説明

ムンバイスタチン誘導体の製造法

本発明はアントラキノン骨格がDiels−Alder反応により、また中心のメチレン架橋が遷移金属触媒反応により構成されるムンバイスタチン誘導体(I)
【化1】


の製造法、並びにこの方法で使用される中間体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はムンバイスタチンおよびムンバイスタチン誘導体の製造法、並びにこれらの方法で使用される中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
ムンバイスタチンは芳香族ジケト誘導体であり、グルコース−6−ホスフェートトランスロカーゼ阻害剤として糖尿病の治療に使用することができる。ムンバイスタチン(A)は微生物DSM11641(VertesyらのWO99/67408およびJ. Antibiot. 2001, 54, 354〜363)から単離することができる。WO01/30736はムンバイスタチン誘導体(B)〜(D)、並びにそれらのエステルおよびエーテルを開示している。ムンバイスタチンは開環型(A)
【化1】

およびヘミアセタール型(B)
【化2】

が平衡して存在し、そのpHに応じて化合物(C)
【化3】

および(D)
【化4】

に変換することができる。
【0003】
KrohnらのTetrahedron, 62, 1223〜1230(2006年)は式(E)
【化5】

のトリ−オルト置換された2’−デアルキルムンバイスタチン誘導体の7〜9段階合成を開示しており、そこでベンジル位の酸化はCCl4/水の混合物中でBr2を使用して照射により行なわれ、アントラキノン骨格はルイス酸が触媒するマイケル付加により製造されるジエン中間体の多段階アルドール縮合により構築され、ナフチル誘導体(F)
【化6】

から出発して全収率は2.8〜14.1%であった。
【0004】
KaiserらのJ. Org. Chem., 67, 9248〜9256(2002年);Tetrahedron, 59, 3201〜3217(2003年)はトリ−オルト置換された3’−デオキシ−2−デカルボキシムンバイスタチン誘導体(G)
【化7】

の9段階合成を開示しており、そこでアントラキノン骨格(H)
【化8】

はアライン/フタリドの環生成反応(anellation)により製造され、商業的に入手できる3−ヒドロキシベンズアルデヒドから出発して全収率は3.7%であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的はムンバイスタチン誘導体の効率的な合成経路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は式(I)
【化9】

[式中、R1およびR2は互いに独立してH、(C1−C6)−アルキルまたはベンジルであり、
R3、R4およびR5は互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、O−ベンジルまたはO−アシルであり、
R6はOH、ハロゲン、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、フェニル、ベンジル、O−フェニル、O−ベンジル、O−アシルであり、
X1およびX2は互いに独立してO、NH、N(C1−C6)−アルキルまたはSであり、そして
m、n、qおよびrは互いに独立して0または1である]のムンバイスタチン誘導体またはその塩を製造する方法であって、
【0007】
工程(1)において、式(II)
【化10】

(式中、YはHal、OTs、OTfおよびOMsからなる群より選択される脱離基、好ましくは塩素または臭素である)の化合物を式(III)
【化11】

(式中、Xは電子供与性基、例えば[(C1−C6)−アルキル]3シリルオキシ、好ましくは[メチル]3シリルオキシであり、そしてR’は(C1−C6)−アルキルまたは[(C1−C6)−アルキル]3シリルである)の化合物と[2+4]付加環化で反応させ、次に適当な酸と反応させて式(IV)
【化12】

(式中、R’’=Hまたは(C1−C6)−アルキルである)の化合物を得;
【0008】
工程(2)において、q=1およびR’’=Hである場合、フェノール性OH基を場合により当業者に知られている条件下、ハロゲン化(C1−C6)−アルキル化合物またはハロゲン化ベンジル化合物でエーテル化し、あるいはハロゲン化アシル化合物でエステル化し、次に化合物(IV)、すなわち得られるエーテル化またはアシル化された化合物(IV)をハロゲン化して式(V)
【化13】

の化合物を得;
【0009】
工程(3.1)において、化合物(V)を有機金属化合物(VI)
【化14】

(式中、MはSn[(C1−C6)−アルキル]3、B(OH)2、B(OR)2、BF3、ZnHalまたはMgHalであり、そして(OR)2は[O−(C1−C6)−アルキル]2または1,2−隣接ジオール、例えばピナコール、カテコールであり、その場合は隣接ジオールから誘導されるボロン酸エステルが生成する)と遷移金属触媒作用、好ましくはPd、NiまたはFe触媒作用により反応させて式(VII)
【化15】

の化合物を得、次に化合物(VII)を化合物(VIII)
【化16】

に酸化し;あるいは
【0010】
工程(3.2)において、化合物(V)を有機金属化合物(VI’)
【化17】

(式中、MおよびR6は化合物(VI)で定義された通りであり、そしてZはO−(C1−C6)−アルキレン−O、好ましくはO−(CH2−CH2)−Oである)と遷移金属触媒作用、好ましくはPd、NiまたはFe触媒作用により反応させて式(VII’)
【化18】

の化合物を得、次に化合物(VII’)を適当な酸と反応させて加水分解して化合物(VIII)を得;あるいは
【0011】
工程(3.3)において、化合物(VI)をX2R2がOHである式(V)の化合物でエステル化して式(VII’’)
【化19】

の化合物を得、次に化合物(VII’’)を式(VII’’’)
【化20】

の化合物に変換し、そして化合物(VII’’’)を塩基性または酸性条件下、好ましくは塩基性条件下で加水分解して式(VIII)の化合物に変換し、生成したベンジルアルコールをアルデヒドに酸化し、また生成した安息香酸官能基を場合によりエステル化またはアミド化し;
【0012】
工程(4)において、化合物(VIII)を式(IX)
【化21】

と反応させて式(X)
【化22】

の化合物を得;
【0013】
工程(5)において、化合物(X)を三重結合の単結合への水素化および[(C1−C6)−アルキル]3Si基の除去により式(XI)
【化23】

の化合物に変換し;
【0014】
工程(6)において、化合物(XI)を式(XII)
【化24】

の化合物に酸化し;
工程(7)において、化合物(XI)または化合物(XII)をX1R1=OHである式(I)の化合物に酸化し;そして
工程(8)において、工程(7)で得られた化合物を場合によりX1はNH、N(C1−C6)−アルキルまたはSであり、そしてR1は(C1−C6)−アルキルまたはベンジルである式(I)の化合物またはその塩に変換することからなる前記方法に関する。
【0015】
式(I)の化合物の合成の間、存在するならばR3、R4、R5および/またはR6のOH官能基は好ましくは適当な保護基、例えばメチル、メトキシメチル、ベンジルまたはp−メトキシベンジル基で一時的に保護される。
【0016】
式(I)の化合物の合成の間、式(I)、(IV)、(V)、(VII)、(VIII)、(VII’)、(X)、(XI)または(XII)の化合物に存在するならばC(O)X1R1および/またはC(O)X2R2基を含有する中間体化合物を互いに変換することが必要であるか、または望ましい。これは当業者に知られている方法により行なうことができる。例えば、エステルを水性の酸性または塩基性条件下で加水分解して遊離酸を得ることができる。塩基を使用して、遊離カルボン酸を容易に塩に変換することができる。適当な塩基は例えばNaOHまたはKOHのようなアルカリ金属水酸化物である。他のカルボン酸誘導体を製造する場合、さらにエステルまたはカルボン酸を例えば塩化チオニルによる慣用の活性化後、塩基の存在下で求核試薬(例えばNH2(C1−C6)−アルキル、NH2−ベンジル、NH[(C1−C6)−アルキル]2、NH[(C1−C6)−アルキル][ベンジル]、[(C1−C6)−アルキル]−SH、ベンジル−SH)と反応させることができる。ここで、存在するならば両方の酸(誘導体)官能基は一方だけを選択的に反応させるか、または両方を互いに独立して連続的に反応させることができる。
【0017】
「ハロゲン」および「Hal」なる用語はフッ素、塩素、臭素または沃素、好ましくは塩素または臭素を意味する。
【0018】
「(C1−C6)−アルキル」なる用語は場合により1、2、3または4個の置換基により置換される直鎖状または分枝鎖状(C1−C6)−アルキル基を意味し、その置換基はOH、(C1−C4)−アルキル、(C1−C4)−アルコキシ、(C1−C4)−アルキルチオ、カルバモイル、カルボキシル、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アミノ、(C1−C4)−アルキルアミノ、ジ((C1−C4)−アルキル)アミノ、アミジノ、フェニル、O−フェニル、O−ベンジル、NH−フェニル、NH−ベンジルまたはハロゲン、−フェニル−(C1−C4)−アルキル、−フェニル−O−(C1−C4)−アルキルからなる群より選択され、好ましくは(C1−C4)−アルキル基である。「(C1−C6)−アルキル」は例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、メトキシメチル、ベンジルまたはp−メトキシベンジルである。
【0019】
「アシル」なる用語は−C(O)−(C1−C6)−アルキル、例えばアセチルまたはプロパノイル;−C(O)−(C6−C10)−アリールまたは−C(O)−(C1−C4)−アルキレン−(C6−C10)−アリール(ここで(C6−C10)−アリールは6〜10個の炭素原子を含有する芳香族基、例えばフェニルまたはトリルを意味する);あるいは−C(O)−(C5−C6)−ヘテロアリール(ここで(C5−C6)−ヘテロアリールは1、2、3または4個のヘテロ原子を有する5〜6−員環、例えばピリジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリルまたはオキサゾリルを意味する)を意味する。
【0020】
式(I)の化合物の塩はカチオンとして例えば無機金属イオンまたはアンモニウムイオンを含有する。「カチオン」なる用語は特に薬学的に許容しうるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウムイオン、さらにNH4+、(C1−C6)−アルキル−アルキル化アンモニウムイオン、例えばテトラエチルアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、モルホリノニウムまたはベンジルアンモニウム、あるいはプロカイン、L−アルギニンまたはL−リシンのプロトン化形態を意味する。
【0021】
式(I)の好ましい化合物は式(I−A)
【化25】

