説明

メソポーラスシリカ粒子の製造方法

【課題】均質なメソ細孔構造を有し、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子の効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、水不溶性物質(a)を及び水を含有する分散液(A)に、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを経時的に添加して反応を行う工程を含む、メソポーラスシリカ粒子の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラスシリカ粒子を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質構造をもつ物質は高い表面積を有するため、触媒担体、酵素や機能性有機化合物等の固定化担体として広く使用されている。特に、多孔質構造を形成する細孔の細孔径の分布がシャープである場合、分子篩としての作用が発現し、構造選択性を有する触媒担体としての利用や、物質分離剤、徐放性担体への応用が可能となる。かかる応用のために、均一で微細な細孔を有する多孔体が求められている。
均一で微細な細孔を有する多孔体として、メソ領域の細孔を有するメソポーラスシリカが開発され、前記用途の他に、ナノワイヤー、半導体材料、光エレクトロニクスへの応用等の分野での利用が注目されている。
【0003】
メソ細孔構造を有するシリカとして、外殻がメソ細孔構造を有し内部が中空のシリカ粒子が知られている。
例えば、特許文献1には、非イオン界面活性剤としてのソルビタンモノステアレート又はアルキルトリメチルアンモニウムを含む水とトルエンのO/W型エマルション中で、トリクロロシラン等の有機金属ハロゲン化合物を加水分解し製造する、複数の細孔を有する殻を有する多孔質中空粒子が記載されている。
また、非特許文献1には、界面活性剤を含む水溶液にシリカ源を滴下後、加熱処理することにより、メソ細孔を有する中空メソポーラスシリカをシリカの最終濃度2%で合成できると記載されている。しかし、非特許文献1で得られた中空メソポーラスシリカのBET比表面積は690〜1830m2/gと高いが、粒子径の分布がブロードである。
【0004】
【特許文献1】特開2007−44610号公報
【非特許文献1】Guangshan Zhu他、J.Am.Chem.Soc.、第123巻、第7723頁(2001年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、均質なメソ細孔構造を有し、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子の効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、コアとなる不溶性物質を分散させた溶液に、界面活性剤とシリカ源を経時的に添加することにより、均質なメソ細孔構造を有し、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子を効率よく製造できることを見出した。
すなわち本発明は、中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(A)に、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを経時的に添加して反応を行う工程を含む、メソポーラスシリカ粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、均質なメソ細孔構造を有し、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(メソポーラスシリカ粒子の製造方法)
本発明のメソポーラスシリカ粒子の製造方法は、中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(A)に、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを経時的に添加して反応を行う工程を含むことを特徴とする。
界面活性剤(b)及びシリカ源(c)の添加は経時的に行えばよく、その他に特に制限はない。界面活性剤(b)及びシリカ源(c)を分散液(A)に対して別々に添加してもよいが、界面活性剤(b)及びシリカ源(c)を含有する溶液(B)として、添加することがより好ましい。
なお、シリカ源(c)を経時的に添加する前の分散液(A)中の界面活性剤(b)の濃度は、臨界ミセル濃度以下であることが好ましい。ここで、分散液(A)中の界面活性剤(b)の濃度とは、25℃における、溶液全体に対する界面活性剤(b)のモル数をいう。
以上のことから、本発明の製造方法は、以下の工程を含むことがより好ましい。
工程(I):水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(A)を調製する工程。
工程(II):陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを含有する溶液(B)を調製する工程。
工程(III):撹拌下で、分散液(A)に溶液(B)を経時的に添加して反応を行い、水不溶性物質(a)を内包するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の水分散液を調整する工程。
以下、各工程及びそこで用いる各成分について説明する。
【0009】
工程(I)
工程(I)は、水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(A)を調製する工程である。
ここで用いられる水不溶性物質(a)としては、疎水性有機溶剤、陽イオン性高分子化合物、非イオン性高分子化合物等の有機高分子化合物及び無機化合物から選ばれる1種以上が好ましい。水不溶性物質(a)には水への溶解性の低い水難溶性の物質も含まれる。具体的には、有機高分子化合物や無機化合物等の固体物質については、20℃の水への溶解度が1%以下のものを意味する。
水不溶性物質(a)としての疎水性有機溶剤は、水に対する溶解性が低く、水と分相を形成するものを意味する。好ましくは、後述する第四級アンモニウム塩の存在下で分散可能な溶剤である。このような疎水性有機溶剤としては、LogPOWが1以上、好ましくは2〜25の化合物が挙げられる。ここで、LogPとは、化学物質の1−オクタノール/水分配係数であり、logKOW法により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数を積算して求められる(Meylan, W.M. and P.H. Howard. 1995. Atom/fragment contribution method for estimating octanol-water partition coefficients. J. Pharm. Sci. 84: 83-92参照)。かかる疎水性有機溶剤としては、例えば、炭化水素化合物、エステル化合物、炭素数6〜22の脂肪酸、炭素数6〜22のアルコール及びシリコーンオイルなどの油剤や、香料成分、農薬用基材、医薬用基材等の機能性材料を挙げることができる。
