説明

ムラサキの栽培方法

【課題】 種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる大量生産に適したムラサキの栽培方法の提供。
【解決手段】 その栽培方法は、有底筒状の育苗容器に砂を入れ、その砂の上にムラサキの種子を数粒撒き、その後前記種子が見えなくなるまで、更にその種子上に砂を撒いて播種し、播種後0〜−10℃の低温に7〜30日間曝すと共に砂の表面が乾いたら散水し、その後は徐々に温度上昇させて発芽させ、発芽後背丈が7〜15cmになった時点で、育苗容器から取り出して根に付いた砂を分離して農地に移植し、その育苗容器から取り出すまでの間は引き続き砂の表面が乾いたら散水し、移植後は農地にて育成し開花させて種子を採取することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬あるいは天然染料として利用されており、かつ絶滅危惧種に指定されているムラサキの栽培方法に関する。
より詳しくは、そのムラサキを種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる、大量生産に適した栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムラサキは、かつては日本各地の山野に数多く自生し、その花は白色で、根には紫色の色素があり紫根染めの染料として各地で利用され、また生薬としても利用されていた。
そのため、古き平安時代等には、採取量を規制して保護し、またその後の江戸末期までは栽培も行われていたようだ。東京郊外の武蔵野もその産地の一つであったようだが、化学染料の登場により、人力による栽培は衰退してしまったようである。
また、自生の方も、山林の植林、原野の農地開発等により激減し、絶滅危惧種に指定されるまでになってしまった。
【0003】
そのムラサキは、前記したとおり生薬としても利用され、具体的には外傷、腫瘍、火傷、湿疹等に古くから処方されてきたようであり、その根にはシコニン(shikonin)という生理活性物質が含まれており、これが紫色を呈する色素であることから、「ムラサキ」という名前の由来となったようである。
このシコニンには、数種のアセチル誘導体が含まれているようで、これが金属イオンと結合して呈色し、繊維に固着することで染色に利用されるようであり、このシコニンの名は、女性理学博士の黒田チカさんが命名されたということである(非特許文献1参照)。
【0004】
最近の環境保護あるいは自然回帰の機運等により、天然物由来の染料の長所が着目され紫根染めに関心が高い等の点から、愛好家グループ等により、日本各地でその栽培方法に関し、調査・検討が行われているようであり、その結果も発表されている(非特許文献1及び2参照)。また、その栽培、生産も細々と行われているようである。
また、そのムラサキは、現在においても生薬及び染料として利用されており、その原料はもっぱら中国あるいは韓国産の野生(自生)品と言われている。
【0005】
そして、そのムラサキについて、創傷治癒促進作用、HIV増殖抑制作用、殺菌作用、抗腫瘍作用、血糖値降下作用等の薬理活性に関する研究報告が最近なされており、ムラサキを安定的に生育させることのできる栽培方法を開発すべく研究に既に着手している製薬会社もあり、その結果も発表されている(非特許文献3参照)。
そのムラサキを種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる大量生産に適した栽培方法は、これまでのところないと言われており(非特許文献1及び4参照)、本出願人の知る限り、そのような方法は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「http://manyo.web.infoseek.co.jp/murasaki.htm」2008/12/06
【非特許文献2】「http://blogs.yahoo.co.jp/yamaken29/Myblog/yblog.htlm」2009/07/07
【非特許文献3】「薬用植物研究31(1)2009年」 第36〜44頁
