説明

メカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法、そのように得られたメカノ構造化真珠層およびその使用

本発明は、真珠層の温度を40℃未満に保つことを特徴とするマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法に関する。本発明は、また前記メカノ構造化真珠層およびその使用、特にメカノ構造化真珠層が堆積されるインプラントおよび骨代用材における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法に関する。本発明はまた、この真珠層の使用、特にインプラント、金属補綴物または骨充填部材に付与されるコーティングとしての使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
真珠層は、特定の軟体動物がそれらの一生涯に渡って分泌する有機無機複合体である。真珠層は主に、有機物層で分離された多層構造層に配置された極めて純度の高いアラゴナイトの形態の、結晶化した炭酸カルシウムから成る。これらの無機物および有機物部分の集合体は、その構成の複雑性を示している。
【0003】
真珠層が何故その様に特別なものであるのかをより理解するために、二枚貝の海洋軟体動物の外殻および内殻の特定の生体分子が、国際公開第9952940号で同定された。この目的のために、オオシャコガイ(Tridacnae gigas)とシロチョウガイ(Pinctada maxima)の外殻および内殻から、数cm2の寸法の殻体の断片を切り取り、次いで切り取った断片を遊星圧延機で3分の段階を2回実施して粉砕し、粉末が調製された。得られた粉末は、粒径が300〜500μmの間であった。次に、真珠層に含まれている活性成分または海洋バイオポリマーを、低温加水分解、超遠心分離および接線限外濾過で抽出した。この抽出方法では、全ての成分が効果的に保持されるという保証はないが、細胞外マトリックスを構成する構造型のタンパク質、例えば、必須アミノ酸類、I型コラーゲン、II型コラーゲンおよびIII型コラーゲン(有機物中に豊富に存在する繊維状の糖タンパク質)、エラスチン、グリコサミノグリカン、ならびにプロテオグリカンが同定された。また、前駆因子および成長因子、例えば、BMP、TGF−β、およびIGF II、サイトカイン類、脂質類、およびヘキソース類(細胞代謝に不可欠なC6還元糖)、メラニン化合物類、およびカロテノイド類、ならびに、金属タンパク質、金属酵素、ポルフィリン色素タンパク質および非ポルフィリン色素タンパク質を形成するための、有機マトリックスの構成要素の3分の2を形成する遊離のまたは特定の生体分子に結合した無機成分や金属元素の存在も実証された。
【0004】
多くの研究と臨床観察の記録により、海洋バイオポリマーの優れた生体適合性が示されてきただけでなく、海洋バイオポリマーが使用されてきた適応症における全ての薬理学的特性も明らかにされてきた。したがって、生体内および試験管内で、真珠層による皮膚の再生力およびさらには海綿骨と緻密骨との双方の再生力が実証されてきた。緻密な真珠層はその特殊な組成および特定の構造により、組織適合性および非生物分解性を与えられるだけではなく、天然歯、人骨および最も抵抗性の高いセラミックスに匹敵する一定の機械的性質も与えられる。したがって、骨代用材や歯科用歯根部品として、そしてさらに別の用途では、粉末状で、例えば損失した皮膚性や筋肉性物質の瘢痕形成および損失した骨様物質の補填における真珠層の使用を提案している仏国特許第2647334号明細書に記載されている様に、真珠層は、その物理化学的組成により、緻密な形態で骨内インプラントに最も適切なバイオマテリアルとなっている。
【0005】
しかし、骨内インプラント、骨接合プレートおよびねじ、または骨代用材として緻密な形態で使用される、これらの軟体動物由来の真珠層は、その表面が低い有孔率しか持たず(Academie des Sciences publications、Clinical Material)連関していない孔を有しているために、骨形成を担う骨形成活性成分の限られた分泌しか可能にしない。
【0006】
したがって、真珠層の特性を改善または最適化する要求、または新規の用途を可能にする、真珠層に新規の特性を供与する要求もまた存在する。
【0007】
二枚貝、例えばシロチョウガイまたは他のアコヤガイ属(pinctada)、およびオオシャコガイなどの殻体由来のアラゴナイトの真珠層は、天然のナノ複合体に匹敵する結晶質微細構造を有する。実際に、真珠層の基本成分は、特殊化した細胞の糖タンパク合成によって生じる有機物により他の生物学的結晶と会合し結合した生物起源の、有機無機のアラゴナイトの結晶である。これらの生物学的結晶は、結晶間に存在するのか、または層間に存在するのかに応じて、10〜100nmの範囲のサイズの小線維から成るナノ構造化した有機物で囲まれ、分離されている。
【0008】
前述した軟体動物の真珠層に含まれているバイオポリマーの固有特性、無機質、ならびに金属タンパク質、金属酵素、金属ポルフィリンなどの特に遊離のまたはタンパク質分子に結合した上記の金属全ての存在を前提として、本発明者らは、真珠層の特性を最適化するために、メカノ合成により真珠層をメカノ構造化真珠層粒子に変換することを想定した。
【0009】
その結果、本発明者らは、メカノ合成法によりメカノ構造化真珠層を得ることが可能であることを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の主題は、メカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法である。本発明のさらなる主題は、医療、獣医学、化粧品の分野、特に骨または歯の補綴の設計における、このメカノ構造化真珠層の使用である。
【0011】
ナノ粒子の特徴を規定する最も重要な属性は、そのサイズである。実際、ナノメートルオーダの粒子径を有する物質は、極小寸法に関係した特定の物理化学的特性を有する特徴を有する。したがって、粒子のサイズがナノメートルに近づいた場合、例えば、粒子の化学反応面が増大し、ナノ粒子の小さいサイズにより生物学的障壁を通過するのが容易になる場合、物質の特性を変化させること、および/または強化させることが可能になる。適切な場合、薬理効果の増大させることが可能である。したがって、粒子は、細胞内での活動が可能であり、細胞膜を通過して細胞骨格および細胞小器官の双方まで到達することができる。
