説明

ムチリン誘導体およびその抗菌剤としての使用

【課題】抗微生物活性薬などの医薬品として有用なムチリン類を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物[式中、Rはアリーレンまたはヘテロサイクレンであるか;あるいはRおよびRがそれらが結合している窒素原子とともに非芳香族ヘテロサイクレンを形成しており;他の残基は水素あるいは各種置換基を意味する]。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば抗微生物活性、例えば抗菌活性を有する化合物に関するものであり、より具体的には本発明は、ムチリン類に関するものである。
【0002】
(発明の開示)
一態様において本発明は、下記式の化合物を提供する。
【0003】
【化1】

式中、
Rは水素またはアルキルであり;
は水素または下記式の基であり;
【0004】
【化2】

Xは硫黄、酸素、NR10(R10は水素またはアルキルである)、または適切なアニオン存在下でのN(R′10(R′10はアルキルである)であり;
はアミノ、アルキル、アリール、複素環またはメルカプトであり;Xが酸素の場合、Rはさらに水素であり;
はアリーレンまたはヘテロサイクレン(heterocyclene)であり;
は水素またはアルキルであり;
は水素またはアルキルであり;
およびR′は水素または重水素であり;
、RおよびRは水素または重水素であり;あるいは
RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、非芳香族ヘテロサイクレンを形成しており;Rは下記式の基であり;
【0005】
【化3】

上記式において、XおよびRは上記で定義の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
Rは、水素またはアルキル、例えば(C1−4)アルキルであり、好ましくは水素である。
【0007】
は、水素または−C(=X)R、例えば式−C(=X)Rの基である。
【0008】
Xは、硫黄、酸素、NR10(R10は水素またはアルキル、例えば(C1−4)アルキルである)、または適切なアニオン存在下でのN(R′10(R′10はアルキル、例えば(C1−4)アルキルである)であり、好ましくは酸素である。
【0009】
はアミノ、アルキル、アルコキシ(例:(C1−4)アルコキシ)、アリール、複素環またはメルカプト(例:式−S−R12の基であり、R12はアルキル、例えば(C1−4)アルキルである)であり;Xが酸素の場合、Rは、水素、アミノ、アルキル、アルコキシ、アリール、複素環またはメルカプトである。
【0010】
は好ましくは、アルキル、例えば(C1−8)アルキル((C1−4)アルキルなど)、例えば未置換または例えばプロイロムチリン化学において一般的な基によって置換された置換アルキル、例えば1以上のアミノ、フッ素などのハロゲン、トリフルオロメチルなどのトリフルオロアルキル;グアニジニル、水酸基、イミダゾリルのように1個もしくは2個の窒素原子を有する5員もしくは6員の環を有する複素環である。Rがアミノによって置換されたアルキルの場合、Rは好ましくは、バリン、ヒスチジン、アルギニン、ピペコリン酸などのアミノ酸残基であり、その残基は例えば、カルボキシル基が分離している場合に残っているアミノ酸の一部を含むものである。
【0011】
あるいはRは好ましくは、例えば窒素から選択される1個もしくは2個のヘテロ原子を有するような、例えばさらに別の環(系)と縮合している5員もしくは6員の複素環などの複素環であって、前記別の環系がフェニル環などであるものであり;好ましくはピペリジニル、ピロリジニル、ピロリル、ピリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、トリアゾリルであり;例えば未置換複素環または例えば1以上のメチルなどのアルキル;水酸基、アミノ、ニトロ、COOR13の基によって置換された置換複素環であり、R13は、例えば好ましくは1以上のアルキル、水酸基、アミノ、ニトロによって置換されたtert−ブチルなどの(C1−4)アルキルのようなアルキルである。
【0012】
がピペリジニルなどの複素環である場合、例えばピペリジニルにおける複素環の水素原子、すなわち環系の窒素原子に結合した水素原子は重水素によって置き換わっていても良い。
【0013】
の意味におけるアミノには、遊離アミノ基、アルキルアミンおよびジアルキルアミンならびに−COOR11(R11はアルキル、好ましくは(C1−4)アルキルである)によって置換されたアミンなどがある。
【0014】
は、フェニレンなどのアリーレン、例えば未置換アリーレンであるか例えば1以上の水酸基、アルキル(例:(C1−4)アルキル)、ハロゲン(例:フッ素)、トリフルオロアルキル、ニトロなどのプロイロムチリン化学で一般的な基によって置換された置換アリーレンなど、あるいはヘテロサイクレンである。本明細書で使用されるヘテロサイクレンとは、2個の結合が式Iの化合物において隣接する窒素基および硫黄基に対する結合であるヘテロ環である。好ましくはRは、アリーレン、例えば未置換アリーレンであるか例えばアルキル(例:メチルなどの(C1−4)アルキル)、ハロゲン(例:フッ素)、トリフルオロメチルのようなトリフルオロアルキルなどのプロイロムチリン化学で一般的な1以上の基によって置換されたアリーレンなどである。Rの意味におけるアリーレンおよびヘテロサイクレンは、式Iの化合物における硫黄原子および−N(R)(R)に結合している。これら2つの結合は相当する環系で、隣接していても良く、あるいは例えばオルト、パラまたはメタ位などの別の位置であっても良い。ヘテロサイクレンは好ましくは、ヘテロサイクレンの炭素原子を介して、式Iの化合物における硫黄原子および−N(R)(R)に結合している。
【0015】
は水素またはアルキル、好ましくは水素またはメチルなどの(C1−4)アルキルである。
【0016】
は水素またはアルキル、好ましくは水素またはメチルなどの(C1−4)アルキル;例えば未置換アルキルであるか例えば水酸基によって置換された置換アルキルであり;より好ましくはRは水素である。
【0017】
およびR′は、水素または重水素、好ましくは水素である。R、RおよびRは水素または重水素である。
【0018】
が式−C(=X)−Rの基である場合、RおよびRがそれらの結合している窒素原子と一体となって、5〜6員環および例えば窒素などの1個のヘテロ原子を有する非芳香族ヘテロサイクレンを形成していても良く、例えばピペリジニル、ピロリジニル、好ましくはピペリジンである。好ましくはそのヘテロサイクレンは、ヘテロサイクレンの炭素原子を介して式Iの化合物における硫黄原子および−N(R)基に結合している。本明細書において別段の定義がない限り、複素環またはヘテロサイクレンには、例えばNなどのS、OおよびNから選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、さらに別の環(系)と縮合していても良い、例えばフェニル環と縮合していても良い、あるいはキノリン、プリンなどの複素環と縮合していても良い5員または6員の環が含まれる。複素環(ヘテロサイクレン)には、未置換であるかアルキル、水酸基、アミノ、ニトロ、COOR13の基(R13はアルキルである)などのプロイロムチリン化学において一般的な基によって置換された置換複素環(ヘテロサイクレン)などがある。アルキルには、(C1−8)アルキル、例えば(C1−4)アルキルなどがある。アリールにはフェニルなどがある。
【0019】
別の態様において本発明は、
Rが水素であり;
が水素または下記式の基であり;
【0020】
【化4】

