説明

ムスカリン様受容体アンタゴニストとしてのアゼチジン誘導体

本発明は式(I):
【化1】


の化合物、それらを製造するための方法および中間体、ムスカリン様アンタゴニストとしてのそれらの使用ならびにそれらを含有する薬剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):
【化1】

(式中、R1、R2、R3、A1、Xおよびpは下記の意味を有する)の化合物、ならびにこのような誘導体を製造するための方法および中間体、このような誘導体を含有する組成物およびこのような誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コリン作動性ムスカリン様受容体は、Gタンパク質共役受容体スーパーファミリーのメンバーであり、5つのサブタイプM1〜M5にさらに分類される。ムスカリン様受容体サブタイプは、体内で広く、かつ特異的に発現される。5つのサブタイプ全てで、遺伝子がクローニングされており、これらのうち、M1、M2およびM3受容体は、動物およびヒト組織において広く薬理学的に特徴づけされている。M1受容体は、脳(皮質および海馬)、腺、ならびに交感神経および副交感神経の神経節で発現される。M2受容体は、心臓、後脳、平滑筋および自律神経系のシナプスで発現される。M3受容体は、脳、腺および平滑筋で発現される。気道では、M3受容体の刺激が、気道平滑筋の収縮を引き起こし、気管支収縮をもたらす一方で、唾液腺では、M3受容体刺激は、体液および粘液分泌を増大させて、唾液分泌を高める。平滑筋で発現されるM2受容体は、収縮促進性(pro−contractile)であると理解されている一方で、シナプス前M2受容体は、副交感神経からのアセチルコリン放出を調節する。心臓で発現されるM2受容体の刺激は、徐脈を生じさせる。
【0003】
短時間および長時間作用型ムスカリン様アンタゴニストは、喘息およびCOPDの管理に使用されている;これらとしては、短時間作用薬Atrovent(登録商標)(臭化イプラトロピウム)およびOxivent(登録商標)(臭化オキシトロピウム)ならびに長時間作用薬Spiriva(登録商標)(臭化チオトロピウム)が挙げられる。これらの化合物は、吸入投与後に気管支拡張をもたらす。スパイロメトリ値における改善に加えて、慢性閉塞性肺疾患(COPD)での抗ムスカリンの使用は、健康状態および生活の質スコアの改善に関連する。体内におけるムスカリン様受容体の幅広い分布の結果として、ムスカリン様アンタゴニストに対する著しい全身的暴露は、口腔乾燥症、便秘、散瞳、尿閉(全て、主にM3受容体の遮断を介して仲介される)および頻脈(M2受容体の遮断により仲介される)のような作用に関連する。現在臨床的に使用されている非選択的ムスカリン様アンタゴニストの治療用量の吸入投与後に一般に報告される副作用は、口腔乾燥症であり、これは、強度においては軽度であるとのみ報告されているが、このことが、投与する吸入薬の用量を制限している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0948964A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、例えば効力、薬物動態または作用の持続時間に関して適切な薬理学的プロファイルを有する改良されたM3受容体アンタゴニストが未だ必要とされている。このことに関連して、本発明は、新規のM3受容体アンタゴニストに関する。特に、吸入経路による投与に適した薬理学的プロファイルを有するM3受容体アンタゴニストが必要とされている。
【0006】
科学文献には、ムスカリン様受容体アンタゴニスト活性を有する多くの化合物が開示されている。特許文献1には、式:
【化2】

(ここで、Rは、水素原子、ハロゲン原子または低級アルコキシ基を示す)の化合物が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、式(I):
【化3】

[式中、
1は、CNまたはCONH2であり;
2およびR3はメチルであるか、またはR2およびR3はまた、それらが結合している炭素原子と一緒になって、シクロペンタン環を形成し得;
Xは、NHまたはSであり;
pは、0または1であり;
1は、
a)ハロ、CN、CF3、OR4、SR4、OCF3、(C1〜C4)アルキルおよびOHで場合によって置換されるフェニルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されるフェニル;
b)ハロ、CN、CF3、OR4、SR4、OCF3および(C1〜C4)アルキルから独立して選択される1または2個の基で場合によって置換されるナフチル;
c)O、SまたはNから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む9または10員の二環式芳香族複素環式基(該複素環式基はOR4、(C1〜C4)アルキルおよびハロから選択される1または2個の置換基で場合によって置換される)
から選択され;
4は、Hまたは(C1〜C4)アルキルである]
の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物に関する。
【0008】
本明細書中上記の一般式(I)において、(C1〜C4)アルキルは、1、2、3または4個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖基を示す。このことはまた、これらが置換基を有するか、または例えばO−(C1〜C4)アルキル基、S−(C1〜C4)アルキル基などにおいて、他の基の置換基として生じている場合にもあてはまる。適切な(C1〜C4)アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられる。適切なO−(C1〜C4)アルキル基の例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソ−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソ−ブチルオキシ、sec−ブチルオキシおよびtert−ブチルオキシが挙げられる。
【0009】
O、SまたはNから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む9または10員の二環式芳香族複素環式基の例としては、インドリル、イソインドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キナゾリル、キノキサリル、フタラジニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリルおよびベンゾイソチアジアゾリルが挙げられる。
【0010】
好ましい9または10員の二環式芳香族複素環式基は、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソキノリルおよびキノリルである。ベンゾオキサゾリルが、特に好ましい。
【0011】
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードからなる群から選択されるハロゲン原子を示す。好ましいハロ基は、フルオロまたはクロロである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記式(I)化合物およびそれらの製造に有用な中間体において、以下の定義が好ましい:
好ましくは、R1は、CONH2である。好ましくは、R4は、HまたはCH3である。好ましくは、A1は、F、Cl、CF3、OH、OCH3、OCF3およびCH3から独立して選択される1〜3個の基で場合によって置換されるフェニルである。より好ましくは、A1は、F、Cl、CF3、OH、OCH3、OCF3およびCH3から独立して選択される1〜2個の基で場合によって置換されるフェニルである。なおより好ましくは、A1は、F、ClおよびOHから独立して選択される1〜2個の基で場合によって置換されるフェニルである。好ましくは、R2およびR3は、メチルである。好ましい実施形態において、pは0であり、かつXはSである。別の好ましい実施形態において、pは1であり、かつXはNHである。
【0013】
本発明の好ましい化合物は、以下:
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−クロロ−3−メトキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−クロロ−4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド、および
5−[3−(4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物である。
【0014】
本発明はまた、式(I)の化合物の製造方法、およびそれらの製造に有用な中間体に関する。特に、本発明は、中間体(VIII)、(IX)および(X):
【化4】

(式中、R2およびR3は式(I)の化合物について定義される通りであり、そしてPG’はフタルイミドまたはベンジルのような適切なアミン保護基であり、そしてフタルイミドが好ましい)に関する。
【0015】
式(I)の化合物は、様々な方法で製造され得る。下記の経路は、これらの化合物を製造するそのような方法の1つを説明しているが、当業者は、他の経路も同様に実施可能であることよく理解する。
【0016】
スキーム1
【化5】

【0017】
5はHまたはPGである。PGは適切な保護基である。
2、R3、X、pおよびA1は式(I)の化合物について定義される通りである。LGはメシレートまたはトシレートのような適切な脱離基を表し、メシレートが好ましい。
【0018】
式(III)の化合物は、WO2003037327、83頁に記載されるように製造され得、ここで、PGはtert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルのような保護基を表し、そしてtert−ブトキシカルボニルが好ましい。あるいは、式(III)の化合物は、以下の方法に従って製造され得る:
【化6】

【0019】
式(IIIc)の化合物は市販されているか、または文献において公知である。工程(vi)−ジクロロメタンのような適切な溶媒中、低温で2時間、化合物(IIIc)とイソシアン酸クロロスルホニル、ギ酸およびピリジンとの反応により、式(IIIb)の化合物を式(IIIc)の化合物から製造し得る。典型的な条件は、ジクロロメタン中、低温で2時間、化合物(IIIc)(1.0当量)、イソシアン酸クロロスルホニル(1.5当量)、ギ酸(1.5当量)およびピリジン(1.5当量)を含む。
工程(vii)−ジクロロメタンのような適切な溶媒中、室温で最長24時間、化合物(IIIb)と酸化マグネシウム、ヨードベンゼンジアセテートおよび酢酸ロジウム二量体との反応により、式(IIIa)の化合物を式(IIIb)の化合物から製造し得る。典型的な条件は、ジクロロメタン中、室温で18時間、化合物(IIIb)(1.0当量)、二酸化マグネシウム(2.3当量)、ヨードベンゼンジアセテート(1.1当量)および酢酸ロジウム二量体(0.02当量)の反応を含む。
T.W.Greene and P.Wutzによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に記載される条件を使用して、tert−ブトキシカルボニルまたはベンジルオキシカルボニルのような適切な保護基(tert−ブトキシカルボニルが好ましい)の取り込みにより、式(III)の化合物を式(IIIa)の化合物の化合物から製造し得る。典型的な条件は、ジクロロメタン中、室温で3時間、化合物(IIIa)(1.0当量)、ジ−tert−ブチルジカーボネート(1.2当量)、トリエチルアミン(2.0当量)および4−ジメチルアミノピリジン(0.2当量)の反応を含む。
【0020】
式(II)の化合物は市販されている。工程(i)−
1)カリウムtertブトキシドまたは水素化ナトリウムのような強塩基の存在下、N,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキドのような適切な溶媒中、周囲条件下または高温で、最長18時間の化合物(II)と(III)との反応
2)T.W.Greene and P.Wutzによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に記載されるように、ジオキサンまたはトリフルオロ酢酸中4N 塩酸のような適切な条件を使用する保護基の除去(使用されている場合)、または触媒パラジウムの存在下での水素化
により、式(IV)の化合物を式(II)の化合物および式(III)の化合物から製造し得る。
典型的な条件は、N,N−ジメチルホルムアミド中、周囲条件下、最長18時間の化合物(II)(1.2当量)、化合物(III)(1.0当量)およびカリウムtertブトキシド(1.2当量)、続くジオキサン中4N 塩酸での処理を含む。
式(V)の化合物は市販されている。
【0021】
工程(ii)−
メタノールまたはエタノールのような適切な溶媒中、高温で最長48時間の化合物(IV)による化合物(V)の求核付加反応、続くインサイチュ閉環により複素環形成を達成することができる
により、式(VI)の化合物を式(IV)および(V)の化合物から製造し得る。
典型的な条件は、メタノール中、高温で最長48時間の化合物(IV)(1.0当量)および化合物(V)(1.1当量)を含む。
【0022】
工程(iii)−
ヒューニッヒ塩基、トリエチルアミンまたはピリジンのような適切な塩基の存在下、場合によって、ジクロロメタンまたはジエチルエーテルのような適切な溶媒中、低温で1〜2時間、化合物(VI)と塩化メシル/無水物(mesyl chloride/anhydride)または塩化トシルとの反応によるメシレート基またはトシレート基のような適切な脱離基(LG)の導入
により、式(VII)の化合物を式(VI)の化合物から製造し得る。
典型的な条件は、ピリジン中、低温で1〜2時間までの化合物(VI)(1.0当量)および塩化メシル(3当量)を含む。
【0023】
一般式(VIII)の化合物は市販されているか、文献から公知であるか、またはそれらは当業者によって容易に製造することができる。
【0024】
工程(iv)−
場合により、化合物(VIII)の炭酸セシウムまたは炭酸ナトリウムのような適切な塩基での処理、続くN,N−ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキドのような適切な溶媒中、高温で最長18時間の化合物(VII)との反応
により、式(Ia)の化合物を一般式(VII)および(VIII)の化合物から製造することができる。典型的な条件は、N,N−ジメチルホルムアミド中、高温で最長18時間の化合物(VII)(1.0当量)、炭酸セシウム(3.0当量)および化合物(VIII)(3.0当量)を含む。
【0025】
さらなる実施形態において、工程(v)−
3−メチル−3−ペンタノール中、高温で最長24時間の、過剰量の水酸化カリウムでの化合物(Ia)の加水分解により、式(Ib)の化合物を式(Ia)の化合物から製造し得る。典型的な条件は、3−メチル−3−ペンタノール中、高温で最長24時間の化合物(Ia)(1.0当量)および水酸化カリウム(20当量)を含む。
【0026】
あるいは、式(VI)の化合物はスキーム2に記載されるように製造できる。
【0027】
スキーム2
【化7】

