説明

メタクリル系樹脂組成物

【課題】流動性、耐熱性、機械強度および機械強度に優れたメタクリル系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】メチルメタクリレートの単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの単位(b)を含み、重量平均分子量が5万〜25万である共重合体(1)と、メチルメタクリレートの単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの単位(b)とを含み、重量平均分子量が0.6万〜4万である共重合体(2)とを含有し、分散安定剤および乳化剤のいずれも含有せず、前記共重合体(1)に含まれる単位(b)の質量分率が、前記共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率より小さいメタクリル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性、耐熱性、機械強度および透明性に優れたメタクリル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル系樹脂組成物は、その優れた透明性、耐候性から、種々の分野で用いられている。最近では、メタクリル系樹脂組成物を任意の形状に成型したものが、導光板をはじめ、各種の映像系レンズ、光学レンズなどの光学部品としても広く使用されている。
【0003】
近年、光学部品が大型化し、それらが射出成型や押出し成型によって生産される機会が多くなっている。さらに、その生産性を上げるために、光学部品成型の際の成型サイクルは短い方が好ましく、加熱溶融した樹脂の固化までの冷却時間を短くすべく、低温で成型できるように樹脂の更なる流動性向上が求められる傾向にある。
【0004】
また、メタクリル系樹脂組成物は、透明性、耐候性に優れた特徴から、車両用ランプレンズ等にも用いられているが、その場合は、種々の薬品による耐薬品性の向上が望まれている。メタクリル系樹脂組成物では、分子量を上げることで耐薬品性を向上させることが一般的であるが、その場合、流動性が低下し、成型性が悪くなるという問題が生じる。
【0005】
メタクリル系樹脂組成物の流動性を向上させる方法としては、種々の検討がなされている。例えば特許文献1、2には、分子量の異なるアクリル系共重合体を混合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−101140号公報
【特許文献2】特開2006−193647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、いずれの特許文献に記載されている方法も、分散安定剤を用いて懸濁重合した共重合体を混合しているため、透明性が不十分であった。
【0008】
本発明の目的は、流動性、耐熱性、機械強度および透明性に優れたメタクリル系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、
メチルメタクリレートの単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの単位(b)からなり、重量平均分子量が5万〜25万である共重合体(1)と、
メチルメタクリレートの単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの単位(b)からなり、重量平均分子量が0.6万〜4万である共重合体(2)と
を含有し、分散安定剤および乳化剤のいずれも含有せず、
前記共重合体(1)に含まれる単位(b)の質量分率が、前記共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率より小さいメタクリル系樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、流動性、耐熱性、機械強度および透明性に優れたメタクリル系樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0012】
本発明は、メチルメタクリレートの単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートの単位(b)を有する共重合体を2種類含有するメタクリル系樹脂組成物に関する。この共重合体は、メチルメタクリレートと、メチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとを共重合することで得ることができる。なお、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0013】
メチルメタクリレートと共重合可能なアルキルアクリレートにおけるアルキル基としては、炭素数が1〜18のアルキル基から選ばれることが好ましく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル等が挙げられる。メチルメタクリレートと共重合可能なアルキルメタクリレートにおけるアルキル基としては、炭素数が2〜18のアルキル基から選ばれることが好ましく、例えば、エチル、n−プロピル、n−ブチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ステアリル等が挙げられる。
【0014】
上記共重合体としては、メチルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、およびn−ブチルアクリレートから選ばれるアルキルアクリレートとの共重合体が好ましい。
【0015】
上記共重合体は、さらに他のモノマーの単位(c)を有していてもよい。単位(c)を形成する他のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。他のモノマーの単位(c)の質量分率は、0〜30質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、上記共重合体のうち、重量平均分子量が5万〜25万のもの[共重合体(1)]と、重量平均分子量が0.6万〜4万のもの[共重合体(2)]との2種類を含有する。このようなメタクリル系樹脂組成物では、分子量の大きな共重合体(1)により、耐熱性および機械強度を維持し、分子量の小さな共重合体(2)により流動性を確保することができる。共重合体(1)の重量平均分子量が5万より小さいと、得られるメタクリル系樹脂組成物の耐熱性および機械強度が低下する。共重合体(1)の重量平均分子量が25万より大きいと、得られるメタクリル系樹脂組成物の流動性が低下する。共重合体(2)の重量平均分子量が0.6万より小さいと、得られるメタクリル系樹脂組成物の耐熱性が極端に低下する。共重合体(2)の重量平均分子量が4万より大きいと、共重合体(2)を混合する利点が小さくなる。共重合体(1)の重量平均分子量は、5万〜25万が好ましく、6万〜20万がより好ましい。共重合体(2)の重量平均分子量は、0.6万〜4万が好ましく、0.7万〜3万がより好ましい。
