説明

ムチン産生抑制剤

気道上皮でのムチンの過剰産生を抑制することによって気道の機能を改善し、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療に有用な薬剤を提供する。
下記式(1):


〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするムチン産生抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道上皮でのムチンの産生を抑制し、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療に有用なムチン産生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肺の本来的役割は、換気とガス交換を円滑に営んで生体エネルギーの維持に不可欠な体組織でのO供給とCO除去に支障を来さないことである。このためにはガス交換ユニットである肺胞領域への外気の吸入を最も効率よく行うことが要求される。したがって、内腔が十分に確保されていることがまず保証されることによって、気流抵抗を最小にすることが可能になる。このため、気道の中枢部から末梢の全長にわたって、気道分泌液の適正なコントロールが必要になる。気道分泌液は、気道組織を被覆し生体における外界との機械的障壁としてのみならず、気道上皮細胞の線毛運動との協調作用により異物を運搬排除する粘液線毛輸送や局所の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。しかし、それが過量となると、気道内に貯留した喀痰が細菌増殖の温床となるため、気道感染を反復する。また気道腔の断面積が減少することによって閉塞性換気障害の増強などが起こり、慢性気道疾患の増悪が招来される。具体的には、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症、肺線維症などの呼吸器疾患における病態増悪と密接に関わっていることが知られている(非特許文献1〜3)。
【0003】
このうち、慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、「完全に可逆的ではない気流制限を特徴とする疾患であり、この気流制限は通常は進行性で、かつ有害な粒子又はガスに対する肺の異常な炎症性反応と関連している。」と定義される。COPDでは、肺機能検査において閉塞性換気障害、すなわち深く息を吸った状態から思い切り吐いた場合、初めの1秒間にはき出せる呼気の量が顕著に減少した状態が続く。
【0004】
本疾患の予後は悪く、薬物に対する反応性も不良であるため、現在、世界の死亡原因の第4位にランクされており、罹患率及び死亡率は今後更に増加するものと予測される。COPDの病態増悪因子として気道上皮からの粘液過剰分泌が挙げられる。すなわち粘液線毛クリアランスの破綻により、過剰に産生された痰の喀出困難及び貯留が生じ、更なる閉塞性換気障害を誘発し、症状悪化に繋がる。斯かる粘液過剰分泌状態を制御することは、本疾患を治療するうえで重要な戦略の1つとなる(非特許文献1)。COPDの治療薬としては、抗コリン薬が気管支拡張作用による症状緩和の面から使用されているが、あくまでも対処療法であり、病態の進行・悪化を抑制するものではない。従って、粘液過剰分泌状態を制御するCOPD治療薬は、QOLを含めた長期予後の面からも望まれる。
【0005】
慢性気道感染症の原因疾患としては、嚢胞性肺線維症、びまん性汎細気管支炎、Primary Ciliary Dyskinesia、気管支拡張症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎等が挙げられる。これらの疾患では、細菌感染が契機となって気道上皮における粘液産生系の亢進と粘液線毛クリアランスの破綻を来たし、更なる気道上皮の障害を招くといった悪循環が発症原因ならびに症状の悪化に関与すると言われている(非特許文献2)。
【0006】
慢性気管支炎は「2年以上にわたる持続的な痰の喀出」と定義されているように、長期間に及ぶ気道分泌の亢進を主徴とする疾患の一つである。慢性気管支炎における気道分泌物は一般に粘稠度が高く、気道粘膜傷害に基づく線毛運動能の低下と相まって喀痰喀出障害を引き起こす。また、粘液線毛輸送が障害されることにより気道感染の反復が助長され、さらに過剰な分泌物が気管支腔内に貯留すると、閉塞性換気障害を来たし疾患の急性増悪の要因となる。
【0007】
慢性副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔に慢性の炎症が起こった疾患である。一般的に副鼻腔炎は、感冒などの急性炎症から始まり、インフルエンザやその他の細菌の感染を繰り返すことによって、慢性化することが多い。その結果、膿や粘液が排出されず、副鼻腔にたまることで発症する。永く副鼻腔炎が続くと鼻の奥からのどに鼻水が降りてきて痰が増え、時に、慢性咽喉頭炎や慢性気管支炎を起こす原因となる。
その他粘液過剰分泌状態にある呼吸器疾患として、肺炎、肺結核、塵肺症、肺線維症等が挙げられる。
【0008】
上記の粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患、例えばCOPD、慢性気管支炎、びまん性汎細気管支炎、嚢胞性肺線維症又は慢性副鼻腔炎、の患者における気道の組織学的特徴として、粘膜下腺の肥大や気道上皮の杯細胞の過形成が見られる。粘液は主に電解質を含む水分と糖タンパク質のムチンより構成され、ムチンの過剰産生やその物理学的特性(流動性、粘稠性、曵糸性)の変化が、各種呼吸器疾患の発症、慢性化及び難治化と密接に関与していると考えられている。すなわち、ムチンの過剰産生により生理学的粘液線毛クリアランスを破錠させ、粘液のつまり、空気の捕捉、更には感染を併発する無気肺を引き起こし、難治化や予後不良に繋がる(例えば、非特許文献4)。従って、粘液の主要構成成分であるムチンの産生分泌に関わる杯細胞の過形成やムチンの生合成を抑制することは、斯かる粘液過剰過分泌に起因した気道の生理機能を正常化し、疾病の予防及び治療に貢献できる。
【0009】