【非特許文献4】財団法人公園緑地管理財団武蔵管理センター都市緑化植物園、2002年配、永留真雄著「種類・品種の加工特性と加工用途」第920〜922頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人は、数十年に亘る長期間各種生薬を製造販売しており、前記のような優れた効能を有することが知られているムラサキに着目し、その栽培方法について、種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる大量生産に適した方法を開発すべく、数年前から、鋭意調査・検討を行っており、その結果、開発に成功したのが本発明である。
したがって、本発明は、種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる大量生産に適したムラサキの栽培方法を提供することを発明の解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はムラサキの栽培方法を提供するものであり、その栽培方法は、有底筒状の育苗容器に砂を入れ、その砂の上にムラサキの種子を数粒撒き、その後前記種子が見えなくなるまで、その種子上に砂を撒いて播種し、播種後0〜−10℃の低温に7〜30日間曝すと共に砂の表面が乾いたら散水し、その後は徐々に温度上昇させて発芽させ、発芽後背丈(地上部)が7〜15cmになった時点で、育苗容器から取り出して根に付いた砂を分離して農地に移植し、その育苗容器から取り出すまでの間は引き続き砂の表面が乾いたら散水し、移植後は農地にて育成し開花させて種子を採取することを特徴とするものである。
【0009】
その栽培方法においては、種子を採取した後に成長体を根ごと掘り起こして根を採取するのがよく、その採取した根は紫根染めの染料及び生薬として利用できる。
また、栽培1年目には、成長体を根ごと掘り起こすことなく越冬させ、翌年も開花させて種子を採取し、その後根ごと掘り起こして根を採取するのが好ましく、このようにすることにより、種子及び紫根の生産量をそれぞれ1年目もより増加させることができる。
そして、砂は山砂で、その粒径が2.5mm以下の範囲に80質量%以上、かつ0.3〜2.5mmの範囲に50%以上存在するものがよく、また有底筒状の育苗容器はプラスチック製の柔軟性を有する小型の発芽育苗用のものがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のムラサキの栽培方法により、ムラサキの種子から高率で発芽させることができ、その発芽した苗は育苗用容器中で生存率を高く維持することができ、農地に移植後も順調に生育させることができる。
その結果、本発明のムラサキの栽培方法は、生薬あるいは紫根染料等の多くの消費量に対応することができる大量生産に適した栽培方法である。
【0011】
また、その栽培方法では、育苗用容器に入れる培地としては砂を用いていることから、それから取り出して農地に移植する際には、苗の根から発芽育苗用培地である砂を簡単に分離することができるので、移植の際に苗の根を傷めることがない。
その結果、移植後は、苗を育苗容器から取り出す際に根を傷めていないので、地上部分及び根の部分のいずれも順調に生育させることができ、しかも、紫根染め染料あるいは生薬を抽出するのに適した細根をうることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のムラサキの栽培方法は、前記したとおり、有底筒状の育苗容器に砂を入れ、その砂の上にムラサキの種子を数粒撒き、その後前記種子が見えなくなるまで、更にその種子上に砂を撒いて播種し、播種後0〜−10℃の低温に7〜30日間曝すと共に砂の表面が乾いたら散水し、その後は徐々に温度上昇させて発芽させ、発芽後背丈が7〜15cmになった時点で、育苗容器から取り出して根に付いた砂を分離して農地に移植し、その育苗容器から取り出すまでの間は引き続き砂の表面が乾いたら散水し、移植後は農地にて育成し開花させて種子を採取することを特徴とするものである。
【0013】
その栽培に使用する種子は、前年採取した種子を利用するのがよいが、初めて栽培する場合には、本出願人が知る限り市販されていないので、ムラサキを栽培している愛好家グループ等もあり、そのメンバーに分けてもらうのがよい。
その際には、間違ってセイヨウムラサキを栽培している場合もあるので専門家に相談し、確認するのがよい。
【0014】
その種子を播種する有底筒状の育苗容器は、種子を発芽させ、その発芽した苗を所定の大きさになるまで成長させ、その後農地に移植するまでの間に使用するものであるから、特段限定されることはなく、市販の育苗に用いることができる底のある筒状の園芸用の各種容器が使用可能であり、それには市販されている素焼きの鉢、古紙等を利用した紙製の鉢、塩化ビニル樹脂等のプラスチックを素材とする育苗用のポット等が例示できる。