【0017】
本発明のメタクリル系樹脂組成物において、共重合体(1)に含まれる単位(b)の質量分率は、共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率より小さい。このことが好ましい理由は、以下のとおりである。
【0018】
メチルメタクリレートにメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートを共重合すると、共重合体の流動性は向上するが、耐熱性(軟化温度)が低下する。一方、共重合体(1)に共重合体(2)を混合すると、得られるメタクリル系樹脂組成物の流動性は向上するが、機械強度が低下する。すなわち、共重合体(1)に共重合体(2)を混合して流動性を向上させる場合、共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率と共重合体(2)の配合量との関係について、本発明者らが鋭意検討したところ、次のような結果を得た。まず、共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率を小さくして、共重合体(2)の配合量を多くした場合、得られるメタクリル系樹脂組成物の耐熱性の低下は小さいが、機械強度が大きく低下した。一方、共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率を大きくして、共重合体(2)の配合量を少なくした場合、得られるメタクリル系樹脂組成物の耐熱性は若干低下するものの、機械強度の低下を抑制することができた。
【0019】
したがって、共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率を大きくし、共重合体(2)の配合量を少なくすることが好ましい。
【0020】
共重合体(1)における単位(b)の質量分率は、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましい。また、共重合体(1)における単位(a)と単位(b)との質量比は、99.9/0.1〜80/20が好ましく、99.9/0.1〜85/15がより好ましい。
【0021】
共重合体(2)における単位(b)の質量分率は、0.2〜30質量%が好ましく、0.2〜20質量%がより好ましい。また、共重合体(2)における単位(a)と単位(b)との質量比は、99.8/0.2〜70/30が好ましく、99.8/0.2〜80/20がより好ましい。
【0022】
本発明のメタクリル系樹脂組成物に配合する共重合体(1)と共重合体(2)との質量比は、95/5〜60/40が好ましく、90/10〜65/35がより好ましい。
【0023】
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、共重合体(1)および共重合体(2)以外に、可塑剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、艶消し剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0024】
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、分散安定剤および乳化剤のいずれも含まないことで、透明性が向上する。一般に、ポリマーの製造方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが知られているが、懸濁重合法では分散安定剤を用い、乳化重合法では乳化剤を用いる。なお、分散安定剤とは、懸濁重合において水中にモノマーを分散させた懸濁粒子を安定化させるために用いる添加剤であり、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等の水溶性高分子;アルキルベンゼンスルホネートなどのような陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤等の界面活性剤;酸化マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。また、乳化剤とは、乳化重合において水中にエマルションを分散させるために用いる添加剤であり、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ソルビタンポリエチレングリコールモノラウリン酸エステル、モノパルミチン酸エステル、モノオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリル酸エステル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。懸濁重合法および乳化重合法で用いるこれらの分散安定剤または乳化剤は、重合後に洗浄により除去するものの、完全に除去することは難しい。
【0025】
本発明のメタクリル系樹脂組成物を製造するにあたっては、通常は、共重合体(1)および共重合体(2)を押出機などの混練機を用いて混合するが、共重合体(1)および共重合体(2)は、分散安定剤または乳化剤を使用しない塊状重合法または溶液重合法等により重合することが好ましい。
【0026】
本発明のメタクリル系樹脂組成物は、透明性、流動性に優れることから、車両用部材、サニタリー用部材、家電用部材、光学用部材、雑貨の用途に好適である。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、実施例の重合体の物性評価は以下の方法で行った。
【0028】