【0028】
2およびR3はメチルを表す。PGはメチルまたはtert−ブチルのような適切なカルボキシ保護基であり、そして典型的にはtert−ブチルである。
【0029】
式(VIf)の化合物は市販されている。式(VIe)の化合物は市販されているか、またはそれらの製造方法は文献から公知である。
【0030】
工程(ia):
水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムのような適切な塩基の存在下、メタノール、エタノールまたはtert−ブタノールのような適切な溶媒中、25℃〜高温で、6〜24時間、化合物(VIf)を化合物(VIe)で処理する
により、式(VId)の化合物を式(VIf)および(VIe)の化合物から製造し得る。
典型的な条件は、tert−ブタノール中、25〜60℃の温度で、最長24時間の化合物(VIf)(1.0当量)、水酸化カリウム(0.05当量)および化合物(VIe)(1.0当量)を含む。
工程(iia)により、式(VIc)の化合物を式(VId)の化合物から製造し得る。T.W.Greene and P.Wutzによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に記載されるような標準的な方法論を使用して、化合物(VId)の脱保護を達成し得る。PGがtertブチルである場合、典型的な条件は、塩酸(ジオキサン中4M)の存在下、室温で最長18時間の化合物(VId)(1.0当量)を含む。
式(VIa)の化合物は市販されている。工程(iiia):
塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド、N,N’−カルボニルジイミダゾールまたはN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドのような適切なカップリング試薬の存在下、場合によって1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物または1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールのような触媒の存在下、および場合によってN−メチルモルホリン、トリエチルアミンまたはN,N−ジイソプロピルエチルアミンのような第三級アミン塩基の存在下、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランまたはジクロロメタンのような適切な溶媒中、周囲条件下、1〜48時間の(VIc)と(VIa)とのカップリング
により、式(VIb)の化合物を式(VIc)および(VIa)の化合物から製造し得る。
典型的な条件は、ジクロロメタン中、室温で18時間の化合物(VIc)(1.0当量)、化合物(VIa)(1.0当量)および塩酸1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(1.0〜1.2当量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(1.0〜1.2当量)およびトリエチルアミン(1.0〜2.0当量)を含む。
【0031】
Denton and Wood(Synlett,1999,1,55)の方法と同様にして、式(VI)の化合物を式(VIb)の化合物から製造することができる;化合物(VIb)を、通常、塩化チタン(IV)または塩化ジルコニウム(IV)のような適切なルイス酸で予め活性化させ、次いでテトラヒドロフランまたはジエチルエーテルのような適切な溶媒中、−78℃〜25℃の温度で1〜18時間、過剰量のMeMgClまたはMeMgBrのような適切な有機金属試薬で処理する。典型的な条件は、テトラヒドロフラン中、−30℃で4〜8時間の化合物(VIb)(1.0当量)、塩化ジルコニウム(IV)(2当量)およびMeMgCl(9.0当量)を含む。
【0032】
代替の式(I)の化合物をスキーム3に記載されるように製造し得る。
【0033】
スキーム3
【化8】

