説明

メタクリル系樹脂の製造方法及び成形品

【課題】透明性、成形性に優れたメタクリル形樹脂を提供する。
【解決手段】第一段階において、メタクリル酸メチル50質量%以上とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%以下とを含有してなる単量体混合物(I)を塊状重合または溶液重合することによって、重量平均分子量5万超の重合体(a)を含む反応液(I)を得、次いで、第二段階において、反応液(I)に、メタクリル酸メチル50質量%超とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%未満とを含有しかつ単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率よりも高い含有率でメタクリル酸メチルを含有する単量体混合物(II)を、前記単量体混合物(I)の0.02〜1.0質量倍混合して、重合することによって、質量比(a/b)60/40〜90/10で合計量100質量部含む反応液(II)105〜300質量部を得ることを含むメタクリル系樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性、耐薬品性、機械強度および成形性に優れたメタクリル系樹脂を高い生産効率にて製造できる方法、および該方法によって得られるメタクリル系樹脂からなる光学特性に優れた成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂からなる成形品は、透明性に優れ光学歪も少ないことから表示装置などの各種光学製品が備えるレンズ、プリズム、位相差フィルム、導光板、光拡散フィルム、偏光板保護フィルムなどの光学部材として広く用いられている。特に、表示装置の大画面化に伴い光学部材の大型化、薄肉化が進んでいるので、メタクリル系樹脂にはさらなる成形性向上が求められている。
【0003】
メタクリル系樹脂の成形性向上のため、特許文献1は極限粘度0.010〜0.050l/gのメタクリル系共重合体と極限粘度0.050〜0.090l/gのメタクリル系共重合体とを含有する良流動性アクリル樹脂組成物を提案している。
特許文献2は重量平均分子量が13万〜25万であるメタクリル系共重合体と重量平均分子量が0.3万〜1.9万であるメタクリル系共重合体とを含有する樹脂組成物を提案している。
特許文献3は重量平均分子量が5万〜25万であるメタクリル系共重合体(1)と重量平均分子量が0.6万〜4万であるメタクリル系共重合体(2)とを含有し、分散安定剤および乳化剤のいずれをも含有せず、前記共重合体(1)に含まれるメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の質量分率が、前記共重合体(2)に含まれるメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位の質量分率より小さいメタクリル系樹脂組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−101140号公報
【特許文献2】特開2006−193647号公報
【特許文献3】特開2010−59305号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本油脂株式会社技術資料「有機過酸化物の水素引抜き能と開始剤効率」(2003年4月作成)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これら特許文献1〜3には、高分子量または高極限粘度のメタクリル系共重合体と低分子量または低極限粘度のメタクリル系共重合体とを別々に製造し、それらを二軸混練機などで混練することを含むメタクリル系樹脂の製造方法が記載されている。かかる製造方法は、製造コストを低く抑えることが難しく、混練時に掛かる高熱による着色や焼け;それに伴う異物の混入などが生じ易い。また、高分子量または高極限粘度のメタクリル系共重合体に比べて低分子量または低極限粘度のメタクリル系共重合体の方が混練において先に溶融しはじめるため、高分子量または高極限粘度のメタクリル系共重合体に十分なせん断力が伝わらないことがある。このために、高分子量または高極限粘度のメタクリル系共重合体の一部が溶融しきれずに残り、メタクリル系樹脂を成形したときに外観不良を起こすことがある。
本発明の目的は、メタクリル系樹脂が本来有している透明性、耐熱性、耐薬品性、機械強度などの優れた特性を損なうことなく、成形性が改良されたメタクリル系樹脂を高い生産効率で製造する方法および該方法によって得られるメタクリル系樹脂からなる優れた光学特性を有する成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の検討を行った。その結果、メタクリル酸メチルを特定量で含有してなる単量体混合物(I)を塊状重合または溶液重合することによって、重量平均分子量5万超の重合体(a)を含む反応液(I)を得、次いで、前記反応液(I)に、メタクリル酸メチルを特定量で含有する単量体混合物(II)を、単量体混合物(I)の0.02〜1.0質量倍混合して塊状重合または溶液重合することによって、前記重合体(a)と重量平均分子量2万以上5万以下の重合体(b)とを特定の質量比および濃度で含む反応液(II)を得ることを含む方法によって、メタクリル系樹脂が本来持つ透明性、耐熱性、耐薬品性、機械物性などの優れた特性を損なうことなく、成形性が改良されたメタクリル系樹脂を高い生産効率で製造できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、さらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のものを包含する。
〔1〕第一段階において、メタクリル酸メチル50質量%以上とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%以下とを含有してなる単量体混合物(I)を塊状重合または溶液重合することによって、重量平均分子量5万超の重合体(a)を含む反応液(I)を得、次いで、第二段階において、反応液(I)に、メタクリル酸メチル50質量%超とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%未満とを含有しかつ単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率よりも高い含有率でメタクリル酸メチルを含有する単量体混合物(II)を、前記単量体混合物(I)の0.02〜1.0質量倍混合して、塊状重合または溶液重合することによって、重合体(a)と重量平均分子量2万以上5万以下の重合体(b)とを、質量比(a/b)60/40〜90/10で合計量100質量部含む反応液(II)105〜300質量部を得ることを含むメタクリル系樹脂の製造方法。
〔2〕前記第一段階を槽型反応装置(1)にて行い、前記第二段階を槽型反応装置(2)にて行い、得られる反応液(II)の量が125〜300質量部である、前記〔1〕の製造方法。
〔3〕第一段階は、その重合温度T1が110〜170℃であり、第二段階は、その重合温度T2が130℃以上でかつ(T1+30)℃以下である、前記〔1〕または〔2〕の製造方法。
〔4〕前記第二段階を槽型反応装置(2a)およびその下流に連結された管型反応装置(2b)にて行い、槽型反応装置(2a)にて得られる反応液(II0)は重合体70〜95質量部を含み、得られる反応液(II)の量が105〜250質量部である、前記〔1〕のメタクリル系樹脂の製造方法。
〔5〕第一段階は、その重合温度T1が110〜170℃であり、第二段階は、槽型反応装置(2a)における重合温度T2aが130℃以上でかつ(T1+30)℃以下であり、管型反応装置(2b)における重合温度T2bが140〜190℃である、前記〔4〕の製造方法。
〔6〕重合体(a)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率am[質量%]と重合体(b)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率bm[質量%]との差が±1質量%以内である、前記〔1〕〜〔5〕のいずれの製造方法。
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれの製造方法によって得られたメタクリル系樹脂からなる成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、メタクリル系樹脂が本来有している透明性、耐熱性、耐薬品性、機械強度などの優れた特性を損なうことなく、成形性が改良されたメタクリル系樹脂を高い生産効率で得ることができる。また本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂を用いることによって、優れた光学特性などを有する成形品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のメタクリル系樹脂の製造方法は、第一段階と、第二段階とを少なくとも含む。該第一段階および第二段階では、単量体混合物を塊状重合または溶液重合することで重合体を得る。
【0011】
塊状重合法は、溶媒を用いずに単量体混合物を重合反応させる方法である。溶液重合法は、単量体混合物を溶媒に溶解させて重合反応させる方法である。前記溶媒の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部、より好ましくは0〜90質量部である。溶媒の使用量が多いほど、反応液の粘度が下がり取り扱い性が良好となるが生産性が低下する傾向がある。溶液重合において使用できる溶媒は、原料である単量体混合物および生成物である重合体に対して溶解能を有するものであれば特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が好ましい。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上の溶媒を組み合わせて混合溶媒として用いる場合、該混合溶媒が原料である単量体混合物と生成物であるメタクリル系樹脂に対する溶解能を有する限り、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコールや、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンや、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素のごとき、単量体混合物および重合体に対する溶解能が低い溶媒が含まれていてもよい。
【0012】
〔第一段階〕
まず、第一段階においては、単量体混合物(I)を塊状重合または溶液重合することによって、重合体(a)を含む反応液(I)を得る。
第一段階に用いられる単量体混合物(I)には、メタクリル酸メチルが50質量%以上、好ましくは80〜99質量%、より好ましくは90〜98質量%含まれている。
また、第一段階に用いられる単量体混合物(I)には、メタクリル酸メチルに共重合可能なビニル系単量体が、50質量%以下、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%含まれていてもよい。該ビニル系単量体は、一分子中に重合性アルケニル基を少なくとも一つ有する単量体である。該ビニル系単量体の好ましい例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレンなどその他のビニル系単量体;などの一分子中に重合性アルケニル基を一つだけ有する非架橋性ビニル系単量体が挙げられる。ビニル系単量体は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
該ビニル系単量体のうちで、アクリル酸アルキルエステルは、得られるメタクリル系樹脂の耐光性を高め、さらに複屈折を小さくして光学的な均一性を高める作用がある。