Xが硫黄、酸素、NR10(R10は水素またはアルキルである)、または適切なアニオン(例:Cl)存在下でのN(R′10(R′10はアルキルである)であり;
がアミノ、アルキル、複素環またはメルカプトであり;Xが酸素の場合、Rがさらに水素であり;
がフェニレンであり;
が水素またはアルキルであり;
が水素であり;
およびR′が水素であり;
、RおよびRが水素または重水素であり;あるいは
RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一体となって、非芳香族ヘテロサイクレンを形成しており;Rが下記式の基であり;
【0021】
【化5】

上記式において、XおよびRがアルキルである式Iの化合物を提供する。
【0022】
別の態様において本発明は、下記式の化合物
【0023】
【化6】

[式中、R1sは水素または下記式の基;
【0024】
【化7】

例えば下記式の基であり;
【0025】
【化8】

6sは水素または重水素であり;
2sは水素、メチルまたはtert−ブチルであり;
7sは水素またはメチルであり;
3s、R4sおよびR5sは水素または重水素である。]および下記式の化合物
【0026】
【化9】

[式中、R3ss、R4ssおよびR5ssは水素または重水素である。]を提供する。
【0027】
式Iの化合物には、式IsおよびIssの化合物が含まれる。
【0028】
別の態様において本発明は、塩の形、あるいは塩の形および溶媒和物の形、あるいは溶媒和物の形での例えば式IsおよびIssの化合物を含む式Iの化合物を提供する。
【0029】
別の態様において本発明は、
例えば遊離型または例えば塩酸との塩の形での14−O−(3−アミノ)フェニル−スルファニルアセチル)−ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸または塩化重水素酸との塩の形での14−O−(3−アミノ)フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−フェニル−スルファニルアセチル)ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸または塩化重水素酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−2,5−ジメチル−フェニルチオ−メチルカルボニル)ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸または塩化重水素酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−2,5−ジメチル−フェニルチオ−メチルカルボニル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−5−tert−ブチル−フェニル−スルファニルアセチル)ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸または塩化重水素酸との塩の形での14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−5−tert−ブチル−フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
例えば遊離型または例えば塩酸との塩の形での14−O−(1−(2−アミノ−イソブチルカルボニル)−ピペリジン−3−イル−スルファニルアセチル)ムチリン;ならびに
例えば遊離型または例えば塩酸または塩化重水素酸との塩の形での14−O−(1−(2−アミノ−イソブチルカルボニル)−ピペリジン−3−イル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン
を提供する。
【0030】
式Iの化合物の塩には、医薬的に許容される塩、例えば金属塩または酸付加塩などがある。金属塩には例えば、アルカリ塩またはアルカリ土類塩などがある。酸付加塩には、例えばフマル酸水素、フマル酸、ナフタレン−1,5−スルホン酸、塩酸、塩化重水素酸、好ましくは塩酸または塩化重水素酸などの酸と式Iの化合物の塩などがある。
【0031】
遊離型の式Iの化合物は、塩の形の相当する化合物に変換することができ、その反対も可能である。遊離型または塩の形および溶媒和物の形での式Iの化合物は、遊離型または溶媒和型ではない塩の形の相当する化合物に変換することができ、その反対も可能である。
【0032】
別の態様において本発明は、遊離型または酸付加塩もしくは4級塩の形での下記式の化合物を提供する。
【0033】
【化10】