(式中、R1〜R6、X1、X2、mおよびnは互いに独立して上記の一般的な、または好ましい意味を有する)の化合物である。
【0022】
式(I)または(I−A)の化合物の置換基の好ましい定義は次の通りである:
R1およびR2は好ましくは互いに独立してHまたは(C1−C6)−アルキル、特に好ましくはHまたは(C1−C4)−アルキルである。
R2は特に好ましくはHである。
R3は好ましくはOHである。
R4、R5およびR6は好ましくは互いに独立してOHまたは−O−(C1−C6)−アルキルである。
X1およびX2は好ましくはOである。
mは好ましくは0である。
qは好ましくは1である。
rは好ましくは1である。
【0023】
特に好ましくは、X1R1はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
X2R2はOHであり、
R3はOHであり、
R4はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
R5はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
R6はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そして
mおよびnは互いに独立して0または1である式(I−A)の化合物である。
【0024】
工程(1)は2つの実験的に別の部分反応、すなわち[4+2]−付加環化とその後の(脱離による)芳香族化からなる。好ましくは、化合物(III)のX2R2は後の段階で穏やかな条件下、例えばTMS−OTf、例えばO−t−ブチルを使用して除去することができる基である。
(II)型の化合物は文献で知られている方法により製造することができる(RapoportらのJ. Org. Chem., 44(13), 2153〜2158(1979年);CameronらのAust. J. Chem., 34, 1513〜1522(1981年))。
【0025】
(IV)型の化合物を得るための[4+2]−付加環化工程は成分(II)および(III)を1〜48時間、好ましくは2〜24時間、80〜180℃の温度において溶媒なしで、あるいは適当な不活性溶媒または不活性溶媒の混合物中、例えば脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレンまたはベンゼンを加熱することにより行なわれる。工程(1)は適当ならばルイス酸、例えばTiCl4、Ti(i−Pr−O)4、Ti(i−Pr−O)2Cl2、AlCl3またはSc(OTf)3の存在下で行なわれる。原則として、反応はルイス酸を加えることにより促進され、その場合、低い反応温度(<110℃)で行なうこともできるが、個々の場合に副反応が起こることもある。適当ならば、工程(1)はマイクロ波反応器を使用して行なうことができる;反応溶媒としてイオン性液体の使用もまた可能である。副反応が起こる場合、これらは添加剤、例えば有機または無機塩基、プロトンスポンジまたはフリーラジカル捕捉剤、例えばアルカリ金属炭酸塩を使用して抑制することができる。
【0026】
次に、最初の[2+4]−付加環化生成物の芳香族化は適当な酸、例えばシリカゲルを加え、15〜70℃で0.5〜24時間撹拌することにより行なわれる。好ましくは、最初の部分の工程の溶媒は水および水混和性の有機溶媒、例えばTHFに換えることができる。R’基が(C1−C6)−アルキルである場合、それは一般に酸性の芳香族化条件下では除去されず、R’’=(C1−C6)−アルキルである(IV)型の化合物が直接生成する。R’基が[(C1−C6)−アルキル]3シリルである場合、それは酸性の反応条件下で除去することができる。このためには、希薄な水性の無機または有機酸、例えば塩酸、硫酸、酢酸またはp−トルエンスルホン酸が適している。特に適しているのはシリカゲルであり、それは適当ならば予めこれらの酸の何れかで処理される。
【0027】
工程(2)において、最初に(IV)のOH基の任意のエーテル化またはエステル化は当業者に知られている方法により、例えばハロゲン化(C1−C6)−アルキル、好ましくは沃化メチル、ハロゲン化ベンジルまたは活性化カルボン酸誘導体、例えば塩化アシルまたは酸無水物を有機または無機塩基、例えば炭酸カリウムの存在下、適当な極性有機溶媒、例えばアセトン、DMSOまたはDMF中、0〜80℃および0.5〜12時間の反応時間で反応させることにより行なわれる。
【0028】
(V)への別の変換は当業者に知られている光化学および/または熱反応条件下でメチル基のフリーラジカルハロゲン化により行なわれ、後者の場合はフリーラジカル開始剤が使用される。化合物(V)のHalは好ましくは臭素である。反応は例えば式(IV)およびN−ブロモスクシンイミドを不活性溶媒、例えば過ハロゲン化炭化水素、好ましくは四塩化炭素中で適当なスペクトル組成の光源(例えば太陽光{たいようこう}または比較的高いUV率のランプ)により5〜24時間照射して行なわれる。好ましくは、分割量のフリーラジカル開始剤、好ましくは過酸化ジベンゾイルまたはアゾ−ビス−イソブチロニトリル(AIBN)が一定の間隔(例えば15〜180分)で加えられる。
【0029】
工程(3.1)は遷移金属が触媒するクロスカップリング反応として一般に当業者に知られている方法により行なわれる(NobreおよびMonteiroのTetrahedron Lett., 45, 8225〜8228(2004年);PhopaseらのTetrahedron Lett., 45, 6959〜6962(2004年));例えば、化合物(V)を(VI)型の有機金属化合物(適当ならば、OH官能基は適当な保護基で保護される)と0〜150℃、好ましくは5〜40℃の温度範囲および1〜72時間の反応時間で反応させる。適当な保護基は例えば[(C1−C6)−アルキル]3シリル]、(C1−C6)−アルカノイルまたはアセタールZであり、Zの場合は(VI’)の製造において最初に酸化が既知方法により行なわれ、次にアセタール化が行なわれる。好ましくは、OH官能基は[(C1−C6)−アルキル]3シリル]基、例えばトリエチルシリル、トリ(イソプロピル)シリルまたはt−ブチルジメチルシリル基で保護される。適当ならば、カップリング反応はマイクロ波反応器で行なうことができ、反応温度は15〜300℃の範囲であり、そして反応時間は1分〜120分である。工程(3.1)は1種またはそれ以上の不活性溶媒、例えば非極性の脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン;弱い極性の化合物、例えばTHFまたはジブチルエーテル;あるいは極性の化合物、例えばNMP、DMFまたはDMSO、好ましくはTHFおよび/またはNMP中、好ましくは不活性ガスの雰囲気下で行なわれる。
【0030】
工程(3.1)において、カップリング反応後にベンジル型アルコールは当業者に知られている方法を使用して、例えば溶媒としてのDCM中でペルヨージナンを使用するDess−Martin酸化により、または好ましくはSwern酸化の条件下で酸化される(試薬:DMSO、例えば塩化オキサリル、トリエチルアミン;不活性溶媒:DCM;温度範囲:−78℃〜40℃;反応時間:1〜24時間)。
【0031】
工程(3.2)において、カップリング工程は工程(3.1)と同様にして行なうことができ、保護されたアルデヒド官能基Z=O−(C1−C6)−アルキレン−O、好ましくはO−(CH2−CH2)−Oを含有する式(VI’)の化合物が使用される。カップリング反応の後、保護基Zは0〜100℃の温度において適当な水性溶媒、好ましくは水および極性の有機溶媒の混合物、例えばアセトン中、適当な酸、例えばPTS、または好ましくはPPTSで0.5〜48時間にわたって処理され、アセタール官能基がベンジル型アルデヒドに分解される。
【0032】
別の反応工程(3.3)において、カップリング工程はエントロピー的に有利な分子内反応で行なわれ、最初にカップリングのパートナー同士を既知条件下で互いにエステル化して、例えば(VI)とX2R2がOHである化合物(V)のMitsunobu様エステル化を使用して式(VII’’)の化合物を得る。このためにはアゾジカルボン酸ジエステル、例えばアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)またはアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、およびホスファン、例えばトリフェニルホスファン、トリブチルホスファンまたはジフェニル(2−ピリジル)ホスファンの組合せからなる試薬が適している。反応は−20℃〜100℃の温度範囲において不活性溶媒(例えばTHF)中、1〜24時間の反応時間で行なわれる。
【0033】
カップリング後の化合物(VII’’’)の加水分解は塩基性または酸性条件下、好ましくは塩基性条件下で好ましくはNaOHまたはKOH水溶液を使用して行なわれる。このようにして生成したベンジルアルコールは当業者に知られている方法により、例えばSwern酸化またはDess−Martinペルヨージナン酸化で酸化することによりアルデヒドに酸化される。中間体で生成した安息香酸官能基は当業者に知られている方法により、例えば塩化チオニルで安息香酸官能基を活性化した後に適当な求核試薬(例えばHO(C1−C6)−アルキル、NH2(C1−C6)−アルキル、NH2−ベンジル、NH[(C1−C6)−アルキル]2、NH[(C1−C6)−アルキル][ベンジル]、[(C1−C6)−アルキル]−SH、ベンジル−SH)と反応させることによりエステル化またはアミド化される。
【0034】
工程(3.1)、(3.2)および(3.3)において、化合物(VI)または(VI’)を使用することが好ましく、M=Sn(Bu)3である場合、その製造はMeyerおよびSeebachのChem. Ber., 113, 1304〜1319(1980年)に記載されている。
【0035】
工程(3.1)、(3.2)および(3.3)において、カップリング反応は触媒または触媒前駆体として適当な遷移金属化合物の存在下で行なわれ、Pd、NiまたはFe化合物が好ましく、さらに半化学量論量が使用される。遷移金属化合物の適当なリガンドは例えばアルキル化またはアリール化されたリン、窒素またはヒ素化合物であり、さらにN−複素環カルベンがあり、それは単座または二座リガンドである。適当なリガンドは例えばP(Ph)3、P(シクロヘキシル)3、P(2−フリル)3、AsPh3、dppe、dppp、dppf、dba、P(t−bu)3またはibiox7、好ましくはAsPhまたはdbaである。好ましいPd触媒はPd2(dba)3である。適当ならば、特定の反応を促進する添加剤、例えばCsF、LiClまたはハロゲン化銅(I)、好ましくは沃化銅(I)を反応混合物に加えることができる。
【0036】
工程(4)は化合物(VIII)を化合物(IX)から脱プロトン化により得られる有機金属化合物(IX’)
【化26】