【0012】
このようにして、ナノ粒子を含有する物質の全ての薬理学的、生物学的、生化学的特性を強化することが可能である。
【0013】
粒子サイズに関連したこれらの利点に、本発明で実施されるメカノ合成法に関連した利点が付け加えられる。実際に、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、特に真珠層の金属タンパク質、金属ポルフィリンおよび金属酵素の存在により、メカノ合成が行われている間に互いに異なる構成要素の再編成がこれら要素の間で達成され、再編成は、標準的な粉砕では達成されない、と考えている。
【0014】
特に、真珠層片、すなわち二枚貝軟体動物の内殻の分子構成に関与する遊離金属または結合金属、特にMn、Cl、Cu、K、Sr、Na、Zn、Br、Ce、Fe、La、Smの存在を前提とし、ならびに加水分解の触媒反応および電子伝達金属タンパク質の電子伝達、酸素分子の移動および活性化、触媒金属酵素における全ての生体システムで、これらの金属が補酵素としての役割を果たすことを前提として、本発明者らは、トップダウン生物無機化学的方法の使用によって、これら全ての要素に特性の強化をもたらし、このアセンブリから改善した組織の特性および細胞再生を示す新規のバイオ複合材を造りだすことができる、と考えている。
【0015】
本発明者らは、メカノ合成による調製工程中、真珠層を40℃未満、好ましくは20℃未満、さらにより優先的には0℃以下の温度に保つことにより、真珠層の特性が改善を示し、そのタンパク質成分の全てを保持したメカノ構造化真珠層を獲得できることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の主題は、真珠層の温度を40℃未満、好ましくは20℃未満、さらにより優先的には0℃以下に保つことを特徴とするマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法である。本出願および以下では、接頭辞「ナノ(nano)」は、平均体積径が500nm未満、好ましくは250nm未満、より優先的には100nm以下である粒子を記載するのに使用される。したがって、「ナノ粒子(nanoparticle)」および「ナノ化粒子(nanonized particle)」という用語は、平均体積径が500nm未満、好ましくは250nm未満、より優先的には100nm以下である粒子を記載するのに使用される。「マイクロメートルオーダーの粉末(micrometric powder)」は、平均体積径が1〜500μmの間、好ましくは1〜100μmの間、より優先的には1〜20μmの間に含まれる粒子を有する粉末を意味する。
【0017】
さらに、用語「処理すべき真珠層粒子(nacre particles to be treated)」または用語「処理すべき真珠層粉末(nacre powder to be treated)」は、メカノ合成法を適用する以前の真珠層粒子または真珠層粉末に関すると考えなければならない。同様に、用語「メカノ構造化真珠層粒子(mechano−structured nacre particles)」または「メカノ構造化真珠層(mechano−structured nacre)」または「メカノ誘導化真珠層(mechanically−induced nacre)」とは、本発明によって処理される真珠層粉末を表している。
【0018】
本発明の粉末の平均等価体積径は、レーザー粒度計を使用するレーザー回析により決定される。平均等価体積径、つまりD(4;3)は、次式に従って、広範囲に渡り測定される粒径分布から計算される:D(4;3)=Σ(d)/Σ(d)。
【0019】
メカノ合成(つまり、機械的な経路による合成)は、マイクロメートルオーダーの粉末を粉砕することから成り、容器中の粒子に機械的衝撃を連続させる効果下で、ナノメートルサイズの粉末形態の改変された材料を得ることを可能にする機械的な方法である。
【0020】
メカノ合成法により得られる真珠層粉末の平均体積径は、500nm未満、好ましくは250nm未満、より優先的には100nm以下である。
【0021】
生物無機化学では、種々の粉末状金属材料に適用される顕著な加速力を受ける粉砕ビーズの密閉空間内での移動自体により達成される粉砕および共粉砕は、ナノ粒子の生成をもたらし、および、実施される粉砕のタイプによって引き起こされる高い力学的エネルギーに誘導された化学反応の実施により、新たな特性を持つ新しい化合物の合成をもたらすことが知られている。
【0022】
シロチョウガイまたは他のアコヤガイ属の有機物およびオオシャコガイの有機物に存在する金属元素、例えば、遊離状態か、または酵素タンパク質および非酵素タンパク質に結合しているSm、La、Zn、Br、Ce、Fe、Mn、Cu、K、Sr、Na、およびCaは、ポルフィリンと共に、これらの軟体動物のアラゴナイトを、生体システムで金属カチオンの動力学を研究する一分野である生物無機化学または生体模倣化学での使用に適した特定のユニークな生体システムにしている。
【0023】
したがって、シロチョウガイおよび他のアコヤガイ属およびオオシャコガイのアラゴナイトの有機物に含有される全ての金属イオンは、細胞代謝のあらゆるレベル(細胞および組織の恒常性に主要な役割を果たす、イオンチャネル、細胞の金属カチオンの濃縮、加水分解反応、細胞骨格の再生、電子伝達、酸素分子の移動および活性化、酸化ストレスの抑制)において、決定性のある役割を有することが分かる。
【0024】
分割パラメータによる遊星圧延機の使用は、機械的経路によるナノ材料の合成に特に良く適している。遊星圧延機は、上部に遊星が固定されている中央回転台で構成されており、その遠心加速は中央回転台の回転と遊星の回転との相対的条件に応じて制御可能である。
【0025】
真珠層は非常に硬い物質であるので、粉砕中に、圧延機またはビーズに由来するいかなる粒子も、こうして得られた真珠層粉末を汚染しないことが重要である。このため、本発明によって使用される1つまたは複数の粉砕皿、および粉砕ビーズは、真珠層よりも硬く、生体適合性があり、および汚染しない材料で構成されなければならない。材料として、例えば酸化ジルコニウムまたはジルコニウム−イットリウム合金が挙げられ、これらの材料は、粉砕機内で激しく繰り返される真珠層との衝突の間に化学元素を放出することはない。
【0026】
本発明の方法において、1〜20μmの間に含まれる平均体積径を有する処理すべき真珠層粉末は、粉砕サイクルの持続時間および粉砕サイクル数を制限するために優先的に使用される。