気道上皮における粘液過剰分泌に対して臨床的に使用されている薬剤には、去痰薬や粘液溶解薬がある。これらは気道粘液分泌物の排出亢進あるいは粘度や弾性を減少させるが、ムチンの合成や粘液過剰産生を阻害するものではない。現在のところ、ムチン分泌を直接的に抑制するもので臨床適応されている薬物は、ステロイド剤のみである(例えば、非特許文献5)。しかし、ステロイド剤は、免疫抑制から骨損失あるいは成長不良などの欠点を有する。また、細菌性の粘液過剰分泌に対してはマクロライド系の抗生物質が使用されているが、主作用は除菌による症状改善である。従って、ムチンの過剰産生を抑制し、副作用の少ない呼吸器疾患の予防又は治療薬の開発が望まれている。
【0010】
一方、本発明の有効成分であるベンズイミダゾール誘導体はホスホジエステラーゼIV(PDE(IV))阻害作用及びインターロイキン(IL)−4産生抑制作用を有し、抗アレルギー剤又は抗炎症剤として公知である(特許文献1)。しかし、気道上皮でのムチン産生を直接的に抑制する作用を有することは全く知られていない。一般的に、細胞内サイクリックAMP(cAMP)量の増加は、ムチン分泌を亢進させることが知られている。PDE(IV)は、細胞内のcAMPの分解酵素の一つであるため、PDE(IV)を阻害すれば、逆にムチン分泌を増加させる方向に働くと考えられている(非特許文献6)。従って、PDE(IV)阻害作用を有する上記ベンズイミダゾール誘導体について、直接的なムチン産生抑制作用があることは全く予測できるものではない。また、IL−4はアレルギー性疾患の病態形成に関与しており、IL−4産生抑制作用はアレルギー性疾患の治療に貢献することが予測される。しかしながら上記に示したような非アレルギー性の疾患に対してムチン産生抑制作用に基づく治療効果を予測することはできない。
【非特許文献1】玉置淳:最新医薬,2002年,57巻10号,99−105頁
【非特許文献2】松井弘稔:医薬ジャーナル,2002年,38巻12号,133−138頁
【非特許文献3】間島雄一:アレルギーと臨床,2002年,22巻2号,16−21頁
【非特許文献4】Vestbo J.et al.:Am J Rrespir Crit Care Med,1996年,153巻5号,1530−1535頁
【非特許文献5】照野上裕子等:医薬ジャーナル,2002年,38巻12号,127−132頁
【特許文献1】特許第3271991号公報
【非特許文献6】Duncan F.Rogers:Current Allergy and Asthma Reports,2002年,3巻,238−248頁
【発明の開示】
【0011】
本発明は、気道上皮でのムチンの過剰産生を抑制することによって気道の生理機能を正常化し、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療に有用な薬剤を提供することを目的とする。
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体に、優れたムチン産生抑制作用があることを見出し、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療に有用であることを見出した。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするムチン産生抑制剤を提供するものである。
【0015】
また本発明は、上記一般式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患における気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難又は痰の貯溜の症状改善剤を提供するものである。
【0016】
また本発明は、上記一般式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする去痰剤を提供するものである。
【0017】
また本発明は、上記一般式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその塩の有効量を投与することを特徴とする気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の処置方法を提供するものである。
【0018】
また本発明は、上記一般式(1)で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを特徴とする気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難及び痰の貯溜から選ばれる気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の症状改善方法を提供するものである。
【0019】
また本発明は、ムチン産生抑制剤を製造するための上記一般式(1)で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用を提供するものである。
【0020】
また本発明は、気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難及び痰の貯溜から選ばれる気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の症状改善剤を製造するための上記一般式(1)で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用を提供するものである。
【0021】
本発明によれば、気道上皮におけるムチンの産生が抑制でき、COPD、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症、肺線維症等の粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療に有用である。特に当該疾患における気道粘液分泌物の停滞や痰の喀出困難及び貯留等の症状の改善、更には去痰剤として有効な薬剤を提供することができ、QOLを含む長期予後の改善に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
[図1]化合物1の杯細胞過形成抑制効果を示すグラフである。
