説明

メタクリル樹脂の製造方法

【課題】高い耐熱性を有するメタクリル樹脂を短い重合時間で得ることができる生産性の高い製造方法を提供する。
【解決手段】メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物、及びメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上であるメタクリル酸メチル系重合体を含む重合性混合物を、40℃以下及び活性エネルギー線照射強度1〜30mW/cmの条件で硬化させるメタクリル樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタクリル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル樹脂は加工の容易さ、取り扱い易さ、軽量、安価等の特長に加えて、高い透明性と複屈折の少なさから、液晶ディスプレイ用の保護フィルムや携帯電話の前面板等の光学用途の材料として広く用いられている。
【0003】
また、近年の筐体薄型化に伴って、部材の小型化又は薄型化だけでなく、より優れた機能や性能が求められている。
【0004】
このような要求に対し、メタクリル樹脂に関しては従来の光透過性に加え、高強度、耐熱性、耐候性等の諸特性が重要となる。例えば、エッジライト方式による薄型液晶ディスプレイに用いられる導光版では、光源であるLEDランプからの熱による影響が強いことから高い耐熱性が必要となる。
【0005】
代表的なメタクリル樹脂であるメタクリル酸メチル系重合体はタクティシティが高いほど耐熱性に優れることが知られている。
【0006】
タクティシティの高いメタクリル酸メチル系重合体を得る方法の1つとしてアニオン重合法や配位アニオン重合法による製造方法が挙げられるが、これらの方法では重合開始剤として高価な有機金属化合物が必要であり、コストが高くなるという問題がある。また、これらの方法で得られた重合体は残存する有機金属化合物により着色し易く、透明性が特徴であるメタクリル樹脂にとっては致命的な欠点となる場合がある。
【0007】
また、タクティシティの高いメタクリル酸メチル系重合体を得る別の方法として、例えば、特許文献1にはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体に、アイソタクチックメタクリル酸メチル系重合体を溶存させたシロップを非溶媒中、50℃以下でラジカル重合させることを特徴とするメタクリル系重合体の製造方法が提案され、耐熱性の高いメタクリル系重合体が得られることが開示されている。
【0008】
更に、特許文献2には3連子表示(%rr)で76以上のシンジオタクシティーを有するシンジオタクティックポリ(メタクリル酸メチル)連鎖単位を含む重合体と、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体とを含み、JIS K 7117に準拠したSVI値が1.3以上である重合性組成物を、重合開始剤存在下、85℃以下で重合する工程を少なくとも含むシンジオタクティックポリ(メタクリル酸メチル)連鎖単位を含む重合体の重合方法が提案され、耐熱性の高いメタクリル系重合体が得られることが開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2による方法では重合時間が長く、生産性が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−301937号公報
【特許文献2】特開2001−89528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は高い耐熱性を有するメタクリル樹脂を短い重合時間で得る製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物(以下、「本単量体成分」という)、及びメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上であるメタクリル酸メチル系重合体(以下、「本メタクリル酸メチル系重合体」という)を含む重合性混合物を、40℃以下及び活性エネルギー線照射強度1〜30mW/cmの条件で硬化させるメタクリル樹脂の製造方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により高い耐熱性を有するメタクリル樹脂を低コストで製造することができるので自動車等の車載用途、導光板等の各種用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】

本単量体成分

本発明における本単量体成分は、メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物である。本単量体成分は、メタクリル酸メチル50〜100質量%及びメタクリル酸メチルと共重合可能な他の単量体(以下、「他の単量体」という)0〜50質量%を含有する単量体又は単量体混合物であることが好ましい。
【0015】
他の単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ペンタフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物;ジシクロペンタジエン、ノルボルネン等の脂環式オレフィン誘導体;及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン等の分子内に二重結合を2個以上有する単量体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0016】
尚、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を示す。
【0017】
他の単量体としては、メタクリル酸メチルに対する溶解性及び重合性の点で、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル及び(メタ)アクリル酸t−ブチルが好ましい。