【0034】
LGは、メシレートまたはトシレートのような適切な脱離基を表し、そしてメシレートが好ましい。XはNHであり、かつpは1である。PG’はフタルイミドまたはベンジルのような適切なアミン保護基を表し、そしてフタルイミドが好ましい。
式(VII)の化合物は、スキーム1に記載されるように製造される。工程(iv)のもとで、PG’で適切に保護したアンモニアと反応させることにより、式(VIII)の化合物を式(VII)の化合物から製造し得る。PG’がフタルイミドである場合、典型的な条件は、ジメチルホルムアミドのような適切な溶媒中、高温で2時間の化合物(VII)(1.0当量)とフタルイミド(1.0当量)および炭酸セシウムのような適切な塩基(2.0当量)との反応を含む。
【0035】
工程(ix);
T.W.Greene and P.Wutzによる「Protecting Groups in Organic Synthesis」に記載されるように、ヒドラジン水和物のような適切な条件を使用するか、または触媒パラジウムの存在下での水素化を使用する、
による保護基の脱離によって、式(IX)の化合物を式(VIII)の化合物から製造し得る。PG’がフタルイミドである場合、典型的な条件は、エタノールのような適切な溶媒中、高温で1時間の化合物(VIII)(1.0当量)とヒドラジン水和物(10.0当量)との反応を含む。スキーム1に記載されるように、工程(v)により、式(X)の化合物を式(IX)の化合物から製造する。式(XI)の化合物は市販されているか、文献で公知である。工程(x)−酢酸のような酸の存在下、ジクロロメタンのような適切な溶媒中、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムのような適切な還元剤を使用する還元的アミノ化により、式(Ib)の化合物を式(X)の化合物および式(XI)の化合物から製造する。典型的な条件は、ジクロロメタン中、室温で1時間の化合物(X)(1.0当量)と化合物(XI)(2当量)および酢酸(1滴)との反応、続く、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(2当量)の添加および室温でさらに18時間の反応を含む。さらなる例において、工程(x)により、式(Ia)の化合物を式(IX)の化合物および式(XI)の化合物から製造する。
式(I)のさらなる例において、A1が場合により置換されたメトキシフェニルを表す場合、基質を脱アルキル化して、対応するフェノールを得ることが望ましい。この方法の典型的な条件は、ジクロロメタンのような適切な溶媒中、低温で、1〜18時間の化合物(I)(1.0当量)および1M 三臭化ホウ素(1〜4当量)を含む。
【0036】
式(I)の化合物の薬学的に受容可能な塩は、その酸付加塩および塩基塩を包含する。適切な酸付加塩は、非毒性の塩を形成する酸から形成される。例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびキシノホ酸塩が挙げられる。
【0037】
適切な塩基塩は、非毒性の塩を形成する塩基から形成される。例としては、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミンおよび亜鉛の塩が挙げられる。
【0038】
酸および塩基のヘミ塩(hemisalt)、例えば、ヘミ硫酸塩およびヘミカルシウム塩を、形成してもよい。
【0039】
適切な塩に関する総説については、Stahl and WermuthによるHandbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley−VCH,2002)を参照のこと。
【0040】
式(I)の化合物の薬学的に受容可能な塩は、3つの方法の1つまたはそれ以上の方法により製造され得る:
(i)式(I)の化合物と所望の酸または塩基とを反応させることによる方法;
(ii)式(I)の化合物の適切な前駆体から酸または塩基不安定性保護基を除去するか、または所望の酸または塩基を使用して、適切な環状前駆体、例えばラクトンまたはラクタムを開環することによる方法;または
(iii)適切な酸または塩基との反応により、または適切なイオン交換カラムを用いて、式(I)の化合物のある塩を別の塩に変換することによる方法。3つの反応は全て、通常、溶液中で実施される。得られた塩を沈殿させ、そして濾過により集め得るか、または溶媒をエバポレートすることにより回収し得る。得られた塩のイオン化の程度は、完全なイオン化から、ほとんどイオン化まで変動し得る。
【0041】
本発明の化合物は、完全な非晶質から完全な結晶に至る一連の固体状態で存在し得る。用語「非晶質」とは、物質が分子レベルで長距離秩序を欠いており、そして温度に依存して、固体または液体の物理的特性を示し得る状態をいう。典型的には、このような物質は、特有のX線回折パターンを示さず、固体の特性を示す一方で、より形式的には液体として記載される。加熱すると、固体特性から液体特性への変化が生じ、これは状態変化、典型的には二次(「ガラス転移」)により特徴付けられる。用語「結晶」とは、物質が、分子レベルで規則的に秩序付けられた内部構造を有し、規定のピークを有する特有のX線回折パターンを示す固体相をいう。このような物質は十分に加熱すると、液体の特性も示すであろうが、固体から液体への変化は、相変化、典型的には一次(「融点」)により特徴付けられる。
【0042】
本発明の化合物はまた、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在し得る。用語「溶媒和物」とは、本明細書において、本発明の化合物および1つまたはそれ以上の薬学的に受容可能な溶媒分子、例えばエタノールを含む分子複合体を記載するために使用される。用語「水和物」とは、前記溶媒が水である場合に使用される。
【0043】
有機水和物に関して現在認められている分類体系は、分離部位(isolated site)、チャネルまたは金属イオン配位水和物を定義するものである−K.R.Morris によるPolymorphism in Pharmaceutical Solids(H.G.Brittain編,Marcel Dekker,1995)を参照のこと。分離部位水和物は、有機分子の介在により、水分子が相互の直接的な接触から隔てられているものである。チャネル水和物では、水分子は他の水分子に隣接する格子チャネルに存在する。金属イオン配位水和物では、水分子は金属イオンに結合する。
【0044】
溶媒または水がしっかりと結合している場合、複合体は、湿度とは無関係な、明確な化学量論を有するであろう。しかし、チャネル溶媒和物および吸湿性化合物の場合のように、溶媒または水の結合が弱い場合、水/溶媒含量は、湿度および乾燥条件に左右されることになる。このようなケースにおいて、非化学量論が標準となる。
【0045】
薬物および少なくとも1つの他の成分が、化学量論的量または非化学量論的量で存在している多成分複合体(塩および溶媒和物以外)もまた、本発明の範囲内に包含される。このタイプの複合体には、クラスレート化合物(薬物−ホスト包接錯体)および共結晶が含まれる。後者は通常、非共有結合相互作用を介して一緒に結合している中性分子成分の結晶複合体と定義されるが、中性分子と塩との複合体であってもよい。溶融結晶化、溶媒からの再結晶化または成分を一緒に物理的に粉砕することにより、共結晶を製造し得る−O.Almarsson and M.J.ZaworotkoによるChem Commun,17,1889〜1896(2004)を参照のこと。多成分複合体の一般的総説については、HaleblianによるJ Pharm Sci,64(8),1269〜1288(August 1975)を参照のこと。
【0046】
本発明の化合物はまた、適切な条件に付した場合、中間状態(中間相または液晶)で存在し得る。中間状態は、真の結晶状態と真の液体状態(溶融または溶液のいずれか)との間の中間体である。温度変化の結果として生じる中間相性(mesomorphism)は、「サーモトロピック」と記載され、そして水または別の溶媒のような第2の成分を添加すると生じる中間相性は、「リオトロピック」と記載される。リオトロピック中間相を形成する可能性のある化合物は、「両親媒性」と記載され、そしてイオン性(−COO-Na+、−COO-+または−SO3-Na+のような)または非イオン性(−N-+(CH33)の極性ヘッド基を有する分子からなる。さらなる情報に関しては、N.H.Hartshorne and A.StuartによるCrystals and the Polarizing Microscope、第4版(Edward Arnold、1970)を参照のこと。
【0047】
以下の式(I)の化合物に関する言及は全て、それらの塩、溶媒和物、多成分複合体および液晶、ならびにそれらの塩の溶媒和物、多成分複合体および液晶に対する言及を含む。
【0048】
本発明の化合物は、上記で定義されるような式(I)の化合物を含み、これらは以下で定義されるような全ての多形体および晶癖、それらのプロドラッグおよび異性体(光学、幾何および互変異性体を含む)ならびに同位体標識した式(I)の化合物を包含する。
【0049】
上記のように、式(I)の化合物のいわゆる「プロドラッグ」もまた、本発明の範囲内である。従って、それ自体は薬理活性をほとんど有さないか、または有さない式(I)の化合物の特定の誘導体は、体内にまたは身体上に投与された場合、例えば、加水分解により、所望の活性を有する式(I)の化合物に変換することができる。このような誘導体が、「プロドラッグ」と称される。プロドラッグの使用に関するさらなる情報は、Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,ACS Symposium Series(T.Higuchi and W.Stella)およびBioreversible Carriers in Drug Design、Pergamon Press、1987(E.B.Roche編、American Pharmaceutical Association)に見出され得る。
【0050】
例えば、式(I)の化合物中に存在する適切な官能基を、例えば、H.BundgaardによるDesign of Prodrugs(Elsevier、1985)に記載されているような「プロ部分」として当業者に公知である特定の部分に置き換えることにより、本発明に従うプロドラッグを製造し得る。
【0051】
本発明に従うプロドラッグのいくつかの例としては、
(i)式(I)の化合物がカルボン酸官能性(−COOH)を含有する場合、そのエステル、例えば式(I)の化合物のカルボン酸官能性の水素が(C1〜C8)アルキルで置き換えられている化合物;
(ii)式(I)の化合物がアルコール官能性(−OH)を含有する場合、そのエーテル、例えば式(I)の化合物のアルコール官能性の水素が(C1〜C6)アルカノイルオキシメチルで置き換えられている化合物、
(iii)式(I)の化合物が第一級または第二級アミノ官能性(−NH2または−NHR(RはHではない))を含有する場合、そのアミド、例えば場合によって式(I)の化合物のアミノ官能基の一方または両方の水素が(C1〜C10)アルカノイルで置き換えられている化合物が挙げられる。
【0052】
前述の例に従う置換基のさらなる例および他の種類のプロドラッグの例は、前述の参照文献中に見出され得る。
【0053】
さらに、特定の式(I)の化合物は、それ自体が他の式Iの化合物のプロドラッグとして作用する場合がある。
【0054】
式Iの化合物の代謝物、即ち薬物が投与された際に生体内で形成される化合物もまた、本発明の範囲内に含まれる。本発明に従う代謝物のいくつかの例としては、
(i)式(I)の化合物がメチル基を含有する場合、そのヒドロキシメチル誘導体(−CH3→−CH2OH)、
(ii)式(I)の化合物がアルコキシ基を含有する場合、そのヒドロキシ誘導体(−OR→−OH)、
(iii)式(I)の化合物が第三級アミノ基を含有する場合、その第二級アミノ誘導体(−NR12→−NHR1または−NHR2)、
(iv)式(I)の化合物が第二級アミノ基を含有する場合、その第一級誘導体(−NHR1→−NH2)、
(v)式(I)の化合物がフェニル部分を含有する場合、そのフェノール誘導体(−Ph→−PhOH)および
(vi)式(I)の化合物がアミド基を含有する場合、そのカルボン酸誘導体(−CONH2→COOH)が挙げられる。
【0055】
1個またはそれ以上の不斉炭素原子を含有する式(I)の化合物は、2つまたはそれ以上の立体異性体として存在し得る。式(I)の化合物がアルケニルまたはアルケニレン基を含有する場合、幾何シス/トランス(またはZ/E)異性体が起り得る。構造異性体が低いエネルギー障壁を介して相互交換可能である場合、互変異性体の異性(互変異性)が生じ得る。これは、例えば、イミノ、ケトまたはオキシム基を含有する式(I)の化合物におけるプロトン互変異性の形態または芳香族部分を含有する化合物において、いわゆる原子価互変異性の形態を取り得る。従って、単一化合物が、2種以上の異性体を示し得ることとなる。2種以上の異性を示す化合物およびそれらの1種またはそれ以上の混合物を含む、式Iの化合物の立体異性体、幾何異性体および互変異性体の形態全てが、本発明の範囲内に含まれる。対イオンが光学活性である酸付加塩もしくは塩基塩、例えば、d−乳酸塩もしくはl−リシンまたはラセミ体、例えばdl−酒石酸塩もしくはdl−アルギニン塩もまた含まれる。
【0056】
シス/トランス異性体を、当業者によく知られた慣用技術、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶により分離し得る。
【0057】
個々の鏡像異性体を製造/単離するための従来の技術としては、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用するラセミ体(または塩もしくは誘導体のラセミ体)の分割が挙げられる。
【0058】
代替的には、ラセミ体(またはラセミ前駆体)を、適切な光学活性化合物、例えば、アルコールと、または式(I)の化合物が酸性または塩基性部分を含有する場合には、1−フェニルエチルアミンまたは酒石酸のような塩基または酸と反応させ得る。得られたジアステレオマー混合物を、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶により分離し、そしてジアステレオマーの一方または両方を、当業者によく知られた手段により対応する純粋な鏡像異性体に変換し得る。
【0059】
炭化水素、典型的には、0〜50体積%、典型的には2%〜20%のイソプロパノール、および0〜5体積%のアルキルアミン、典型的には0.1%のジエチルアミンを含有するヘプタンまたはヘキサンからなる移動相を用いる不斉樹脂上でのクロマトグラフィー(典型的にはHPLC)を使用して、本発明のキラル化合物(およびそのキラル前駆体)を鏡像異性体的に富化した形態で得ることができる。溶離液の濃縮により富化化合物を得る。任意のラセミ体が結晶化する場合、2つの異なるタイプの結晶が起り得る。第一のタイプは、両方の鏡像異性体を等モル量で含む1つの均一形態の結晶を生成する上記のラセミ化合物(真のラセミ化合物)である。第二のタイプは、それぞれが単一の鏡像異性体を含み2つの形態の結晶を等モル量で生成するラセミ混合物または集合体である。
【0060】
ラセミ混合物中に存在する結晶形態の両方が同一の物理的特性を有する一方で、これらは、真のラセミ体と比較して異なる物理的特性を有し得る。ラセミ混合物は、当業者に公知の従来技術により分離できる−例えば、E.L.Eliel and S.H.WilenによるStereochemistry of Organic Compounds(Wiley、1994)を参照のこと。
【0061】
本発明は、1個またはそれ以上の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量または質量数が自然で優勢である原子質量または質量数とは異なる原子で置き換えられている、全ての薬学的に受容可能な同位体標識された式(I)の化合物を含む。
【0062】
本発明の化合物中に含まれるのに適切な同位体の例としては、2Hおよび3Hのような水素の同位体、11C、13Cおよび14Cのような炭素の同位体、36Clのような塩素の同位体、18Fのようなフッ素の同位体、123Iおよび125Iのようなヨウ素の同位体、13Nおよび15Nのような窒素の同位体、15O、17Oおよび18Oのような酸素の同位体、32Pのようなリンの同位体ならびに35Sのような硫黄の同位体が挙げられる。
【0063】
特定の同位体標識された式Iの化合物、例えば放射性同位体を導入されたものは、薬物および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体のトリチウム、即ち3Hおよび炭素−14、即ち14Cは、それらの導入の容易さおよび素早い検出手段から見て、この目的のために特に有用である。
【0064】
ジュウテリウム、即ち2Hのようなより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性、例えばインビボ半減期の延長または必要用量の減少から生ずる一定の治療的利点をもたらし得、従って状況次第では好ましいことがある。
【0065】
11C、18F、15Oおよび13Nのような陽電子放出同位体での置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出断層撮影法(PET)研究において有用であり得る。
【0066】
同位体標識された式(I)の化合物は、一般的に当業者に公知の従来技術により、または以前に使用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する後記の実施例および製造に記載した方法と同様の方法により、製造することができる。
【0067】
本発明の薬学的に受容可能な溶媒和物は、結晶化溶媒が同位体で置換され得る、例えばD2O、d6−アセトン、d6−DMSOであるものを含む。
【0068】
式(I)の化合物は、提案された適応症を治療するために最も適切な投与形態および投与経路を選択するために、溶解性および溶液安定性(全pHでの)、浸透性などのその生物薬剤学的特性について評価されるべきである。
【0069】
薬学的使用を意図した本発明の化合物は、結晶または非晶質製品として投与され得る。これらは、沈殿法、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥または蒸発乾燥のような方法により、例えば固形プラグ(solid plug)、粉末またはフィルムとして得ることができる。マイクロ波または高周波乾燥を、この目的のために使用し得る。
【0070】
化合物は、単独で、または1種またはそれ以上の他の本発明の化合物と組み合わせて、または1種またはそれ以上の他の薬物(またはその任意の組合せ)と組み合わせて投与され得る。一般に、化合物は、1種またはそれ以上の薬学的に受容可能な添加剤と共に製剤として投与することになる。用語「添加剤」とは、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために本明細書中で使用される。添加剤の選択は、特定の投与方法、溶解性および安定性に対する添加剤の作用ならびに投与形態の性質のような要因に大きく依存する。
【0071】
本発明の化合物を送達するのに適した薬剤組成物およびそれらの製造方法は、当業者には容易に明らかである。このような組成物およびそれらの製造方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19編(Mack Publishing Company、1995)に見出され得る。
【0072】
本発明の化合物は、経口投与され得る。経口投与には、化合物を胃腸管に入れるような嚥下、および/または化合物を口から直接血流に入れるバッカル、舌もしくは舌下投与が含まれ得る。
【0073】
経口投与に適した製剤としては、錠剤のような固体、半固体および液体系;マルチ粒子またはナノ粒子、液体または粉末を含有する軟または硬カプセル剤;トローチ剤(液体充填を含む);チュー剤(chews);ゲル剤;急速分散投与形態;フィルム剤;オブル剤(ovule);スプレー剤;およびバッカル/粘膜接着パッチが挙げられる。
【0074】
液体製剤としては、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤が挙げられる。このような製剤は、軟または硬カプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)中の充填物として使用でき、そして典型的には、担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切な油、ならびに1種またはそれ以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含有する。液体製剤はまた、例えば、サシェからの固体を再調製することにより調製し得る。
【0075】
本発明の化合物はまた、Liang and ChenによるExpert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986(2001)に記載されている投与形態のような速溶性、速崩壊性の投与形態で使用し得る。
【0076】
錠剤投与形態のために、用量に応じて、薬物は、投与形態の1質量%〜80質量%、より典型的には投与形態の5質量%〜60質量%を構成し得る。薬物に加えて、錠剤は、一般に、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低アルキル置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、α化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。一般に、崩壊剤は、投与形態の1質量%〜25質量%、好ましくは5質量%〜20質量%を構成する。
【0077】
一般的に、結合剤は、錠剤製剤に粘着性を付与するのに使用される。適切な結合剤としては、微結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ゴム、ポリビニルピロリドン、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。錠剤はまた、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶セルロース、デンプンおよび二塩基性リン酸カルシウム二水和物のような賦形剤を含有し得る。
【0078】
錠剤はまた、場合によって、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80のような界面活性剤ならびに二酸化ケイ素およびタルクなどの流動促進剤を含有し得る。存在する場合、界面活性剤は、錠剤の0.2質量%〜5質量%を構成し得、そして流動促進剤は、錠剤の0.2質量%〜1質量%を構成し得る。
【0079】
一般に、錠剤はまた、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、ならびにステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物のような滑沢剤を含有する。滑沢剤は、一般に、錠剤の0.25質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜3質量%を構成する。
【0080】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤、保存剤および味マスキング剤が挙げられる。
【0081】
例示的な錠剤は、約80%までの薬物、約10質量%〜約90質量%の結合剤、約0質量%〜約85質量%の賦形剤、約2質量%〜約10質量%の崩壊剤および約0.25質量%〜約10質量%の滑沢剤を含有する。
