説明

メイタンシノイド(maytansinoid)抗体複合体の調製方法

本発明は、薬物と化学的に共役する細胞結合剤を調製する方法を提供する。本方法は、細胞結合剤にリンカーを共有結合させること、精製工程、薬物を細胞結合剤に複合化させること、及びそれに続く精製工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、複合体が、薬物と化学的に共役する細胞結合剤を含み、十分に高い純度及び安定性を有する複合体の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
癌の処置は、より効率良く癌細胞を標的とし、死滅させる医薬品の発展により、非常に進歩してきた。この目的を達成するために、研究者らは、腫瘍特異的又は腫瘍関連薬剤に結合する抗体に基づいた薬物を開発するため、癌細胞によって選択的に発現される細胞表面受容体及び抗原を利用してきた。これに関し、バクテリア及び植物性毒素、放射性核種、並びに特定の化学療法薬といった細胞毒性分子が、腫瘍特異的又は腫瘍関連細胞表面抗原に結合するモノクロナール抗体に化学的に結合されてきた(例、国際特許出願WO00/02587、WO02/060955、及びWO02/092127、米国特許第5,475,092号、同第6,340,701号、及び同第6,171,586号、米国特許出願公開番号2003/0004210 A1、並びにGhetie et al.,J.Immunol.Methods,112:267−277(1988)参照)。このような化合物は概して、各々、毒素、放射性核種、及び薬物「複合体」と称される。しばしばそれらは又、免疫複合体、放射性免疫複合体(radioimmunoconjugates)、及び免疫毒素とも称される。腫瘍細胞の死滅は、薬物複合体の腫瘍細胞への結合並びに薬物の細胞毒性活性の放出又は/及び活性化に基づき起こる。薬物複合体によりもたらされる選択性は、正常細胞に対する毒性を最小化し、それにより、患者において薬物の耐性を促進する。
【0003】
メイタンシノイド(maytansinoid)のようなスルフヒドリル基含有細胞毒性剤に対する抗体を複合化させる方法は、以前に記述がなされている(例、米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号、及び同第6,441,163号参照)。例えば、米国特許第5,208,020号及び同第5,416,064号は、米国特許第4,149,003号、同第4,563,304号及び米国特許出願公開番号2004/0241174 A1中で記述されているようなヘテロ二官能性試薬で、抗体がはじめに修飾された、抗体−メイタンシノイド複合体の製造方法を開示している。米国特許第5,208,020号及び同第5,416,064号は、pH7における過量のスルフヒドリル基含有細胞毒性剤での修飾抗体の複合化、次いでSephadex(登録商標)G25クロマトグラフィーカラム上での精製について更に記述している。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による抗体−薬物の精製も又、記述がなされている(例、Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Set(USA),93:8618−8623(1996)、及びChari et al.,Cancer Research,52:127−131(1992)参照)。
【0004】
抗体−薬物複合体の製造について以前に記述された方法は、それらの方法が、実施することが面倒な工程によって妨げられるか、又は最も所望されるよりも不純若しくは不安定な免疫複合反応を産生するため、複雑である。例えば、pH6.0〜6.5の間における複合体化は、純粋且つ安定な複合体を産生するのには最適ではない。更に、これらの状況下の複合化反応は、一般的に遅く、非効率的であり、過度の時間と材料の消費を要求する。
【0005】
純度及び/又は安定性といった産生物の質を妥協することなく、一以上の製造工程を改良又は除去することが望まれるであろう。これまで記述されたものよりさらなる精製の選択肢を有することは更に望ましく、それは一部の選択肢が、細胞結合剤、リンカー、及び薬物の特定の組み合わせで、他のものよりも、より効果的になるためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の観点から、実質的に高い純度及び同時により優れた安定性を有する細胞結合剤−薬物複合体組成物を調製する、改良方法を開発する技術が必要である。本発明は、このような方法を提供する。これら及び本発明の他の利点、並びに更なる本発明の特徴は、本明細書中で提供される本発明の記述から明白となるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の簡潔な要約
本発明は、薬物と化学的に共役した細胞結合剤を含む、実質的に高い純度及び安定性を有する複合体の調製方法を提供する。該方法は、(a)細胞結合剤と二官能性架橋試薬とを接触させ、細胞結合剤にリンカーを共有結合させ、それによってリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、(b)第一混合物を、接線流濾過、吸着クロマトグラフィ、吸着濾過、選択的沈殿、又はそれらの組合せに供し、それによって、精製された、リンカーが結合した細胞結合剤の第一混合物を調製すること、(c)リンカーが結合した細胞結合剤と薬物とを、pH約4〜約9の溶液中で反応させることによって、薬物を、精製された第一混合物中のリンカーが結合した細胞結合剤と複合化させて、(i)リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤、(ii)遊離薬物、及び(iii)反応副産物、を含む第二混合物を調製すること、並びに(d)第二混合物を、接線流濾過、吸着クロマトグラフィ、吸着濾過、選択的沈殿、又はそれらの組合せに供し、リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤を、第二混合物の他の成分から精製し、それによって精製された第二混合物を調製すること、を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の詳細な説明
本発明は、実質的に高い純度及び安定性を有する細胞結合剤−複合体の調整方法を提供する。このような組成物は、複合体の高い純度及び安定性のため疾患処置に用いられ得る。抗体といった細胞結合剤が、メイタンシノイドといった薬物と化学的に共役したものを含む組成物は、例えば、米国特許出願公開番号2004/0241174 A1中に記述されている。この文脈では、実質的に高い純度とは:(a)複合体種の90%を超える、好ましくは、95%を超えるものが、単量体である、及び/又は(b)複合体調製物中の遊離薬物レベルが2%未満(全薬物に対して)であることとされている。
【0009】
この観点において、本発明の方法は、(a)細胞結合剤を二官能性架橋試薬で改変し、細胞結合剤にリンカーを共有結合させ、それによってリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、(b)第一混合物を、接線流濾過、吸着クロマトグラフィ、吸着濾過、選択的沈殿、又はそれらの組合せに供し、リンカーが結合した細胞結合剤を、第一混合物の他の成分から精製し、それによって、精製された、リンカーが結合した細胞結合剤の第一混合物を調製すること、(c)リンカーが結合した細胞結合剤と薬物とを、pH約4〜約9の溶液中で反応させることによって、薬物を、精製された第一混合物中のリンカーが結合した細胞結合剤と複合化させて、(i)リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤、(ii)遊離薬物、及び(iii)反応副産物、を含む第二混合物を調製すること、並びに(d)第二混合物を、接線流濾過、吸着クロマトグラフィ、吸着濾過、選択的沈殿、又はそれらの組合せに供し、非複合体化薬物、反応物、及び副産物を除去し、かつ実質的に精製された細胞結合剤−薬物複合体を得ること、を含む。
【0010】
好ましくは、接線流濾過(TFF、クロスフロー濾過(cross flow filtration)、限外濾過及びダイアフィルトレーション(diafiltration)としても又、知られている)、及び/又は吸着クロマトグラフィー樹脂が、精製工程において利用される。しかしながら、TFFが第一の精製工程(工程b)で用いられ、(工程c)において、pH6.0〜6.5での複合体化が用いられ、且つ吸着クロマトグラフィー樹脂が、第二の精製工程(工程d)において利用された場合、吸着クロマトグラフィー樹脂は、非イオン交換樹脂であることが望ましい。他の好ましい実施形態において、TFFが、両精製工程において利用され、又は吸着クロマトグラフィー樹脂が、両精製工程において利用される。あるいは、吸着クロマトグラフィー樹脂が、第一の精製工程において利用され、TFFが、第二の精製工程において利用される。同様にTFF及び吸着クロマトグラフィー樹脂の組み合わせが、第一及び/又は第二の精製工程において利用され得る。
【0011】
ペリコン(Pellicon)型システム(Millipore,Billerica,MA)、ザルトコンカッセトシステム(Sartocon Cassette system)(Sartorius AG,Edgewood,NY)、及びセントラセット(Centrasette)型システム(Pall Corp.,East Hills,NY)を含む、任意の適したTFF系が利用され得る。
【0012】
任意の適した吸着クロマトグラフィー樹脂が利用され得る。好ましい吸着クロマトグラフィー樹脂としては、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィー(dye ligand chromatography)、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及びそれらの組み合わせ用の樹脂が挙げられる。適したヒドロキシアパタイト樹脂の例としては、セラミックヒドロキシアパタイト(CHTタイプI及びタイプII、Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)、HA Ultrogelヒドロキシアパタイト(Pall Corp.,East Hills,NY)、及びセラミックフルオロアパタイト(CFTタイプI及びタイプII,Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)が挙げられる。適したHCIC樹脂の例としては、MEP Hypercel樹脂(Pall Corp.,East Hills,NY)が挙げられる。適したHIC樹脂の例としては、ブチル‐セファロース、ヘキシル‐セファロース、フェニル‐セファロース、及びオクチルセファロース樹脂(全てGE Healthcare,Piscataway,NJ製)、並びにMacro−prep メチル及びMacro−Prep t−ブチル樹脂(Biorad Laboratories,Hercules,CA)が挙げられる。適したイオン交換樹脂の例としては、SP−セファロース、CM−セファロース、及びQ−セファロース樹脂(全てGE Healthcare,Piscataway,NJ製)、並びにUnosphere S樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)が挙げられる。適した混合モードイオン交換器の例としては、Bakerbond ABx樹脂(JT Baker,Phillipsburg NJ)が挙げられる。適したIMAC樹脂の例としては、キレーテイングセファロース樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)及びProfinity IMAC樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)が挙げられる。適した色素リガンド樹脂の例としては、ブルーセファロース樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)及びアフィゲルブルー樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)が挙げられる。適したアフィニティー樹脂の例としては、細胞結合剤が抗体であるプロテインA セファロース樹脂(例、MabSelect,GE Healthcare,Piscataway,NJ)及び細胞結合剤が適当なレクチン結合部位を持つレクチンアフィニティー樹脂、例えばLentil Lectin Sepharose 樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)が挙げられる。あるいは、細胞結合剤特異的抗体が用いられ得る。このような抗体は、例えばセファロース4 ファーストフロー樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)に固定化され得る。適した逆相樹脂の例としては、C4、C8、及びCl8樹脂(Grace Vydac,Hesperia,CA)が挙げられる。
