説明

メソポーラスゼオライトの製造方法

【課題】メソポーラスゼオライトを容易に、かつ安価に製造し得る方法を提供すること。
【解決手段】Si源、Al源及び界面活性剤を含む溶液を用いてメソポーラスゼオライトを製造する方法である。前記界面活性剤として、ポリオキシアルキレン骨格を有し、末端に−SiR3(Rは一価の基を示す)を有する非イオン界面活性剤を用いたことを特徴とする。非イオン界面活性剤として以下の式(1)で表されるものを用いることが好適である。
1−(OR2nO−L−SiR33 (1)
1は、炭素数6〜30のアルキル基を表し、R2は炭素数2〜3のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキルオキシ基、−OR4−OR5(R4は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R5は炭素数1〜2のアルキル基を表す)又はハロゲンを表す。nは2〜100の数を表す。Lは直接結合又は二価の連結基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メソポーラスゼオライトの製造方法に関する。本発明の製造方法によって得られるメソポーラスゼオライトは、例えば吸着剤、イオン交換剤、触媒等として有用である。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、多孔質結晶性アルミノケイ酸塩及びメタロケイ酸塩の総称であり、その構造の基本単位は、四面体構造を持つTO4(T=Si,Al等)であり、一つのTO4単位が四つの頂点酸素をそれぞれ隣の四つのTO4単位と共有することにより三次元的に連結し、多孔質な結晶を形成している。
【0003】
一方、メソポーラスシリカは、ゼオライトなどのミクロポーラス物質と、マクロポーラス物質との中間に位置するシリカであり、細孔径が2〜50nmのものを言う。シリカゲルなど、従来からメソ孔を有する物質は知られていたが、それらと異なり、メソポーラスシリカは、一般に六角柱状の規則的な構造を有し、細孔径分布が非常に狭いことが特徴である。
【0004】
メソポーラスシリカは、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の陽イオン界面活性剤を構造規定剤(Structure-Directing Agent, SDA)として用いることで合成される(特許文献1参照)。その後、陽イオン界面活性剤だけでなく、陰イオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を用いてもメソポーラスシリカは合成され(特許文献2参照)、その生成は界面活性剤とシリカ種間の静電相互作用や水素結合などの弱い相互作用に依存することが現在までに明らかにされている。
【0005】
ゼオライトは、その細孔径の小ささゆえに、触媒として使用される場合に拡散性が問題となる場合がある。一方、メソポーラスシリカはゼオライトの細孔内に進入できない大きな分子に対応できるものの、骨格がアモルファスであるため反応性が小さいという欠点がある。したがって、ゼオライトの反応性と、メソポーラスシリカの拡散性とを併せ持つメソポーラスゼオライトの創製が期待されている。
【0006】
メソポーラスゼオライトの製造に関しては、構造規定剤として[3−(トリメチルシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロライドを用いた技術が提案されている(非特許文献1参照)。しかしこの構造規定剤は高価なものであり、工業的規模でのメソポーラスゼオライトの製造にはふさわしくない。また、メソポーラスゼオライトの細孔径を所望のとおりに変えられる自由度に乏しいものである。
【0007】
【特許文献1】特表平5−503449号公報
【特許文献2】特開2007−182341号公報
【非特許文献1】nature materials, vol. 5, 718-723(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、メソポーラスゼオライトを容易に、かつ安価に製造し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、Si源、Al源及び界面活性剤を含む溶液を用いてメソポーラスゼオライトを製造する方法であって、前記界面活性剤として、ポリオキシアルキレン骨格を有し、末端に−SiR3(Rは一価の基を示す)を有する非イオン界面活性剤を用いたことを特徴とするメソポーラスゼオライトの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、メソポーラスゼオライトの細孔径をコントロールすることが非常に容易である。また本発明の製造方法によれば、細孔径の分布が非常にシャープなメソポーラスゼオライトを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明においては、Si源、Al源及び界面活性剤を含む溶液を用いてメソポーラスゼオライトを製造する。これらの原料物質のうち、本発明においては、特定の界面活性剤を用いる点に特徴を有する。界面活性剤は、メソポーラスゼオライトの製造における構造規定剤として用いられる。