【0027】
本発明の方法によれば、殻体の真珠層片(つまり、二枚貝軟体動物の内殻)は圧搾され、次いで粉砕される。該方法を使用すれば、生物由来の炭酸カルシウム結晶に結合した有機物の全てを保持し、処理することが可能になる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、遊星圧延機でのメカノ合成法は、バイオマテリアルの全ての有機成分および金属成分の粉砕を可能にし、金属タンパク質、金属酵素、および金属ポルフィリンが補欠分子族により互いに凝集するか、または他のタンパク質と、またはさらに他の遊離金属イオンと凝集する新規の分子の合成を誘導して様々なナノ粒子の引き裂き、圧搾、粘着、粘着消失、塑性変形および弾性変形を引き起こし、その結果、新規のアミノ酸配列が作られ、新しい物理化学的特性および生物学的特性を備えたオリゴペプチド、ポリペプチド、ペプチドまたはタンパク質が生じると考えている。
【0028】
内殻は、そのままで使用され、圧搾され粉砕されるが、特に漂白剤(次亜塩素酸塩)または第四アンモニウム、カルベニウム等のその他の除染剤による浄化とその後の水洗いとを除き、いかなる予備的処理も受けない。
【0029】
本発明の方法で利用される真珠層は、シロチョウガイ、クロチョウガイ(Pinctada margaritifera)、または他のアコヤガイ属、オオシャコガイ、およびそれらの混合物を含む群から選択される二枚貝の殻体の真珠層片から得られる。
【0030】
特定の実施形態によれば、本発明は以下の連続した工程を含むマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法に関する。
【0031】
a)処理すべき真珠層粉末を遊星圧延機の粉砕皿に設置する工程、次いで、
b)直径がDのN個の粉砕ビーズ(iは1〜20の間、好ましくは3〜15の間、より優先的には5〜14の間に含まれる整数であり;Nは2〜150の間、好ましくは10〜100の間、より優先的には20〜85の間に含まれる整数)を粉砕皿に設置する工程、
c)遊星圧延機を、800〜1400rpmの間、優先的には1100rpmに含まれる回転速度Vで、90〜110G、好ましくは90〜100G、より優先的には95Gの加速度で起動する工程、
d)遊星圧延機を停止させ、直径Dの粉砕ビーズを除去する工程。
【0032】
所望のサイズの真珠層粒子が得られるまで、直径がDi+1(Di+1<D)のNi+1(Ni+1>N)個の粉砕ビーズで、工程b、cおよびdは繰り返され、所望のサイズの粒子が得られたら、工程d)完了時に、メカノ構造化真珠層を回収する。
【0033】
したがって、所望の粒子サイズに依って粉砕サイクル数が選択されてもよい。ビーズの直径は1〜30mmの間、好ましくは1〜10mmの間、より優先的には1〜5mmの間に含まれる。ビーズの数およびビーズの直径は、粉砕皿のサイズに依存する。例えば、粉砕皿が500mlの容量を有している場合、直径20mmのビーズ25個の使用、または直径10mmのビーズ50個の使用、またはさらには直径5mmのビーズ80個の使用を想定できる。
【0034】
特に好ましい実施形態によれば、ビーズの数およびビーズの直径は、処理すべき真珠層粒子2/5に対しビーズが3/5の重量比になるようなものとする。この割合は、有効体積が500mLである粉砕皿での粉砕に完全に適している。
【0035】
有効体積とは、空の閉じた状態の粉砕皿の容量を意味する。
【0036】
また、ビーズの直径が小さいほど、衝突の数はより多くなり、メカノ合成もより迅速になる。
【0037】
有利な実施形態によれば、直径2mmのビーズが使用される。
【0038】
メカノ合成法の全工程を通して、真珠層を40℃未満、好ましくは20℃未満、さらにより優先的には0℃以下の温度に維持することは、真珠層を構成している有機成分、特にタンパク質の3次構造の変性を防ぐために必要不可欠である。
【0039】
したがって、本発明の特定の実施形態によれば、粉砕皿、処理すべき真珠層粉末、および/または粉砕ビーズを、使用前に−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に、および任意選択で、工程b)、c)およびd)を各々繰り返す前に冷却する。
【0040】
したがって、粉砕皿、処理すべき真珠層粉末、および/または粉砕ビーズを、−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度で1分〜48時間までの範囲の期間、冷凍室内に置いてもよい。より優先的には、粉砕皿、処理すべき真珠層粉末、および/または粉砕ビーズを含むアセンブリを、−18℃の温度で24時間、冷凍室内に置く。さらに、この予備冷却により、真珠層の含水量を増加させ、その結果、粉砕およびメカノ合成を促進することが可能になる。含水量については、最初に出発物質として利用する微粉化真珠層に対する相対湿度は0.5%であるが、冷却サイクルの間に、相対湿度を5%まで上げることができる。
【0041】
同様に、工程c)の粉砕には、粉砕中に真珠層粉末が受ける温度の上昇を制限するために粉砕ビーズ、粉砕皿、および/または処理すべき真珠層粉末を冷却するサイクルを組み入れることができる。
【0042】
したがって、本発明の特定の実施形態によれば、真珠層粉末のメカノ合成法は、粉砕サイクルc)が冷却された雰囲気下で実施される、または粉砕サイクルc)に冷却サイクルが組み入れられていることを特徴とする。
【0043】
また、アセンブリの回転速度およびビーズの高速衝撃により生じる高エネルギーに起因する発熱反応を相殺することを目的とする換気装置を遊星圧延機に備えること、または、液体窒素下で本方法、または少なくとも工程c)を実施することも可能である。
【0044】
本発明の方法の完了時に得られたメカノ構造化真珠層は、例えば、25kGy未満のガンマ線放射よって、または24時間のエチレンオキシド処理とそれに後続する24時間のエアレーションとにより殺菌できる。
【0045】
本発明のさらなる特定の実施形態によれば、真珠層粒子のメカノ合成法は、以下を特徴とする:
・処理すべき真珠層粉末を粉砕皿に設置し、粉砕ビーズを粉砕皿に設置し、処理すべき真珠層粉末、粉砕ビーズおよび粉砕皿を含むアセンブリを−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に冷却し、
・次に、処理すべき保冷した真珠層粉末を、