【0082】
錠剤ブレンドを、直接またはローラーにより圧縮して、錠剤を成形し得る。代替的には、錠剤ブレンドまたはブレンドの一部を湿潤−、乾燥−もしくは溶融−顆粒化するか、溶融凝固させるか、または押し出し、その後打錠する。最終製剤は、1つまたはそれ以上の層を含んでもよく、そして被覆されていても、被覆されていなくてもよい;これをさらに、カプセル封入してもよい。
【0083】
錠剤の製剤は、H.Lieberman and L.LachmanによるPharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1(Marcel Dekker,New York、1980)で論じられている。
【0084】
ヒトまたは獣医学的に使用するための消耗性経口フィルムは、典型的には、柔軟な水溶性または水膨潤性薄膜投与形態であり、これは、迅速に溶解するか、粘膜接着性であり得、そして典型的には、式Iの化合物、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調節剤および溶媒を含有する。製剤のいくつかの成分が、2以上の機能を果たし得る。
【0085】
式(I)の化合物は、水溶性または不溶性であり得る。水溶性化合物は典型的には溶質の1質量%〜80質量%、より典型的には20質量%〜50質量%を構成する。溶解性の低い化合物は、より大きい割合の組成、典型的には、溶質の88質量%までを構成し得る。代替的には、式(I)の化合物は多粒子ビーズの形態であり得る。
【0086】
フィルム形成ポリマーは、天然多糖類、タンパク質または合成親水コロイドから選択され得、典型的には、0.01〜99質量%の範囲、より典型的には、30〜80質量%の範囲で存在する。
【0087】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、着香剤およびフレーバーエンハンサー(flavour enhancer)、保存剤、唾液刺激剤、清涼剤(cooling agent)、共溶媒(co-solvent)(油を含む)、エモリエント剤、増量剤、消泡剤、界面活性剤および味マスキング剤が挙げられる。
【0088】
本発明のフィルム剤は、典型的には、剥離可能なバッキング支持体または紙上に塗った薄い水性フィルムを蒸発乾燥させることにより調製される。これは、乾燥オーブンまたはトンネル乾燥機、典型的には複合コータードライヤー(combined coater dryer)で、または凍結乾燥または真空化(vacuuming)により行うことができる。
【0089】
経口投与のための固体製剤を、即時および/または調節放出するように製剤し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。
【0090】
本発明の目的に適した調節放出製剤は、米国特許第6,106,864号に記載されている。高エネルギー分散液ならびに浸透圧性および被覆粒子のような他の適切な放出技術の詳細は、Verma et al によるPharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14(2001)に見出される。制御放出を達成するためのチューインガムの使用は、WO 00/35298に記載されている。
【0091】
本発明の化合物はまた、血流内に、筋肉内にまたは内部器官内に直接投与され得る。非経口投与に適切な手段としては、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内(intrasternal)、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内および皮下が挙げられる。非経口投与のための適したデバイスとしては、針(マイクロニードルを含む)注射器、針なし注射器および注入技術が挙げられる。
【0092】
非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくはpH3から9)のような添加剤を含有し得る水溶液であるが、いくつかの用途のために、これらはより適切には、無菌の非水溶液として、または滅菌した発熱物質不含水のような適切なビヒクルと共に使用予定の乾燥形態として製剤化され得る。
【0093】
例えば、凍結乾燥による、滅菌条件下での非経口製剤の調製は、当業者によく知られた標準的な製薬技術を使用して容易に達成され得る。
【0094】
非経口液剤の調製に使用される式(I)の化合物の溶解性を、溶解性向上剤の導入のような適切な製剤技術を使用することにより高めてもよい。
【0095】
非経口投与のための製剤を、即時および/または調節放出するように製剤し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。従って、本発明の化合物を、懸濁剤として、または活性化合物の調節放出をもたらす移植デポーとして投与するための固体、半固体またはチキソトロピー性液体として製剤化し得る。このような製剤の例としては、薬物被覆ステントおよび半固体剤ならびに薬物充填ポリ(dl−乳酸−コグリコール)酸(PGLA)マイクロスフェアを含む懸濁剤が挙げられる。
【0096】
本発明の化合物はまた、皮膚または粘膜に局所、皮膚(皮内)または経皮投与され得る。この目的ための典型的な製剤としては、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウェハー剤、インプラント剤、スポンジ剤、繊維、絆創膏およびマイクロエマルションが挙げられる。リポソームもまた使用され得る。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤を導入してもよい−例えば、Finnin and MorganによるJ Pharm Sci、88(10)、955〜958(October 1999)を参照のこと。
【0097】
局所投与の他の手段としては、エレクトロポレーション、イオン導入法、フォノホレーシス、ソノホレーシスおよびマイクロニードルまたは針なし(例えば、PowderjectTM、BiojectTM など)注射による送達が挙げられる。
【0098】
局所投与のための製剤を、即時および/または調節放出するように製剤化し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。
【0099】
本発明の化合物はまた、鼻腔内または吸入により、典型的には乾燥粉末吸入器からの乾燥粉末の形態(単独で、混合物として、例えばラクトースとの乾燥ブレンドで、または例えばホスファチジルコリンのようなリン脂質と混合した混合成分粒子として)で、または1,1,1,2−テトラフルオロエタンまたは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパンのような適切な噴射剤を使用するか、または使用しない、加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは霧状ミストを生じさせるために電磁流体力学を使用する噴霧器)またはネブライザからのエアゾールスプレーとして、または点鼻剤として投与することができる。鼻腔内使用について、散剤は、生体接着剤、例えばキトサンまたはシクロデキストリンを含有し得る。
【0100】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器またはネブライザは、例えばエタノール、エタノール水溶液、または活性物質の分散、可溶化もしくは持続放出のために適切な代替剤、溶媒としての噴射剤、および場合によって、トリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸またはオリゴ乳酸のような界面活性剤を含む本発明の化合物の溶液または懸濁液を含有する。
【0101】
乾燥粉末または懸濁液製剤で使用する前に、薬物生成物を、吸入により送達するために適切なサイズ(典型的には5ミクロン未満)まで微粉化する。これは、スパイラルジェット粉砕、流動床ジェット粉砕、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化、または噴霧乾燥のような任意の適切な粉砕方法により達成し得る。
【0102】
吸入器(inhaler)またはインサフレーター(insufflator)で使用するためのカプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製)、ブリスターおよびカートリッジを、本発明の化合物の粉末混合物、ラクトースまたはデンプンのような適切な粉末基剤およびl−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウムのような性能改質剤を含有するように製剤化し得る。ラクトースは、無水であっても、一水和物の形態であってもよいが、後者が好ましい。他の適切な賦形剤としては、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースが挙げられる。
【0103】
霧状ミストを発生させるために電磁流体力学を使用して、噴霧器で使用するのに適切な溶液製剤は、動作1回当たり1μg〜20mgの本発明の化合物を含有し得、そして作動体積は、1μl〜100μlまで変動し得る。典型的な製剤は、式Iの化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含有し得る。プロピレングリコールの代わりに使用し得る代替的な溶媒としては、グリセリンおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0104】
メントールおよびレボメントールのような適切な着香剤またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムのような甘味料を、吸入/鼻腔内投与を意図した本発明の製剤に添加してもよい。
【0105】
吸入/鼻腔内投与のための製剤を、例えばPGLAを使用して、即時および/または調節放出するように製剤化し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。
【0106】
乾燥粉末吸入器およびエアゾールの場合には、投与単位は、定量を送達するバルブにより決定される。本発明に従う単位は、典型的に、式(I)の化合物の0.001mg〜10mgを含有する定量または「パフ」を投与するように準備される。全一日用量は、典型的に、0.001mg〜40mgの範囲であり、これを、単回用量で、より通常には、1日全体の分割量で投与し得る。
【0107】
式(I)の化合物は、吸入により投与するのに特に適している。
【0108】
本発明の化合物は、例えば坐剤、ペッサリーまたは浣腸剤の形態で、直腸または経膣投与され得る。カカオ脂は、従来の坐剤基剤であるが、様々な代替物を必要に応じて使用し得る。
【0109】
直腸/経膣投与のための製剤を、即時および/または調節放出するように製剤化し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を含む。
【0110】
本発明の化合物はまた、目または耳に、典型的に、等張性の調整した滅菌生理食塩水中の微粉化された懸濁液または溶液の液滴の形態で直接投与され得る。目および耳投与に適切な他の製剤としては、軟膏剤、ゲル剤、生分解性(例えば、吸収性ゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性(例えば、シリコーン)インプラント、ウェハー剤、レンズならびにニオソームもしくはリポソームのような粒子または小胞系が挙げられる。架橋ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸、セルロースポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースもしくはメチルセルロース)またはヘテロ多糖ポリマー(例えば、ジェランゴム(gelan gum))のようなポリマーを、塩化ベンザルコニウムのような保存剤と一緒に組み込み得る。このような製剤をまた、イオントフォレーシスにより送達し得る。目/耳投与のための製剤を、即時および/または調節放出するように製剤化し得る。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、拍動放出、制御放出、標的放出またはプログラム放出を含む。
【0111】
いずれかの上記の投与方法で使用するため、それらの溶解性、溶解速度、味マスキング、バイオアベイラビリティおよび/または安定性を改善するために、本発明の化合物を、シクロデキストリンおよびその適切な誘導体またはポリエチレングリコール含有ポリマーのような溶解性高分子実体と組み合わせてもよい。
【0112】
薬物−シクロデキストリン複合体は、例えば一般にほとんどの投与形態および投与経路に有用であることが見出されている。包接錯体と非包接複合体の両方を使用し得る。薬物との直接的な複合体化の別法として、シクロデキストリンを補助的添加物、即ち担体、賦形剤または可溶化剤として使用し得る。α−、β−およびγ−シクロデキストリンが、これらの目的のために最も一般的に使用され、この例は、国際特許出願番号WO 91/11172、WO 94/02518号およびWO 98/55148に見出され得る。
【0113】
例えば、特定の疾患または状態を治療する目的のために、活性化合物の組合せを投与することが望ましいので、2種またはそれ以上の薬剤組成物(少なくともそのうちの1種が本発明の化合物を含有する)を、それらの組成物を同時投与するのに適切なキットの形態で便利に組み合わせ得ることも、本発明の範囲内である。
【0114】
従って、本発明のキットは、2種またはそれ以上の別々の薬剤組成物(少なくともそのうちの1種が本発明の式(I)の化合物を含有する)ならびに容器、分割されたボトルまたは分割されたホイルパケット(foil packet)のような前記の組成物を別々に保持するための手段を含む。このようなキットの例としては、錠剤、カプセルなどを包装するのに使用される普通のブリスターパックが挙げられる。
【0115】
本発明のキットは、異なる投与形態で、例えば、経口的および非経口的に投与するのに、異なる投与間隔で別々の組成物を投与するのに、または別々の組成物を相互に漸増するのに特に適している。コンプライアンスを補助するために、キットは、典型的に、投与指示を含み、そしていわゆる記憶補助と共に提供され得る。
【0116】
ヒト患者への投与のための本発明の化合物の全一日用量は、典型的に、もちろん投与方法に依存するが、0.001mg〜5000mgの範囲である。例えば、経口投与は、0.1mg〜1000mgの全一日用量を必要とし得るが、静脈用量は、0.001mg〜100mgしか必要としない。全一日用量は、単回用量または分割用量で投与し得、そして医師の判断で、本明細書中に示されている典型的な範囲から外れてもよい。
【0117】
これらの投薬量は、約60kg〜70kgの体重を有する平均的なヒト対象(subject)に基づく。医師は、乳児および高齢者のようなこの範囲を外れる体重を有する対象に対する用量を容易に決定することができる。誤解を避けるために、「治療」に関する本明細書中での言及は、治癒的、緩和的および予防的治療に関する言及を包含する。
【0118】
哺乳動物全ての生理機能においてムスカリン様受容体は必須の役割を果たすために、式(I)の化合物は、ムスカリン様受容体と相互作用する能力を有し、従って、下記でさらに記載するような広範囲の治療用途を有する。
【0119】
従って、本発明は、M3受容体が関与する疾患、障害および状態を治療または予防する医薬を製造するための式(I)の化合物の使用に関する。本発明は、さらに、ヒトを含む哺乳動物をM3アンタゴニストで治療する方法であって、前記哺乳動物を有効量の式(I)の化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩、誘導形態もしくは組成物で治療することを含む方法に関する。
【0120】
従って、本発明のさらなる側面は、ムスカリン様受容体が関与する疾患、障害および状態の治療に使用するための式(I)の化合物または薬学的に受容可能なそれらの塩、誘導形態もしくは組成物に関する。このような疾患、障害および状態の例としては、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、憩室疾患、乗物酔い、胃潰瘍、腸の放射線検査、BPH(良性前立腺過形成)の対症療法、NSAID誘発胃潰瘍、尿失禁(切迫尿失禁、頻尿(frequency)、急迫性尿失禁、過活動膀胱、夜間頻尿および下部尿路症状を含む)、毛様体筋麻痺、散瞳、パーキンソン病が挙げられる。
【0121】
さらに具体的に言うと、本発明はまた、以下:
・慢性または急性気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞および肺気腫、
・あらゆるタイプ、病因または病原の閉塞性または炎症性気道疾患、特に慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺気腫またはCOPDと関連するもしくは関連しない呼吸困難を含むCOPD、不可逆性進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物療法に起因する気道過敏性の憎悪および肺高血圧に関連する気道疾患からなる群から選択されるメンバーである、閉塞性または炎症性気道疾患
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支炎、特に急性気管支炎、急性喉頭気管性気管支炎(acute laryngotracheal bronchitis)、アラキジン酸性気管支炎(arachidic bronchitis)、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎(dry bronchitis)、感染型喘息性気管支炎、増殖性気管支炎(productive bronchitis)、ブドウ球菌性もしくは連鎖球菌性気管支炎、および小胞性気管支炎(vesicular bronchitis)からなる群から選択されるメンバーである気管支炎、
・あらゆるタイプ、病因または病原の喘息、特に、アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介性喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的障害によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知もしくは不顕性原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫もしくはウイルス感染に起因する感染型喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴乳児症候群(wheezy infant syndrome)および細気管支炎(bronchiolytis)からなる群から選択されるメンバーである喘息、
・急性肺傷害、
・あらゆるタイプ、病因または病原の気管支拡張症、特に円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、毛細管気管支拡張症(capillary bronchiectasis)、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症および濾胞性気管支拡張症(follicular bronchiectasis)からなる群から選択されるメンバーである気管支拡張症
からなる群から選択される疾患、障害または状態の治療に使用するための式(I)の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩、誘導形態もしくは組成物に関する。
【0122】
とりわけ、本発明はまた、COPDまたは喘息の治療に使用するための式(I)の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩、誘導形態もしくは組成物に関する。
【0123】
式(I)の化合物、または薬学的に受容可能なそれらの塩、誘導形態もしくは組成物と組み合わせて使用し得る他の治療薬の適した例としては、以下:
(a)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト、
(b)LTB4、LTC4、LTD4およびLTE4のアンタゴニストを含むロイコトリエンアンタゴニスト(LTRA)、
(c)H1およびH3アンタゴニストを含むヒスタミン受容体アンタゴニスト、
(d)充血除去使用のためのα1−およびα2−アドレノセプターアゴニスト血管収縮交感神経様作用薬、
(e)短時間または長時間作用型β2アゴニスト、
(f)PDE阻害剤、例えばPDE3、PDE4およびPDE5阻害剤、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム、
(i)非選択的な、および選択的な、COX−1またはCOX−2阻害剤の両方であるCOX阻害剤(NSAID)、
(j)経口および吸入グルココルチコステロイド、
(k)内因性の炎症性実体に対して活性なモノクローナル抗体、
(l)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬、
(m)VLA−4アンタゴニストを含む接着分子阻害剤、
(n)キニン−B1−およびB2−受容体アンタゴニスト、
(o)免疫抑制剤、
(p)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、
(q)タキキニンNK1、NK2およびNK3受容体アンタゴニスト、
(r)エラスターゼ阻害剤、
(s)アデノシンA2a受容体アゴニスト、
(t)ウロキナーゼの阻害剤、
(u)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えばD2アゴニスト、
(v)NFκB経路の調節剤、例えばIKK阻害剤、
(w)p38MAPキナーゼ阻害剤、sykキナーゼ阻害剤またはJAKキナーゼ阻害剤のようなサイトカインシグナル伝達経路の調節剤、
(x)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、
(y)抗生物質、
(z)DP1、DP2またはCRTH2アンタゴニストのようなプロスタグラン
ジンアンタゴニスト、
(aa)HDAC阻害剤、
(bb)PI3キナーゼ阻害剤、および
(cc)CXCR2アンタゴニスト
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
本発明に従って、式(I)の化合物と:
−H3アンタゴニスト、
−β2アゴニスト、
−PDE4阻害剤、
−ステロイド、特にグルココルチコステロイド、
−アデノシンA2a受容体アゴニスト、
−p38MAPキナーゼまたはsykキナーゼのようなサイトカインシグナル伝達経路の調節剤または
−LTB4、LTC4、LTD4およびLTE4のアンタゴニストを含むロイコトリエンアンタゴニスト(LTRA)との組合せが好ましい。
【0125】
本発明に従って、式(I)の化合物と:
−グルココルチコステロイド、特にプレドニゾン、プレドニゾロン、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン、シクレソニドおよびフロ酸モメタゾンを含む全身性副作用の低い吸入グルココルチコステロイド、または
−特にサルブタモール、テルブタリン、バンブテロール、フェノテロール、サルメテロール、ホルモテロール、ツロブテロールおよびそれらの塩を含むβ2アゴニスト、との組合せがさらに好ましい。
【0126】
次の実施例は、式(I)の化合物の製造を説明する:
製造1
5−アミノ−5−メチル−2,2−ジフェニルヘキサンニトリル
【化9】