【0012】
構造規定剤とは、メソポーラスゼオライトを形成するための細孔の鋳型として機能する物質のことである。本明細書においてメソとは、IUPACに基づく細孔のサイズの定義に従う用語である。IUPACによれば、2nm未満の径の細孔を「ミクロ孔」、2nm〜50nmの径の細孔を「メソ孔」、50nmより大きい径の細孔を「マクロ孔」と称する。
【0013】
本発明において用いられる界面活性剤は非イオン界面活性剤である。非イオン界面活性剤として様々な種類のものが知られているが、本発明において用いられる非界面活性剤は、ポリオキシアルキレン骨格を有するものである。この骨格を有する非イオン界面活性剤を用いる理由は、細孔径分布がシャープで、かつ細孔が規則的に整列した細孔を生成するためには、ヘキサゴナル液晶などを形成できる界面活性剤を構造規定剤として使用する必要があるからである。また、ポリオキシアルキレン骨格を有する界面活性剤は、アルキレンオキサイドの重合度を変化させることで鎖長を容易に変化させることができ、それによって、目的とするメソポーラスゼオライトの細孔径を容易にコントロールできるという利点がある。さらに、ポリオキシアルキレン骨格を有する非イオン界面活性剤は、陽イオン界面活性剤などよりも毒性が少なく、また生分解性が高く、しかも低コストであるという利点を有する。
【0014】
ポリオキシアルキレン骨格を有する非イオン界面活性剤を構造規定剤として用いる技術は、上述した特許文献2に記載されているとおり、メソポーラスシリカの製造においては知られている。これに対して、本発明においては、ポリオキシアルキレン骨格を有する非イオン界面活性剤をベースとして、その一方の末端にトリアルコキシシリル基を付加したものを、メソポーラスゼオライトの合成に用いている。ポリオキシアルキレン骨格を有し、かつ一方の末端に−SiR3(Rは一価の基を示す)を有する非イオン界面活性剤を、メソポーラスゼオライト合成のための構造規定剤として用いた例は、これまでに知られていない極めて新規なものである。Rとしては、一価の含酸素有機基やハロゲン等が用いられる。一価の含酸素有機基としては、後述するようにアルキルオキシ基等が用いられる。
【0015】
本発明で用いられる非イオン界面活性剤のうち特に好ましく用いられるものは、以下の式(1)で表されるものである。
1−(OR2nO−L−SiR33 (1)
【0016】
式(1)において、R1は長鎖アルキル基を表し、その炭素数は好ましくは6〜30、更に好ましくは12〜18である。R1は、式(1)で表される非イオン界面活性剤において疎水基として機能するものである。R1は、直鎖の基でもよく、分岐鎖の基でもよい。好ましくは、R1は直鎖の基である。
【0017】
式(1)において、R2は、低級アルキレン基を表し、その炭素数は好ましくは2〜3、更に好ましくは2である。R2は、−(OR2n−の構造のもとで、式(1)で表される非イオン界面活性剤における親水基として機能するものである。−(OR2n−の構造における繰り返し数であるnの値は、疎水基であるR1の鎖長との関係で、式(1)で表される非イオン界面活性剤における親水−疎水バランスの観点から決定される。具体的には、nの値は2〜100、特に4〜20であることが好ましい。
【0018】
式(1)において、R3は炭素数1〜4の低級アルキルオキシ基、−OR4−OR5又はハロゲンを表す。R3が低級アルキルオキシ基である場合、その炭素数は好ましくは1〜4、更に好ましくは1〜2である。R3が−OR4−OR5で表される場合、R4は炭素数が好ましくは2〜4、更に好ましくは2のアルキレン基を表し、R5は炭素数が好ましくは1〜2、更に好ましくは1のアルキル基を表す。R3がハロゲンである場合、R3はClであることが特に好ましい。三つのR3は同一の基でもよく、あるいは異なる基でもよいが、好ましくは三つのR3は同一の基である。
【0019】
式(1)において、Lは直接結合を表すか、又は二価の連結基を表す。Lが二価の連結基である場合、該連結基としては例えばプロピル基等の炭素数2〜4の低級アルキレン基、アミド結合(−CONH−)、尿素結合(−NHCONH−)等が挙げられる。
【0020】
式(1)で表される非イオン界面活性剤は、例えば次の方法で合成される。先ず出発物質として、ポリオキシアルキレン長鎖アルキルエーテルを用意する。この物質は、例えばBrij30、Brij35、Brij52、Brij56、Brij58、Brij76の商品名でAldrich社から入手可能である。例えばBrij30は、R1(OCH2CH24OH(R1は炭素数12の直鎖アルキル基である。)で表される構造を有している。
【0021】