(式中、M’はK、Na、Li、Ag、Cu、ZrCp2Hal、CeCl2またはTi[O(C1−C6)−アルキル]3、好ましくはZrCp2ClまたはTi(i−Pr−O)3である)と−78℃〜25℃、好ましくは−60℃〜−20℃の温度で好ましくは有機金属化合物(例えばブチルリチウム)を使用して反応させ、次に適当な金属試薬、例えばZrCp2Cl2または好ましくはClTi(i−Pr−O)3と不活性溶媒、好ましくはエーテル、例えばTHF中、−30℃〜20℃の温度範囲で2〜60分間にわたって反応させることにより行なわれる。
【0037】
工程(5)において、化合物(X)は均質の触媒または不均一の触媒下、当業者に知られている方法を使用して水素化され、そこで化合物(X)または脱シリル化された化合物(IX)(下記参照)を水素気体の雰囲気下、1〜50バールの圧力で適当な溶媒中、好ましくは半化学量論量で存在する触媒、好ましくは微細な遷移金属、例えばPd、または遷移金属複合体、例えばWilkinson触媒の存在下、15分間〜72時間の反応時間および15〜80℃の温度範囲で反応させる。適当な溶媒は好ましくは極性の非プロトン性溶媒、例えば酢酸エチルである。
【0038】
工程(5)はさらに当業者に知られている方法により末端[(C1−C6)−アルキル]3Si基を除去し、化合物(XI)の末端アルコール官能基を露出させることを包含し、そこで化合物(X)または水素化された化合物(IX)を適当な溶媒、例えば水およびTHFの混合物中、例えばフッ素を含有する試薬、例えばTBAFまたはHF/ピリジンと−40℃〜70℃の反応温度で30分間〜4日間にわたって反応させる。
【0039】
工程(5)の部分工程は任意の順序で行なうことができる。
【0040】
工程(6)において、化合物(XI)は当業者に知られている方法により酸化されて化合物(XII)を得る;この反応は例えば“Jones酸化”(Cr(VI)が介在する)の典型的な条件下で行なうことができ、Jones試薬(三酸化クロム/硫酸)を化合物(XI)に適当な溶媒、好ましくはアセトンおよび水の混合物中、−40℃〜60℃の温度範囲で加え、混合物を10分間〜24時間撹拌する。他の適当な酸化法は適当ならばルイス酸により触媒される過マンガン酸カリウムとの反応(LaiおよびLeeのTetrahedron, 58, 9879(2002年))、Ru(III)塩/金属過沃素酸塩の混合物による処理またはRuCl3tBuOOHの混合物による処理である。
【0041】
工程(7)において、化合物(XI)または化合物(XII)は例えば適当ならばルイス酸により触媒される過マンガン酸カリウムとの反応により、または三フッ素化1,1−ジメチルジオキシランを使用する酸化により、または触媒、例えば活性炭の存在下で酸素分子を使用することにより(KawabataおよびHayashiのTetrahedron Lett., 58, 5457(2004年))、または好ましくはRu(III)塩/金属過沃素酸塩の混合物による処理、RuCl3tBuOOHの混合物による処理により、あるいはTEMPOを使用する、または特に好ましくは光照射下でCCl4および水の混合物中のBr2を使用する、例えばKrohnらのTetrahedron, 62, 1223〜1230(2006年))に従って0〜70℃の温度でタングステン・ランプを使用する酸化により式(I)の化合物に変換される。
【0042】
工程(8)において、工程(7)で得られた化合物は適当ならば当業者に知られている条件下で適当な塩基、例えばNaOHまたはKOHと反応させることにより塩に変換され、あるいは中間体で生成した酸官能基は当業者に知られている方法により、例えば塩化チオニルで酸官能基を活性化した後に適当な求核試薬(NH2(C1−C6)−アルキル、NH2−ベンジル、NH[(C1−C6)−アルキル]2、NH[(C1−C6)−アルキル][ベンジル]、[(C1−C6)−アルキル]−SH、ベンジル−SH)と反応させることによりエステル化またはアミド化される。
【0043】
本発明はさらに式(I)のムンバイスタチン誘導体を製造するための上記工程の中間体、特に式(IV)、(V)、(VII)、(VII’)、(VII’’)、(VII’’’)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)および(XII)の中間体、好ましくはベンゾフェノンメチレン架橋のオルト位にR6置換基を有する式(VII)、(VII’)、(VII’’)、(VII’’’)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)および(XII)の化合物に関する。以後、これらの化合物は(VII−A)、(VII’−A)、(VII’’−A)、(VII’’’−A)、(VIII−A)、(IX−A)、(X−A)、(XI−A)および(XII−A)と称され、例えば化合物(XII−A)は式
【化27】

を有する。
【0044】
特に好ましくは、X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてnおよびqは互いに独立して0または1である式(IV)の化合物である。特に好ましくは、X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqは1である化合物(IV)である。
【0045】
特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4およびR5は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、nおよびqは互いに独立して0または1であり、そしてHalは塩素または臭素である式(V)の化合物である。特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4およびR5はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、qは1であり、そしてHalは臭素である式(V)の化合物である。
【0046】
特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(VII)または(VII−A)の化合物である。特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である化合物(VII)である。
【0047】
特に好ましくは、X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、さらにR4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(VII’)または(VII’−A)の化合物である。とりわけ好ましくは、X2R2はOHであり、さらにR4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である。Zは好ましくはO−(CH2−CH2)−Oである。
【0048】
特に好ましくは、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、Halは塩素、臭素または沃素であり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(VII’’)または(VII’’−A)の化合物である。とりわけ好ましくは、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、Halは塩素または臭素であり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である。
【0049】
特に好ましくは、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(VII’’’)または(VII’’’−A)の化合物である。とりわけ好ましくは、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である。
【0050】
さらに、特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である化合物(VIII)または(VIII−A)である。特に好ましくは、X2はOであり、R2はHまたは(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である化合物(VIII)である。
【0051】
式(IX)の化合物はラセミ形態で、あるいはエナンチオマー、例えば(R)−または(S)−形態として使用することができる。
【0052】
特に好ましくは、X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(XI)または(XI)の化合物である。
【0053】
特に好ましくは、X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である式(XII)または(XII−A)の化合物である。
【0054】
本発明の方法を使用して、化合物(II)から出発して7〜8工程の合成でムンバイスタチン誘導体を得ることができる。上記の合成経路はDiels−Alder付加環化による式(I)の化合物の高度{こうど}に置換{ちかん}されたアントラキノン構成単位の合成において改善された効率および収率を特徴とし、複雑な保護基の操作が必要ではない。さらに、遷移金属が触媒する反応の使用により初めてムンバイスタチン誘導体(I)およびそれらの中間体のアントラキノン骨格と組合せたテトラ−オルト置換ベンゾフェノンの合成法が提供される。
【0055】
略語:
Ac アセチル
Bu ブチル
dba ジベンジリデンアセトン
DCM ジクロロメタン
dppe 1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
dppp 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン
EA 酢酸エチル
eq. 当量
MOM メトキシメチル
m.p. 融点
Ms メシル
MTBE メチルt−ブチルエーテル
MW 分子量
PTS パラ−トルエンスルホン酸
PPTS パラ−トルエンスルホン酸ピリジニウム
Rf 移動比
TBAF フッ化テトラブチルアンモニウム
TBS t−ブチルジメチルシリル
Tf トリフルオロメタンスルホニル
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラム
TMS トリメチルシリル
Ts トシル
【0056】
上記の反応工程および下記の反応は空気にさらして、または保護ガス下、好ましくは保護ガス下で行なわれる。
【実施例】
【0057】
〔実施例1〕t−ブチル3−トリメチルシラニルオキシ−2−(1−トリメチルシラニルオキシビニル)ブタ−2−エノエートの製造:
【化28】