【0013】
本発明の方法に準じ、リンカーが結合した細胞結合剤、並びに反応物及び他の副生成物を含む第一混合物が生成される。第一混合物を精製工程に供することにより、反応物及び他の副生成物からの改変された細胞結合剤の精製が行われる。これに関し、第一混合物は、接線流濾過、例えば、膜ベースの接線流濾過の工程)、吸着クロマトグラフィー、吸着濾過、若しくは選択的沈澱、又は任意の他の適した精製工程、及びそれらの組み合わせを用いて、精製され得る。第一の精製工程は、本発明に準ずる精製の前の第一混合物と比較し、精製された第一混合物(即ち、リンカーが結合した細胞結合剤濃度の上昇及び非結合の二官能性架橋試薬量の減少)をもたらす。
【0014】
リンカーが結合した細胞結合剤の精製された第一混合物を取得するための第一混合物の精製後、pH約4〜約9の溶液中、リンカーが結合した細胞結合剤と薬物とを反応させることにより、第一精製混合物中、薬物を、リンカーが結合した細胞結合剤と複合化され、その結果、(i)リンカーを介し薬物に化学的に共役した細胞結合剤、(ii)遊離薬物、及び(iii)反応副生成物を含む第二混合物が生成される。複合化反応は、pH約4〜約9で行われるものの、反応は、好ましくは、pH約6以下又はpH約6.5以上、最も好ましくは、pH約4〜約6又はpH約6.5〜約9、特にpH4〜6.5未満又は6.5を超えるpH〜pH9で、行われる。複合化工程が、pH約6.5以上で行われた場合、幾つかのスルフヒドリル基(sulhydryl)含有薬物は、ジスルフィド結合形成によって二量体となる傾向にある。反応混合物からの微量金属及び/又は酸素の除去、並びに抗酸化物質の随意の添加又はより反応性の高い脱離基を有するリンカーの使用、又は1アリコートを超える薬物の添加が、このような状況において、効果的な反応を許容するのに要求され得る。
【0015】
随意に、修飾された細胞結合剤の精製は、省略され得る。このような状況において、薬物は、架橋試薬と同時に、又はその後のある時点(例えば細胞結合剤に対する架橋試薬の添加後、1、2、3時間後又はこれよりより多くの時間後)において、添加され得る。
【0016】
本発明の方法は、細胞結合剤−薬物複合体の安定性及び回収を向上させるために、本発明の方法中で用いられる複合化工程にスクロースを添加することを随意に含み得る。望ましくは、スクロースは、約0.1%(w/v)〜約20%(w/v)(例えば、約0.1%(w/v)、1%(w/v)、5%(w/v)、10%(w/v)、15%(w/v)、又は20%(w/v))の濃度にて添加される。好ましくは、スクロースは、約1%(w/v)〜約10%(w/v)(例えば、約2%(w/v)、約4%(w/v)、約6%(w/v)、又は約8%(w/v))の濃度にて添加される。更に、複合化反応は、緩衝剤の添加も又、含み得る。当分野で公知の任意の適した緩衝剤を使用することができる。適した緩衝剤としては、例えば、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液、及びリン酸塩緩衝液が挙げられる。
【0017】
複合化工程に次いで、第二混合物は、精製工程に供される。これに関し、第二混合物は、本明細書中に記載される接線流濾過(TFF)(例えば、膜ベースの接線流濾過工程)、吸着クロマトグラフィー、吸着濾過、選択的沈澱、又は任意の他の適した精製工程、及びそれらの組み合わせを用いて、精製され得る。この第二精製工程は、本発明に準ずる精製の前の第二混合物と比較して、精製された第二混合物(即ち、リンカーを介し薬物に化学的に共役した細胞結合剤の濃度の上昇及び第二混合物の1以上の他の成分量の減少)をもたらす。
【0018】
細胞結合剤は、細胞、典型的に且つ好ましくは動物細胞(例、ヒト細胞)に結合する任意の適した薬剤であり得る。細胞結合剤は、好ましくは、ペプチド又はポリペプチドである。適した細胞結合剤としては、例えば、抗体(例、モノクロナール抗体及びその断片)、リンホカイン、ホルモン、成長因子、栄養素輸送分子(nutrient−transport molecules)(例、トランスフェリン)、及び細胞表面上の標的分子に特異的に結合する他の任意の薬剤又は分子が挙げられる。
【0019】
本明細書中で用いられる「抗体」という用語は、細胞表面上の抗原(例えば、相補性決定領域(CDR)を含む)に結合し得る、任意の免疫グロブリン、Fab、F(ab’)、dsFv、sFv、ダイアボディ(diabodies)、及びトリアボディ(triabodies)といった任意の免疫グロブリン断片、又は免疫グロブリンキメラを言う。任意の適した抗体が、細胞結合剤として用いられ得る。当業者は、適当な抗体の選択は、標的とされる細胞集団に依存することを理解するであろう。これに関し、特定の細胞集団(典型的に且つ好ましくは病気の細胞集団)において選択的に発現している細胞表面分子(即ち、抗原)のタイプ及び数が、本発明の組成物において用いられる適当な抗体の選択の決定をする。細胞表面発現プロファイルは、腫瘍細胞タイプを含む幅広い細胞タイプで知られている、又は、もし知られていないなら、慣用的な分子生物学及び組織化学的技術を用いて、決定付けられ得る。
【0020】
抗体は、ポリクロナール又はモノクロナールであり得るが、最も好ましくは、モノクロナール抗体である。本明細書中で用いられる「ポリクロナール」抗体とは、典型的には、免疫動物の血清に含まれる抗体分子の異種集団を言う。「モノクロナール」抗体とは、特定の抗原に対し特異的である抗体分子の同種集団を言う。モノクロナール抗体は、典型的には、Bリンパ球(「B細胞」)の単一クローンによって作成される。モノクロナール抗体は、標準的なハイブリドーマ技術(例、Koehler and Milstein,Eur.J.Immunol,5:511−519(1976),Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988)、及びCA.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)参照)を含む、当業者に公知の様々な技術を用いて得られ得る。手短には、モノクロナール抗体を作成するハイブリドーマ法は、典型的には、任意の適した動物、典型的に及び好ましくはマウス、に抗原(即ち、「免疫原」)を注射することを含む。該動物はその後、屠殺され、そしてその脾臓から単離されたB細胞を、ヒトミエローマ細胞と融合させる。インビトロで、無制限に増殖し、且つ高い力価の、所望の特異性を有する抗体を継続的に分泌する、ハイブリッド細胞(即ち、ハイブリドーマ)が作成される。当分野で公知の任意の適当な方法が、所望の特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定するために用いられ得る。このような方法としては、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット解析、及びラジオイムノアッセイが挙げられる。ハイブリドーマ集団は、その各々が抗原に対する単一抗体種を分泌する個々のクローンに単離するために選別される。各ハイブリドーマが、単一B細胞との融合により派生したクローンであるが故に、それが産生する全ての抗体分子は、それらの抗原結合部位を含む構造及びアイソタイプにおいて同一である。モノクロナール抗体は又、EBV−ハイブリドーマ技術(例、Haskard and Archer,J Immunol.Methods,74(2):361−67(1984)、及びRoder et al.,Methods Enzymol,121:140−67(1986)参照)、バクテリオファージベクター発現系(例、Huse et al.,Science,246:1275−81(1989)参照)、又はFab及びscFv(一本鎖可変領域)といった抗体断片を含むファージディスプレイライブラリ(例、米国特許第5,885,793号、及び同第5,969,108号、並びに国際特許出願WO92/01047及びWO99/06587参照)を含む、他の適した技術を用いて作成され得る。
【0021】
モノクロナール抗体は、任意の適した動物から単離され得、又は作成され得るが、哺乳類において作成されるのが好ましく、マウス又はヒトがより好ましく、ヒトが最も好ましい。マウス中で抗体を作成する方法は、当業者によく知られており、本明細書中で記述がされている。ヒト抗体に関しては、ポリクロナール抗体は、適当な抗原を用い、ワクチン接種又は免疫化したヒト被験者の血清から単離され得ることを当業者は理解するであろう。あるいは、ヒト抗体は、マウスといった非ヒト動物中でヒト抗体を作成する公知技術の適応によって作成され得る(例、米国特許第5,545,806号、同第5,569,825号、及び同第5,714,352号、並びに米国特許出願公開番号2002/0197266 A1参照)。
【0022】
ヒトにおける治療上の適応としては理想的な選択肢であるものの、ヒト抗体、特にヒトモノクロナール抗体は、典型的にはマウスモノクロナール抗体よりも、作成するのが困難である。しかしながら、マウスモノクロナール抗体は、ヒトに投与した場合、治療上又は診断上における抗体−薬物複合体の可能性を減じ得る、迅速な宿主抗体反応を誘発する。これらの問題をさけるために、モノクロナール抗体は、ヒト免疫系によって「異物」として認識されないことが好ましい。
【0023】
この目的達成のために、ファージディスプレイが、抗体を作成するために用いられ得る。これに関し、抗体の抗原結合可変(V)領域をコードするファージライブラリが、標準的な分子生物学及び組み換え体DNA技術(例、Sambrook et al.(eds.),Molecular Cloning,A Laboratory Manual, 3rd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(2001)参照)を用いて作成され得る。所望の特異性を有する可変領域をコードするファージが、所望の抗原に対する特異的結合のために選択され、そして選択された可変領域を含む完全なヒト抗体が、再構成される。再構成された抗体をコードする核酸配列は、モノクロナール抗体の特性を有するヒト抗体が細胞から分泌されるように、ハイブリドーマの作成に用いられたミエローマ細胞といった、適した細胞系中に導入される(例、Janeway et al.,上記参照,Huse et al.,上記参照、及び米国特許第6,265,150号参照)。あるいは、モノクロナール抗体は、特定のヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子がトランスジェニックなマウスから作成され得る。このような方法は、当分野で公知であり、例えば、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号、並びにJaneway et al.,上記参照、中に記述がされている。
【0024】
最も好ましくは、抗体は、ヒト化抗体である。本明細書中で用いられる、「ヒト化」抗体とは、抗体の抗原結合ループを形成する、マウスモノクロナール抗体の相補性決定領域(CDR)が、ヒト抗体分子のフレームワークに移植されたものをいう。マウス及びヒト抗体のフレームワークの類似性のために、このアプローチにより、抗原的にヒト抗体と全く一致しているが、CDR配列が由来するマウスモノクロナール抗体と同じ抗原に結合するモノクロナール抗体を産生されることが、当分野で一般的に受け入れられている。ヒト化抗体を作成する方法は、当分野でよく知られており、詳細に記述がされている(例えば、Janeway et al.,上記参照、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号及び同第5,693,761号、欧州特許番号0239400 B1、並びに英国特許番号2188638)。ヒト化抗体は、米国特許第5,639,641号及びPedersen et al.,J MoI Biol,235:959−973(1994)中に記述された、抗体レサーフェイシング技術(antibody resurfacing technology)を用いても又、作成され得る。本発明の組成物の複合化において採用された抗体は、最も好ましくはヒト化モノクロナール抗体であるものの、ヒトモノクロナール抗体及びマウスモノクロナール抗体も又、上記のように、本発明の範囲内である。
【0025】