スチレンは、得られるメタクリル系樹脂の屈折率を大きくしかつ吸湿性を小さくする作用がある。
α−メチルスチレンは、得られるメタクリル系樹脂の耐熱性を高めかつ屈折率を大きくする作用がある。
本発明の成形品の各種用途において要求される特性に応じた単量体を単量体混合物(I)に含ませることが好ましい。
【0014】
単量体混合物(I)は、これを含む原料液(I)として塊状重合または溶液重合に供する。かかる原料液(I)は開始剤、連鎖移動剤、溶媒をさらに含むことができる。
【0015】
第一段階における塊状重合または溶液重合は、少なくとも1つの槽型反応器を含む反応装置〈以下、槽型反応装置(1)という。〉で行うことが好ましい。槽型反応装置(1)は、バッチ式であっても、流通式であってもよいが、流通式が好ましい。
【0016】
バッチ式槽型反応装置(1)は、槽型反応器に必要量の単量体混合物(I)を含む原料液(I)を仕込み、槽型反応器内にて重合反応させ、所定の重合転化率に達した時点で、反応液を該槽型反応器から全量排出する装置である。
流通式槽型反応装置(1)は、槽型反応器に単量体混合物(I)を含む原料液(I)を一定流量で供給し、槽型反応器内を定常状態に保って重合反応させ、該槽型反応器から供給量にバランスする流量で反応液を排出する装置である。
槽型反応器は、通常、撹拌翼などの撹拌手段を備えている。槽型反応器では、原料液(I)を撹拌手段によってほぼ均一に混合することが好ましく、完全混合することがより好ましい。当該槽型反応器として、市販の完全混合型の槽型反応器を用いることができる。流通式槽型反応装置(1)は、一つの槽型反応器で構成されるものであってもよいし、二つ以上の槽型反応器を直列に連結して構成されるものであってもよい。二つ以上の槽型反応器を直列に連結した構成とした場合に、単量体混合物(I)を含む原料液(I)は、最も上流に位置する槽型反応器に一括して添加しても、上流に位置する槽型反応器と下流に位置する槽型反応器とに分割して添加してもよい。
【0017】
第一段階において用いられる連鎖移動剤としては、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネートなどのアルキルメルカプタン類;α−メチルスチレンダイマー;テルピノレンが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。第一段階における連鎖移動剤の使用量は、後述する重量平均分子量を有する重合体(a)が得られるのであれば、特に限定されない。
【0018】
第一段階において用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。水素引抜き能が高すぎる重合開始剤を用いると、得られるメタクリル系樹脂において低分子量の重合体の割合が増えるので、金型汚れなどが発生したり、耐熱性が低下したりする傾向がある。
【0019】
水素引抜き能は、重合開始剤製造業者の技術資料(例えば、非特許文献1)などによって知ることができる。また、α−メチルスチレンダイマーを使用したラジカルトラッピング法、即ちα−メチルスチレンダイマートラッピング法によって測定することができる。当該測定は、一般に、次のようにして行われる。先ず、ラジカルトラッピング剤としてのα−メチルスチレンダイマーの共存下で重合開始剤を開裂させてラジカル断片を生成させる。生成したラジカル断片のうち、水素引抜き能が低いラジカル断片はα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して捕捉される。一方、水素引抜き能が高いラジカル断片はシクロヘキサンから水素を引き抜き、シクロヘキシルラジカルを発生させ、該シクロヘキシルラジカルがα−メチルスチレンダイマーの二重結合に付加して補足され、シクロヘキサン捕捉生成物を生成する。そこで、シクロヘキサン、またはシクロヘキサン捕捉生成物を定量することによって、理論的なラジカル断片発生量に対する水素を引抜き能の高いラジカル断片のモル分率を求め、これを水素引抜き能とする。より具体的には、実施例に記す方法で行われる。
【0020】
また、第一段階に用いられる重合開始剤は、1時間半減期温度が、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜120℃である。
【0021】
水素引抜き能が30%以下の重合開始剤として、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド(例えば日油株式会社製、パーヘキシルD:水素引抜き能19%、1時間半減期温度136.2℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(例えば日油株式会社製、パーヘキシルI:水素引抜き能18%、1時間半減期温度114.0℃)、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド(例えば日油株式会社製、パーヘキシルZ:水素引抜き能27%、1時間半減期温度114.2℃)、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(例えば日油株式会社製、パーブチルO:水素引抜き能22%、1時間半減期温度92.1℃)、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(例えば日油株式会社製、パーヘキシルO:水素引抜き能11%、1時間半減期温度90.1℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(例えば日油株式会社製、パーオクタO:水素引抜き能4%、1時間半減期温度84.4℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(例えば日油株式会社製、パーブチルPV:水素引抜き能12%、1時間半減期温度72.7℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(例えば日油株式会社製、パーヘキシルPV:水素引抜き能8%、1時間半減期温度71.3℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト(例えば日油株式会社製、パーブチルND:水素引抜き能12%、1時間半減期温度64.8℃)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト(例えば日油株式会社製、パーヘキシルND:水素引抜き能7%、1時間半減期温度62.8℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(例えば日油株式会社製、パーオクタND:水素引抜き能2%、1時間半減期温度57.5℃)、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば日油株式会社製、パーヘキサHC:水素引抜き能10%、1時間半減期温度107.3℃)、ベンゾイルパーオキシド(例えば日油株式会社製、ナイパーBW:水素引抜き能15%、1時間半減期温度92.0℃)、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(例えば日油株式会社製、パーロイル355:水素引抜き能2%、1時間半減期温度76.8℃)、ラウロイルパーオキサイド(例えば日油株式会社製、パーロイルL:水素引抜き能1%、1時間半減期温度79.5℃)などの有機過酸化物;2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(例えば大塚化学株式会社製、AIBN:水素引抜き能1%、1時間半減期温度82.6℃)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(例えば大塚化学株式会社製、AMBN:水素引抜き能1%、1時間半減期温度86.0℃)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(例えば和光純薬工業株式会社製、V601:水素引抜き能1%、1時間半減期温度83.9℃);などのアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、化合物名の後ろの括弧内に該化合物の代表的な市販品名、水素引抜能および1時間半減期温度を示した。重合開始剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
これらの中でも、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエ−ト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエ−ト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)が好ましく;t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)がより好ましい。
【0023】
第一段階における重合開始剤の使用量は、単量体混合物(I)100質量部に対して、好ましくは0.00001〜0.02質量部、より好ましくは0.0001〜0.01質量部である。重合開始剤の使用量が少なすぎると反応速度が遅く生産性が低下する傾向がある。重合開始剤が多すぎると重合速度が速くなりすぎて制御が困難となる傾向がある。
【0024】
第一段階における重合温度T1は、好ましくは110〜170℃、より好ましくは120〜150℃、さらに好ましくは130〜150℃である。温度T1が低すぎる場合には、反応液の粘度が高くなり、混合のために大きな動力が必要となる傾向がある。温度T1が高すぎる場合には、得られる重合体(a)の末端二重結合量が多くなり、得られるメタクリル系樹脂の熱安定性が低下する傾向がある。
【0025】
第一段階における重合反応は、平均滞留時間として、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは1〜3時間で行う。平均滞留時間が短くなるほど、重合開始剤の必要量が増える傾向がある。重合開始剤の必要量が増えると、重合反応の制御が難しくなるとともに、分子量の調整が困難になる傾向がある。一方、平均滞留時間が長くなるほど、反応が定常状態になるまでに時間を要し、生産性が低下する傾向がある。
【0026】
第一段階において製造される重合体(a)の重量平均分子量は、5万超、好ましくは5万超20万以下、より好ましくは5万超15万以下である。重合体(a)の重量平均分子量が低すぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の機械強度および耐薬品性が低下する傾向がある。一方、重合体(a)の重量平均分子量が高すぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の成形性が低下する傾向がある。
【0027】
第一段階において製造される重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位とそれに共重合可能なビニル系単量体に由来する繰り返し単位との質量比が、好ましくは50/50〜100/0、より好ましくは80/20〜99/1、さらに好ましくは90/10〜98/2である。
【0028】
第一段階において得られる反応液(I)には、重合体(a)が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%含まれている。反応液(I)に含まれる重合体(a)の割合が少なすぎると生産性が低下する傾向がある。反応液(I)に含まれる重合体(a)の割合が多すぎると反応液(I)の粘度が高くなり、混合のために大きな動力を要する傾向がある。
【0029】
〔第二段階〕
次に、第二段階においては、反応液(I)に、単量体混合物(II)を混合して塊状重合または溶液重合することによって、重合体(a)と重合体(b)とを含む反応液(II)を得る。第二段階では、未反応の単量体混合物(I)と、第二段階において新たに加えた単量体混合物(II)とを重合させる。
