説明

メガネフレームのツル継手構造

【課題】 メガネのフロント部両側に取付けたツルが何時までもガタ付くことなく開閉操作が出来るツル継手構造の提供。
【解決手段】 フロント部両側のヨロイ部7,7には二つ折りした上側片12と下側片13から成る継手部11を取着し、該継手部11は形状記憶合金で構成して常温下では上側片12と下側片13とで弾性力を付勢して基部15を挟み込み、上側片12には上軸17を突出すると共に下側片13には下軸18を突出し、これら上下軸を基部15に設けた軸穴16に嵌めて軸支している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメガネのフロント部両サイドに取付けてツルが何時までもガタ付くことなく折畳み出来るように連結した継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メガネにはフロント部の両側にツルを備えていて折畳むことが出来る。すなわち、メガネを顔に掛ける場合に両ツルを開き、顔から外した場合には両ツルは折畳んで閉じられる。ところで、メガネのツルを連結している蝶番は非常に小さくなっていて、長いツルを支えるには大きな負担がかかる。従って、開閉操作に伴って蝶番の摺動面は摩耗し、ツルはガタ付きを生じて掛けているメガネが位置ズレするなど安定性が損われる。
【0003】
特に近年のメガネフレームは軽くてバネ性に優れた材質が好まれる為に、この要求を満たす材質としてチタン材が多用されている。そして、蝶番もチタン製とされる場合が多く、このチタン製蝶番ではその摺動面の摩耗が特に著しい。そしてチタン製蝶番では切削加工された摺動面が鋳物のように微細な凹凸面となっていて、すなわち滑らかな面でないことから、ツルの折畳み操作に際してキシミを発生し、滑らかな折畳み操作が出来ない。すなわち、滑らかな摺動が得られない為である。
【0004】
そこで、従来ではこの小さな蝶番の摺動面にワッシャを介在することで滑らかな摺動をもたらし、磨耗を防止する対策が講じられている。特開2004−138718号に係る「メガネフレームのツル折畳み継手及び蝶番並びにワッシャ」は、互いに噛み合う一方の蝶片コマの軸穴にワッシャの筒部を嵌入し、該筒部に別のワッシャの筒部を嵌めて他方の蝶片コマと軸ネジを介して組み付けしている。しかし、小さな蝶番にさらに小さなワッシャを取付けて組付ける作業は容易でなく、生産性が悪くなる。勿論、製作コストは高く成ってしまう。
【0005】
又、特開2002−207198に係る「メガネフレームのツル継手構造」は、ヨロイ先端には軸受けを備えると共に軸受けの軸穴には円形ツバを形成した軸を回転可能に嵌め、そして軸にはツルを連結して軸穴から外側に貫通したスライド溝に沿ってツルは開閉することが出来、スライド溝を形成するガイド片の一部にはツルが挿通する大きさの切欠き部を有し、そして軸部の外周面には押圧部を当接してバネ力を付勢した構造となっている。従って、ツルは折畳み操作に際してガタ付くことはないが、しかし構造が複雑になり、コストは必然的に高く成ってしまう。
【特許文献1】特開2004−138718号に係る「メガネフレームのツル折畳み継手及び蝶番並びにワッシャ」
【特許文献2】特開2002−207198に係る「メガネフレームのツル継手構造」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来のツル継手構造には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、極めて簡単な構造であって製作並びに組付けコストも安くなり、さらにツルが何時までもガタ付くことなく安定した折畳み操作を持続することが出来るメガネフレームのツル継手構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るツル継手構造は、ヨロイ先端に設けた継手部にツルの基部を挟み込んだ構造としている。すなわち、継手部は上側片と下側片とが二つ折りして構成され、上側片と下側片とで基部が挟まれる。ここで、継手部は形状記憶合金が用いられ、常温ではツルの基部に弾性力が付勢された状態で挟まれている。又はステンレス材や合金バネ材にて継手部を構成することも可能であり、いずれの材質からなる継手部であっても基部に弾性力を付勢した状態で挟み込んだ構造としている。
【0008】