少なくとも一つの抗原結合部位を有し、それにより標的細胞表面上に存在する少なくとも一つの抗原又は受容体を認識し、結合する抗体断片も又、本発明の範囲内である。この点に関して、インタクトな抗体分子のタンパク質分解的切断が、抗原を認識、及び結合する能力を保持した、様々な抗体断片を産生し得る。例えば、プロテアーゼのパパインでの抗体分子の限定消化は、典型的に、3つの断片を産生する。その内の2つは、同一であり、親抗体分子の抗原結合活性を保持しているため、Fab断片と呼ばれている。酵素ペプシンでの抗体分子の切断は、通常、2つの抗体断片を産生する。その内の1つは、抗体分子の両抗原結合アームを保持しており、従って、F(ab’)断片と称される。ジチオスレイトール又はメルカプトエチルアミンでの、F(ab’)断片の還元は、Fab’断片と呼ばれる断片を産生する。合成ペプチドを介して軽抗体鎖のV領域と結合した抗体重鎖の可変(V)領域を含む、切断型Fab断片から成る、一本鎖可変領域断片(single−chain variable region fragment(sFv))抗体断片は、慣用的な組み換えDNAテクノロジー技術(参照例、Janeway et al.,上記参照)を用いて作成され得る。同様に、ジスルフィド−安定化可変領域断片(dsFv)が、組み換えDNA技術(例、Reiter et al.,Protein Engineering,7:697−704(1994)参照)によって調製され得る。しかしながら、本発明の文脈中の抗体断片は、これらの抗体断片の典型例に限定されない。所望の細胞表面受容体又は抗原を認識し、且つ結合する任意の適した抗体断片が、採用され得る。抗体断片は、更に、例えば、Parham,J.Immunol.,131:2895−2902(1983),Spring et al.,J.Immunol.,113:470−478(1974),及びNisonoff et al.,Arch.Biochem.Biophys.,89:230−244(1960)に記述がされている。抗体−抗原結合は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウエスタンブロット、免疫沈降、及び競合阻害アッセイ(例、Janeway et al.,上記参照,及び米国特許出願公開番号2002/0197266 A1参照)といった、当分野で公知の適した任意の方法を用いて評価することができる。
【0026】
更に、抗体は、キメラ抗体又はその抗原結合断片であり得る。「キメラ」とは、抗体が、少なくとも2つの異なる種から得られた、又は由来する、少なくとも2つの免疫グロブリン、又はそれらの断片(例えば、マウス免疫グロブリン可変領域と結合したヒト免疫グロブリン定常領域といった、2つの異なる免疫グロブリン)を含んでいることを意味する。抗体は又、例えば、ラクダ抗体(例、Desmyter et al.,Nature Struct.Biol,3:752,(1996)参照)、又は例えば、新規の抗原受容体(IgNAR)(例、Greenberg et al.,Nature,374:168(1995)、及びStanfield et al.,Science,305:1110−1113(2004)参照)といったサメ抗体、といったようなドメイン抗体(dAb)又はその抗原結合断片であり得る。
【0027】
任意の適した抗体が、本発明の文脈中で用いられ得る。例えば、モノクロナール抗体J5は、急性リンパ芽球性白血病共通抗原(Common Acute Lymphoblastic Leukemia Antigen(CALLA))特異的マウスIgG2a抗体(Ritz et al.,Nature,283:583−585(1980))であり、CALLAを発現する細胞(例、急性リンパ芽球性白血病細胞)を標的とするのに用いられ得る。モノクロナール抗体MY9は、CD33抗原に特異的に結合するマウスIgG1抗体(Griffin et al.,Leukemia Res.,8:521(1984))であり、CD33を発現する細胞(例、急性骨髄性性白血病(AML)細胞)を標的とするのに用いられ得る。
【0028】
同様に、抗−B4モノクロナール抗体(B4とも称される)は、B細胞上のCD19抗原に結合するマウスIgG1抗体であり(Nadler et al.,J.Immunol.,131:244−250(1983))、CD19を発現するB細胞又は病気の細胞(例、非ホジキンリンパ腫細胞及び慢性リンパ芽球性白血病細胞)を標的とするのに用いられ得る。N901は、小細胞肺腫瘍を含む神経内分泌起源の細胞上に見られるCD56(神経細胞接着分子)抗原に結合するマウスモノクロナール抗体であり、神経内分泌起源の細胞に薬物を標的化させるのに、複合体中に用いられ得る。J5、MY9、及びB4抗体は、複合体の一部としてそれらが使用される前に、レサーフェイス又はヒト化されるのが好ましい。抗体のレサーフェシング又はヒト化については、例えば、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:969−73(1994)に記述がされている。
【0029】
更に、モノクロナール抗体C242は、CanAg抗原に結合し(例、米国特許第5,552,293号参照)、結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、及び胃癌といった、CanAgを発現する腫瘍へと複合体を標的化するのに用いられ得る。HuC242は、モノクロナール抗体C242のヒト化された形態である(例、米国特許第5,552,293号参照)。HuC242を産生するハイブリドーマは、ECACC識別番号90012601で寄託されている。HuC242は、CDR−移植法(CDR−grafting methodology)(例、米国特許第5,585,089号、同第5,693,761号、及び同第5,693,762号参照)又はレサーフェシング技術(例、米国特許第5,639,641号参照)を用いて調製することができる。HuC242は、例えば、結腸直腸癌、膵臓癌、非小細胞肺癌、及び胃癌の癌細胞といった、CanAg抗原を発現する腫瘍細胞へと複合体を標的化するのに用いられ得る。
【0030】
卵巣癌及び前立腺癌細胞を標的化するために、抗−MUCl抗体が、複合体における細胞結合剤として用いられ得る。抗−MUCl抗体としては、例えば、抗−HMFG−2(例、Taylor−Papadimitriou et al.,Int.J.Cancer,28:17−21(1981)参照)、hCTMOl(例、van Hof et al.,Cancer Res.,56:5179−5185(1996)参照)、及びDS6が挙げられる。前立腺癌細胞も又、細胞結合剤として、J591(例、Liu et al.,Cancer Res.,57:3629−3634(1997)参照)のような抗前立腺特異的膜抗原(anti−prostate−specific membrane antigen(PSMA))を用いることによって複合体を用いて、標的化され得る。更に、乳癌、前立腺癌、及び卵巣癌といった、Her2抗原を発現する癌細胞が、抗体トラスツズマブを用いることで、標的化され得る。インシュリン様成長因子受容体に結合する抗IGF−IR抗体も又、複合体中で用いられ得る。
【0031】
特に好ましい抗体は、ヒト化モノクロナール抗体であり、その例としては、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ、ビバツズマブ(bivatuzumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、及びリツキシマブ(rituximab)が挙げられる(例、米国特許第5,639,641号、及び同第5,665,357号、米国仮特許出願番号60/424,332(米国特許出願公開番号2005/0118183 A1に関連する)、国際特許出願WO02/16401,Pedersen et al.,上記参照、Roguska et al.,上記参照、Liu et al.,上記参照、Nadler et al.,上記参照,Colomer et al.,Cancer Invest.,19:49−56(2001),Heider et al.,Eur.J.Cancer,31A:2385−2391(1995),Welt et al.,J.Clin.Oncol,12:1193−1203(1994),並びにMaloney et al.,Blood,90:2188−2195(1997)参照)。最も好ましくは、抗体は、huN901ヒト化モノクロナール抗体又はhuMy9−6ヒト化モノクロナール抗体である。他の好ましい抗体としては、CNTO95、huDS6、huB4、及びhuC242が挙げられる。他のヒト化モノクロナール抗体は、当業者に公知であり、且つ本発明に関連して用いられ得る。
【0032】
細胞結合剤は、好ましくは抗体であるが、細胞結合剤は又、非抗体分子でもあり得る。適した非抗体分子としては、例えば、インターフェロン(例、α、β、又はγインターフェロン)、リンフォカイン(例、インターロイキン2(IL−2)、IL−3、IL−4、又はIL−6)、ホルモン類(例、インシュリン)、成長因子(例、EGF、TGF−α、FGF、及びVEGF)、コロニー刺激因子(例、G−CSF、M−CSF、及びGM−CSF(例、Burgess,Immunology Today,5:155−158(1984)参照)、ソマトスタチン、及びトランスフェリン(例、O’Keefe et al,J Biol.Chem.,260:932−937(1985)参照)が挙げられる。例えば、ミエローマ細胞と結合するGM−CSFが、急性骨髄性白血病細胞を標的化するために細胞結合剤として用いられ得る。更に、活性化T細胞に結合するIL−2は、移植の移植片拒絶反応を予防するため、移植片対宿主を治療及び予防するため、並びに急性T細胞白血病の処置のために、用いられ得る。上皮成長因子(EGF)は、肺癌及び頭頸部癌といった、扁平上皮癌を標的化するために用いられ得る。ソマトスタチンは、神経芽細胞腫細胞及び他の腫瘍細胞型を標的化するために用いられ得る。
【0033】
複合体は、任意の適した薬物、典型的には、細胞毒性剤を含み得る。本明細書中で用いられる「細胞毒性剤」とは、細胞死をもたらす、細胞死を誘導する、又は細胞の生存能力の減少させる任意の化合物を言う。適した細胞毒性剤としては、例えば、メイタンシノイド類及びメイタンシノイド類似体、タキソイド類、CC−1065及びCC−1065類似体、並びにドラスタチン(dolastatin)及びドラスタチン類似体が挙げられる。本発明の好ましい実施形態において、細胞毒性剤は、メイタンシノール(maytansinol)及びメイタンシノール類似体を含むメイタンシノイドである。メイタンシノイド類は、微小管形成を阻害し、哺乳類細胞に対し強い毒性を示す化合物である。適したメイタンシノール類似体の例としては、修飾された芳香環を有するもの、及び他の部位に修飾を有するものが挙げられる。このようなメイタンシノイドは、例えば、米国特許第4,256,746号、同第4,294,757号、同第4,307,016号、同第4,313,946号、同第4,315,929号、同第4,322,348号、同第4,331,598号、同第4,361,650号、同第4,362,663号、同第4,364,866号、同第4,424,219号、同第4,371,533号、同第4,450,254号、同第5,475,092号、同第5,585,499号、同第5,846,545号、及び同第6,333,410号に記述がされている。
【0034】
修飾された芳香環を有するメイタンシノール類似体の例としては、:(1)C−19−デクロロ(dechloro)(米国特許第4,256,746号)(アンサマイトシン(ansamytocin)P2のLAH還元により調製)、(2)C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル(demethyl))+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号、及び同第4,307,016号)(ストレプトマイセス若しくはアクチノマイセスを用いた脱メチル化又はLAHを用いた脱塩素化によって調製)、及び(3)C−20−デメトキシ(demethoxy)、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化によって調製)が挙げられる。
【0035】
芳香環以外の部位での修飾を有するメイタンシノール類似体の例としては、:(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(メイタンシノールとHS又はPとの反応によって調製)、(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CHOR)(米国特許第4,331,598号)、(3)C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CHOH又はCHOAc)(米国特許第4,450,254号)(ノカルジアから調製)、(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトマイセスによるメイタンシノールの変換により調製)、(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号及び同第4,315,929号)(トゥルイア ヌディフロラ(Trewia nudiflora)から単離)、(6)C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,663号及び同第4,322,348号)(ストレプトマイセスによるメイタンシノールの脱メチル化により調製)、並びに(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(メイタンシノールのチタニウム三塩化物/LAH還元による調製)が挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、複合体は、細胞毒性剤として、N2’-デアセチル−N2’−(3−メルカプト−l−オキソプロピル)−メイタンシンとしても又知られる、チオール‐含有メイタンシノイドDM1を利用する。DM1の構造は、式(I)で表される:
【0037】
【化1】