【0030】
第二段階に用いられる単量体混合物(II)には、メタクリル酸メチルが、50質量%超、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%含まれている。また、第二段階に用いられる単量体混合物(II)には、メタクリル酸メチルに共重合可能なビニル系単量体が、50質量%未満、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%含まれていてもよい。
単量体混合物(II)中のメタクリル酸メチルの含有率は、単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率よりも高くする。単量体混合物(II)中のメタクリル酸メチルの含有率と単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率との差は、好ましくは1質量%以上で、より好ましくは2質量%以上で、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは4質量%以上である。単量体混合物(II)中のメタクリル酸メチルの含有率が単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率よりも低い場合には、得られるメタクリル系樹脂の透明性および耐熱性が低下する傾向がある。
【0031】
単量体混合物(II)は、これを含む原料液(II)として塊状重合または溶液重合に供する。かかる原料液(II)は開始剤、連鎖移動剤、溶媒をさらに含むことができる。
【0032】
反応液(I)に混合される単量体混合物(II)の量は、第一段階に供した単量体混合物(I)の0.02〜1.0質量倍、好ましくは0.03〜0.5質量倍、より好ましくは0.05〜0.3質量倍である。
【0033】
第二段階における重合は、少なくとも1つの槽型反応器を含む反応装置〈以下、槽型反応装置(2)という。〉で行うことが好ましい。槽型反応装置(2)は、バッチ式であっても、流通式であってもよいが、流通式が好ましい。二つ以上の反応器を直列に連結した構成とした場合に、単量体混合物(II)を含む原料液(II)は、いずれかの反応器に一括して添加しても、複数の反応器に分割して添加してもよい。
また、第二段階における重合は、少なくとも1つの槽型反応器を含む反応装置〈以下、槽型反応装置(2a)という。〉およびその下流に連結された管型反応装置(2b)で行うことが好ましい。槽型反応装置(2a)は、バッチ式であっても、流通式であってもよいが、流通式が好ましい。
【0034】
バッチ式槽型反応装置(2)およびバッチ式槽型反応装置(2a)は、槽型反応装置(1)で得られた重合体(a)を含む反応液(I)と単量体混合物(II)を含む原料液(II)とを槽型反応器に仕込み、該槽型反応器内で重合反応させ、所定の重合転化率に達した時点で、反応液を当該槽型反応器から全量排出する装置である。
流通式槽型反応装置(2)および流通式槽型反応装置(2a)は、槽型反応装置(1)で得られた重合体(a)を含む反応液(I)と単量体混合物(II)を含む原料液(II)とを槽型反応器に一定流量で供給し、該槽型反応器内を定常状態に保って重合反応させ、該槽型反応器から供給量にバランスする流量で反応液を排出する装置である。
槽型反応器は、通常、撹拌翼などの撹拌手段を備えている。槽型反応器では、反応器内の混合液を撹拌手段によってほぼ均一に混合することが好ましく、完全混合することがより好ましい。当該槽型反応器として、市販の完全混合型の槽型反応器を用いることができる。流通式槽型反応装置(2)および流通式槽型反応装置(2a)は、一つの槽型反応器で構成されるものであっても、二つ以上の槽型反応器を直列に連結して構成されるものであってもよい。
【0035】
管型反応装置〈2b〉は、少なくとも一つの管型または塔型の流通式反応器で構成されるものである。管型反応装置〈2b〉は、槽型反応装置(2a)で得られた重合体を含む反応液(II0)と必要ならば単量体混合物(II)を含む原料液とを一定流量で管型または塔型の流通式反応器に供給し、該流通式反応器内を通過する間に重合転化率を上げていき、管型または塔型の流通式反応器から供給量にバランスする流量で反応液を排出する装置である。かかる流通式反応器では、管径または塔径が管長または塔高に比して非常に小さい場合、流通式反応器内を流れる液は、理論上、完全プラグフロー(栓流)になる。上記流通式反応器内には邪魔板や充填物が設けられていてもよい。塔型の流通式反応器としては、例えば、内部に多段の撹拌翼と各段の間に除熱用の伝熱管を有した塔高/塔径(L/D)比が3以上の反応器を用いることができる。管型の流通式反応器としては、例えば、内部に除熱と混合を目的とした伝熱管を内蔵した管長/管径(L/D)比が5以上の反応器、具体的には住友重機工業社製のSMR型反応器、ノリタケカンパニー社製のスタティックミキサー内蔵型反応器、東レ社製のハイミキサー内蔵型反応器が挙げられる。これらの中でも、スタティックミキサー内蔵型管型反応器が好ましい。
【0036】
管型反応装置<2b>は、その内壁温度が原料液導入口側から反応液排出口側に向かって順次高くなるように、2つ以上の領域に分かれていることが好ましい。例えば、一つの管型の流通式反応器において、上流部の内壁温度を低くし、下流部の内壁温度を高くしたもの;内壁温度の低い管型の流通式反応器と内壁温度の高い管型の流通式反応器を直列に連結したものが挙げられる。本発明においては、管型反応装置を2つの領域に分け、反応液導入側の内壁温度を140〜160℃に、反応液排出口側の内壁温度を150〜200℃にして、原料液導入口側から反応液排出口側に向かって順次高くようにすることがより好ましい。
【0037】
第二段階における塊状重合または溶液重合では、必要に応じて、重合開始剤、連鎖移動剤などの重合副資材を添加することができる。
重合副資材の添加方法は、特に制限されないが、反応装置の直ぐ上流に混合器を連結し、該混合器に、重合副資材と単量体混合物(II)を含む原料液(II)と反応液(I);または、かかる単量体混合物(II)と重合副資材を含む原料液(II)と反応液(I);を通して混合してから反応装置に導入することが好ましい。混合器としては、スタティックミキサーが好ましいものとして挙げられる。また、流通式反応装置の場合には、流通式反応装置の中間部から重合副資材を添加することもできる。
【0038】
第二段階において用いられる連鎖移動剤は、前記第一段階において用いられる連鎖移動剤として列挙したものと同じものを挙げることができる。第二段階における連鎖移動剤の使用量は、後述する重量平均分子量を有する重合体(b)が得られるのであれば、特に限定されない。
【0039】
第二段階において槽型反応装置で重合する場合に用いられる重合開始剤は、水素引抜き能が、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。用いられる重合開始剤の水素引抜き能が高すぎると、得られるメタクリル系樹脂に含まれる低分子量重合体の量が増えすぎて、金型汚れなどが発生しやすくなり、耐熱性を低下させる傾向がある。かかる重合開始剤は、1時間半減期温度が、好ましくは60〜140℃、より好ましくは80〜120℃である。かかる重合開始剤の具体例は、第一段階において用いられるものとして列挙したものと同じものを挙げることができる。かかる重合開始剤の量は、単量体混合物(I)と単量体混合物(II)との合計量100質量部に対して、好ましくは0.00001〜0.02質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.01質量部である。0.00001質量部未満であると反応速度が遅く生産性が低下する場合がある。0.02質量部を超えて使用すると、重合速度が速くなりすぎて制御が困難となる場合がある。
【0040】
第二段階において管型反応装置で重合する場合に用いられる重合開始剤は、水素引抜能が、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。用いられる重合開始剤の水素引抜き能が高すぎると、得られるメタクリル系樹脂に含まれる低分子量重合体の量が増えすぎて、金型汚れなどが発生しやすくなり、耐熱性を低下させる傾向がある。かかる重合開始剤は、1時間半減期温度が、好ましくは100〜160℃、より好ましくは110〜150℃である。かかる重合開始剤の具体例としては、t−ブチルパーオキシアセテート(例えば日油株式会社製、パーブチルA、水素引抜能38%、1時間半減期温度120.9℃)、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(例えば日油株式会社製、パーブチル335、水素引抜能36%、1時間半減期温度119.3℃)、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン(例えば日油株式会社製、パーヘキサ22、水素引抜能35%、1時間半減期温度121.7℃)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン (例えば日油株式会社製、パーヘキサ3M、水素引抜能38%、1時間半減期温度109.2℃)、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば日油株式会社製、パーヘキサC、水素引抜能35%、1時間半減期温度111.1℃)、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(例えば日油株式会社製、パーテトラA、水素引抜能34%、1時間半減期温度114.0℃)、ジ−t−ブチルパーオキシ−2−メチルシクロヘキサン(例えば日油株式会社製、パーヘキサMC、水素引抜能33%、1時間半減期温度102.4℃)、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド(例えば日油株式会社製、パーヘキシルZ:水素引抜能27%、1時間半減期温度114.2℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(例えば日油株式会社製、パーヘキサHC:水素引抜能10%、1時間半減期温度107.3℃)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(例えば日油株式会社製、パーヘキシルI:水素引抜能18%、1時間半減期温度114.0℃)などの有機過酸化物が挙げられる。これら重合開始剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、化合物名の後ろの括弧内に該化合物の代表的な市販品名、水素引抜能および1時間半減期温度を示した。これらの中で、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンが好ましい。かかる重合開始剤は不活性溶媒に1〜50質量%の濃度で溶解させて用いることが好ましい。不活性溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール;トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトンが挙げられる。これらのうち、トルエン、エチルベンゼン、キシレンが好ましく、トルエン、エチルベンゼンがさらに好ましい。これら不活性溶媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる重合開始剤の量は、単量体混合物(II)と反応液(I)中の未反応の単量体混合物(I)との合計量100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.1質量部、より好ましくは0.002〜0.02質量部である。0.001質量部未満であると反応速度が遅く生産性が低下する場合がある。0.1質量部を超えると、重合速度が速くなりすぎて制御が困難となる場合や分子量が低下傾向になる場合がある。なお、反応液(I)中の未反応の単量体混合物(I)は、後述するガスクロマトグラフによって測定した重合転化率から算出する。