【0015】
そして、その容器に播種する種子は径が2.5〜3.5mm程度の小さな粒で、育苗容器には5粒程度播種するものであるから、培地用の砂も少量の200mL程度がよい。
また、その育苗容器は種子を順調に発芽育苗させるために使用するものであるから、少量の培地用の砂が容器の底から半分以上に達し、散水しても溢れることがない程度の位置までの範囲に到達する程度のサイズのものがよい。
【0016】
そのサイズについて更に述べれば、育苗容器に入れられた種子と培地用の砂の全量とが育苗容器の容積でいえば、60%以上で、85%以下がよい。
また、大量に育苗することを配慮すると軽量のものがよく、繰り返し散水することを配慮すると散水により破壊し難い耐水性のものがよい。
【0017】
前記したような条件を考慮すると、育苗容器には、「育苗ポット」と称して市販されているところの塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の発芽・育苗用の小型の容器がよい。
そのような容器には、上端から底に行くに従って少しずつ径が狭くなっている円筒形タイプ、あるいは上端部から底まで一定形の4角筒タイプのものがあり、それらは一づつの容器が独立したものであるが、それ以外に4角筒形状のものを10個程度連結したタイプのものもあり、前記した要件を満たすものはいずれも使用可能である。
【0018】
前記の通りではあるものの、ムラサキの苗が10cm程度の所定のサイズに成長した際には畑等の農地に移植することが必要であり、その際には育苗後容器から苗を取り出して、培地の砂を分離することになるから、苗の根を傷めずに、それら作業を効率的に行うことを考慮すると、上端から底に行くに従って少しずつ径が狭くなっている円筒形タイプの塩化ビニル樹脂等のプラスチック製の発芽・育苗用の小型の容器である、前記した「育苗ポット」が好ましい。
【0019】
そのサイズについて更に具体的にいえば、培地の砂が前記したとおり200mL程度と少量であるから、上端の径が6〜15cm、深さが6〜15cmがよく、好ましくは前記径が8〜12cm、深さが8〜12cmがよい。
そのポット等の育苗容器に入れる培地の砂については、川砂、山砂のいずれでもよいが、保水性の点で山砂がよい。
また、その砂の使用量ついては、育苗容器のサイズが前記した通りであるから150〜250mLがよく、好ましくは180〜220mLがよい。
【0020】
その砂のサイズについては、種子の発芽、その発芽後の育の育成に好適なものがよい。それには、発芽育成時に砂表面を乾かすことができ、かつ乾いた際には散水することが肝要であることからして水捌けがよいことも必要であるが、それだけでなく所定の滞水性能をも有するものがよい。
それには、その粒径が2.5mm以下の範囲に80質量%以上、かつ0.3〜2.5mmの範囲に50%以上存在するものがよく、好ましくは、2.5mm以下の範囲に90質量%以上、かつ0.3〜2.5mmの範囲に60%以上存在するものがよい
【0021】
育苗容器に培地の砂を入れた後に、その砂の上にムラサキの種子を数個撒くが、その数は3〜7がよく、種子を撒いた後は、散水しても種子が隠れる程度の厚さで砂を掛ける。その砂を掛けた後は散水し、低温に曝す。なお、砂を掛けた後の砂の上端は育苗容器の上端開口より1〜2cm程度低いのがよい。
【0022】
ムラサキの種子を前記低温に曝す際の温度については、0〜−10℃が必要であり、−3℃〜−7℃が好ましい。また、その曝す期間は7〜30日が必要であり、10〜20日が好ましい。
ムラサキの種子をこのような条件に曝す際には、その環境を人為的に作ってもよいが、我が国の冬季には寒冷地あるいは山間地では自然に得られる環境であるから、エネルギーコスト面からしても、それを利用するのがよい。
【0023】
前記のとおりであるから、0〜−10℃の温度に曝す期間中における曝す時間については、1日中、すなわち24時間である必要はなく、夜間にこのような低温の条件が得られる地域であればよい。
また、このような低温に曝した後に、徐々に温度上昇させる際には、低温期間が前記期間を著しく超える場合には、人為的な方法、あるいは寒冷地あるいは山間地から夜間温度が0〜−10℃の低温にならない地域に移動してもよいが、極端に低温が続く地域でない限り、季節の変化による温暖化を待つだけでよい。
