説明

メソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法

導電性基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法であって、前記導電性基材上にパターンを堆積させる工程、前記基材上に原子層堆積により二酸化チタン層を堆積させる工程、下側のパターンを溶剤により除去して二酸化チタンの不連続領域を残す工程、前記基材全体にわたってメソ多孔質ナノ粒子層を堆積させる工程、及び前記メソ多孔質ナノ粒子層の上方に原子層堆積により第2の二酸化チタン層を堆積させることにより第1の二酸化チタン層が溶剤により除去された前記領域上のメソ多孔質ナノ粒子層及び第2の二酸化チタン層の領域を脱落させて、パターン化されたメソ多孔質ナノ粒子層を残す工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材をパターニングする方法、具体的には太陽光モジュールを製造するために用いることができる、基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Gratzelによって記述されたコンベンショナルな色素増感太陽電池は、ガラス又はプラスチック上のITOなどの透明導電性基材から成り、この基材の上側には、色素が被覆された二酸化チタン・ナノ粒子の焼結層(アノード)が存在する。典型的には電子(又は正孔)移動剤としてヨウ化物/三ヨウ化物を含有する正孔運搬電解質が、この層の孔内部又は上側に配置されている。太陽電池サンドイッチ構造は、触媒として白金を有するようにしばしば形成される触媒導電性電極(カソード)を、電解質の上側に置くことにより完成される。電池に光が当たると、色素が励起し、電子が二酸化チタン構造内に注入される。正電荷を帯びた励起された色素は、電解質中のレドックス対の還元形態を、その酸化形態に、例えばヨウ化物は三ヨウ化物に酸化させる。この酸化形態は、白金電極に向かって拡散することができる。電池が負荷に接続されると、アノードからの電子が負荷を通ってカソードに達し、そしてカソードでは、レドックス対の酸化形態は還元され、例えば三ヨウ化物はヨウ化物となり、反応を完了する。
【0003】
メソ多孔質ナノ粒子層のコンベンショナルなパターニング方法としては、数ある中でも、押出コーティング、スクリーン印刷及びグラビア印刷が挙げられる。
【0004】
米国特許第7186911号明細書には、好適な技術、例えば押出コーティング、スプレーコーティング、スクリーン印刷及びグラビア印刷を用いて基材上に金属酸化物ナノ粒子溶液を適用することにより堆積させることのできる色素増感型ナノ粒子材料が開示されている。
【0005】
米国特許第6991958号明細書には、電荷キャリア輸送チャネル層の鋳型形成方法が開示されている。これらの層は、ナノ粒子、例えばポリスチレン・ナノスフェアから成る単層又は多層を含んでよい除去可能な鋳型を導電性基材上に最初に堆積させることによって形成される。次いでスピンコーティング、流延、蒸発などの技術、又は基材上に材料を堆積させるための当業者に知られている任意の他の技術を用いて、第1電荷キャリア輸送材料、例えばTiO2から成る層を、鋳型上に堆積させる。次いで鋳型を除去する。
【0006】
米国特許第6713389号明細書には、特定の表面上で好適に乾燥/固化されると太陽電池(PV)デバイスの素子を形成するカスタム流体列の液滴を放出するために、液滴堆積技術及び連続インクジェット印刷ヘッド(及び静電スプレーヘッド)を用いる方法が開示されている。この方法に使用される材料は、有機金属、例えばTiO2を含んでいてよい。
【0007】
英国特許第2427963号明細書には、第2電極層と金属酸化物色素増感層との交互の区分を有する第1のパターニングされた透明導電性電極を含む色素増感太陽電池が開示されている。この出願では、パターニングされた透明電極層(例えばITO)は、コンタクト・プリント、リソグラフィなどの技術を用いてパターニングされている。第2の電極層(例えばPt)及び金属酸化物層(例えばTiO2)は両方ともマスクを使用してパターニングされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、好ましくはロール・トゥ・ロール法(roll to roll processes)と適合性のある、メソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する改善された低コストの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
