説明

メイラードフレーバー調製物の製造方法

本発明は、プロセスフレーバー等のメイラードフレーバー調製物の製造方法で、下記式(I)
−CR(OH)−COOH (I)
のα−ヒドロキシカルボン酸、これらの酸の塩、及びこれらの組合せからなる群より選択される、α−ヒドロキシカルボン酸成分を少なくとも10重量%を含む連続液相内で、炭水化物源と窒素源との組合せを加熱することを含む方法に関する。このように得られたフレーバー調整物は、独特のフレーバー特性を有し、食料、飲料、医薬品、タバコ製品及び口腔ケア製品への使用に適していることが見い出された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスフレーバー等のメイラードフレーバー調製物の分野及び、該メイラードフレーバー調製物及びプロセスフレーバーの製造方法に関し、特に、炭水化物源と窒素源の熱誘導反応を含む新たな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食物が調理されて以来、メイラード反応は食物の外観及び味覚を改善するために重要な役割を果たしてきた。メイラード反応を制御することは、食品分野において、中心的で主要なチャレンジであった。なぜなら、特に、コーヒー及びココア豆の焙煎、パンやケーキの製造、穀類のトースティング(toasting)、肉の調理等伝統的な方法において、香気(aroma)、味覚、及び感覚特性並びに色は全てメイラード化学の影響を受けているからである。
【0003】
メイラード反応技術は、フレーバー産業においていわゆるプロセスフレーバー又は反応フレーバーの製造で使用されている。プロセスフレーバーは、調理された肉、チョコレート、コーヒー、キャラメル、ポップコーン及びパン等の熱処理された食料と同様の香気及び味覚を付与する、複雑な香気成分である。さらに、他のフレーバー成分と組み合わせて、用途に応じてフレーバーを増強及び/又は特定のフレーバーを付与することができる。
【0004】
メイラード反応によって、特に食物の味覚に重要な多くの反応産物が形成される。メイラード反応の基礎となる化学反応は非常に複雑である。1つの反応経路に関連するだけでなく、様々な反応カスケードの全ての配列(array)に関連する。メイラード反応は、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等のアミノ基と糖のケト基との反応で、揮発性及び非揮発性物質の形成を誘導する複雑な変化を誘導する反応として知られている反応である。
【0005】
例えば、イオウ含有アミノ酸と還元糖との混合物を加熱して得られる反応産物が、ロースト又は調理した肉とほぼ同様のフレーバーを有することは知られている。これらのメイラード反応産物は、食料のフレーバー物質として適切に用いることができる。
【0006】
食品技術者によるメイラード反応の理解は着実に進歩しているが、メイラード反応は制御することが困難であることは知られている。メイラード反応の比率及び形成される産物の性質は、存在する反応物質だけに依存するのではなく、反応条件にも大きく影響される。かかる条件には、pH、水分活性、酸素及び金属の存在、加熱温度と加熱時間の組合せ及び反応阻害物質(二酸化イオウ等)が含まれる。これらの要素は、処理中のメイラード反応の展開を決定し、得られるプロセスフレーバーの強度と質の両方に影響する。
【0007】
一般的に、メイラード反応は、水分活性が低いときに、フレーバー成分(flavour component)を産出するのに最も有効である。このことは、肉、パン、又は焙煎したコーヒー豆の外皮が、揮発性分子(香気)及び非揮発性分子(色及び味覚)の形状でメイラード反応産物を高濃度で含む理由の1つである。
【0008】
広い範囲の香気化合物を含むメイラードフレーバーを、できるだけ効率よく、すなわち、高収率及び/又は高い反応比率で産出するために、低い水分活性の液相を用いる方法がいくつか提案されている。
【0009】
米国特許第4,879,130号には、フレーバー物質の製造方法で、70〜95重量%の遊離アミノ酸の源(source)と、少なくとも1つの還元糖と水を含む1〜25重量%の添加剤とを調製したペースト様混合物を加熱し、練り、可塑化する方法が開示されている。抽出後に、可塑化した化合物をさらに加熱し、反応させる。乾燥、冷却後にフレーバー剤が得られる。
【0010】
EP−A−1008305には、アロマ製品の製造方法で、飽和されたC16−C18モノグリセドを、アミノ酸、ペプチド又は加水分解されたタンパク質及び還元糖の水分散液(aqueous dispersion)に添加し、混合物を加熱し、ミクロエマルジョンを得る方法が開示されている。ミクロエマルジョンを連続加熱することにより、フレーバー化合物が得られる。
【0011】
EP0571031には、モノ及びジメチル3(2H)フラノンと、システイン又は硫化水素とを反応させることを含む、風味あるフレーバー(savoury flavour)の製造方法が開示されている。この反応は、グリセロール又はプロピレングリセロール等の有機極性溶媒及び20%未満の水を含む培地内で行われる。さらに、酢酸等の食品酸(food acid)は、存在するチオールを安定させるために存在している可能性があり、それによって、重要な肉フレーバー化合物の1つが高収率で産出される。かかる文献では、酢酸は約41mmol/kgの量で添加される。
