説明

メカニカル過大圧力保護スイッチ

【課題】電源や制御装置を必要とせず、外圧を利用して、外圧を受ける機器を過大圧力から保護するメカニカル過大圧力保護スイッチを提供する。
【解決手段】本体内2に設けられ、一端部に流体が流入する流入口部3と流入した流体が流出する流出口部4とを有する小径孔部5a及び他端部に流体に連通する開口部5b1を有する大径孔部5bからなる段付孔5と、この段付孔5に摺動可能に挿入され、小径孔部5aに設けられた流入口部3と流出口部4の間に形成された流路を開閉する小径部6a及び大径孔部5bの開口部5b1からの流体の圧力を受ける大径部6bからなる段付プランジャ6と、段付プランジャ6の小径部6aが流入口部3と流出口部4との間を開放する方向に、開口部5b1からの流体の圧力に抗して段付プランジャ6を付勢するバネ7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はメカニカル過大圧力保護スイッチに係り、特に、所定の外圧を受けることにより、流路を遮断し外圧を受ける機器を過大圧力から保護をするものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧が設定以上の圧力に上昇しないようにする制御弁として、リリーフ弁が使用されている。従来のリリーフ弁としては、例えば、環状の弁座と接触し、弁座により囲まれた弁ボートを閉鎖するように配備されている閉鎖部材を固定した円筒状心棒と、閉鎖部材を弁座と接触させるように付勢するバネを備え、心棒を回してハウジングの外からバネの圧力調整をしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の遮断弁は、筒状の弁箱の内部にシリンダと弁座とを設け、シリンダ内に弁体を挿入すると共に、シリンダにパイロット弁を設け、受圧板がバネで設定される流速圧以上を受けると、後退してパイロット弁を閉じる。そして、シリンダの内径が弁体の外径より大きいため、弁体の上下流側両面の受圧は下流側が上流側より高くなり、その差圧によって弁体は上流側に動いて弁座に接して、管路を遮断している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、従来の遮断弁は、一次ポートと二次ポートを連通する通路に設けられた遮断弁部と、遮断弁部にパイロット圧を導くパイロット通路に介在されて設けられ、パイロット圧を操作して、遮断弁部を開閉駆動操作する操作弁部と、通路に設けられた差圧発生弁部とを備えており、操作弁部は電磁弁によって駆動している(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】実公昭45−27990号公報(第2〜3頁、図)
【特許文献2】特開平11−287342号公報(段落0026〜0035、図1、2)
【特許文献3】特許第3788975号公報(段落0023〜0052、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された従来のリリーフ弁は、移動式クレーン等の油圧回路に使用されており、油圧が設定圧以下の時にはバネで押付けられている閉鎖部材により、弁ボートを閉鎖し、油圧が設定圧を超えると、バネの力よりも強い油圧の力によって閉鎖部材が押し上げられて弁ボートが開き、圧力が過度に上昇するのを防いでいるが、用途によっては設定圧力で完全に液密とすることができず、過大圧力の保護ができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に示された従来の遮断弁は、常に流体が流れている流路にあり流体の圧力ではなく、流れる流体の作用力を利用しており、静止流体の過大圧力の保護ができず、また、高圧には適しないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に示された従来の遮断弁は、電磁弁等を使用するので、電源や制御装置を必要とし、構造が複雑で小型にできないという問題があった。
【0009】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、電源や制御装置を必要とせず、外圧を利用して、所定の圧力で流路を遮断し、外圧を受ける機器を過大圧力から保護するメカニカル過大圧力保護スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のメカニカル過大圧力保護スイッチは、本体と、この本体内に設けられ、一端部に流体が流入する流入口部と前記流体が流出する流出口部とを有する小径孔部及び他端部に前記流体に連通する開口部を有する大径孔部からなる段付孔と、この段付孔に摺動可能に挿入され、前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部の間に形成される流路を開閉する小径部及び前記大径孔部の前記開口部からの前記流体の圧力を受ける大径部からなる段付プランジャと、前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間を開放する方向に、前記開口部からの前記流体の前記圧力に抗して前記段付プランジャを付勢するバネと、を備えたものである。