【0041】
槽型反応装置(2)または槽型反応装置(2a)における重合温度T2またはT2aは、その下限が好ましくは130℃、より好ましくは140℃であり、その上限が(T1+30)℃、より好ましくは(T1+20)℃、さらに好ましくは(T1+10)℃である。重合温度T2またはT2aが高すぎる場合は、第一段階で使い切れずに残存した開始剤が第二段階で一気に分解して、反応の制御が困難になる場合がある。第二段階における重合温度T2またはT2aは第一段階における重合温度T1より高くすることが好ましい。当該第二段階における重合温度T2またはT2aを前記第一段階における重合温度T1より低くすると、エネルギーロスが大きくなり生産効率の観点で不利になることがある。
【0042】
管型反応装置(2b)における重合温度T2bは、好ましくは140〜190℃、より好ましくは150〜170℃、さらに好ましくは150〜160℃である。当該重合温度が低すぎる場合には、反応液の粘度が高くなる傾向がある。一方、当該重合温度が高すぎる場合には、重合体の末端二重結合量が多くなり、得られるメタクリル系樹脂の熱安定性が低下する傾向がある。
管型反応装置(2b)における重合温度T2bは、槽型反応装置(2a)における重合温度T2aとの差が、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。重合温度の差が大きすぎる場合は、槽型反応装置(2a)における重合反応で使い切れずに残存した開始剤が管型反応装置(2b)において一気に分解して、反応温度の制御が困難になる場合がある。
管型反応装置(2b)における重合温度T2bは、槽型反応装置(2a)における重合温度T2aより高くすることが好ましい。管型反応装置(2b)における重合温度T2bを槽型反応装置(2a)における重合温度T2aより低くすると、エネルギーロスが大きくなり生産効率の観点で不利になることがある。
【0043】
第二段階における重合反応は、槽型反応装置の場合、平均滞留時間として、好ましくは0.2〜3時間、より好ましくは0.5〜2時間で行う。平均滞留時間が短くなるほど、反応器の容積が小さくなり除熱が困難になる傾向がある。一方、平均滞留時間が長くなるほど、反応が定常状態になるまでに時間を要し、生産性が低下する傾向がある。
【0044】
第二段階における重合反応は、管型反応装置の場合、平均滞留時間として、好ましくは10分間〜3時間、より好ましくは10分間〜1時間で行う。平均滞留時間が短くなるほど、重合開始剤の必要量が増える傾向がある。重合開始剤の必要量が増えると、反応の制御が難しくなるとともに、分子量の調整が困難になることがある。一方、平均滞留時間が長くなるほど、設備費が増加して、生産性が低下する傾向がある。
【0045】
第二段階において得られる反応液(II)に含まれる重合体は、第一段階(槽型反応装置(1))において重合された重合体(a)と、第二段階(槽型反応装置(2))において重合された重合体(b)とを含有するもの、または第一段階(槽型反応装置(1))において重合された重合体(a)と、第二段階(槽型反応装置(2a)および管型反応装置(2b))において重合された重合体(b)とを含有するものであると推定される。
【0046】
また、槽型反応装置(2a)にて得られる反応液(II0)に含まれる重合体は、第一段階(槽型反応装置(1))において重合された重合体(a)と、第二段階の槽型反応装置(2a)において重合された重合体(b)とを含有するものであると推定される。
【0047】
第二段階において製造される重合体(b)の重量平均分子量は、2万以上5万以下、好ましくは2万以上4万以下、より好ましくは3万以上4万以下である。重合体(b)の重量平均分子量が低すぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の機械強度および耐薬品性が低下する傾向がある。一方、重合体(b)の重量平均分子量が高すぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の成形性が低下する傾向がある。
【0048】
第二段階において製造される重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位とそれに共重合可能なビニル系単量体に由来する繰り返し単位との質量比が、好ましくは50/50〜100/0の範囲内、より好ましくは80/20〜99/1の範囲内、さらに好ましくは90/10〜98/2の範囲内にある。
また、第一段階において製造される重合体(a)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率am(質量%)と、第二段階において製造される重合体(b)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率bm(質量%)との差は、±1質量%以内であることが好ましく、±0.8質量%以内であることがより好ましく、±0.5質量%以内であることがさらに好ましい。amとbmとの差が大きい場合には、得られるメタクリル系樹脂の透明性が低下する傾向がある。さらに、am≦bmであることが耐熱性の観点から好ましい。
【0049】
第二段階において得られる反応液(II)に含まれる重合体100質量部の内訳は、重合体(a)60〜90質量部および重合体(b)10〜40質量部、好ましくは重合体(a)60〜85質量部および重合体(b)15〜40質量部、より好ましくは重合体(a)65〜85質量部および重合体(b)25〜35質量部、さらに好ましくは重合体(a)70〜85質量部および重合体(b)15〜30質量部である。
重合体(b)の量が少なすぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の成形性の改良効果が小さい。一方、重合体(b)の量が多すぎる場合には、得られるメタクリル系樹脂の機械強度および耐薬品性が極端に低下する。
なお、反応液(II)に含まれる重合体(a)および重合体(b)を単離することは困難であるので、第二段階において得られる反応液(II)に含まれる重合体100質量部の内訳は、第一段階において製造される重合体(a)の量と、第二段階において得られた反応液(II)に含まれる重合体の量とから算出する。また、重合体(b)の重量平均分子量および単量体単位組成比は、第一段階において製造される重合体(a)について測定した重量平均分子量および単量体単位組成比と、第二段階において得られた反応液(II)に含まれる重合体について測定した重量平均分子量および単量体単位組成比と、第二段階において得られる反応液(II)に含まれる重合体100質量部の内訳とから算出する。
【0050】
第二段階において得られる反応液(II)の量は、重合体(a)と重合体(b)との合計で100質量部を含有するものとして105〜300質量部、好ましくは125〜250質量部であり、第二段階を槽型反応装置(2)にて行った場合は好ましくは125〜300質量部、より好ましくは140〜250質量部であり、第二段階を槽型反応装置(2a)およびその下流に連結された管型反応装置(2b)にて行った場合は好ましくは105〜250質量部、より好ましくは125〜200質量部である。また、槽型反応装置(2a)にて得られる反応液(II0)に含まれる重合体の量は、反応液(II)に含まれる重合体(重合体(a)と重合体(b)との合計)100質量部に対して、好ましくは70〜95質量部、より好ましくは75〜90質量部である。
【0051】
〔メタクリル系樹脂〕
本発明に係るメタクリル系樹脂の製造方法では、上記のような多段階の重合反応を完了した後に、未反応単量体および/または溶媒を主成分とする揮発分を分離除去することが好ましい。除去方法は特に制限されないが、連続的に送られてくる反応液(II)を、減圧下に、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜270℃に加熱して、揮発分を連続的に分離除去する方法が好ましい。該加熱温度が低すぎると、揮発分の分離除去に時間を要したり、揮発分の分離除去が不十分となり成形品にシルバーなどの外観不良を起こしたりする場合がある。加熱温度が高すぎると、酸化、焼けなどによってメタクリル系樹脂が着色する場合がある。揮発分を分離除去するための装置としては、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機が挙げられる。揮発分を分離除去した後の残存揮発分の量は0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。残存揮発分の量が0.5質量%を超えると熱変形温度などが低下傾向になったり、成形品にシルバーなどの外観不良を起こしたりする場合がある。以上のようにしてメタクリル系樹脂を得ることができる。
【0052】
本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂の分子量分布(=重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.8以上、特に好ましくは1.9以上、最も好ましくは2以上である。分子量分布が狭すぎるとメタクリル系樹脂の流動性が不十分となる傾向がある。メタクリル系樹脂の重量平均分子量や分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0053】
本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂には、必要に応じて紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤、離型剤、高分子加工助剤、有機色素、光拡散剤、蛍光体、耐衝撃性改質剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤などを添加することができる。また、本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂は、他の製造方法によって得られるメタクリル樹脂で希釈して使用することもできる。また、その他AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、スチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂など他の樹脂と混合して使用することができる。
【0054】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
これらの中でも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤のいずれか1種またはその組み合わせが好ましい。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、紫外線による樹脂劣化、特に着色による光学特性低下を抑制する効果が高く、本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂にこうした特性を付加する場合において好適である。また、波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤は、得られる成形品の黄色味が抑えられるため、こうした特性が要求される用途において好適である。
【0056】
なお、紫外線吸収剤のモル吸光係数の最大値εmaxは、次のようにして算出した。先ず、シクロヘキサン1Lに、分子量MUVの紫外線吸収剤10.00mgを目視による観察で未溶解物がないように十分に溶解させた。この溶液を1cm×1cm×3cmの石英ガラスセルに注入し、日立製作所社製U−3410型分光光度計を用いて、波長380〜450nmでの吸光度を測定した。吸光度の最大値(Amax)からモル吸光係数の最大値εmaxを次式を用いて算出した。