ポリオキシアルキレン長鎖アルキルエーテルとして、上述のBrij30を用いた場合の目的物質の合成方法は以下のとおりである。まず、以下の式(a)に示すようにBrij30をNaHと反応させ、Na塩とする。
Brij30-OH + NaH → Brij30-ONa + H2↑ (a)
【0022】
次に、以下の式(b)に示すようにBrij30のNa塩にアリルブロマイドを添加し、末端をアリル化する。このアリル化によりNaBrが沈殿する。沈殿したNaBrは遠心分離により除去する。
Brij30-ONa + BrCH2CH=CH2 → Brij30-OCH2CH=CH2 + NaBr↓ (b)
【0023】
最後に、以下の式(c)に示すように、アリル化したBrij30とトリアルコキシシランとのヒドロシリル化反応を白金触媒を用いて行い、目的物質を得る。なお、以上の(a)ないし(c)の反応は、すべてテトラヒドロフランを溶媒とし、窒素ガス雰囲気下で行う。
Brij30-OCH2CH=CH2 + HSi(OR3)3 → Brij30-O-(CH2)3-Si(OR3)3 (c)
【0024】
本発明においては、以下の式(2)で表される非イオン界面活性剤も好ましく用いられる。この非イオン界面活性剤は、−(R7O)t−からなる疎水基と、−(R6O)s−及び−(R8O)u−からなる親水基とを有するポリオキシアルキレントリブロック共重合体の末端にトリアルコキシシリル基が付加した構造を有している。
9O−(R6O)s−(R7O)t−(R8O)u10 (2)
【0025】
式(2)において、R6及びR8は低級アルキレン基を表し、その炭素数は、−(R6O)s−及び−(R8O)u−が親水性を発現する観点から、好ましくは2〜3であり、更に好ましくは2である。R6及びR8は同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0026】
式(2)において、R7は低級アルキレン基を表し、その炭素数は、−(R7O)t−が疎水性を発現する観点から、好ましくは3〜6であり、更に好ましくは3〜4である。ただし、R7は、R6及びR8と同一の基ではない。また、R7の炭素数は、R6及びR8の炭素数よりも大きいことが好ましい。
【0027】
式(2)において、R9及びR10は、H又は−L−SiR33を表し、同一でもよく、あるいは異なってもよい。ただし、R9及びR10は同時にHにはならない。R3及びLは前記の定義と同じである。R9が−L−SiR33の場合、三つのR3は同一の基でもよく、あるいは異なる基でもよい。同様に、R10が−L−SiR33の場合、三つのR3は同一の基でもよく、あるいは異なる基でもよい。R9及びR10ともに、三つのR3は好ましくは同一の基である。
【0028】
また式(2)において、R9及びR10がいずれも−L−SiR33の場合、二つのLは同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。好ましくは二つのLは同一のものである。
【0029】
式(2)においてs、t及びuの値は、式(2)で表される非イオン界面活性剤における親水−疎水バランスの観点から決定される。具体的には、s及びuは、−(R6O)s−及び−(R8O)u−が親水性を発現する観点から、2〜200、特に20〜150であることが好ましい。sとuは同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。一方、tは、2〜200、特に20〜150であることが好ましい。
【0030】
式(2)で表される非イオン界面活性剤は、式(1)で表される界面活性剤と同様の方法で合成される。この場合、出発物質としては、例えばPluronic P103,F127,P65,P85,L64の商品名でBASF社から入手可能である。
【0031】
本発明のメソポーラスゼオライトの製造方法においては、Si源、Al源及び構造規定剤としての界面活性剤を混合した水溶液を用い、水熱合成を行う。この場合、Al源及びSi源を予め混合して、低重合度のアルミノシリケート前駆体溶液を調製し、この前駆体水溶液に界面活性剤を添加してもよく(逐次法)、あるいはAl源、Si源及び界面活性剤を一括で添加して反応を行ってもよい(一括法)。
【0032】
上述の逐次法及び一括法のいずれを採用する場合においても、Si源としては、例えばアルコキシシランを用いることができる。アルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン等の単量体又はこれらの多量体及びこれらの混合物が使用できる。また、これらに代えて、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩、コロイダルシリカ、水ガラス、酸化ケイ素等も用いることができる。
【0033】
