説明

メタクリル酸化合物の製造方法及び触媒

【課題】メタクリル酸化合物(II)を良好な収率で製造する方法を提供すること。
【解決手段】ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含む触媒の存在下、プロピオン酸化合物(I)と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種とを反応させることを特徴とするメタクリル酸化合物(II)の製造方法。前記ハイドロタルサイトとしては、式(III)[M11−xM2(OH)][Am−x/m・nHO]又は式(IV)[M1M2M3(OH)][Am−(b+2c)/m・nHO]で示されるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物〔以下、プロピオン酸化合物(I)ということがある。〕と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種〔以下、ホルムアルデヒド化合物ということがある。〕とを反応させて、式(II)
【0004】
【化2】

【0005】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物〔以下、メタクリル酸化合物(II)ということがある。〕を製造する方法と、この製造方法に適した触媒とに関する。
【背景技術】
【0006】
従来、プロピオン酸化合物(I)と、ホルムアルデヒド化合物とを反応させてメタクリル酸化合物(II)を製造する方法として、例えば、特許文献1には、ジルコニウム及びセシウムを含有するシリカ触媒の存在下に、プロピオン酸メチルと、メタノールと、ホルマリンとを反応させてメタクリル酸及びメタクリル酸メチルを製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−511336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法では、メタクリル酸化合物(II)の収率の点で必ずしも満足のいくものではなかった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、メタクリル酸化合物(II)を良好な収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0011】
(1)ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含む触媒の存在下、式(I)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種とを反応させることを特徴とする式(II)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物の製造方法。
(2)前記ハイドロタルサイトが、式(III)
[M11−xM2(OH)][Am−x/m・nHO] (III)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0<x≦0.5、n>0である。)
で示されるものである前記(1)に記載の製造方法。
(3)前記ハイドロタルサイトが、式(IV)
[M1M2M3(OH)][Am−(b+2c)/m・nHO]
(IV)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、M3はスズ、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0.5≦a<1、0<b<0.5、0<c<0.5であり、a+b+c=1かつ0<b+c≦0.5であり、n>0である。)
で示されるものである請求項1に記載の製造方法。
(4)前記M1がマグネシウム、亜鉛、鉛及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記M2がアルミニウム及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である前記(2)又は(3)に記載の製造方法。
(5)前記焼成を250〜650℃で行う前記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)さらに水の存在下で前記反応を行う前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)式(I)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種とを反応させて式(II)
【0018】
【化6】

【0019】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を製造する際に使用される触媒であって、ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含むことを特徴とする触媒。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、メタクリル酸化合物(II)を良好な収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明では、ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含む触媒の存在下、式(I)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物〔プロピオン酸化合物(I)〕と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種〔ホルムアルデヒド化合物〕とを反応させる。
【0024】
式(I)中、アルキル基としては、炭素数が1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、アクリロイル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、メタクリロイル基等が挙げられる。プロピオン酸化合物(I)として、中でも、プロピオン酸、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸無水物を原料として使用する場合に、本発明の方法は有利に採用される。
【0025】
ホルムアルデヒド化合物としては、中でも、ホルムアルデヒドが好ましい。ホルムアルデヒド化合物は、そのまま使用してもよいし、水溶液として使用してもよいし、有機溶媒溶液として使用してもよいし、水と有機溶媒との混合溶媒の溶液として使用してもよい。該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数が1〜8のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上を用いることもできる。ホルムアルデヒド化合物としてホルムアルデヒドを使用する場合、水溶液、アルコール溶液又は水とアルコールとの混合溶媒の溶液として使用するのが好ましい。ホルムアルデヒド化合物の使用量は、プロピオン酸化合物(I)1モルに対して、ホルムアルデヒドに換算して、通常0.05〜20モルである。ここで、メチラール1モルは、ホルムアルデヒド1モルと換算し、1,3,5−トリオキサン1モルは、ホルムアルデヒド3モルと換算し、パラホルムアルデヒド[HO(CHO)H]1モルは、ホルムアルデヒドnモルと換算するものとする。ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも2種を使用する場合は、その合計使用量がホルムアルデヒドに換算して上記範囲となればよい。
【0026】
ハイドロタルサイトとは、層状構造を有する化合物であり、2価の金属元素及び3価の金属元素から構成される正に荷電した層と層の間に、アニオンが存在してなる層状化合物であり、一般には次式(V)