εmax=[Amax/(10×10-3)]×MUV

波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm3・mol-1cm-1以下である紫外線吸収剤としては、2−エチル−2'−エトキシ−オキサルアニリド(クラリアントジャパン社;商品名サンデユボアVSU)が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.01〜0.5質量部、さらに好ましくは0.1〜0.3質量部である。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると紫外線による樹脂劣化の抑制効果が十分に発揮されない傾向がある。紫外線吸収剤の使用量が多すぎると成形の際に金型が汚れやすくなるので、歩留まりの低下や金型清掃などによる生産性の低下を引き起こしやすく、またシルバーの発生原因となったり、目やにが生じやすくなったりする。
【0058】
本発明では、さらに2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物やヒンダードアミン類などの光安定化剤を含有させてもよい。
ヒンダードアミン類としては、例えば、コハク酸ジメチル/1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ((6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペジル)イミノ))、2−(2,3−ジ−t−ブチル−4−ヒドキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、N,N'−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン/2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペジル)セバケート、コハク酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
光安定化剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.5質量部、より好ましくは0.005〜0.1質量部である。
【0059】
酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中で、着色による光学特性の劣化防止効果の点で、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0060】
リン系酸化防止剤としては、例えば、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジt−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4'−ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸が挙げられる。これらの中で、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。
【0061】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチル)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、オクチル化ジフェニルアミン、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。これらの中で、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(商品名「IRGANOX1010」、チバスペシャルケミカルズ社製)や、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、(商品名「IRGANOX1076」、チバスペシャルケミカルズ社製)が好ましい。
【0062】
酸化防止剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、さらに好ましくは0.01〜0.3質量部である。酸化防止剤の使用量が少なすぎると成形品の高温に晒されたときの着色を防止する効果が十分に発揮されない傾向がある。一方、酸化防止剤の使用量が多すぎると金型汚れによる歩留まりの低下や金型清掃などによる生産性の低下を引き起こすとともに、シルバー発生による成形品の欠点発生の原因となったり、成形品に焼けが発生して色相が低下したり、成形品に異物が発生したりする傾向がある。
【0063】
熱劣化防止剤としては、たとえば、式(α)で示される構造の化合物、具体的には、2−t−ブチル−6−(3'−t−ブチル−5'−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学(株);商品名「スミライザーGM」)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3',5'−ジ−t−アミル−2'−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学(株);商品名「スミライザーGS」)、2−t−ブチル−6−(3'−t−ブチル−2'−ヒドロキシ−5'−メチル−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,5−ジ−t−ブチル−6−(3'−5'−ジ−t−ブチル−2'−ヒドロキシメチルベンジル)−フェニルアクリレートが挙げられる。
これらの中でも、2−t−ブチル−6−(3'−t−ブチル−5'−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(3',5'−ジ−t−アミル−2'−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレートが好ましく、2,4−ジ−t−アミル−6−(3',5'−ジ−t−アミル−2'−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレートがより好ましい。
【0064】
【化1】