式中、
1pは、水素、アミノ、アルキル、アミノアルキルまたは1〜3個の窒素原子を有する適宜にアミノ−および/または水酸基−および/またはニトロで置換された5員もしくは6員のヘテロ芳香環または複素環であり;
2pは、1〜3個の窒素原子を有する適宜にアルキル−、フッ素またはトリフルオロメチル置換された芳香族の5員もしくは6員のヘテロ芳香環、プリンまたはキノリンを表し;
3pはSまたはO、好ましくはSを表し;
4pは水素またはメチルを表し;
5pは水素、メチルまたはCHOHを表し;
はNHまたはOを表し;
6p、R7pおよびR8pは同一でも異なっていても良く、水素または重水素を表す。
【0034】
式Is、IssおよびIpの化合物を含む式Iの化合物は、異性体およびそれの混合物の形で存在する場合がある。例えば式Iの化合物は不斉炭素原子を有する場合があることから、ジアステレオマーおよびそれの混合物の形で存在する場合がある。異性体またはジアステレオマー混合物は適宜に、例えば従来法に従って分離して、それぞれ純粋な異性体またはジアステレオマーを得ることができる。本発明は、いずれかの異性体およびジアステレオマーの形、ならびに異性体およびジアステレオマーの混合物の形での式Iの化合物を含むものである。好ましくは、式Iの化合物のムチリン環における立体配置は、天然ムチリンの場合と同じである。
【0035】
別の実施態様において本発明は、上記で定義の式Iの化合物の製造方法であって、
a1.下記式の化合物
【0036】
【化11】

(式中、R、R′、RおよびRは式Iで定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)と、式N(R)(R)−R−SHの化合物(R、RおよびRは式Iで定義の通りである)とを反応させて、R、R、R、R、R′、RおよびRが式Iで定義の通りであり、R、RおよびRが水素である式Iの化合物を得る段階;ならびに所望に応じて、
b1.段階a1で得られた式Iの化合物に重水素を導入して、R、R、R、R、R′、RおよびRが式Iで定義の通りであり、R、RおよびRが重水素である式Iの化合物を得る段階を有するか;あるいは
a2.段階a1で定義の式IIの化合物とチオ尿素を反応させ、次に還元を行って下記式の化合物
【0037】
【化12】

(式中、R、R′、RおよびRは式Iで定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)を得る段階;
b2.段階a2で定義の式IIIの化合物を、式R(NO)の化合物(Rは式Iで定義の通りである)または式−C(=X)R(XおよびRは請求項1で定義の通りである)の基を有する非芳香族複素環と、メシレートもしくはトシレートなどの反応性誘導体の形で反応させて、下記式の化合物
【0038】
【化13】

(式中、R、R、R′、RおよびRは式Iで定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)を得る段階;
c2.段階b2で定義の式IVの化合物におけるニトロ基を還元して、R、R、R′、RおよびRが式Iで定義の通りであり;R、R、R、RおよびRが水素である式Iの化合物を得る段階;および所望に応じて、
d2.段階c2で定義の式Iの化合物におけるアミノ基を反応させて、Rが下記式
【0039】
【化14】

(式中、R、R、R、R′、R、R、RおよびXは式Iで定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)の基である式Iの化合物を得る段階;および所望に応じて、
e2.段階d2で得られた式Iの化合物に重水素を導入して、R、R、R、R、R′、R、R、RおよびXが式Iで定義の通りであり、R、RおよびRが重水素である式Iの化合物を得る段階を有するか;あるいは
a3.下記式の化合物
【0040】
【化15】