【0027】
[MII1−xIII(OH)][Am−x/m・nHO] (V)
(式中、MIIは少なくとも1種の2価の金属元素を表し、MIIIは少なくとも1種の3価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0<x≦0.5、n>0である。)
で示される化合物である。尚、ハイドロタルサイトにおいては、その構造を保持し得る限り、正に荷電した層を構成する金属元素として、4価以上の金属元素も含み得る。本発明においては、中でも、式(III)
【0028】
[M11−xM2(OH)][Am−x/m・nHO] (III)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0<x≦0.5、n>0である。)
で示されるハイドロタルサイトが好ましく使用される。また、本発明においては、正に荷電した層を構成する金属元素として、さらに4価の金属元素を含む式(IV)
【0029】
[M1M2M3(OH)][Am−(b+2c)/m・nHO] (IV)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、M3はスズ、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0.5≦a<1、0<b<0.5、0<c<0.5であり、a+b+c=1かつ0<b+c≦0.5であり、n>0である。)
で示されるハイドロタルサイトが好ましく使用される。
【0030】
式(III)及び式(IV)において、M1としてはマグネシウム、亜鉛、鉛及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、M2としてはアルミニウム及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0031】
式(III)及び式(IV)において、m価のアニオンとしては、例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、塩素酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン、メタンスルホン酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、フェノキシイオン、アルコキシドイオン等の1価のアニオン;炭酸イオン、硫酸イオン、テレフタル酸イオン等の2価のアニオン;リン酸イオン、ヘキサシアノ鉄(III)酸イオン等の3価のアニオン;ヘキサシアノ鉄(II)酸イオン等の4価のアニオン等が挙げられ、中でも、塩化物イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオンが好ましい。
【0032】
式(III)において、xは、好ましくは1/6≦x≦0.5であり、より好ましくは1/4.5≦x≦1/2.4である。
【0033】
式(IV)において、a、b及びcは、好ましくは0.5≦a≦5/6、1/6<b<0.5、1/6<c<0.5であり、より好ましくは1.4/2.4≦a≦3.5/4.5、1/4.5<b<1/2.4、1/4.5<c<1/2.4であり、b+cは、好ましくは1/6≦b+c≦0.5であり、より好ましくは1/4.5≦b+c≦1/2.4である。
【0034】
式(III)で示されるハイドロタルサイト及び式(IV)で示されるハイドロタルサイトは、共沈法、水熱合成法等の方法により調製することができる。共沈法による式(III)で示されるハイドロタルサイトの調製は、例えば、2価の金属元素を含む化合物と、3価の金属元素を含む化合物と、水との混合溶液Aを、層間に導入するアニオンを含む化合物と、水酸化物イオンを含む化合物と、水との混合溶液Bと混合し、得られた結晶を含むスラリーを必要に応じて濾過、洗浄した後、乾燥することにより行うことができ、共沈法による式(IV)で示されるハイドロタルサイトの調製は、例えば、2価の金属元素を含む化合物と、3価の金属元素を含む化合物と、4価の金属元素を含む化合物と、水との混合溶液Cを、層間に導入するアニオンを含む化合物と、水酸化物イオンを含む化合物と、水との混合溶液Dと混合し、得られた結晶を含むスラリーを必要に応じて濾過、洗浄した後、乾燥することにより行うことができる。各金属元素を含む化合物としては、例えば、各金属元素のハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、硫酸アンモニウム塩、カルボン酸塩、オキソ酸塩等が挙げられる。アニオンを含む化合物としては、例えば、該アニオンのナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられ、水酸化物イオンを含む化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。尚、ハイドロタルサイト構造の有無については、XRD(X線回折)分析により確認することができ、ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物の組成(構成成分の種類や量)は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析等により分析することができる。
【0035】
本発明においては、ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含む触媒の存在下に前記反応を行う。該焼成は、通常、ハイドロタルサイトをガス雰囲気下で加熱することにより行われる。焼成温度は好ましくは250〜650℃、より好ましくは400〜550℃であり、焼成時間は好ましくは0.5〜48時間、より好ましくは2〜24時間である。前記ガスとしては、酸化性ガス、非酸化性ガスが挙げられ、酸化性ガスとしては、空気、酸素等が挙げられ、非酸化性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスや、二酸化炭素、水素、アンモニア等の還元性ガスが挙げられる。これらの中でも、窒素、空気、又はこれらの混合ガスが好ましい。
【0036】
式(III)で示されるハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物に含まれる前記M1の含有量は、1モルの前記M2に対して、1.0〜5.0モルが好ましく、1.4〜3.5モルがより好ましい。前記M1及び/又は前記M2が2種以上の金属元素である場合は、それぞれの含有量の合計の比率が前記範囲となればよい。式(IV)で示されるハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物に含まれる前記M1の含有量は、前記M2及び前記M3の各含有量の合計1モルに対して、1.0〜5.0モルが好ましく、1.4〜3.5モルがより好ましい。前記M1、前記M2及び/又は前記M3が2種以上の金属元素である場合は、それぞれの含有量の合計の比率が前記範囲となればよい。
【0037】
尚、ハイドロタルサイトの中でも、炭酸イオンを層間アニオンとするハイドロタルサイトは、400℃以上の温度で焼成することにより、脱水及び脱炭酸され、酸化物になることが知られている。前記式(III)においてm価のアニオンが炭酸イオンであるハイドロタルサイトを400℃以上の温度で焼成した場合、前記M1及び前記M2を含む酸化物が得られる。前記式(IV)においてm価のアニオンが炭酸イオンであるハイドロタルサイトを400℃以上の温度で焼成した場合、前記M1、前記M2及び前記M3を含む酸化物が得られる。
【0038】
前記反応においては、有機溶媒を使用してもよい。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール等の炭素数が1〜8のアルコール;ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられ、必要に応じてこれらの2種以上を用いることもできる。中でも、炭素数が1〜4のアルコールが好ましい。