自己パターン化メソ多孔質ナノ粒子層は、導電性電極上に堆積されたTiO2薄層を、この薄層が最終的なモジュールのアクティブ領域が位置することになっている領域内にのみ存在するようにパターニングすることによって、形成できる。次いで、メソ多孔質ナノ粒子層を基材領域全体にわたって堆積させ、続いて更なるTiO2薄層を堆積させる。メソ多孔質層の下方に位置する導電性電極上にTiO2層が存在しない場所では、上方の層の全てが基材から脱落し、PVモジュールを形成するために使用することができるパターン化されたメソ多孔質ナノ粒子層を残す。
【0010】
本発明によれば、導電性基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法であって、導電性基材上にパターンを堆積させる工程、基材上に原子層堆積により二酸化チタン層を堆積させる工程、下側のパターンを溶剤により除去して二酸化チタンの不連続領域を残す工程、基材全体にわたってメソ多孔質ナノ粒子層を堆積させる工程、及びメソ多孔質ナノ粒子層の上方に原子層堆積により第2の二酸化チタン層を堆積させることにより第1の二酸化チタン層が溶剤により除去された前記領域上のメソ多孔質ナノ粒子層及び第2の二酸化チタン層の領域を脱落させて、パターン化されたメソ多孔質ナノ粒子層を残す工程を含む、導電性基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ロール・トゥ・ロール法と適合性のある、アクティブなメソ多孔質層領域を低コストで自己パターニングする方法を提供する。
【0012】
ここで添付の図面を参照しながら、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明において用いることのできる原子層堆積(ALD)法の工程を記述するフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の方法において用いることができる原子層堆積のための分配マニホルドの実施態様を示す側方断面図である。
【図3】図3は、薄膜堆積を施される基材に対するガス材料の分配の実施態様を示す側方断面図である。
【図4】図4A及び4Bは、付随する堆積操作を概略的に示す、ガス材料の分配の実施態様の断面図である。
【図5】図5は、ステッドラー(Staedler)マーカーペンを使用した、基材のパターニングを示す図である。
【図6】図6は、ダイマティックス(Dimatix)インクジェット・プリンタを使用して堆積されたフルオロポリマーを用いた基材のパターニングを示す図である。
【図7】図7は、所期領域内にAP−ALD(大気圧原子層堆積)TiO2層がパターニングされたITO PEN基材を示す図である。
【図8】図8は、メソ多孔質ナノ粒子層で覆われた、図7に示された基材を示す図である。
【図9】図9は、更なるAP−ALD TiO2層が基材全体にわたって堆積され、そして自己パターニングが行われた後の基材を示す図である。
【図10】図10は、増感後の基材を示す図である。
【図11A】図11Aは、作用電極の正面、及び対電極の背面を示す概略図である。
【図11B】図11Bは、作用電極の正面、及び対電極の背面を示す概略図である。
【図12】図12は、完成したPVモジュールを示す図である。
【図13】図13は、本発明に従って製作されたモジュールに対応する電流対電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明を実施するための方法の一般化された工程ダイヤグラムである。2種の反応性ガス、すなわち第1分子前駆体と第2分子前駆体とが使用される。ガスはガス源から供給され、そして例えば分配マニホルドを介して、基材に送達することができる。ガス材料を分配マニホルドへ供給するための計量・バルブ装置を使用することができる。
【0015】
工程1に示したように、システムのためのガス材料の連続供給が、基材上に材料薄膜を堆積させるために行われる。シーケンス15の工程は、順次適用される。工程2において、所与の基材領域(チャネル領域と呼ばれる)に関して、第1分子前駆体又は反応性ガス材料は、基材のチャネル領域上を横方向に第1チャネル内を流れるように導かれ、領域と反応する。工程3において、システム内の基材と多チャネル流との相対運動が発生し、これが工程4の発端となる。工程4では、不活性ガスを有する第2チャネル(パージ)流が、所与のチャネル領域上に発生する。次いで、工程5において、基材と多チャネル流との相対運動が、工程6の発端となる。工程6では、所与のチャネル領域に原子層堆積が施される。原子層堆積に際して、第2分子前駆体が基材の所与のチャネル上を横方向に流れ(基材表面に対して実質的に平行である)、基材上の前の層と反応することにより、所期材料の単分子層を(理論上)生成する。かかるプロセスでは、しばしば、第1分子前駆体は、ガス状の金属含有化合物(例えば金属化合物、例えば四塩化チタン)であり、堆積された材料は、金属含有化合物(例えば二酸化チタン)である。かかる実施態様において、第2分子前駆体は、例えば非金属酸化性化合物又は加水分解性化合物、例えば水であることが可能である。
