。
【0027】
反応式A、工程cは、式(4)で示される化合物を得るためのニトロ基の還元を示す。そのような還元は、当分野でよく知られている様々な方法によって行う。
【0028】
例えば、式(3)で示される化合物をパラジウム炭素等の触媒上で水素化して式(4)で示される化合物を得ることができる。そのような水素化は、一般に溶媒中で行い、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、または酢酸エチルまたはそれらの混合物等、様々な溶媒が適している。水素化は、20〜180psi(137〜1241kPa)の初期水素圧で行うことができる。反応物は、典型的には約0℃〜60℃の温度で行う。反応には、典型的には1時間〜3日間を要する。濾過、抽出、留去、トリチュレーション、沈殿、クロマトグラフィーおよび再結晶等の当分野でよく知られている技術により生成物を単離および精製することができる。
【0029】
反応式A、工程dでは、式(4)で示される化合物を適当なアニリド形成試薬と接触させて式Iで示される化合物を得る。適当なアニリド形成試薬としては、1−メチルチオ−1−メチル−N−(4−フルオロベンジル)−N−メチルインモニウムトリフラート、1−メチルチオ−1−メチル−N−(4−フルオロベンジル)−N−メチルインモニウムヨウ化物、2−メチルスルファニル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]オキサジントリフルオロメタンスルホン酸塩および(R)−3−メトキシ−1−メチル−5−メチルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロリウムヨウ化物が挙げられる。当業者は、適当なアミジン形成試薬を前もってまたは所望ならばin situで調製することができることを認識する。
【0030】
例えば、式(4)で示される化合物を約1〜3当量の適当なアミジン形成試薬と接触させる。反応は、一般に、塩化メチレン、トルエン、またはテトラヒドロフラン等の乾燥溶媒中、約−20℃〜50℃の温度にて行う。反応は、ピリジン、コリジン、またはトリエチルアミン等の適当な塩基を用いて行う。この反応は、典型的には1〜18時間を要する。生成物を、クエンチング、濾過、抽出、留去、トリチュレーション、沈殿、クロマトグラフィー、および再結晶等の当分野でよく知られている技術によって単離および精製することができる。
【0031】
容易に認識さるように、Rが工程bで導入される保護基である場合、その保護基は工程dの後で脱離し、残ったアミンを、上記工程bにも記載したとおり、適当な酸または酸ハライドとカップリングさせて式Iで示される化合物を得ることができる。
【0032】
いくつかの式Iで示される化合物は、式Iで示される他の最終化合物の中間体である。例えば、R2がヨードである場合、別の試薬、例えば、2−(トリブチルスタンニル)チオフェンまたは2−(トリブチルスタンニル)ピリジンを用いて、ヨウ素を脱離基として置換し、最終生成物における所望の異なるR2基に置換することができる。
【0033】
反応式A、任意の工程e(示さず)では、製薬的に許容し得る酸を用いて、式Iで示される化合物の酸付加塩を形成する。酸付加塩の形成は、当分野でよく知られており認識されている。
【0034】
4が水素である式Iで示される化合物は、式(3)の化合物またはアミン保護された式(2)の化合物から脱酸素化によって製造する。そのような脱酸素化反応は当分野で周知の、例えば、Larock, Comprehensive Organic Transformations, pg. 44-52 (1999)に記載された方法を用いて容易に行う。あるいは、R4が水素である式Iで示される化合物を、反応式Bに記載した方法により製造する。反応式Bでは、特に記載しない限り、置換基はすべて上記で定義したものであり、試薬はすべて当分野でよく知られ認識されているものである。
【0035】
【化4】

反応式B、工程aは、式(6)で示される化合物を得るための、式(5)で示される化合物の還元的アミノ化を示す。そのような還元的アミノ化は、様々な条件下で行う。アンモニアまたは保護されたベンジルアミン、ジベンジルアミン等のアミンを用いて反応式B、工程aに示した反応を行った後、脱保護して式(6)で示される化合物を得る。
【0036】
例えば、式(5)で示される化合物を過剰のアンモニアおよびナトリウムシアノ水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、式(6)で示される化合物を得る。当分野でよく知られているように、このような反応中にはpHを監視し、調整することが有用であろう。反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、および水またはそれらの混合物等の溶媒中で行う。典型的には、約0℃〜約60℃の温度にて反応を行い、典型的には約1〜約24時間を要する。反応が完了したら、式(6)の生成物を、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、トリチュレーション、結晶化等の慣用の方法により回収する。
【0037】
反応式B、工程b、c、dおよび随意の工程eは、反応式A、工程b、c、dおよび随意の工程eにおいて記載した方法によって行い、式Iで示される化合物を得る。
【0038】
4がフルオロである式Iで示される化合物は、例えば、Larock、Comprehensive Organic Transformations, pg. 689-701 (1999)に記載の当分野で周知のハロゲン化法により、式(3)の化合物からまたはアミン保護された式(2)の化合物から製造する。
【0039】
本発明を以下の実施例および製造例によりさらに説明する。これらの実施例および製造例は、単なる説明であって、本発明の限定を何ら意味するものではない。
【0040】
実施例および製造例において用いられる用語は、特に記載しない限り、その通常の意味を有する。例えば、「℃」は摂氏温度を意味し;「M」はモル濃度を意味し;「mmol」はミリモルを意味し;「g」はグラムを意味し;「mL」はミリリットルを意味し;「mp」は融点を意味し;「ブライン」は飽和塩化ナトリウム水溶液を意味する、等である。1H NMRにおいては、特に記載しない限り、化学シフトはすべてδで示す。
【0041】
カップリング方法
方法A
2'−クロロビフェニル−4−カルボン酸
メチル−4−ブロモベンゾエート(1.0g,4.65mmol)、2−クロロフェニルボロン酸(799mg,5.1mmol)、Pd(OAC)2(51mg,0.46mmol)および炭酸ナトリウム(1.5g,13.9mmol)をDMF(20mL)および水(2.0mL)中で攪拌しながら混合した。反応混合物をアルゴンでパージし、トリフェニルホスフィン(61mg,0.23mmol)を加え、アルゴンで再度パージした。密閉した反応物を80℃に維持した油浴中に置き、1時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して2'−クロロビフェニル-4−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製したエステルをTHF(0.25M)に溶解し、同体積の1M NaOHを加えた。室温にて15時間十分に攪拌した。完了したら、反応物を濃塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去して762mg(67%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z231.1(M−H)。
【0042】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表1】

【0043】
方法B
5−フェニルピラジン−2−カルボン酸
5−クロロピラジン−2−カルボン酸メチルエステル(626mg,3.64mmol)、フェニルボロン酸(666mg,5.45mmol)、フッ化セシウム(55mg,0.36mmol)およびNa2CO3(964mg,9.09mmol)を攪拌しながらDMF(5mL)および水(5mL)に溶解した。空気中に開放された、異成分からなる反応混合物を80℃の油浴中に置いた。5分間加熱した後、Pd(OAC)2(81mg0.36mmol)を一度に加え、反応混合物が黒くなるまで攪拌した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して2−フェニルピリミジン−5−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製したエステルをTHF(0.25M)に溶解し、同体積の1M NaOHを加えた。室温にて15時間十分に攪拌した。完了したら、反応物を濃塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去して63mg(8%)の表題化合物を得た。1H NMR(DMSO):9.37(s,1H)、9.21(s,1H)、8.23−8.21(m,2H)、7.57−7.77(m,3H)。
【0044】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表2】

【0045】
方法C
3',4'−ジフルオロビフェニル−4−カルボン酸
3,4−ジフルオロベンゼンボロン酸(1.0g,5.2mmol)、メチル−4−ブロモベンゾエート(0.241g,1.73mmol)、Pd(OAC)2(0.019g,0.086mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.111g,0.345mmol)、およびリン酸カリウム(0.733g,3.454mmol)を混合した。反応容器をアルゴンでパージし、無水DNF(20mL)を反応混合物に加えた。密閉した反応溶液を攪拌しながら反応が完了するまで120℃に加熱した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して3',4'−ジフルオロビフェニル−4−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製されたエステルをジオキサン(45mL)に溶解し、同体積の1M NaOH水溶液を加えた。反応容器を、攪拌しながら反応が完了するまで60℃に加熱した。留去により溶媒を除去した。残留物をジクロロメタンに溶解し、1N塩酸水溶液で洗浄した。有機物をMgSO4で乾燥し、濾過し、留去して0.048g(12%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z235(M+H)。
【0046】
以下の化合物は、本質的に上記のとおり製造した。
【表3】

【0047】
方法D
2',4',6'−トリメチルビフェニル−4−カルボン酸
1−ヨード−2,4,6−トリメチルベンゼン(2.966g,12.05mmol)、4−カルボキシフェニルボロン酸(1.0g,6.026mmol)、Pd(OAC)2(0.0067g,0.005mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(0.388g,1.206mmol)、およびリン酸カリウム(2.557g,12.05mmol)を混合した。反応容器をアルゴンでパージし、無水DNF(20mL)を反応混合物に加えた。密閉した反応溶液を攪拌しながらTLCにより反応の完了が決定するまで120℃に加熱した。反応物を室温に冷却した。ヨウ化メチル(1.0mL,36.63mmol)を反応が完了するまで攪拌しながら反応混合物に加えた。反応物を酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、2',4',6'−トリメチルビフェニル−4−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製されたエステルを、5等量のLiOHを含有するジオキサン(45mL)および水(5mL)に60℃にて攪拌しながら溶解した。完了したら、溶媒を留去し、反応混合物を塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機物をMgSO4で乾燥し、濾過し、留去して0.023g(16%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z239.1(M−H)。
【0048】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表4】