*:P<0.05,**:P<0.01,コントロールとの比較(Dunnett検定)、##:P<0.01,コントロールとの比較(Welch検定)、括弧内の数字は抑制率(%)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のベンズイミダゾール誘導体(1)又はその薬学的に許容される塩は、後記実施例で示すように、優れた気道上皮細胞におけるムチン産生抑制作用を有する。杯細胞が過形成され、ムチンが過剰産生されると、生理学的粘液線毛クリアランスが破綻され、粘液のつまり、空気の捕捉、更には感染を併発する無気肺を引き起こす。従って、当該作用を有するベンズイミダゾール誘導体を用いれば、粘液線毛クリアランスを向上させ、気道の機能改善を図ることができ、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療を行うことができる。
【0024】
ここで、粘液の過剰分泌を伴う呼吸器疾患とは、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症、肺線維症等が挙げられ、好ましくは慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症又は慢性気管支炎である。更に、慢性気道感染症の原因疾患である嚢胞性肺線維症(CF)、びまん性汎細気管支炎(DPB)、Primary Ciliary Dyskinesia(PCD)、気管支拡張症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎も包含される。
【0025】
本発明のベンズイミダゾール誘導体(1)又はその薬学的に許容される塩は、斯かる呼吸器疾患の予防又は治療に有効であるが、特に斯かる疾患における気道粘液分泌物の停滞や痰の喀出困難及び貯留等の症状の改善に有効である。従って、去痰剤としても有用である。
【0026】
また更に、本発明のベンズイミダゾール誘導体(1)又はその薬学的に許容される塩は、細菌感染後の粘液滞留が原因とされる滲出性中耳炎の予防又は治療剤としても有用である。
【0027】
本発明の一般式(1)で示されるベンズイミダゾール誘導体中、Aのトリアゾール基としては、例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル、1,2,3−トリアゾール−1−イル、1,2,3−トリアゾール−2−イルが挙げられるが、好ましくは1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イルであり、より好ましくは1,2,4−トリアゾール−1−イルである。
【0028】
又はRにおける脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基;ビニル、1−プロペニル、アリル、ジメチルアリル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、1,3−ブタンジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル、1,4−ヘキサンジエニル基等の炭素数2〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルケニル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基であり、より好ましくはメチル、イソプロピル、3−ペンチル基である。
【0029】
又はRにおける脂環式炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基としては、上述の脂肪族炭化水素基上に、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、3−イソプロピル−シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2−メチル−2−シクロヘキセニル、3−メチル−2−シクロヘキセニル、4−エチル−2−シクロヘキセニル、シクロヘプタニル、シクロヘプテニル基等の炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖状の飽和低級アルキル基を有してもよい炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基;ビシクロブタニル、ビシクロオクタニル、ノルボルニル、ノルボレニル、インダニル基等の架橋環又は多環の脂環式炭化水素基を有する脂肪族炭化水素基が挙げられ、好ましくは炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基が置換された炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基であり、より好ましくはシクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル基である。
【0030】
又はRにおける脂環式炭化水素基としては、上述の炭素数1〜3の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基を有してもよい炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基、上述の架橋環又は多環の脂環式炭化水素基等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基であり、より好ましくはシクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル基である。
【0031】
は水素原子又は置換基であり、置換基としては、例えば、低級アルコキシ基、低級アルキル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子等が例示でき、Rとしては、好ましくは水素原子又は低級アルコキシ基である。低級アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、シクロペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ、エトキシ、ペンチルオキシ基であり、より好ましくはメトキシ基又はn−ペンチルオキシ基である。低級アルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル、エチル基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