ツル基部には軸穴が設けられ、二つ折りした上側片と下側片には軸が突出して設けられている。そして軸は基部の軸穴に嵌って軸支されるが、逆に上側片及び下側片に軸穴を形成し、基部側には軸を設けることも出来る。二つ折りされた形状記憶合金製の継手部は加熱されることで、又は冷却されることで軟らかくなり、開口を開いて基部を間に挟み込んでツルが取付けられる。そして、二つ折りされた継手部の一部又はヨロイ部先端がストッパーとして機能し、ツルが開く際の開き度が規制される。そして、ツルの基部を挟み込む上側片と下側片の間にはワッシャを介在することもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るツル継手構造は、ツルの基部がヨロイ側に設けた継手部に挟まれる構造となっている。そして、二つ折りされた継手部の上側片と下側片に突出した軸が基部に設けた軸穴に嵌って軸支され、ツルは軸を中心に旋回して開閉することが出来る。継手部は形状記憶合金などを材質としているために、常温では基部を挟み込んで弾性力を付勢した状態とし、従ってツルは何時までもガタ付くことなく折畳み操作が可能と成る。
【0010】
すなわち、基部の摺動面及び継手部の摺動面が多少摩耗しても該基部を挟み込む弾性力が大きく低下することはない。形状記憶合金からなって二つ折りした継手部を加熱したり、逆に冷却するならば、該継手部は軟らかくなって開口から基部を間に挟みこむことが出来、ツルの取付け作業も至って簡単である。勿論、構造も簡素化されることでコストは安くなる。
【実施例】
【0011】
図1は本発明に係るツル継手構造を備えているメガネを表している。同図に示すメガネはレンズ1の上側に位置するハーフリム部2と下側に張設した水糸3にて該レンズ1を保持した構造であり、一般にナイロールフレームを称されている。ハーフリム部2,2は中央に連結部4を設け、外側にはヨロイ部7,7を設けて連続し、連結部4の背面側には補助連結部5が重なり合って中央部の強度を高くしている。
【0012】
補助連結部5は両側にアーム6,6を延ばした概略門形を成し、アーム先端とヨロイ部7に水糸3の先端を固定してレンズ1が保持されている。そして、上記アーム6には湾曲した脚8をロウ付けし、該脚先端には鼻当てパット9を取付けている。そして、このように構成しているメガネのフロント部の両側となるヨロイ部7,7には継手部11,11を介してツル10,10が折畳み出来るように取付けられている。
【0013】
ところで、ヨロイ部7の先端には上記継手部11が固定され、この継手部11にツル10が取付けられる。該継手部11はヨロイ部7の先端にピン14を穴に挿通してカシメ、その後ロウ付けした取着構造となっている。そして、この継手部11にツル10が取付けられているが、該継手部11は上側片と下側片の二つ折り形態と成っていて、ツル10の基部は上側片と下側片とで挟み込まれた継手構造を構成している。
【0014】
図2はツル継手構造を表している実施例である。継手部11は二つ折りされて上側片12と下側片13を有し、上側片12は長く成っていてヨロイ部7の先端とピン14にてカシメられ、しかも動かないようにロウ付けされている。従って、継手部11はヨロイ部7の先端に固定された状態にある。
【0015】
そして、この継手部11にはツル10の基部15が回転出来るように連結され、その為に、上側片12と下側片13とで基部15が挟み込まれている。しかし、挟まれただけの状態では継手部11から基部15は離脱する為に、基部15に設けた軸穴16には上側片12から突出した上軸17が嵌り、下側片13から突出した下軸18が嵌っている。
【0016】
従って、基部15は継手部11から離脱することはなく、上軸17及び下軸18を中心として回転し、ツル10はスムーズに開閉することが出来る。そして、基部15の先端にはストッパー19が形成され、このストッパー19はヨロイ部7の先端に当って停止し、ツル10の開き度が規制される。
【0017】
図3は継手部11を単独で表しているが、この材質は形状記憶合金が使用され、常温では同図に示すように下側片13は上側片12の側へ僅かに寄っていて、開口20にツル10の基部15を挟むことは出来ない。すなわち、この状態で記憶されていて、該継手部11を一定以上の高温に加熱することで、又は一定以下の温度に冷却することで軟らかくなり、開口20を開くことが出来る。
【0018】
従って、継手部11を軟らかくした状態で基部15を簡単に挟んで、軸穴16には上軸17と下軸18を嵌めることが出来る。そして、該継手部11が常温になるならば、図3の状態に復元する弾性力(バネ力)が発生し、この弾性力によって基部15は挟み込まれる。従って、基部15と上側片12及び下側片13との間に隙間が発生することはなく、ツル10の開閉操作に際してガタ付くこともない。使用に伴って多少摩耗しても、弾性力が低下して隙間が生じることもない。
【0019】
図4は本発明に係るツル継手構造を備えた他のメガネを表している。メガネとしての基本形態は前記図1に示したものと同じであるが、フロント部を構成する両ハーフリム21,21は連結部材22によって連結されている。ただし、ヨロイ部7,7はハーフリム21,21の外側に連続して形成されている。