カリウムtert−ブトキシド(203mg、1.81mmol)およびtert−ブチル4,4−ジメチル−1,2,3−オキサチアジナン−3−カルボキシレート2,2−ジオキシド[(400mg、1.51mmol)、WO2003037327、p83]をジフェニルアセトニトリル(349mg、1.81mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)溶液に添加し、そして混合物を室温で18時間撹拌した。次いで、反応混合物を真空で濃縮し、そして残留物を塩酸(ジオキサン中4M、10mL)で処理し、そして40℃で2.5時間加熱した。反応混合物を真空で濃縮し、そして残留物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で塩基性化し、そして酢酸エチル(2×30mL)で抽出した。合わせた有機溶液を硫酸マグシウムで乾燥させ、真空で濃縮し、そして残留物をジクロロメタン:メタノール:0.88 アンモニア、90:10:1で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、77%の収率で無色の油状物として表題化合物(324mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:1.17(m,6H),1.48−1.57(m,2H),2.20−2.40(brs,2H),2.42−2.53(m,2H),7.22−7.43(m,10H);LRMS APCI m/z 279[M+H]+
【0127】
製造2
5−(3−ヒドロキシアゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニルヘキサンニトリル
【化10】

メタノール(50mL)中の(+/−)−エピクロロヒドリン(1.47mL、18.76mmol)および製造1の生成物(4.74g、17mmol)の混合物を60℃で48時間加熱した。次いで、反応混合物を真空で濃縮し、そして残留物を酢酸エチル(50mL)と炭酸水素ナトリウム溶液(30mL)との間で分配した。水相を分離し、そして酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空で濃縮し、そして残留物をジクロロメタン:メタノール:0.88 アンモニア、100:0:0〜95:5:0.5で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、50%の収率で淡黄色油状物として表題化合物(2.86g)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.93(s,6H),1.29−1.39(m,2H),2.38−2.50(m,2H),2.90−3.00(m,2H),3.29−3.39(m,2H),4.29−4.39(m,1H),7.24−7.45(m,10H);LRMS APCI m/z 335[M+H]+
【0128】
製造3
1−(4−シアノ−1,1−ジメチル−4,4−ジフェニルブチル)アゼチジン−3−イルメタンスルホネート
【化11】