【0038】
本発明の別の好ましい実施形態において、複合体は、細胞毒性剤として、N2’−デアセチル−N2’−(4−メチル−4−メルカプト−l−オキソペンチル)−メイタンシンとして知られる、チオール−含有メイタンシノイドDM4を利用する。DM4の構造は、式(II)で表される:
【0039】
【化2】

【0040】
本発明の文脈中で、例えば、硫黄原子を有する炭素原子上にモノ又はジ−アルキル置換を有するチオール及びジスルフィド含有メイタンシノイドを含む、他のメイタンシンが用いられ得る。メイタンシノイドが、C−3の位置に(a)C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、又はC−20デスメチル官能基、及び(b)チオール官能基を有するアシル基の炭素原子が、一又は二つの置換基を有しており、当該置換基が、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、更に、置換基の一つがHであり得、アシル基がカルボニル官能基と硫黄原子との間に少なくとも3炭素原子の直鎖長を有する、ヒンダードサルフヒドリル基を有するアシル基を持つアシル化アミノ酸側鎖、を有しているものが特に好ましい。
【0041】
本発明の文脈中で用いられる更なるメイタンシンは、式(III)で表される化合物を含む:
【0042】
【化3】

【0043】
〔式中、Y’は、
(CR(CR=CR10C=C(CR(CR11=CR12(C=C)(CR−CRSZを表し、
及びRは、各々独立してCH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、又は複素環芳香族若しくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
ここでRは又、Hであり得、
A、B、Dは、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル又は環状アルケニル、単なる若しくは置換されたアリール、又は複素環芳香族、又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
、R、R、R、R、R、R、R11、及びR12は、各々独立して、H、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、又は複素環芳香族若しくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、n、o、p、q、r、s及びtの少なくとも二つが同時にゼロではないという条件で、l、m、n、o、p、q、r、s、及びtは各々独立して、ゼロ、又は任意の1〜5の整数であり、
且つZはH、SR又はCORであり、ここでRは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル又はアルケニル、又は単なる若しくは置換されたアリール又は複素環芳香族、又はヘテロシクロアルキルラジカルである〕。
【0044】
式(III)の好ましい実施形態としては、(a)RがH、Rがメチル、且つZがH、(b)R及びRがメチル且つZがH、(c)RがH、Rがメチル、且つZが−SCH、及び(d)R及びRがメチル、且つZが−SCH、である式(III)の化合物が挙げられる。
【0045】
このような更なるメイタンシンは又、式(IV−L)、(IV−D)、又は(IV−D,L)で表される化合物を含む:
【0046】
【化4】

【0047】
〔式中、Yは、(CR(CR(CRCRSZを表し、
及びRは各々独立してCH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル、又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、ここでRは又、Hであり得、
、R、R、R、R、及びRは各々独立してH、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖又は環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
1、m、及びnは各々独立して1〜5の整数であり、更に、nはゼロであり得、
ZはH、SR、又はCORであり、ここでRは1〜10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル又はアルケニル、あるいは単なる又は置換されたアリール又は複素環芳香族若しくはヘテロシクロアルキルラジカルであり、且つ
MayはC−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ、又はC−20デスメチルにおいて、側鎖を有するメイタンシノイドを表す。〕
【0048】
式(IV−L)、(IV−D)及び(IV−DL)の好ましい実施形態としては、(a)RがH、Rがメチル、R、R、R、及びRが各々H、l及びmが各々1、nが0、且つZがH、(b)R及びRがメチル、R、R、R、R8が各々H、l及びmが1、nが0、且つZがH、(c)RがH、Rがメチル、R、R、R、及びRが各々H、l及びmが各々1、nが0、且つZが−SCH、又は(d)R及びRがメチル、R、R、R、Rが各々H、l及びmが1、nが0、且つZが−SCHである式(IV−L)、(IV−D)及び(IV−D,L)の化合物が挙げられる。
【0049】
好ましくは、細胞毒性剤は式(IV−L)で表される。
【0050】
更なる好ましいメイタンシンは又、式(V)で表される化合物も含む:
【0051】
【化5】

【0052】
〔式中、Yは、(CR(CR(CRCRSZを表し、
及びRは各々独立してCH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル、又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、ここで
は又、Hであり得、
、R、R、R、R、及びRは各々独立してH、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、及びnは各々独立して1〜5の整数であり、更に、nはゼロであり得、
且つZがH、SR又はCORであり、ここで、Rが1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、あるいは単なる若しくは置換されたアリール又は複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルである〕。
【0053】
式(V)の好ましい実施形態としては、(a)RがH、Rがメチル、R、R、R、及びRが各々H;l及びmが各々1;nが0;且つZがH、(b)R及びRがメチル;R、R、R、Rが各々H、l及びmが1;nが0;且つZがH、(c)RがH、Rがメチル、R、R、R、及びRが各々H、l及びmが各々1、nが0、且つZが−SCH、又は(d)R及びRがメチル、R、R、R、Rが各々H、l及びmが1、nが0、且つZが−SCHである式(V)の化合物が挙げられる。
【0054】
なお更に好ましいメイタンシン(maytansines)としては、式(VI−L)、(VI−D)、又は(VI−D,L)で表される化合物が挙げられる:
【0055】
【化6】

【0056】
〔式中、Yは(CR(CR(CRCRSZを表し、
及びRは各々独立してCH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、且つRは又、Hであり得、
、R、R、R、R、及びRは各々独立してH、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖環状アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、及びnは各々独立して1〜5の整数であり、更に、nはゼロであり得、
がSR又はCORであり、ここで、Rは1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、あるいは単なる又は置換されたアリール又は複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、且つMayは、メイタンシノイドである〕。
【0057】
更なる好ましいメイタンシンとしては、式(VII)で表される化合物が挙げられる:
【0058】
【化7】