(式中、R、RおよびRは水素であり;RおよびR′は水素または重水素である)を下記式
【0041】
【化16】

(式中、RおよびRは式Iで定義の通りであり;Halはハロゲン、例えば塩素、臭素、ヨウ素である)の化合物と反応させて、下記式の化合物
【0042】
【化17】

(式中、R、R、Hal、R、R、R、RおよびR′は段階a3で定義の通りである)を得る段階;
b3.段階a3で定義の式VIの化合物を式HS−R(NO(Rは式Iで定義の通りである)と反応させて、段階2で定義の式IVの化合物を得る段階、さらには段階c2に従って、そして所望に応じて上記で定義の段階d2およびe2のいずれかに従って式IVの化合物を反応させて、式Iで定義の式Iの化合物を得る段階を有する方法を提供する。
【0043】
式Is、IssまたはIpの化合物などの式Iの化合物は適宜に、例えば従来の方法に従って、あるいは本明細書に記載の方法に従って製造することができる。式Is、IssおよびIpの化合物は、例えば同様に式Iの化合物の製造方法に従って製造することができる。
【0044】
式IIおよび式Vの化合物は公知であるか、あるいは従来の方法に従って得ることができる。
【0045】
例えば塩の形での式Iの化合物における水素原子の重水素原子による置き換えは適宜に、例えば従来の方法に従って、あるいは本明細書に記載の方法に従って、例えば式Is、IssおよびIpの化合物などの式Iの化合物を適切な溶媒(系)中で塩化重水素酸(DCl)で処理し、式Iの化合物を例えば塩の形で式Iの化合物(例えばR、RおよびRの意味における水素原子が重水素原子によって置き換わっている)を単離することで行うことができる。
【0046】
およびR′が重水素である式Iの化合物の製造は適宜に、いずれも水素であるRおよびR′を有する炭素原子が一体となって二重結合を形成しており、公知の化合物である式Vの化合物を重水素で処理してRおよびR′が重水素である式Vの化合物を得る等の従来の方法に従って、さらには例えば前記の段階a〜b3に従って従来法によって適宜にRおよびR′が重水素である式Vの化合物を反応させて式Iの化合物を得ることで、適宜に行うことができる。
【0047】
式Is、IssおよびIpの化合物などの式Iの化合物(以下、「本発明の活性化合物」と称する)は、薬理活性を示すことから、医薬品として有用である。例えば本発明の活性化合物は、既報の寒天希釈試験または微小希釈試験(National Commitee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS) 1997, Document M7−A4 Vol.17, No.2″Methods for dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria that Grow Aerobically − Fourth Edition, Approved Standard″による)でin vitroにて、そして例えばマウスでの全身感染にてin vivoで、大腸菌などのグラム陰性菌に対して、ならびに黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、肺炎球菌、マイコプラズマ類、クラミジア(Chalmydia)およびバクテロイデス−フラギリスなどの偏性嫌気性菌などのグラム陽性菌に対する抗菌活性などの抗微生物活性を示す。
【0048】
本発明の活性化合物は、寒天希釈試験または微小希釈試験でin vitroにて(MIC(μg/mL))、例えば上記の細菌に対して約≦0.01μg/mL〜25μg/mLの抗菌活性を示し、マイコプラズマ類およびクラミジアに対して活性である。MIC=最低阻害濃度である。
【0049】
本発明の活性化合物は、例えば約8〜150mg/kgの用量で、例えば非経口投与または経口投与した場合に、例えば黄色ブドウ球菌(例:ATCC49951株)に対して、マウスの全身感染で活性を示す。例えば実施例23の化合物のED50値は、皮下投与後で7.55mg/kgであり、経口投与後で7.72mg/kgである。被投与動物の50%が死亡から保護される投与当たりのmg/kgでの有効用量であるED50は、プロビット法によって計算される(n=動物8匹/群)。例えば、ATCC10390株、ATCC29213株、ATCC29506株、ATCC49951株またはATCC9144株のような黄色ブドウ球菌などに対する実施例1および52の化合物のMIC90%(μg/mL)が約≦0.0125μg/mLであることが確認されているが、例えば市販のエリスロマイシンAのMIC90%(μg/mL)は約0.2〜0.4である。
【0050】
本発明の活性化合物は、驚くべき全体的活性スペクトラムを示す。例えば、本発明の活性化合物は、好気性菌に関して承認された標準基準法(National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS), Document M7−A4)に従って、補給成分を用いてあるいは用いずに、ミューラー−ヒントン寒天またはミューラー−ヒントン肉汁での寒天希釈試験または微小希釈試験などで、バンコマイシン耐性株などのエンテロコッカス−フェシウムに対して;メチシリン感受性(MSSA)およびメチシリン耐性(MRSA)株などの黄色ブドウ球菌に対して;さらにはペニシリン耐性株などの肺炎球菌に対してin vitroで驚くべき活性を示す。
【0051】
例えば、黄色ブドウ球菌MSSAに対する実施例1および実施例52の化合物(いずれも塩酸塩の形で調べた)のMIC(μg/mL)は約0.025であるが、市販のアジスロマイシン(azithromycin)のMIC(μg/mL)は約1.6であること;例えば黄色ブドウ球菌MRSAに対する実施例1の化合物のMIC(μg/mL)は約≦0.0125であるが、市販のアジスロマイシンのMIC(μg/mL)は約>25.6であること;例えばペニシリン耐性肺炎球菌に対する実施例1および52の化合物のMIC(μg/mL)は約≦0.0125であるが、市販のアジスロマイシンのMIC(μg/mL)は約>2.56であること;例えばバンコマイシン耐性エンテロコッカス−フェシウムに対する実施例1および52の化合物のMICは約≦0.0125〜0.025であることが確認されている。
【0052】
別の態様において本発明は、医薬品として、好ましくは抗生物質など、例えば抗嫌気性菌剤などの抗微生物薬として使用される式Iの化合物を提供する。
【0053】
さらに別の態様において本発明は、例えば黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、肺炎球菌、マイコプラズマ類、クラミジアから選択される細菌および偏性嫌気性菌、肺炎球菌のペニシリン耐性または多薬剤耐性株、例えばエンテロコッカス・フェシウムなどのバンコマイシン耐性株および例えば黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性株などによって生じる疾患のような、細菌疾患の治療用の医薬品製造において使用される式Iの化合物を提供する。
【0054】
さらに別の態様において本発明は、微生物疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して、例えば医薬組成物の形で有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0055】
抗微生物治療の場合、当然のことながら適切な用量は、例えば使用する本発明の活性化合物、宿主、投与形態ならびに治療対象の状態の性質および重度によって決まる。しかしながら、ヒトなどの比較的大型の哺乳動物で良好な結果を得る上で示される1日用量は、簡便には例えば1日4回以下の分割用量で投与される本発明の活性化合物約0.5〜3gの範囲である。本発明の活性化合物は、例えばアジスロマイシンのようなエリスロマイシン類の場合と同様に、例えば錠剤もしくはカプセルの形で経口的に、あるいは例えば注射液もしくは懸濁液の形で非経口的に従来の経路で投与することができる。
【0056】
実施例1、12、21、23、35および52の化合物が、抗細菌剤として使用される本発明の好ましい化合物である。
【0057】
例えば、エンテロコッカス・フェカーリス株ATCC29212に対する実施例1および52の化合物(いずれも塩酸塩の形で調べた)のMIC(μg/mL)は約0.8〜6.4であるが、例えば市販のエリスロマイシンAは約1.6というMIC(μg/mL)を示すことが確認されている。従って、微生物疾患、細菌疾患の治療の場合、本発明の好ましい化合物を、エリスロマイシン類、例えばエリスロマイシンAまたはアジスロマイシンで従来用いられるものと同様の用量で同様の投与形態によって、例えばヒトなどの大型哺乳動物に投与することが可能であることが示されている。
【0058】
本発明の活性化合物は、医薬的に許容される塩、例えば酸付加塩または金属塩の形で、あるいは遊離型で、適宜に溶媒和物の形で投与することができる。塩の形での本発明の活性化合物は、遊離型での本発明の活性化合物と同レベルの活性を示す。
【0059】
本発明はさらに、1以上の医薬用担体または希釈剤とともに、遊離型または医薬的に許容される塩の形での、ないしは溶媒和物の形での式Iの化合物を含む医薬組成物を提供するものでもある。
【0060】
そのような組成物は、従来のような方法に従って製造することができる。単位製剤は例えば、約100mg〜約1gを含むことができる。
【0061】
本発明の活性化合物はさらに、家禽、ブタおよびウシなどの動物における微生物(例:細菌)疾患の予防および治療において、動物薬、例えば動物用活性化合物としても好適であり、さらには人工授精および卵浸漬法用の希釈液にも好適である。
【0062】
さらに別の態様において本発明は、動物薬として使用される式Iの化合物を提供する。
【0063】
さらに別の態様において本発明は、動物薬として有用な動物薬組成物の製造用の式Iの化合物を提供する。
【0064】
本発明はさらに、微生物(例:細菌)疾患の動物での予防および治療方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、例えば動物薬組成物の形で有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法を提供する。
【0065】
当然のことながら、動物薬としての本発明の活性化合物の使用において用量は、動物の大きさおよび年齢および所望の効果によって決まる。例えば予防処置の場合、比較的長期間、例えば1〜3週間にわたって、比較的低用量を投与することになると考えられる。飲料水での好ましい用量は、0.0125〜0.05重量/体積、好ましくは0.0125〜0.025であり;飼料中の場合、20〜400g/メートルトン、好ましくは20〜200/メートルトンである。動物薬としての本発明の活性化合物を、ニワトリに対しては飲料水で、ブタに対しては飼料で、ウシに対しては例えば経口製剤もしくは非経口製剤の形にて経口法もしくは非経口法で投与することが好ましい。
【0066】
本発明について説明する以下の実施例において、温度についての言及は摂氏単位である。
【0067】
以下の略称を用いる。
【0068】
DCCI:ジシクロヘキシルカルボジイミド
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
BOC:tert−ブトキシカルボニル
PyBOP:(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート、
HMPT:ヘキサメチルリン酸トリアミド
DCl:塩化重水素酸。
【0069】
実施例で言及されるムチリン環(cyclus)番号割り付けは以下の式に示した通りである。
【0070】
【化18】