【0016】
工程7において、基材と多チャネル流との相対運動はこの場合、工程8の発端となる。工程8では、再び不活性ガスが、このときは、前の工程6から生じた所与のチャネル領域からの過剰の第2分子前駆体を掃去するために使用される。工程9において、支持体と多チャネルとの相対運動が再び生じ、これは、工程2に戻る反復シーケンスの発端となる。サイクルは、所期の膜又は層を確立するのに必要な回数だけ繰り返される。工程は、流れチャネルによって占められる領域に相当する、基材の所与のチャネル領域に関して繰り返されてよい。その間、種々のチャネルに、工程1において必要なガス材料が供給される。図1のボックス15のシーケンスと同時に、他の隣接するチャネル領域が同時に処理され、その結果、全体的に工程11に示すように、多チャネル流が並行して生じる。
【0017】
第2分子前駆体の主な目的は、基材表面の、第1分子前駆体との反応性を回復させることである。第2分子前駆体はまた、酸化物、窒化物、硫化物などの化合物を形成する、表面に位置する1種又は2種以上の金属化合物を、堆積されたばかりの金属含有前駆体と合体させるために、分子ガスとして材料を提供する。
【0018】
連続ALDパージは、基材に分子前駆体を適用した後でこれを除去するために、真空パージを用いる必要がない。
【0019】
2種の反応物ガス、つまりAX及びBYが使用されると想定すると、反応ガスAX流が供給され、所与の基材領域上を流動させられるときに、反応ガスAXの原子は基材上に化学吸着され、その結果、AとリガンドXの表面とから成る層がもたらされる(会合的化学吸着)(工程2)。次いで、残留反応ガスAXは不活性ガスでパージされる(工程4)。次いで、反応ガスBYの流動、そしてAX(表面)とBY(ガス)との化学反応が生じ、その結果、基材上にABから成る分子層が形成される(解離的化学吸着)(工程6)。残留ガスBY及び反応の副生成物がパージされる(工程8)。プロセスサイクルを繰り返すことによって、薄膜の厚さを増大させることができる(工程2〜9)。
【0020】
膜は、一度に1つの単分子層として堆積させることができるので、コンフォーマルであり、また均一な厚さを有する傾向がある。
【0021】
ここで図2を参照すると、基材20上に原子層を堆積させる本発明の方法において使用できる分配マニホルド10の一実施態様が側方断面図で示されている。分配マニホルド10は、第1ガス材料を受容するためのガス流入ポート14と、第2ガス材料を受容するためのガス流入ポート16と、第3ガス材料を受容するためのガス流入ポート18とを有する。これらのガスは、続いて説明する構造的配列を有する出力チャネル12を介して、出力面36で放出される。図2における矢印は、ガス材料の拡散輸送を意味し、出力チャネルから受け取られる流れを意味しない。流れは実質的に、図面のページから出るように案内される。
【0022】
一実施態様において、ALD堆積を生じさせるために基材表面上で順次反応する第1及び第2ガスを受容するようにガス流入ポート14及び16が構成されており、ガス流入ポート18が、第1及び第2ガスに対して不活性のパージガスを受容する。分配マニホルド10は、基材20から距離Dを置いて配置されている。基材20と分配マニホルド10との間には、基材20の運動によって、又は分配マニホルド10の運動によって、又は基材20及び分配マニホルド10の両方の運動によって、往復運動を提供することができる。図2に示された特定の実施態様の場合、矢印R、及び図2の基材20の左右の仮想線によって示すように、出力面36を往復式に横切って、基材20が動かされる。なお、往復運動は、分配マニホルド10を使用する薄膜堆積にいつも必要とされるわけではない。基材20と分配マニホルド10との間の他のタイプの相対運動、例えば基材20又は分配マニホルド10の1つ又は2つ以上の方向における運動を提供することもできる。
【0023】
図3の断面図は、分配マニホルド10の出力面36の一部にわたって放出されたガス流を示している。この特定の配列において、各出力チャネル12は、図2に見られるガス流入導管14,16又は18のうちの1つとガス流体連通している。各出力チャネル12は典型的には、第1反応物ガス材料O、又は第2反応物ガス材料M、又は第3不活性ガス材料Iを送達する。
【0024】