(式(α)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R5は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基または水素原子を示す。)
【0065】
熱劣化防止剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜1質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部、さらに好ましくは0.01〜0.2質量部である。熱劣化防止剤の使用量が少なすぎると熱劣化防止効果が得られにくい傾向がある。一方、熱劣化防止剤の使用量が多すぎると射出成形の際に金型汚れによる歩留まりの低下や金型清掃などによる生産性の低下をもたらす傾向になるとともに、シルバー発生による欠点発生の原因となったり、押出し成形時に目やにが生じやすくなったりする傾向がある。
【0066】
離型剤としては、高級アルコールおよび/またはグリセリンモノエステルが挙げられる。高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコールが挙げられる。本発明に用いられるグリセリンモノエステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどの高級脂肪酸のグリセライドが挙げられる。高級アルコールとグリセリンモノエステルを併用する場合、その割合は特に制限されないが、高級アルコール/グリセリンモノエステルの質量比が、好ましくは2.5/1〜3.5/1、より好ましくは2.8/1〜3.2/1である。
離型剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、0.5質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。離型剤の使用量が多すぎると金型汚れによる歩留まりの低下や金型清掃などによる生産性の低下をもたらす傾向があるとともに、シルバー発生による成形品の欠点発生の原因となったり、押出し成形時の目やにが生じやすくなったりする傾向がある。
【0067】
高分子加工助剤は、メタクリル系樹脂を成形する際において、厚さ精度および薄膜成形性の向上に効果を発する。高分子加工助剤の極限粘度は好ましくは3〜6dl/gである。極限粘度が小さすぎる場合には成形性に十分な改善効果が認められない。極限粘度が大きすぎる場合には溶融流動性の低下を招きやすい。
高分子加工助剤は、例えば、乳化重合法によって製造することができる。この乳化重合法によって得られる高分子加工助剤は、通常0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であっても、組成比または極限粘度の異なる2以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも好ましいものとしては、内層に低極限粘度の重合体を有し、外層に極限粘度5dl/g以上の高極限粘度の重合体を有する2層構造の粒子が挙げられる。
高分子加工助剤の使用量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。高分子加工助剤の使用量が少なすぎると成形時の厚さ精度に十分な改善効果が認められない。一方、高分子加工助剤の使用量が多すぎると溶融流動性の低下を招きやすい。
【0068】
有機色素としては、樹脂に対しては有害とされている紫外線を可視光線に変換する機能を有するターフェニルが挙げられる。
光拡散剤としては、ガラス微粒子、ポリシロキサン系架橋微粒子、架橋ポリマー微粒子が挙げられる。
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤が挙げられる。
【0069】
耐衝撃性改質剤としては、アクリル系ゴムまたはジエン系ゴムをコア層成分として含むコアシェル型改質剤、ゴム粒子を複数包含した改質剤などが挙げられる。耐衝撃性改質剤はいくらかの特性を改善させるために通常のレベルより少量添加することが好ましい。
【0070】
難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキシド、臭素化ポリカーボネート等の有機ハロゲン系難燃剤;酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛、トリクレジルホスフェート等の非ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。
【0071】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
【0072】
帯電防止剤としては、例えば、ステアロアミドプロピルジメチル−β−ヒドロキシエチルアンモニウムニトレートなどが挙げられる。
【0073】
本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂を用いれば、透明性に優れた成形品を得ることができる。例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形、真空成形などの公知の溶融加熱成形により、種々の形状の成形品を得ることができる。
【0074】
本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂は、透明性のみならず、耐熱性、耐薬品性、成形性に優れているので、各種の用途に適している。その用途としては、例えば広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板などの看板用品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイなどのディスプレイ用品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリアなどの照明用品;ペンダント、ミラーなどのインテリア用品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根などの建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、メーターカバー、テールランプカバーなどの輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機などの電子機器部品;保育器、レントゲン部品などの医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓などの機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、拡散板などの光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁などの交通関係部品;自動車内装用表面材、携帯電話の表面材、マーキングフィルムなどのフィルム部材;洗濯機の天蓋材やコントロールパネル、炊飯ジャーの天面パネルなどの家電製品用部材;その他、温室、大型水槽、箱水槽、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、溶接時の顔面保護用マスクなどが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されない。
実施例および比較例における物性値の測定または評価は以下の方法によって行なった。
【0076】
(重合開始剤の水素引抜き能)
α−メチルスチレンダイマー(1.0mol)、シクロヘキサン(6.9mol)および重合開始剤(0.05mol)をガラスアンプルに入れ、窒素置換を行い実質上酸素のない状態にして密封した。重合開始剤の10時間半減期温度に応じた下記温度にまで昇温し、当該温度にて60時間放置した。
10時間半減期温度80℃を超える重合開始剤の場合 :140℃
10時間半減期温度60℃〜80℃の重合開始剤の場合 :100℃
10時間半減期温度60℃未満の重合開始剤の場合 : 80℃
放置後の反応液中のシクロヘキサンのモル数(H[mol])をガスクロマトグラフにて測定し、下式にて水素引抜き能を求めた。
水素引抜き能(%)=[(6.9−H)/(0.05×2)]×100
【0077】
(単量体混合物の重合転化率の測定)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、GL Sciences Inc.製カラム INERT CAP 1(df=0.4μm、0.25mmI.D.×60m)をセットし、injection温度180℃、detector温度180℃、カラム温度を60℃(5分間保持)→昇温速度10℃/分→200℃(10分間保持)に制御して測定した。この測定値および各単量体に関する検量線に基づいて重合転化率を算出した。
【0078】
(反応液中の重合体の質量および重合体(a)と重合体(b)との質量比)
反応液中の重合体の質量は上記重合転化率と使用した単量体混合物の量から算出した。
また、このようにして算出した第一段階後の反応液(I)中の重合体(a)の質量と、第二段階後の反応液(II)中の重合体の質量から重合体(a)と重合体(b)との質量比を求めた。
【0079】
(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)の測定)
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフ(HLC−8020)に東ソー社製カラム TSKgel G2000HHR(1本)およびGMHHR−M(2本)を直列に連結してセットし、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、溶離液流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、検出のために示差屈折率(RI)計を用いて測定した。該測定値を標準ポリスチレンの分子量に換算することによって、重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0080】
この測定法に従って、槽型反応器Aから採取した反応液Aを分析すると重合体(a)の重量平均分子量(Mwa)を求めることができ、槽型反応器Bから採取した反応液Bを分析することによって重合体Bの重量平均分子量(MwB)を求めることができる。また、実施例4においては管型反応器Cから採取した反応液Cを分析することによって重合体Cの重量平均分子量(MwC)を求めることができる。
【0081】
重合体Bは、槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)と槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)とを含んでいると考えられる。
重合体Cは、重合体Bと管型反応器Cにおいて重合された重合体(b)(以下、重合体(c)と称する)とを含んでいると考えられる。すなわち、重合体Cは、重合体(a)と重合体(b)と重合体(c)とを含んでいると考えられる。
【0082】
重合体(b)の重量平均分子量(Mwb)は、下記式で算出することができる。

Mwb=[100×MwB−(Mwa×Conta)]/Contb

ここで、Contaは、槽型反応器Bから採取した重合体B中の重合体(a)の含有率[質量%]、Contbは、槽型反応器Bから採取した重合体B中の重合体(b)の含有率[質量%]を示す。ContaおよびContbは、槽型反応器Aおよび槽型反応器Bにおける重合転化率と、使用した単量体混合物(I)および単量体混合物(II)の量から算出できる。
【0083】
重合体(c)の重量平均分子量(Mwc)は、下記式で算出することができる。

Mwc=[100×MwC−(MwB×ContB)]/Contc

ここで、ContBは、管型反応器Cから採取した重合体C中の重合体Bの含有率[質量%]を示し、Contcは、管型反応器Cから採取した重合体C中の重合体(c)の含有率[質量%]を示す。ContBおよびContcは、槽型反応器Bおよび管型反応器Cにおける重合転化率と、使用した単量体混合物(I)および単量体混合物(II)の量から算出できる。
また、上記と同様の手法によって、重合体(a)、重合体(b)および重合体(c)の数平均分子量ならびに分子量分布を求めることができる。
【0084】
(メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率の測定)
島津製作所社製ガスクロマトグラフ GC−14Aに、S.E.G.社製カラム BPX−5(30m×0.25mmφ、膜厚0.5μm)をセットし、熱分解装置(島津製作所社製、PYR−2A)にて、分解温度500℃、分析条件:40℃(4分間保持)→昇温速度5℃/分→250℃で測定し、その測定結果から、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率を算出した。
【0085】
この測定法に従って、槽型反応器Aから採取した反応液Aを分析することによって、重合体(a)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率(am)を求めることができ、槽型反応器Bから採取した反応液Bを分析することによって重合体B中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率(Bm)を求めることができ、また、実施例4においては管型反応器Cから採取した反応液Cを分析することによって重合体C中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率(Cm)を求めることができる。
【0086】
重合体(b)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率(bm)は、下記式で算出することができる。