a)平均体積径が5〜15μmの間に含まれる真珠層粒子が得られるまで、直径10mmの粉砕ビーズでの粉砕サイクル、次に、
b)平均体積径が800nm〜2μmの間に含まれる真珠層粒子が得られるまで、直径5mmの粉砕ビーズでの粉砕サイクル、次に、
c)平均体積径が0.01〜500nmの間、好ましくは、0.01〜250nmの間、より優先的には0.01〜100nmの間に含まれる真珠層粒子が得られるまで、直径2mmの粉砕ビーズでの粉砕サイクルにかけ、
次に、メカノ構造化真珠層を、皿の壁およびビーズから分離し、ふるいにかけて回収する。
【0046】
粉砕は、真珠層の加熱を制限するためにサイクル毎に実施する。
【0047】
他の実施形態によれば、本発明の主題は、以下を特徴とする真珠層粒子のメカノ合成法である:
・処理すべき真珠層粉末を粉砕皿に設置し、次に、粉砕ビーズを粉砕皿に設置し、処理すべき真珠層粉末、粉砕ビーズおよび粉砕皿を含むアセンブリを−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に冷却し、
・次に、保冷した真珠層粉末を、
a)直径10mmの粉砕ビーズで実施される、各サイクルが1〜10分、好ましくは2〜8分、より優先的に6分の間継続する、5回〜15回、好ましくは7回〜13回、さらにより優先的には8回〜11回の粉砕サイクル、次に、
b)直径5mmの粉砕ビーズで実施される、各サイクルが1〜10分、優先的には6分の、5回〜15回、優先的には10回の粉砕サイクル、次に
c)直径2mmの粉砕ビーズで実施される、各サイクルが1〜10分、優先的には6分の、5回〜15回、優先的には10回の粉砕サイクルにかけ、
次に、メカノ構造化真珠層を、粉砕皿の壁およびビーズから分離し、ふるいにかけ、回収する。
【0048】
特に好ましい実施形態によれば、真珠層粒子のメカノ合成法は、以下を特徴とする:
・処理すべき真珠層粉末を粉砕皿に設置し、直径2mmの粉砕ビーズを粉砕皿に設置し、処理すべき真珠層粉末、粉砕ビーズおよび粉砕皿を含むアセンブリを−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に冷却し、
・次に、冷却した真珠層粉末を、平均体積粒径が500nm未満、好ましくは250nm未満、より優先的には100nm以下の真珠層粒子が得られるまで、25分間の粉砕ビーズでの粉砕サイクルにかけ、
・各サイクルの後、粉末を皿の壁から分離し、ふるいにかけ、次いで粉末、皿およびビーズを、−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度で24時間凍結させ、
・最終サイクルの後、次いでメカノ構造化真珠層を分離し、ふるいにかけ、回収する。
【0049】
本発明はまた、上記の方法で得ることができ、および平均体積径が0.01〜500nmの間、好ましくは0.01〜250nmの間、より優先的には0.01〜100nmの間に含まれるメカノ構造化真珠層に関する。
【0050】
メカノ合成法で得られるメカノ構造化真珠層は、定性的情報および定量的情報を入手するためにX線回折、ラマン分光法およびレーザー粒度分析によって特徴付けられる。定量的情報は、ランダムに、結晶形態の炭酸カルシウムの存在、ならびに極めて微量ではあるがアモルファス形態の炭酸カルシウムの存在を示す[このことは短時間における皿内部の圧力の上昇(約10GPa未満)により説明される]。
【0051】
本発明の実施形態によれば、処理すべき真珠層粉末は、真珠層以外の少なくとも1種類の材料と共に粉砕される。
【0052】
真珠層以外の材料は、90%超が脱アセチル化されたキトサン粉末、キチン、藻類、真珠層片および上述の二枚貝の外殻から抽出される不溶性および可溶性バイオポリマー、硫酸銅(CuSO・5HO)、酸化亜鉛、金または銀、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される。硫酸銅については、硫酸銅五水和物、結晶硫酸銅または昇華硫酸銅を使用することができる。優先的な例として、平均体積径が1〜20μmの間に含まれる真珠層粉末と、平均体積径が約150μmであり、密度が0.6g/cmである90%超が脱アセチル化されたキトサン粉末との同時粉砕が挙げられ得る。本発明のメカノ合成法によるこれら2種類の粉末の同時処理によって、キトサン粒子の3次元形態がメカノ誘導されたアラゴナイトの生物学的結晶との密接な結合を可能している、新規のメカノ構造化バイオマテリアルの形成がもたらされる。
【0053】
本発明によるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルは、例えば、医療、獣医学、または化粧品用途などの非常に多くの用途で使用できる。したがって、本発明の特定の実施形態によれば、本発明による方法により得られる真珠層粉末および90%超が脱アセチル化されたキトサン粉末の同時粉砕によりもたらされるメカノ構造化バイオマテリアルが、特に、アンチエイジングトリートメント、おしろい、トリートメントファンデーション、口紅、ネイルケア製品、防臭剤、およびヘアケア製品用の化粧品組成に含まれる。
【0054】
本発明によるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルはまた、任意選択で、抗生物質、抗炎症薬、血管拡張薬などの医薬物質と組み合わせて、医療、製薬、または獣医学分野等の他の分野、特に、洗眼液、点眼ゲルおよび点眼クリームの製剤においても使用できる。
【0055】
したがって、優先的には、本発明によるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルは、歯科医術において、例えば、骨充填、インプラント、骨代用材において、または歯周病の治療する用途でも、および審美歯冠修復用の重合性樹脂への添加剤としても使用される。したがって、本発明による方法で得られたメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルは、例えば、歯周治療用の歯根管ペースト、歯髄覆罩用および窩洞裏装材用セメントの組成物に含めることができる。そしてこれは、例えば、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、オイゲノールまたは他の任意の精油などの成分と組み合わせることができる。
【0056】