【0011】
また、前記段付プランジャの前記小径部と前記大径部の外周にOリングが装着されているものである。
【0012】
また、前記段付孔の前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部は、軸方向に離間して、配設され、前記段付プランジャの前記小径部の外周に装着された前記Oリングは少なくとも2個装着され、前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路を遮断する位置の状態では、前記段付プランジャの前記小径部に装着された前記Oリングのうち、少なくとも1個を前記流入口部と前記流出口部の間に位置するようにして前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路を液密に遮断するようにしたものである。
【0013】
また、前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路は、前記流入口部に連通し、前記小径孔部の端部端面と前記段付プランジャの小径部の端部の端面間に形成された小径孔端部室、前記小径部の端面に設けられた孔とこの孔に連通し、前記小径部の端部の対向する両側面に貫通する孔を有するT字形の小径端部孔、前記小径孔部の端部側に流入口部3から大径孔部の方向に離間して設けられ、前記小径部の前記T字形の端部孔に連通する環状溝部及び一端が前記環状溝部に連通するとともに前記流出口部に連通する段付孔を備えたものである。
【0014】
また、一端に前記段付孔の前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路に連通する緩衝用連通孔を有し、他端に閉塞壁を有する緩衝用孔と、この緩衝用孔に摺動可能に挿入された緩衝用プランジャと、前記緩衝用孔の前記緩衝用連通孔の方向に前記緩衝用プランジャを付勢する緩衝用バネと、を備えたものである。
【0015】
また、前記緩衝用孔の前記閉塞壁と前記緩衝用プランジャの間にエアクッション室を設けたものである。
【0016】
また、前記バネの一端が係合する前記段付プランジャの段差部に、前記バネの初期張力を調整する作動圧力調整手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、本体と、この本体内に設けられ、一端部に流体が流入する流入口部と前記流体が流出する流出口部とを有する小径孔部及び他端部に前記流体に連通する開口部を有する大径孔部からなる段付孔と、この段付孔に摺動可能に挿入され、前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部の間に形成される流路を開閉する小径部及び前記大径孔部の前記開口部からの前記流体の圧力を受ける大径部からなる段付プランジャと、前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間を開放する方向に、前記開口部からの前記流体の前記圧力に抗して前記段付プランジャを付勢するバネと、を備えたので、電源や制御装置を必要とせず、外圧を利用して、所定の圧力で流路を遮断し、外圧を受ける機器を過大圧力から保護することができる。
【0018】
また、前記段付プランジャの前記小径部と前記大径部の外周にOリングが装着されているので、外圧が過大になると、流路を液密に遮断し、外圧が静圧の場合でも外圧を受ける機器を過大圧力からよりよく保護することができる。
【0019】
また、前記段付孔の前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部は、軸方向に離間して、配設され、前記段付プランジャの前記小径部の外周に装着された前記Oリングは少なくとも2個装着され、前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路を遮断する位置の状態では、前記段付プランジャの前記小径部に装着された前記Oリングのうち、少なくとも1個を前記流入口部と前記流出口部の間に位置するようにして前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路を液密に遮断するようにしたので、外圧が静圧の場合でも外圧を受ける機器を過大圧力から、さらに、よりよく保護することができる。
【0020】
また、前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路は、前記流入口部に連通し、前記小径孔部の端部端面と前記段付プランジャの小径部の端部の端面間に形成された小径孔端部室、前記小径部の端面に設けられた孔とこの孔に連通し、前記小径部の端部の対向する両側面に貫通する孔を有するT字形の小径端部孔、前記小径孔部の端部側に流入口部から大径孔部の方向に離間して設けられ、前記小径部の前記T字形の端部孔に連通する環状溝部及び一端が前記環状溝部に連通するとともに前記流出口部に連通する段付孔を備えたことにより、段付プランジャの摺動を良好にするとともに、外圧を受ける機器を過大圧力からよりよく保護することができる。