〔重量平均分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)にて測定した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法の測定は、メタクリル系樹脂組成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた後、東ソー(株)製の液体クロマトグラフィーHLC−8020型(商品名)を用いて実施した。分離カラムはTSK−GelのGMHXL(商品名)2本直列、溶媒はTHF、流量は1.0ml/min、検出器は示差屈折計、測定温度は40℃、注入量は0.1mlとし、標準ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを使用した。
【0029】
〔質量分率(組成比)〕
組成比は、熱分解装置(PRONTIER LAB製、商品名:Double Shoto Pyrolyzer PY−2020D型)を用いて分解温度500℃で分解したガス成分を、Agilent Technologies製のガスクロマトグラフィHP−6890(商品名)を用いたFIDガスクロマトグラフ法にて測定し、得られたピーク面積から算出した。測定条件は、以下とした。
分離カラム:HP−5(0.32mm径、30m長、0.25μm膜厚)
カラム測定温度プログラム:40℃/5分→(10℃/min)→150℃/5分
キャリヤーガスHe(1.2ml/min、線速度40cm/sec)
〔流動性〕
流動性は、80℃で24時間乾燥したペレット状のメタクリル系樹脂組成物のせん断粘度で比較した。せん断粘度は、東洋精機(株)製のキャピログラフ(商品名)を用い、キャピラリーはL/D=10/1mm、温度は230℃、せん断速度は600sec−1の条件で測定した。
【0030】
〔耐熱性〕
耐熱性の指標として、JIS規格K7191−2、試験条件A法に準拠した荷重たわみ温度を測定した。
【0031】
〔曲げ破断強度〕
JIS規格K6911に準拠した。試験片の厚さは4mmとした。
【0032】
〔全光線透過率〕
JIS規格K7361−1に準拠した。試験片の厚さは3mmとした。
【0033】
〔曇価〕
JIS規格K7136に準拠した。試験片の厚さは3mmとした。
【0034】
[実施例1]
(共重合体(1)−aの製造)
メチルメタクリレート94質量部と、メチルアクリレート6質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.3質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.009質量部とを混合して、原料モノマーを得た。この原料モノマーを、重合温度である140℃に制御された完全混合型反応器に攪拌混合しながら連続的に供給し、重合体組成物をギアポンプで連続的に抜き出しながら重合を行った。反応域での重合体組成物の滞在量を60kgとし、平均滞在時間を2.0時間とした。
【0035】
得られた重合体組成物を押出機にて脱揮して、共重合体(1)−aのペレットを得た。原料モノマー供給量と共重合体(1)−aの質量流量から求めた共重合体(1)−aの重合率は50%、共重合体(1)−aの重量平均分子量は75000であった。熱分解ガスクロマトグラフィによりピーク面積の比から測定した共重合体(1)−aの組成比は、メチルメタクリレート/メチルアクリレート=95/5(質量比)であった。
【0036】
(共重合体(2)−aの製造)
メチルメタクリレート78質量部と、メチルアクリレート22質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.6質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.015質量部とを混合した原料モノマーを用いた以外は、共重合体(1)−aと同様の方法で、共重合体(2)−aのペレットを得た。共重合体(2)−aの重合率は48%、重量平均分子量は19000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=80/20(質量比)であった。
【0037】
(メタクリル系樹脂組成物の製造)
共重合体(1)−aのペレット90質量部と、共重合体(2)−aのペレット10質量部をヘンシェルミキサーにて混合後、二軸押出機(池貝(株)製、商品名:PCM−30)で250℃にて混練押出し、メタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて測定した、せん断粘度は105Pa・s、荷重たわみ温度は93℃、曲げ破断強度は82MPa、全光線透過率は、92.0%、曇価は0.2%であった。
【0038】
[比較例1]
(共重合体(2)−bの製造)
メチルメタクリレート98.5質量部と、メチルアクリレート1.5質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.6質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.015質量部とを混合した原料モノマーを用いた以外は、実施例1の共重合体(1)−aと同様の方法で、共重合体(2)−bのペレットを得た。共重合体(2)−bの重合率は50%、重量平均分子量は19000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=99/1(質量比)であった。
【0039】
(メタクリル系樹脂組成物の製造)
共重合体(1)−aのペレット80質量部と、共重合体(2)−bのペレット20質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて測定した、せん断粘度は104Pa・s、荷重たわみ温度は94℃、曲げ破断強度は60MPa、全光線透過率は92.0%、曇価は0.2%であった。
【0040】
比較例1のメタクリル系樹脂組成物は、実施例1のメタクリル系樹脂組成物に対し、せん断粘度、荷重たわみ温度、全光線透過率および曇価は同等であるにも係らず、曲げ破断強度が低下した。
【0041】
[実施例2]
(共重合体(1)−bの製造)
メチルメタクリレート95質量部と、メチルアクリレート5質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.32質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.009質量部とを混合した原料モノマーを用いた以外は、実施例1の共重合体(1)−aと同様の方法で、共重合体(1)−bのペレットを得た。共重合体(1)−bの重合率は49%、重量平均分子量は69000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=96/4(質量比)であった。