【0020】
ところで、継手部11はヨロイ先端にロウ付けされていて、前記図3に示した継手部11と同じように、形状記憶合金を材質として二つ折りされて上側片12と下側片13を有している。ここで、ヨロイ部7に継手部11をロウ付けするに際して下地メッキが施される。そして、上側片12と下側片13とでツル10の基部15が挟み込まれ、ガタ付かないように弾性力が付勢された状態にある。
【0021】
図2に示した継手構造と同じく、構造継手部11の上側片12には上軸17が突出して設けられ、下側片13には下軸18が突出して設けられていて、ツル基部15の軸穴16にこれら上軸17及び下軸18が嵌って軸支されている。一方、図5に示すように、継手部11の上側片12に上軸穴23を形成し、下側片13に下軸穴24を形成することも出来、基部15の上面及び下面に設けた上軸25と下軸26を上下軸穴23,24に嵌めることで軸支する場合もある。ここで、上軸25及び下軸26は基部の穴にピンを圧入して上下面に突出することも出来る。
【0022】
ところで、上記継手部11の材質としては一般に形状記憶合金が用いられるが、バネ性に優れたステンレス材や合金バネ材を使用することも可能である。形状は前記図3に示しているように上側片12と下側片13を有し、開口20を開いた上体でツルの基部15を嵌めることが出来る。勿論、ステンレス製の継手部11であるならば、上側片12と下側片13を押し開いて該基部15が嵌められる。そして、基部15と上側片12及び下側片13の間にワッシャを介在することも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の継手構造を備えたメガネ。
【図2】本発明に係るツル継手構造を示す実施例。
【図3】継手構造を構成する継手部の具体例。
【図4】本発明の継手構造を備えたメガネ。
【図5】本発明に係るツル継手構造を示す他の実施例。
【符号の説明】
【0024】
1 レンズ
2 ハーフリム部
3 水糸
4 連結部
5 補助連結部
6 アーム
7 ヨロイ部
8 脚
9 鼻当てパット
10 ツル
11 継手部
12 上側片
13 下側片
14 ピン
15 基部
16 軸穴
17 上軸
18 下軸
19 ストッパー
20 開口
21 ハーフリム
22 連結部材
23 上軸穴
24 下軸穴
25 上軸
26 下軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
メガネのフロント部両側に折畳み出来るようにツルを取付ける継手構造において、フロント部両側のヨロイには二つ折りした上側片と下側片から成る継手部をカシメやロウ付けなどにて取着し、該継手部は形状記憶合金で構成して常温下では上側片と下側片とで弾性力を付勢してツルの基部を挟み込み、上側片には上軸を突出すると共に下側片には下軸を突出し、これら上下軸を基部に設けた軸穴に嵌めて軸支したことを特徴とするメガネのツル継手構造。
【請求項2】
メガネのフロント部両側に折畳み出来るようにツルを取付ける継手構造において、フロント部両側のヨロイには二つ折りした上側片と下側片から成る継手部をカシメやロウ付けなどにて取着し、該継手部は形状記憶合金で構成して常温下では上側片と下側片とで弾性力を付勢してツルの基部を挟み込み、上側片には上軸穴を形成すると共に下側片には下軸穴を設け、これら上下軸穴には基部に設けた上軸と下軸を嵌めて軸支したことを特徴とするメガネのツル継手構造。
【請求項3】
上記基部の先端にはツルが開いた際にヨロイ先端に当るストッパーを形成した請求項1、又は請求項2記載のメガネのツル継手構造。
【請求項4】
上記継手部の材質をステンレスや合金バネ材等とし、上側片と下側片にてツルの基部を挟み込んで弾性力を付勢した請求項1、請求項2、又は請求項3記載のメガネのツル継手構造。
【請求項5】
上記継手部をヨロイと一体化した請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載のメガネのツル継手構造。
【請求項6】
ツルの基部を挟み込む上側片と下側片の間にはワッシャを介在した請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5記載のメガネのツル継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−240680(P2007−240680A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60462(P2006−60462)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(595120747)
【Fターム(参考)】