【0010】
有機高分子化合物としては、カチオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー及び両性ポリマーから選ばれる1種以上のポリマーであり、エチレン性不飽和モノマーを乳化重合してなるポリマー粒子が好ましい。また実質的に水不溶性のポリマーが用いられる。
ポリマーの中では、カチオン性ポリマー及びノニオン性ポリマーが好ましく、シリカ粒子の形成し易さの観点から、カチオン性ポリマーがより好ましい。
カチオン性ポリマーとしては、陽イオン界面活性剤の存在下で、カチオン性基を有するエチレン性不飽和モノマー(混合物を含む)を乳化重合して得られるものが好ましい。
カチオン性モノマーとしては、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、ジアルキルアミノ基又はトリアルキルアンモニウム基を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
カチオン性ポリマーは、前記カチオン性モノマー由来の構成単位を有するが、カチオン性モノマー由来の構成単位以外に、アルキル(メタ)アクリレート、スチレン等の疎水性モノマーに由来する構成単位を含有することができる。
【0011】
無機化合物としては、例えば、シリカ、金属、金属化合物等が挙げられる。
シリカとしては粒子状シリカが好ましく、中空構造のメソポーラスシリカ粒子又はコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子でもよい。すなわち別途調製した、中空メソポーラスシリカ粒子や、コアシェルタイプのメソポーラスシリカ粒子をコアとして利用することができる。分散液(A)中で予め外殻の薄いコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子を合成し、それを核として用いてもよい。これは、少量の界面活性剤(b)とシリカ源(c)ならば、予め溶液(B)を調整することなく、別々に添加しても殻厚の薄いコアシェルタイプのメソポーラスシリカを形成することができるため、それを水不溶性物質(a)としてもよいということを意味する。
【0012】
金属又は金属化合物を形成する金属としては、特に制限はなく、周期律表第3族〜第15族の金属元素から選ばれる1種以上が含まれる。
金属の具体的としては、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドの第3族金属、ランタノイドとしてはランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウムが挙げられる。チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の第4族金属、バナジウム、ニオブ、タンタル等の第5族金属、クロム、モリブデン、タングステン等の第6族金属、マンガン、レニウム等の第7族金属、鉄、ルテニウム、オスミニウム等の第8族金属、コバルト、ロジウム、イリジウム等の第9族金属、ニッケル、パラジウム、白金等の第10族金属、銅、銀、金等の第11族金属、亜鉛、カドミウム、水銀等の第12族金属、アルミニウム、ガリウム、インジウム等の第13族金属、錫、鉛等の第14族金属、アンチモン、ビスマス等の第15属金属等が挙げられる。
これらの中では、触媒作用、製造上等の観点から、周期律表第3〜12族、特に第4〜11族の遷移金属が好ましく、具体的にはチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等が好ましく、チタン、鉄、ニッケル、銅がより好ましい。
金属化合物としては、上記金属の酸化物、水酸化物、塩化物の他、アンモニウム塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩等の塩が挙げられる。これらの中では、汎用性、製造上等の観点から、金属酸化物が好ましく、特に酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅が好ましい。
上記の金属化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
水不溶性物質(a)は、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子のコア部を形成することになるが、その大きさは、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の使用目的に応じて適宜決定することができる。コア部の大きさの調整は、水不溶性物質として固体物質を用いる場合は、基本的にはその大きさで調整することができるが、固体物質の凝集や疎水性有機溶剤を用いる場合は、混合時の撹拌力、溶液の温度等の物理的因子の他に、その物質の種類、場合により界面活性剤、水溶性有機溶剤の添加等によって適宜調整することができる。水不溶性物質として粒状体を用いる場合は、レーザー回折・散乱法粒子径分布測定装置によって測定した体積換算平均粒子径が、0.01〜10μmのものが好ましく、0.05〜5μmのものがより好ましく、粒度分布がシャープなものを用いることによって粒子径の揃った、複合メソポーラスシリカ粒子または中空メソポーラスシリカ粒子を得ることができる。
【0014】
工程(I)において水不溶性物質(a)は撹拌により液滴又は固体粒子として分散された状態になるので、その液滴径や固体粒子径を調整することにより、最終的に得られる中空構造ないしコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子(複合メソポーラスシリカ粒子)の大きさを調整することができる。
分散液(A)の分散媒は、大半が水であるが、界面活性剤(b)の一部や、水不溶性物質(a)の分散を妨げない水溶性の有機溶剤、たとえばメタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノール等を含有することできる。
分散液(A)中の水不溶性物質(a)の割合は、反応系の大きさ等により異なるが、例えば、水不溶性物質(a)が好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜30質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0015】