m=[100×Bm−(am×Conta)]/Contb

ここで、Contaは、槽型反応器Bから採取した重合体B中の重合体(a)の含有率[質量%]、Contbは、槽型反応器Bから採取した重合体B中の重合体(b)の含有率[質量%]を示す。ContaおよびContbは、槽型反応器Aおよび槽型反応器Bにおける重合転化率と、使用した単量体混合物(I)および単量体混合物(II)の量から算出できる。
【0087】
重合体(c)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率(cm)は、下記式で算出することができる。

m=[100×Cm−(Bm×ContB)]/Contc

ここで、ContBは、管型反応器Cから採取した重合体C中の重合体Bの含有率[質量%]を示し、Contcは、管型反応器Cから採取した重合体C中の重合体(c)の含有率[質量%]を示す。ContBおよびContcは、槽型反応器Bおよび管型反応器Cにおける重合転化率と、使用した単量体混合物(I)および単量体混合物(II)の量から算出できる。
【0088】
(流動性の評価−1 (MFR))
ISO1133に準拠して、温度230℃、荷重37.3Nでメルトフローレート(MFR)を測定した。
【0089】
(流動性の評価−2 (スパイラルフロー長さ))
住友重機社製SE−180DU−HP成形機において、型締圧力180トン、スクリュー径φ36mm、金型温度80℃、成形温度285℃、射出速度400mm/秒、充填圧力274MPaで、スパイラルフロー金型(製品厚み0.4mm、幅10mm)を用いて射出成形した。そのときのメタクリル系樹脂のスパイラルフロー長さを測定した。
【0090】
(薄型導光板の成形性評価)
住友重機社製SE−180DU−HP成形機において、型締圧力180トン、スクリュー径φ36mm、金型温度85℃、成形温度290℃、射出速度300mm/秒、充填圧力300MPaで、長さ31.5mm、幅23.0mmおよび厚さ0.65mmの薄型導光板の射出成形を試みた。
その結果、難なく成形できた場合をA、充填するものの末端にひけが発生した場合をB、未充填となり成形できなかった場合をCとして評価した。
【0091】
(成形品の光透過率およびクロマティクネス指数b*の測定)
射出成形機で成形して得た板状成形品から190mm×50mm×5mmの試験片を切り出し、分光光度計(UV−2550;島津製作所社製)を用い、光路長190mmにおける、波長400nm、500nmおよび600nmにおける光透過率(%)とクロマティクネス指数b*とを測定した。
【0092】
(成形品の引張破壊応力の測定)
ISO527−2/1A/5に準拠して、引張破壊応力を測定した。
【0093】
(成形品の耐熱性の測定)
ISO75−2に準拠して、荷重1.80MPaでの荷重たわみ温度を測定した。
【0094】
(成形品の耐薬品性)
一般にカンチレバー法(ASTM F791−82に準拠)と呼ばれている試験にて耐薬品性を評価した。すなわち、ISO527−2/1A/5に準拠した引張破壊応力測定用の試験片を、長さ方向中央部で長さ方向に直交する線状の支点で支えて水平な状態に置き、長さ方向の一端を固定し、長さ方向中央部から84mm離れた他端近くに400g重の荷重をかけながら、長さ方向中央部の支え部とは反対面の曲げ伸び応力が集中している部位にエタノールの浸み込んだ10mm角の濾紙を接触させた。これによってクラックが発生しやすいようにした。該試験片が破断するまでの時間を測定した。この試験を7回繰り返して、その平均値を算出した。
【0095】
(製造装置)
本実施例で使用した製造装置は、撹拌機付オートクレーブ(I)、撹拌機付オートクレーブ(II)、完全混合型の槽型反応器Aと完全混合型の槽型反応器Bとが直列に連結された槽型流通式重合反応装置および二軸押出機を備えている。なお、槽型反応器Aおよび槽型反応器Bには撹拌機と採取管とが設置されており、所望の流量および平均滞留時間になるような容積を有している。
前記オートクレーブ(I)および(II)において単量体混合物(I)および単量体混合物(II)を含む原料液(I)および(II)がそれぞれ調製される。該原料液(I)は管経由で槽型反応器Aに供給される。 槽型反応器Aから排出される反応液Aはノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管において原料液(II)と混ぜ合わされて槽型反応器Bに供給され、槽型反応器Bから排出される反応液Bは配管で二軸押出機に供給される。
【0096】
さらに、槽型反応器Bと二軸押出機との間にノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管と、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した管型反応器Cとが直列に連結された管型流通式重合反応装置を取り付けることが可能になっている。これによって、槽型反応器Bから排出される反応液Bはノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管経由で管型反応器Cに供給され、管型反応器Cから排出される反応液Cは配管で二軸押出機に供給される。各反応器には採取管が設置されていて、採取管から少量の反応液を抜き出して、重合体等の特性を測定できるようになっている。
【0097】
《実施例1》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(「AIBN」 大塚化学社製、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:82.6℃)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.37質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.015質量部およびn−オクチルメルカプタン1.13質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0098】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0099】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.3kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.3kg/hrで供給し、平均滞留時間60分間で塊状重合を行い、2.3kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0100】
これに続けて、槽型反応器Bから2.3kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.3kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0101】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は46質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が60,700であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は53質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.1質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.9質量%からなり、かつ重量平均分子量が53,500であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)76質量部、重合体(b)24質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.7質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.3質量%からなり、かつ重量平均分子量が30,700であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
《実施例2》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.37質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.008質量部およびn−オクチルメルカプタン4.49質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0104】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0105】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.1kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.1kg/hrにて供給し、平均滞留時間60分間で塊状重合を行い、2.1kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0106】
これに続けて、槽型反応器Bから2.1kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.1kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0107】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は46質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が60,700であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は53質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が55,500であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)83質量部、重合体(b)17質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が30,100であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0108】
《実施例3》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.004質量部およびn−オクチルメルカプタン0.14質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.012質量部およびn−オクチルメルカプタン0.22質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0109】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0110】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.1kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.1kg/hrにて供給し、平均滞留時間60分間で塊状重合を行い、2.1kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0111】
これに続けて、槽型反応器Bから2.1kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.1kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0112】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は41質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が149,800であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は53質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が121,200であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)73質量部、重合体(b)27質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が44,000であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0113】
《実施例4》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.37質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.01質量部およびn−オクチルメルカプタン1.13質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0114】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0115】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.2kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.2kg/hrにて供給し、平均滞留時間60分間で塊状重合を行い、2.2kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0116】
これに続けて、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(「パーヘキサC」 日油社製、水素引抜能:35%、1時間半減期温度:111.1℃)およびn−オクチルメルカプタンを原料液全体に対して各々0.008質量部および0.20質量部になるようにノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2.2kg/hrで流れる重合体Bを含有する反応液Bと連続的に混合した。該混合液を内壁温度140℃に制御された管型反応器Cに2.21kg/hrで供給し、平均滞留時間12分間で塊状重合を行い、2.21kg/hrで管型反応器Cから重合体Cを含む反応液Cを排出した。
【0117】
これに続けて、管型反応器Cから2.21kg/hrで排出される重合体Cを含有する反応液Cを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.21kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Cをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0118】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は46質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が60,700であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は49質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が55,900であった。
重合体B88質量部の内訳は、重合体(a)74質量部、重合体(b)14質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.3質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.7質量%からなり、かつ重量平均分子量が31,000であった。
【0119】
管型反応器Cにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は55質量%であった。管型反応器Cにおいて得られた反応液Cに含まれる重合体Cは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が52,900であった。
重合体C100質量部の内訳は、重合体(a)74質量部、重合体(b)14質量部重合体(c)12質量部であった。
管型反応器Cにおいて重合された重合体(c)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が30,200であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0120】
《比較例1》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.37質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0121】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0122】
これに続けて、n−オクチルメルカプタンを原料液(I)に対して各々0.175質量部になる割合で一定流量でノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2kg/hrで供給し、平均滞留時間30分間で塊状重合を行い、2kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0123】
これに続けて、槽型反応器Bから2kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0124】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は47質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が60,700であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は50質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が58,800であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)94質量部、重合体(b)6質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が29,600であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0125】
《比較例2》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.002質量部およびn−オクチルメルカプタン0.36質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたメタクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.04質量部およびn−オクチルメルカプタン3.25質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0126】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0127】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.2kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.2kg/hrで供給し、平均滞留時間60分間で塊状重合を行い、2.2kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0128】
これに続けて、槽型反応器Bから2.2kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.2kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0129】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は29質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.2質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.8質量%からなり、かつ重量平均分子量が59,100であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は49質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.2質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.8質量%からなり、かつ重量平均分子量が45,600であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)54質量部、重合体(b)46質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.2質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位3.8質量%からなり、かつ重量平均分子量が29,800であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表1に示す。
【0130】
《比較例3》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.29質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたアクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.0008質量部およびn−オクチルメルカプタン3.32質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0131】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0132】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.3kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.3kg/hrで供給し、平均滞留時間30分間で塊状重合を行い、2.3kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0133】
これに続けて、槽型反応器Bから2.3kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.3kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0134】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は46質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が76,500であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は46質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位93.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位6.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が69,000であった。
重合体B 100質量部の内訳は、重合体(a)87質量部、重合体(b)13質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位80.6質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位19.4質量%からなり、かつ重量平均分子量が18,900であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表2に示す。
【0135】
【表2】