34.2ml(0.21モル)のt−ブチル3−オキソブタノエートを300mlのジクロロメタン中に溶解し、20g(0.21モル、1.0当量)の無水塩化マグネシウムを加えた。0℃で33.9ml(0.42モル、2.0当量)の乾燥ピリジンを懸濁液に加え、それを激しく撹拌した。15分後、14.3ml(0.21モル、1.0当量)の塩化アセチルを滴加し、混合物を室温で1時間撹拌した。0℃で過剰のピリジンを希塩酸(37mlの濃塩酸および100mlの水)で中和し、有機相を分離した。水相をMTBE(3×100ml)で抽出し、合一した有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、そしてMgSO4上で乾燥した。溶媒を除去して41.2g(0.206モル、98%)のt−ブチル2−アセチル−3−オキソブタノエートを淡黄色の油状物として得た。
このようにして得られた40.2g(0.20モル)のt−ブチル2−アセチル−3−オキソブタノエートをさらに精製することなく、50mlのトルエン中で107.0ml(0.44モル、2.2当量)のBSAと混合し、その混合物を室温で2日間撹拌した。溶媒を回転蒸発器で除去した後、生成物を真空蒸留(0.36ミリバール、75℃)に付して60.6g(0.176モル、88%)の所望のt−ブチル3−トリメチルシラニルオキシ−2−(1−トリメチルシラニルオキシビニル)ブタ−2−エノエートを黄色がかった油状物として得た。別の実験では、97および84%の収率で得られた。
C16H32O4Si2:MW 344.59g/モル;TLC(ヘキサン/酢酸エチル1:1):Rf=0.71。
【0058】
〔実施例2〕t−ブチル3−ヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化29】

27.9g(81.2ミリモル、2.0当量)のt−ブチル3−トリメチルシラニルオキシ−2−(1−トリメチルシラニルオキシビニル)ブタ−2−エノエート(実施例1)および7.8g(40.6ミリモル)の2−クロロ−1,4−ナフトキノン(GuptaおよびFranckのSynlett, 355〜357(1990年))を325mlの無水トルエン中に溶解し、24時間加熱還流した。次に、溶媒を回転蒸発器で除去し、250mlのTHFを褐色の油性残留物に加えた。10mlの水を加えた後、混合物を室温で1日間撹拌した。その後、混合物の温度が上昇すると約50mlのシリカゲルを加え、溶媒を除去した。シリカゲルに吸収された粗生成物をシリカゲルで満たされたフリットに充填し、溶媒としてDCMを使用して溶離した。黄色の生成物バンドを別々に集め、溶媒を除去した後に7.7g(22.8ミリモル、55%)のt−ブチル3−ヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを得た。まだ少量の不純物を含んでいたが、これらは次の合成工程で完全に除去することができた。別の実験では、48%の収率で得られた。
C20H18O5:MW 338.35g/モル;TLC (DCM):Rf=0.14。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm]=1.65 (s, 9H, −OCMe3);2.93 (s, 3H, C−1の−Me);7.20−8.20 (m, 4H, H−5, H−6, H−7, H−8);7.75 (s, 1H, H−4);10.51 (s, 1H, OH)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm]=21.6 (q, C−1のMe);28.3 (q, −OCMe3);83.0 (s, −OCMe3);113.9 (d, C−4);121.8 (s, C−2);129.8 (d, C−5, C−8);131.9 (d, C−6, C−7);132.6 (s, C−9a);139.4 (s, C−10a, C−8a);141.6 (s, C−1);145.0 (s, C−4a);161.8 (s, C−3);167.0 (s, C−2のC=O);183.3 (s, C−9, C−10)。
【0059】
〔実施例3〕t−ブチル3,8−ジヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化30】

20.1g(58.5ミリモル、2.0当量)のt−ブチル3−トリメチルシラニルオキシ−2−(1−トリメチルシラニルオキシビニル)ブタ−2−エノエートおよび5.05g(24.3ミリモル)の2−クロロ−8−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン(GilesおよびRoosのJ. Chem. Soc Perkin I,
2057〜2060(1976年))を125mlの無水トルエン中に溶解し、24時間加熱還流した。次に、溶媒を回転蒸発器で除去し、150mlのTHFを褐色の油性残留物に加えた。10mlの水を加えた後、混合物を室温で1日間撹拌した。約50mlのシリカゲルを加え、混合物から溶媒を除去した。シリカゲルに吸収された粗生成物をシリカゲルで満たされたフリットに充填し、移動相としてDCMを使用して溶離した。濃い黄色で分離しやすい生成物バンドを別々に集め、溶媒を除去した後に3.8g(10.9ミリモル、45%)の褐色のt−ブチル3,8−ジヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを単離することができた。まだ少量の不純物を含んでいたが、これらは次の合成工程で完全に除去することができた。
C20H18O6:MW 354.35g/モル;融点:207℃;TLC (DCM):Rf=0.11。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.65 (s, 9H, −OCMe3); 2.94 (s, 3H, C−1のMe); 7.28 (dd, 1H, H7); 7.59 (t, 1H, H−6); 7.73 (s, 1H, H−4); 7.74 (dd, 1H, H−5); 10.22 (s, 1H, C−3の−OH); 12.88 (s, 1H, C−8の−OH)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 21.3 (q, C−1のMe); 28.0 (q, −OCMe3); 83.2 (s, −OCMe3); 113.9 (d, C−4); 119.1 (d, C−7); 122.0 (s, C−2); 122.4 (d, C−5); 126.6 (s, C−8a); 132.6 (s, C−9a); 133.3 (d, C−6); 140.8 (s, C−10a); 141.6 (s, C−1); 145.0 (s, C−4a); 158.6 (s, C−8); 161.8 (s, C−3); 167.0 (s, C−2のC=O); 183.0 (s, C−9, C−10)。
【0060】
〔実施例4〕t−ブチル3−メトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化31】

2.88g(20.8ミリモル、2.0当量)の無水K2CO3および5.2ml(83.2ミリモル、8.0当量)の沃化メチルを70mlのアセトン中で3.5g(10.4ミリモル)のt−ブチル3−ヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートに加え、混合物を3時間加熱還流した。冷却後、アセトンを回転蒸発器で留去した。残留する混合物をDCMに取り、水で抽出した。MgSO4上で乾燥し、飽和NaCl溶液で洗浄し、そして溶媒を除去して3.49g(9.9ミリモル、95%)のメチル化生成物t−ブチル3−メトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを分析的に純粋な形態で茶色{ちゃいろ}がかった固体として得た。別の実験では、92%の収率で得られた。
C21H20O5:MW 352.38g/モル;融点:158℃;TLC(DCM):Rf=0.21。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.60 (s, 9H, −OCMe3); 2.76 (s, 3H, C−1の−Me) 4.00 (s, −OMe); 7.6−7.8 (m, 2H, H−6, H−7); 8.20−8.3 (m, 2H, H−5, H−8); 7.75 (s, 1H, H−4)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 19.2 (q, C−1のMe); 28.2 (q, −OCMe3); 56.4 (q, −OMe); 83.1 (s, −OCMe3); 107.3 (d, C−4); 126.1 (s, C−2); 126.6/127.2 (d, C−5, C−8); 132.4 (s, C−9a); 133.2/134.3 (d, C−6, C−7); 135.0 (s, C−5a, C−10a); 136.9 (s, C−1); 140.4 (s, C−4a); 159.3 (s, C−3); 166.3 (s, C−2のC=O); 183.2/183.7 (s, C−9, C−10)。
【0061】
〔実施例5〕t−ブチル3,8−ジメトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化32】