【0059】
〔式中、Y’は、
(CR(CR=CR10(C=C)Ar(CRDu(CR11=CR12(C=C)sBt(CRCRSZ
で表され、ここで、R及びRは各々独立してCH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖分岐鎖又はアルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、更に、RはHであり得、
A、B、及びDは各々独立して、3〜10個の炭素原子を有する環状アルキル若しくは環状アルケニル、単なる若しくは置換されたアリール、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
、R、R、R、R、R、R、R11及びR12は各々独立してH、CH、C、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換フェニル、あるいは複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルであり、
l、m、n、o、p、q、r、s及びtの少なくとも二つが同時にゼロではないという条件で、l、m、n、o、p、q、r、s、及びtは各々独立して、ゼロ、又は任意の1〜5の整数であり、且つ
はSR又は−CORであり、ここで、Rは、1〜10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3〜10個の炭素原子を有する分岐鎖、若しくは環状アルキル又はアルケニル、あるいは単なる又は置換されたアリール又は複素環芳香族又はヘテロシクロアルキルラジカルである〕。
【0060】
式(VII)の好ましい実施形態としては、RがHであり、且つRがメチルである式(VII)の化合物が挙げられる。
【0061】
メイタンシノイドに加えて、複合体中に用いられる細胞毒性剤は、タキサン又はその誘導体であり得る。タキサンは、いずれも広く癌に対する処置に用いられる、細胞毒性を有する天然産物であるパクリタキセル(Taxol(登録商標))、及び半合成誘導体であるドセタキセル(Taxotere(登録商標))、を含む化合物ファミリーである。タキサンは、チューブリンの脱重合を阻害し、細胞死をもたらす、紡錘体毒である。ドセタキセル及びパクリタキセルは、癌の処置において、有用な薬剤ではあるが、通常の細胞に対する、それらの非特異的毒性が原因で、それらの抗腫瘍活性には限界がある。更に、パクリタキセル及びドセタキセル自体といった化合物は、細胞結合剤の複合体中に用いるには、効果が不十分である。
【0062】
細胞毒性複合体の調製に用いられる好ましいタキサンは、式(VIII)のタキサンである:
【0063】
【化8】

【0064】
抗体といった細胞結合剤に対し、タキサンを複合化させる方法と共に、本発明の文脈中に用いられ得る、タキサンを合成する方法が、米国特許第5,416,064号、同第5,475,092号、同第6,340,701号、同第6,372,738号、同第6,436,931号、同第6,596,757号、同第6,706,708号、及び同第6,716,821号、並びに米国特許出願公開番号2004/0024049 A1に詳細に記述がされている。
【0065】
細胞毒性は、CC−1065又はその誘導体でも又、あり得る。CC−1065は、ストレプトマイセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、インビトロで、ドキソルビシン、メトトレキサート、及びビンクリスチンといった、通常用いられる抗癌薬に比べ、約1000倍強力である(Bhuyan et al.,Cancer Res.,42:3532−3537(1982))。CC−1065及びその類似体は、米国特許第5,585,499号、同第5,846,545号、同第6,340,701号、及び同第6,372,738号により開示されている。CC−1065の細胞毒性の力価は、アルキル化活性及びそのDNA結合又はDNA挿入活性と相関している。これらの二つの活性は、分子内の別々の部分に存在する。これに関して、アルキル化活性は、シクロプロパピロロインドール(cyclopropapyrroloindole)(CPI)サブユニット中に含まれ、且つDNA結合活性は、CC−1065の二つのピロロインドール(pyrroloindole)サブユニットに存在する。
【0066】
幾つかのCC−1065類似体が、当業者に知られており、複合体中における細胞毒性剤としても又、用いられ得る(例、Warpehoski et al.,J Med.Chem.,31:590−603(1988)参照)。CPI部分がシクロプロパベンズインドール(cyclopropabenzindole)(CBI)部分に置き換えられた一連のCC−1065類似体が開発されている(Boger et al.,J Org.Chem.,55:5823−5833(1990)、及びBoger et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett,1:115−120(1991))。これらのCC−1065類似体は、マウスでの遅発性毒性を引き起こすことなく、インビトロで、親薬物の高い効力を維持する。CC−1065のように、これらの化合物は、細胞死を引き起こす、DNAのマイナー・グルーブに共有結合するアルキル化剤である。
【0067】
CC−1065類似体の治療上の有効性は、腫瘍部位に対する標的送達を通して、インビボの分布を変化させることによって、大きく改良され得、その結果、非標的化組織に対するより低い毒性をもたらし、従って、全身へのより低い毒性をもたらす。この目的を達成するために、特に腫瘍細胞を標的とする、CC−1065の類似体及び誘導体の、細胞結合剤との複合体が作成されてきた(例、米国特許第5,475,092号、同第5,585,499号、及び同第5,846,545号参照)。これらの複合体は、典型的に、インビトロで、高い標的特異的細胞毒性を示し、且つマウスにおける、ヒト腫瘍異種移植モデルにおいて、抗腫瘍活性を示す。(例、Chari et al.,Cancer Res.,55:4079−4084(1995)参照)。
【0068】
CC−1065類似体を合成する方法は、米国特許第5,475,092号、同第5,585,499号、同第5,846,545号、同第6,534,660号、同第6,586,618号、及び同第6,756,397号、並びに米国特許出願公開番号2003/0195365 A1に詳細に記述がされている。
【0069】
メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、チューブリシン(tubulysin)及びチューブリシン類似体、デュオカルマイシン及びデュオカルマイシン類似体、ドラスタチン及びドラスタチン類似体といった薬物も又、本発明の文脈中で用いられ得る。ドキソルビシン(Doxarubicin)及びダウノルビシン化合物(例、米国特許第6,630,579号参照)も又、薬物として用いられ得る。
【0070】
薬物複合体は、インビトロの方法によって調製され得る。薬物又はプロドラッグを抗体に結合させるために、連結基が用いられる。適した連結基は、当業者によく知られており、ジスルフィド基、酸に不安定な基、光に不安定な基、ペプチダーゼに不安定な基、及びエステラーゼに不安定な基が挙げられる。好ましい連結基は、ジスルフィド基である。例えば、複合体は、抗体と薬物又はプロドラッグとの間のジスルフィド交換反応を用いて、作成され得る。薬物分子は又、血清アルブミンといった、中間担体分子を介して細胞結合剤と結合し得る。
【0071】
本発明に準じ、細胞結合剤は、二官能性架橋試薬と細胞結合剤との反応により修飾され、それにより、細胞結合剤へのリンカー分子の共有結合がもたらされる。本明細書中で用いられる「二官能性架橋試薬」は、細胞結合剤を、本明細書中で記述したような薬物に共有結合させる、任意の化学的な部分をいう。本発明の好ましい実施形態において、結合部の一部は、薬物によって提供される。この点に関して、本薬物は、薬物に細胞結合剤を結合させるために用いられるより大きなリンカー分子の一部である結合部を含む。例えば、メイタンシノイドDM1を形成するために、メイタンシンのC−3ヒドロキシル基における側鎖は、遊離スルフヒドリル基(SH)を有するように修飾される。メイタンシンのチオール化された形体は、複合体を形成するために修飾させた細胞結合剤と反応し得る。従って、最終的なリンカーは、二つの成分から組み立てられ、その一つは、架橋試薬によって提供され、もう一方は、DM1由来側鎖によって提供される。
【0072】
結合試薬が、各々薬物及び細胞結合剤の、治療上(例えば、細胞毒性)及び標的化の特徴の保持を提供する限り、任意の適した二官能性架橋試薬が、本発明と関連して用いられ得る。好ましくは、薬物及び細胞結合剤が互いに化学的に共役している(例、共有結合している)ように、リンカー分子は、薬物を細胞結合剤に化学結合(上述のような)を介し、結合させる。好ましくは、結合剤は、切断可能なリンカーである。より好ましくは、温和な条件(即ち、薬物活性が影響を受けないような細胞内の条件)の下、リンカーは切断される。適した切断可能なリンカーの例としては、ジスルフィドリンカー、酸に不安定なリンカー、光に不安定なリンカー、ペプチダーゼに不安定なリンカー、及びエステラーゼに不安定なリンカーが挙げられる。ジスルフィドを含むリンカーは、生理学的条件の下で起こり得るジスルフィド交換を通じて切断可能なリンカーである。酸に不安定なリンカーは、酸性pHで切断可能なリンカーである。例えば、エンドソーム及びリソソームといった、特定の細胞内コンパートメントは、酸性pH(pH4〜5)を有し、酸に不安定なリンカーを切断するのに適した条件を提供する。光に不安定なリンカーは、光に暴露可能な体表面及び多くの体腔において、有用である。更に、赤外線光は、組織を透過し得る。ペプチダーゼに不安定なリンカーは、細胞内又は外の特定のペプチドを切断させるのに用いられ得る(例、Trouet et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79:626−629(1982)、及びUmemoto et al.,Int.J.Cancer,43:677−684(1989)参照)。
【0073】
好ましくは、薬物は、ジスルフィド結合を介して、細胞結合剤と結合する。リンカー分子は、細胞結合剤と反応し得る反応性化学基を含む。細胞結合剤との反応に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステル及びN−スルホスクシンイミジルエステルである。更に、リンカー分子は、薬物と反応し、ジスルフィド結合を形成し得る、反応性化学基、好ましくは、ジチオピリジル基を含む。特に好ましいリンカー分子としては、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)(例、Carlsson et al.,Biochem.J.,173:723−737(1978)参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB)(例、米国特許第4,563,304号参照)、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP)(例、CAS Registry番号341498−08−6参照)、及び米国特許第6,913,748号に記述がされている、他の反応性架橋剤が挙げられ、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0074】
切断可能なリンカーが、好ましくは、本発明の方法中で用いられるものの、切断不可能なリンカーも又、上述の複合体を作成するのに用いられ得る。切断不可能なリンカーは、メイタンシノイド、タキサン、又はCC−1065類似体といった薬物を、細胞結合剤に安定に共有結合させることができる任意の化学的部分である。従って、切断不可能なリンカーは、薬物又は細胞結合剤が活性を維持した条件下で、実質上、酸誘導切断、光誘導切断、ペプチダーゼ誘導切断、エステラーゼ誘導切断、及びジスルフィド結合の切断に耐性を示す。
【0075】
薬物と細胞結合剤との間に切断不可能なリンカーを形成する、適した架橋試薬は、当業者によく知られている。切断不可能なリンカーの例としては、細胞結合剤と反応するN−スクシンイミジルエステル又はN−スルホスクシンイミジルエステル部分、及び薬物と反応するマレイミド又はハロアセチル(haloacetyl)に基づいた部分を有するリンカーが挙げられる。マレイミドに基づいた部分を含む架橋試薬としては、N−スクシンイミジル4−(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、SMCCの「長鎖(long chain)」類似体であるN−スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−l−カルボキシ−(6−アミドカプロエート)(LC−SMCC)、κ−マレイミドウンデカン酸N−スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ−マレイミド酪酸N−スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N−(α−マレイミドアセトキシ)−スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N−スクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)−ブチレート(SMPB)、及びN−(p−マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)が挙げられる。ハロアセチルに基づいた部分を含む架橋試薬としては、N−スクシンイミジル−4−(ヨードアセチル)−アミノベンゾエート(SIAB)、N−スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N−スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、及びN−スクシンイミジル3−(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)が挙げられる。
【0076】
切断不可能なリンカーを形成する硫黄原子を欠く他の架橋試薬も又、本発明の方法中で用いられ得る。このようなリンカーは、ジカルボン酸に基づく部分から誘導され得る。適したジカルボン酸に基づく部分としては、一般式(IX):
【0077】
【化9】