【0071】
実施例1
塩酸塩の形での14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)アセチル]ムチリン。
【0072】
N−BOC−(R)−ピペコリン酸229mgおよび14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)アセチル]ムチリン485mgの塩化メチレン(20mL)溶液に室温でDCCI 206mgを加え、得られた混合物を室温で約12時間撹拌する。尿素沈殿物を濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮する。得られた濃縮物について、クロマトグラフィー(シリカゲル;シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行う。14−O−[(3−(N−BOC−(R)−ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)−アセチル]ムチリンが得られ、それをエーテル性塩酸によって室温で約1時間処理する。得られた混合物から溶媒を減圧下に除去し、得られた残留物を酢酸エチル/ヘキサンから結晶化させる。
塩酸塩の形での14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)アセチル]ムチリンが得られる。
【0073】
実施例2
塩酸塩の形での14−O−[(2,6−ジメチル−3(ピペリジン−2(R)−カルボニルアミノ)フェニルスルファニル)−アセチル]ムチリン。
塩酸塩の形での14−O−[(2,6−ジメチル−5−アミノ−フェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン200mg、N−BOC−(R)−ピペコリン酸84mg、PyBOP 190.1mgおよびDIEA 143mgのジオキサン(20mL)溶液を約40℃で約24時間維持する。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。有機相を0.1N水酸化ナトリウム、0.1N塩酸およびブラインで再抽出する。得られた有機相を濃縮し、濃縮物についてクロマトグラフィー(シリカゲル;トルエン/酢酸エチル=1.5/1)を行う。14−O−[(2,6−ジメチル−3(N−BOC−(R)−ピペリジン−2(R)−カルボニルアミノ)−フェニルスルファニル)−アセチル]ムチリンが得られる。ジオキサン10mLおよびエーテル性塩酸10mL中でBOCを脱離させ、塩酸塩の形での14−O−[(2,6−ジメチル−3(ピペリジン−2(R)−カルボニルアミノ)フェニルスルファニル)−アセチル]ムチリンを得る。
【0074】
実施例3
塩酸塩の形での14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)−2(R)−プロピオニル]ムチリン。
N−BOC−(R)−ピペコリン酸229mgおよび塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2−プロピオニル]ムチリン499mgの塩化メチレン(20mL)溶液に室温でDCCI 206mgを加え、得られた混合物を室温で約12時間撹拌する。尿素沈殿物を濾去し、得られた濾液を減圧下に濃縮する。得られた濃縮物について、クロマトグラフィー(シリカゲル;シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行う。14−O−[(3−(N−BOC−(R)−ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)−2(R)−プロピオニル]ムチリンが得られ、それをエーテル性塩酸によって室温で約1時間処理する。得られた混合物から溶媒を除去し、得られた残留物を酢酸エチル/ヘキサンから結晶化させる。
塩酸塩の形での14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)−2(R)−プロピオニル]ムチリンが得られる。
【0075】
相当する原料を用いる以外、実施例1〜3に記載に方法に従って、
R=R=R′=R=水素;
が、実施例37および38でメチルであり、他の全ての実施例で水素であり;
が、実施例1〜35、43〜49で式−C(=X)Rの基であり、実施例36〜42で水素であり;
Xが、実施例1〜45でOであり、実施例46および47でSであり、実施例48でN−CHであり、実施例49でN(CHClであり;
=R=Rが、実施例1〜11、13〜24、26〜28、30、32〜39、41〜49において水素であり、実施例12、25、29、31、40において重水素であり;
およびRが以下の表1で定義の通りである式Iの化合物が得られる。
【0076】
【表1】