同様にAl源としては、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムブトキシド等のアルミニウムアルコキシドを用いることができる。また、これらに代えて、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アルミニウム、酢酸アンモニウム等のアルミニウム塩、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等も用いることができる。
【0034】
逐次法を行う場合には、蒸留水にテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)を添加して液を塩基性にした状態下にAl源を添加し、更にSi源を添加する。そして水溶液を好ましくは25〜100℃、更に好ましくは60〜90℃に加熱する。加熱時間は好ましくは1〜72時間、更に好ましくは12〜24時間とする。この反応によって水溶液中に低重合度のアルミノシリケート前駆体が生成する。この前駆体は結晶が生ずるほどの重合度を有するものではない。したがって、この時点での水溶液はやや白濁しているが、沈殿は生じていない。
【0035】
低重合度のアルミノシリケート前駆体が生成した時点で、水溶液に界面活性剤を添加する。そして水溶液を好ましくは25〜100℃、更に好ましくは60〜90℃に加熱する。加熱時間は好ましくは1〜48時間、更に好ましくは4〜8時間とする。逐次法において重要な点として、界面活性剤の添加のタイミングが挙げられる。詳細には、界面活性剤の添加は、上述のとおり低重合度のアルミノシリケート前駆体が生成した時点で行うことが重要である。結晶が生成して水溶液に沈殿が生じる程度にまで重合が進んだ段階で界面活性剤を添加しても、目的とするメソポーラスゼオライトを得ることは容易でない。
【0036】
上述の操作に引き続き、水溶液をオートクレーブに仕込み水熱合成を行う。水熱合成は静置状態で行うか、又は攪拌下に行う。水熱合成の条件は、温度が好ましくは80〜200℃、更に好ましくは90〜175℃であり、時間が好ましくは0.5〜120時間、更に好ましくは1〜24時間である。この水熱合成によって細孔内に界面活性剤が存在するメソポーラスゼオライトの沈殿が生じる。
【0037】
沈殿物をろ過で分離し、乾燥した後に焼成する。焼成によって細孔内に存在する界面活性剤を除去する。焼成は、例えば昇温速度1〜20℃/分で行い、400〜600℃の焼成温度を1〜10時間保持すればよい。このようにして、目的とするメソポーラスシリカが得られる。
【0038】
一括法においては、蒸留水にTPAOHを添加して液を塩基性にした状態下にAl源、Si源及び界面活性剤を一括して添加する。そして水溶液を室温で0.5〜1時間攪拌した後に、好ましくは60〜100℃、更に好ましくは70〜90℃に加熱する。加熱時間は好ましくは1〜72時間、更に好ましくは12〜24時間とする。次いで、水熱合成を行う。水熱合成の条件は逐次法と同様である。その後は逐次法と同様にして目的とするメソポーラスゼオライトが得られる。
【0039】
逐次法及び一括法のいずれを採用する場合であっても、各出発物質の使用量は、Si/Alが5〜1000、特に15〜50、TPAOH/Siが0.1〜1.0、特に0.1〜0.5、界面活性剤/Siが0.001〜0.5、特に0.01〜0.10、H2O/Siが5〜100、特に10〜50とすることが好ましい。
【0040】
以上の方法で得られるメソポーラスゼオライトは、製造に使用する界面活性剤の分子量の程度、特にポリオキシアルキレン基の鎖長に応じて様々な細孔径を有するものとなる。この細孔はワームホール状のものとなる。そして、その細孔径の分布は非常にシャープなものとなる。具体的には、本発明の製造方法によれば、メソポーラスゼオライトの細孔径を2〜50nm、特に2〜10nmという広範な範囲で制御することが可能となる。
【0041】
このようにして得られたメソポーラスゼオライトは、酸性質の高さ、形状選択性及び水熱安定性の高さから、石油化学製品の合成触媒や構造異性体の選択的合成触媒、N2/O2吸着分離プロセスにおける吸着剤等として好適に用いられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0043】
〔実施例1〕
(1)界面活性剤の合成
出発物質としてAldrich社のBrij56を用いた。この物質は、R1(OCH2CH210OH(R1は炭素数16の直鎖アルキル基である。)で表される構造を有している。この物質を用い、上述の(a)ないし(d)の操作によってオキシアルキレン基の末端にトリエトキシシリルプロピル基(TESP)が付加した非イオン界面活性剤(TESP−Brij56)を得た。
【0044】
(2)メソポーラスゼオライトの合成