本メタクリル酸メチル系重合体

本発明における本メタクリル酸メチル系重合体はメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上のものである。本メタクリル酸メチル系重合体のタクティシティを80以上とすることにより、得られるメタクリル樹脂のタクティシティを高くすることができ、高い耐熱性が得られる傾向にある。
【0018】
本メタクリル酸メチル系重合体としては、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体及びメタクリル酸メチル単位を含有する共重合体が挙げられる。
【0019】
本メタクリル酸メチル系重合体が共重合体の場合、本メタクリル酸メチル系重合体中のメタクリル酸メチル単位以外のその他の単量体単位を構成するための原料としては、例えば、本単量体成分における他の単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0020】
メタクリル酸メチル単位を含有する共重合体中のメタクリル酸メチル単位の含有量としては、得られるメタクリル樹脂の耐熱性の点で、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0021】
本メタクリル酸メチル系重合体としてはメタクリル酸メチルの単独重合体であるポリメタクリル酸メチルが好ましい。
【0022】
本メタクリル酸メチル系重合体の製造方法としては、例えば、特開平3−263412号公報、特公平6−89054号公報、特開平10−182659号公報に開示されているアニオン重合法、あるいは低温ラジカル重合法が挙げられる。アニオン重合法の場合、重合温度は、−100℃以上が好ましい。また重合温度は、100℃以下が好ましく、50℃以下がより好ましく、0℃以下がさらに好ましい。
【0023】
本メタクリル酸メチル系重合体のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー法でのポリスチレン換算による質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は50,000〜150,000が好ましい。Mwが50,000以上で、得られるメタクリル樹脂の耐熱性を良好とすることができる傾向にある。また、Mwが150,000以下で、後述する重合性混合物の粘度が高くなり過ぎず、良好な生産性を維持できる傾向にある。

重合性混合物

本発明における重合性混合物は本単量体成分及び本メタクリル酸メチル系重合体を含有する。
【0024】
また、重合性混合物には活性エネルギー線重合開始剤を含有させることができる。
【0025】
重合性混合物中の本メタクリル酸メチル系重合体の含有量としては、本単量体成分及び本メタクリル酸メチル系重合体の合計100質量部に対して10〜20質量部が好ましく、12〜18質量部がより好ましい。重合性混合物中の本メタクリル酸メチル系重合体の含有量が20質量部以下で、本メタクリル酸メチル系重合体が本単量体成分に溶存し易い傾向にある。また、重合性混合物中の本メタクリル酸メチル系重合体の含有量が10質量部以上で、得られるメタクリル樹脂のタクティシティが高く、耐熱性が良好となる傾向にある。
【0026】
本発明においては、重合性混合物には、必要に応じて熱重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、離型剤等の各種化合物を含有させることができる。
【0027】
本発明で使用される活性エネルギー線重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系又はベンゾフェノン系の活性エネルギー線重合開始剤が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184(商品名))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製ダロキュア1173(商品名))及びベンゾインエチルエーテル(例えば、精工化学(株)製セイクオールBEE(商品名))が挙げられる。
【0029】
活性エネルギー線重合開始剤の添加量としては本単量体成分及び本メタクリル酸メチル系重合体の合計100質量部に対して0.001〜3質量部が好ましく、0.005〜0.5質量部がより好ましい。活性エネルギー線重合開始剤の添加量が0.001質量部以上で、活性エネルギー線照射時間が1時間程度の短時間で良好な硬化性を示す傾向にある。また、活性エネルギー線重合開始剤の添加量が3質量部以下で、得られるメタクリル樹脂の分子量を適正なものとすることができ、メタクリル樹脂の黄変も抑制される傾向にある。