【0077】
実施例50
式Iの化合物における水素原子の重水素原子による置き換え。
14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニル)アミノ)フェニルスルファニル)アセチル]ムチリン塩酸塩300mgのジオキサン(30mL)およびDCl(5mL;20%DO溶液)溶液を室温で6日間維持し、得られた混合物を減圧下に濃縮し、凍結乾燥して、塩化重水素酸塩の形での14−O−[(3−(ピペリジン−2(R)−カルボニルアミノ)フェニル−スルファニル)アセチル]−2,2,4−トリ重水素−ムチリンを得る。
【0078】
NMR(CDCl):実施例1の化合物のNMRデータと比較して、三環部分の2−、2′−および4−プロトンがない。
【0079】
実施例50に記載の方法に従って、R=R=R′=R=R=水素;Rが式−C(=X)R(X=O)の基であり;R=R=Rが重水素であり;RおよびRが以下の表2で定義の通りである式Iの化合物が、塩化重水素酸塩の形で得られる。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例52
14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)アセチル]ムチリン。
ナトリウム0.92gおよび3−アミノ−チオフェノール5gの脱水エタノール(100mL)溶液を、22−O−トシル−プレウロムチリン21.3gのエチルメチルケトン(250mL)溶液に温度制御下で室温にて加える。得られる反応混合物を約15時間にわたり室温に維持し、濾過し、減圧下に濃縮乾固する。残留物についてクロマトグラフィー(シリカゲル;シクロヘキサン/酢酸エチル=1/1)を行う。14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)アセチル]ムチリンが得られる。
【0082】
原料の製造
A.14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)アセチル]ムチリン
実施例52参照。
【0083】
B.塩酸塩の形での14−O−[(2,6−ジメチル−5−アミノ−フェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン
B.a.14−O−[(カルバミミドイルスルファニル)アセチル]ムチリン・トシレート
チオ尿素15.2gおよびプレウロムチリン−22−O−トシレート106.4gのアセトン(250mL)溶液を1.5時間にわたり加熱還流し、溶媒を減圧下に除去し、ヘキサン100mLを加える。沈殿が生成し、それを濾過し、乾燥する。14−O−[(カルバミミドイルスルファニル)アセチル]ムチリン・トシレートが得られる。
【0084】
B.b.14−メルカプト−アセチル−ムチリン
ピロ亜硫酸ナトリウム(Na)4.7gのHO(25mL)溶液を、14−O−[(カルバミミドイルスルファニル)アセチル]ムチリン・トシレート12.2gのエタノール(20mL)およびHO(35mL)混合物溶液(約90℃まで加熱したもの)に加える。CCl 100mLを得られた反応混合物に加え、混合物を約2時間加熱還流する。得られる2相系を分液し、有機相を脱水し、溶媒を留去する。14−メルカプト−アセチル−ムチリンが得られる。
【0085】
B.c.14−O−[(2.6−ジメチル−5−ニトロフェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン
14−メルカプト−アセチル−ムチリン3.94gおよびナトリウム115mgのメタノール(15mL)溶液に、2,4−ジニトロキシレン0.98gのHMPT(30mL)溶液を加える。得られた反応混合物を約1時間にわたって約120℃で加熱し、さらに約12時間室温に維持し、氷に投入する。得られた混合物をトルエンで抽出し、得られた有機相を脱水し、溶媒を留去する。得られた残留物についてクロマトグラフィー(シリカゲル(トルエン/酢酸エチル=2/1)を行う。14−O−[(2.6−ジメチル−5−ニトロフェニル)スルファニル−アセチル]ムチリンが得られる。
【0086】
B.d.塩酸塩の形での14−O−[(2.6−ジメチル−5−アミノ−フェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン
14−O−[(2.6−ジメチル−5−ニトロフェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン202mgのジオキサン(10mL)、ギ酸(1.5mL)およびHO(0.1mL)溶液にスズ粉末2.5gを加え、得られた反応混合物を約5時間加熱還流する。得られた混合物を濾過し、得られた濾液の溶媒を留去する。ジオキサン5mLおよびエーテル性塩酸10mLの混合物を得られた残留物に加え、得られた混合物の溶媒を留去する。残留物について、酢酸エチル/ヘキサンでの結晶化を行う。塩酸塩の形での14−O−[(2.6−ジメチル−5−アミノ−フェニル)スルファニル−アセチル]ムチリン結晶が得られる。
【0087】
C.塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2−プロピオニル]ムチリン
C.a.14−O−(2(R/S)−ブロモ−プロピオニル)ムチリン
ムチリン3.2g、N−メチルモルホリン2gおよび2−ブロモ−プロピオニルブロマイド4.3gのテトラヒドロフラン(50mL)溶液を約24時間にわたって室温に維持する。得られる混合物を減圧下に濃縮し、得られた残留物を水および酢酸エチルの混合物に投入する。2相系を得て、それらの相を分液する。得られた有機相を1N HClおよびブラインで洗浄し、クロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジオキサン=6/1)を行う。14−O−(2(R/S)−ブロモ−プロピオニル)ムチリンが得られる。
【0088】
C.b.塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2(R)−プロピオニル]ムチリン;および
塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2(S)−プロピオニル]ムチリン
14−O−(2(R/S)−ブロモ−プロピオニル)ムチリン45mg、3−アミノ−チオフェノール125mgおよびナトリウム24mgのエタノール(10mL)およびエチルメチルケトン(5mL)溶液を約12時間にわたって室温に維持する。得られた混合物の溶媒を留去し、酢酸エチル50mLを得られた残留物に加える。得られた有機相をブラインで抽出し、クロマトグラフィー(シリカゲル;シクロヘキサン/ジオキサン=6/1)を行う。14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2(R/S)−プロピオニル]ムチリンのジアステレオマー混合物が得られる。これらのジアステレオマーを、分取HPLCクロマトグラフィー(シクロヘキサン/ジオキサン=8/1)によって分離し、塩酸で処理する。塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2(R)−プロピオニル]ムチリンおよび塩酸塩の形での14−O−[(3−アミノ−フェニルスルファニル)−2(S)−プロピオニル]ムチリンが得られる。
【0089】
H−NMRスペクトラム(別段の断りがない限り、CDCl)。
【0090】
【化19】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式の化合物。
【化1】