【0024】
散水については、培地が砂であることから水捌けがよいので、砂表面を毎日観察し、乾いていたら行うのがよい。その際には、大量に散水するのではなく、目視にて表面が濡れているのがわかる程度に行えばよい。なお、所定の散水が行われたかどうかは、早朝の低温時に容器の周囲に凍結して氷ができているかどうかでも確認できる。
この散水は、0〜−10℃の低温に曝している期間中だけでなく、苗が育苗容器に入れられている間、すなわち育苗容器から苗を取り出して農地に移植するまでの間継続することが必要である。
【0025】
このような発芽・育苗に適した地を見つけ出し、そこで、ムラサキの発芽・育苗を行う場合には、1月下旬から2月上旬にかけて、前記した手順で種子を育苗容器に撒き、前記した手順で管理していくと、4月上旬に発芽して順調に生育し、5月中旬には10cm程度に生育する。
この段階で、苗を育苗容器から取り出して、根に着いた砂を分離することになる。
【0026】
育苗容器中で発芽し生育したムラサキの苗を取り出す時期については、苗の丈が7〜15cmになった時点であることが必要であり、好ましくは9〜12cmの時期がよい。
この段階で、苗を育苗容器から取り出して、根に着いた砂を根が傷つかないように分離することになるが、本発明では培地として砂を使用しているので、砂の分離は比較的簡単に行えるのであり、この点は本発明の1つの特徴である。
【0027】
苗を移植する農地については、水捌けがよく、栄養分の多い農地がよい。
また、その農地は夏場の温度が極端に高くない土地がよく、例えば関東地方では上越国境に近い山間部に位置する高地の畑がよい。
このような農地に苗を移植した後には、順調に成長し、7月には白い花が咲き始め、8月には、開花するものもあれば、種を付け始めるものも出てくる。
【0028】
10月中旬には種子の色が灰色や白色に変わるので、その時点で種子の採取を行う。
種子の採取は、まず成長したムラサキを地上部から刈り取り、それを数日天日で乾燥させることにより簡単に種子だけを分離することができる。
種子採取後は成長したムラサキを農地から根ごと掘り出し、根についた土を分離して根を収穫する。なお、この際には、シコニン溶出を避けるために根は水洗してはいけない。
【実施例1】
【0029】
以下において、ムラサキの栽培方法、すなわち発芽、育苗、生育、種子採取及び紫根採取に関する実施例を示すが、本発明は、この実施例によって何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0030】
山砂を石材店から購入し、その粒径を篩を用いて測定したところ下記表1のとおりであり、この表1における%の数値は質量%を示す。すなわち、その測定結果によれば、砂は、粒径2.36mm以下に94質量%存在し、かつ0.3〜2.36mmの範囲に63質量%存在している。したがって、その粒径は請求項に規定する、2.5mm以下の範囲に80質量%以上、かつ0.3〜2.5mmの範囲に50質量%以上存在するとの要件を満たすものである。
この砂180mLを上端開口直径及び深さが9cmの底に行くに従って少しずつ細くなる市販の円筒状プラスチック製育苗容器に入れた。
【0031】
【表1】

【0032】
その後前記プラスチック製育苗ポットに撒かれた種子の上に種子が露出しないように20mLの山砂を入れた。その後ジョウロ(如雨露)で散水し、播種は終了した。
なお、この播種は1月下旬に赤城山の麓にある出願人研究所の敷地内の屋外において行い、播種後はそのまま放置し、砂表面が乾いたら散水した。
この散水した水が凍結していることを確認する共に、かつ大気の温度を毎日測定し、出勤時である早朝には−5℃前後の温度が2月上旬から下旬まで続くことを温度計でも確認している。
【0033】
その後も砂表面が乾いたら散水を続く、4月上旬には黄緑色の小さな新芽が発芽したことを確認した。
その後も同様に散水を続けると4月下旬には発芽した苗が約5cm程度まで成長し、5月中旬には平均して約10cmに成長したことが確認できた。
なお、この発芽・育苗試験は育苗ポットを18,000個用意して行った。
【0034】
この段階で育苗ポットを農地に移動し、その後苗を育苗ポットから取り出し、根から砂を分離した後に、出願人研究所の所在地から離れた赤城山麓の農地に移植した。