本発明の主題はまた、構成材料のコア、任意選択で真珠層または金属または他の材料で作られた補綴要素のコア(その表面には、被膜として、本発明によるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルを、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬によって堆積されている)を備える、インプラントである。
【0057】
このインプラント、すなわち補綴要素は、様々なサイズと直径から成り、その全表面が、本発明で記載されるようなメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルで被膜されていることを特徴とする。したがって、メカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルによる被膜の生成により、それに新規の機能を付与することができる。実際に、メカノ誘導化ナノ粒子の全ての特性を考えると、機械的にコーティングされた粒子の噴霧またはコーティングによる材料の表面処理によって、以下のことが可能になる:
その形状や寸法を変更せずに再生および瘢痕形成過程に関与する薬理学的特性を付与された全ての分子を生物学的に利用可能にするために、
・より良い定着力のために、その表面の粗度を改変すること、
・受け入れ部位とのその界面を増大させること、そして最後に、
受け入れ部位の細胞および組織の機能的配向を助長するために、かつ、その生体適合性およびその機能性を高めるために、
・生体材料―細胞の相互作用性を促進すること。
【0058】
以後、用語「インプラント(implant)」または「補綴要素(prosthetic element)」は、区別することなく使用される。
【0059】
したがって、本発明はまた、メカノ誘導化ナノ粒子の堆積を可能にする方法、例えば、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬で、部分的または表面全体が、本発明の方法によって調製されるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルで被膜されていることを特徴とする、優先的には真珠層で作られたインプラントに関する。
【0060】
したがって、本発明の好ましい実施形態によれば、メカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルは、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬により、被膜として塗布される。
【0061】
本発明の特定の態様によれば、本発明の方法によって調製されるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルは、骨および歯科インプラント、ならびに骨代用材のコーティングに使用される。
【0062】
本発明は、非限定的である実施例および添付図面を参照すれば、より良く理解され、図1〜図3は、本発明の2つの好ましい実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】インプラントの概略図を表す。
【図2】骨代用材の概略図を表す。
【図3】図2の締め付けねじを表す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1のインプラント(1)は、全般的な形態が円筒の部材(2)(例えば、約10mm)を備え、その下端はくさび形状(3)である。商標名Delrin(登録商標)で市販されているポリオキシメチレンから作られる上部構造(4)が、インプラントの上端にねじ込まれ、その上縁の周囲に、例えば幅が約1mm、高さが2mmの商標名Dacron(登録商標)で販売されるポリエステルフェルトで作られたリング(5)を備える。上部構造(4)は中央に、閉鎖ねじ(6)を備えたねじ式の開口部を備える。インプラント閉鎖ねじアセンブリは、スパッタリング、噴霧、電気分解またはコーティングにより、本発明の方法によって調製されたメカノ構造化真珠層で完全に被膜されている。しかし、図1で示されるインプラントの一部分のみ、特に部材(2)および/または部材(4)しか被膜することができない。コーティングは、また、本発明のメカノ構造化バイオマテリアルで実施できる。
【0065】
別の実施形態によれば、図2および図3に示された本発明による製品は、上顎骨質の任意の損失を充填することを意図した骨代用材(7)である。製品は、全般的な形状が可変寸法の平行六面体を有し、その上部凸面(8)は商標名Dacron(登録商標)で販売されるポリエステルフェルトより成る膜(9)で被膜されており、この膜は平行六面体の丸縁面(10)で終わっている。その平行六面体の2つの端には、2つのねじ式の開口部(11)の穴が開いている。この開口部は、例えば、直径が約2mmであり、2個のねじ(12)を使用して残留骨に固定することを意図している(図3)。これらのねじは、インプラントのバイオマテリアルと同種である。長さに依って、骨代用材には、1つまたは複数のねじ式の開口部(13)で穴が開いている。この開口部は、例えば、直径が4mmであり、生体適合性の合成材料から成る上部構造を受け入れることを意図する。上部構造は、例えば、商標名Delrin(登録商標)で販売されるポリオキシメチレンから成り、閉鎖ねじ(14)を備える。上部構造は、補綴複製物要素を支持することを意図する。その下部凹部表面(15)は、残留骨の表面に嵌合することを意図する。骨代用材/固定ねじのアセンブリは、スパッタリング、噴霧、電気分解、コーティングにより、本発明の方法によるメカノ構造化真珠層で完全に被膜されている。しかし、図2に示されたインプラントの一部分しか被膜することができない。当然、表面処理を、本発明によるメカノ構造化バイオマテリアルで実施することもできる。
【0066】
したがって、本発明の主題はまた、構成材料で作られたコア、任意選択で真珠層で作られたコアを備える骨充填部材であり、その表面には、被膜として、本発明によるメカノ構造化真珠層および/またはメカノ構造化バイオマテリアルを、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬によって堆積させる。
【0067】