【0049】
方法E
2',4'−ジフルオロビフェニル−4−カルボン酸
4−カルボメトキシフェニルボロン酸(1.021g,5.67mmol)、1−ブロモ−2,4−ジフルオロベンゼン(1.000g,5.181mmol.)、Pd(OAC)2(0.113g,0.50mmol)、トリフェニルホスフィン(0.149g,0.505mmol)、および炭酸ナトリウム(1.664g,0.568mmol)を混合した。反応容器をアルゴンでパージした。DMF(20mL)および水(2.0mL)を攪拌しながら加えた。密閉した反応物を80℃の油浴中に置き、24時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して2',4'−ジフルオロビフェニル−4−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製したエステルをジオキサン(5mL)に溶解し、5M NaOH(1mL)を加えた。50℃にて15時間十分に攪拌した。完了したら、反応物を濃塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去して300mg(24.7%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z233.0(M−H)。
【0050】
方法F
6−(2,6−ジフルオロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸
6−クロロピリジン−3−カルボン酸メチルエステル(6.86g,40mmol)をトルエン(100mL)に溶解し、90℃に加熱した。オキシ塩化リン(25g,87mmol)を数回に分けて添加し、加熱を3時間継続した。反応物を室温に冷却し、氷水に投入した。反応物を酢酸エチルで抽出し、有機物を再度水で洗浄した後、NaHCO3で洗浄した。有機物を集め、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去して、6−ブロモピリジン−3−カルボン酸メチルエステル:6−クロロモピリジン−3−カルボン酸メチルエステルの8:1混合物(1H NMRによる)である橙色の固体(8.1g,94%)を得た。
【0051】
上記で得た混合物(0.225g,1.04mmol)をヘキサメチルジチン(0.375g,1.15mmol)、Pd(OAC)2(21mg,0.09mmol)、およびトリフェニルホスフィン(25mg,0.09mmol)とトルエン(5mL)中で混合した。N2でパージし、80℃に18時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。1−ブロモ−2,6−ジフルオロベンゼン(250mg,1.29mmol)のトルエン(1mL)溶液、次いでPd(OAC)2(21mg,0.09mmol)およびトリフェニルホスフィン(25mg,0.09mmol)を加えた。N2でパージし、80℃でさらに18時間攪拌した。反応物を室温に冷却した。溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ、10%酢酸エチルのヘキサン溶液)により精製して、50mg(収率20%)の6−(2、6−ジフルオロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。エステルを、1N水酸化ナトリウム溶液(0.22mL,0.22mmol)のメタノール(3mL)溶液で室温にて3日間加水分解した。減圧下で揮発性物質を留去し、残留物を1N塩酸溶液と混合した。白色の固体を濾過により集め、水で洗浄し、減圧乾燥して30mg(63収率%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z235.9(M+H)。
【0052】
方法G
3−フルオロビフェニル−4−カルボン酸
メチル2−フルオロ−4−ブロモベンゾエート(1.25g,5.36mmol)、フェニルボロン酸(1.30g,10.72mmol)およびCsF(2.02g,13.40mmol)をDMF(25mL)および水(3.0mL)中で攪拌しながら混合した。異成分からなる反応混合物を、空気中に開口した状態で80℃に維持した油浴中に置いた。5分間加熱した後、Pd(OAC)2(120mg,0.536mmol)を一度に加え、反応物が黒く変化するまで攪拌した。反応物を室温へ冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して、3−フルオロビフェニル−4−カルボン酸メチルエステル固体として得た。THF(0.25M)中でエステルを精製し、同体積の1M NaOHを加えた。室温にて15時間十分に攪拌した。完了したら、反応物を濃塩酸で酸性化し、酢酸エチルで抽出した。溶媒を留去して965mg(84%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z214.9(M−H)。
【0053】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表5】

【0054】
方法H
2−フルオロ−6−フェニルピリジン−3−カルボン酸
2,6−ジフルオロピリジン(5.0mL,5.51mmol)を無水THF(30mL)に溶解し、−40℃に冷却した。フェニルリチウムの溶液(1.8Mヘキサン、30.6mL)を5分かけて滴加した。得られた紫色の反応物を−40℃にて30分間攪拌し、室温にした。反応物を水でクエンチし、溶液を酢酸エチルで数回抽出した。有機抽出物を集め、MgSO4で乾燥し、濾過し、シリカゲル上で濾過および留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して2−フルオロ−6−フェニルピリジン1.0g(12%)を黄色の油状物として得た。
【0055】
無水THF(6mL)中のLDA(3.46mmol)の溶液を−78℃に冷却した。無水THF(6mL)中の2−フルオロ−6−フェニルピリジンを冷却したLDA溶液にカニューレで加えた。−78℃で30分間攪拌した後、溶液に二酸化炭素ガスを10分間バブリングした。反応物を室温にし、アルゴンをパージした。反応物を1M NaOHで抽出し、有機物を廃棄した。水層を濃塩酸で酸性化し酢酸エチルで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、留去して表題化合物を淡黄色の固体(405mg,65%)として得た。MS(ES):m/z216.1(M−H)。
【0056】
方法I
3,5−ジフルオロビフェニル−4−カルボン酸
1−ブロモ−3,5−ジフルオロベンゼン(0.863mL,7.50mmol)およびフェニルボロン酸(1.22g,10.00mmol)を混合し、方法Gに記載した条件下に付し,1.3gの3,5−ジフルオロビフェニルを得た。
【0057】
粗製の3,5−ジフルオロビフェニル(1.3g,6.83mmol)をTHF(14mL)に溶解し、−78℃に冷却した。LiTMPから調製した。BULi(1.6Mのヘキサン溶液、5.33mL)をTHF(14mL)中の−78℃のテトラメチルピペリジン(1.4mL,1.25当量)に添加することにより調製した。冷却したLiTMPを冷却した3,5−ジフルオロビフェニルにカニューレで加え、反応物を−78℃で1時間攪拌した。二酸化炭素ガスを溶液に5分間バブリングし、反応物を室温に加温し、50mLの1M NaOHに投入し、50mLのEtOAcで抽出した。有機層を廃棄した。残りの水層を濃塩酸で酸性化し、EtOAcで2回抽出した。有機物をMgSO4で乾燥し、濾過し、留去して1.22gの表題化合物を白色の固体(77%)として得た。MS(ES):m/z233.1(M−H)。
【0058】
方法J
3,2',6'−トリフルオロビフェニル−4−カルボン酸
メチル4−ブロモ−2−フルオロベンゾエート(3.66g,15.75mmol)、4,4,5,5,4',4',5',5'−オクタメチル−2,2'−ビ−1,3,2−ジオキサボラニル(5.0g,19.68mmol)および酢酸カリウム(4.63g,47.19mmol)をDMSO(40mL)で混合し,この溶液をアルゴンでパージした。PdCl2(1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)2(10mol%,1.35g)を加え、この溶液をアルゴンで再度パージした。反応物を80℃に3時間加熱し、室温へ冷却した。反応物を水で洗浄し、酢酸エチルで抽出し、濃縮した。得られた黒色の油状物を再度溶解し、1:2の酢酸エチル:ヘキサン、シリカゲルのショートプラグで濾過し、濃縮して2−フルオロ−4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボラン−2−イル)安息香酸メチルエステルを黄色の油状物として得た。
【0059】
得られた黄色の油状物をアセトン(100mL)に溶解し、NaIO4(10.1g,47.25mmol)、NH4OAc(3.63g,47.25mmol)、および水(50mL)と室温にて混合した。室温にて18時間攪拌した後、分液漏斗に移し、酢酸エチルで数回抽出した。集めた有機物をMgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮して3.0gの3−フルオロ−4−カルボメトキシベンゼンボロン酸を灰白色の固体として得た。
【0060】
上記で得られたボロン酸(800mg,4.04mmol)および2,6−ジフルオロブロモベンゼン(1.17g,6.06mmol)を方法Gに記載された手順にしたがってカップリングして380mgの表題化合物を得た。MS(ES):m/z251.1(M−H)。
【0061】
方法K
6−フェニルピリダジン−3−カルボン酸
6−フェニルピリダジン−3−オール(5.0g,29.06mmol)のトルエン(100mL)溶液を90℃に加熱した。オキシ塩化リン(25g,87.19mmol)を数回に分けて加え、反応物を30分間加熱した。得られた黄色の溶液を室温へ冷却し、氷水に投入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および1M NaOHでさらに洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去して黄色の固体を得た。CHCl3から再結晶して2.17gの3−ブロモ−6−フェニルピリダジンを得た。
【0062】
3−ブロモ−6−フェニルピリダジン(1.0g,4.25mmol)をDMF(5mL)、MeOH(5mL)、トリエチルアミン(1.18mL,8.50mmol)、およびPd(OAC)2(76mg,0.33mmol)と混合し、混合物を脱気した。1,1'−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(235mg,0.42mmol)を加え、反応物を再度脱気した。二酸化炭素ガスを溶液に5分間バブリングし、反応物を50psi(345kPa)の二酸化炭素下に置いた。得られた溶液を50℃に18時間加熱した。反応物を室温に冷却し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機物をMgSO4で乾燥し、濾過し、シリカゲルで留去し、フラッシュカラムクロマトグラフィーに付した。
【0063】
方法Aにおいて概説した条件を用いる加水分解によって80mgの表題化合物を得た。1H NMR(CDCl3):8.24(d,1H、J=8.8Hz)、8.18−8.15(m,2H)、8.0(d,1H、J=9.2Hz)、7.56−7.55(m,3H)。
【0064】
方法L
6−(4−フルオロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸
DMF(25mL)および水(4mL)中の6−ブロモピリジン−3−カルボン酸メチルエステル(1.03g,4.78mmol)、4−フルオロフェニルボロン酸(1.88g,13.41mmol)、およびフッ化セシウム(2.55g,16.78mmol)の溶液を、攪拌しながら混合した。空気中に開放した状態で、異成分からなる反応混合物を80℃に維持した油浴中に置いた。5分間加熱した後、Pd(OAC)2(150mg,0.67mmol)を一度に加えた。17時間後、反応物を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、さらなる酢酸エチルとともにセライトのショートプラグで濾過した。有機物を水で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、留去した。フラッシュクロマトグラフィーにより精製して6−(4−フルオロフェニル)ピリジン−3−カルボン酸メチルエステルを黄色の固体として得た。精製したエステルをTHF(0.25M)に溶解し、同体積の1M NaOHを加えた。室温にて15時間十分に攪拌した。完了したら、反応物を濃塩酸で酸性化し、白色の沈殿を濾過により集めた。減圧下で乾燥して385mg(37%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z218.1(M+H)。
【0065】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表6】