図3は、ガスの比較的基本的又は単純な配列を示している。複数の(材料Oのような)非金属堆積前駆体、又は複数の(材料Mのような)金属含有前駆体材料を、薄膜単一堆積の際に種々のポートに順次送達することも考えられる。或いは、例えば交互の金属層を有する、又は金属酸化物材料中に混和された少量のドーパントを有する複合薄膜材料を形成するときに、反応物ガスの混合物、例えば、金属前駆体材料の混合物、又は金属及び非金属前駆体の混合物を単一の出力チャネルに適用することもできる。重要な要件は、パージガスと呼ばれることもある不活性ガスとして符号Iを付けられた中間流が、ガスがその中で互いに反応する見込みのあるいかなる反応物質チャネルをも分離することである。第1及び第2反応物ガス材料O及びMは、ALD堆積を生じさせるために互いに反応するが、しかし反応物ガス材料O又はMも不活性ガス材料Iとは反応しない。
【0025】
図4A及び4Bの断面図は、反応ガス材料O及びMを送達するときに基材20が分配マニホルド10の出力面36に沿って進むのに伴って実施されるALDコーティング操作を、単純化された概略形態で示している。図4Aにおいて、基材20の表面は先ず、第1反応物ガス材料Oを送達するものとして指定された出力チャネル12から連続的に放出された酸化材料を受容する。基材の表面はここでは、材料Oの部分反応形態を含有する。この部分反応形態は、材料Mと反応し易い。次いで、基材20が第2反応物ガス材料Mの金属化合物の経路内に入ると、Mとの反応が行われ、金属酸化物、又は2種の反応物ガス材料から形成することができる何らかの他の薄膜材料を形成する。
【0026】
図4A及び4Bが示すように、第1及び第2反応物ガス材料O及びMの流れの間には、交互の出力チャネル12毎に不活性ガス材料Iが供給される。連続する出力チャネル12は隣接しており、すなわち、示された実施態様においては仕切り22によって形成された共通の境界を共有している。ここでは、出力チャネル12は、基材20の表面に対して垂直に延びる仕切り22によって画定され、互いに分離されている。
【0027】
注目すべきは、出力チャネル12間に真空チャネルは散在しないことである。すなわち、仕切りの周りのガス材料を引き出すために、ガス材料を送達するチャネルのいずれの側にも真空チャネルは設けられていない。この有利なコンパクトな配置関係は、使用されるガス流が革新的であるために可能である。基材に対して実質的に鉛直方向(すなわち垂直方向)のガス流を適用し、次いで、反対の鉛直方向に使用済ガスを引き抜くようになっている以前の方法のガス送達アレイとは異なり、分配マニホルド10は、それぞれの反応物質及び不活性ガス毎に表面に沿ってガス流(一実施態様において、好ましく実質的に層流)を導き、そして使用済ガス及び反応副生成物を異なる形で取り扱う。本発明において使用されるガス流は、基材表面の平面に沿って、概ね平行に導かれる。換言すれば、ガス流は、処理されている基材に対して垂直であるよりも、むしろ基材平面に対して実質的に横方向である。
【0028】
上記方法及び装置は、本発明において用いることができる蒸着法の一例である。他の蒸着法を用いることもできる。
【実施例】
【0029】
13Ω/スクエアのITO−PETの試料をとり、ステッドラー(Staedler)マーカーペンを使用してパターニングした(図5参照)。マーカーペンで被覆していない2つの長細い領域60は、パターニングされたメソ多孔質ナノ粒子層が最終的な電池内に位置することになる領域である。
【0030】
別の基材パターニング法は、所与のパターンを成してフルオロポリマーをインクジェットによって着けることであってもよい(例えばFluoroPel PFC604A (Cytonix Corporation製)とペルフルオロデカリン(Aldrich)との混合物を25/75比で使用してもよい)。この方法を用いてパターン化された正方形のITO−PENの画像を図6に見ることができる。領域70は、フルオロポリマーでパターニングされた領域である。領域80は、フルオロポリマーのない領域である。
【0031】
この例の場合、ITO−PENは、図5に示すようにステッドラー(Staedler)ペンを使用してパターニングした。
【0032】
次いで、大気圧原子層堆積(AP−ALD)を用いて基材全体にわたって、3nmのTiO2層を堆積した。堆積のために用いられた条件を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
次いで、マーカーペンでパターニングされた領域を、アセトンを使用して除去した。AP−ALD TiO2層は、マーカーペン部分の上側に堆積されているので、マーカーペン部分を除去すると、その領域内のAP−ALD TiO2層も除去され、パターニングされたメソ多孔質ナノ粒子層が最終的な電池内に位置することになる領域にのみ、AP−ALD TiO2層を残すことになる(図7参照)。領域50は、TiO2層が残っている場所を示している。
【0035】
次いで、この支持体を使用することにより、色素増感太陽電池モジュールを形成した。
【0036】