メタンスルホニルクロリド(3.3mL、43mmol)を−15℃に冷却した製造2の生成物(4.82g、14.4mmol)のピリジン(50mL)溶液を添加した。混合物を2時間撹拌し、0℃まで温め、次いで真空で濃縮した。残留物を酢酸エチル(100mL)と炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)との間で分配し、そして有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)2:1で溶離するシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、81%収率で黄色の油状物として表題化合物(4.80g)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.95(s,6H),1.30−1.41(m,2H),2.42−2.55(m,2H),2.98(s,3H),3.25−3.37(m,2H),3.44−3.56(m,2H),5.00−5.06(m,1H),7.23−7.44(m,10H);LRMS APCI m/z 413[M+H]+
【0129】
製造4
5−[3−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロ−イソインドール−2−イル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化12】

製造3の生成物(2.5g、6.1mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(20mL)に溶解し、そしてフタルイミド(1.1g、2.6mmol)および炭酸セシウム(3.9g、12mmol)を添加した。反応混合物を80℃で2時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)で希釈し、そして酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。さらに精製することなく、生成物を次の工程に使用した。LRMS ESI m/z 464[M+H]+
【0130】
製造5
5−(3−アミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化13】

製造4の生成物(〜6.1mmol)をエタノール(50mL)に溶解し、そしてヒドラジン水和物(3.0g、60mmol)を添加した。反応混合物を60℃で1時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(50mL)で希釈し、そして酢酸エチル(50mL)で抽出した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ジクロロメタン:メタノール:0.88 アンモニア、95:5:0.5〜90:10:1で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、86%収率で無色の油状物として表題化合物(1.73g)を得た。
1HNMR(400MHz,DMSO)δ:0.82(s,6H),1.12−1.19(m,2H),2.40−2.47(m,2H),2.57−2.65(m,2H),3.07−3.15(m,2H),3.20−3.32(m,1H),7.25−7.42(m,10H);LRMS ESI m/z 334[M+H]+
【0131】
製造6
5−(3−アミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化14】

製造5の生成物(1.24g、3.72mmol)を3−メチル−3−ペンタノール(20mL)に溶解し、そして粉末水酸化カリウム(4.2g、75mmol)を添加した。反応混合物を120℃で18時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物を水(40mL)で希釈し、そして酢酸エチル(2×50mL)で抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ジクロロメタン:メタノール:0.88 アンモニア、90:10:1〜80:20:2で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、86%収率で無色の油状物として表題化合物(1.12g)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.90(s,6H),1.09−1.18(m,2H),2.38−2.46(m,2H),2.72−2.80(m,2H),3.34−3.40(m,2H),3.43−3.56(m,1H),5.50−5.64(br m,2H),7.19−7.38(m,10H);LRMS ESI m/z
352[M+H]+
【0132】
実施例1
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化15】

製造3の生成物(96mg、0.23mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、そしてベンジルアミン(50μL、0.46mmol)を添加した。反応混合物を70℃で3時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)95:5〜50:50で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、24%収率で無色の油状物として表題化合物(24mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.93(s,6H),1.28−1.37(m,2H),2.40−2.52(m,2H),2.73−2.84(m,2H),3.26−3.35(m,2H),3.36−3.46(m,1H),3.72(s,2H),7.22−7.43(m,15H);LRMS APCI m/z 424[M+H]+
【0133】
実施例2
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化16】

実施例1の生成物(24mg、0.057mmol)を3−メチル−3−ペンタノール(5mL)に溶解し、そして粉末水酸化カリウム(64mg、1.1mmol)を添加した。反応混合物を120℃で18時間撹拌し、次いで水酸化カリウム(50mg、0.89mmol)をさらに添加した。120℃で6時間撹拌した後、反応混合物を真空で濃縮した。残留物を水(20mL)で希釈し、そして酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)95:5〜50:50で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、92%収率で無色の油状物として表題化合物(23mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.88(s,6H),1.10−1.18(m,2H),2.38−2.46(m,2H),2.74−2.83(m,2H),3.26−3.35(m,2H),3.36−3.45(m,1H),3.70(s,2H),5.40−5.60(br m,2H),7.20−7.40(m,15H);LRMS APCI m/z 442[M+H]+
【0134】
実施例3
5−[3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化17】

製造6の生成物(47mg、0.13mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、そして2−クロロ−3−ヒドロキシベンズアルデヒド(42mg、0.27mmol)を添加した。氷酢酸を1滴添加し、そして反応混合物を室温で1時間撹拌した。トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(57mg、0.27mmol)を添加し、そして反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、そして有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)66:33〜0:100で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、27%収率で無色の発泡体として表題化合物(18mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.95(s,6H),1.11−1.22(m,2H),2.40−2.48(m,2H),2.80−3.00(m,2H),3.33−3.52(m,3H),3.78(s,2H),5.48−5.64(br m,2H),6.82−6.95(m,2H),7.04−7.13(m,1H),7.20−7.38(m,10H);LRMS ESI m/z 492[M+H]+
【0135】
実施例4
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化18】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および5−クロロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、50%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.92(s,6H),1.13−1.20(m,2H),2.40−2.48(m,2H),2.85−3.04(m,2H),3.30−3.40(m,3H),3.83(s,2H),5.43−5.60(br m,2H),6.69−6.75(m,1H),6.92(s,1H),7.06−7.12(m,1H),7.23−7.38(m,10H);LRMS ESI m/z 492[M+H]+
【0136】
実施例5
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化19】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および5−フルオロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、37%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,MeOD)δ:1.27(s,6H),1.37−1.43(m,2H),2.42−2.54(m,2H),4.18−4.38(m,7H),6.88−6.75(m,1H),7.05−7.12(m,1H),7.13−7.19(m,1H),7.25−7.40(m,10H);LRMS ESI m/z 476[M+H]+
【0137】
実施例6
5−[3−(3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化20】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および3−ヒドロキシベンズアルデヒドから、54%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,MeOD)δ:0.95(s,6H),1.06−1.15(m,2H),2.30−2.39(m,2H),2.95−3.03(m,2H),3.22−3.38(m,3H),3.59(s,2H),6.64−6.78(m,3H),7.08−7.15(m,1H),7.22−7.40(m,10H);LRMS ESI m/z 458[M+H]+
【0138】
実施例7
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化21】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造5の生成物および5−フルオロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、63%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.90(s,6H),1.25−1.38(m,2H),2.40−2.53(m,2H),2.82−2.95(m,2H),3.25−3.42(m,3H),3.85(s,2H),6.64−6.73(m,1H),6.74−6.80(m,1H),6.81−6.92(m,1H),7.23−7.43(m,10H);LRMS ESI m/z 458[M+H]+
【0139】
実施例8
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化22】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造5の生成物および5−クロロ−2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、67%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.92(s,6H),1.27−1.37(m,2H),2.40−2.52(m,2H),2.82−2.97(m,2H),3.25−3.40(m,3H),3.84(s,2H),6.73−6.78(m,1H),6.95(s,1H),7.07−7.15(m,1H),7.25−7.44(m,10H);LRMS ESI m/z 474[M+H]+
【0140】
実施例9
5−[3−(2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化23】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および2−ヒドロキシベンズアルデヒドから、23%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.88(s,6H),1.08−1.17(m,2H),2.38−2.45(m,2H),2.82−2.94(m,2H),3.26−3.43(m,3H),3.86(s,2H),5.49−5.58(br m,2H),6.74−6.83(m,2H),6.92−6.97(m,1H),7.13−7.18(m,1H),7.23−7.37(m,10H);LRMS APCI m/z 458[M+H]+
【0141】
実施例10
5−[3−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化24】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および4−フルオロ−3−ヒドロキシベンズアルデヒド(Bioorg.Med.Chem.2001,9,677)から、11%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.85(s,6H),1.12−1.19(m,2H),2.38−2.44(m,2H),2.80−2.92(m,2H),3.28−3.43(m,3H),3.54(s,2H),5.56−5.60(br m,2H),6.60−6.67(m,1H),6.80−6.87(m,1H),6.88−6.97(m,1H),7.18−7.37(m,10H);LRMS ESI m/z 476[M+H]+
【0142】
実施例11
5−[3−(4−クロロ−3−メトキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化25】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および4−クロロ−3−メトキシベンズアルデヒドから、54%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.84(s,6H),1.07−1.18(m,2H),2.38−2.45(m,2H),2.75−2.83(m,2H),3.25−3.33(m,2H),3.34−3.40(m,1H),3.64(s,2H),3.87(s,3H),5.45−5.60(br m,2H),6.78−6.82(m,1H),6.92(s,1H),7.08−7.38(m,11H);LRMS ESI m/z 506[M+H]+
【0143】
実施例12
5−[3−(4−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化26】