の置換基は、ベンズイミダゾール骨格の4位、6位及び7位の少なくとも1つに置換し得るが、好ましくは、6位が挙げられる。
【0033】
の窒素原子の保護基としては、生体内で容易に加水分解するものであれば何れでもよく、例えば、アセチル、ベンゾイル、ピバロイル基等のアシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル基等のヒドロキシ低級アルキル基;ベンジル、トリチル基等のアラルキル基;メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシメチル、メトキシエトキシメチル、エトキシエトキシメチル、エトキシエトキシエチル基等のアルコキシアルコキシアルキル基;ベンジルオキシメチル、トリチルオキシメチル、ベンジルオキシエチル、トリチルオキシエチル基等のアラルキルオキシアルキル基等が挙げられる。
【0034】
上記ベンズイミダゾール誘導体のうち不斉炭素を有する化合物については、その数により光学異性体及び幾何異性体が存在するが、本発明は何れの異性体をも包含する。
【0035】
光学活性体の単離には、公知慣用の光学分割法が用いられるが、光学活性カラムを使用したHPLCにより分取し、光学活性体を得ることができる。光学活性カラムとしては、ダイセル化学社製CHIRALPAK AD等が挙げられる。
【0036】
本発明のベンズイミダゾール誘導体(1)の塩としては、薬学的に許容されれる塩が挙げられ、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の鉱酸、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸の塩が挙げられる。
【0037】
本発明のベンズイミダゾール誘導体においては、ベンズイミダゾール骨格に基づく互変異性体が存在するが、それらも本発明に包含される。更に本発明においては、水和物に代表される溶媒和物、無晶形又は結晶多形も包含される。
【0038】
上記一般式(1)において、好ましくは、Aが1,2,4−トリアゾール−1−イルであり、R又はRが同一又は相異なり、炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基が置換されてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基又は炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基、好ましくはメチル、イソプロピル、3−ペンチル、イソペンチル、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチル、シクロペンテニル又はシクロヘキセニル、シクロヘプテニル基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子であるベンズイミダゾール誘導体又はその塩である。特に好ましいものとして、以下に示す化合物1〜6又はその塩が挙げられる。
【0039】
【化2】

【0040】
上記一般式(1)で示されるベンズイミダゾール誘導体は、既に公知の化合物であり、何れも公知の方法によって製造することができる(特許第3271991号公報参照)。
【0041】
本発明のムチン産生抑制剤、症状改善剤又は去痰剤は、適当な製剤用担体を用いて通常の方法に従い、製剤組成物とすることができる。担体としては、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤、界面活性剤等を使用することができる。
【0042】
本発明のムチン産生抑制剤、症状改善剤又は去痰剤をヒトを含む哺乳動物の治療剤として使用する際の投与単位形態は特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。具体的には注射剤、坐剤、外用剤(軟膏剤、貼付剤等)等の非経口剤、錠剤、被覆錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、丸剤、懸濁剤、乳剤等の経口剤が挙げられる。更には、吸入剤の形態もとり得る。好ましい吸入剤の形態としては、エアゾール剤、粉末状吸入剤、液状吸入剤などが挙げられる。
【0043】
上記各種薬剤は、この分野で通常知られた製剤方法により製剤化すればよい。
錠剤、散剤、顆粒剤等の経口用固形製剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、メチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム等の賦形剤、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、セラック、メチルセルロース、エチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、水、エタノール、リン酸カリウム等の結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進剤、グリセリン、デンプン等の保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコール等の滑沢剤等を使用できる。
【0044】
更に、錠剤は、必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠等とすることができる。丸剤の形態に成形するに際しては、担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク糖の賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等の結合剤、ラミナラン、カンテン等の崩壊剤等を使用できる。