【0066】
方法M
6−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピリジン−3−カルボン酸
6−ブロモピリジン−3−カルボン酸メチルエステル(387mg,1.79mmol)、4−フルオロ−2−メチルフェニルボロン酸(338mg,2.19mmol)、Pd(OAC)2(40mg,0.18mmol)、フッ化セシウム(27mg,0.18mmol)および炭酸ナトリウム(570mg,5.38mmol)をDMF(6mL)および水(6mL)中で攪拌しながら混合した。反応混合物をN2でパージし、トリフェニルホスフィン(47mg,0.18mmol)を加え、N2で再度パージした。密閉した反応物を80℃に維持した油浴中に置き、17時間攪拌した。反応物を室温に冷却し、シリカゲルのショートプラグで濾過した。カラムをジクロロメタン(100mL)、次いでメタノール水溶液(100mL,3メタノール/1水)で洗浄した。集めた画分を減圧濃縮し、得られた固体を水(10mL)に懸濁した。黒色の固体を濾過して除き、1N塩酸溶液でpH4に酸性化した。白色の沈殿が形成し、これを濾過により集め、乾燥して306mg(74%)の表題化合物を得た。MS(ES):m/z231.9(M+H)。
【0067】
以下の化合物を本質的に上記のとおり製造した。
【表7】

【0068】
製造例1−1
4−メチルチアゾリジン−2−チオン
1N水酸化ナトリウム(63mL)をDL−2−アミノプロパン−1−オール(1.0mL,12.55mmol)に加えた。二硫化炭素を混合物に加え、17時間還流した。室温へ冷却し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を水、飽和塩化ナトリウムで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチル中の50%ヘキサンで溶出するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して標題の化合物を白色の固体として得た。MS (ES): m/z 134 (M+H)。
【0069】
製造例1−2〜1−12は、本質的に製造例1−1と同様に製造した。
【表8】

【0070】
塩基として1N炭酸ナトリウムを用い、混合物を110℃に30分間加熱し、製造例1−1の手順にしたがって、製造例1−13および1−14に例示されるオキサゾリジン−2−チオンのみを得た。
【表9】

【0071】
製造例2−1
2−メチルスルファニル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]オキサジントリフルオロメタンスルホネート
3−アミノ−1−プロパノール(0.4mL,5.23mmol)のジクロロメタン(60mL)溶液を、ジクロロメタン(60mL)中のチオカルボニルジイミダゾール(932mg,5.23mmol)の攪拌した溶液に1時間かけて加えた。反応物を室温にて18時間攪拌し続けた。溶媒を減圧留去し、残留物をクロロホルム中の2%エタノールを用いて溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製した。この反応により生成物[1,3]オキサジナン−2−チオン486mgを得た。
【0072】
[1,3]オキサジナン−2−チオン(205mg,1.75mmol)をジクロロメタン(4mL)に溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル(0.2mL,1.76mmol)を加えた。17時間後、反応溶液をエーテルに投入すると油状物が生成して沈殿した。傾斜してエーテル層を除去し、油状物をエーテルで2回洗浄した。油状物を減圧下で乾燥して、表題化合物434mgを油状物として得た。
【0073】
製造例2−2〜2−20は、本質的に製造例2−1と同様に製造した。
【表10】

【表11】

【0074】
製造例3−1
3−メチル−2−メチルスルファニル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン−3−イウムトリフルオロメタンスルホネート
2−メチルスルファニル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]チアジン(52.8mg,0.358mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル(0.04mL,0.353mmol)をジクロロメタン(2mL)中で混合し、室温にて17時間攪拌した。反応物をエーテルで希釈して油状物を沈殿させた。傾斜により溶媒を除去し、エーテルで2回洗浄した。油状物を減圧下で乾燥して表題化合物104mgを得た。
【0075】
製造例3−2は本質的に製造例3−1と同様に製造した。
【表12】

【0076】
製造例4−1
(R)−3−メトキシ−1−メチル−5−メチルスルファニル−3,4−ジヒドロ−2H−ピロリウムヨージド
(R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−オン(1.0g、9.9mmol)を数回に分けて、室温のテトラヒドロフラン中の鉱油(400mg,10.0mmol)中の60%水素化ナトリウムの攪拌した懸濁液に加えた。50℃に2時間加熱し、室温にて20時間攪拌を続けた。ヨードメタン(2.48mL,20mmol)を加え、さらに70時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残留物をジクロロメタンおよび飽和塩化ナトリウム溶液に溶解した。水層をさらにジクロロメタンで3回洗浄し、集めた有機層を乾燥し、残留物を減圧下で濃縮して粗製の4−メトキシ−1−メチルピロリジン−2−オン587mg(4.5mmol)を黄色の油状物として得た。MS(ES): m/z 130.1 (M+H)。
【0077】
この油状物をLawesson試薬(1.1g、2.7mmol)とともにトルエン(50mL)に溶解し、80℃に1時間加熱した。減圧濃縮し、生成物をエーテル中でスラリー化し、溶液を傾斜によって沈殿物から集めた。この操作を3回繰り返した。エーテル部分を集め、約50mLに減圧濃縮し、ヨードメタン(2.8mL、44.4mmol)を加えた。18時間時間後、溶媒を傾斜によって除き、残留した油状物を得、溶媒の残りを減圧下で留去して、表題化合物617mgを油状物として得た。
【0078】
製造例4−2〜4−6は、本質的に製造例4−1と同様に製造した。
【表13】

【0079】
製造例5−1
6−tert−ブトキシメチル−ピペリジン−2−オン
塩化チオニル(12.72mL,174mmol)を、氷浴中、エタノール106mL中の10.6g(66mmol)のDL−アルファ−アミノアジピン酸の懸濁液に滴加した。得られた均一の溶液を室温にて1.5時間攪拌した後、1時間還流した。反応混合物を蒸発乾固し、残留物を250mLのCHCl3に溶解し、125mLの0.15M水酸化ナトリウムおよび125mLの飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した。水層を集め、CHCl3で数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去した。残留物を高真空下で乾燥して、2−アミノ−ヘキサン二酸ジエチルエステル12.23gを油状物として得た(収率85.7%)。MS (ES): m/z 218.1 (M+H).
【0080】
12.23g(56.3mmol)の2−アミノ−ヘキサン二酸ジエチルエステルを110℃に3時間加熱した。生成したエタノールを高真空下で留去して6−オキソ−ピペリジン−2−カルボン酸エチルエステル(収率100%)を得た。MS (ES): m/z 172.1 (M+H).
【0081】
テトラヒドロフラン中の2M水素化ホウ素リチウム溶液(1.45g66.5mmol)をジクロロメタン160mL中の11.25g(65.8mmol)の6−オキソ−ピペリジン−2−カルボン酸エチルエステルに加えた。この混合物を室温にて1時間攪拌した。氷浴中で5N HClをガスの発生が起こらなくなるまで滴加することにより反応をクエンチした。得られた溶液を400mLのメタノールで希釈し、pHを7〜8に調整した。溶媒を留去し、残留した油状物を、ジクロロメタン:メタノール100:7.5を溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オン7.1gを白色の固体として得た(収率83.6%)。MS (ES): m/z 130.1 (M+H).
【0082】
−20℃のジオキサン15mL中の0.5g(3.87mmol)の6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オンの懸濁液に、0.5mLの硫酸を滴加した。イソブチレンを混合物に2時間バブリングした。混合物を室温にゆっくりと加温し、一晩攪拌した。反応混合物を炭酸水素ナトリウムと氷の混合物に投入した。水層をジクロロメタンで数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去し、減圧下で濃縮して表題化合物0.143gを油状物として得た(収率20%)。MS (ES): m/z 186.1 (M+H)。
【0083】
製造例5−2
6−イソプロポキシメチル−ピペリジン−2−オン
0.5g(3.88mmol)の6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オン、0.66g(3.88mmol)の2−ヨードプロパン、および0.39g(9.69mmol)の水素化ナトリウムを混合し、室温にて一晩攪拌した後、1時間還流した。溶媒を留去し、残留物を水とジクロロメタンの間に分配した。水層をジクロロメタンで数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去した。ジクロロメタン:メタノール100:4を溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、減圧下で濃縮して表題化合物25mgを油状物として得た(収率4%)。MS (ES): m/z 172.1 (M+H)。
【0084】
製造例5−3
6−メトキシメチル−ピペリジン−2−オン
テトラヒドロフラン(2mL)を6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オン(1mmol)および水素化ナトリウム(2.5mmol当量)の混合物に加えた。懸濁液を室温にて1時間攪拌した。ヨウ化メチル(1mmol当量)のテトラヒドロフラン溶液を反応混合物に滴加し、1時間攪拌し、水でクエンチした。水層をジクロロメタンで数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去し、残留物をジクロロメタン:メタノールを溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。MS (ES): m/z 144.0 (M+H)。
【0085】
製造例5−4〜5−6は、本質的に製造例5−3と同様に製造した。
【表14】