2.92g(20.8ミリモル、4.0当量)の無水K2CO3および5.26ml(84.5ミリモル、16.0当量)の沃化メチルを40mlのアセトン中で1.87g(5.28ミリモル)のt−ブチル3,8−ジヒドロキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートに加え、混合物を8時間加熱還流した。冷却後、アセトンを回転蒸発器で留去した。残留する混合物をDCMに取り、水で抽出した。飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥した後、シリカプラグを通して混合物をろ過し、溶媒を除去した。これにより1.92g(5.02ミリモル、95%)のメチル化生成物t−ブチル3,8−ジメトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを分析的に純粋な形態で黄土色の固体として得た。
C22H22O6:MW 382.41g/モル;TLC(DCM):Rf=0.25。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.59 (s, 9H, −OCMe3); 2.70 (s, 3H, C−1の−Me); 3.96 (s, 3H, C−3の−OMe); 4.00 (s, 3H, C−8の−OMe); 7.30 (d, 1H, H−7); 7.61 (s, 1H, H−4); 7.62 (t, 1H, H−6); 7.83 (d, 1H, H−5)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 18.8 (q, C−1のMe); 28.1 (q, −OCMe3); 56.3
(q, C−3の−OMe); 56.6 (q, C−8の−OMe); 83.0 (s, −OCMe3); 106.3 (d, C−4); 118.2 (d, C−7); 126.0 (s, C−2); 122.1 (d, C−5); 125.1 (s, C−8a); 132.1 (s, C−9a); 134.0 (d, C−6); 134.7 (s, C−10a); 135.5 (s, C−1); 139.3 (s, C−4a); 158.5 (s, C−8); 159.7 (s, C−3); 167.0 (s, C−2のC=O);183.4 (s, C−9, C−10)。
【0062】
〔実施例6〕t−ブチル1−ブロモメチル3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化33】

3.49g(9.9ミリモル)のt−ブチル3−メトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを370mlのガス抜きした乾燥CCl4中に溶解し、2.29g(12.9ミリモル、1.3当量)のNBSを加えた。溶液を加熱還流し、光照射(150Wのランプ、高いUV率)下、この温度で2×8時間キャッピングした。この間に、3時間毎、それぞれ72mg(0.297ミリモル、3モル%)の過酸化ジベンゾイル(それぞれ1mlのCCl4中に溶解した)をフリーラジカル開始剤として5回加えた。反応混合物を冷却した後、不溶性のスクシンイミドをろ去し、溶媒を除去した。これにより4.23g(9.8ミリモル、99%)のベンジルが臭素化されたアントラキノンt−ブチル1−ブロモメチル−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを分析的に純粋な形態で黄褐色の固体として得た。別の実験では、92%の収率で得られた。
C21H19BrO5:MW 431.28g/モル;TLC(シクロヘキサン/EA 2:1):Rf=0.45;融点:153℃。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.66 (s, 9H, −OCMe3); 3.73 (s, 3H, −OMe);
5.15 (s, 2H, −CH2Br); 7.23 (s, 1H, H−4); 7.60−8.35 (m, 4H, H−5, H−6, H−7, H−8).
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 27.5 (t, C−11); 28.2 (q, −OCMe3); 56.5 (q, −OMe); 83.3 (s, −OCMe3); 107.2 (d, C−4); 126.2 (s, C−2); 126.6 (d, C−5), 127.3 (d, C−8); 132.4 (s, C−9a); 133.6 (d, C−6); 134.5 (d, C−7); 135.1 (s, C−5a, C−8a); 136.9 (s, C−1); 140.0 (s, C−4a); 159.3 (s, C−3); 166.4 (s, C−2のC=O); 183.2/183.6 (s, C−9, C−10)。
【0063】
〔実施例7〕t−ブチル1−ブロモメチル−3,8−ジメトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化34】

1.9g(4.97ミリモル)のt−ブチル3,8−ジメトキシ−1−メチル−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを110mlのガス抜きした乾燥CCl4中に溶解し、1.15g(6.46ミリモル、1.3当量)のNBSを加えた。溶液を加熱還流し、光照射(150Wのランプ、高いUV率)下、この温度で2×8時間保持した。この間に、3時間毎、それぞれ36mg(0.15ミリモル、3モル%)の過酸化ジベンゾイル(それぞれ1mlのCCl4中に溶解した)をフリーラジカル開始剤として5回加えた。反応混合物を冷却した後、不溶性のスクシンイミドをろ去し、溶媒を除去した。反応混合物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより1.54g(3.33ミリモル、67%)のベンジルが臭素化されたアントラキノンt
−ブチル1−ブロモメチル−3,8−ジメトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを赤みがかった黄色の固体の形態で得た。
C22H21BrO6:MW 461.30g/モル;TLC(シクロヘキサン/EA 2:1):Rf=0.32;融点:164℃。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.63 (s, 9H, −OCMe3); 3.98 (s, 3H, C−3の−OMe); 4.01 (s, 3H, C−8の−OMe); 5.13 (s, 2H, −CH2Br); 7.34 (d, 1H, H−7); 7.64 (t, 1H, H−6); 7.72 (s, 1H, H−4); 7.85 (d, 1H, H−5)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 26.2 (t, C−11); 28.5 (q, −OCMe3); 56.4 (q, −OMe); 84.0 (s, −OCMe3); 107.4 (d, C−4); 118.0 (d, C−7); 125.1 (s, C−8a); 126.3 (s, C−2); 126.6 (d, C−5); 163.3 (s, C−8); 132.0 (s, C−9a); 133.1 (d, C−6); 134.7 (s, C−10a); 137.2 (s, C−1); 140.0 (s, C−4a); 159.0 (s, C−3); 165.7 (s, C−2のC=O); 183.5 (s, C−9, C−10)。
【0064】
〔実施例8〕3−メトキシ−2−(トリブチルスタンニル)ベンジルアルコールの製造:
【化35】

2.00g(14.5ミリモル)の3−メトキシベンジルアルコールを40mlの乾燥ベンゼン中に溶解した。0℃で19.91ml(31.9ミリモル、2.2当量)の1.6モルのn−BuLi溶液をゆっくりと滴加した。1当量のn−BuLiを加えた後に生成した白色の懸濁液は残りの当量の添加中に色が暗赤色に変化した。撹拌を室温でさらに2時間継続し、5.1ml(18.8ミリモル、1.3当量)の塩化トリブチルスズを0℃で加えた。混合物を室温で一晩撹拌し、40mlの飽和NH4Cl溶液を加え、混合物を70mlのEAで3回抽出した。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥した後、溶媒を除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(逆相シリカRP−18、MeCN)により精製して4.83g(11.3ミリモル、78%)の3−メトキシ−2−(トリブチルスタンニル)ベンジルアルコールを無色の油状物として得た。別の実験では、60%の収率で得られた。
C20H36O2Sn:MW 427.21g/モル;TLC(RP−18, MeCN):Rf=0.68。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.83 (t, 9H, ブチル−H−4); 1.00−1.10 (m, 6H, ブチル−H−1); 1.20−1.39 (m, 6H, ブチル−H−2); 1.40−1.61 (m, 6H, ブチル−H−3); 3.75 (s, 3H, −OMe); 4.55 (d, 2H, −CH2OH); 6.73 (d, 1H, H−4); 7.15 (d, 1H, H−6); 7.29 (t, 1H, H−5)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 12.3 (t, ブチル−C−1); 13.7 (q, ブチル−C−4); 27.5 (t, ブチル−C−3); 29.2 (t, ブチル−C−2); 56.2 (q, −OMe); 67.1 (t, −CH2OH); 112.6 (d, C−4); 119.8 (d, C−6); 126.5 (s, C−2); 130.4 (d, C−5); 149.0 (s, C−1); 170.2 (s, C−3)。
【0065】
〔実施例9〕t−ブチル1−(2’−ヒドロキシメチル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化36】

還流冷却器を取り付けたSchlenk管において、100mg(232μモル)のt−ブチル1−ブロモメチル3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを2.0mlのTHFおよび2.0mlのNMPの混合物中に溶解した。次に3.5mg(20μモル、8モル%)の沃化銅(I)、11.6mg(37μモル、16モル%)のトリフェニルアルシンおよび8.9mg(9μモル、4モル%)のPd2(dba)3を撹拌しながら加えた。2回、赤褐色の溶液を減圧下でガス抜きし、アルゴンで飽和させた。119mg(278μモル、1.2当量)の3−メトキシ−2−(トリブチルスタンニル)ベンジルアルコールを管に注入した。反応混合物を80℃の温度で20時間加熱し、その間に溶液の色は褐色から黒色にゆっくりと変化した。冷却後、15mlのH2Oを加え、混合物を3×50mlのEAで抽出した。MgSO4上で乾燥し、溶媒を除去して褐色の粘液性固体を得、それをカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EA 2:1)により精製した。これにより49.8mg(100μモル、43%)のStilleカップリング生成物t−ブチル1−(2’−ヒドロキシメチル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを黄色の固体として得た。別の実験では、17%の収率で得られた。
C29H28O7:MW 488.53g/モル;TLC(シクロヘキサン/EA 2:1):Rf=0.26;融点:173℃。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.38 (s, 9H, −OCMe3); 3.41 (s, 3H, C−3の−OMe); 4.00 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.64 (s, 2H, C−1のCH2); 4.65 (d, 2H, −CH2OH); 6.63 (d, 1H, H−5’); 7.03 (d, 1H, H−3’); 7.15 (t, 1H, H−4’); 7.60−7.75 (m, 2H, H−6, H−7); 7.76 (s, 1H, H−4); 7.95−8.05 (m, 1H, H−5); 8.10−8.20 (m, 1H, H−8)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 12.0 (t, C−11); 29.0 (q, −OCMe3); 56.0 (q, C−3の−OMe); 56.5 (q, C−6’の−OMe); 62.6 (t, C−2’のHO−CH2−); 74.8 (s, −OCMe3); 112.8 (d, C−4); 113.5 (d, C−5’); 119.6 (s, C−2); 120.1 (d, C−3’); 127.0 (d, C−4’); 127.3 (s, C−1’); 129.3 (d, C−5), 129.8 (d, C−8); 131.8 (s, C−9a); 133.9 (d, C−6); 134.5 (d, C−7); 136.4 (s, C−5a, C−8a); 140.0 (s, C−4a); 141.5 (s, C−1); 142.0 (s, C−2’); 162.4 (s, C−6’); 166.4 (s, C−2のC=O); 167.3 (s, C−3); 183.3/183.8 (s, C−9, C−10)。
【0066】
〔実施例10〕t−ブチル1−(2’−ホルミル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化37】