工程(II)
工程(II)は、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを含有する溶液(B)を調製する工程である。
溶液(B)含まれる界面活性剤(b)としては、公知の陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤を使用することができる。中でも陽イオン界面活性剤が好ましく、下記一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩がより好ましい。
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)
前記一般式(1)及び(2)におけるR1及びR2は、炭素数4〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数8〜16の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。炭素数4〜22のアルキル基としては、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種エイコシル基等が挙げられる。
一般式(1)及び(2)におけるXは、高い結晶性を得るという観点から、好ましくはハロゲンイオン、水酸化物イオン、硝酸化物イオン、硫酸化物イオン等の1価陰イオンから選ばれる1種以上である。Xとしては、より好ましくはハロゲンイオンであり、更に好ましくは塩素イオン又は臭素イオンであり、特に好ましくは臭素イオンである。
【0016】
一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ブチルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ブチルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
一般式(2)で表されるジアルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジブチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジヘキシルジメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
これらの第四級アンモニウム塩(b)の中では、規則的なメソ細孔を形成させる観点から、特に一般式(1)で表されるアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、アルキルトリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリドがより好ましい。
界面活性剤(b)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
溶液(B)に含有されるシリカ源(c)としては、加水分解によりシラノール化合物を生成するものが好ましく、具体的には、下記一般式(3)〜(7)で示される化合物を挙げることができる。
SiY4 (3)
3SiY3 (4)
32SiY2 (5)
33SiY (6)
3Si−R4−SiY3 (7)
(式中、R3はそれぞれ独立して、ケイ素原子に直接炭素原子が結合している有機基を示し、R4は炭素原子を1〜4個有する炭化水素基又はフェニレン基を示し、Yは加水分解によりヒドロキシ基になる1価の加水分解性基を示す。)
より好ましくは、一般式(3)〜(7)において、R3がそれぞれ独立して、水素原子の一部がフッ素原子に置換していてもよい炭素数1〜22の炭化水素基であり、具体的には炭素数1〜22、好ましくは炭素数4〜18、より好ましくは炭素数6〜18、特に好ましくは炭素数8〜16のアルキル基、フェニル基、又はベンジル基であり、R4が炭素数1〜4のアルカンジイル基(メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等)又はフェニレン基であり、Yが炭素数1〜22、より好ましくは炭素数1〜8、特に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基、またはフッ素を除くハロゲン基である。
【0018】
シリカ源(c)の好適例としては、次の化合物が挙げられる。
・一般式(3)において、Yが炭素数1〜3のアルコキシ基であるか、又はフッ素を除くハロゲン基であるシラン化合物。
・一般式(4)又は(5)において、R3がフェニル基、ベンジル基、又は水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基であるトリアルコキシシラン又はジアルコキシシラン。
・一般式(7)において、Yがメトキシ基であって、R4がメチレン基、エチレン基又はフェニレン基である化合物。
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、1,1,1−トリフルオロプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
シリカ源(c)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
溶液(B)は、界面活性剤(b)とシリカ源(c)を含有するが、更にメタノール、エタノール、アセトン、プロパノール、イソプロパノールから選ばれる1種以上の水溶性有機溶剤を含有することが好ましく、メタノールを含有することがより好ましい。これらの水溶性有機溶剤は脱水処理しておくことが好ましい。
溶液(B)には、水を実質的に含有しないことが好ましい。特にシリカ源(c)としてシラン化合物を用いる場合は、加水分解により生じるシラノールが、溶液(B)中で反応して、中実のメソポーラスシリカないしシリカの固体を形成するおそれがある。
溶液(B)の各成分濃度は、反応系の大きさ等により異なるが、例えば、界面活性剤(b)は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%であり、シリカ源(c)は好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%であり、水溶性有機溶剤は好ましくは0〜90質量%、より好ましくは10〜80質量%である。また界面活性剤(d)のモル数に対するシリカ源(c)のモル数の割合、すなわち“シリカ源モル数/界面活性剤モル数”が好ましくは0.1〜50、より好ましくは0.2〜20、最も好ましくは0.3〜10の範囲である。この比率は、(b)成分と(c)成分を別々に添加する場合の1分間あたりの添加の条件でもある。