【0021】
また、一端に前記段付孔の前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路に連通する緩衝用連通孔を有し、他端に閉塞壁を有する緩衝用孔と、この緩衝用孔に摺動可能に挿入された緩衝用プランジャと、前記緩衝用孔の前記緩衝用連通孔の方向に前記緩衝用プランジャを付勢する緩衝用バネと、を備えたので、流路を遮断する際に、瞬間的な圧力変動が発生したときに圧力変動を緩和することができる。
【0022】
また、前記緩衝用孔の前記閉塞壁と前記緩衝用プランジャの間にエアクッション室を設けたので、流路を遮断する際に、瞬間的な圧力変動が発生したときに、緩衝用プランジャが、バネ及び内部空気を押込んで変移することにより、圧力変動を緩和することができる。
【0023】
また、前記バネの一端が係合する前記段付プランジャの段差部に、前記バネの初期張力を調整する作動圧力調整手段を備えたので、作動圧力を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
本実施の形態は、流体が水の場合で、例えば、水中で使用する機器が水深により変化する圧力に対し、機器を過大圧力から保護するためのメカニカル過大圧力保護スイッチを示す。
図1はこの発明の実施の形態1を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの断面図、図2はメカニカル過大圧力保護スイッチの動作説明図である。
【0025】
図1において、メカニカル過大圧力保護スイッチ1は、本体2内に設けられ、一端部に水が流入する流入口部3と、流入した水が流出する流出口部4とを有する小径孔部5a及び端部に水に連通する開口部5b1を有する大口径孔部5bからなる段付孔5と、この段付孔5に摺動可能に挿入され、小径孔部5aに設けられた流入口部3と流出口部4の間に形成された流路を開閉する小径部6a及び端部が大口径孔部5bの開口部5b1からの水の圧力を受ける大径部6bからなる段付プランジャ6と、段付プランジャ6の小径部6aが流入口部3と流出口部4との間を開放する方向に、開口部5b1からの水の圧力に抗して段付プランジャ6を付勢するバネ7を備えている。
【0026】
図1は、流入口部3と流出口部4の間の流路が開放された場合を示すが、この流路は、流入口部3、小径孔部5aの端面と段付プランジャ6の小径部6aの端面6a1の間に形成された小径孔端部室5a1、小径部6aの端面に設けられた孔9aとこの孔9aに連通し、小径部6aの端部の対向する両側面に貫通する孔9bを有するT字形の小径端部孔9、段付孔5の小径孔部5aの端部側に流入口部3から大口径孔部5b方向に離間して設けられ、小径部6aの小径端部孔9に連通する環状溝部10及び一端が環状溝部10に連通するとともに流出口部4に連通し、他端がプラグ12で塞がれ小径孔部11aと大径孔部11bを有する段付孔11から構成される。
【0027】
また、段付孔5の小径孔部5aと大口径孔部5bとの間に設けられ、バネ7が収容される円筒状溝13と、段付プランジャ6の大径部6bとの段部の小径部6aに設けられたネジ14に螺合し、バネ7の初期張力を調整する作動圧力調整手段である作動圧力調整ネジ15とを設け、バネ7は作動圧力調整ネジ15と円筒状溝13の小径孔部5a側の端面との間に装着される。また、開口部5b1に設けられた止め輪溝16にC型止め輪17が嵌め込まれ、段付プランジャ6が開口部5b1から抜けないようにしている。
【0028】
また、段付プランジャ6の小径部6aの外周には2個のOリング18、19が装着され、大径部6bの外周には1個のOリング20が装着され、段付プランジャ6の小径部6a及び大径部6bの外周と段付孔5の小径孔部5a及び大口径孔部5bとの間の間隙を各々シールして水密になるようにしている。
【0029】
そして、段付プランジャ6の小径部6aが流入口部3と流出口部4との間の流路を遮断する位置の状態(後述の図2(b))では、段付プランジャ6の小径部6aに装着された二つのOリング18、19のうち、一つのOリング18を流入口部3と流出口部4側の流路である環状溝部10の間に位置するようにして、流入口部3と流出口部4の間の流路を水密に遮断して、流入口部3からの静圧が流出口部4に伝わらないようにしている。
なお、流入口部3と流出口部4との間の流路では、小径孔部5aの端部に設けられた孔9bと段付孔11の小径孔部11aが交わるところであり、孔と孔が交わる箇所はかえりが生じ易くOリングを傷つけやすいので、Oリングの保護のため小径孔部11aを大きくし、孔9bと段付孔11の小径孔部11aの間に環状溝部10を設けている。
【0030】