100mg(204μモル)のt−ブチル1−(2’−ヒドロキシメチル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを6mlのDCM中に溶解し、−78℃まで冷却した。290μl(4.0ミリモル、20当量)のDMSO(4Åモレキュラーシーブ上で乾燥した)、5分後に172μl(2.0ミリモル、10当量)の塩化オキサリルを加えた。さらに60分後、1.42ml(10.2ミリモル、50当量)のトリエチルアミン(無水)を加え、反応混合物を室温まで一晩ゆっくりと加温した。20mlのH2Oを加えた後、相を分離し、水相を3×30mlのEAで抽出した。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、MgSO4上で乾燥し、溶媒を除去した。さらに精製することなく、97mg(200μモル、98%)の遊離アルデヒドのt−ブチル1−(2’−ホルミル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを純粋な形態で鮮やかな黄色の固体として得た。
C29H26O7:MW 486.51g/モル;TLC(シクロヘキサン/EA 2:1):Rf=0.37;融点:187℃。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 1.42 (s, 9H, −OCMe3); 3.54 (s, 3H, C−3の−OMe); 4.02 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.96 (s, 2H, C−1のCH2); 6.95 (d, 1H, H−5’); 7.23 (t, 1H, H−4’); 7.43 (d, 1H, H−3’); 7.60−7.80 (m, 2H, H−6, H−7); 7.78 (s, 1H, H−4); 7.92−8.05 (m, 1H, H−5); 8.15−8.22 (m, 1H, H−8); 10.33 (s, 1H, −CHO)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3):δ[ppm] = 11.6 (t, C−11); 29.1 (q, −OCMe3); 56.0 (q, C−3の−OMe); 56.2 (q, C−6’の−OMe); 72.8 (s, −OCMe3); 112.8 (d, C−4);
119.4 (s, C−2); 120.4 (d, C−5’); 122.6 (d, C−3’); 127.4 (d, C−4’); 129.6 (s, C−1’); 129.6 (d, C−5); 129.9 (d, C−8); 131.5 (s, C−9a); 132.2 (d, C−6); 133.0 (d, C−7); 137.9 (s, C−2’); 139.1 (s, C−5a, C−8a); 145.3 (s, C−4a); 146.5 (s, C−1); 162.5 (s, C−6’); 167.0 (s, C−2のC=O); 167.2 (s, C−3); 183.5/183.8 (s, C−9, C−10); 190.4 (d, −CHO)。
【0067】
〔実施例11〕5−(t−ブチルジメチルシロキシ)ペンタ−1−インの製造:
【化38】

5.00g(59.4ミリモル)のペンタ−1−イン−5−オールを50mlの乾燥DMF中に溶解し、そして10.10g(149ミリモル、2.5当量)のイミダゾールおよび9.40g(62.4ミリモル、1.1当量)のTBS−Clを加えた。室温で12時間撹拌した後、250mlの水を加え、混合物を3×150mlのMTBEで抽出した。有機相をそれぞれ100mlの水で3回洗浄し、次にMgSO4上で乾燥した。カラムクロマトグラフィーにより精製して11.10g(53.5ミリモル、90%)の5−(t−ブチルジメチルシロキシ)ペンタ−1−インを無色の油状物として得た。
C9H22O2Si1:MW 190.36g/モル;TLC(シクロヘキサン/EA 10:1):Rf=0.38。
1H−NMR(300MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.01 (s, 6H, SiMe2); 0.85 (s, 9H, Si−CMe3); 1.88 (t, 4J = 3.5 Hz, 1H, H−1); 2.22 (dt, 4J = 3.5 Hz, 3J = 7 Hz, 2H, H−3); 3.65 (t, 3J = 6 Hz, 2H, H−5)。
13C−NMR(75MHz;CDCl3): δ[ppm] = −5.8 (q, OSiMe2); 14.8 (t, C−3); 18.3 (s, −OCMe3); 25.9 (q, −OCMe3); 31.5 (t, C−4); 61.4 (t, C−5); 83.1 (s,); 68.2 (d, C−1); 84.2 (s, C−2)。
【0068】
〔実施例12〕t−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキサ−2’’−イニル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化39】

0℃で0.8mlのn−BuLi(1.23ミリモル、1.6モル、ヘキサン中)をTHF(4ml)中における5−(t−ブチルジメチルシロキシ)ペンタ−1−イン(1.44ミリモル)の溶液に加えた。15分後、混合物を−60℃まで冷却し、350mgのClTi(Oi−Pr)3(1.31ミリモル)を加えた。90分後、6mlのTHF中における200mgのt−ブチル1−(2’−ホルミル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレート(0.4ミリモル)の溶液を注入し、撹拌をさらに30分間継続した。混合物を−20℃に加温し、さらに15時間撹拌し、最後に飽和NH4Cl溶液を加えた。水相をCH2Cl2で2回抽出し、合一した有機相をMgSO4上で乾燥した。カラムクロマトグラフィー(CHCl3/EA 95:5)により後処理して付加生成物t−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキサ−2’’−イニル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを黄色の油状物(260mg、0.38ミリモル、93%)の形態で得た。
C40H48O8Si:MW 684.89g/モル;TLC(CHCl3/EtOAc 95:5):Rf=0.36。
1H−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.01 (s, 6H, Me2Si); 0.86 (s, 9H, Me3C−Si); 1.41 (s, 9H, −OCMe3); 1.71 (q, 2H, −CH2−CH2−CH2−); 2.31 (t, 2H, TBSO−(CH2)2−CH2−); 3.38 (s, 3H, C−3の−OMe); 3.65 (t, 2H, TBSO−CH2−); 4.01 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.54 (d, 1H, C−1のCH2); 4.81 (d, 1H, C−1のCH2); 5.86 (d, 1H, −HC−OH); 6.68 (d, 1H, H−5’); 7.15 (t, 1H, H−4’); 7.43 (d, 1H, H−3’); 7.60−7.69 (m, 2H, H−6, H−7); 7.76 (s, 1H, H−4); 7.90−8.05/8.10−8.30 (m, すべての1H, H−5/H−8)。
13C−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = −5.4 (q, Me2Si); 15.4 (t, TBSO−(CH2)2−CH2−); 18.3 (s, Me3C−Si); 25.9 (q, Me3C−Si); 28.0 (q, −OCMe3); 30.5 (t, C−11); 31.6 (t, −CH2−CH2−CH2−); 55.5 (q, C−3の−OMe); 56.3 (q, C−6’の−OMe); 61.7 (t, TBSO−CH2−); 62.2 (d, CHOH); 80.4 (s, −OCMe3); 83.0 (s, −c≡c−); 86.2 (s, −c≡c−); 107.3 (d, Ph); 111.3 (d, Ph); 120.3 (d, Ph);
125.6 (s, Ph); 126.4 (d, Ph); 127.2 (d, Ph); 127.2 (d, Ph); 132.2 (s, Ph);
133.1 (d, Ph); 134.2 (d, Ph); 135.0 (s, Ph); 136.9 (s, Ph); 141.3 (s, Ph);
145.2 (s, Ph); 157.7 (s, Ph); 159.6 (s, Ph); 166.4 (s, CO2tBu); 183.5 (s, C=O); 183.8 (s, C=O)。
【0069】
〔実施例13〕t−ブチル(3−メトキシメトキシペンタ−4−イニルオキシ)ジメチルシランの製造:
【化40】