【0086】
製造例5−7
6−(2−メトキシ−エチル)−ピペリジン−2−オン
ピリジン0.92g(11.6mmol)、TFA0.66g(5.8mmol)およびEDC6.69g(34.8mmol)を、39mLのベンゼンおよび39mLのDMSO中の、6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オン1.5g(11.6mmol)の混合物に加えた。この混合物を室温にて4時間攪拌し、溶媒を留去して6−オキソ−ピペリジン−2−カルバルデヒドを得た。MS (ES): m/z 126.1 (M-H)。
【0087】
230mLのベンゼンを(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド11.97g(34.9mmol)およびナトリウムtert-ブトキシド3.35g(34.9mmol)の混合物に加えた。この懸濁液を室温にて15分間攪拌した。1.5g(11.6mmol)の6−オキソ−ピペリジン−2−カルバルデヒドを116mLのベンゼンに加え、反応混合物を70℃にて2時間加熱した。溶媒を留去し、ジクロロメタン:メタノール100:2を溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して6−(2−メトキシビニル)ピペリジン−2−オンを得た。MS (ES): m/z 156.1 (M+H)。
【0088】
68mgの10%Pd/Cを、酢酸エチル15mL中の6−(2−メトキシビニル)ピペリジン−2−オン0.1g(6.45mmol)の溶液に加えた。混合物を脱気し、H2バルーン下2時間攪拌した。Pd/Cを濾過し、濾液を蒸発乾固した。MS (ES): m/z 158.1 (M+H)。
【0089】
製造例5−8
6−フェノキシメチル−ピペリジン−2−オン
テトラヒドロフラン5mL中のアゾジカルボン酸ジエチル0.338g(1.94mmol)を、6−ヒドロキシメチル−ピペリジン−2−オン0.25g(1.94mmol)、フェノール0.182g(1.94mmol)、トリフェニルホスフィン0.508g(1.94mmol)、およびテトラヒドロフラン(15mL)の懸濁液に滴加した。得られた均一の溶液を室温にて一晩攪拌した後、1時間還流した。溶媒を留去して、残留した油状物を、酢酸エチル:メタノール100:2を溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物0.25gを白色の固体として得た(収率63%)。
【0090】
製造例5−9
1−メチル−6−トリフルオロメトキシメチル−ピペリジン−2−オン
12.74mLの1M三臭化ホウ素を、ジクロロメタン50mL中の1g(6.37mmol)の6−メトキシメチル−1−メチル−ピペリジン−2−オンの溶液に滴加した。この混合物を室温にて1時間攪拌し、氷浴中で冷却した。標準の水酸化アンモニウムをpHが約7になるまで加えた。溶媒を留去して、ジクロロメタン:メタノール100:7.5を溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、6−ヒドロキシメチル−1−メチル−ピペリジン−2−オン0.9gを白色の固体として得た(収率98.9%)。MS (ES): m/z 144.1 (M+H)。
【0091】
二硫化炭素1.06g(13.9mmol)および水素化ナトリウム0.56g(13.9mmol)を、テトラヒドロフラン40mL中の6−ヒドロキシメチル−1−メチル−ピペリジン−2−オン0.8g(5.6mmol)の溶液に加えた。溶液を室温にて5分間攪拌し、1.97g(13.9mmol)のヨウ化メチルを加えた。30分間攪拌した。テトラヒドロフランを留去し、残留物を水とジクロロメタンの間に抽出した。水層をジクロロメタンで3回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去して1.23gのジチオカルボン酸S−メチルエステルO−(1−メチル−6−オキソ−ピペリジン−2−イルメチル)エステルを油状物として得た(収率94.6%)。MS (ES): m/z 144.1 (M+H)。
【0092】
ジクロロメタン中の20mLのフッ化水素−ピリジンおよび1.26g(5.4mmol)のジチオカルボン酸S−メチルエステルO−(1−メチル−6−オキソ−ピペリジン−2−イルメチル)エステルを、−78℃のジクロロメタン50mL中の1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン4.64g(16.2mmol)の懸濁液に滴加した。混合物を0℃で1時間攪拌した。混合物をNaHCO3およびNaHSO3の水溶液に投入した。水層をジクロロメタンで数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去して表題化合物1.4gを油状物として得た。MS (m/e) = 211.9 (M+H)。
【0093】
製造例6−1
6−メトキシメチル-ピペリジン-2−チオン
6−メトキシメチル-ピペリジン−2−オン(1mmol)およびLawssen試薬(0.6mmol)のトルエン(5mL)溶液を3時間還流した。トルエンを留去し、残留した油状物をジクロロメタン:酢酸エチルを溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して標題の化合物を得た。MS (ES): m/z 160.0 (M+H)。
【0094】
製造例6−2〜6−7は、本質的に製造例6−1と同様に製造した。
【表15】

【0095】
製造例6−8
1−メチル−6−フェノキシメチル−ピペリジン−2−チオン
テトラヒドロフラン6mL中の、水素化ナトリウム76mg(1.9mmol)を6−フェノキシメチル−ピペリジン−2−チオン140mg(0.63mmol)およびヨウ化メチル270mg(1.9mmol)に加えた。混合物を30分間還流し、水でクエンチした。水層をジクロロメタンで数回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥し、留去して表題生成物を得た。
【0096】
製造例6−9
2−メトキシメチル−6−メチルスルファニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−ピリジントリフルオロメタンスルホネート
6−メトキシメチル−ピペリジン−2−チオン(1mmol)およびメチルトリフルオロメタンスルホネート(1.5mmol当量)のジクロロメタン(5mL)溶液を室温にて3時間攪拌した。溶媒を留去し、残留物を高真空下で乾燥して標題の化合物を得た。MS (ES): m/z 174.1 (M+)。
【0097】
製造例6−10〜6−16は、本質的に製造例6−9と同様に製造した。
【表16】

【0098】
製造例7−1
カルバミン酸tert-ブチルエステル(R)−(6−((R)−5−メトキシメチル−1−メチルピロリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化5】

(R)−2−メトキシメチル−1−メチル−5−メチルスルファニル−3、4−ジヒドロ−2H−ピロリウムヨージド(280mg,0.929mmol)およびN−((R)−6−アミノ−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)カルバミン酸tert-ブチルエステル(105mg,0.397mmol)をピリジンに溶解し、18時間攪拌した。溶媒を減圧留去した。ジクロロメタンを加え、飽和炭酸水素ナトリウム、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、クロロホルム中の5%メタノールおよび0.4%水酸化アンモニウムで溶出するフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して108mgの表題化合物を黄褐色の固体として得た。MS (ES): m/z 390 (M+H)。
【0099】
製造例7−2〜7−5は、本質的に製造例7−1と同様に製造した。
【表17】

【0100】
製造例8−1
カルバミン酸tert-ブチルエステル(R)−(6−(6−メトキシメチル−ピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化6】

表題化合物は、2−メトキシメチル−6−メチルスルファニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−ピリジントリフルオロメタンスルホネートおよび(6−アミノ−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステルを出発物質として、本質的に以下に記載の実施例3−1と同様に製造した。MS (ES): m/z 390.2 (M+H)。
【0101】
製造例9−1
1−アミノ−6−(6−メトキシメチル−ピペリジン−2−イリデンアミノ)−インダン−2−オール
【化7】

(R)−(6−(6−メトキシメチル−ピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル0.3g(0.77mmol)を氷浴中TFAと混合した。室温にて30分間攪拌した。TFAを留去し、残留物をメタノールに溶解し、ヒドロキシル樹脂を加えてpHを7に調整した。樹脂を濾過し、メタノールを留去し、残留物を高真空下で乾燥して、表題化合物0.173gを固体として得た(収率77.6%)。MS (ES): m/z 290.1 (M+H)。
【0102】
実施例1−1
4−ブロモフェニル−1−カルボン酸(R)−(6−([1,3]オキサジナン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル]アミド
【化8】

2−メチルスルファニル−5,6−ジヒドロ−4H−[1,3]オキサジントリフルオロメタンスルホン酸塩(350mg,1.76mmol)およびN−((R)−6−アミノ−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)−4−ブロモベンズアミド(201mg,0.58mmol)をピリジン(6mL)に溶解した。3時間攪拌し、溶媒を減圧留去した。油状物を一部クロロホルムに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄した。乾燥し、有機層を留去して油状物を得、これをクロロホルム中の4%メタノールおよび0.4%水酸化アンモニウムで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物24.6mgを白色の固体として得た。MS (ES): m/z 430.1 (M+H)。
【0103】
実施例1−2〜1−27は、本質的に実施例1−1と同様に製造した。
【表18】

【表19】

【表20】

【0104】
実施例2−1
ビフェニル−4−カルボン酸(R)−(6−((R)−5−メトキシメチル−1−メチルピロリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化9】