また、段付孔11に連通する緩衝部21が設けられている。緩衝部21は、一端に段付孔11に連通する緩衝用連通孔22を有し、他端に閉塞壁であるプラグ23を有し、小径孔部24aと大径孔部24bからなる緩衝用孔である緩衝用段付孔24と、この緩衝用段付孔24の大径孔部24b内に摺動可能に挿入された緩衝用プランジャ25と、緩衝用段付孔24の緩衝用連通孔22方向に緩衝用プランジャ25を付勢する緩衝用バネ26とが設けられている。そして、緩衝用段付孔24内は緩衝用プランジャ25で二分され、そのうちの一方はプラグ23側の空気が封入されたエアクッション室27であり、他方は緩衝用連通孔22側の水が流入する流体室28である。
【0031】
また、緩衝用プランジャ25の外周にはOリング29が装着され、緩衝用プランジャ25の外周と緩衝用段付孔24の大径孔部24bとの間の間隙をシールしている。なお、プラグ12、23の外周に各々Oリング30、31が装着されている。
【0032】
また、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の流出口部4の外周に設けられたネジ4aは、この保護すべき機器32を収納ケース33に収納して取り付けるときに用いられ、収納ケース33の開口部のネジ33aに螺合する。
【0033】
次に、この発明のメカニカル過大圧力保護スイッチ1の動作について図2により説明する。図2(a)は、外圧が小さく流路が遮断されてない場合を示し、図2(b)は外圧が大きく流路が遮断されている場合を示す。図2において、保護すべき機器32は、例えば、水中で移動して使用する装置34に搭載され、水深により変化する圧力を測定する圧力センサ35である。なお、斑点模様は水を示す。
【0034】
まず、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の外圧に対する作動圧力を設定するため、バネ7の初期張力を作動圧力調整ネジ15により調整するが、調整方法及び段付プランジャ6による流入口部3と流出口部4の間の流路の開放と遮断時の水の圧力、設定圧力、バネ力等の関係を次に説明する。
段付プランジャ6の大径部6bの面積を(直径)A、小径部6aの面積をB、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の外圧に対して流路を遮断開始するときの設定圧力をPs、バネ7のバネ力をFs、流路を開放しているときの外圧をP1、流路を遮断しているときの外圧をP2とすると次のようになる。
(1)外圧の関係:P2>Ps≧P1
(2)バネ力(初期張力)Fsの設定(流路を遮断開始するとき)の関係:PsA=Fs+PsB
(3)流路を開放しているときの関係:P1(A−B)≦Fs
(4)流路を遮断しているときの関係;P2(A−B)>Fs
バネ7の初期張力(バネ力)は上記の(2)となるように調節する。なお、(4)の場合は、プランジャの小径部6aの端面が小径孔部5aの小径孔端面5a2に当接しても、端面はシール構造ではないため、間隙に挟まっている水を介して圧力(外圧)が作用している。
【0035】
次に、圧力センサ35を収納ケース33に収納し、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の流出口部4の外周に設けられたネジ33aに収納ケース33の開口部に設けられたネジ33aを螺合して取り付け、収納ケース33を水中で使用する装置34に取り付ける。
そして、装置34が水中を移動すると、装置34に取り付けられた圧力センサ35は水深により変化する圧力を測定する。
【0036】
水の深さにより、開口部5b1から段付プランジャ6の大径部6b及び流入口部3から小径部6aにかかる3水の圧力(外圧)が、設定値Ps以下の圧力P1の場合は、図2(a)に示すように、段付プランジャ6の大径部6bの端面と小径部6aの端面6a1の面積差(A−B)により生じる押込み力P2(A−B)が、バネ7のバネ力Fs以下であるため、段付プランジャ6は、バネ7のバネ力により開口部5b1方向に押しつけられ、流入口部3と流出口部4の間の流路が開放される。そして、水の外圧は流入口部3から伝達し、小径孔端部室5a1、孔9aと孔9bを有からなるT字形の小径端部孔9、環状溝部10及び段付孔11の流路を通り、流出口部4へと伝達することにより、外圧(水圧)は圧力センサ35に伝わり、外圧P1が測定される。
【0037】
一方、開口部5b1から段付プランジャ6の大径部6b及び流入口部3から小径部6aにかかる3水の圧力(外圧)が、設定値Psを超えた圧力P2の場合は、図2(b)に示すように、段付プランジャ6の大径部6b端面と小径部6a端面の面積差(A−B)により生じる押込み力P2(A−B)が、バネ7のバネ力Fsを超えるので、段付プランジャ6は小径孔端部室5a1方向に押しつけられ、小径部6aの端部が小径孔端面5a2に当接する。
このとき、流入口部3と流出口部4の間の流路は、小径孔端部室5a1、小径部6a端部のT字形の小径端部孔9、環状溝部10及び段付孔11から構成されており、流入口部3と流出口部4に連通する段付孔11が段付孔5の軸方向に離間して設けられ、Oリング18が流入口部3と流出口部4側の流路である環状溝部10の間に位置するようにしているので、流入口部3と流出口部4の間の流路が水密に遮断されるので、外圧が静圧でも、設定圧力Psを超えた過大な圧力が圧力センサ35に伝わらなくなる。