また、本発明による製品は、メカノ構造化真珠層またはメカノ構造化バイオマテリアルでまた被膜された種々の寸法の構成材料から成る、優先的には緻密な形態で殻厚から切り取った真珠層から成る骨接合プレートおよび骨接合ねじの形態で提供することができる。真珠層から緻密な形態で切り取ったねじおよびプレートは、密度、弾力、ビッカース硬度、耐圧縮性、弾性率が、骨のそれらの値と類似した物理的特性を持つ。その結果、ねじおよびプレートは、カルスの構築および再形成の後に除去する必要がなく、したがって永久的にその場所に保つことができるので、新たないかなる外科手術も回避できる。本発明による製品は、また、骨端、骨幹、および長骨の一部、または骨格の他の部分を代用することを意図した骨代用材を製造するために、種々の形状および寸法のモールドにおいて高圧下で圧縮することができる。
【0068】
本発明によって製造されたインプラントは、整形外科手術、顎顔面手術、および歯科口腔手術に使用できることに留意されたい。
【0069】
本発明は、哺乳動物、特にヒトにおいて使用できる。
【実施例】
【0070】
以下の実施例は、本発明の例示である。
【0071】
<実施例1>
処理すべき微粉化した真珠層粉末を以下の工程に従って調製する:
・シロチョウガイの真珠層片を1%の漂白剤で洗浄および浄化した後、圧砕機で処理し、10mm〜1cmの断片に縮小する工程、
・次に、粉砕生成物を取り出し、次いで遊星圧延機の酸化ジルコニウム粉砕皿に配置する工程、
・次いで、直径30mmの酸化ジルコニウム粉砕ビーズ15個を、各々粉砕皿に配置する工程、
・次に、回転速度400rpmで遊星圧延機を5分間起動させる(この装置は、時計回りおよび反時計回りに交互に回転する)工程、
・粉砕を受けた粉砕生成物を、次に5種類の異なったサイズ、つまり250μm、150μm、100μm、50μm、20μmのふるいおよび収集部を備える、直径が200mmのふるい機でふるいにかける工程。
【0072】
収集部に集められた真珠層粉末は、平均体積径が20μm未満である。
【0073】
<実施例2>
メカノ構造化真珠層は、以下の工程に従って調製される:
a)実施例1で得られた処理すべき真珠層粉末を、遊星圧延機の粉砕皿に設置する工程、
b)直径が10mmの酸化ジルコニウムビーズ25個を皿に加える工程、
c)処理すべき真珠層粉末、粉砕皿、および酸化ジルコニウムビーズを含むアセンブリを−18℃の温度で24時間冷凍室に置く工程、
d)1100rpmの回転速度、95Gの加速度で、各6分間の10回のサイクル(ただし、2回のサイクル毎に−18℃で2時間凍結させる)で遊星圧延機を起動させる工程、
e)遊星圧延機を停止させ、直径が10mmの酸化ジルコニウムビーズを除去する工程。
【0074】
工程b)、c)、d)およびe)を、直径が5mmの酸化ジルコニウムビーズ50個、次いで直径が2mmの酸化ジルコニウムビーズ80個を用いて繰り返す。次に、メカノ構造化真珠層を皿の壁から分離し、ふるいにかけて回収する。その平均体積径は150nm未満である。次に、25kGyのガンマ線放射によりその殺菌をする。
【0075】
<実施例3>
メカノ構造化真珠層は、以下の工程に従って調製される:
a)実施例1で得た質量200gの微粉化アラゴナイト真珠層粉末を、容量が500mLの粉砕皿に設置する工程、
b)直径2mm、重量300gの酸化ジルコニウムビーズを加える工程、
c)微粉化真珠層粉末、皿、および酸化ジルコニウムビーズを含むアセンブリを−15℃〜−20℃の間に含まれる温度で24時間冷凍室に置く工程、
d)皿を適所に設置してから、1100rpmの回転速度、95Gの加速度で、各5分間の20回のサイクル(ただし、各サイクル毎に−15℃〜−20℃の間に含まれる温度で2時間凍結させる)で遊星圧延機を起動させる工程、
e)各サイクルの終了時に、粉末を皿の壁から分離する工程。ただし、最終サイクルでは、ビーズを回収するために、メカノ構造化粉末を分離し、ふるいにかける。
【0076】
メカノ構造化真珠層を回収し、調整し、電離放射線またはエチレンオキシド蒸気で24時間殺菌した後、エアレーションを24時間行う。
【0077】
<実施例4>
真珠層粒子とキトサンとの共粉砕ホモジェネートから得られるメカノ構造化バイオマテリアルは、以下の工程に従って調製される:
a)実施例1で得られた処理すべき真珠層粉末200gを、遊星圧延機の500mL容積の粉砕皿に設置する工程、
b)平均体積径が約150μmであり平均体積密度が0.6g/cmである90%超が脱アセチル化されたキトサン粉末を皿に加える工程、
c)直径が2mmの酸化ジルコニウムビーズ300gを皿に加える工程、
d)処理すべき真珠層粉末、脱アセチル化キトサン粉末、粉砕皿および酸化ジルコニウムビーズを含むアセンブリを−18℃の温度で24時間冷凍室に置く工程、
e)1100rpmの回転速度、95Gの加速度で、各6分間の10回のサイクル(ただし、2回のサイクル毎に−18℃で2時間凍結させる)で遊星圧延機を起動させる工程、
f)遊星圧延機を停止させ、直径が2mmの酸化ジルコニウムビーズを除去する工程。
【0078】
工程c)、d)、e)およびf)を、ナノメートルオーダの平均等価体積径を示す、真珠層と脱アセチル化キトサンとの共粉砕ホモジェネートが得られるまで繰り返す。次に、メカノ構造化バイオマテリアルを分離し、ふるいにかけて回収する。次いで、バイオマテリアルを25kGyのガンマ線放射により殺菌する。
【0079】
<実施例5>
実施例2で得られるメカノ構造化真珠層から回収される真珠層の塊からプレートおよびねじを切り取る。次に、図2および図3に従って製造されたプレートおよび2本のねじを、間引かれた雌羊の大腿骨上に設置する。1カ月後の放射線検査は、プレートおよびねじが皮質骨で被膜され、再形成されたカルスに完全に統合されていることを示している。
【0080】
<実施例6>
100g当たりの組成が以下に示す通りである、骨代用材を調製する:
・平均体積径が20〜350μmの間に含まれる真珠層96g
・実施例2のメカノ構造化真珠層4g
【0081】
<実施例7>
腰、膝、または肩の補綴のための仮封セメントを調製する。仮封セメントの100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が5〜50μmである真珠層粉末90g
・実施例2のメカノ構造化真珠層10g
【0082】
<実施例8>
歯科口腔学における歯周病の治療を意図したゲルまたはペーストを調製する。その100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が5μm〜10μmの間である真珠層粉末5g
・実施例2のメカノ構造化真珠層4g
・クロルヘキシジン0.05g
・キサンタンガム2g