【特許文献1】米国特許第4,879,130号
【特許文献2】EP−A−1008305
【特許文献3】EP0571031
【発明の開示】
【0012】
本発明者らは、α−ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩とを少なくとも10重量%含む連続液相内で、炭水化合物源と窒素源との熱誘導反応を行うことによって、独特のフレーバー特性を有する、プロセスフレーバーを含むメイラードフレーバー調製物が得られることを見い出した。
【0013】
かかる方法で得られるメイラード反応調製物とフレーバープロセスが顕著なフレーバー特性を有し、食料、飲料、医薬品、タバコ製品及び口腔ケア製品に心地よいフレーバーを付与するのに特に有用であることを見い出した。
[発明の詳細な発明]
【0014】
本発明の第一の実施形態は、メイラードフレーバー調製物、好ましくはプロセスフレーバーの製造方法に関し、
下記式(I)
−CR(OH)−COOH (I)
[式中、R及びRは、独立に水素;又はそれぞれヒドロキシル、オキソ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル及びC−Cカルボキシルから選択される1〜8個の置換機で置換されていてもよいC−Cアルキル又はC−Cアルケニルである]
のα−ヒドロキシカルボン酸、これらの酸の塩、及びこれらの組合せからなる群より選択される、α−ヒドロキシカルボン酸成分を少なくとも10重量%を含む連続液相内で、炭水化物源と窒素源との組合せを加熱することを含む方法に関する。
【0015】
本明細書中で用いられる「メイラードフレーバー調製物(Maillard flavour preparation)」なる用語は、窒素源、好ましくはアミノ窒素と、炭水化物源、好ましくは還元糖とを含む成分(ingredient)の混合物を加熱して得られるフレーバー調製物に関する。
【0016】
上述したように、本メイラードフレーバー調製物は、プロセスフレーバーであることが特に好ましい。「プロセスフレーバー(process flavour)」又は「反応フレーバー(reaction flavour)」 なる用語は、タンパク質窒素源(protein nitrogen source)と炭水化物源(carbohydrate source)とを一緒に加熱して得られる組成物又は製品に対し交互に使用される(IOFI Guidelines for the Production and Labelling of Process Flavourings 1989)。IOFIガイドラインによると、タンパク質窒素源は、以下より選択される。
・タンパク質窒素含有食品(肉、家禽、卵、乳製品、魚、魚介類、穀類、野菜製品、果物、酵母)及びそれらの抽出物。
・上記を加水分解した製品、自己消化酵母、ペプチド、アミノ酸及び/又はその塩。
【0017】
同じガイドラインによると、炭水化物源は以下より選択される。
・炭水化物含有食品(穀類、野菜製品及び果物)及びそれらの抽出物。
・単糖、二糖、及び多糖類(糖、デキストリン、デンプン、食用ガム)
・上記を加水分解した製品。
【0018】
本発明による方法の好ましい実施形態において、処理した成分の組合せの温度は、180℃を超えない(IOFIガイドライン4.3.1)。さらに好ましくは、処理時間は、180℃で20分を超えない。低い温度では、時間は長くなる(IOFIガイドライン、4.3.2)。
【0019】
本明細書において、連続液相において用いられる「液(liquid)」なる用語は、特に適用する加熱条件下で、連続相が流体又は流動特性を呈する事実に関する。さらに、「液」なる用語は、エマルジョン及び懸濁液を包含する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態において、本方法は、αヒドロキシカルボン成分を少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも45重量%、さらに好ましくは少なくとも50重量%含む連続液相内で行われる。連続液相は、かかるα−ヒドロキシカルボン酸成分を液化するために十分な量の水を、例えば少なくとも2重量%、さらに好ましくは少なくとも5重量%含む。水の量は、連続液相の全重量の70重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは45重量%以下である。さらに連続液相は、メイラード反応が発生しやすいように、既知の溶媒、例えばグリセロール、プロピレングリコール、キシリトール及び/又はソルビトール等を含んでもよい。
【0021】
本発明によると、「窒素源(nitrogen source)」なる用語は、好ましくは、タンパク質窒素源、自己消化酵母、ペプチド、アミノ酸及び/又はこれらの塩、脱炭酸したアミノ酸、ヌクレオシド、ヌクレオチド、それらの塩及びそれらの混合物に関する。