メタクリル樹脂

本発明においては、メタクリル樹脂は前記重合性混合物に活性エネルギー線を照射し硬化させることにより得ることができる。得られるメタクリル樹脂の形状としては特に限定されず、例えば前記重合性混合物から層状物である重合性層を形成し、それを硬化させるとシート状物が得られる。
【0030】
前記重合性層を形成する場合、その形成方法としては、例えば、対向した2枚のガラス板の端部の間又は対向した金属板とガラス板の端部の間をシーリング材でシールして得られる鋳型内に重合性混合物を流し込むことにより形成する方法が挙げられる。
【0031】
また、連続した重合性層の形成方法として、例えば、移送されるエンドレスベルトとエンドレスベルトに対向して連続供給される活性エネルギー線透過性フィルムとの間に形成された鋳型内に重合性混合物を供給して連続した重合性層を形成する方法や、回転ロールと連続供給される活性エネルギー線透過性フィルム等の基材との間に重合性混合物を供給して基材の表面に連続した重合性層を形成する方法が挙げられる。
【0032】
重合性層の厚みとしては、重合性層を均一に重合できる点で、5mm以下が好ましい。
【0033】
本発明においては、重合性混合物は40℃以下及び活性エネルギー線照射強度1〜30mW/cmの条件で硬化処理される。
【0034】
重合性混合物を活性エネルギー線照射により硬化させる際の重合温度としては、得られるメタクリル樹脂の耐熱性の点で、40℃以下である。また、重合温度としては、短時間重合の点で、10℃以上が好ましい。
【0035】
活性エネルギー線としては、例えば、X線、紫外線及び電子線が挙げられる。
【0036】
紫外線ランプとしては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、殺菌灯、ブラックライト及び紫外LEDが挙げられる。
【0037】
活性エネルギー線の照射強度は1〜30mW/cmである。活性エネルギー線の照射強度を1mW/cm以上とすることにより1時間程度以下での短時間の重合が可能となり、低コストでメタクリル樹脂を得ることができる。また、活性エネルギー線の照射強度を30mW/cm以下とすることにより得られるメタクリル樹脂の分子量を適正なものとすることができ、メタクリル樹脂の黄変も抑制することができる。
【0038】
メタクリル樹脂のMwとしては、耐熱性の点で、100,000以上が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明する。尚、以下において、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。また、本メタクリル酸メチル系重合体及びメタクリル樹脂のメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティ並びにメタクリル樹脂のMw及びガラス転移温度(以下、「Tg」という。)を以下の方法により測定、評価した。
(1)タクティシティ
プロトン核磁気共鳴スペクトル測定装置(Varian UNITY社製、商品名:INOVA500)を使用し、溶媒として重水素化ジメチルスルホキシドを用いてスペクトルの測定を実施した。測定温度は120℃とし、積算回数は10,000回とした。
【0040】
得られたスペクトルについて、α−CH基由来のピークの積分強度を用いてメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティを算出し、トライアッド表示(%rr)で示した。
(2)Mw
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(東ソー(株)製、商品名:HPLC−8220GPC)を使用し、溶離液としてテトラヒドロフランを用いてMwを測定した。
【0041】
分離カラムは東ソー(株)製TSK−GEL SUPER HM−H(6.0mmφ×150mm)を2本直列とし、流速を0.6ml/分、検出器を示差屈折計、測定温度を40℃及び注入量を10μlとした。Mwの決定にはポリスチレン基準検量線を用いた。
(3)Tg
示差走査熱量測定装置(SII社製、商品名:DSC6220)を使用して、室温から20℃/分の速度で200℃まで昇温し、次いで−50℃まで同じ速度で冷却する操作を実施した後に、再び20℃/分の速度で昇温を行ってTgを求め、耐熱性を評価した。
[製造例1]メタクリル酸メチル系重合体(1)の製造
トルエン900mlにメタクリル酸メチル100ml及び有機サマリウム錯体[(BHT)Sm(II)(thf)]1.7gを混合し、−78℃で6時間重合した。得られた重合体をメタノール90%及び0.1規定塩酸10%の組成の再沈殿用溶媒にて再沈殿し、80℃で一昼夜真空乾燥し、メタクリル酸メチル系重合体(1)を得た。メタクリル酸メチル系重合体(1)のメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティは89.2であり、Mwは125,000であった。尚、前記有機サマリウム錯体[(BHT)Sm(II)(thf)]は、特開平10−182659号公報の実施例1に記載の(BHT)Sm(II)(thf)の合成法と同じ方法により得た。ここでBHFは2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド、thfはテトラヒドロフランを表す。
[製造例2]メタクリル酸メチル系重合体(2)の製造
単量体組成をメタクリル酸メチル99.5質量%、アクリル酸メチル0.5質量%としたこと以外は、特開2003−327605号公報に記載の方法と同様にしてメタクリル酸メチル系重合体(2)を得た。メタクリル酸メチル系重合体(2)のメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティは58であり、Mwは97,000であった。
[実施例1]
メタクリル酸メチル85部にメタクリル酸メチル系重合体(1)15部を80℃で30分間攪拌しながら加熱溶解させて液状物(シラップ)を得た。
【0042】
得られたシラップ100部に活性エネルギー線重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、商品名)0.5部を配合して重合性混合物を調整し、常温まで自然冷却させた。
【0043】
上記の重合性混合物を3mmφ×300mmのアンプル管に注入した後にアンプル管を35℃に温調した湯浴内に置き、ケミカルランプ((株)東芝製、商品名:FL30S−BLランプ)を用いて照射強度1mW/cmにて35℃で1時間重合した。
【0044】
次いで、アンプル管を室温まで冷却した後、アンプル管からメタクリル樹脂を取り出してアセトンに溶解させ、10倍等量のn−ヘキサンにて再沈殿した。得られたメタクリル樹脂を60℃で一昼夜真空乾燥した後、メタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティ、Mw及びTgを評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例2]
活性エネルギー線重合開始剤を0.1部添加し、湯浴内の温度を20℃に温調したこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得る。結果を表1に示す。
[実施例3]
メタクリル酸メチル系重合体(1)の添加量を10部にし、湯浴内の温度を20℃に温調したこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得た。結果を表1に示す。
[比較例1]
メタクリル酸メチル系重合体(1)を添加せず、メタクリル酸メチル単量体100部とし、湯浴内の温度を25℃に温調したこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得た。結果を表1に示す。
[比較例2]
メタクリル酸メチル系重合体(2)を用い、湯浴内の温度を30℃に温調したこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得た。結果を表1に示す。
[比較例3]
湯浴内の温度を56℃に温調したこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得た。結果を表1に示す。
[比較例4]
活性エネルギー線重合開始剤の代わりに、アゾ重合開始剤(和光純薬工業製、商品名:V−70)を0.5部添加し、25℃の温調下で、光重合の代わりに熱重合を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法にて重合を行い、メタクリル樹脂を得た。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】