0.5gの5−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)ペンタ−1−イン−3−オール(2.33ミリモル)を15mlのDCM中に溶解し、1.22mlのiPr2EtN(7.00ミリモル)および0.53mlのクロロメチルメチルエーテル(7.00ミリモル)を25℃で加えた。15時間後、10mlの水を加えて反応を終了させ、混合物を10mlのDCMで抽出した。有機相を乾燥し、溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーにより後処理して0.45g(1.75ミリモル、75%)の生成物t−ブチル(3−メトキシメトキシペンタ−4−イニルオキシ)ジメチルシランを無色の油状物として得た。
C13H26O3Si:MW 258.43g/モル;TLC(シクロヘキサン/EtOAc, 9:1):Rf=0.49。
1H−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.03 (s, 6H, Me2Si); 0.87 (s, 9H, Me3C−Si); 1.85−2.00 (m, 2H, −CH2−CH2−CH−); 2.39 (d, 1H, −c≡cH); 3.36 (s, 3H, −OCH2OMe); 3.74 (m, 2H, TBSO−CH2−); 4.50 (m, 1H, CHOMOM); 4.59 (d, 1H, −OCH2OMe); 4.90 (d, 1H, −OCH2OMe)。
13C−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = −5.4 (q, (Me3)2Si); 18.2 (s, Me3C−Si); 25.9 (q, Me3C−Si); 38.9 (t, −CH2−CH2−CH2−); 55.6 (q, −OCH2OMe); 58.8 (t,
TBSO−CH2−); 62.4 (d, MOMOCH−); 73.5 (s, −c≡c−); 94.2 (q, −OCH2OMe)。
【0070】
〔実施例14〕t−ブチル6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシ−4’’−メトキシメトキシヘキサ−2’’−イニル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化41】

実施例12と同様にして、t−ブチル1−(2’−ホルミル−6’−メトキシベンジル)−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートをt−ブチル(3−メトキシメトキシペンタ−4−イニルオキシ)ジメチルシランと反応させた。シリカゲル上のカラムクロマトグラフィー(CHCl3/EA 95:5)により後処理して、付加生成物t−ブチル6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシ−4’’−メトキシメトキシヘキサ−2’’−イニル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボン酸を黄色の油状物(230mg、0.31ミリモル、75%)の形態で得ることができた。
C42H52O10Si:MW 744.94g/モル;TLC(CHCl3/EtOAc 95:5):Rf=0.31。
1H−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.02 (s, 6H, Me2Si); 0.87 (s, 9H, Me3C−Si); 1.41 (s, 9H, −OCMe3); 1.96 (m, 2H, −CH2−CH2−CH−); 3.34 (s, 3H, −OCH2OMe); 3.38 (s, 3H, C−3の−OMe); 3.74 (m, 2H, TBSO−CH2−); 4.01 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.58 (m, 3H, C−1のCH2, −OCH2OMe, CHOMOM); 4.81 (d, 1H, C−1のCH2); 4.92 (d, 1H, −OCH2OMe); 5.94 (d, 1H, −HC−OH); 6.66 (d, 1H, H−5’); 7.15 (t, 1H, H−4’); 7.40 (d, 1H, H−3’); 7.60−7.69 (m, 2H, H−6, H−7); 7.76 (s, 1H, H−4); 7.93−7.98/8.14−8.18 (m, すべての1H, H−5/H−8)。
13C−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = −5.4 (q, Me2Si); 18.2 (s, Me3C−Si); 25.9
(q, Me3C−Si); 28.1 (q, −OCMe3); 30.4 (t, C−11); 38.9 (t, −CH2−CH2−CH2−); 55.5, 55.6 (q, C−3の−OMeおよびq, −OCH2OMe); 56.3 (q, C−6’の−OMe); 59.0 (t, TBSO−CH2−); 62.0 (d, CHOH); 62.7 (d, MOMOCH−); 83.1 (s, −OCMe3); 84.6 (s, −c≡c−); 85.8 (s, −c≡c−); 94.2 (q, −OCH2OMe); 107.3 (d, Ph); 111.5 (d, Ph); 120.5 (d, Ph); 125.6 (s, Ph); 125.7 (s, Ph); 126.4 (d, Ph); 127.2 (d, Ph); 127.3 (d, Ph); 132.3 (s, Ph); 133.1 (d, Ph); 134.2 (d, Ph); 135.1 (s, Ph); 136.9 (s, Ph); 140.7 (s, Ph); 144.7 (s, Ph); 157.8 (s, Ph); 159.6 (s, Ph); 166.4 (s, CO2tBu); 183.1 (s, C=O); 183.5 (s, C=O)。
【0071】
〔実施例15〕t−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキシル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化42】

炭素上のパラジウム(5質量%)を40mlのEA中における0.12g(0.18ミリモル)のt−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1−ヒドロキシヘキサ−2’’−イニル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレート(実施例12)の溶液に加えた(質量比1:10の触媒/基質)。混合物をH2雰囲気下で2時間撹拌し、触媒をろ過し、溶媒を除去し、そして生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。これにより0.11g(0.16ミリモル、90%)の生成物t−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキシル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを黄色の油状物として得た。
C40H52O8Si:MW 688.92g/モル;TLC(シクロヘキサン/EtOAc, 7:3):Rf=0.48。
1H−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.00 (s, 6H, Me2Si); 0.85 (s, 9H, Me3C−Si); 1.35−1.45 (m, 4H, −CH2−CH2−CH2−CH−); 1.41 (s, 9H, −OCMe3); 1.51−1.59 (m, 2H, −CH2−CH−); 1.97−2.38 (m, 2H, TBSO−CH2−CH2−); 3.31 (s, 3H, C−3の−OMe); 3.55 (t, 2H, TBSO−CH2−); 4.00 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.44−4.84および5.45−6.00 (m, 3H, C−1のCH2, CHOH); 6.57 (d, 1H, H−5’); 7.08−7.20 (m, 2H, H−5’, H−4’); 7.62−7.68 (m, 2H, H−6, H−7); 7.75 (s, 1H, H−4); 7.92−7.98/8.13−8.19 (m, すべての1H, H−5/H−8)。
13C−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = −5.3 (q, Me2Si); 18.3 (s, Me3C−Si); 24.1 (t, −CH2−); 25.9 (q, Me3C−Si); 26.1 (t, −CH2−); 28.0 (q, −OCMe3); 30.4 (t, C−11); 32.4 (t, −CH2−); 32.8 (t, −CH2−); 55.4 (q, C−3の−OMe); 56.3 (q, C−6’の−OMe); 62.3 (t, TBSO−CH2−); 66.7 (d, CHOH); 82.8 (s, −OCMe3); 107.1 (d, Ph); 110.5 (d, Ph); 119.4 (d, Ph); 125.1 (s, Ph); 125.7 (s, Ph); 126.4 (d, Ph); 127.2 (d, Ph); 131.1 (d, Ph); 132.3 (s, Ph); 132.6 (d, Ph); 133.1 (d, Ph); 134.2 (d, Ph); 135.2 (s, Ph); 136.8 (s, Ph); 144.5 (s, Ph); 145.5 (s, Ph); 157.7 (s, Ph); 159.5 (s, Ph); 166.3 (s, CO2tBu); 183.3 (s, C=O); 183.5 (s, C=O)。
【0072】
〔実施例16〕Jones酸化によるt−ブチル1−[2’−(5’’−カルボキシペンタノイル)−6’−メトキシベンジル]−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化43】

0℃で5当量のJones試薬を4mlのアセトン中における47mg(0.07ミリモル)のt−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキシル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレート(実施例15)の溶液に5分間にわたって滴加した。混合物を最初に0℃で1時間、次に室温で3時間攪拌した。2−プロパノールを加えて過剰の酸化剤を分解した。10mlの水で希釈した後、混合物を3×10mlのEAで抽出した。有機相をNa2SO4上で乾燥し、溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィーにより精製して21mg(0.04ミリモル、52%)の生成物t−ブチル1−[2’’−(5’’−カルボキシペンタノイル)−6’−メトキシベンジル]−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを黄色がかった油状物として得た。
C34H34O9:MW 586.63g/モル;TLC(CHCl3/MeOH 95:5):Rf=0.35。
【0073】
〔実施例17〕Swern酸化によるt−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)ヘキサノイル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートの製造:
【化44】

−78℃で33mgのDMSO(0.42ミリモル)を2mlのDCM中における27mg(0.21ミリモル)の塩化オキサリルの溶液に加えた。5分後、3mlのDCMに溶解した48mg(0.07ミリモル)のt−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)−1’’−ヒドロキシヘキシル]−6−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを加えた。さらに15分後、85mg(0.84ミリモル)のNEt3を最後に加え、溶液を室温まで加温し、15時間撹拌した。10mlの飽和NH4Cl溶液を加えた後、有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥し、ろ過し、そして溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィーにより精製して34mg(0.05ミリモル、72%)の生成物t−ブチル1−{2’−[6’’−(t−ブチルジメチルシラニルオキシ)ヘキサノイル]−6’−メトキシベンジル}−3−メトキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボキシレートを黄色の油状物として得た。
C40H50O8Si:MW 686.91g/モル;TLC(CHCl3/EtOAc 95:5):Rf=0.39。
1H−NMR(250MHz;CDCl3):δ[ppm] = 0.00, 0.02 (2s, 6H, Me2Si); 0.84, 0.86 (2s, 9H, Me3C−Si); 1.38, 1.47 (2s, 9H, −OCMe3); 1.40−1.59 (m, 4H, −CH2−CH2−CH2−CH−); 1.60−1.80 (m, 2H, TBSO−CH2−CH2−); 2.44, 3.03 (2t, 2H, −CH2−CO−); 3.44, 3.64 (2s, 3H, C−3の−OMe); 3.53, 3.59 (2t, 2H, TBSO−CH2−); 4.00 (s, 3H, C−6’の−OMe); 4.71, 4.73 (m, 2H, C−1のCH2); 6.74, 6.82 (2d, 1H, H−5’); 6.94, 7.02, 7.07, 7.14 (4d, 2H, H−5’, H−4’); 7.62−7.69 (m, 2H, H−6, H−7); 7.72, 7.75 (2s, 1H, H−4); 7.94−8.00/8.12−8.19 (m, すべての1H, H−5/H−8)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、R1およびR2は互いに独立してH、(C1−C6)−アルキルまたはベンジルであり、
R3、R4およびR5は互いに独立してOH、O−(C1−C6)−アルキル、O−ベンジルまたはO−アシルであり、
R6はOH、ハロゲン、(C1−C6)−アルキル、O−(C1−C6)−アルキル、フェニル、ベンジル、O−フェニル、O−ベンジル、O−アシルであり、
X1およびX2は互いに独立してO、NH、N(C1−C6)−アルキルまたはSであり、そして
m、n、qおよびrは互いに独立して0または1である]のムンバイスタチン誘導体またはその塩を製造する方法であって、
工程(1)において、式(II)
【化2】