【0022】
特に好ましい実施形態において、本窒素源は、タンパク質窒素含有食品(肉、家禽、卵、乳製品、魚、魚介類、穀類、野菜製品、果物、酵母)、それらの抽出物、及びそれらを加水分解した製品、自己消化酵母、ペプチド、アミノ酸及び/又はそれらの塩より選択されるタンパク質窒素源である。さらに好ましくは、本窒素源は、遊離アミノ酸、ペプチド、タンパク質及びそれらの混合物からなる群より選択される。窒素源を提供する組成物としては、合成アミノ酸、タンパク加水分解物、及び野菜、動物及び/又は酵母由来のタンパク質、例えば、乳タンパク質、穀類タンパク質、肉タンパク質、大豆タンパク質、及び酵母抽出物からのタンパク質を例示することができる。
【0023】
炭水化物源は、プロセスフレーバー及びメイラードフレーバー調製物の分野で従来から使用されているものであればどのようなものでもよい。好ましくは、炭水化物源は、還元糖を含む。リボース、キシロース、グルコース、フルクトース、ラムノース、ラクトース、マルトース及びスクロースを例示することができるが、これらに限定されない。好ましくは、炭水化物源は、キシロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、ラムノース、及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
好ましい実施形態において、式(I)で、R及びRは、それぞれ独立に水素;又はヒドロキシル、オキソ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル及びC−Cカルボキシルから選択される1〜8個の置換基で置換されていてもよい、C−Cアルキルである。
【0025】
特に好ましい第1の実施形態において、式(I)で、Rは、水素又はC−C3アルキル、より好ましくはC−Cアルキルであり、もっとも好ましくはメチルである。
【0026】
特に好ましい第2の実施形態において、Rは、C―C8アルキルであり、該アルキルは、1〜6個のヒドロキシ基及び/又は1〜3個のカルボキシル基及び/又は1〜3個のオキソ基で置換されている。より好ましくは、Rは、2〜6個のヒドロキシ基、及び/又は1個のカルボキシ基及び/又は1個のオキソ基で置換されている、C−Cアルキルである。さらに好ましくは、Rは、3〜5個のヒドロキシル基で置換されているC−Cアルキルである。もっとも好ましくは、Rは、CHOH−(CHOH)−である。
【0027】
上記式(I)において、Rは、好ましくは水素又はC−Cアルキル、好ましくは水素である。
【0028】
及び/又はRが、γ又はδ炭素原子にオキソ又はヒドロキシ置換基を含むC−Cアルキルである場合には、ケト又はヒドロキシ置換基及びカルボキシ酸との間に、水の存在下で可逆的な閉環が生じ、α−ヒドロキシカルボン酸の無水物を産出する。脂肪族のα−ヒドロキシカルボン酸と平衡して存在するかかるラクトンの使用も本発明に包含される。
【0029】
本発明に有利に用いられるα−ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、グルコロン酸及びカラクツロン酸を包む。したがって、特に好ましい実施形態において、α−ヒドロキシカルボン酸成分は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、グルコロン酸、カラクツロン酸、これらの酸の塩、及びこれらの混合物より選択される。より好ましくは、α−ヒドロキシカルボン酸成分は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グルクロン酸、カラクツロン酸、これらの酸の塩、及びこれらの混合物より選択される。もっとも好ましくは、α−ヒドロキシカルボン酸成分は、乳酸、乳酸塩、グルコン酸、グルコン酸塩、及びこれらの混合物からなる群より選択される。さらに好ましくは、乳酸、グルコン酸及びこれらの混合物から選択される。
【0030】
特に好ましい実施形態において、α−ヒドロキシカルボン酸成分は、乳酸である。好ましくは、連続液相は、連続液相の全重量に対し、水を2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、もっとも好ましくは5〜15重量%と、乳酸を少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、もっとも好ましくは少なくとも50重量%含む。
【0031】
他の好ましい実施形態において、α−ヒドロキシカルボン酸成分は、グルコン酸である。好ましくは、連続液相は、連続液相の全重量に対し、水を20〜70重量%、より好ましくは30〜60重量%、もっとも好ましくは40〜55重量%と、グルコン酸を少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、もっとも好ましくは少なくとも45重量%含む。
【0032】