[式中、
Rは水素またはアルキルであり;
は水素または下記式の基であり;
【化2】

Xは硫黄、酸素、NR10(R10は水素またはアルキルである)、または適切なアニオン存在下でのN(R′10(R′10はアルキルである)であり;
はアミノ、アルキル、アリール、複素環またはメルカプトであり;Xが酸素の場合、Rはさらに水素であり;
はアリーレンまたはヘテロサイクレンであり;
は水素またはアルキルであり;
は水素またはアルキルであり;
、R′、R、RおよびRは互いに独立に水素または重水素であり;あるいは
RおよびRは、それらが結合している窒素原子と一体となって、非芳香族ヘテロサイクレンを形成しており;Rは下記式の基であり;
【化3】

上記式において、XおよびRは上記で定義の通りである。]
【請求項2】
Rが水素であり;
が水素または下記式の基であり;
【化4】

Xが硫黄、酸素、NR10(R10は水素またはアルキルである)、または適切なアニオン(例:Cl)存在下でのN(R′10(R′10はアルキルである)であり;
がアミノ、アルキル、複素環またはメルカプトであり;Xが酸素の場合、Rがさらに水素であり;
がフェニレンであり;
が水素またはアルキルであり;
が水素であり;
およびR′が水素であり;
、RおよびRが水素または重水素であり;あるいは
RおよびRが、それらが結合している窒素原子と一体となって、非芳香族ヘテロサイクレンを形成しており;Rが下記式の基であり;
【化5】

上記式において、XおよびRがアルキルである請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
下記式の化合物。
【化6】

[式中、R1sは水素または下記式の基であり;
【化7】

6sは水素または重水素であり;
2sは水素、メチルまたはtert−ブチルであり;
7sは水素またはメチルであり;
3s、R4sおよびR5sは水素または重水素である。]
【請求項4】
下記式の化合物。
【化8】