冷却した4mLのTFAを(R)−(6−((R)−5−メトキシメチル−1−メチルピロリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)カルバミン酸tert−ブチルエステル(102mg,0.262mmol)に加え、0℃で60分間攪拌した。TFAを減圧留去した。残留物をジクロロメタンで洗浄し、溶媒を減圧留去した。残留物を5mLの無水ジクロロメタンに溶解し、過剰のトリエチルアミンおよびビフェニル−4−カルボン酸2,5−ジオキソピロリジン−1−イルエステル(78mg、0.264mmol)を加え、室温にて18時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、ジクロロメタンを加えた。水、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、クロロホルム中の5%メタノールおよび0.4%水酸化アンモニウムで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して102mgの表題化合物を黄褐色の固体として得た。MS (ES): m/z 470 (M+H)。
【0105】
実施例2−2〜2−6は、本質的に実施例2−1と同様に製造した。
【表21】

【0106】
実施例3−1
4−ブロモフェニル−1−カルボン酸(R)−(6−(6−メトキシメチル−ピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化10】

2−メトキシメチル−6−メチルスルファニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−ピリジントリフルオロ−メタンスルホネート(1.5mmol当量)およびN−(6−アミノ−2−ヒドロキシ−インダン−1−イル)−4−ブロモ−ベンズアミド(1mmol)をピリジン(17.5mL/mmolアミド)中で混合し、室温にて一晩攪拌した。ピリジンを留去し、残留物をジクロロメタン:メタノールを溶出液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して標題の化合物を得た。MS (ES): m/z 472.1 (M+)。
【0107】
実施例3−2〜3−10は、本質的に実施例3−1と同様に製造した。
【表22】

【0108】
実施例4
置換されたビフェニルカルボン酸(R)−(6−(6−メトキシメチルピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化11】

DCC樹脂(0.15mmol、15当量)、100μLのN−ヒドロキシスクシンイミド(0.01mmol、1当量)、800μLのDMF、および100μL1−アミノ−6−(6−メトキシメチル−ピペリジン−2−イリデンアミノ)−インダン−2−オール(0.01mmol、1当量)をガラス容器に加えた。適当な置換されたビフェニルカルボン酸(0.04mmol、4当量)をこの容器に加えて10mM溶液を調製した。この容器を一晩回転させた。トリスアミン樹脂(0.1mmol、10当量)を加え、再度一晩回転させた。樹脂を濾過し、得られた溶液を集め、対応する置換されたビフェニルカルボン酸(R)−(6−(6−メトキシメチルピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミドを得た。
【0109】
実施例4−1〜4−15は、本質的に上記と同様に製造した。
【表23】

【表24】

【0110】
実施例5−1
2−メチルビフェニル−4−カルボン酸(R)−(6−(6−メトキシメチルピペリジン−2−イリデンアミノ)−2(R)−ヒドロキシインダン−1−イル)アミド
【化12】

DMF(1.6mL)をN−シクロヘキシルカルボジイミド−N−メチルポリスチレン樹脂(Novobiochem、2.0mmol/g)(150mg、0.30mmol)および2’,6’−ジクロロビフェニル−4−カルボン酸(14mg,0.05mmol)の混合物に加え、次いでDMF(0.2mL)中のN−ヒドロキシスクシンイミド(2.3mg,0.02mmol)の溶液、次いでDMF(0.2mL)中の1−アミノ−6−(6−メトキシメチルピペリジン−2−イリデンアミノ)インダン−2−オール(6.0mg,0.02mmol)の溶液を加えた。混合物を16時間攪拌した後、ポリスチレントリスアミン樹脂(Argonaut Technologies, 3.7mmol/g)(100mg、0.37mmol)を加え、さらに24時間攪拌した。混合物を濾過して表題化合物の0.01M溶液を得た。MS (ES): m/z 484 (M+)。
【0111】
実施例5−2〜5−11は、本質的に実施例5−1と同様に製造した。
【表25】