本方法において、加熱する成分の組合せにさらに1又は複数のヌクレオチド及び/又はヌクレオシドを添加すると、特に好ましいフレーバーが付与されることを見い出した。ヌクレオシドは、グアノシン、イノシン、アデノシン、シチジン、ウリジン及びそれらの組合せからなる群より適切に選択される。好ましくは、グアノシン、イノシン、アデノシン、シチジン、及びそれらの組合せより選択される。ヌクレオチドは、好ましくは、GMP(グアノシン一リン酸)、IMP(イノシン一リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)、CMP(シチジン一リン酸)、UMP(ウリジン一リン酸)、GDP(グアノシン二リン酸)、ADP(アデノシン二リン酸)、CDP(シチジン二リン酸)、UDP(ウリジン二リン酸)、GTP(グアノシン三リン酸)、ATP(アデノシン三リン酸)、CTP(シチジン三リン酸)、UTP(ウリジン三リン酸)及びそれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、GMP、IMP、AMP、CMP、GDP、ADP、CDP、GTP、ATP、CTP及びそれら組合せから選択される。もっとも好ましくは、ヌクレオチドは、CMP、IMP、GMP及びそれらの組合せから選択される。GMP及び/又はIMPを用いると、特に好ましい結果が得られる。GMPがもっとも好ましい。
【0033】
好ましい実施形態において、1又は複数のヌクレオシド及び/又はヌクレオチドは、窒素源の重量に対し2〜100%、より好ましくは2〜95%、さらに好ましくは5〜35%含まれる。特に好ましい実施形態において、窒素源は、酵母抽出物から提供される。これらの酵母抽出物の適切な例には、アロマイルド(Aromild 登録商標;Kohjin社製)、ウマメックスI(Umamex I登録商標)及びYEPLLS(両方ともQuest, Naarden社製)が含まれる。かかる開始物質を用いると、乳製品、スナック、及び料理に使用するのに適切なフレーバーを得ることができることを見い出した。
【0034】
本方法の好ましい実施形態において、窒素源及び炭水化物源は、1:20〜20:1の範囲内の重量比で用いられる。他の好ましい実施形態において、α−ヒドロキシカルボン酸成分と、窒素源と炭水化物源との組合せとの重量比は、1:1〜20:1の範囲内であり、より好ましくは2:1〜10:1の範囲内である。
【0035】
本方法において、反応を早く進行させるために炭水化物源、窒素源及び連続液相との組合せを加熱する。得られる香気特性は、反応物の性質、加熱温度及び加熱時間に依存する。
【0036】
本方法において、炭水化物源、窒素源及び液相の組合せを、60〜180℃、より好ましくは100〜140℃で加熱することが好ましい。好ましい実施形態において、加熱は0.1〜8時間、より好ましくは0.5〜5時間行う。
【0037】
本方法の加熱時間及び加熱温度の組合せは、以下の条件を満たすように制御することが好ましい。
60<T<180、及び
t>0.2((180−T)/10)
式中、Tは、摂氏で表す温度であり、tは分で表す時間である。
【0038】
特に好ましい実施形態において、本方法は、NAアミン(登録商標)(Quest, Naarden社製)等の加水分解した乳製品と、好ましくはラクトースの炭水化物源との組合せを、好ましくはグルコン酸、乳酸から選択され、もっとも好ましくは乳酸である、α−ヒドロキシカルボン酸成分を少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%含む連続液相内で加熱することを含む。
【0039】
さらに本発明の態様は、本方法によって得ることができるフレーバー調製物に関する。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、式(II)で表す物質を少なくとも0.001重量%、好ましくは少なくとも0.01重量%含むメイラードフレーバー調製物に関する。
−CR(OH)−CO−Y (II)
式中、R及びRは、本明細書中で既に定義したものと同じ意味であり、Yは、置換されていてもよいプリン又はピリミジンラジカルである。好ましくは、プリン又はピリミジンラジカルは、ペントース単糖ユニット(pentose monosaccharide unit)、好ましくはリボース又はデオキシリボースでエステル化され、ペントース単糖ユニットは、1又は複数の一リン酸、二リン酸及び/又は三リン酸基で置換されていてもよい。もっとも好ましくは、ペントース単糖ユニットは、1又は複数の一リン酸基でエステル化される。典型的には、式(II)において、CO−Y結合は、アミド結合又はエステル結合である。さらに、アシル基と、プリン又はピリミジンラジカル上で置換されているアミノ基、若しくはプリン又はピリミジンラジカルの複素環に含まれる窒素原子とを連結するアミド結合である。又は、アシル基と、複素環式系上で置換されているペントース単糖ユニットの酸素原子とを連結するエステル結合である。
【0041】