いくらかの二酸化チタンを、使用前に90℃の炉内で一晩乾燥させた。これは、平均粒度21nmの二酸化チタン試料であった(Degussa Aeroxide P25、比表面積(BET)=50+/−15m2/g)。可撓性の色素増感太陽電池モジュールを、下記のように製作した。
【0037】
下記の量で乾燥メチルエチルケトンとエチルアセテートとの混合物中に乾燥TiO2を分散させることにより、パターニングされた13Ω/スクエアITO−PEN試料上に、約30μm厚のメソ多孔質TiO2膜層を堆積させた:
Degussa P25 TiO2 (21nm粒子) 1.35g
メチルエチルケトン 45g
エチルアセテート 5g。
【0038】
1mmノズルと2bar窒素キャリヤガスとを有するSATAminijet 3 HVLPスプレーガンを使用して、約25cmの距離から導電性プラスチック基材の領域全体にスプレーする前に、結果として生じた混合物を15分間にわたって超音波処理した。層を、2枚のテフロン(登録商標)・シート間に入れ、2つの研磨ステンレス鋼ボルスターの間にサンドイッチし、そして3.75トン/cm2の圧力で15秒間圧縮する前に、層を1時間にわたって90℃の炉内で乾燥させた。
【0039】
焼結された層を次いで、さらに1時間にわたって90℃で乾燥させた。
【0040】
次いで、メソ多孔質ナノ粒子TiO2層全体に、AP−ALDを用いて、更なる3nmのTiO2層を堆積させた。堆積のために用いられる条件は、表1に示したものと同じであった。
【0041】
マーカーペン・パターンが拭い去られたときに第1のAP−ALD TiO2層が除去された領域内では、構造は支持体から脱落し、PVモジュールを形成するために使用することができるパターニングされたメソ多孔質ナノ粒子層を残す(図9参照)。次いで、試料を炉内に入れることにより、さらに1時間にわたって乾燥させた。
【0042】
次いで、試料をルテニウムシス−ビス−イソチオシアナトビス(2,2’ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)の3×10-4モル・dm-3溶液中に一晩にわたって入れることにより、試料全体を増感した。図10は、PVモジュールを形成するために使用することができる染色されたパターニングされたメソ多孔質ナノ粒子層を示す。
【0043】
次いで、この試料を使用することにより、色素増感態様電池を組み立てた。
【0044】
真空下でのスパッタ堆積によって、白金を被覆されたステンレス鋼フォイル電極を作製した。
【0045】
ステンレス鋼対電極の背面にアクセス可能にするように切り抜かれた窓を有する被覆されていないPET片に、白金被覆ステンレス鋼98を取り付けた。さらに別の窓をPETから切り抜くことにより、ITO/PEN作用電極にアクセス可能にした。2つの色素増感メソ多孔質91の間のITOコーティングを破断するように、しかしベース領域を分離しないように、ITOをメスの刃で切れ目を入れ、そしてz軸テープ94を使用することにより、2つの領域間の直列相互接続を形成した。ガスケット92のために、3M Thermoset 615材料を使用した。
【0046】
色素増感TiO2層及び白金対電極を、図11A及び11Bに示すようなモジュールを形成するように配列した。
【0047】
モジュールの各側に、
0.1MのLiI、
0.6MのDMPII(1,2,ジメチル−3−プロピル−イミダゾリウムヨージド)、
0.05MのI2
0.5MのN−メチルベンズイミダゾール、
溶剤=MPN(メトキシプロピオニトリル)、
を含むイオン性液体電解質を充填した。
【0048】
図12は、完成したモジュールを示す。
【0049】
製作に続いて、太陽光の0.10倍の照明を提供するように可視領域内の太陽光スペクトルを人工的に複製する光源下に色素増感太陽電池を置くことにより、色素増感太陽電池モジュールの特徴評価を行った。
【0050】
図13のデータは、上記方法を用いて製作されたモジュールが、許容し得る結果をもたらすことを実証する。モジュールの各側を個別に試験すると、良好な電流及び電圧が達成され、また完成モジュールを試験すると、個々の電池が直列接続される場合に予期されるものの2倍の電圧が達成された。
【0051】
この例は、AP−ALD層を使用してメソ多孔質ナノ粒子TiO2層を自己パターニングすることができ、次いで、メソ多孔質ナノ粒子TiO2層は、作用PVモジュールを形成するために使用され得ることを実証する。
【0052】
例が示すように、原子層堆積によってメソ多孔質層の上方にTiO2薄層を堆積させることにより、導電性電極とメソ多孔質ナノ粒子層との間にTiO2薄層も存在するのでなければ、メソ多孔質層は、TiO2層とともに基材から脱落した。これにより、PVモジュールを形成するために使用することができるパターニングされたメソ多孔質ナノ粒子層が残される。