・総量で100gとなるような、脱塩水
【0083】
<実施例9>
窩洞裏装材としてまたは歯髄覆罩で歯内療法に使用できるペーストを調製する。ペーストの100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が5μm〜20μmの間である真珠層粉末15g
・実施例2のメカノ構造化真珠層5g
・酸化亜鉛80g
【0084】
こうして得られた混合物は、歯根管閉塞に即時使用するための流体ペーストを製造するために、オイゲノール、または任意の他の水性もしくは油性ベクター、または生体適合性を有する任意のポリマーと混合することができる。
【0085】
<実施例10>
エナメル質および象牙質における欠陥の閉塞に使用可能な混合物を調製する。混合物の100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・光重合性エポキシ樹脂80g
・シラン結合剤10g
・実施例2のメカノ構造化真珠層10g
【0086】
<実施例11>
主要な熱傷治療を意図した製剤を調製する。製剤の100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が1〜5μmの間に含まれる真珠層粉末7g
・実施例2のメカノ構造化真珠層3g
・総量で100gとなるような、コールドクリーム、アルギン酸塩、およびキトサン
【0087】
<実施例12>
皮膚、筋肉、または粘膜の病変、炎症および潰瘍の治療を意図したクリームまたはゲルを調製する。クリームまたはゲルの100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が1〜5μmの間に含まれる真珠層粉末1.7g
・実施例3で調製したメカノ構造化バイオマテリアル0.3g
・精油複合体1g
・総量で100gとなるような、脱塩水、白色ワセリンおよびシアバター
【0088】
クリーム状の生成物を、48時間毎に高さ37cm、幅16cmの胸部が壊死した馬に塗布したところ、覆っている皮膚ならびに皮下細胞組織からその下の筋肉の筋膜までの全てに関係する物質の喪失を引き起こした。病変の表面積および深さが1日に1cmの速度で減少し、45日後には体毛の変色なしに回復したことが確認できた。
【0089】
<実施例13>
悪液質および筋萎縮の治療のための静脈内経路による注入が可能な溶液を調製する。溶液20ml当たりの組成は以下に示す通りである:
・実施例2のメカノ構造化真珠層1g
・総量20mlとなるような、注入可能な等張液
【0090】
注入可能な溶液を、獣医センターで、悪液質で栄養不良の治療中の馬に静脈内経路により1回投与した。15日後、動物の体重増加は25kgのオーダであった。
【0091】
<実施例14>
有蹄動物の蹄から物質の喪失(裂蹄、蟻洞および蹄に障害を引き起こす他の病状など)を充填するための材料を調製する。充填材の100g当たりの組成は以下に示す通りである:
・平均体積径が10〜20μmの間に含まれる真珠層粉末4g
・実施例2のメカノ構造化真珠層1g
・ブナおが屑4g
・総量100gとなるような、単相中性シリコーンのゲル
【0092】
<実施例15>
本発明によるインプラントを、以下のように調製する:
・図1で記載されるようなインプラントを、実施例2で調製したメカノ構造化真珠層で被膜する;
・局所(local)麻酔および/または局所部位(locoregional)麻酔、または全身麻酔の後、上顎骨をインプラントする部位に垂直に切開して、または円形メスを使用して露出させる;
・図1で示されている上部構造のDacronフェルトの端に挿入されるインプラントの寸法の骨穴を提供するように較正された器具を使用して、皮質骨を突出させて、骨に穴を開ける;
・歯肉の歯槽粘膜を縫合した後は、充填せずにインプラントをそのまま埋めておく。
【0093】
手術から2週間後に実施された臨床放射線検査は、造骨細胞によるインプラントの表面のブラインド細孔へのコロニー形成によって、完全な歯肉の瘢痕形成とインプラント周囲空間の急速な充填とを示す。
【0094】
Dacronフェルトリング面での生体検査では、組織切片上において、線維芽細胞によるDacronフェルトメッシュへのコロニー形成によって、炎症細胞の存在なしに歯肉が付着した状態で真の歯肉定着がもたらされていることを示す。
【0095】
<実施例16>
本発明による骨代用材を、以下のように調製する:
・骨代用材を、図2および図3に示すように、実施例2で調製したメカノ構造化真珠層で被膜する;
・手術対象範囲のラジオグラフィーおよび走査を実施した後、次に局部麻酔および/または局所部位麻酔または全身麻酔を行い、上顎骨稜の横切開を実施し、続いて代用材と類似の形状および寸法のシリコーン拡張器を挿入できるように、粘膜骨膜の脱離を行う。約3週間に渡って拡張器を生理的血清で漸進的に充填することで、歯肉の歯槽粘膜の拡張を引き起こす;
・拡張器を除去した後、代用材を得られたトンネルに挿入し、締め付けねじを使用して固定する。その上面は歯槽粘膜によって被膜され、その下面は表面が粗面化した上顎骨の上に乗っている;
・代用材は、横口縫合により粘膜で覆われた線維組織に固定される。
【0096】
4週間後に行った放射線検査は、粘膜で覆われた線維組織により、代用材が完全に統合され、固定されたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真珠層の温度を40℃未満、好ましくは20℃未満、さらにより優先的には0℃以下に保つことを特徴とする、マイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項2】
処理すべき真珠層粒子がシロチョウガイ、クロチョウガイまたは他のアコヤガイ属、オオシャコガイおよびそれらの混合物を含む群から選択される二枚貝の真珠層片から得られることを特徴とする、請求項1に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項3】
以下に示す連続した工程
a)処理すべき真珠層粉末を遊星圧延機の粉砕皿に設置する工程、次に、
b)直径がDのN個の粉砕ビーズ(iは1〜20の間、好ましくは3〜15の間、より優先的には5〜14の間に含まれる整数であり;Nは2〜150の間、好ましくは10〜100の間、より優先的には20〜85の間に含まれる整数である)を粉砕皿に設置する工程、
c)800〜1400rpmの間に含まれ、優先的には1100rpmである回転速度Vで、90〜110G、好ましくは90〜100G、より優先的には95Gの加速度で遊星圧延機を起動させる工程、