【0078】
〔式中、Xは、2〜20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル、アルケニル、又はアルキニル基であり、Yは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル又はシクロアルケニル基であり、Zは6〜10個の炭素原子を有する芳香族基、又はヘテロ原子がN、O、若しくはSから選択され、且つl、m、及びnが各々0若しくは1である(但し、同時にl、m、及びnの全てがゼロではない、置換又は非置換の複素環基である〕
のα,ω−ジカルボン酸が挙げられるが、これに限られない。
【0079】
本明細書中に開示した切断不可能なリンカーの多くは、米国特許出願公開番号2005/0169933 A1に対応する、米国特許出願番号10/960,602に詳細に記述がされている。
【0080】
あるいは、米国特許第6,441,163 B1号に開示されているように、薬物は最初に、細胞結合剤と反応するのに適した、反応性エステルを誘導するために修飾され得る。活性化結合部分を含むこれらのメイタンシノイドと細胞結合剤との反応は、切断可能な、又は切断不可能な細胞結合剤メイタンシノイド複合体の別の製造方法を提供する。
【0081】
メイタンシノイド、メイタンシノイドを含む細胞毒性剤、薬物複合体、及び関連する調製方法に関する更なる情報が、米国特許出願番号11/352,121及び米国特許出願公開番号2004/0235840 A1に対応する、米国特許出願番号10/849,136に記載がされている。
【0082】
以下の実施例は更に本発明を説明するものであるが、もちろんその範囲をいかなる方法によっても限定するものとして解されるべきではない。
【実施例】
【0083】
実施例1
本実施例は、TFFを用いた、ヘテロ二官能性修飾試薬により修飾された抗体の精製について立証する。
【0084】
huN901モノクロナール抗体(最終濃度8mg/ml)を、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP,5.6倍モル濃度過剰)とともに、50mM NaCl、2mM EDTA、及び5%エタノールを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中、およそ180分、20℃でインキュベートした。第一群において、反応混合物を、50mM NaCl及び2mM EDTAを含む、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)中で平衡化及び溶出した、Sephadex(登録商標) G25F樹脂のカラムを用いて精製した。第二群において、反応混合物を、Pellicon XL TFF システム(Millipore,Billerica,MA)を用いて精製し、抗体を、10,000分子量カットオフ膜(Ultracel(登録商標)再生セルロース膜、Millipore,Billerica,MA)を用いて、50mM リン酸カリウム、50mM NaCl(pH6.5)、及び2mM EDTA中にダイアフィルターした(5 容積)。両試料を、18時間、pH6.5で、50mM NaCl及び最終濃度3%のDMAを含む、リン酸カリウム緩衝液中で、DM1(結合していないリンカーに対し、1.7倍モル濃度過剰)と複合化した。
【0085】
両群において、収率を、修飾及び精製の工程の組み合わせにおいて、分光光度法(波長280nm)で決定した。リンカー/抗体比を又、343nMで8,080M−1cm−1の減衰係数を有するピリジン−2−チオンを放出させる、ジチオスレイトールでの処置によって決定した。複合化工程の薬物/抗体比を、分光光度法(波長280nm及び252nm)で決定した。更に、SPP関連低分子種の除去を、Hisep HPLCにより測定した。
【0086】
得られたデータを、表1に述べる。
【0087】
【表1】

【0088】
表1で示したように、TFFの使用は、より簡便で測定可能でありながら、非吸着クロマトグラフィー(G25)方法と少なくとも同等の質の薬物複合体産物を産生する。
【0089】
実施例2
本実施例は、吸着クロマトグラフィーを用いた、ヘテロ二官能性修飾試薬により修飾された抗体の精製について立証するものである。
【0090】
huB4抗体を、120分間、室温で、50mM NaCl、2mM EDTA、及び5%エタノールを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB,5.4倍 モル濃度過剰)で修飾した。第一群において、実施例1で述べたSephadex(登録商標)G25F樹脂を用い、反応混合物を精製した。第二群において、反応混合物を、12.5mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中で平衡化し、80mM リン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)にて溶出させたセラミック製ヒドロキシアパタイトのカラム(CHT,Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)上にロードした。
【0091】
両群において、収率及びリンカー/抗体比を、実施例1で述べたように決定した。第一群は、91%の収率及び4.2のリンカー/抗体比を有した。第二群は、89%の収率及び4.2のリンカー/抗体比を有した。
【0092】
CNTO95抗体(最終濃度10mg/ml)を、2.7%スクロース及び5%エタノールを含む、10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中、120分間、20℃にて、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ブタノエート(SPDB,4.5倍モル濃度過剰)で修飾した。第一群において、反応混合物を、Sephadex(登録商標)G25F樹脂を用い、12.5mM NaCl及び0.5mM EDTAを含む12.5mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.6)中で、精製した。第二群において、反応混合物を、10mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中で平衡化し、50mM NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で溶出したSP セファロースファーストフローカラム(GE Healthcare,Piscataway,NJ)上にロードした。
【0093】
両群において、収率及びリンカー/抗体比を、実施例1で述べたように決定した。第一群は、96%の収率及び4.0のリンカー/抗体比を示した。第二群は、97%の収率及び4.1のリンカー/抗体比を示した。
【0094】
本実施例で得られたデータは、吸着クロマトグラフィが、ヘテロ二官能性修飾試薬で修飾された抗体を精製するのに用いられ得ることを立証するものである。
【0095】
実施例3
本実施例は、6.5より高いpHにおいて、修飾抗体と薬物とを複合化させる有益な効果について立証するものである。
【0096】
第一の実験において、CNTO95抗体を、実施例2で述べたように修飾及び精製した。修飾抗体を、次いで二つの群に分割した。第一群では、20℃で、12.5mM NaCl、0.5mM EDTA、3%DMA、及びリンカーあたり1.7倍モル濃度過剰の薬物を含む、pH6.5の12.5mM リン酸カリウム中で複合化を行った。第二群では、複合化反応を、pH7.5で行った。複合化抗体を、NAP−IOカラムで精製した。
【0097】
薬物/抗体比を両群において測定した。得られたデータを表2中に述べる。
【0098】
【表2】

【0099】
表2中のデータによって示されるように、pH6.5よりも、pH7.5において、複合化がより早く進行する。
【0100】
第二の実験において、huB4ヒト化モノクロナール抗体を、(a)抗体に対し、4.9倍モル濃度過剰のSPDB、又は(b)抗体に対し、4.8倍モル濃度過剰のSPDBのいずれかを用い、修飾した。両方の場合において、反応は、5%エタノール中の50mM リン酸カリウム、50mM 塩化カリウム、及び2mM EDTA(pH6.5)中で、合計120分、室温で行った。試料(a)を、pH6.5にて、50mM リン酸カリウム、50mM 塩化ナトリウム、及び2mM EDTA中で平衡化されたSephadex(登録商標)G25F樹脂カラムにより、精製した。クロマトグラフィ緩衝液をpH7.5に調整した点を除き、試料(b)を同様に精製した。両試料を、18時間、室温で、最終濃度3%のジメチルアセトアミド(DMA)で、DM4(結合したリンカーに対し、1.7倍モル濃度過剰)と複合化させた。
【0101】
従って、試料(a)はpH6.5で複合化し、試料(b)はpH7.5で複合化した。次いで試料を、pH6.5の9.6mM リン酸カリウム及び4.2mM 塩化ナトリウム中で平衡化したSephadex(登録商標)G25F 樹脂のカラムにて精製した。両試料を、4℃で最大7ヶ月までインキュベートし、放出された遊離薬物の分析に、ある間隔で供した。得られたデータを、表3中に述べる。
【0102】
【表3】