【0053】
ALDによって敷設されるTiO2層の厚さは、100nm未満である。好ましくは、厚さは20nm未満又は5nm未満である。
【0054】
例は、二酸化チタンを使用して実施した。メソ多孔質層は同様に酸化亜鉛又は酸化錫であることも可能であった。
【0055】
基材上に元のパターンを敷設するために、任意の好適なアディティブ法を用いてよい。方法の一例として、インクジェット印刷、フレキソグラフィ印刷、筆記具などが挙げられる。好ましくは、このプロセスはロール・トゥ・ロール式で実施することができる。
【0056】
好ましい実施態様を参照しながら本発明を詳しく説明してきた。本発明の範囲内で変更及び改変を加え得ることは、当業者には明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法であって、前記導電性基材上にパターンを堆積させる工程、前記基材上に原子層堆積により二酸化チタン層を堆積させる工程、下側のパターンを溶剤により除去して二酸化チタンの不連続領域を残す工程、前記基材全体にわたってメソ多孔質ナノ粒子層を堆積させる工程、及び前記メソ多孔質ナノ粒子層の上方に原子層堆積により第2の二酸化チタン層を堆積させることにより第1の二酸化チタン層が溶剤により除去された前記領域上のメソ多孔質ナノ粒子層及び第2の二酸化チタン層の領域を脱落させて、パターン化されたメソ多孔質ナノ粒子層を残す工程を含む、導電性基材上にメソ多孔質ナノ粒子層をパターン形成する方法。
【請求項2】
二酸化チタンが、一連のガス流を、当該ガス流が前記基材の表面に対して実質的に平行であり且つ互いに実質的に平行であるように、細長いチャネルに沿って同時に導くことによって堆積され、これにより、前記ガス流が、隣接する細長いチャネルの方向に流れるのが実質的に防止され、前記一連のガス流は、順に、少なくとも第1の反応性ガス材料と、不活性パージガスと、第2の反応性ガス材料とを、任意選択的に複数回繰り返して含み、前記第1の反応性ガス材料が、前記第2の反応性ガス材料で処理された基材表面と反応することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メソ多孔質ナノ粒子層が二酸化チタンから形成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記メソ多孔質ナノ粒子層が色素増感されたものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記パターンがアディティブ印刷法により適用される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記パターンがインクジェット印刷により適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パターンがフレキソグラフィ印刷により適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記パターンが、水不溶性インクを含有する筆記具により適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記パターンがロール・トゥ・ロール式で適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
原子層堆積により堆積されたTiO2層のそれぞれが100nm未満の厚さを有する、請求項1〜9のいずれか1項の方法。
【請求項11】
原子層堆積によって堆積されたTiO2層のそれぞれが20nm未満の厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
原子層堆積によって堆積されたTiO2層のそれぞれが5nm未満の厚さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の層を含む太陽光電池を製造する方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造された層を含む、太陽光電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−502210(P2011−502210A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526351(P2010−526351)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003054
【国際公開番号】WO2009/040499
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】