【0039】
有機溶媒を使用する場合、その量は、プロピオン酸化合物(I)100重量部に対して、通常10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部である。尚、ホルムアルデヒド化合物を有機溶媒溶液、又は水と有機溶媒との混合溶媒の溶液として使用する場合、ホルムアルデヒド化合物の溶液中に含まれる有機溶媒の量を考慮して、前記反応における有機溶媒の使用量が前記範囲となればよい。
【0040】
本発明においては、前記触媒とともに水を存在させて前記反応を行うのが好ましい。水を存在させる場合、水の使用量は、プロピオン酸化合物(I)1モルに対して、通常0.1モル以上であり、好ましくは3〜50モルであり、より好ましくは10〜40モルである。前記ホルムアルデヒド化合物を水溶液、又は水と有機溶媒との混合溶媒の溶液として使用する場合、ホルムアルデヒド化合物の溶液中に含まれる水の量を考慮して、前記反応における水の使用量が前記範囲となればよい。
【0041】
前記反応において、反応方式は、バッチ式でもよく、連続式でもよい。反応温度は、通常50〜400℃、好ましくは100〜200℃であり、反応圧力は、通常0.1〜10MPaである。連続式の反応においては、例えば、気相条件下に、固定床形式又は流動床形式を採用して前記反応を行うことができる。前記反応をバッチ式で行う場合、不活性ガス雰囲気下で行ってもよいし、酸化性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、前記反応を連続式で行う場合、不活性ガスや酸化性ガスを原料とともに供給してもよい。前記不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等が挙げられる。前記酸化性ガスとしては、空気、酸素等が挙げられる。前記反応をバッチ式で行う場合、前記触媒の使用量は、プロピオン酸化合物(I)1モルに対して、通常1〜50g、好ましくは10〜30gである。
【0042】
かくして、式(II)
【0043】
【化8】

【0044】
(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物〔メタクリル酸化合物(II)〕を含む反応混合物を得ることができる。反応後の後処理操作については適宜選択されるが、例えば、必要に応じて濾過やデカンテーション等により反応混合物から前記触媒を分離した後、抽出、蒸留、晶析等の操作を行うことにより、メタクリル酸化合物(II)を分離することができる。
【0045】
尚、プロピオン酸化合物(I)として、プロピオン酸〔式(I)中、Rが水素原子である化合物〕を使用する場合、上記の炭素数が1〜4のアルコールを存在させて前記反応を行うことにより、メタクリル酸化合物(II)として、メタクリル酸〔式(II)中、Rが水素原子である化合物〕と該アルコールとのエステルであるメタクリル酸アルキルエステル〔式(II)中、Rが炭素数が1〜4のアルキル基である化合物〕を得ることができる。また、プロピオン酸化合物(I)として、プロピオン酸アルキルエステル〔式(I)中、Rがアルキル基である化合物〕を使用する場合、プロピオン酸アルキルエステルとホルムアルデヒド化合物との反応により副生した水や、該反応に好ましく使用される水の存在により、プロピオン酸アルキルエステル及び/又は該反応による生成物が加水分解され、メタクリル酸が生成し得る。同様に、プロピオン酸化合物(I)として、プロピオン酸無水物〔式(I)中、Rがプロピオニル基である化合物〕を使用する場合、プロピオン酸無水物とホルムアルデヒド化合物との反応により副生した水や、該反応に好ましく使用される水の存在により、プロピオン酸無水物及び/又は該反応による生成物が加水分解され、メタクリル酸が生成し得る。よって、プロピオン酸化合物(I)として、プロピオン酸無水物を使用する場合には、上記の炭素数が1〜4のアルコールを存在させて反応を行うことにより、メタクリル酸化合物(II)として、メタクリル酸アルキルエステル〔式(II)中、Rが炭素数が1〜4のアルキル基である化合物〕が生成し得る。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0047】
尚、以下の各例において得られた触媒の組成(構成元素比)は、ICP発光分光分析装置(Varian社製「715−ES」)を用い、触媒を分析することにより求めた。
【0048】
実施例1
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕11.56g(0.039モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕14.58g(0.039モル)を41.32gの水に溶解させ、これをα1液とした。一方、炭酸ナトリウム5.49g(0.052モル)、及び水酸化ナトリウム7.77g(0.194モル)を51.82gの水に溶解させ、これをβ1液とした。撹拌機を備えた容器内に、α1液とβ1液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α1液とβ1液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(A)〔[Zn0.60Al0.40(OH)][CO2−0.20・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(A)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(A)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(A)を得た。触媒(A)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを60モル%、Alを40モル%〔Zn/Al=1.5(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0049】
<触媒の活性試験>
2.5mLのガラス製マイクロリアクターに、プロピオン酸〔式(I)中、Rが水素原子である化合物〕0.30g(4.0ミリモル)、24.6重量%ホルムアルデヒド水溶液0.61g(ホルムアルデヒド5.0ミリモル、水25.7ミリモル)、メタノール0.26g(8.0ミリモル)、及び上記で得られた触媒(A)0.075gを入れ、マイクロリアクター内の気相部に窒素を導入してマイクロリアクター内の圧力を1.5MPa(ゲージ圧)まで加圧した。次いで、撹拌しながらマイクロリアクターを120℃に加熱し、4時間反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析して、下記式に基づき、プロピオン酸転化率(%)、メタクリル酸メチル〔式(II)中、Rがメチル基である化合物〕選択率(%)、メタクリル酸〔式(II)中、Rが水素原子である化合物〕選択率(%)及びメタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)を求め、表1に示した。
【0050】
プロピオン酸転化率(%)=〔反応したプロピオン酸のモル数÷供給したプロピオン酸のモル数〕×100
メタクリル酸メチル選択率(%)=〔生成したメタクリル酸メチルのモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)=〔プロピオン酸転化率(%)×(メタクリル酸メチル選択率(%)+メタクリル酸選択率(%))〕÷100
【0051】
実施例2