溶液(B)の調製順序は、特に規定しない。
【0020】
工程(III)
工程(III)は、撹拌下で、分散液(A)に溶液(B)を経時的に添加して反応を行い、水不溶性物質(a)を内包するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子の水分散液を調整する工程である。
ここで「経時的に添加」とは、溶液(B)を分散液(A)に連続的又は断続的に添加することを意味し、代表的には、経時的に滴下することを意味する。溶液(B)を分散液(A)に添加する場合、溶液(B)を一度に多量に入れ過ぎたり、添加速度を速め過ぎたりすると、分散液(A)中でのシリカの濃度が上昇し、コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子が得られなくなるおそれがある。また、溶液(B)中の界面活性剤(b)の種類を、溶液(B)の添加の途中で変えることもできる。
【0021】
溶液(B)の添加速度は、反応系の容量や、分散液(A)中に添加される界面活性剤(b)及びシリカ源(c)の濃度上昇速度等を考慮して適宜調整することができる。
反応は、シリカ源(c)が分散液(A)中で加水分解されることによって進むことから界面活性剤(b)及びシリカ源(c)の分散液(A)中の添加速度はある範囲で制限される。また、用いるシリカ源(c)の種類によって加水分解速度が異なるため、シリカ源(c)によって許容できる添加速度が変わってくる。例えば、テトラエトキシシランは、テトラメトキシシランよりも加水分解速度が遅いため、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを界面活性剤(b)として用いた場合、界面活性剤(b)及びシリカ源(c)の分散液(A)中の添加速度は、テトラエトキシシランを使用する場合の方を遅くすることが好ましい。
【0022】
本発明においては、用いるシリカ源(c)の種類から、溶液(B)の添加速度の上限値を設定することができる。すなわち、なるべく水不溶性物質(a)の表面以外で中実(中空ではない)のメソポーラスシリカ粒子や一般シリカ粒子を作ることなく、効率的に複合シリカ粒子を得るためには、分散液(A)中の1分間当たりのシリカ濃度上昇が、好ましくは20mmol/L以下、より好ましくは10mmol/L以下、更に好ましくは5mmol/L以下であり、界面活性剤(b)の濃度上昇が、好ましくは10mmol/L以下、より好ましくは5mmol/L以下、更に好ましくは3mmol/L以下となるような添加速度で溶液(B)を添加することが好ましい。なお、その下限値は、シリカ源の加水分解が十分に行われる速度であればよく、例えば、先の添加の後、十分に反応を終了させてから、次の添加を行っても本発明の粒子を得ることができる。しかしながら、反応を短時間に終結させて製造効率を上げる観点から、溶液(B)を添加したときの分散液(A)の1分間当たりのシリカの濃度上昇を0.01mmol/L以上、界面活性剤の濃度上昇を0.01mmol/L以上とすることが好ましい。これらの添加速度は、界面活性剤(b)及びシリカ源(c)を別々に添加する場合も、同様である。
また、溶液(B)を連続的又は断続的に添加する場合、分散液(A)100重量部に対して、溶液(B)の投入開始から次の投入開始までの0.01〜120分の間における、溶液(B)の最大添加量は、好ましくは40重量部以下、より好ましくは0.01〜10重量部である。
溶液(B)を分散液(A)に添加する際には、分散液(A)の温度を、予め好ましくは10〜100℃、より好ましくは10〜80℃に調整し、溶液(B)の温度を、好ましくは10〜100℃、より好ましくは10〜80℃に調整しておくことが望ましい。
【0023】
また、「添加して反応を行う」とは、分散液(A)に溶液(B)を添加しながら連続的に反応させてもよく、一度添加した反応が終了してから次の添加を行って断続的に反応させてもよいことを意味する。溶液(B)の添加時には、生成する各粒子の凝集を防ぐために、反応終了まで撹拌を続けることが好ましく、添加終了後から好ましくは0.01〜24時間、より好ましくは0.1〜10時間撹拌することが好ましい。
工程(II)における分散液中の水不溶性物質(a)、界面活性剤(b)、特に陽イオン界面活性剤、中でも前記一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩、及びシリカ源(c)の含有量は次のとおりである。
分散液(A)に溶液(B)を添加した後の実質的な濃度は、水不溶性物質(a)が、好ましくは0.1〜50グラム/L、より好ましくは0.3〜40グラム/L、更に好ましくは0.5〜30グラムモル/Lであり、界面活性剤(b)が、好ましくは0.0001〜1モル/L、より好ましくは0.001〜0.5モル/L、更に好ましくは0.01〜0.2モル/Lであり、シリカ源(c)が、好ましくは0.0001〜2モル/L、より好ましくは0.001〜1モル/L、更に好ましくは0.01〜0.5モル/Lである。
なお、分散液(A)に溶液(B)を添加した場合、水不溶性物質(a)、シリカ源(b)及び界面活性剤(c)は複合粒子を形成する。従って前記濃度は原料の添加割合であり、実際の混合液中に含有されている濃度ではない。
【0024】
反応の進行により、反応液中の界面活性剤(b)の濃度が高くなると、水不溶性物質(a)(例えば、カチオン性ポリマー粒子等の有機高分子化合物)の表面以外でミセルが生成しやすくなり、それが核となり不定形のメソポーラスシリカが生成する。そこで、本発明においては、界面活性剤(b)を溶液(B)中に含有させ、これを添加することにより、反応液中に遊離している界面活性剤(b)の濃度を制御して、ポリマー粒子表面以外でのミセル生成を防止することができる。
また、溶液(B)中に、前記の水溶性有機溶剤が含有されていれば、界面活性剤(b)の臨界ミセル濃度を上げて、反応液中でミセルを生成しにくくすることができ、さらにシリカの加水分解速度を遅くすることができるため好ましい。
シリカ源(c)はアルカリ存在下で加水分解・脱水縮合するが、シリカ源(c)を添加するにつれ反応液のpHが下がり、シリカ源(c)の加水分解・脱水縮合が起こりにくくなる。そこで、シリカ源(c)を効率的に加水分解・脱水縮合することができるようにする観点から、反応液のpHを8.5〜11.5、特にpHを9.0〜11.0に調整することが好ましい。
【0025】