メイラードフレーバー調製物、好ましくはプロセスフレーバーを製造する本方法は、得られる反応混合物を乾燥することも含む。乾燥は、フレーバー技術において既知の乾燥方法であればどの方法で行ってもよい。好ましい実施形態において、得られる反応混合物は、従来の噴霧乾燥に供する。さらに、液体フレーバー調製物を望む場合には、本方法は、反応混合物を、例えばペーストに濃縮することを含む。
【0042】
本発明の別の態様は、上記のメイラードフレーバー調製物を含むフレーバー成分に関する。好ましい実施形態において、フレーバー成分は、かかるフレーバー調製物を、フレーバー調製物と、含まれるフレーバー成分の乾燥重量に対し1〜50重量%、好ましくは20〜30重量%含む。
【0043】
さらに本発明の別の態様は、本メイラードフレーバー調製物を0.0001〜3重量%、より好ましくは0.01〜3重量%を含む、食料、飲料、医薬品、タバコ製品、及び口腔ケア製品からなる群より選択される製品に関する。本発明の食料としては、ヨーグルト、アイスクリーム、デザート、菓子類、パン製品、スナック、調味料、ソース、ブイヨン(stock)、スープ、及びドレッシングを例示することができる。本発明の利点は、飲料、歯磨き粉、うがい薬等の口腔ケア製品、錠剤、エリキシル剤等の医薬品、喫煙及び非喫煙用を含む全てのタバコ製品を含むタバコ製品でも実現することができる。タバコ様製品は、喫煙及び非喫煙製品のいずれでもよい。タバコ代用品における味覚向上物質の使用も、本発明に含まれる。
【0044】
本発明の別の態様は、食料、飲料、医薬品、タバコ製品及び口腔ケア製品からなる群より選択される製品にフレーバーを付与する方法に関する。かかる方法は、製品に、メイラードフレーバー調製物、好ましくはプロセスフレーバーを0.0001〜3重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%添加することを含む。
[実施例]
【実施例1】
【0045】
2.7gのUmamex I (登録商標)と0.3gのブドウ糖との混合物を9gの乳酸(90%乳酸、10%水)に溶解した。リアクタを閉鎖し、混合物を120℃で1時間反応させた。冷却後、10mlの水を添加し、pHを6に調整した。得られたプロセスフレーバー10gを30gのマルトデキストリンで噴霧乾燥した。
【実施例2】
【0046】
2.4gのAromild(登録商標)と0.6gのブドウ糖との混合物を9gの乳酸(90%乳酸、10%水)に溶解した。リアクタを閉鎖し、混合物を120℃で4時間反応させた。冷却後、10mlの水を添加し、pHを6に調整した。得られたプロセスフレーバー10gを30gのマルトデキストリンで噴霧乾燥した。
【実施例3】
【0047】
22.5gのNZアミンEKCカゼイン加水分解産物粉と2.5gのブドウ糖との混合物を150gのグルコン酸(50%グルコン酸、50%水)に溶解した。リアクタを閉鎖し、混合物を120℃で4時間反応させた。
冷却後、反応させた混合物35gに水を90ml添加し、NaOH(50%溶液)を用いてpHを6に調整した。40gのマルトデキストリン及び25gの塩を添加し、混合物を噴霧乾燥した。
【実施例4】
【0048】
表1の成分を乾燥後混合して3種類の異なるトマトスープ粉組成物を調製した。
各組成物それぞれ10グラムを、100mlの湯に混合してトマトスープを得た。異なるスープを味見し、官能パネル(sensory panel)により評価した。Umamex Iプロセスフレーバーを含む製品Cは、製品B(50%減塩)と比較すると明らかに好感を得た。製品Cは含有塩分が少ないにも関わらず、検知された塩分は、製品Aと同程度であった。さらに製品Cの味覚は、「味が濃い(more taste)」、「よりインパクトがある(more impact)」、「旨みが強い(more umami)」、「コクがある(more kokumi)」、「味が持続する(long lasting)」及び「食欲をそそる(salivating)」と評価された。
【表1】

【実施例5】
【0049】
3種類の溶液を調製した。
A.0.5 %のNaCl
B.0.3 % のUmamex Iプロセスフレーバー(実施例1にて調製)
C.0.5 %のNaCl及び0.3 %のUmamex I プロセスフレーバー(実施例1にて調製)
水溶液を官能パネルにより評価した。
溶液Aは、「塩気が強い(salty)」と評価された。溶液Bは、「旨みが弱い(weakly umami)」、「肉汁のような風味(brothy)」、「やや塩気がある(slightly salty)」、「食欲をそそる(salivating)」と評価された。
溶液Cは: 「インパクトが強い(high impact)」、「ブイヨン(bouillon)」、 「肉のような味(meaty)」、「塩気が強い(salty)」、「旨みがある(umami)」、「食欲をそそる(salivating)」、「味が持続する(long lasting)」と評価された。
【実施例6】
【0050】
3種類の水溶液を調製した。
A.0.33 %のNaCl及び0.03%のグルタミン酸ナトリウム
B.0.2 %の噴霧乾燥した実施例3のプロセスフレーバー
C.0.33 %のNaCl及び0.03%のグルタミン酸ナトリウム及び 0.2 %噴霧乾燥した実施例3のプロセスフレーバー