【0045】
カプセル剤は、上記で例示した各種の担体と混合し、硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセル等に充填して調製される。
【0046】
坐剤の形態に成形するに際しては、担体として例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、ラノリン、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン、半合成グリセライド、ウィテップゾール(登録商標:ダイナマイトノーベル社)等に適当な吸収促進剤を添加して使用できる。
【0047】
注射剤の形態に成形するに際しては、担体として例えば、水、エチルアルコール、マクロゴール、プロピレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等の希釈剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等のpH調整剤及び緩衝剤、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、チオグリコール酸、チオ乳酸等の安定化剤等が使用できる。尚、この場合等張性の溶液を調製するに充分な量の食塩、ブドウ糖或いはグリセリンを医薬製剤中に含有せしめてもよく、また通常の溶解補助剤、無痛化剤、局所麻酔剤等を添加してもよい。これらの担体を添加して、常法により皮下、筋肉内、静脈内用注射剤を製造することができる。
【0048】
液体製剤は、水性又は油性の懸濁液、溶液、シロップ、エリキシル剤であってもよく、これらは通常の添加剤を用いて常法に従い、調製される。
【0049】
軟膏剤、例えばペースト、クリーム及びゲルの形態に調製する際には、通常使用される基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤として例えば白色ワセリン、パラフィン、グリセリン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト等を使用できる。保存剤としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が使用できる。
【0050】
貼付剤を製造する場合には、通常の支持体に上記軟膏、クリーム、ゲル、ペースト等を常法により塗布すればよい。支持体としては、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布や軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルムあるいは発泡体シートが適当である。
【0051】
吸入剤を製造する場合は、精製水又は注射用蒸留水などに本発明ベンズイミダゾール誘導体(1)又は薬学的にされる塩を加え、撹拌し溶解する。この製剤には所望により、等張化剤(例えば塩化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えばホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウムなど)、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマーなど)のような通常用いられる添加剤を加えてもよい。液状吸入剤はネブライザー(登録商標名)などの吸入器具を用いて投与される。エアゾール剤を調製するには、本発明ベンズイミダゾール誘導体(1)又は薬学的にされる塩を常法により、好ましくは5μm以下に微粉砕し、必要ならば分散剤を加えて、冷却下噴射剤と共に噴霧容器中に充填する。その際、本発明ベンズイミダゾール誘導体(1)又は薬学的にされる塩を有機溶媒(例えばエタノールなど)と水の混液に溶解し、加温減圧下に溶媒を留去し、得られる化合物を微粉砕して用いても良い。エアゾール剤に使用する好ましい噴射剤としては、例えば液化ヒドロフルオロアルカン[例えばHFA134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン;CHFCF)、HFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン:CF−CHF−CF)など]などが挙げられ、これらの液化ヒドロフルオロアルカンは単独あるいは2種以上混合して使用してもよい。好ましい分散剤としては、例えば中鎖脂肪酸トリグリセライド[例えばミグリオール812(商標:ダイナマイトノーベル社製)など]、大豆レシチンなどが挙げられる。粉末状吸入剤は、前記のエアゾール剤の場合と同様にして製造した本発明ベンズイミダゾール誘導体(1)又は薬学的にされる塩の微粉砕末に、必要により乳糖などの賦形剤を混合して製造される。この粉末状吸入剤はスピンヘラー(登録商標名)などの吸入用器具を用いて投与される。
【0052】
上記製剤中に含有されるべき本発明ベンズイミダゾール誘導体(1)又はその塩の量は、剤型、投与経路、投与計画等により異なり一概には言えず、広い範囲から適宜選択されるが、通常、製剤中に1〜70重量%程度とするのがよい。
【0053】
上記製剤の投与方法は特に限定されず、製剤の形態、患者の年齢、性別その他の条件、患者の症状の程度等に応じて、経腸投与、経口投与、直腸投与、口腔内投与、経皮投与等の投与方法が適宜決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤の場合には経口投与され、坐剤の場合には直腸内投与される。注射剤の場合には単独で又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて単独で動脈内、筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与される。軟膏剤は、皮膚、口腔内粘膜等に塗布される。吸入剤は、例えば、鼻腔内吸入により、上気道に、又は下気道に、あるいはその両方に適用され得る。
【0054】