溶液(B)の添加終了後、静置することで、水不溶性物質(a)の表面に、界面活性剤(b)とシリカ源(c)によりメソ細孔が形成され、内部に水不溶性物質(a)を包含したコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子(以下、「コアシェルシリカ粒子」ともいう)を析出させることができる。得られたコアシェルシリカ粒子は、水中に懸濁した状態で得られる。用途によってはこれをそのまま使用することもできるが、好ましくはコアシェルシリカ粒子を分離して使用する。分離方法としては、ろ過法、遠心分離法等を採用することができる。
工程(III)で得られるコアシェルシリカ粒子は、通常陽イオン界面活性剤等を含む状態で得られるが、工程(III)で得られたコアシェルシリカ粒子を酸性溶液と1回又は複数回接触させること、例えばコアシェルシリカ粒子を酸性水溶液中で混合することにより陽イオン界面活性剤を除去することができる。得られたコアシェルシリカ粒子は、水不溶性物質(a)が揮発ないし消失し過ぎない程度の温度で乾燥させてもよい。用いる酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸;酢酸、クエン酸等の有機酸;カチオン交換樹脂等を水やエタノール等に加えた液が挙げられるが、塩酸が特に好ましい。pHは通常1.5〜5.0に調整される。
上記により得られた粒子は、均一な粒子径でメソ細孔構造を表面に有し、水不溶性物質(a)を包含するコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子である。
本発明の方法によれば、全溶液100重量部に対して、製造されるメソポーラスシリカ粒子の割合は、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜10重量部である。一方、(a)〜(c)成分を一度に添加して製造されるメソポーラスシリカ粒子の割合は、全溶液100重量部に対して最大でも0.25質量部であることを考慮すれば、本発明方法は工業的に極めて有利であることが分かる。
【0026】
(コアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子)
前記の方法によれば、外殻部が平均細孔径1〜10nmのメソ細孔構造を有し、BET比表面積が100m2/g以上のシリカ粒子であって、該シリカ粒子の内部に水不溶性物質(a)を包含してなるコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子(コアシェルシリカ粒子)を効率的に製造することができる。
コアシェルシリカ粒子の平均細孔径は、好ましくは1〜8nm、より好ましくは1〜5nmである。メソ細孔構造を有する外殻部と粒子内部の中空部分の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができ、その細孔径、細孔規則性、外殻部から内部への細孔の繋がり具合を確認することができる。
コアシェルシリカ粒子のメソ細孔構造は、メソ細孔径が揃っていることが特徴の1つである。すなわちコアシェルシリカ粒子のメソ細孔の70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上が、平均細孔径の±30%以内に入る。ここで、メソ細孔の平均細孔径及び細孔径の分布の程度は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めた値である。
【0027】
コアシェルシリカ粒子のBET比表面積は、好ましくは300m2/g以上、より好ましくは400m2/g以上、更に好ましくは500m2/g以上である。
また、その平均粒子径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.05〜3μmである。コアシェルシリカ粒子の平均粒子径が0.05〜0.1μmのときのメソ細孔の平均細孔径は好ましくは1〜5nmであり、平均粒子径が0.1〜1μmのときのメソ細孔の平均細孔径は好ましくは1〜8nmであり、平均粒子径が1〜10μmのときのメソ細孔の平均細孔径は好ましくは1〜10nmである。
コアシェルシリカ粒子は、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有しており、非常に揃った粒子径の粒子群から構成されていることが望ましい。
なお、コアシェルシリカ粒子の平均粒子径は、陽イオン界面活性剤や疎水性有機溶剤の選択、混合時の撹拌力、原料の濃度、溶液の温度等によって調整することができる。コアシェルシリカ粒子の製造工程において、陽イオン界面活性剤を使用する場合は、陽イオン界面活性剤がコアシェルシリカ粒子の内部、メソ細孔内、又はシリカ粒子表面に残留する可能性がある。陽イオン界面活性剤が残留しても問題ない場合は除去する必要はないが、残留する陽イオン界面活性剤の除去を望む場合は、水や酸性水溶液で洗浄処理して置換することにより除去することができる。
【0028】
コアシェルシリカ粒子における外殻部の平均厚みは、5〜700nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましく、20〜400nmであることが更に好ましい。
また、〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比は、0.01〜0.6であることが好ましく、0.05〜0.5であることがより好ましく、0.1〜0.4であることが更に好ましい。
なお本発明において、コアシェルシリカ粒子の平均粒子径及びその分布の程度、並びに外殻部の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定する。具体的には、透過型電子顕微鏡(TEM)観察下で、20〜30個の粒子が含まれる視野中の全粒子の直径および外殻厚みを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度、並びに平均外殻厚みを求める。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、シリカ粒子の大きさによって適宜調節される。しかしながら、画面中の粒子のうち、メソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子の割合が、30%以下の場合は、観察のための視野を広げて、すなわち倍率を下げて、少なくとも10個の粒子からデータを得るものとする。
【0029】
コアシェルシリカ粒子の外殻部の構造は、用いるシリカ源により異なる。シリカ源として有機基を有するものを用いた場合、有機基を有するシリカ構造の外殻部が得られ、またシリカ源以外に、他の元素、例えばAl、Ti、V、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mn、Fe等の金属やB、P、N、S等の非金属元素を含有するアルコキシ塩やハロゲン化塩等を製造時又は製造後に添加することで、該金属または非金属元素をシリカ粒子の外殻部に存在させることができる。外殻部の構造としては、安定性の観点から、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランをシリカ源として製造され、シリカ壁が実質上酸化シリカから構成されていることが好ましい。
コアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有するメソ領域に周期性のある物質である。なお、規則性が高くなるとピークは明瞭化され、高次ピークが見られる場合がある。
【0030】
(中空構造のメソポーラスシリカ粒子)
本発明の中空構造を有するメソポーラスシリカ粒子(以下、「中空シリカ粒子」ともいう)は、コアシェルシリカ粒子を焼成することにより得ることができる。すなわち、前記工程(I)〜(III)の後、下記工程(IV)を行うことにより製造することができる。この場合、コア粒子には焼成によって除去可能な有機性物質が用いられる。
工程(IV):コアシェルシリカ粒子を分散媒から分離し、焼成する工程。
工程(IV)で分散媒から分離して得られたコアシェルシリカ粒子は、必要に応じて、酸性水溶液と接触、水洗、乾燥、また、高温で処理して、内部の疎水性有機溶剤を除去した後、電気炉等で好ましくは350〜800℃、より好ましくは450〜700℃で、1〜10時間焼成する。
【0031】
前記の方法で得られた中空シリカ粒子は、外殻部の平均細孔径が揃っており、比表面積が大きく、細孔分布がシャープであることが特徴である。
すなわち、中空シリカ粒子の好適態様は、外殻部の平均細孔径が好ましくは1〜10nm、より好ましくは1〜8nm、更に好ましくは1〜5nmのメソ細孔構造を有し、BET比表面積が700m2/g以上の中空シリカ粒子であって、窒素吸着測定を行いBJH法によって求められるメソ細孔の80%以上が平均細孔径±30%以内のものである。
また、中空シリカ粒子のメソ細孔構造は、メソ細孔径が揃っていることが特徴の1つである。中空シリカ粒子のメソ細孔径は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上が平均細孔径の±30%以内であることが望ましい。
【0032】
中空シリカ粒子のBET比表面積は、好ましくは800m2/g以上、より好ましくは850〜1500m2/gである。その平均粒子径は、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、更に好ましくは0.05〜3μmである。中空シリカ粒子の平均粒子径とメソ細孔の平均細孔径の関係は、前記のコアシェルシリカ粒子の場合(段落〔0025〕)と同じである。
また、中空シリカ粒子は、好ましくは粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上が平均粒子径±30%以内の粒子径を有しており、粉末X線回折(XRD)及び/又は電子線回折測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有することが好ましい。
中空シリカ粒子の平均粒子径は、疎水性有機溶剤の選択、混合時の撹拌力、試薬の濃度、溶液の温度、焼成条件等によって調整することができる。
【0033】
好適態様の中空シリカ粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において、粒子全体の好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上が中空粒子であることを確認することができる。中空シリカ粒子割合の具体的な測定方法は、まず透過型電子顕微鏡(TEM)下で、20〜30個の粒子が含まれる視野中の全粒子から、メソ細孔を有し且つ中空である粒子の個数を数え、この操作を視野を5回変えて行った平均値として求めたものである。
中空シリカ粒子は、好適態様において、透過型電子顕微鏡により観察されたメソ細孔の平均細孔間隔が粉末X線回折(XRD)により得られた構造周期と±30%の範囲で一致する。具体的には、観察されたメソ細孔の中心間距離に√3/2を乗じた値と粉末X線回折により得られた最も低角のピークに対応する面間隔が±30%の範囲で一致する。また上記のとおり、粉末X線回折測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有する、メソ領域に周期性のある物質である。
中空シリカ粒子における外殻部の平均厚みは、5〜700nmであることが好ましく、10〜500nmであることがより好ましく、20〜400nmであることが更に好ましい。
また、〔外殻部の厚み/平均粒子径〕の比は、0.01〜0.6であることが好ましく、0.05〜0.5であることがより好ましく、0.1〜0.4であることが更に好ましい。
中空シリカ粒子の平均粒子径とその分布、外殻部の厚み、メソ細孔の平均細孔径とその分布の測定法は、前記のコアシェルシリカ粒子の場合(段落〔0025〕〜〔0027〕)と同じである。
【実施例】
【0034】
実施例及び比較例で得られたシリカ粒子の各種測定は、以下の方法により行った。
(1)平均粒子径及び平均外殻厚みの測定
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径および外殻厚みを写真上で実測して、平均粒子径及び平均外殻厚みを求めた。観察に用いた試料は高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作成した。
(2)BET比表面積、平均細孔径の測定
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。平均細孔径の導出にはBJH法を採用し、そのピーク値の細孔径を平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。
(3)粉末X線回折(XRD)測定
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPC」を用いて、X線源:Cu-kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
【0035】
製造例1(カチオン性ポリマー粒子の製造)
1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル99.5部と塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製のV−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間過熱撹拌を行うことで、カチオン性ポリマー粒子を得た(固形分(有効分)含有量13.8%、体積換算平均粒子径0.28μm)。