(表中のIrg184は、イルガキュア184を表す。)
表1から明らかなように、本発明により耐熱性に優れるメタクリル樹脂が短時間で得られることがわかる。
【0046】
これに対して、比較例1のように、タクティシティが80以上であるメタクリル酸メチル系重合体を存在させないでメタクリル樹脂を得ると、高い耐熱性を有するメタクリル樹脂は得られなかった。また、比較例2のように、タクティシティが低いメタクリル酸メチル系重合体を使用した場合にも高い耐熱性を有するメタクリル樹脂は得られなかった。また、比較例3のように高い重合温度で得られたメタクリル樹脂も耐熱性は低かった。さらに比較例4のように、熱重合を行うと重合時間が24時間と長時間を要し、生産性が低いものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物、及びメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上であるメタクリル酸メチル系重合体を含む重合性混合物を、40℃以下及び活性エネルギー線照射強度1〜30mW/cmの条件で硬化させるメタクリル樹脂の製造方法。
【請求項2】
重合性混合物中のメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上であるメタクリル酸メチル系重合体の含有量が、メタクリル酸メチル単量体またはメタクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物、及びメタクリル酸メチル単位連鎖におけるタクティシティがトライアッド表示(%rr)で80以上であるメタクリル酸メチル系重合体の合計100質量部に対して10〜20質量部である請求項1に記載のメタクリル樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2011−252098(P2011−252098A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127246(P2010−127246)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】