実施例11の生成物(300mg、0.59mmol)を0℃でジクロロメタン(10mL)に溶解し、そして三臭化ホウ素(2.37mL、2.37mmoL、ジクロロメタン中1M)を添加した。反応混合物を放置し15℃まで2時間かけて温めた。反応物を水(5mL)および0.88 アンモニア(15mL)でクエンチし、そして得られた溶液を室温で18時間撹拌した。有機相を分離し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ジクロロメタン:メタノール:0.88 アンモニア 100:0:0〜80:20:2で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、次いでアセトニトリル中0.05%ジエチルアミン:0.05% ジエチルアミン水溶液5:95〜100:0で溶離する逆相HPLCにより残留物を精製し、11%収率で無色の固体として表題化合物(33mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.85(s,6H),1.11−1.18(m,2H),2.39−2.46(m,2H),2.77−2.83(m,2H),3.27−3.40(m,3H),3.62(s,2H),5.40−5.60(br m,2H),6.75−6.79(m,1H),6.95(s,1H),7.20−7.37(m,11H);LRMS APCI m/z 492[M+H]+
【0144】
実施例13
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル
【化27】

製造3の生成物(300mg、0.73mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、そして3−メトキシチオフェノール(98μL、0.80mmol)および炭酸セシウム(473mg、1.5mmol)を添加した。反応混合物を80℃で2時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物を水(20mL)で希釈し、そしてジエチルエーテル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)100:0〜1:5で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、66%収率で無色の固体として表題化合物(220mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.88(s,6H),1.26−1.38(m,2H),2.40−2.52(m,2H),3.05−3.15(m,2H),3.44−3.56(m,2H),3.79(s,3H),3.82−3.88(m,1H),6.67−6.80(m,3H),7.15−7.20(m,1H),7.22−7.43(m,10H);LRMS ESI m/z 457[M+H]+
【0145】
実施例14
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化28】

実施例13の生成物(220mg、0.482mmol)を3−メチル−3−ペンタノール(5mL)に溶解し、そして粉末水酸化カリウム(535mg、9.55mmol)を添加した。反応混合物を120℃で18時間撹拌し、次いで真空で濃縮した。残留物を水(20mL)で希釈し、そして酢酸エチル(3×30mL)で抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮し、96%収率で無色の油状物として表題化合物(220mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.86(s,6H),1.08−1.17(m,2H),2.38−2.45(m,2H),3.06−3.13(m,2H),3.46−3.54(m,2H),3.77(s,3H),3.80−3.91(m,1H),5.48−5.77(br m,2H),6.67−6.78(m,3H),7.13−7.19(m,1H),7.20−7.38(m,10H);LRMS ESI m/z 475[M+H]+
【0146】
実施例15
5−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化29】

実施例14の生成物(220mg、0.46mmol)を0℃でジクロロメタン(3mL)に溶解し、そして三臭化ホウ素(1.85mL、1.85mmoL、ジクロロメタン中1M)を添加した。反応混合物を放置し5℃まで2時間かけて温めた。−10℃まで冷却した後、三臭化ホウ素(0.90mL、0.90mmol)をさらに添加し、そして反応混合物を放置し45分かけて5℃まで徐々に温めた。反応物をチオフェノール(47μL、0.46mmol)、次いで0.88 アンモニア(20mL)およびジクロロメタン(5mL)で処理し、そして得られた溶液を室温で18時間撹拌した。有機相を分離し、そして水相をジクロロメタン(2×30mL)で抽出した。合わせた有機物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、そして真空で濃縮した。ペンタン:酢酸エチル/メタノール/0.88 アンモニア(90/10/1)100:0〜40:60で溶離するシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより残留物を精製し、92%収率で無色の発泡体として表題化合物(196mg)を得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.87(s,6H),1.08−1.20(m,2H),2.37−2.45(m,2H),3.12−3.20(m,2H),3.53−3.60(m,2H),3.78−3.86(m,1H),5.55−5.75(br m,1H),7.67−5.95(br m,1H),6.60−6.87(m,3H),7.03−7.12(m,1H),7.18−7.35(m,10H);LRMS ESI m/z 461[M+H]+
【0147】
実施例16
5−[3−(3−クロロ−4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化30】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および3−クロロ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドから、23%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.92(s,6H),1.13−1.20(m,2H),2.38−2.45(m,2H),2.80−2.93(m,2H),3.30−3.40(m,3H),3.58(s,2H),5.53−5.60(br m,2H),6.83−6.85(m,1H),6.99−7.03(m,1H),7.20−7.38(m,11H);LRMS APCI m/z 492[M+H]+
【0148】
実施例17
5−[3−(4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
【化31】

実施例3に記載される方法と類似の方法を使用して、製造6の生成物および4−ヒドロキシベンズアルデヒドから、21%収率で無色の油状物として表題化合物を製造した。1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.92(s,6H),1.13−1.20(m,2H),2.38−2.45(m,2H),2.82−2.95(m,2H),3.33−3.42(m,3H),3.60(s,2H),5.56−5.63(br m,2H),6.64−6.68(m,2H),7.01−7.05(m,2H),7.20−7.38(m,10H);LRMS APCI m/z 458[M+H]+
【0149】
効力アッセイ
3効力を、NFAT−βラクタマーゼ遺伝子でトランスフェクションしたCHO−K1細胞で測定した。ヒトムスカリン様M3受容体を組み換え発現するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞を、NFAT_β−Lac_Zeoプラスミドでトランスフェクションした。25mM HEPES(Life Technologies 32430−027)が補充された、10% FCS(ウシ胎仔血清;Sigma F−7524)、1nM ピルビン酸ナトリウム(Sigma S−8636)、NEAA(非必須アミノ酸;Invitrogen 11140−035)および200μg/ml Zeocin(Invitrogen R250−01)を含有する、Glutamax−1を有するDMEM中で、細胞を増殖させた。
【0150】
hM3β−Lacアッセイプロトコル
5% CO2を含有する雰囲気中、37℃で5分間、細胞と共にインキュベーションした酵素を含まない細胞剥離用溶液(Life technologies 13151−014)を使用して、細胞が密集度80〜90%に達したときに、細胞をアッセイ用に採取した。分離した細胞を、温めた増殖培地に集め、そして2000rpmで10分間遠心分離し、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水;Life Technologies 14190−094)中で洗浄し、そして直前に記載したように再び遠心分離した。細胞を2×105細胞/mlで増殖培地(前記と同様の組成)に再懸濁させた。この細胞懸濁液(20μl)を、384ウェルの黒色透明底(black clear bottomed)プレート(Greiner Bio One 781091−PFI)の各ウェルに添加した。使用したアッセイ緩衝液は、0.05%のPluronic F−127(Sigma 9003−11−6)および2.5% DMSOを補充したPBSであった。37℃/5%CO2で4時間細胞と共にインキュベートした80nMのカルバミルコリン(Aldrich N240−9)を使用して、ムスカリン様M3受容体シグナル伝達を刺激し、そしてTecan SpectraFluor+プレートリーダー(λ−励起405nm、発光450nmおよび503nm)を使用してインキュベーション期間の終了時にモニターした。試験下のM3受容体アンタゴニストを、4時間のインキュベーション期間の開始時にアッセイに添加し、そして化合物活性を、カルバミルコリン誘発シグナルの濃度依存性阻害として測定した。阻害曲線をプロットし、そしてIC50値を、4パラメーターS字状フィットを使用して生成させ、そしてCheng−Prusoff補正を使用してKi値に、およびアッセイにおけるカルバミルコリンに関するKD値に変換した。
【0151】
従って、上記アッセイで試験した本発明の式(I)のカルボキサミド誘導体は、以下の表に掲記したように、M3受容体アンタゴニスト活性を示すことが見出された:
【表1】