【0112】
本発明の化合物を単独で投与するか、または薬学的に許容し得る担体または賦形剤(それらの割合および性質は、選択される化合物の溶解性および化学的性質、選択される投与経路および通常の薬務により決定される)と組み合わせた医薬組成物の形態で投与することができる。本発明の化合物は、それ自体で有効であるが、安定性、結晶化の利便性、溶解性上昇などの目的のために製剤化してそれらの薬学的に許容し得る塩の形態で投与してもよい。実際には、式Iの化合物は、通常、医薬粗製物の形態、即ち製薬的に許容し得る担体または希釈剤と混合して、投与される。
【0113】
このように、本発明は式Iの化合物および製薬的に許容し得る希釈剤を含有する医薬粗製物を提供する。本発明はさらに、式Iの化合物を含有する医薬粗製物を含む、適当な包装(ラベルを含む)を提供する。
【0114】
式Iの化合物は、様々な経路により投与することができる。本明細書中に記載した障害に罹患している患者の治療を実施するために、経口および非経口投与を含む、式Iの化合物を有効量で生体利用可能にする任意の形態または様式で投与することができる。例えば式Iの化合物を、経口、吸入または皮下、筋肉内、静脈内、経皮、鼻腔内、直腸、眼内、局所、舌下、口腔内等により投与することができる。本明細書中に記載した障害の治療には、経口投与が通常好ましい。
【0115】
製剤を調製する当業者であれば、選択した化合物、治療すべき障害または状態、その障害または状態の段階および他の関連する環境の個々の特性に応じて、投与の適切な形態および様式を容易に選択することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Co.(1990))。
【0116】
薬学分野で周知の方法で医薬組成物を調製する。担体または賦形剤は、活性成分に対してビヒクル剤または媒体として作用し得る固体、半固体または液体の物質であってよい。適当な担体または賦形剤は当分野でよく知られている。医薬組成物を経口、吸入、非経口または局所的使用に適合させてもよく、錠剤、カプセル、エアゾル、吸入剤、座剤、溶液、懸濁液などの形態で患者に投与してもよい。
【0117】
本発明の化合物を、例えば不活性希釈剤もしくはカプセルと共に、または錠剤に打錠して、経口投与してもよい。経口治療的投与の目的で、本化合物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハース、チューインガムなどの形態で用いてもよい。これら調製物は、本発明の化合物、活性成分を少なくとも4%含むが、具体的な形態に応じて変動し得、その単位重量の4%〜約70%の間にあるのが好都合であろう。組成物中に存在する化合物の量は、適当な用量が得られるであろう量である。本発明に従った好ましい組成物および調製物は、当業者により決定されるであろう。
【0118】
錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは1またはそれ以上の次の補助剤を含んでいてもよい:微結晶性セルロース、トラガカントまたはゼラチンなどの結合剤;ラクトースなどの賦形剤;アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、コーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテックス(Sterotex)などの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;およびスクロースまたはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料などの香味剤を加えてもよい。投薬単位形態がカプセルである場合には、上記の型の物質に加えて、ポリエチレングリコールなどの液体の担体または脂肪油を含んでいてもよい。他の投薬単位形態は、投薬単位の物理的形態を修飾する他の様々な物質、例えばコーティングを含んでいてもよい。従って、錠剤または丸剤は、糖、セラックまたは他のコーティング剤でコーティングしてもよい。シロップは、本発明の化合物に加えて、甘味剤としてのスクロースおよびある種の保存剤、色素および着色剤および香味剤を含んでいてもよい。これらの様々な組成物の調製に用いられる物質は、薬学的に純粋で、使用する量において非毒性でなければならない。
【0119】
経口治療的投与の目的で、本発明の化合物を溶液または懸濁物中に混合してもよい。これら調製物は、通常、本発明の化合物を少なくとも0.001%含むが、その重量の0.001〜約90%の間で変更し得る。このような組成物中には、適当な用量が得られるであろう式Iの化合物量が存在する。また、これら溶液または懸濁液は、1またはそれ以上の次の補助剤:注射用水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌性希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張力調整用剤を含んでいてもよい。非経口調製物を、アンプル、使い捨て注射器またはガラスもしくはプラスチック製の多回投与用バイアルに封入することができる。当業者は、好ましい組成物および調製物を決定することができる。
【0120】
本発明の化合物は局所投与することができ、その場合、担体は溶液、軟膏またはゲル基剤を適切に含んでいてもよい。例えば、基剤は1またはそれ以上の次の物質を含んでいてもよい:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜ろう、鉱油、水およびアルコールなどの希釈剤および乳化剤、および安定化剤。局所製剤では、約0.1〜約10% w/v(単位容量当たりの重量)の濃度の式I化合物またはその製薬的塩を含んでもよい。
【0121】
式Iの化合物は、N−1ムスカリン受容体のアゴニストである。さらに、式Iの化合物は、特定のムスカリン受容体の選択的アゴニストである。本発明の化合物は、バイオアベイラビリティー、薬物動態学、安全性および有効性に関して特に有用な特性を有する。ムスカリン性アゴニスト(それらのサブタイプ結合プロフィールを含む)は、当業者に周知の方法により同定することができる。
【0122】
1つの態様にて、本発明は、有効量の式Iの化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む、ムスカリン受容体と関連する障害を処置するための方法を提供する。故に、本発明は、当業者ならば理解しうるように、本明細書中に、処置されると記載した様々な障害、およびそのようなアゴニストで処置され得る他の障害を想定している。
【0123】
ムスカリン性アゴニストにより処置することのできる多くの障害が、確立され認識されている分類により知られているが、それ以外は知られていない。例えば、認知とは複雑であり、時には定義不十分な現象である。しかしながら、広く認識されていることは、認知は、さまざまな「領域(domain)」を含むということである。これらの領域としては、短期記憶、長期記憶、作動記憶、実行機能および注意力を含む。
【0124】
本発明の化合物は、上記の認知領域のいずれか、または認知の他の面における欠損により特徴付けられる障害の処置に有用であると理解されている。故に、用語「認知障害」とは、1つまたはそれ以上の認知領域における欠損により特徴付けられる障害を包含することを意味し、それらは、短期記憶、長期記憶、作動記憶、実行機能および注意力を含むがこれに限られない。
【0125】
本発明により処置される認知障害の1つは、加齢性認知機能低下である。この障害は、本技術分野において十分には定義されていないが、加齢に伴う、認知領域、具体的には記憶および注意力領域の減退を含む。他の認知障害は、軽度認識機能障害である。この場合も、この障害は本分野において十分には定義されていないが、認知領域の低下を伴い、多数が初期のアルツハイマー病に罹患している患者の群を表すと考えられている。他の認知障害は、統合失調症に関連する認識機能障害である。認知障害(cognitive disturbance)と他の統合失調症症候群の関係は、現在明確に理解されていない。陽性症状を発現するかなり前に認知的な問題を経験する者もいれば、最初の発症後に認知力の低下、およびその後の再発を経験する者もいる。さらにもう1つの認知障害が、化学療法誘発性認識機能障害である。がんの化学治療を経験した人々は、認知機能の減退を経験し、この減退は長期持続性であり得る。また、脳卒中、虚血、低酸素症、炎症、心臓バイパス手術および移植、脳卒中、脳虚血、脊髄損傷、頭部外傷、周生期低酸素症、胎児期アルコール症候群、心停止ならびに低血糖性神経細胞損傷、血管性痴呆、多発脳梗塞性痴呆、筋萎縮性側索硬化症、化学療法、および多発性硬化症につづいて起こる感染性プロセスを含む多種多様な発作、ならびに認知障害は、本発明により処置することのできる後遺症(続発症)(sequella)としての認知障害に帰着しうる。
【0126】
ムスカリン性アゴニストにより処置することのできる障害が、確立され認められた分類したがって知られている場合、これらの分類は様々な情報源に見られる。例えば、現在、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(DSM−IV(登録商標))、第4版(1994, American Psychiatric Association, Washington, D.C.)が、本明細書に記載された多くの障害を同定するための診断ツールを提供している。また、the International Classification of Diseases, Tenth Revision(ICD−10)が、本明細書に記載された多くの障害の分類を提供している。当業者は、本明細書に記載の障害に関する代替的学名(alternative nomenclature)、病気の知識および分類系(DSM−IVおよびICD−10に記載のようなものを含む)、ならびにその専門用語、医科学的進歩に伴う分類系があることを認識しうる。
【0127】
特に好ましい態様にて、本発明は、認知障害(加齢性認知障害、軽度認識機能障害、統合失調症に関連する認識機能障害、および化学療法誘発性認知障害を含む)、ADHD、気分障害(うつ病、躁病、躁うつ病を含む)、精神疾患(具体的には、統合失調症および統合失調症様障害)、痴呆(アルツハイマー病、AIDS誘発性痴呆、血管性痴呆および明確な組織学を欠く痴呆を含む)、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、疼痛(急性疼痛および慢性疼痛を含む)、口腔乾燥症(ドライマウス)、レビー小体病(広範性レビー小体病を含む)、失語症(原発性失語症および原発性失語症候群を含む)、失語症(原発性失語症および原発性失語症候群を含む)、低血圧症候群および慢性大腸炎(クローン病を含む)からなる群から選択される障害を処置する方法であり、有効量の式Iの化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。すなわち、本発明は、ムスカリン受容体と関連する障害の処置のための、式Iの化合物またはその医薬組成物の使用を提供する。
【0128】
用語「処置」および「処置する」とは、本明細書に記載のムスカリン受容体と関連する障害のそれぞれと関連する症状の改善を含むことを意図していると認識されている。さらに、当業者は、有効量の式Iの化合物を用いて、現在障害に罹患している患者を処置することにより、あるいはそのような障害を起こしやすいと考えられる患者を予防的に処置することにより、障害に影響を及ぼすことも認められている。故に、用語「処置」および「処置する」とは、本明細書に記載した障害の進行を遅延、中断、抑止、制御、または停止しうるすべての方法を意味することを意図しているが、必ずしも全症状の完全な除去を意味するものではなく、また、そのような障害の予防的処置をも含むことを意図している。
【0129】
本発明は、本明細書に記載の障害の補助療法を含むと解される。より具体的には、式Iの化合物は、認知障害(cognitive deficit)が症状の一つである疾患を、広範な他の治療用薬物と組合せて、特に、AMPA増強剤(potentiator);オランザピンを含む定型および非定型の抗精神病薬;様々な物質、例えばmGluRアゴニスト、NMDAアンタゴニスト、IL1−6阻害剤、コリンエステラーゼ阻害剤、例えばタクリンおよびドネペジルを含む他のコリン作用性物質、ならびにアミロイド前駆体タンパク質プロセシングの阻害剤およびアミロイドタンパク質に対する抗体を含むアミロイドタンパク質プロセシングを阻害する化合物;SSRIおよびSNRI、例えばフルオキセチン、パロキセチンおよびベンラファクシンを含む抗うつ薬;および、抗不安薬など、と組合せて治療するのに有用である。上述の組合せは、個々の構成成分が同様の効果を生じるのに必要な量よりも少い用量で効果をもたらす場合、相乗的であると考えられる。
【0130】
上記の補助的処置により、本発明は、認知障害が兆候の1つである障害の処置にて同時に、別々にまたは連続して投与される複合調製物としての、式Iの化合物および以下からなる群から選択される1つまたはそれ以上の治療物質を含む製品を提供する:AMPA増強剤;オランザピンを含む定型および非定型の抗精神病薬;mGluRアゴニスト;NMDAアンタゴニスト;IL1〜6阻害剤;コリンエステラーゼ阻害剤、例えばタクリンおよびドネペジル;アミロイド前駆体タンパク質プロセシングの阻害剤およびアミロイドタンパク質に対する抗体を含むアミロイドタンパク質プロセシングを阻害する化合物;SSRIおよびSNRI、例えばフルオキセチン、パロキセチンおよびベンラファクシンを含む抗うつ薬;および抗不安薬。もう1つの態様において、本発明は、認知障害が兆候の1つである障害の処置において、同時に、別々にまたは連続して投与される複合調製物としての医薬の製造するための、以下から選択される1つまたはそれ以上の治療薬物と一緒での本発明の化合物の使用を提供する:AMPA増強剤;オランザピンを含む定型および非定型の抗精神病薬;mGluRアゴニスト;NMDAアンタゴニスト;IL1〜6阻害剤;コリンエステラーゼ阻害剤、例えばタクリンおよびドネペジル;アミロイド前駆体タンパク質プロセシングの阻害剤およびアミロイドタンパク質に対する抗体を含むアミロイドタンパク質プロセシングを阻害する化合物;SSRIおよびSNRI、例えばフルオキセチン、パロキセチンおよびベンラファクシンを含む抗うつ薬;および、抗不安薬。
【0131】
本明細書において用いられる用語、「同時に、別々にまたは連続して投与」は、2またはそれ以上の治療物質が、ある時間枠の中で投与され、その時間における適当な時点で治療物質のすべてが治療活性をもたらすことを可能にすることを意味する。即ち、治療活性が同じ時間帯となる必要はないが、少なくともある程度オーバーラップする。
【0132】
本明細書にて用いた、用語「患者」とは、ムスカリン受容体と関連する1つまたはそれ以上の障害に罹患している哺乳動物を含む。モルモット、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、そしてヒトが用語の意味の範囲内の動物の例であると解される。
【0133】
本明細書に用いた、式Iの化合物の「有効量」という用語は、すなわち、本明細書に記載の障害の処置において有効な投薬の量を示した。
【0134】
有効量は、当業者としての主治診断医が、常法並びに類似の状況下で得られた観察結果に基づいて容易に決定することができる。有効量、本発明の化合物の投与量の決定に際し、主治診断医は以下に例示する多くの因子を考慮する。投与される式Iの化合物;使用される場合には、他の治療薬の共投与;哺乳動物の種類;そのサイズ、年齢および全身的健康状態;関連する特定の障害;疾患の程度または重篤度;個々の患者の反応性;投与の様式;投与した製剤の生物学的利用率特性;選択した投薬療法;他の併用薬の使用;および、他の関連する状況等(これらに限定されない)。
【0135】
式Iの化合物の有効量は、一日につき、体重1キログラム当たり約0.01ミリグラム(mg/kg/日)〜約50mg/kg/日の間で変化すると思われ、好ましくは一日につき、体重1キログラム当たり約0.1ミリグラム(mg/kg/日)〜約20mg/kg/日である。さらに好ましい量は、当業者により決定され得る。
【0136】
本発明により処置される障害として、多くの障害が特に好ましい。具体的に好ましい障害としては、認知障害(特に、軽度認識機能障害および統合失調症と関連する認識機能障害)、アルツハイマー病および統合失調症を含む精神疾患が含まれる。
【0137】
多数の前臨床実験動物モデルを本明細書中に記載の障害に関して記載する。
【0138】
実施例A
放射状迷路
遅延非見本合わせ課題は、記憶保持に対する薬物の効果を調べるために(Pussinen, R.およびSirvio, J. J of Psychopharm 13:171-179(1999);Staubli, U.ら Proc Natl Acad Sci 91:777-781(1994))、8方向放射状迷路で使用されている。