【0036】
実施例1(コアシェルシリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、メタノール100g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液に1M水酸化ナトリウム水溶液を入れ、分散液中のpHが10になるように調整した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(臨界ミセル濃度:0.016モル/L)17.4g、テトラメトキシシラン17gを予め混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥の後した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマー粒子を内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。得られたコアシェルシリカ粒子のXRD測定結果を図1に示し、性状を表1に示す。
【0037】
実施例2(コアシェルシリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.25g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド1.74g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液にテトラメトキシシラン1.7gを加え、10分間撹拌した。この操作により核となる外殻の薄いコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子をはじめに合成した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド15.7g、テトラメトキシシラン15.3gを混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマーを内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。得られたコアシェルシリカ粒子の性状を表1に示す。
【0038】
実施例3(コアシェルシリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液に1M水酸化ナトリウム水溶液を入れ、分散液中のpHが10になるように調整した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド17.4g、テトラメトキシシラン17gを予め混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥して、カチオン性ポリマー粒子を内包し、外殻部がメソ細孔を有するコアシェルシリカ粒子を得た。
このコアシェルシリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。得られたコアシェルシリカ粒子の性状を表1に示す。
【0039】
比較例1
1Lビーカーに水286g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液22.8g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド17.4g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液にテトラメトキシシラン17gを加え、5時間撹拌後、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥した。XRD測定やTEM測定、窒素吸着による細孔分布の測定から、メソ細孔は確認されたが、カチオン性ポリマー粒子を内包したコアシェルシリカ粒子は得られなかった。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例4(中空シリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、メタノール100g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液に1M水酸化ナトリウム水溶液を入れ、分散液中のpHが10になるように調整した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド17.4g、テトラメトキシシラン17gを予め混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥後、1℃/分の速度で600℃まで昇温した後、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とドデシルトリメチルアンミニウムブロミドを除去して、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子を得た。
得られた中空シリカ粒子のXRD測定結果を図2に示し、性状を表2に示す。
この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。
【0042】
実施例5(中空シリカ粒子の製造)
実施例1で得られたシリカ粒子を1℃/分の速度で600℃まで昇温した後、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とドデシルトリメチルアンミニウムブロミドを除去して、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の性状を表2に示す。
この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。
【0043】
実施例6(中空シリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液2.25g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド1.74g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液にテトラメトキシシラン1.7gゆっくり加え、10分間撹拌した。この操作により核となる外殻の薄いコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子をはじめに合成した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド15.7g、テトラメトキシシラン15.3gを予め混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗後、乾燥の後、1℃/分の速度で600℃まで昇温したのち、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とドデシルトリメチルアンミニウムブロミドを除去して、外殻部がメソ細孔構造を有する中空シリカ粒子を得た。