その際には、農地に幅100cmの畝を多数形成し、その畝に直径1.5〜2.5cm、深さ6〜10cmの人差し指くらいの穴を20cm間隔で穴開け起具を使って開け、そこに移植した。
移植後は土壌が乾いたら散水したが、2週間後には苗が生き生きしてきたので、水の散布をその時点で止めた。
【0035】
その結果、ムラサキの苗は順調に成長し、7月上旬には白い花が開花し始め、8月中旬には開花するものがある一方で種子も着け始め、地上部の長さは平均して80cmになっていた。
なお、7月上旬には、ムラサキが植えられている畝の両側に畝に沿って、高さ180cmで日除け用の銀色の寒冷紗を設置した。
【0036】
10月中旬には、種子の色が灰色や白色になり、この時点で種子の採取を行った。なお、この時点でも地上部は緑色をしていた。
その種子の採取の際には成長したムラサキの地上部を刈り取り、その後地上部を数日間天日で乾燥することで簡単に茎から種子を取り出すことができた。
【0037】
種子を採取するために地上部を刈り取った後の根を農地から掘り出し、掘り出した根は土砂を良く分離し、乾燥した後に紫根の製品とした。その紫根は染料あるいは生薬の原料となるので、貴重なものである。
その際には、取り出した根を水で洗浄することは、シコニンを溶出させ製品価値を低下させることになるので絶対に行わない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、種子から高率で発芽させ、生存率が高く、かつ順調に生育させることができる大量生産に適したムラサキの栽培方法を提供するものであり、この栽培方法により絶滅危惧種に指定されているムラサキを増殖させることができ、絶滅の危機を救済又は回避させることが期待できる。
また、ムラサキの紫根を染料又は生薬として利用する際には、中国あるいは韓国からの野生ものの輸入に頼っていたが、これを自給できるようになることも期待できる。
【0039】
ムラサキの紫根から得られる染料の良さが各地で見直され、個人愛好家あるいは市民グループ等の団体の愛好家も増えており、本発明の栽培方法により大量に得られるムラサキの種子は、これらの方々に提供することでムラサキの栽培量を増加させることができる。 また、それを業として生産する企業等も出現することが期待でき、更なる栽培量の増加も期待できる。
その結果、ムラサキの紫根の収穫量も増加して、それを用いる生薬あるいは紫根染料の生産量を増加させることができ、本発明の栽培方法で得られた紫根は生薬の製造あるいは愛好家等の染色に有功に活用することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の育苗容器に砂を入れ、その砂の上にムラサキの種子を数粒撒き、その後前記種子が見えなくなるまで、更にその種子上に砂を撒いて播種し、播種後0〜−10℃の低温に7〜30日間曝すと共に砂の表面が乾いたら散水し、その後は徐々に温度上昇させて発芽させ、発芽後背丈が7〜15cmになった時点で、育苗容器から取り出して根に付いた砂を分離して農地に移植し、その育苗容器から取り出すまでの間は引き続き砂の表面が乾いたら散水し、移植後は農地にて育成し開花させて種子を採取することを特徴とするムラサキの栽培方法。
【請求項2】
種子の採取は、成長した地上部を刈り取り、その地上部を天日で乾燥した後に地上部から種子を分離することにより行う請求項1に記載のムラサキの栽培方法。
【請求項3】
種子を採取した後に、根を掘り起こして根を採取する請求項1又は2に記載のムラサキの栽培方法。
【請求項4】
砂は、山砂で、その粒径が2.5mm以下の範囲に80質量%以上、かつ0.3〜2.5mmの範囲に50質量%以上存在するものである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のムラサキの栽培方法。
【請求項5】
有底筒状の育苗容器がプラスチック製の柔軟性を有する小型の発芽育苗用のものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のムラサキの栽培方法。

【公開番号】特開2011−217675(P2011−217675A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90501(P2010−90501)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(397009462)株式会社和漢薬研究所 (2)
【Fターム(参考)】