【0139】
よく訓練されたラットに、ランダムに選択された迷路のアーム4本から、報酬用の餌を取得させた(サンプリング期)。しばらくしてから、ラットを8本の開いたアームに相対させ、先に侵入して餌を得たアームを記憶していてそれを避ける能力について試験した。サンプリングセッション中に餌を入れておいたアームへの再侵入は参照記憶エラーとして数え、記憶保持セッション中に2回以上同じアームに侵入した場合を作業記憶エラーとして数えた。記憶保持試験中になされる総(参照記憶+作業記憶)エラー数は、遅延期間が長引くに連れて増加する。例えば若い雄ラットは、1分の遅延時間で0.66(+0.4)回のエラーをし、1時間の遅延時間では2(+0.5)回のエラーをし、7時間の遅延時間では3.95(+0.2)回のエラーをする(本研究室での観察結果)。
【0140】
雄のSprague-Dawleyラットを、12時間の明暗周期(午前6時に点灯)で個別に収容し、飼育した。ラットには自由に水を摂取させ、Purina Lab Chowの補足的給餌により、自由摂食時体重の85%に維持した。
【0141】
ラットをまず、8本のアームの各末端に置いた餌を探すように訓練した。連続する3日間で、ラットがエラー(すなわち1セッション中に2回以上同じアームに入ること)を3回以上しないという基準に到達したら、1分の遅延時間を、第4アーム選択と第5アーム選択の間においた。この訓練により、ラットは、薬物投与を受ける前に、この課題の手順を十分に熟知することが保証される。遅延課題で安定した成績が得られるようになったら(すなわち連続する3日間で2回以上のエラーを起こさなくなったら)、7時間の遅延期間を使って、薬物およびビヒクル試験を開始する。各ラット毎に毎日一組の新しいアームに餌を置き、遅延期間中に迷路を十分に清掃した。
【0142】
サンプリングセッション中は、各ラットを中央プラットフォームに置き、迷路の8本のアームへの侵入路を全て遮断しておいた。8本のアームのうち4本をランダムに選択し、そこに餌を置いた。餌を置いたアームのゲートを上げ、5分間にわたって、4本のアームの各末端に置かれた餌をラットに取得させた。ラットが餌を取得したら直ちに取り出して、賦形剤または様々な用量の化合物を投与し、元のカゴに戻した。7時間後(記憶保持セッション)に、8本のアームへの進入路を全て遮断した状態の中央プラットフォーム上にラットを戻した。先のサンプリングセッション中に餌を置いた4本のアームに餌を置き、8本のアーム全てのゲートを上げた。残っている4つの餌を、5分間にわたって、ラットに取得させた。餌の入っていないアームへの侵入または先に侵入したアームへの再侵入はエラーとして数えた。有意性(p<0.05)は、反復測定ANOVAに続いて、対照との比較に関するダネット検定を行なうことにより決定した。
【0143】
試験化合物を標準物質と比較するために、スコポラミンおよびタクリンを、サンプリング期直後に皮下投与した。既知の健忘薬であるスコポラミンの効果は3時間の遅延期間後に試験し、アルツハイマー病の処置に使用されるコリンエステラーゼ阻害剤であるタクリンの効果は6時間の遅延期間後に試験した。スコポラミンは3時間の遅延期間後の記憶保持を用量依存的に破壊した。タクリンは、6時間の遅延期間後の記憶保持を10mg/kgで有意に改善したが、3mg/kgでは有意に改善しなかった。
【0144】
実施例B
8方向放射状迷路での習得
アルツハイマー病(AD)総体症状の顕著な初期特徴は、陳述記憶の著しい欠損である(R.W. Parks, R.F. ZecおよびR.S. Wilson編「Neuropsychology of Alzheimer's disease and other dementias」ニューヨーク:オクスフォード大学出版局, p. 3-80 (1993))。
【0145】
疾患が進行するにつれて他の認知領域も著しく冒されるようになる。脳領域の中でアルツハイマー病の進行初期に冒されるのは、陳述記憶にとって不可欠な神経基盤である海馬である。Differences in the pattern of hippocampal neuronal loss in normal aging and Alzheimer's disease, Lancet, 344:769-772 (1994)。動物モデルにおける海馬機能の評価にしばしば使用される行動試験の一つは8方向放射状迷路である(Olton D.S., The radial arm maze as a tool in behavioral pharmacology. Physiology & Behavior, 40:793-797 (1986))。
【0146】
海馬の損傷または薬学的遮断はこの課題の遂行を阻害する。さらにまた、老齢の動物は、この課題では一般に能力の不足を示す(Porsolt R.D., Roux S.およびWettstein J.G., Animal models of dementia, Drug Development Research, 35:214-229(1995))。
【0147】
この空間学習および記憶に関するこの試験では、空腹のラットを迷路の中心部に置き、各通路アームの先端に置かれた餌を求めて迷路上をあちこち移動させる。このタイプの迷路では、ラットは、立ち入ったアームには戻らないウィン−シフト(win-shift)戦略を学習する。したがって最も効率的な採餌戦略は、各アームに一度ずつ立ち入ることである。4日間の実験の1日目は迷路に関する知識がラットにないので、このタイプの迷路は一般学習プロセスにも利用することができる。
【0148】
雄のSprague Dawley(登録商標)ラットが到着したらすぐに、規則的な照明周期の飼育室で個別に収容し、試験に先立って少なくとも4日間は馴化させた。実験中は各ラットを目標体重の85%まで減量させて、それを維持した。適正な体重は、年齢とラットの毎日の体重測定値との組合せに基づいて、実験用飼料の配分を調節することによって維持した。
【0149】
個々のラットを迷路の中央部に置き、ギロチン式ドアを全て上げて、迷路の全ての領域に自由に侵入できるようにすることによって、セッションを開始した。餌ホッパーを8本の通路アームのそれぞれの末端に設置し、各餌ホッパーには餌ペレットを1つだけ入れておいた。毎日のセッションは、ラットが8つの餌ホッパーの全てに到達するか、ラットが制限時間(1日目は15分、2〜4日目は5分)を超えたときに終了した。アーム侵入の回数を記録した。エラーは、アーム侵入を繰り返した場合またはセッション期間中にアームに立ち入ることができなかった場合として数えた。1日目に少なくとも1本のアーム、2日目に少なくとも2本のアーム、そして3日目および4日目に少なくとも4本のアームに立ち入ることができなかったラットは、この試験から除外した。
【0150】
各ラットをビヒクル群または薬物群に疑似ランダムに割り当て、実験期間中は常に同じ処置を施した。ビヒクルは滅菌水中の5%アカシアからなった。注射は毎日の各セッションの20〜30分前に皮下に行なった。
【0151】
この習得課題では、ビヒクル処置動物が、1日目に関係づけられたエラー回数と比較して、迷路学習の有意な習得を一貫して示すということはない。迷路学習の習得を促進する化合物では、その効果がしばしば訓練4日目まで観察されないことを、本発明者らは見いだした。したがって結果は、処置群間の4日目のエラー総数から構成された。
【0152】
実施例C
細胞内カルシウムの機能的動員
ムスカリン性サブタイプ(M1−M5)を発現するCHO細胞を、DMEM:F-12 (3:1)、10%FBSnz、20 mM HEPES、1% pen/strep、250μg/mL G418 (GibcoBRL #10131-027)中で単層で増殖させる。細胞をO2/CO2(95%/5%)で維持し、3〜4日毎に継代する。細胞を,アッセイの24時間前に50,000/ウェルの密度、48時間前に25,000/ウェルの密度で(100μL/ウェル)、Costar の黒壁透明底96ウェルプレート(Costar #3603)にプレーティングする。次いで、細胞を最小必須培地(細胞質Ca2+指示薬、Fluo-3 (1mM Fluoを20%プルロニック酸(pluronic acid)と1:1で混合し、次いで増殖の際に最終濃度5μMまで希釈、2.5mMを50μL/ウェルで補充)を含有)で、5%CO2含有環境中、37℃にて60分間インキュベートした。細胞を洗浄緩衝液(100μL/ウェル、ハンクス緩衝化塩溶液(HBSS)、フェノールレッド(1×)(GibcoBRL #14065-056)、20mM HEPES(Sigma #P8761)およびProbenecid(2.5mM)(100×:1:100)を含有せず)で2回洗浄する。アッセイ用に、各ウェルに100μLを加える(2×薬物(100μL)をFLIPRにより添加する)。LabSystems multidropを用いてプレートを3回洗浄し、残りの緩衝液を取り除く。また、プレートを紙タオルの上でブロッティングして残りの化合物を取り除く。
【0153】
化合物を、2%DMSO、HBSSを含有し、フェノールレッド(1×)(GibcoBRL #14065-056)、20mM HEPES(Sigma #P8761)およびプロベネシド(2.5 mM)(100×:1:100)を含有しないアッセイ緩衝液中で2倍に希釈して調製する(薬物100μLを、ウェル中に存在するアッセイ緩衝液100μLに添加する)。
【0154】
次いで、プレートをFLIPR装置(蛍光イメージングプレートリーダーシステム、Molecular Devices, Sunnyvale, CA)に配置して、化合物の添加前および後の細胞蛍光をモニターした(λEX=488 nm, λEM=540 nm)。
【0155】
他のムスカリン性レセプターサブタイプ(M2、M3、M4およびM5)を通して同様の方法でスクリーニングすることにより、M1アゴニストの選択性を評価する。また、多数のタンパク質標的ならびに構造的に関連するGタンパク質カップリング型レセプター(GPCR)標的について、化合物をスクリーニングし、M1レセプターに対する選択性を確認する。
【0156】
実施例D
機能的なGTP結合
細胞培養:ヒトM1−M5レセプターをトランスフェクトしたCHO細胞を、懸濁培養または単層培養のいずれかで増殖させた。懸濁培養に関しては、細胞をローラーボトルで絶えず攪拌しながら、5%CO2中、37℃にて5%ウシ胎児血清、50μg/ml トブラマイシンおよび20mM HEPESを補充したダルベッコ改変イーグル培地/F−12(3:1)培養培地中で増殖させた。単層培養は、5%CO2、37℃でT−225フラスコ中10%ウシ胎児血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(100,000U/リットル)を補充したダルベッコ改変イーグル培地を用いて増殖させた。95%コンフルエントでトリプシン不含解離培地を用いて細胞を集め、遠心分離により回収し、80℃で保存した。ヒトムスカリン性レセプターを安定に発現する細胞はNational Institutes of Healthから入手した。
【0157】
膜調製物:細胞ペレットを融解し、20容量の20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)中で再懸濁し、Tissuemizerを用いてハイスピードで30秒間2回ホモジナイズした。ホモジネートを200gで15分間、4℃で遠心分離した。上清を取り除き、氷上で保存した。この手順を2回繰り返し、ついでプールした上清を40,000gで45分間,4℃で遠心分離した。膜を5mgタンパク質/mlで懸濁し、80℃で保存した。図面の説明に特記しない限り、M1、M2およびM4細胞由来の膜は懸濁培養で増殖させた細胞から調製したが、他方、M3およびM5細胞由来の膜は単層培養で増殖させた細胞から調製した。レセプター密度(pmolmg1膜タンパク質)は、M1−M5レセプターに関して、それぞれ、9.3、0.7、0.6、0.9および4.8であった。
【0158】
雄のSprague-Dawleyラット由来の線条体組織を、10容量の10mM HEPESおよび1mM EGTA(pH7.4、完全インヒビターカクテル、1mMジチオスレイトールおよび10%スクロース含有)中、手作業でホモジナイズした。ホモジネートを6倍に希釈し、1000gで10分間4℃にて遠心分離した。上清を保存し、ペレットを再度ホモジナイズし、上記のとおりに遠心分離した。合わせた上清を11,000gで20分間遠心分離した。得られたペレットを40容量の10mM HEPESおよび1mM EGTA(pH7.4、1mMジチオスレイトールおよび1mMMgCl2含有)中でホモジナイズし、27、000gで20分間遠心分離した。得られたペレットをタンパク質濃度1.5mg/mlで同じ緩衝液中で懸濁し、アリコートを凍結し、80℃で保存した。
【0159】
GTPγ35S結合:20mM HEPES、100mM NaClおよび5mM MgCl2(pH7.4)中、最終体積200μlで96ウェルCostarプレートにてアッセイを行った(25℃)。適切な濃度のGDPを含む膜調製物(100μl、細胞膜に関しては25μgタンパク質/ウェルおよび脳膜に関しては9〜15μg/ウェル)を加え、続いて緩衝液±試験するアゴニストおよびアンタゴニスト(50μl)を加え、続いてGTPγ35S(50μl)を加えてアッセイでの最終濃度を得る(CHO膜に関しては200pM、脳膜に関しては500pM)。CHO膜に対しては、M1、M3およびM5レセプターアッセイに関しては0.1μM GDPを使用し、他方、M2およびM4アッセイに関しては1μM GDPを用いた。脳膜に対しては、抗Gαq/11を用いて行ったアッセイでは0.1μM GDPを使用し、他方、抗Gαi(1−3)および抗Gαoを用いるアッセイに関しては50μMGDPを用いた。CHO細胞膜を25℃で30分間、アゴニストおよびアンタゴニストと共にインキュベートし、続いてGTPγ35Sを加え、さらに30分間インキュベートした。脳膜を25℃で20分間、アゴニストおよびアンタゴニストと共にインキュベートし、続いてGTPγ35Sを加え、さらに60分間インキュベートした。予備インキュベーションを行って、アゴニストおよびアンタゴニストが標識時間の間に確実に平衡状態にあるようにした。
【0160】
全膜結合を測定するために、懸濁小麦胚凝集素(WGA)コーティングSPAビーズ(50μl)を加えた。15分後、プレートを1000gで15分間遠心分離し、Wallacプレートカウンターを用いて放射活性を測定した。特定のGタンパク質への結合を測定するために、35S標識膜を0.27%Nonidet P-40 (アッセイ緩衝液3.5ml毎に10%Nonidet P-40を1.5ml含有する溶液を20μl/ウェル)を用いて30分間可溶化し、続いて所望の抗体(10μl/ウェル)を添加して1/400〜1/100の最終希釈とし、さらに60分間インキュベートした。懸濁抗IgGコーティングSPAビーズ(1ウェルあたり50μl)を加え、プレートを3時間インキュベートし、次いで遠心分離して上記と同様に放射活性を測定した。各ボトルのWGAコーティングSPAビーズをアッセイ緩衝液(10ml)中で懸濁し、各ボトルの抗IgGコーティングSPAビーズをアッセイ緩衝液(20ml)中で懸濁した。ビシンコニン酸アッセイを用いてタンパク質を測定した。
【0161】
材料:35S−GTPγS(1000〜1200Ci/mmol)、抗ウサギ−IgGおよび抗マウス−IgG−コート型SPAビーズおよびWGA−コート型SPAビーズは、Amersham (Arlington Heights, IL)から入手した。ウサギ抗−Gαq/11およびウサギ抗−Gαi(1−3)は、Santa Cruz Biotechnologies (Santa Cruz, CA)から入手した。マウスモノクローナル抗−Gαoは、Chemicon (Temecula, CA)から入手した。オキソトレモリンMおよびピレンゼピンは、Research Biochemicals Inc. (Natick, MA)から入手した。11−{[2−((ジエチルアミノ)メチル)−1−ピペリジニル]アセチル}−5、11−ジヒドロ−6H−ピリド[2、3b][1、4]ベンゾジアゼピン−6−オン(AFDX116)は、Eli Lillyで合成した。完全プロテアーゼインヒビターカクテルおよび10% Nonidet P-40は、Boehringer Mannheim (Indianapolis, IN)から入手した。
【0162】
M1アゴニストの選択性は、他のムスカリン性レセプターサブタイプ(M2、M3、M4およびM5)にわたるスクリーニングにより評価する。また、化合物を多数のタンパク質標的ならびに構造的に関連するGタンパク質カップリング型レセプター(GPCR)標的にわたりスクリーニングしてM1レセプターに対する選択性を確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】