【0152】
モルモット気管アッセイ
体重350〜450gの雄のDunkin−Hartleyモルモットを、CO2濃度を上昇させて選択し、続いて大静脈を瀉血する。気管を喉頭から胸腔への入口点(entry point)まで切開し、次いで室温の新鮮な酸素化改変Krebs緩衝液(プロプラノロール(10μM)、グアネチジン(10μM)およびインドメタシン(3μM)を含有するKrebs)中に入れる。気管筋と反対側の軟骨を介して切断することにより気管を開く。約3〜5個の軟骨輪の幅のストリップを切断する。力変換器に取り付けるために、ストリップの片端の軟骨に木綿糸を取り付け、器官槽に組織を固定するために他端に木綿糸のループを作る。ストリップを、温めた(37℃)通気改良Krebsを満たした器官槽(5ml)に備え付ける。
【0153】
ポンプ流速を1.0ml/分に設定し、そして組織を継続的に洗浄する。組織を、1000mgの初張力下に置く。15分および30分後に、組織に再び張力をかけ、次いでさらに30〜45分間平衡化するにまかせる。
【0154】
組織を、次のパラメーターの電場刺激(EFS)にかける:2分毎に10秒トレーン(train)、0.1ミリ秒パルス幅、10Hzおよび10〜30V。各組織での最大収縮反応が観察されるまで、電圧を規定された範囲内で10分毎に5V上昇させる。次いで、各組織に対して正当な最大電圧を、残りの実験を通して使用する。EFSを20分間平衡にした後に、ポンプを停止し、そして15分後に、コントロール読み取りを8〜10分間にわたって行う(4〜5応答)。次いで、30×Kiのボーラス用量(濾過結合アッセイにおいてCHO細胞で発現されるヒトM3受容体で測定した)として化合物を各組織に添加し、そして2時間インキュベートするにまかせる。次いで、1分間の改良Krebsでの急速洗浄を使用して、化合物を組織から洗浄し、そして流速を残りの実験用に1ml/分に回復させる。実験の終了時に、組織をヒスタミン(1μM)でテストし、生存率を決定する。実験の間に得た読み取りを、Notocord(登録商標)ソフトウェアを使用して自動的に集める。EFS反応の阻害の測定を考慮して、生データを反応率に変換する。洗い出しを開始した後、組織が誘発された阻害から25%回復するのにかかった時間を記録し、そして化合物作用持続時間の尺度として使用する。組織の生存度により、実験の持続時間は化合物洗い出しの16時間後に制限される。化合物を、典型的に、n=2〜5で試験し、作用の持続時間を評価する。
【0155】
代替的に、次のモルモット気管アッセイもまた使用し得る:
気管を、雄のDunkin−Hartleyモルモット(体重350〜450g)から取り出し、続いて、付着性の結合組織を取り出し、気管筋と反対側の軟骨を介して切開し、そして軟骨輪の幅の気管ストリップ3〜5個を調製した。気管ストリップを、5ml組織槽中、等長ひずみゲージと固定組織フックとの間に、筋肉を水平にして初張力1g下で吊し、そして3μM インドメタシンおよび10μM グアネチジンを含有する、温めた(37℃)通気(95%O2/5%CO2)Krebs溶液中に浸した。組織を、平行な白金ワイヤ電極(ギャップ約1cm)の間に配置した。新鮮なKrebs溶液(上記組成)の一定な1ml/分流速を、ぜん動ポンプを使用して組織槽全体に維持した。平衡期間の開始から15分および30分で1gに再び張力をかけながら、組織を1時間平衡するにまかせた。平衡終了時に、組織を、次のパラメーターを使用して電場刺激した(EFS):10V、10Hz 0.1ミリ秒パルス幅、2分ごとに10秒トレーン。各組織において、電圧反応曲線を、10v〜30Vの範囲にわたって構築し(他の刺激パラメーターは全て一定に保つ)、正当な最大刺激を決定した。これらの刺激パラメーターを使用すると、1μMのテトロドトキシンまたは1μMのアトロピンによる遮断で確認されたように、EFS反応は100%神経媒介であり、そして100%コリン作動性であった。次いで、反応が再現されるまで、組織を2分間隔で繰り返し刺激した。試験化合物を添加する20分前にぜん動ポンプを停止し、そして最後の10分間にわたる平均単収縮をコントロール反応として記録した。試験化合物を組織槽に添加し、各組織に単一濃度の化合物を与え、そして2時間平衡するにまかせた。添加の2時間後に、EFS反応の阻害を記録し、そして同じ動物からの気管ストリップで、一連の化合物濃度を使用して、IC50曲線を生成させた。次いで、組織を迅速に洗浄し、そしてKrebs溶液での1ml/分灌流を再び確立した。組織をさらに16時間刺激し、EFS反応の回復を記録した。16時間の終了時に、10μMのヒスタミンを槽に添加し、組織生存率を確認した。アンタゴニストの正当な最大濃度(>70%であるが100%未満の阻害反応をもたらす試験濃度)を、IC50曲線から同定し、そして誘発阻害が25%回復するまでの時間(T25)を、この濃度を与えられた組織で計算した。化合物を、典型的に、n=2〜5で試験し、作用の持続時間を評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
1は、CNまたはCONH2であり;
2およびR3はメチルであるか、またはR2およびR3はまた、それらが連結している炭素原子と一緒になって、シクロペンタン環を形成し得;
Xは、NHまたはSであり;
pは、0または1であり;
1は、
a)ハロ、CN、CF3、OR4、SR4、OCF3、(C1〜C4)アルキルおよびOHで場合によって置換されるフェニルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されるフェニル;
b)ハロ、CN、CF3、OR4、SR4、OCF3および(C1〜C4)アルキルから独立して選択される1または2個の基で場合によって置換されるナフチル;
c)O、SまたはNから独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含む9または10員の二環式芳香族複素環式基(該複素環式基はOR4、(C1〜C4)アルキルおよびハロから選択される1または2個の置換基で場合によって置換される)
から選択され;
4は、Hまたは(C1〜C4)アルキルである]
の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
1がCONH2である請求項1に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
pが0であり、かつXがSである、請求項1または2に記載の化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項4】
pが1であり、かつXがNHである請求項1または2に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項5】
1が、F、Cl、CF3、OH、OCH3、OCF3およびCH3から独立して選択される1〜3個の基で場合によって置換されるフェニルである請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項6】
1が、F、Cl、CF3、OH、OCH3、OCF3およびCH3から独立して選択される1〜2個の基で場合によって置換されるフェニルである請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項7】
1が、F、ClおよびOHから独立して選択される1〜2個の基で場合によって置換されるフェニルである請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項8】
2およびR3がメチルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
化合物が、
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−(3−ベンジルアミノ−アゼチジン−1−イル)−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(2−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(5−フルオロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(5−クロロ−2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(2−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−フルオロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−クロロ−3−メトキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(4−クロロ−3−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサンニトリル;
5−[3−(3−メトキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−ヒドロキシ−フェニルスルファニル)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド;
5−[3−(3−クロロ−4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド、および
5−[3−(4−ヒドロキシ−ベンジルアミノ)−アゼチジン−1−イル]−5−メチル−2,2−ジフェニル−ヘキサン酸アミド
から選択される請求項1に記載の化合物、またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項10】
少なくとも有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物を含有する薬学的組成物。
【請求項11】
薬剤として使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物。
【請求項12】
以下:
−慢性または急性気管支収縮、慢性気管支炎、末梢気道閉塞および肺気腫、
−あらゆるタイプ、病因または病原の閉塞性または炎症性気道疾患、特に、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎、肺気腫またはCOPDと関連するもしくは関連しない呼吸困難を含むCOPD、不可逆性進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物療法に起因する気道過敏性の憎悪および肺高血圧に関連する気道疾患からなる群から選択されるメンバーである、閉塞性または炎症性気道疾患、
−あらゆるタイプ、病因または病原の気管支炎、特に急性気管支炎、急性喉頭気管性気管支炎、アラキジン酸性気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性気管支炎、乾性気管支炎、感染型喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌性もしくは連鎖球菌性気管支炎、および小胞性気管支炎からなる群から選択されるメンバーである気管支炎、
−あらゆるタイプ、病因または病原の喘息、特にアトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE介在性喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的障害によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知もしくは不顕性原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫もしくはウイルス感染に起因する感染型喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴乳児症候群および細気管支炎からなる群から選択されるメンバーである喘息、
−急性肺傷害、
−あらゆるタイプ、病因または病原の気管支拡張症、特に円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、毛細管気管支拡張症、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症および濾胞性気管支拡張症からなる群から選択されるメンバーである気管支拡張症、
からなる群から選択される疾患、障害および状態を治療する薬物を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項13】
M3アンタゴニストを用いてヒトを含む哺乳動物を治療する方法であって、有効量の請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物を用いて該哺乳動物を治療することを含む方法。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物と、以下:
(a)5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤または5−リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(FLAP)アンタゴニスト、
(b)LTB4、LTC4、LTD4およびLTE4のアンタゴニストを含むロイコトリエンアンタゴニスト(LTRA)、
(c)H1およびH3アンタゴニストを含むヒスタミン受容体アンタゴニスト、
(d)充血除去使用のためのα1−およびα2−アドレノセプターアゴニスト血管収縮交感神経様作用薬、
(e)短時間または長時間作用型β2アゴニスト、
(f)PDE阻害剤、例えばPDE3、PDE4およびPDE5阻害剤、
(g)テオフィリン、
(h)クロモグリク酸ナトリウム、
(i)非選択的な、および選択的な、COX−1またはCOX−2阻害剤の両方であるCOX阻害剤(NSAID)、
(j)経口および吸入グルココルチコステロイド、
(k)内因性の炎症性実体に対して活性なモノクローナル抗体、
(l)抗腫瘍壊死因子(抗TNF−α)薬、
(m)VLA−4アンタゴニストを含む接着分子阻害剤、
(n)キニン−B1−およびB2−受容体アンタゴニスト、
(o)免疫抑制剤、
(p)マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の阻害剤、
(q)タキキニンNK1、NK2およびNK3受容体アンタゴニスト、
(r)エラスターゼ阻害剤、
(s)アデノシンA2a受容体アゴニスト、
(t)ウロキナーゼの阻害剤、
(u)ドーパミン受容体に作用する化合物、例えばD2アゴニスト、
(v)NFκB経路の調節剤、例えばIKK阻害剤、
(w)p38MAPキナーゼ阻害剤、sykキナーゼ阻害剤またはJAKキナーゼ阻害剤のようなサイトカインシグナル伝達経路の調節剤、
(x)粘液溶解薬または鎮咳薬として分類することができる薬剤、
(y)抗生物質、
(z)DP1、DP2またはCRTH2アンタゴニストのようなプロスタグランジンアンタゴニスト、
(aa)HDAC阻害剤、
(bb)PI3キナーゼ阻害剤、および
(cc)CXCR2アンタゴニスト
から選択される他の治療薬との組み合わせ。
【請求項15】
式:
【化2】

[式中、R2およびR3は式(I)の化合物について記載される通りであり、そしてPG’は、フタルイミドまたはベンジルのような適切なアミン保護基である]
の中間体。

【公表番号】特表2010−504316(P2010−504316A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528802(P2009−528802)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/IB2007/002593
【国際公開番号】WO2008/035157
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(597014501)ファイザー・リミテッド (107)
【氏名又は名称原語表記】Pfizer Limited
【住所又は居所原語表記】Ramsgate Road, Sandwich, Kent, England
【Fターム(参考)】