溶液を官能パネルにより評価した。
溶液Aは、「塩気が強い(salty)」、「旨みがある(umani)」と評価された。
溶液Bは、「旨みが弱い(weakly umami)」、「肉汁のような風味(brothy)」、「やや塩気がある(slightly salty)」、「発酵した風味(yeasty)」、「苦い(bitter)」と評価された。
溶液Cは、「インパクトが強い(high impact)」、「辛い(bite)」、「古いチーズのように苦い(old cheese-like bitter)」、「塩気が強い(salty)」、「旨みがある(umami)」と評価された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイラードフレーバー調製物の製造方法であって、
下記式(I)
−CR(OH)−COOH (I)
[式中、R及びRは、独立に水素;又は、それぞれヒドロキシル、オキソ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル及びC−Cカルボキシルから選択される1〜8個の置換基で置換されていてもよいC−Cアルキル又はC−Cアルケニルである]
のα−ヒドロキシカルボン酸、これらの酸の塩及びこれらの組合せからなる群より選択される、α−ヒドロキシカルボン酸成分を少なくとも10重量%含む連続液相内で、炭水化物源と窒素源との組合せを加熱することを含む方法。
【請求項2】
メイラードフレーバー調製物が、プロセスフレーバーであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
連続液相が、α−ヒドロキシカルボン酸を少なくとも30重量%含むことを特徴とする、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
炭水化物源と窒素源との組合せが、さらに、グアノシン、イノシン、アデノシン、シチジン、ウリジンからなる群より選択される1又は複数のヌクレオシド、及び/又はGMP、IMP、AMP、CMP、UMP、GDP、ADP、CDP、GTP、ATP及びCTPからなる群より選択される1又は複数のヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の方法。
【請求項5】
が、C−Cアルキルであり、該アルキルは、1〜6個のヒドロキシ基及び/又は1〜3個のカルボキシ基で置換されていてもよく;Rが水素であることを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載の方法。
【請求項6】
が、C−Cアルキル、好ましくはメチルであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
が、3〜5個のヒドロキシ基で置換されているC−Cアルキルであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項8】
が、−CHOH−(CHOH)−であることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも100℃の温度まで少なくとも1分間加熱することを含むことを特徴とする、請求項1〜8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
窒素源と炭水化物源が、1:20〜20:1の範囲内の重量比で用いられることを特徴とする、請求項1〜9いずれかに記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜10いずれかに記載の方法によって得ることのできるメイラード反応調製物。
【請求項12】
以下の式(II)
−CR−(OH)−CO−Y (II)
[式中、R及びRは、請求項1における定義と同一であり、Yは、置換されていてもよいプリン又はピリミジンラジカルであることを特徴とする、メイラードフレーバー調製物。
【請求項13】
請求項11又は12記載のメイラードフレーバー調製物を0.0001〜3重量%含む、食料、飲料、医薬品、タバコ製品、及び口腔ケア製品からなる群から選択される製品。

【公表番号】特表2007−532712(P2007−532712A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507256(P2007−507256)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000258
【国際公開番号】WO2005/096844
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(391020296)クエスト・インターナショナル・ビー・ブイ (7)
【氏名又は名称原語表記】QUEST INTERNATIONAL BESLOTEN VENNOOTSHAP
【出願人】(506330612)クエストインターナショナル サービシーズ ビー.ブイ. (5)
【Fターム(参考)】