【0038】
また、大径部6bの外周のOリング20により、大径部6bの外周と段付孔5の大口径孔部5bとの間の間隙をシールされているので、大口径孔部5bの開口部5b1からバネ7の収容されている大口径孔部5bの円筒状溝13等に水が流入しない。
そして、外圧が設定圧力Ps以下になると、段付プランジャ6が、バネ7のバネ力により復帰し、流路が再生し、外圧が圧力センサ35に伝わるようになる。
【0039】
また、段付プランジャ6により、流入口部3と流出口部4の間の流路が遮断されたときに、瞬間的な圧力変動が発生した場合は、緩衝部21の緩衝用段付孔24の流体室28に緩衝用連通孔22から水が流入し、 緩衝用バネ26とエアクッション室27の空気圧に抗して緩衝用プランジャ25が押込まれて変移することにより、圧力変動を緩和する。
【0040】
次に、メカニカル過大圧力保護スイッチ1による過大圧力保護の実験をした結果について図3により説明する。図3はメカニカル過大圧力保護スイッチの試験結果を示す圧力特性図である。
実験は、まず、圧力センサ35を収納ケース33に収納し、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の流出口部4の外周に設けられたネジ33aを収納ケース33の開口部に設けられたネジ33aに螺合して取り付け、これを試験用水圧タンクに入れた。メカニカル過大圧力保護スイッチ1は圧力センサ35の保護圧力である圧力Psに設定した。
次に、試験用水圧タンクに水を注入し、設定圧力の6倍の圧力P2になるまで水圧を上げ、経過時間に対する水圧タンクの水圧と圧力センサ35の圧力を測定した。
その結果、水圧タンクの圧力は図3の点線で示すように、圧力をP2まで上げ、t1〜t2の時間圧力をかけたが、圧力センサ35の圧力は、実線で示すようにメカニカル過大圧力保護スイッチ1の設定圧力のPsを超えず、外圧が大きい間、圧力センサ35に過大な圧力は伝わらないことが確認できた。
【0041】
以上のように、本体2と、この本体内2に設けられ、一端部に流体が流入する流入口部3と流入した流体が流出する流出口部4とを連通する流路を有する小径孔部5a及び他端部に流体に連通する開口部5b1を有する大径孔部5bからなる段付孔5と、この段付孔5に摺動可能に挿入され、小径孔部5aに設けられた流入口部3と流出口部4の間の流路を開閉する小径部6a及び大径孔部5bの開口部5b1からの流体の圧力を受ける大径部6bからなる段付プランジャ6と、段付プランジャ6の小径部6aが流入口部3と流出口部4との間を開放する方向に、開口部5b1からの流体の圧力に抗して段付プランジャ6を付勢するバネ7と、を備えたので、電源や制御装置を必要とせず、外圧を利用して、所定の圧力で流路を遮断し、外圧を受ける機器を過大圧力から保護することができる。
また、メカニカル過大圧力保護スイッチは、リリーフ弁と同じ目的を果たすものであるが、作動は逆で、圧力が過大になると、流路を完全にシールし遮断することができる。
また、電源や制御装置を必要とせず、外圧を利用して、所定の圧力で流路を遮断し、外圧を受ける機器を過大圧力から保護することができる。
【0042】
また、段付プランジャ6の小径部6aの外周にOリング18,19。大径部6bの外周にOリング20が装着されているので、外圧が過大になると、流路を液密に遮断し、外圧が静圧の場合でも外圧を受ける機器を過大圧力からよりよく保護することができる。
【0043】
また、段付孔5の小径孔部5aに設けられた流入口部3と流出口部4は、軸方向に離間して、配設され、段付プランジャ6の小径部6aの外周に装着されたOリング18,19の2個装着され、段付プランジャ6の小径部6aが流入口部3と流出口部4との間の流路を遮断する位置の状態では、段付プランジャ6の小径部6aに装着されたOリング18,19のうち、Oリング18を流入口部3と流出口部4の間に位置するようにして流入口部3と流出口部4の間の流路を液密に遮断するようにしたので、外圧が静圧の場合でも外圧を受ける機器を過大圧力から、さらに、よりよく保護することができる。
【0044】
また、流入口部3と流出口部4との間の流路は、流入口部3に連通し、小径孔部5aの端部端面と段付プランジャ6の小径部6aの端部の端面6a1間に形成された小径孔端部室5a1、小径部6aの端面6a1に設けられた孔9aとこの孔9aに連通し、小径部6aの端部の対向する両側面に貫通する孔9bを有するT字形の小径端部孔9、小径孔部5aの端部側に流入口部3から大径孔部5bの方向に離間して設けられ、小径部5aのT字形の端部孔9に連通する環状溝部10及び一端が環状溝部10に連通するとともに流出口部4に連通する段付孔11を備えたので、外圧を受ける機器を過大圧力からよりよく保護することができる。
【0045】