本発明ムチン産生抑制剤の有効成分の投与量は、用法、患者の年齢、性別、疾患の状態、投与される本発明に係るベンズイミダゾール誘導体又はその塩の種類、その他の条件等に応じて適宜選択されるが、通常0.1〜1000mg/kg/日程度、好ましくは0.5〜500mg/kg/日程度の範囲となる量を目安とするのがよい。斯かる製剤は1日に1回又は2〜4回程度に分けて投与することができる。
【実施例】
【0055】
以下に試験例及び実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。
試験例1 ムチン産生抑制作用
本試験はTakeyama等の方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,96巻,3081−3086頁,1999年)を一部改変して行った。すなわち、ヒト気道上皮細胞株であるNCI−H292細胞を10%FCS含有RPMI1640培養液に懸濁後、12穴培養プレートに2×10個ずつ播種し、2日間培養した。その後、0.2%FCS含有RPMI培養液に交換し、更に2日間培養した細胞を用いた。被験薬とEGF 25ng/mLを添加し、48時間後の培養上清中のムチン量をELISA法にて測定した。コントロール値から正常値を差し引いた値を100%とし、コントロールに対する抑制率(%)を算出した。但し、EGFのみを添加した培養上清中のムチン量をコントロール値、被験薬、EGF共に添加しない培養上清中のムチン量を正常値とする。また、代表的なホスホジエステラーゼ(IV)阻害剤であるcilomilast(J.Pharmacol.Exp.Ther.,284巻,420−426頁,1998年)及びroflumilast(J.Pharmacol.Exp.Ther.,297巻,267−279頁,2001年)についても同様に検討した。結果を表1に記載した。
【0056】
結果、本発明化合物はムチン産生を濃度依存的に抑制した。一方、ホスホジエステラーゼ(IV)阻害作用を有するcilomilast及びroflumilastは、本発明化合物とは反対に、ムチン産生を増加させた。
【0057】
【表1】

【0058】
試験例2 気道上皮の杯細胞過形成抑制作用
本試験はMatsubara等の方法(Int.Arch.Allergy Immunol.,116巻,67−75頁,1998年)を一部改変して行った。すなわち、7週齢雄性Lewis Wistarラットにセファデックス液(0.1mg/mL/head)を静脈内投与し(day 0,2,5の計3回)、最終投与の2日後にペントバルビタール麻酔下に放血致死させ、肺組織を摘出し、中性ホルマリン緩衝液中で浸漬固定した。左肺前葉部の薄切標本を作製後、periodic acid−Schiff(PAS)染色し、気道上皮に占めるPAS染色陽性面積比を画像解析ソフト(Winroof)を用いて算出した。化合物は0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に懸濁させ、セファデックス投与開始日より1日1回計7日間連続経口投与した。結果を図1に記載した。尚、図中の数値は、平均値±標準偏差(各群11−12例)である。抑制率(%)は、試験例1に準じて算出した。
【0059】
試験例3 気道粘液過分泌抑制作用
本試験のモデルは、Tesfaigzi等の方法(Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.,279巻,L1210−L1217頁,2000年)を一部改変して行った。すなわち、エーテル麻酔下で7週齢雄性Brown NorwayラットにLPS(大腸菌株0111:B4由来)100μgを気管内投与し、炎症を惹起させた。LPS投与2日後にペントバルビタール麻酔により致死させ、気道を3mLの5mM EDTA,5mM dithiothreitol含有PBSで洗浄し、回収されたBALF中の粘液量をUEA−1を用いたレクチンアッセイ法にて測定した。被験薬は0.5%HPMCに懸濁させ、LPS投与の1時間前と翌日に経口投与した。結果を表3に記載した。尚、数値は平均値±標準偏差(各群6例)である。抑制率(%)は、試験例1に準じて算出した。
【0060】
【表2】

【0061】
上記試験の結果、本発明化合物は、気道粘液過剰分泌に有効性を示したことから、粘液過剰分泌状態にある種々の呼吸器疾患への臨床適応が可能であると考えられる。
【0062】
製剤例1 錠剤
化合物1 200mg
トウモロコシデンプン 50mg
微結晶セルロース 50mg
ハイドロキシプロピルセルロース 15mg
乳糖 47mg
タルク 2mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
エチルセルロース 30mg
不飽和グリセリド 2mg
二酸化チタン 2mg
上記配合割合で、常法に従い、1錠当たり400mgの錠剤を調製した。
【0063】
製剤例2 顆粒剤
化合物2 300mg
乳糖 540mg
トウモロコシデンプン 100mg
ハイドロキシプロピルセルロース 50mg
タルク 10mg
上記配合割合で、常法に従い、一包当たり1000mgの顆粒剤を調製した。
【0064】
製剤例3 カプセル剤
化合物3 200mg
乳糖 30mg
トウモロコシデンプン 50mg
微結晶セルロース 10mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
上記配合割合で、常法に従い、1カプセル当たり293mgの錠剤を調製した。
【0065】
製剤例4 注射剤
化合物4 100mg
塩化ナトリウム 3.5mg
注射用蒸留水 適量
(1アンプル当たり2mL)
上記配合割合で、常法に従い注射剤を調製した。
【0066】
製剤例5 シロップ剤
化合物5 200mg
精製白糖 60g
パラヒドロキシ安息香酸エチル 5mg
パラヒドロキシ安息香酸ブチル 5mg
香料 適量
着色料 適量
精製水 適量
上記配合割合で、常法に従い、シロップ剤を調製した。
【0067】
製剤例6 坐剤
化合物6 300mg
ウィテップゾールW−35 1400mg
(登録商標、ラウリン酸からステアリン酸までの飽和脂肪酸のモノ−、ジ−及びトリ−グリセライド混合物、ダイナマイトノーベル社製)
上記配合割合で、常法に従い、坐剤を調製した。
【0068】
製剤例7 エアゾール剤
化合物1 100mg
ミグリオール812 200mg
HFA−227 適量
(1製剤当り20mL)