d)遊星圧延機を停止させ、直径Dの粉砕ビーズを除去する工程を含み、
所望のサイズの真珠層粒子が得られるまで、直径がDi+1(Di+1<D)のNi+1(Ni+1>N)粉砕ビーズについて、工程b、cおよびdを繰り返し、
所望のサイズの粒子が得られた場合、工程d)完了時にメカノ構造化真珠層を回収する、請求項1または請求項2に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項4】
ビーズの数およびビーズの直径が、処理すべき真珠層粒子2/5に対しビーズ3/5の重量比になるようなものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項5】
粉砕皿、処理すべき真珠層粉末、および/または、粉砕ビーズを、使用前に−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に、および任意選択で工程b)、c)およびd)を各々繰り返す前に冷却することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項6】
前記粉砕サイクルc)が冷却された雰囲気下で実施される、または粉砕サイクルc)に冷却サイクルが組み入れられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項7】
処理すべき真珠層粉末を粉砕皿に設置し、粉砕ビーズを粉砕皿に設置し、処理すべき真珠層粉末、粉砕ビーズおよび粉砕皿を含むアセンブリを−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に冷却し、
次に、処理すべき保冷した真珠層粉末を、
a)平均体積径が5〜15μmの間に含まれる真珠層粒子が得られるまでの、直径10mmの粉砕ビーズによる粉砕サイクル、次に、
b)平均体積径が800nm〜2μmの間に含まれる真珠層粒子が得られるまでの、直径5mmの粉砕ビーズによる粉砕サイクル、次に、
c)平均体積径が500nm未満、好ましくは250nm未満、より優先的には100nm未満である真珠層粒子が得られるまでの、直径2mmの粉砕ビーズによる粉砕サイクルにかけ、
次に、ナノ構造化真珠層を回収することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項8】
処理すべき真珠層粉末を粉砕皿に設置し、粉砕ビーズを粉砕皿に設置し、処理すべき真珠層粉末、粉砕ビーズおよび粉砕皿を含むアセンブリを−30℃〜5℃の間、好ましくは−20℃〜−15℃の間に含まれる温度に冷却し、
次に、冷却した真珠層粉末を、
a)直径10mmの粉砕ビーズにより実施される、各サイクルが1〜10分、好ましくは2〜8分、より優先的には6分の間継続する、5回〜15回、好ましくは7回〜13回、より優先的には8回〜11回の粉砕サイクル、次に、
b)直径5mmの粉砕ビーズで実施される、1〜10分、優先的には6分の、5回〜15回、優先的には10回の粉砕サイクル、次に、
c)直径2mmの粉砕ビーズで実施される、1〜10分、優先的には6分の、5回〜15回、優先的には10回の粉砕サイクルにかけ、
次に、メカノ構造化真珠層を回収することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法により得ることができ、平均体積径が0.01〜500nmの間、好ましくは、0.01〜250nmの間、より優先的には0.01〜100nmの間に含まれる真珠層粉末。
【請求項10】
処理すべき真珠層粉末を、真珠層以外の少なくとも1種類の材料と共に粉砕することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項11】
前記材料が、90%超が脱アセチル化されたキトサン粉末、キチン、藻類、真珠層片および前記二枚貝の外殻から抽出された不溶性および可溶性バイオポリマー、硫酸銅(CuSO4,5HO)、酸化亜鉛、金または銀、ならびにそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載のマイクロメートルオーダーの真珠層粉末のメカノ合成によるメカノ構造化真珠層の調製方法。
【請求項12】
請求項9に記載の、または請求項1〜8および請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法により得られたメカノ構造化真珠層の化粧用途における使用。
【請求項13】
請求項9に記載の、または請求項1〜8および請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法により調製されたメカノ構造化真珠層の骨および歯科インプラントならびに骨代用材のコーティングにおける使用。
【請求項14】
請求項9に記載の、または請求項1〜8および請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法により得られる真珠層を、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬することにより表面を被膜した、構成材料のコア、任意選択で真珠層のコアを有するインプラント。
【請求項15】
請求項9に記載の、または請求項1〜8および請求項10〜11のいずれか一項に記載の方法により得られた真珠層を、スパッタリング、噴霧、コーティング、電気分解または浸漬することにより表面を被膜した、構成材料のコア、任意選択で真珠層製のコアを有する骨充填部材。
【請求項16】
請求項9に記載の、または請求項1〜8および10〜11のいずれか一項に記載の方法により得られた医療用または獣医学用のメカノ構造化真珠層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−529949(P2012−529949A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515545(P2012−515545)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051201
【国際公開番号】WO2010/146308
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511307236)
【Fターム(参考)】