【0136】
《比較例4》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.5質量部、アクリル酸メチル5.5質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.004質量部およびn−オクチルメルカプタン0.31質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
撹拌機付オートクレーブ(II)に、精製されたアクリル酸メチル100質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.005質量部およびn−オクチルメルカプタン3.68質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(II)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0137】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から2kg/hrで、温度130℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間90分間で塊状重合を行い、2kg/hrで、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0138】
これに続けて、原料液(II)を、オートクレーブ(II)から0.3kg/hrで、ノリタケエンジニアリング社製スタティックミキサーを内装した配管部に添加することによって、該配管部に2kg/hrで流れる重合体(a)を含有する反応液Aと連続的に混合した。該混合液を140℃に制御された槽型反応器Bに2.3kg/hrで供給し、平均滞留時間30分間で塊状重合を行い、2.3kg/hrで槽型反応器Bから重合体Bを含む反応液Bを排出した。
【0139】
これに続けて、槽型反応器Bから2.3kg/hrで排出される重合体Bを含有する反応液Bを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に2.3kg/hrで供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体Bをストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0140】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は41質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位95.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が70,500であった。
槽型反応器Bにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は47質量%であった。槽型反応器Bにおいて得られた反応液Bに含まれる重合体Bは、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位94.9質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位5.1質量%からなり、かつ重量平均分子量が58,200であった。
重合体B100質量部の内訳は、重合体(a)76質量部、重合体(b)24質量部であった。
槽型反応器Bにおいて重合された重合体(b)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位91.7質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位8.3質量%からなり、かつ重量平均分子量が19,300であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表2に示す。
【0141】
《比較例5》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.7質量部、アクリル酸メチル5.3質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.38質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。
次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0142】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から一定流量で、温度150℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間150分間で塊状重合を行い、一定流量で、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0143】
これに続けて、槽型反応器Aから一定流量で排出される重合体(a)を含有する反応液Aを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に一定流量で供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体(a)をストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0144】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は52質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が58,400であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表2に示す。
【0145】
《参考例1》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.7質量部、アクリル酸メチル5.3質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.005質量部およびn−オクチルメルカプタン0.1質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0146】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から一定流量で、温度150℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間150分間で塊状重合を行い、一定流量で、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0147】
これに続けて、槽型反応器Aから一定流量で排出される重合体(a)を含有する反応液Aを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に一定流量で供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体(a)をストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0148】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は48質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が19,000であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
【0149】
《参考例2》
撹拌機付オートクレーブ(I)に、精製されたメタクリル酸メチル94.7質量部、アクリル酸メチル5.3質量部、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.006質量部およびn−オクチルメルカプタン0.14質量部を仕込み均一に溶解させて原料液(I)を得た。次いで、製造装置内を窒素で置換し、酸素を追い出した。
【0150】
原料液(I)を、オートクレーブ(I)から一定流量で、温度150℃に制御された槽型反応器Aに供給し、平均滞留時間150分間で塊状重合を行い、一定流量で、槽型反応器Aから重合体(a)を含む反応液Aを排出した。
【0151】
これに続けて、槽型反応器Aから一定流量で排出される重合体(a)を含有する反応液Aを230℃に加温し、260℃に制御された二軸押出機に一定流量で供給した。該二軸押出機において未反応単量体を主成分とする揮発分を分離除去して、重合体(a)をストランド状に押し出した。該ストランドをペレタイザーでカットし、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。
【0152】
前記の連続製造操作が定常状態になったところで、各採取管から少量の反応液を抜き取って物性値等を測定した。
その結果、槽型反応器Aにおいて得られた反応液中の重合体の含有率は52質量%であった。槽型反応器Aにおいて重合された重合体(a)は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が150,000であった。
得られたペレット状のメタクリル系樹脂は、残存揮発分が0.1質量%であった。
【0153】
《比較例6》
比較例5で得られたペレット状メタクリル系樹脂80質量部と参考例1で得られたペレット状メタクリル系樹脂20質量部をヘンシェルミキサーにて混合した。その後、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出して、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。当該メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が50,500であった。
当該ペレット状メタクリル系樹脂を用いて射出成形にて成形品を作製して上記の評価に用いた。その評価結果を表2に示す。
【0154】
《比較例7》
参考例2で得られたペレット状メタクリル系樹脂80質量部と参考例1で得られたペレット状メタクリル系樹脂20質量部をヘンシェルミキサーにて混合した。その後、二軸押出機((株)テクノベル製、商品名:KZW20TW-45MG-NH-600)で250℃にて混練押出して、ペレット状のメタクリル系樹脂を得た。当該メタクリル系樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位96.0質量%およびアクリル酸メチルに由来する繰り返し単位4.0質量%からなり、かつ重量平均分子量が123,500であった。このストランドには未溶融物が見られ、溶融成形に耐えるものでなかった。
【0155】
以上の結果から、本発明の製造方法によって得られるメタクリル系樹脂は、優れた透明性、耐熱性、成形性、耐久性、耐薬品性、熱安定性などを有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一段階において、メタクリル酸メチル50質量%以上とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%以下とを含有してなる単量体混合物(I)を塊状重合または溶液重合することによって、重量平均分子量5万超の重合体(a)を含む反応液(I)を得、次いで、
第二段階において、反応液(I)に、メタクリル酸メチル50質量%超とこれに共重合可能なビニル系単量体50質量%未満とを含有しかつ単量体混合物(I)中のメタクリル酸メチルの含有率よりも高い含有率でメタクリル酸メチルを含有する単量体混合物(II)を、前記単量体混合物(I)の0.02〜1.0質量倍混合して、塊状重合または溶液重合することによって、重合体(a)と重量平均分子量2万以上5万以下の重合体(b)とを質量比(a/b)60/40〜90/10で合計量100質量部含む反応液(II)105〜300質量部を得ることを含むメタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第一段階を槽型反応装置(1)にて行い、前記第二段階を槽型反応装置(2)にて行い、
前記反応液(II)を125〜300質量部得ることを含む請求項1に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項3】
第一段階は、その重合温度T1が110〜170℃であり、
第二段階は、その重合温度T2が130℃以上でかつ(T1+30)℃以下である請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第二段階を槽型反応装置(2a)およびその下流に連結された管型反応装置(2b)にて行い、
槽型反応装置(2a)にて重合体70〜95質量部を含む反応液(II0)を得たのち、
前記反応液(II)を105〜250質量部得ることを含む請求項1に記載のメタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項5】
第一段階は、その重合温度T1が110〜170℃であり、
第二段階は、槽型反応装置(2a)における重合温度T2aが130℃以上でかつ(T1+30)℃以下であり、管型反応装置(2b)における重合温度T2bが140〜190℃である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
重合体(a)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率am[質量%]と重合体(b)中のメタクリル酸メチルに由来する繰り返し単位の含有率bm[質量%]との差が±1質量%以内である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたメタクリル系樹脂からなる成形品。

【公開番号】特開2012−214618(P2012−214618A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80698(P2011−80698)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】