[式中、R3ss、R4ssおよびR5ssは水素または重水素である。]
【請求項5】
14−O−(3−アミノ)フェニル−スルファニルアセチル)−ムチリン;
14−O−(3−アミノ)フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−フェニル−スルファニルアセチル)ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−2,5−ジメチル−フェニルチオ−メチルカルボニル)ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−2,5−ジメチル−フェニルチオ−メチルカルボニル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−5−tert−ブチル−フェニル−スルファニルアセチル)ムチリン;
14−O−(3−(ピペリジン−2−イル−カルボニルアミノ)−5−tert−ブチル−フェニル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン;
14−O−(1−(2−アミノ−イソブチルカルボニル)−ピペリジン−3−イル−スルファニルアセチル)ムチリン;あるいは
14−O−(1−(2−アミノ−イソブチルカルボニル)−ピペリジン−3−イル−スルファニルアセチル)−2,2,4−トリ重水素ムチリン
である化合物。
【請求項6】
塩の形、または塩の形および溶媒和物の形、あるいは溶媒和物の形での請求項1ないし4のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
遊離型または酸付加塩もしくは4級塩の形での下記式の化合物。
【化9】

[式中、
1pは、水素、アミノ、アルキル、アミノアルキルまたは1〜3個の窒素原子を有する適宜にアミノ−および/または水酸基−および/またはニトロで置換された5員もしくは6員のヘテロ芳香環または複素環であり;
2pは、1〜3個の窒素原子を有する適宜にアルキル−、フッ素またはトリフルオロメチル置換された芳香族の5員もしくは6員のヘテロ芳香環、プリンまたはキノリンを表し;
3pはSまたはOを表し;
4pは水素またはメチルを表し;
5pは水素、メチルまたはCHOHを表し;
はNHまたはOを表し;
6p、R7pおよびR8pは同一でも異なっていても良く、水素または重水素を表す。]
【請求項8】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
a1.下記式の化合物
【化10】

(式中、R、R′、RおよびRは請求項1で定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)と、式N(R)(R)−R−SHの化合物(R、RおよびRは請求項1で定義の通りである)とを反応させて、R、R、R、R、R′、RおよびRが請求項1で定義の通りであり、R、RおよびRが水素である式Iの化合物を得る段階;ならびに所望に応じて、
b1.段階a1で得られた式Iの化合物に重水素を導入して、R、R、R、R、R′、RおよびRが請求項1で定義の通りであり、R、RおよびRが重水素である式Iの化合物を得る段階を有するか;あるいは
a2.段階a1で定義の式IIの化合物とチオ尿素を反応させ、次に還元を行って下記式の化合物
【化11】

(式中、R、R′、RおよびRは請求項1で定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)を得る段階;
b2.段階a2で定義の式IIIの化合物を、式R(NO)の化合物(Rは式Iで定義の通りである)または式−C(=X)R(XおよびRは請求項1で定義の通りである)の基を有する非芳香族複素環と、反応性誘導体の形で反応させて、下記式の化合物
【化12】

(式中、R、R、R′、RおよびRは請求項1で定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)を得る段階;
c2.段階b2で定義の式IVの化合物におけるニトロ基を還元して、R、R、R′、RおよびRが請求項1で定義の通りであり;R、R、R、RおよびRが水素である式Iの化合物を得る段階;および所望に応じて、
d2.段階c2で定義の式Iの化合物におけるアミノ基を反応させて、Rが下記式
【化13】

(式中、R、R、R、R′、R、R、RおよびXは請求項1で定義の通りであり;R、RおよびRは水素である)の基である式Iの化合物を得る段階;および所望に応じて、
e2.段階d2で得られた式Iの化合物に重水素を導入して、R、R、R、R、R′、R、R、RおよびXが請求項1で定義の通りであり、R、RおよびRが重水素である式Iの化合物を得る段階を有するか;あるいは
a3.下記式の化合物
【化14】

(式中、R、RおよびRは水素であり;RおよびR′は水素または重水素である)を下記式
【化15】

(式中、RおよびRは請求項1で定義の通りであり;Halはハロゲンである)の化合物と反応させて、下記式の化合物
【化16】

(式中、R、R、Hal、R、R、R、RおよびR′は段階a3で上記にて定義の通りである)を得る段階;
b3.段階a3で定義の式VIの化合物を式HS−R(NO(Rは請求項1で定義の通りである)と反応させて、段階2で定義の式IVの化合物を得る段階、さらには段階c2に従って、そして所望に応じて上記で定義の段階d2またはe2のいずれかに従って式IVの化合物を反応させて、請求項1で定義の式Iの化合物を得る段階
を有する方法。
【請求項9】
医薬品として使用される請求項1ないし7のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
抗微生物薬として使用される請求項10に記載の化合物。
【請求項11】

【請求項12】
微生物疾患治療用の医薬品製造で使用される式Iの化合物。
【請求項13】
ペニシリン耐性または多薬剤耐性株、バンコマイシン耐性株、メチシリン耐性株などの細菌によって生じる微生物疾患治療用の医薬品製造で使用される式Iの化合物。
【請求項14】
微生物疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする患者に対して、有効量の式Iの化合物を投与する段階を有する方法。
【請求項15】
1以上の医薬用の担体または希釈剤とともに、遊離型または医薬的に許容される塩の形での式Iの化合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
動物薬として使用される式Iの化合物。
【請求項17】
動物薬として有用な動物薬組成物製造用の式Iの化合物。

【公開番号】特開2011−16834(P2011−16834A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−204065(P2010−204065)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2001−514299(P2001−514299)の分割
【原出願日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【出願人】(307004693)ナブリバ・セラピユーテイクス・アクチエンゲゼルシヤフト (3)
【Fターム(参考)】