蒸留水にTPAOH及びアルミニウムイソプロポキシドを溶解した。この水溶液を攪拌しながらテトラエトキシシラン(TEOS)を添加した。引き続き水溶液を90℃で20時間攪拌し、低重合度のアルミノシリケート前駆体が生成した溶液を得た。この溶液はやや白濁していたが、沈殿は生じていなかった。次に、この溶液に、上述の方法で得られた界面活性剤を添加し、90℃で6時間攪拌した。このようにして得られた懸濁液をオートクレーブに仕込み、120℃で20時間静置し水熱合成した。出発原料の比率は、1TEOS:0.19TPAOH:0.017Al23:0.05TESP−Brij56(モル比)とした。水熱合成によって沈殿が生じた。沈殿物をろ過で分離し、乾燥の後に焼成した。焼成は、8時間で550℃まで昇温し、550℃を8時間保持した。このようにして目的とするメソポーラスゼオライトを得た。得られたメソポーラスゼオライトのXRDを図1に示す。同図には、水熱合成前及び水熱合成3時間後のXRDも併せて示されている。同図に示す結果から明らかなように、得られたメソポーラスゼオライトは低角度領域にワームホール構造に由来する1本のブロードなピークと、広角度領域にMFIによる複数のピークを示している。また、BJH法によりメソポーラスゼオライトの細孔径分布を測定したところ、2.9nmにピークを有するシャープな分布を示した。BJH法による細孔径分布は、Quantachrome社のAutosorb−1を用いて77Kで測定した窒素吸着等温線から、付属のソフトウェア(Version 1.51)を用いて算出した。XRDは、粉末X線回折装置(マック サイエンス社製、粉末X線回折装置 MO3XHF22)を用いて測定した。測定にはCuKα線を使用し、電圧は40kV、電流は30mAとした。スキャンステップは0.02°、スキャン速度は1.5°/min(図1左)、3°/min(図1右)とした。
【0045】
〔比較例1〕
実施例1において界面活性剤を用いない以外は実施例1と同様にしてゼオライトを合成した。得られたゼオライトのXRDを図1に示す。このゼオライトはMFIのピークのみを示している。また、BJH法により細孔径分布を測定したところ、メソ孔がほぼ存在しないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例及び比較例で得られたゼオライトのXRDチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si源、Al源及び界面活性剤を含む溶液を用いてメソポーラスゼオライトを製造する方法であって、前記界面活性剤として、ポリオキシアルキレン骨格を有し、末端に−SiR3(Rは一価の基を示す)を有する非イオン界面活性剤を用いたことを特徴とするメソポーラスゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記非イオン界面活性剤が以下の式(1)で表される請求項1記載のメソポーラスゼオライトの製造方法。
1−(OR2nO−L−SiR33 (1)
(式中、R1は、炭素数6〜30の長鎖アルキル基を表し、R2は炭素数2〜3の低級アルキレン基を表し、R3は炭素数1〜4の低級アルキルオキシ基、−OR4−OR5(R4は炭素数2〜4のアルキレン基を表し、R5は炭素数1〜2のアルキル基を表す)又はハロゲンを表す。nは2〜100の数を表す。Lは直接結合を表すか、又は二価の連結基を表す。)
【請求項3】
前記非イオン界面活性剤が以下の式(2)で表される請求項1記載のメソポーラスゼオライトの製造方法。
9O−(R6O)s−(R7O)t−(R8O)u10(2)
(式中、R6及びR8は同一の又は異なる炭素数2〜3の低級アルキレン基を表し、R7は炭素数3〜6の低級アルキレン基を表す。ただし、R7はR6及びR8と同一でない。s及びuは同一の又は異なる2〜200の数を表し、tは2〜200の数を表す。R9及びR10は、H又は−L−SiR33(R3及びLは前記と同義である。)を表し、同一でもよく、あるいは異なってもよい。ただし、R9及びR10は同時にHにはならない。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレン骨格がポリオキシエチレン骨格からなる請求項1ないし3のいずれかに記載のメソポーラスゼオライトの製造方法。
【請求項5】
−SiR3がトリエトキシシリル基である請求項1ないし4のいずれかに記載のメソポーラスゼオライトの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の方法で製造されたメソポーラスゼオライト。

【図1】
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【公開番号】特開2009−184888(P2009−184888A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28081(P2008−28081)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(500374238)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】