【0103】
表3で述べたデータが示すように、遊離薬物の放出は、pH6.5で複合化した試料(a)と比べて、pH7.5で複合化した試料(b)からの方が、実質的に遅かった。従って、pH7.5で調製した薬物複合体産物は、pH6.5で調製した薬物複合体産物に比べ、遊離薬物の経時的な放出に関し、より安定であることが示された。pH7.5での複合化は又、pH6.5に比べ、より良好な薬物の取り込みを示し、それによってより少量の薬物の使用が必要となる。
【0104】
実施例4
本実施例は、pH6.0未満における、薬物と修飾抗体との複合化の有益な効果について立証するものである。
【0105】
huN901モノクロナール抗体(最終濃度8mg/ml)を、N−スクシンイミジル4−(2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SPP,5.6倍モル濃度過剰)と共に、50mM NaCl、2mM EDTA、及び5%エタノールを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中で、およそ180分間、20℃でインキュベートした。第一群において反応混合物を、50mM NaCl及び2mM EDTAを含む50mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中で平衡化及び溶出した、Sephadex(登録商標)G25F 樹脂のカラムを用い精製した。第二群において、反応混合物を、50mM NaCl及び2mM EDTAを含む50 mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中で平衡化及び溶出したSephadex(登録商標)G25F樹脂のカラムを用い精製した。両試料を、DM4(結合したリンカーに対し、1.7倍モル濃度過剰)と共に、最終濃度3%のジメチルアセトアミド(DMA)中で、室温にて、3、19、25、48、及び120時間複合化した。
【0106】
従って、試料の第一群は、50mM NaCl及び2mM EDTAを含む50mM クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中で複合化し、試料の第二群は、50mM NaCl及び2mM EDTAを含む50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)中で複合化した。試料を次いで、50mM NaClを含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)中で平衡化及び溶出されたSephadex(登録商標)G25F樹脂カラムを用いて精製した。
【0107】
両群において、リンカー/抗体比を、8,080M−1cm−1(343nM)の減衰係数を有するピリジン−2−チオンを放出させる、ジチオスレイトールでの処置により決定した。複合化工程の薬物/抗体比を、分光光度法(280nm及び252nmの波長)によって、決定した。
【0108】
第一群は、4.3のリンカー/抗体比を有した。第二群は、4.2のリンカー/抗体比を有した。
【0109】
二つの群についての経時的な薬物/抗体比を、表4中に述べる。
【0110】
【表4】

【0111】
表4で述べたデータから明らかなように、pH5.0において、薬物と修飾抗体との複合化により形成される複合体は、pH6.5の複合化で形成される複合体に比べ、複合化反応の過程を通じ、より高くかつより安定な結合薬物のレベルに達する。安定性の向上に加え、本結果は、pH6.5の複合化において同量の薬物を用いた場合よりも、pH5.0での複合化の方が、より高い薬物/抗体レベルに達することを示し、それにより、pH5.0における、薬物のより効率的な利用を示した。
【0112】
両群において、複合体単量体の量を経時的に決定した。得られたデータを表5中に述べる。
【0113】
【表5】

【0114】
表5で述べたデータから明らかなように、pH6.5での複合化により形成された複合体に比べ、pH5.0において薬物と修飾抗体との複合化により形成された複合体は、より高い複合体単量体レベルを有する。
【0115】
実施例5
本実施例は更に、pH6未満において、薬物を修飾抗体と複合化させることの利点を立証するものである。
【0116】
BIWA 4抗体を、SPP(表6で示したようなSPPの過剰モル濃度)を用い、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、50mM NaCl、2mM EDTA、及び5%エタノール中、120〜140分間、室温にて修飾を行った。修飾抗体のアリコートを、様々なpH値(pH4.6〜6.5)を有する緩衝液中で平衡化した別々のNAP 25カラムで精製した。pH4.6〜5.9の緩衝液は、35mM クエン酸ナトリウム、150mM 塩化ナトリウム、及び2mM EDTAからなった。pH6.5の緩衝液は、2mM EDTAを含むPBSであった。
【0117】
各pHでの修飾抗体を、ジメチルアセトアミド(DMA、最終濃度3%)中、DM1(リンカーの1.7倍モル濃度過剰)と、複合化した。室温で、17〜18時間のインキュベーション後、複合化した抗体試料を、PBS(pH6.5)中で平衡化したNAP 25カラムでのクロマトグラフィにより精製した。リンカー/抗体比(表6中、L/A)を、343nMで、8,080M−1cm−1の減衰係数を有するピリジン−2−チオンを放出させる、ジチオスレイトールでの処置により決定した。複合化工程での薬物/抗体比を、分光光度法(波長280nm及び252nm)により決定した。複合体単量体、高分子量種、及び低分子量種を、0.2M 塩化カリウム及び20%イソプロパノールを含む0.2M リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で平衡化、及び展開させたTSKG3000SWXLカラムを用いてSEC−HPLCにより決定した。
【0118】
この分析結果は、表6中で述べる。
【0119】
【表6】

【0120】
表6中で述べられたデータは、DM1とSPP修飾BIWA4の複合化が、pH6未満において、pH6.5における複合化と比較して効率的であったことを立証するものである。特定の最終薬物/抗体比に到達するのに必要なリンカー及び薬物、特にSPPリンカー及びDM1、の量は、より低いpHにて減少した。更により低いpHにおいて、複合体単量体、高分子量種、及び低分子量種のレベルが、より至適であり、収率が改善された。
【0121】
実施例6
本実施例は、修飾抗体を精製する工程は、任意で除去され得ることを立証するものである。薬物は、二官能性修飾試薬と同時に、又は後ほど添加され得る。
【0122】
修飾試薬添加後の薬物添加の実施例において、ヒト化モノクロナール抗体CNTO95を、二官能性修飾試薬SPDBを用い、抗体の4.6モル濃度過剰のSPDBにて、120分、20℃にて、20mg/mLの濃度で修飾を行った。修飾緩衝液は、5.3%スクロース及び5%エタノールを含む44mM リン酸緩衝液(pH7.5)であった。修飾抗体の1アリコートを、12.5mM NaClを含む12.5mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中で平衡化及び溶出したSephadex(登録商標)G25F樹脂にて精製し(標準的な4工程の方法)、その後、12.5mM NaCl及び10% DMAを含む12.5mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中、10mg/mLの修飾抗体の最終濃度で、20時間、室温にて、DM4(結合したリンカーに対し、1.7倍モル濃度過剰の薬物)と複合化させた。修飾抗体の第2のアリコートを、120分の修飾反応(3工程の方法)の終わりに、すぐに更なる精製を行わず、複合化させた。
【0123】
修飾反応混合物の、タンパク質及び緩衝液の濃度を、10mg/mLの修飾タンパク質濃度、及び5.9mM NaCl及び2.7% スクロースを含む28mM リン酸カリウム(pH7.5)の緩衝液組成となるように調整した。次いでDM4を添加し(開始SPDBに対し、1.7倍モル濃度過剰)、DMAを最終濃度10%に調整した。室温にて、20時間のインキュベーションの後、複合化抗体の両アリコートを、pH5.5にて、10mM ヒスチジン及び10%スクロース中で平衡化したSephadex(登録商標)G25F樹脂にて精製した。
【0124】
リンカー/抗体比(L/A)を、343nMにて、8,080M−1cm−1の減衰係数を有するピリジン−2−チオンを放出するジチオスレイトールを用いた処置により決定した。複合化工程の薬物/抗体(D/A)比及び収率を、分光光度法(波長280nm及び252nm)により、決定した。単量体パーセンテージを、SEC−HPLCにより分析した。遊離薬物のパーセンテージを、HisepカラムによるHPLCにより分析した。これらの分析結果を、表7中に述べる。
【0125】
【表7】

【0126】
表7で述べた結果によって立証されるように、修飾抗体の精製工程は、本発明の文脈中において除去され得る。
【0127】
実施例7
本実施例は、ヘテロ二官能性修飾試薬を用いて修飾し、次いでメイタンシノイドと複合化した抗体を精製するための改良方法について立証するものである。
【0128】
SPP(7倍モル濃度過剰)を用いて修飾し、且つ実施例1で述べたようにSephadex(登録商標)G25F樹脂により精製したhuN901抗体を、メイタンシノイドDM1(リンカーに対し1.7倍モル濃度過剰、最終濃度が3%のジメチルアセトアミド(DMA)中に溶解)と複合化した。
【0129】
第一の複合体試料を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS,pH6.5)中、Sephadex(登録商標)G25F樹脂での標準的なクロマトグラフィにより精製した。
【0130】
第二の複合体試料を、実施例1で述べたように、Pellicon XL TFF システム(Millipore,Billerica,MA)により精製した。
【0131】
第三の複合体試料を、50mM Tris(pH8.0)中で平衡化し、50mM 酢酸ナトリウム(pH4.0)で溶出したMEP Hypercell樹脂のカラムを用いて精製した。
【0132】
第四の複合体試料を、50mM リン酸ナトリウム(pH6.5)中で平衡化し、0.2M NaCl及び50mMリン酸ナトリウム(pH6.5)で溶出した、UNOsphere S樹脂のカラムを用いて精製した。
【0133】
第五の複合体試料を、50mM リン酸ナトリウム(pH6.5)中で平衡化し、0.3M NaCl及び50mM リン酸ナトリウム(pH6.5)で溶出した、CHT樹脂(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)のカラムを用いて精製した。
【0134】
第六の複合体試料を、35mM クエン酸ナトリウム、10mM 塩化ナトリウム(pH5.0)中で平衡化し、0.25M NaCl、35mM クエン酸ナトリウム(pH5.0)で溶出した、SP Sepharose樹脂のカラムを用いて精製した。
【0135】
複合体単量体を、0.2M 塩化カリウム及び20%イソプロパノールを含む、0.2M リン酸カリウム塩緩衝液(pH7.0)中で平衡化、及び展開させたTSKG3000SWXL樹脂のカラムを用いて、SEC−HPLCにより決定した。複合化抗体の収率を、複合化した修飾抗体の量で割ることによって複合化工程の収率を決定した(280nmの波長で分光光度法にて決定)。
【0136】
これらの分析結果を、表8中に述べる。
【0137】
【表8】