化合物1を常法により5μm以下に微粉砕し、ミグリオール812を加えて練合した。次いで、練合物を噴霧容器に充填し、−20℃に冷却したHFA−227を充填し、バルブを装着して上記処方を有するエアゾール剤を得た。
【0069】
製剤例8 液状吸入剤
化合物2 100mg
塩化ベンザルコニウム 10mg
精製水 適量
(1製剤当り100mL)
化合物2及び塩化ベンザルコニウムを精製水に加え、撹拌、溶解して、上記処方を有する液状吸入剤を得た。
【0070】
製剤例9 粉末吸入剤
化合物3 5mg
乳糖 95mg
(1製剤当り100mg)
化合物3をジェットミル(富士産業製)で5μm以下に粉砕し、次いで乳糖と混合して、上記処方を有する粉末状吸入剤を得た。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするムチン産生抑制剤。
【請求項2】
Aが1,2,4−トリアゾール−1−イルであり、R又はRが同一又は相異なり、炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基が置換されてもよい炭素数1〜6の直鎖又は分枝鎖状の低級アルキル基又は炭素数3〜7の単環の脂環式炭化水素基であり、Rが水素原子であり、Rが水素原子である請求項1記載のムチン産生抑制剤。
【請求項3】
Aが1,2,4−トリアゾール−1−イルであり、R又はRが同一又は相異なり、メチル、イソブチル、3−ペンチル、シクロプロピルメチル又はシクロペンチルであり、Rが水素原子であり、Rが水素原子である請求項1記載のムチン産生抑制剤。
【請求項4】
2−(3−シクロプロピルメチルオキシ−4−メトキシフェニル)−5−(1,2,4−トリアゾール−1−イル)ベンズイミダゾール又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするムチン産生抑制剤。
【請求項5】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の予防又は治療剤である請求項1〜4のいずれか1記載のムチン産生抑制剤。
【請求項6】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症又は肺線維症である請求項5記載のムチン産生抑制剤。
【請求項7】
下記一般式(1):
【化2】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患における気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難又は痰の貯溜の症状改善剤。
【請求項8】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症又は肺線維症である請求項7記載の症状改善剤。
【請求項9】
下記一般式(1):
【化3】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする去痰剤。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項記載のムチン産生抑制剤の有効量を投与することを特徴とする気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の処置方法。
【請求項11】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症又は肺線維症である請求項10記載の処置方法。
【請求項12】
下記一般式(1):
【化4】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表されるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の有効量を投与することを特徴とする気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難及び痰の貯溜から選ばれる気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の症状改善方法。
【請求項13】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症又は肺線維症である請求項12記載の症状改善方法。
【請求項14】
ムチン産生抑制剤を製造するための下記一般式(1):
【化5】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項15】
気道粘液分泌物の停滞、痰の喀出困難及び痰の貯溜から選ばれる気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患の症状改善剤を製造するための下記一般式(1):
【化6】

〔式中、Aはトリアゾール基を示し、R又はRは同一又は相異なり、脂環式炭化水素基を有してもよい脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、Rは水素原子又は置換基を示し、Rは水素原子又は窒素原子の保護基を示す。〕
で表わされるベンズイミダゾール誘導体又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項16】
気道上皮における粘液過剰分泌を伴う呼吸器疾患が、慢性閉塞性肺疾患、慢性気道感染症、慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎、肺炎、肺結核、塵肺症又は肺線維症である請求項15記載の使用。

【国際公開番号】WO2005/041858
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515117(P2005−515117)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015634
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000207827)大鵬薬品工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】