(式中、YはHal、OTs、OTfおよびOMsからなる群より選択される脱離基、好ましくは塩素または臭素である)の化合物を式(III)
【化3】

(式中、Xは電子供与性基、例えば[(C1−C6)−アルキル]3シリルオキシ、好ましくは[メチル]3シリルオキシであり、そしてR’は(C1−C6)−アルキルまたは[(C1−C6)−アルキル]3シリルである)の化合物と[2+4]付加環化で反応させ、次に適当な酸と反応させて式(IV)
【化4】

(式中、R’’=Hまたは(C1−C6)−アルキルである)の化合物を得;
工程(2)において、q=1およびR’’=Hである場合、フェノール性OH基を場合により当業者に知られている条件下、ハロゲン化(C1−C6)−アルキル化合物またはハロゲン化ベンジル化合物でエーテル化し、あるいはハロゲン化アシル化合物でエステル化し、次に化合物(IV)、あるいは得られるエーテル化またはアシル化された化合物(IV)をハロゲン化して式(V)
【化5】

の化合物を得;
工程(3.1)において、化合物(V)を有機金属化合物(VI)
【化6】

(式中、MはSn[(C1−C6)−アルキル]3、B(OH)2、B(OR)2、BF3、ZnHalまたはMgHalであり、そして(OR)2は[O−(C1−C6)−アルキル]2または1,2−隣接ジオール、例えばピナコール、カテコールである)と遷移金属触媒作用、好ましくはPd、NiまたはFe触媒作用により反応させて式(VII)
【化7】

の化合物を得、次に化合物(VII)を化合物(VIII)
【化8】

に酸化し;あるいは
工程(3.2)において、化合物(V)を有機金属化合物(VI’)
【化9】

(式中、MおよびR6は化合物(VI)で定義された通りであり、そしてZはO−(C1−C6)−アルキレン−O、好ましくはO−(CH2−CH2)−Oである)と遷移金属触媒作用、好ましくはPd、NiまたはFe触媒作用により反応させて式(VII’)
【化10】

の化合物を得、次に化合物(VII’)を適当な酸と反応させて加水分解して化合物(VIII)を得;あるいは
工程(3.3)において、化合物(VI)をX2R2がOHである式(V)の化合物でエステル化して式(VII’’)
【化11】

の化合物を得、次に化合物(VII’’)を遷移金属触媒作用、好ましくはPd、NiまたはFe触媒作用により式(VII’’’)
【化12】

の化合物に変換し、そして化合物(VII’’’)を塩基性または酸性条件下、好ましくは塩基性条件下で加水分解して式(VIII)の化合物に変換し、生成したベンジルアルコールをアルデヒドに酸化し、また生成した安息香酸官能基を場合によりエステル化またはアミド化し;
工程(4)において、化合物(VIII)を式(IX)
【化13】

と反応させて式(X)
【化14】

の化合物を得;
工程(5)において、化合物(X)を三重結合の単結合への水素化および[(C1−C6)−アルキル]3Si基の除去により式(XI)
【化15】

の化合物に変換し;
工程(6)において、化合物(XI)を式(XII)
【化16】

の化合物に酸化し;
工程(7)において、化合物(XI)または化合物(XII)をX1R1=OHである式(I)の化合物に酸化し;そして
工程(8)において、工程(7)で得られた化合物を場合によりX1はNH、N(C1−C6)−アルキルまたはSであり、そしてR1は(C1−C6)−アルキルまたはベンジルである式(I)の化合物またはその塩に変換する
ことからなる上記方法。
【請求項2】
式(I)の化合物は式(I−A)
【化17】

の化合物である請求項1記載の方法。
【請求項3】
化合物(I−A)において、
X1R1はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
X2R2はOHであり、
R3はOHであり、
R4はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
R5はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、
R6はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そして
mおよびnは互いに独立して0または1である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
式(IV)
【化18】

[式中、R’’=Hまたは(C1−C6)−アルキルであり、そしてR2、R4、X2、nおよびqは請求項1で定義された通りである]の化合物。
【請求項5】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてnおよびqは互いに独立して0または1である請求項4記載の式(IV)の化合物。
【請求項6】
X2R2=OHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4=OHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、n=0または1であり、そしてq=1である請求項5記載の式(IV)の化合物。
【請求項7】
式(V)
【化19】

(式中、R2、R4、R5、X2、Hal、nおよびqは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項8】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4およびR5は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、nおよびqは互いに独立して0または1であり、そしてHalは塩素、臭素または沃素である請求項7記載の式(V)の化合物。
【請求項9】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4およびR5はO(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、qは1であり、そしてHalは塩素、臭素または沃素である請求項8記載の式(V)の化合物。
【請求項10】
式(VII)
【化20】

(式中、R2、R4、R5、R6、X2、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項11】
式(VII−A)
【化21】

の化合物である請求項10記載の式(VII)の化合物。
【請求項12】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項10または11記載の式(VII)の化合物。
【請求項13】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である請求項10〜12の何れかの項記載の式(VII)の化合物。
【請求項14】
式(VII’)
【化22】

(式中、ZはO−(C1−C6)−アルキレン−Oであり、そしてR2、R4、R5、R6、X2、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項15】
式(VII’−A)
【化23】

の化合物である請求項14記載の式(VII’)の化合物。
【請求項16】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項14または15記載の式(VII’)の化合物。
【請求項17】
X2R2はOHであり、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である請求項14〜16の何れかの項記載の式(VII’)の化合物。
【請求項18】
ZはO−(CH2−CH2)−Oである請求項14〜17の何れかの項記載の式(VII’)の化合物。
【請求項19】
式(VII’’)
【化24】

(式中、Hal、R4、R5、R6、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項20】
式(VII’’−A)
【化25】

の化合物である請求項19記載の式(VII’’)の化合物。
【請求項21】
R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、Halは塩素、臭素または沃素であり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項19または20記載の式(VII’’)の化合物。
【請求項22】
R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、Halは塩素または臭素であり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である請求項19〜21の何れかの項記載の式(VII’’)の化合物。
【請求項23】
式(VII’’’)
【化26】

(式中、R4、R5、R6、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項24】
式(VII’’’−A)
【化27】

の化合物である請求項23記載の式(VII’’’)の化合物。
【請求項25】
R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項23または24に記載の式(VII’’’)の化合物。
【請求項26】
R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である請求項23〜25の何れかの項記載の式(VII’’’)の化合物。
【請求項27】
式(VIII)
【化28】

(式中、R2、R4、R5、R6、X2、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項28】
式(VIII−A)
【化29】

の化合物である請求項27記載の式(VIII)の化合物。
【請求項29】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項27または28記載の式(VIII)の化合物。
【請求項30】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6はO−(C1−C6)−アルキルであり、nは0または1であり、そしてqおよびrは1である請求項27〜29の何れかの項記載の式(VIII)の化合物。
【請求項31】
式(XI)
【化30】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、X2、m、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項32】
式(XI−A)
【化31】

の化合物である請求項31記載の式(XI)の化合物。
【請求項33】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項31または32記載の式(XI)の化合物。
【請求項34】
式(XII)
【化32】

(式中、R2、R3、R4、R5、R6、X2、m、n、qおよびrは請求項1で定義された通りである)の化合物。
【請求項35】
式(XII−A)
【化33】

の化合物である請求項34記載の式(XII)の化合物。
【請求項36】
X2R2はOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、R4、R5およびR6は互いに独立してOHまたはO−(C1−C6)−アルキルであり、そしてn、qおよびrは互いに独立して0または1である請求項34または35記載の式(XII)の化合物。

【公表番号】特表2009−534324(P2009−534324A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505737(P2009−505737)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002869
【国際公開番号】WO2007/121822
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(399050909)サノフィ−アベンティス (225)
【Fターム(参考)】