説明

メソトリオンの精製法

メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物のレベルを下げる方法であって、(i)メソトリオン・サンプルを水性溶媒の中に入れて水溶液にするステップと、(ii)その水溶液のpHを9.5以上に調節するステップと、(iii)その溶液からメソトリオンを結晶化させるステップを含む方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物の量を減らす新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メソトリオン(2-(2'-ニトロ-4'-メチルスルホニルベンゾイル)-1,3-シクロヘキサンジオン)は、トウモロコシの選択的除草剤であり、一般式(I)の構造を持つ。
【0003】
【化1】

【0004】
メソトリオンは、以下の反応スキームに示してあるように、2-ニトロ-4-メチルスルホニルベンゾイルクロリドをシクロヘキサンジオンと反応させてエノールエーテルを得た後、再構成反応によってメソトリオンを得ることによって調製される。
【0005】
【化2】

【0006】
2-ニトロ-4-メチルスルホニルベンゾイルクロリドは、対応する安息香酸から調製される。その安息香酸は、2-ニトロ-4-メチルスルホニルトルエンの酸化によって調製される。調製経路に関するより詳しいことは、アメリカ合衆国特許第4,695,673号に見いだすことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メソトリオン・サンプルは、再構成プロセスの間にアセトンシアノヒドリン触媒からの残留シアン化物で汚染される。そこで本発明の1つの目的は、メソトリオン・サンプルに含まれる残留シアン化物のレベルを許容可能なレベルまで下げるための単純だが効果的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、水溶液にしたメソトリオン・サンプルのpHを調節すると、得られるシアン化物のレベルに大きな影響が及ぶことが見いだされた。
【0009】
そこで本発明により、メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物のレベルを下げる方法であって、
(i)メソトリオン・サンプルを水性溶媒の中に入れて水溶液にするステップと、
(ii)その水溶液のpHを9.5以上に調節するステップと、
(iii)その溶液からメソトリオンを結晶化させるステップを含む方法が提供される。
【0010】
本発明の一実施態様では、メソトリオン・サンプルをあらかじめ分離しておき、その分離したサンプルを水性溶媒に溶かすことによって水溶液を形成する。
【0011】
本発明の第2の実施態様では、メソトリオン・サンプルはあらかじめ分離されておらず、上記の濃縮/再構成反応で使用する水性溶媒に溶けたままである。
【0012】
水性溶媒は、水と水溶性溶媒(例えばアセトニトリル、トリエチルアミン、メタノール、エタノール、アセトン)からなるグループの中から選択することができる。水性溶媒は水であることが好ましい。メソトリオン・サンプルを水性溶媒に溶かして濃度が1%〜30%の溶液にするとよい。濃度は、5%〜15%が好ましく、8%〜11%がより好ましい。
【0013】
水溶液のpHは少なくとも11まで上げるとよい。pHは少なくとも11.5であることが好ましい。メソトリオン・サンプルの水溶液は、少なくとも5分間にわたってpHを少なくとも9.5に維持するとよい。この時間は少なくとも15分間であることが好ましく、少なくとも30分間であることがより好ましい。
【0014】
水溶液の温度は30℃を超えてはならない。
【0015】
結晶化は、実験室での標準的な方法に従って実施する。例えばバッチ式結晶化では、塩酸を結晶化装置に添加することにより、最終的なpHを、開始時の9.5以上から2.5に調節する。塩酸は、十分に混合されるように添加せねばならない。結晶化は、半バッチ法または連続法として実施することもできる。結晶化ステップには、窒素散布ステップも含むことができ、窒素を結晶化装置に連続的に吹き込んで洗浄装置に送る。
【0016】
本発明の方法はさらに、メソトリオン・サンプルがあらかじめ分離されていない場合(すなわち本発明の第2の実施態様)に溶媒を除去する蒸留ステップを含むことができる。蒸留ステップは、pHを9.5以上に調節する前、またはpHを9.5以上に調節した後に実施することができる。蒸留ステップは十分な量の水蒸気を用いて実施し、水溶液から溶媒を除去するとよい。
【0017】
本発明の方法により、メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物のレベルが好ましいことに150ppm以下になる。このレベルは100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
これから本発明を以下の実施例を参照してより詳しく説明するが、これら実施例は例示であり、本発明がこれら実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0019】
含まれる全CNが多い湿潤なペースト状のメソトリオンに対していろいろな処理を行ない、全CN含有量を減らすことを試みた。結果を表1に示してある。
【0020】
【表1】

【実施例2】
【0021】
溶媒を蒸留している間にプラントから採取したサンプルからメソトリオンを結晶化させた。サンプルは、蒸留ステップの間に4500ポンドの水蒸気を使用した後(蒸留が完了していない)と5000ポンドの水蒸気を使用した後(蒸留が完了)の両方で、同じバッチから採取した。サンプルのpHを調節し、サンプルを実験室での標準的な方法で結晶化させた。湿潤なペーストを滴定することによって全CM含有量を測定した。結果を表2に示してある。
【0022】
【表2】

【実施例3】
【0023】
溶媒を蒸留している間にプラントから採取したサンプルからメソトリオンを結晶化させた。結晶化開始時のpHを変えることの効果と、結晶化装置の上部空間をパージすることの効果を調べた。サンプルは、蒸留ステップの間に4500ポンドの水蒸気を使用した後(蒸留が完了していない)と5045ポンドの水蒸気を使用した後(蒸留が完了)の両方で、同じバッチから採取した。サンプルのpHを調節し、サンプルを実験室での標準的な方法で結晶化させた。湿潤なペーストを滴定することによって全CM含有量を測定した。結果を表3に示してある。
【0024】
【表3】

【実施例4】
【0025】
この実施例では、連続的結晶化においてpHをさまざまな値にして結晶化させたメソトリオンに含まれるシアン化物の量を調べる。結果を表4に示してある。
【0026】
【表4】

【実施例5】
【0027】
標準的な濃縮/再構成反応によって酸塩化物からメソトリオンを製造した。濃縮/再構成反応の後、水を添加してpHを11超に調節し、その値を半時間にわたって維持した。次にpHを約5に調節し、混合物を蒸留した後、pHが5または9.5の状態からバッチ式結晶化を行なった。結果を表5に示してある。
【0028】
【表5】

【実施例6】
【0029】
蒸留が終わるとメソトリオンの大きなサンプルが得られた。このサンプルを複数のアリコートに分割し、pHを11超に調節した。一連のバッチ・サンプルを作り、所定のpHにて表に記載した時間にわたって撹拌状態に維持した後、pHを素早く2.4に調節し、濾過し、洗浄し、全シアン化物を分析した。結果を表6に示してある。
【0030】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物のレベルを下げる方法であって、
(i)メソトリオン・サンプルを水性溶媒の中に入れて水溶液にするステップと、
(ii)その水溶液のpHを9.5以上に調節するステップと、
(iii)その溶液からメソトリオンを結晶化させるステップを含む方法。
【請求項2】
上記メソトリオン・サンプルをあらかじめ分離しておき水性溶媒に再び溶かす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記メソトリオン・サンプルがあらかじめ分離されておらず、水性溶媒中に水溶液としてすでに存在している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
蒸留ステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記水溶液のpHを9.5以上に調節する前に上記蒸留ステップを実施する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記水溶液のpHを9.5以上に調節した後に上記蒸留ステップを実施する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
上記結晶化ステップに窒素散布ステップも含まれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記メソトリオン・サンプルに含まれるシアン化物のレベルを150ppm以下に下げる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−530468(P2007−530468A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504283(P2007−504283)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002230
【国際公開番号】WO2005/092846
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】