【0138】
表8中の結果は、本発明の全ての精製方法(グループ2〜6)が、コントロールの方法(グループ1)によって得られたものと、同等の収率であることを示すものである。本発明の各クロマトグラフ法は、複合体単量体のレベルを改善し、容易にスケールアップされ得る。
【0139】
CHT(セラミックヒドロキシアパタイト)に加え、CFT(セラミックフルオロアパタイト)も又、同様のクロマトグラフィの条件の下、用いられ得る。あるいは、所望される産物(実質的に単量体である複合体)は樹脂によって保持されないが、高分子量種は保持され、それによって所望される産物から分離されるように、CHT及びCFTの両方を、非吸着方法で使用してもよい。
【0140】
標準的な複合化用の緩衝液/溶媒組成物は、pH6.5で、3%DMA、50mM リン酸カリウム、50mM NaCl、及び2mM EDTAを含むが(実施例1で用いたように)、他の組成物が、本明細書中で述べた幾つかのクロマトグラフィ工程に、より適合し、標準的な方法に対して他の利点を提供する。例えば、複合化は、pH6.5にて、3%DMA、12.5mM リン酸カリウム、12.5mM NaCl、及び0.5mM EDTA中で行われ得る。これらの条件の下、huB4抗体に組み込まれたリンカー量に対して組み込まれたDM4量は、標準的な条件よりも、約10%高かった。更に、これらの条件は、カチオン交換及びCHT樹脂といった樹脂へのロードに、より適合する。
【0141】
本明細書中で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が、本明細書中で参考として援用されることが個別におよび具体的に示され、かつその全体が本明細書中に示されるのと同じ程度に、本明細書中に参考として援用される。
【0142】
本発明を記述する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)、用語、「ひとつの(a)」、及び「ひとつの(an)」及び「その(the)」並びに同様の指示語の使用は、本明細書中で他に示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、他に注記されない限り、オープン・エンドな用語(すなわち、「含むが、限定されない」という意味)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中で他に示されない限り、範囲内の各個々の値に対して個別に言及する略記方法としての役割を意図されているのみであり、各個々の異なる値は、あたかもそれぞれが本明細書中に列挙されるかのように、本明細書中に含まれるものである。本明細書中に記述される全ての方法は、本明細書中で他に示されるか、又は文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適切な順序において、行われうる。本明細書中に提供される任意及び全ての例、又は例示的な言語 (例えば、「といった(such as)」の使用は、本発明を単により明らかにすることを意図するものであり、他に特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。明細書中のいかなる言葉も、任意の主張されていない要素を本発明の実施に必須なものとして示すとして解釈されるべきではない。
【0143】
本発明を実施するために本発明者らが知っている最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書中に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形形態は、前記の記載を読めば、当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形形態を必要に応じて使用することを予期しており、本発明者らは本明細書中に具体的に記載されているものとは違うように本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添えた特許請求の範囲に列挙される主題の全ての改変及び均等物を含む。さらに、これら全ての可能な変形形態において、本明細書中に他に示されない限り、又は他の文脈と明らかに矛盾していない限り、先に記載した要素の任意の組み合わせが、本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞結合剤−薬物複合体の調製方法であって、該方法が、工程:
(a)細胞結合剤と二官能性架橋試薬とを接触させ、細胞結合剤にリンカーを共有結合させ、それによってリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、
(b)第一混合物を、接線流濾過、選択的沈殿、吸着濾過、又は吸着クロマトグラフィ樹脂に供し、それによって、精製されたリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、
(c)リンカーが結合した細胞結合剤と薬物とを、pH約4〜約9の溶液中で反応させることによって、薬物を、精製された第一混合物中のリンカーが結合した細胞結合剤と複合化させて、(i)リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤、(ii)遊離薬物、及び(iii)反応副産物、を含む第二混合物を調製すること、並びに
(d)第二混合物を、接線流濾過、選択的沈殿、吸着濾過、又は吸着クロマトグラフィ樹脂に供し、リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤を、第二混合物の他の成分から精製し、それによって精製された第二混合物を調製すること、
を含む、方法。
【請求項2】
吸着クロマトグラフィー樹脂が、ヒドロキシアパタイト、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(b)及び(d)において、接線流濾過が用いられる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(b)及び(d)において、吸着クロマトグラフィー樹脂が用いられる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
工程(b)において接線流濾過が用いられ、工程(c)がpH6〜6.5の間で行われ、工程(d)において用いられる吸着クロマトグラフィー樹脂がイオン交換樹脂ではない、請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
工程(b)において、吸着クロマトグラフィー樹脂が用いられ、工程(d)において、接線流濾過が用いられる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
工程(c)における溶液がpH約4〜約6である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(c)における溶液がpH約6.5〜約9である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
細胞結合剤が、抗体、インターフェロン、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン6(IL−6)、インスリン、EGF、TGF−α、FGF、G−CSF、VEGF、MCSF、GM−CSF、及びトランスフェリンから成る群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
細胞結合剤が抗体である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
抗体がモノクロナール抗体である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
抗体がヒト化モノクロナール抗体である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗体が、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ(trastuzumab)、ビバツズマブ(bivatuzumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、CNTO95、huDS6、及びリツキシマブ(rituximab)から成る群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
薬物が細胞毒性剤である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
細胞毒性剤が、メイタンシノイド類、タキサン類、及びCC1065から成る群から選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
薬物がメイタンシノイドである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
メイタンシノイドがチオール基を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
メイタンシノイドがDM1である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
メイタンシノイドがDM4である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
細胞結合剤が、ジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、チオエーテル結合、及びエステラーゼに不安定な結合から成る群から選択される化学結合を介して、化学的に薬物と共役する、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
工程(c)における溶液がスクロースを含む、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
工程(c)における溶液が更に、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液、及びリン酸塩緩衝液から成る群から選択される緩衝化剤を含む、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
細胞結合剤−薬物複合体の調製方法であって、該方法が、工程:
(a)細胞結合剤と二官能性架橋試薬とを接触させ、細胞結合剤にリンカーを共有結合させ、それによってリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、
(b)第一混合物を、接線流濾過、選択的沈殿、吸着濾過、又は吸着クロマトグラフィ樹脂に供し、それによって、精製されたリンカーが結合した細胞結合剤を含む第一混合物を調製すること、
(c)リンカーが結合した細胞結合剤と薬物とを、pH約4〜約6又はpH約6.5〜9の溶液中で反応させることによって、薬物を、精製された第一混合物中のリンカーが結合した細胞結合剤と複合化させて、(i)リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤、(ii)遊離薬物、及び(iii)反応副産物、を含む第二混合物を調製すること、並びに
(d)第二混合物を、接線流濾過、選択的沈殿、吸着濾過、又は吸着クロマトグラフィ樹脂に供し、リンカーを介し薬物と化学的に共役した細胞結合剤を、第二混合物の他の成分から精製し、それによって精製された第二混合物を調製すること、を含む方法。
【請求項24】
吸着クロマトグラフィー樹脂が、ヒドロキシアパタイト、疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードイオン交換クロマトグラフィー、金属固定化アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、色素リガンドクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
工程(b)及び(d)において、接線流濾過が用いられる、請求項23記載の方法。
【請求項26】
工程(b)及び(d)において、吸着クロマトグラフィー樹脂が用いられる、請求項23又は24記載の方法。
【請求項27】
工程(b)において、吸着クロマトグラフィー樹脂が用いられ、工程(d)において、接線流濾過が用いられる、請求項23又は24記載の方法。
【請求項28】
細胞結合剤が、抗体、インターフェロン、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン6(IL−6)、インスリン、EGF、TGF−α、FGF、G−CSF、VEGF、MCSF、GM−CSF、及びトランスフェリンから成る群から選択される、請求項23〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
細胞結合剤が抗体である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
抗体がモノクロナール抗体である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
抗体がヒト化モノクロナール抗体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
抗体が、huN901、huMy9−6、huB4、huC242、トラスツズマブ、ビバツズマブ、シブロツズマブ、CNTO95、huDS6、及びリツキシマブから成る群から選択される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
薬物が細胞毒性剤である、請求項23〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
細胞毒性剤が、メイタンシノイド類、タキサン類、及びCC1065から成る群から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
薬物がメイタンシノイドである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
メイタンシノイドがチオール基を含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
メイタンシノイドがDM1である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
メイタンシノイドがDM4である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
細胞結合剤が、ジスルフィド結合、酸に不安定な結合、光に不安定な結合、ペプチダーゼに不安定な結合、チオエーテル結合、及びエステラーゼに不安定な結合から成る群から選択される化学結合を介して、化学的に薬物と共役する、請求項23〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
工程(c)における溶液がスクロースを含む、請求項23〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
工程(c)における溶液が更に、クエン酸塩緩衝液、酢酸塩緩衝液、コハク酸塩緩衝液、及びリン酸塩緩衝液から成る群から選択される緩衝化剤を含む、請求項23〜40のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2009−506032(P2009−506032A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527970(P2008−527970)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/031653
【国際公開番号】WO2007/024536
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(502116335)イムノゲン インコーポレーティッド (8)
【Fターム(参考)】