[式中、
Q、X、YおよびZは、CR1およびNからなる群から選択され、Q、X、YおよびZのうちの2つまでがNであり、Q、X、YおよびZのうちの少なくとも2つがCHであるか;またはYはCHであり、ZがCHであり「Q=X」がSを示してチオフェン環を形成し;
1はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択され;
2は、ハロゲン;C1−C4アルコキシ;C1−C4アルキル;C3−C8シクロアルキル;シアノ;トリフルオロメチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシおよびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1〜2個の置換基で置換されていることもあるピリジニル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていることもあるチエニル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、およびシアノからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていることもあるフェニル;およびハロゲン、C1−C4アルコキシおよびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1〜2個の置換基で置換されていることもあるピロリル
からなる群から選択され;
3は水素、C1−C4アルキル、ジェミナルなジメチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていることもあるフェニル;フェニル環が、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で場合により置換されているベンジル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチル、シアノ、およびニトロからなる群から独立に選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいナフチル;ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から独立に選択される1または2個の置換基で置換されていることもあるヘテロアリール;およびフェニル環がハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択される1個の置換基で置換されていてもよい1,3−ベンゾジオキソリル
からなる群から選択され;
4は水素、ヒドロキシ、およびフルオロからなる群から選択され;
5は水素、ハロゲン、C1−C4アルコキシ、およびC1−C4アルキルからなる群から選択され;
aは水素およびメチルからなる群から選択され;
tは0または1であり;
mは1または2であり;
X’は、O、S、およびCR’R”からなる群から選択され、ここにR’は水素であり、R”は水素、メチルおよびエチルからなる群から選択されるか、もしくはR’とR”が一緒になってオキソを形成し;そして
Y’はCH2、O、S、およびNRからなる群から選択され、ここにRは水素またはメチルであり;
但し、
X’がOまたはSであるとき、tは1であり、SはCH2であり;
Y’がO、S、またはNRであるとき、X’はCR’R”であり;
X’がCH2であり、Y’がCH2であるとき、R3は水素ではない]
で示される化合物またはその製薬的に許容し得る酸付加塩。
【請求項2】
5が水素であり、R4がヒドロキシであり、mが1であり、以下
【化2】

に示す1および2位においてトランス立体化学を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Q、X、YおよびZがそれぞれCHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Q、X、YおよびZの1つがCFであり、それ以外がCHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
QがCFであり、X、YおよびZがそれぞれCHである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
2がハロゲン、C1−C4アルコキシ、C1−C4アルキル、トリフルオロメチルおよびシアノからなる群から選択される1〜3個の置換基で置換されていてもよいフェニルである、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
2がフェニルである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物および製薬的に許容し得る希釈剤を含有する医薬組成物。
【請求項9】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなるムスカリン受容体に関連する障害を処置する方法。
【請求項10】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる認知障害を処置する方法。
【請求項11】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなるアルツハイマー病を処置する方法。
【請求項12】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる統合失調症を処置する方法。
【請求項13】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる軽度認識障害を処置する方法。
【請求項14】
有効量の請求項1記載の化合物をそれを必要とする患者に投与することを含んでなる統合失調症に関連する認知障害を処置する方法。

【公表番号】特表2006−521379(P2006−521379A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508796(P2006−508796)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/005235
【国際公開番号】WO2004/094382
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】