また、一端に段付孔5の流入口部3と流出口部4の間の流路に連通する緩衝用連通孔22を有し、他端にプラグ23を有する緩衝用段付孔24と、この緩衝用段付孔24に摺動可能に挿入された緩衝用プランジャ25と、緩衝用段付孔24の緩衝用連通孔22の方向に緩衝用プランジャ25を付勢する緩衝用バネ26と、を備えたので、流路を遮断する際に、瞬間的な圧力変動が発生したときに圧力変動を緩和することができる。
【0046】
また、緩衝用段付孔24のプラグ23と緩衝用プランジャ25の間にエアクッション室27を設けたので、流路を遮断する際に、瞬間的な圧力変動が発生したときに、緩衝用プランジャが、バネ及び内部空気を押込んで変移することにより、圧力変動を緩和することができる。
【0047】
また、バネ7の一端が係合する段付プランジャ6の段差部に、バネ7の初期張力を調整する作動圧力調整ネジ15を備えたので、作動圧力を変更することができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、水中で使用する装置に使用する場合を示したが、油中で使用する装置等に使用してもよく、流体中で使用する装置に使用可能である。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態1では、メカニカル過大圧力保護スイッチを水中(静止液中)で使用する装置に取付けて使用する場合を示したが、油圧回路で使用される油圧測定機器を過大圧力から保護するためのメカニカル過大圧力保護スイッチを示す。
【0050】
図4はこの発明の実施の形態2を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの断面図である。図4において、実施の形態1の図1と異なるのは、段付孔5の大口径孔部5bの開口部5b1側に本体2から延設された筒体部2aと、筒体部2aの端部を閉塞するプラグ36と、筒体部2aの内壁及び大径部6bにより形成される大径孔部端部室5b2と、筒体部2aに設けられた大口径孔側流入口部39と、プラグ36の外周に装着されたOリング38を備えた構成である。この他は図1と同じ構成である。
また、保護すべき機器32は、例えば、油圧回路の油圧を測定する圧力センサ35である。
【0051】
次に、この発明のメカニカル過大圧力保護スイッチ1の動作について説明する。
まず、実施の形態1と同様に、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の作動圧力を設定する。そして、圧力センサ35を収納ケース33に収納し、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の流出口部4のネジ33aに収納ケース33のネジ33aを螺合して取り付け、油圧回路の測定部(図示せず)とメカニカル過大圧力保護スイッチ1の流入口部3を配管接続(図示せず)し、この配管から分岐して大口径孔側流入口部39に配管接続(図示せず)をする。
【0052】
そして、油圧回路の油圧測定部からの油圧が、メカニカル過大圧力保護スイッチ1の流入口部3から小径部6a及び大口径孔側流入口部39から段付プランジャ6の大径部6bにかかる油圧が、設定値Ps以下の圧力P1の場合は、実施の形態1の図2(a)に示すように、段付プランジャ6は、開口部5b1方向に押しつけられ、流入口部3と流出口部4の間の流路が開放され、油圧は圧力センサ35に伝わり油圧P1が測定される。
【0053】
一方、油圧が設定値Psを超えた圧力P2の場合は、実施の形態1の図2(b)に示すように、段付プランジャ6は小径孔端部室5a1方向に押しつけられ、小径部6aの端部が小径孔端面5a2に当接し、設定圧力Psを超えた過大な油圧が圧力センサ35に伝わらなくなる。
また、流入口部3と流出口部4の間の流路が遮断されたときに、瞬間的な圧力変動が発生した場合は、実施の形態1と同様に、緩衝部21の緩衝用段付孔24の流体室28に油が流入し、 緩衝用バネ26とエアクッション室27の空気圧により圧力変動を緩和する。
【0054】
以上のように、実施の形態1の構成に加えて、段付孔5の大口径孔部5bの開口部5b1側に本体2から延設された筒体部2aと、筒体部2aの端部を閉塞するプラグ36と、筒体部2aの内壁及び大径部6bにより形成される大径孔部端部室5b2と、筒体部2aに設けられた大口径孔側流入口部39と、プラグ36の外周に装着されたOリング38とを備えたので、電源や制御装置を必要とせず、所定の圧力で流路を遮断し、油圧回路の油圧を測定する圧力センサ35を過大圧力から保護することができる。
【0055】
なお、本実施の形態は油圧回路に用いた例を示したが、空気回路や水圧回路等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態1を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの動作説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの試験結果を示す圧力特性図である。