【0042】
(共重合体(2)−cの製造)
メチルメタクリレート91質量部と、メチルアクリレート9質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.58質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.015質量部とを混合した原料モノマーを用いた以外は、実施例1の共重合体(1)−aと同様の方法で、共重合体(2)−cのペレットを得た。共重合体(2)−cの重合率は51%、重量平均分子量は20000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=92/8であった。
【0043】
(メタクリル系樹脂組成物の製造)
共重合体(1)−bのペレット75質量部と、共重合体(2)−cのペレット25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて測定した、せん断粘度は164Pa・s、荷重たわみ温度は92℃、曲げ破断強度は86MPa、全光線透過率は92.0%、曇価は0.2%であった。
【0044】
[比較例2]
(共重合体(2)−dの製造)
メチルメタクリレート98質量部と、メチルアクリレート2質量部とからなるモノマー混合物に窒素を導入した後、このモノマー混合物に対してn−オクチルメルカプタン0.58質量部と、重合開始剤として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン0.015質量部とを混合した原料モノマーを用いた以外は、実施例1の共重合体(1)−aと同様の方法で、共重合体(2)−dのペレットを得た。共重合体(2)−dの重合率は50%、重量平均分子量は20000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=98.5/1.5(質量比)であった。
【0045】
(メタクリル系樹脂組成物の製造)
共重合体(1)−bのペレット70質量部と、共重合体(2)−dのペレット30質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて測定した、せん断粘度は163Pa・s、荷重たわみ温度は93℃、曲げ破断強度は70MPa、全光線透過率は92.0%、曇価は0.2%であった。
【0046】
比較例2のメタクリル系樹脂組成物は、実施例2のメタクリル系樹脂組成物に対し、せん断粘度、荷重たわみ温度、全光線透過率および曇価は同等であるにも係らず、曲げ破断強度が低下した。
【0047】
[比較例3]
(共重合体(1)−cの製造)
メチルメタクリレート96質量部、メチルアクリレート4質量部、n−オクチルメルカプタン0.35質量部および重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.1質量部を溶解した溶液と、脱イオン水150質量部、分散安定剤としてポリメタクリル酸カリウム0.15質量部および硫酸ナトリウム0.15質量部を溶解した溶液とを仕込んで、重合温度80℃で懸濁重合を行った。その後、95℃で30分間保持した後、冷却、洗浄、乾燥して、共重合体(1)−cを得た。共重合体(1)−cの重量平均分子量は69000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=96/4(質量比)であった。
【0048】
(共重合体(2)−eの製造)
メチルメタクリレート92質量部、メチルアクリレート8質量部、n−オクチルメルカプタン0.65質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部を溶解した溶液を用いた以外は、共重合体(1)−cと同様の方法で、懸濁重合により共重合体(2)−eを得た。共重合体(2)−eの重量平均分子量は19000、組成比はメチルメタクリレート/メチルアクリレート=92/8(質量比)であった。
【0049】
(メタクリル系樹脂組成物の製造)
共重合体(1)−cのペレット75質量部と、共重合体(2)−eのペレット25質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法でメタクリル系樹脂組成物を得た。得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて測定した、せん断粘度は165Pa・s、荷重たわみ温度は92℃、曲げ破断強度は85MPa、全光線透過率は91.9%、曇価は0.3%であった。
【0050】
比較例3のメタクリル系樹脂組成物は、実施例2のメタクリル系樹脂組成物に対し、せん断粘度、荷重たわみ温度および曲げ破断強度は同等であるにも係らず、全光線透過率および曇価は低下し、目視にて白濁が認められた。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルメタクリレート単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート単位(b)からなり、重量平均分子量が5万〜25万である共重合体(1)と、
メチルメタクリレート単位(a)およびメチルメタクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート単位(b)からなり、重量平均分子量が0.6万〜4万である共重合体(2)と
を含有し、分散安定剤および乳化剤のいずれも含有せず、
前記共重合体(1)に含まれる単位(b)の質量分率が、前記共重合体(2)に含まれる単位(b)の質量分率より小さいメタクリル系樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−49873(P2013−49873A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−272403(P2012−272403)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2008−225989(P2008−225989)の分割
【原出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】