得られた中空シリカ粒子の性状を表2に示す。
この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。
【0044】
実施例7(中空シリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水286g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液に1M水酸化ナトリウム水溶液を入れ、分散液中のpHが10になるように調整した。さらにその分散液中にメタノール100g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド17.4g、テトラメトキシシラン17gを予め混合したものを、2時間かけて滴下した。滴下時に分散液のpHが10になるように、1M水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下した。滴下終了後5時間撹拌し、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥後、1℃/分の速度で600℃まで昇温したのち、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とドデシルトリメチルアンミニウムブロミドを除去して、外殻部がメソ細孔を有する中空シリカ粒子を得た。得られた中空シリカ粒子の性状を表2に示す。
この中空シリカ粒子は、粉末X線回折(XRD)測定において、d=2〜12nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを有していた。
【0045】
比較例2(中空シリカ粒子の製造)
1Lビーカーに水300g、メタノール100g、1M水酸化ナトリウム水溶液22.8g、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド17.4g、カチオン性のポリマー粒子懸濁液16.3gを入れ撹拌した。その分散液にテトラメトキシシラン17gを加え、5時間撹拌後、12時間熟成させた。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥した。乾燥粉末を水100mlに分散し、1M塩酸を用いてpH2に調整し、一晩撹拌した。得られた白色沈殿物をろ別し、水洗、乾燥後、1℃/分の速度で600℃まで昇温したのち、2時間600℃で焼成し、カチオン性ポリマー粒子とドデシルトリメチルアンミニウムブロミドを除去した。
XRD測定やTEM測定、窒素吸着による細孔分布の測定から、メソ細孔は確認されたが、中空シリカ粒子の生成は認められなかった。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の製造方法によれば、均質なメソ細孔構造を有し、粒子径が均一な中空構造又はコアシェル構造を有するメソポーラスシリカ粒子を効率よく製造することができ、粒子径の制御も容易である。
得られるコアシェルシリカ粒子及び中空シリカ粒子は、例えば構造選択性を有する触媒担体、吸着剤、物質分離剤、酵素や機能性有機化合物の固定化担体等としての利用が可能である。特に、中空シリカ粒子は、内部に機能性有機化合物を包含させればドラッグデリバリーシステム等に非常に効果的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で得られたコアシェル構造のメソポーラスシリカ粒子のXRD測定結果である。
【図2】実施例4で得られた中空シリカ粒子のXRD測定結果である。
【図3】実施例4で得られた中空シリカ粒子の粒子全体のTEM像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造又はコアシェル構造を有し、外殻部がメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカ粒子の製造方法であって、水不溶性物質(a)及び水を含有する分散液(A)に、陽イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(b)とシリカ源(c)とを経時的に添加して反応を行う工程を含む、メソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
反応系のpHを8.5〜11.5に調整して行う、請求項1に記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
水不溶性物質(a)が、疎水性有機溶剤、有機高分子化合物及び無機化合物から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項4】
有機高分子化合物が、カチオン性水不溶性ポリマー及びノニオン性水不溶性ポリマーである、請求項3に記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
界面活性剤(b)が下記一般式(1)及び(2)で表される第4級アンモニウム塩である、請求項1〜4のいずれかに記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
[R1(CH33N]+- (1)
[R12(CH32N]+- (2)
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数4〜22の直鎖状又は分岐状アルキル基を示し、Xは1価陰イオンを示す。)
【請求項6】
シリカ源(c)が、加水分解によりシラノール化合物を生成するものである、請求項1〜5のいずれかに記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
分散液(A)が、更に水溶性有機溶剤を含有したものである、請求項1〜6のいずれかに記載のメソポーラスシリカ粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−249249(P2009−249249A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100666(P2008−100666)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】