【図4】この発明の実施の形態2を示すメカニカル過大圧力保護スイッチの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 メカニカル過大圧力保護スイッチ、2 本体、3 流入口部、4 流出口部、5 段付孔、5a 小径孔部、5a1、 小径孔端部室、5a2 小径孔端面、5b 大口径孔部、5b1 開口部、5b2大口径孔部端部室、6 段付プランジャ、6a 小径部、6a1 端面、 6b 大径部、7 バネ、9 小径端部孔、9a 孔、9b 孔、10 環状溝部、11 段付孔、15 作動圧力調整ネジ、18 Oリング、20 Oリング、21 緩衝部、22 緩衝用連通孔、24 緩衝用段付孔、25 緩衝用プランジャ、26 緩衝用バネ、27 エアクッション室、28 流体室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
この本体内に設けられ、一端部に流体が流入する流入口部と前記流体が流出する流出口部とを有する小径孔部及び他端部に前記流体に連通する開口部を有する大径孔部からなる段付孔と、
この段付孔に摺動可能に挿入され、前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部の間に形成される流路を開閉する小径部及び前記大径孔部の前記開口部からの前記流体の圧力を受ける大径部からなる段付プランジャと、
前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間を開放する方向に、前記開口部からの前記流体の前記圧力に抗して前記段付プランジャを付勢するバネと、
を備えたことを特徴とするメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項2】
前記段付プランジャの前記小径部と前記大径部の外周にOリングが装着されていることを特徴とする請求項1記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項3】
前記段付孔の前記小径孔部に設けられた前記流入口部と前記流出口部は、軸方向に離間して、配設され、
前記段付プランジャの前記小径部の外周に装着された前記Oリングは少なくとも2個装着され、
前記段付プランジャの前記小径部が前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路を遮断する位置の状態では、前記段付プランジャの前記小径部に装着された前記Oリングのうち、少なくとも1個を前記流入口部と前記流出口部の間に位置するようにして前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路を液密に遮断するようにしたことを特徴とする請求項2記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項4】
前記流入口部と前記流出口部との間の前記流路は、前記流入口部に連通し、前記小径孔部の端部端面と前記段付プランジャの小径部の端部の端面間に形成された小径孔端部室、前記小径部の端面に設けられた孔とこの孔に連通し、前記小径部の端部の対向する両側面に貫通する孔を有するT字形の小径端部孔、前記小径孔部の端部側に流入口部から大径孔部の方向に離間して設けられ、前記小径部の前記T字形の端部孔に連通する環状溝部及び一端が前記環状溝部に連通するとともに前記流出口部に連通する段付孔を備えたことを特徴とする請求項1記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項5】
一端に前記段付孔の前記流入口部と前記流出口部の間の前記流路に連通する緩衝用連通孔を有し、他端に閉塞壁を有する緩衝用孔と、
この緩衝用孔に摺動可能に挿入された緩衝用プランジャと、
前記緩衝用孔の前記緩衝用連通孔の方向に前記緩衝用プランジャを付勢する緩衝用バネと、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項6】
前記緩衝用孔の前記閉塞壁と前記緩衝用プランジャの間にエアクッション室を設けたことを特徴とする請求項5記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。
【請求項7】
前記バネの一端が係合する前記段付プランジャの段差部に、前記バネの初期張力を調整する作動圧力調整手段を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のメカニカル過大圧力保護スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−25323(P2010−25323A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191234(P2008−191234)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】