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕13.65g(0.046モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕11.47g(0.031モル)を41.05gの水に溶解させ、これをα2液とした。一方、炭酸ナトリウム5.40g(0.051モル)、及び水酸化ナトリウム7.34g(0.184モル)を51.82gの水に溶解させ、これをβ2液とした。撹拌機を備えた容器内に、α2液とβ2液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α2液とβ2液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(B)〔[Zn0.67Al0.33(OH)][CO2−0.33/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(B)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(B)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(B)を得た。触媒(B)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを67モル%、Alを33モル%〔Zn/Al=2.0(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0052】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(B)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0053】
実施例3
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕14.52g(0.049モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕10.17g(0.027モル)を40.94gの水に溶解させ、これをα3液とした。一方、炭酸ナトリウム5.36g(0.051モル)、及び水酸化ナトリウム7.16g(0.179モル)を50.62gの水に溶解させ、これをβ3液とした。撹拌機を備えた容器内に、α3液とβ3液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α3液とβ3液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(C)〔[Zn0.69Al0.31(OH)][CO2−0.31/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(C)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(C)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(C)を得た。触媒(C)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを69モル%、Alを31モル%〔Zn/Al=2.2(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0054】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(C)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0055】
実施例4
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕15.00g(0.050モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕9.46g(0.025モル)を40.88gの水に溶解させ、これをα4液とした。一方、炭酸ナトリウム5.34g(0.050モル)、及び水酸化ナトリウム7.06g(0.177モル)を50.42gの水に溶解させ、これをβ4液とした。撹拌機を備えた容器内に、α4液とβ4液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α4液とβ4液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(D)〔[Zn0.71Al0.29(OH)][CO2−0.29/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(D)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(D)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(D)を得た。触媒(D)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを71モル%、Alを29モル%〔Zn/Al=2.5(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0056】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(D)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0057】
実施例5
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕15.95g(0.054モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕8.04g(0.021モル)を40.76gの水に溶解させ、これをα5液とした。一方、炭酸ナトリウム5.30g(0.050モル)、及び水酸化ナトリウム6.86g(0.172モル)を50.03gの水に溶解させ、これをβ5液とした。撹拌機を備えた容器内に、α5液とβ5液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α5液とβ5液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(E)〔[Zn0.75Al0.25(OH)][CO2−0.25/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(E)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(E)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(E)を得た。触媒(E)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを75モル%、Alを25モル%〔Zn/Al=3.1(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0058】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(E)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0059】
実施例6
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕16.65g(0.056モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕7.00g(0.019モル)を40.67gの水に溶解させ、これをα6液とした。一方、炭酸ナトリウム5.27g(0.050モル)、及び水酸化ナトリウム6.72g(0.168モル)を49.75gの水に溶解させ、これをβ6液とした。撹拌機を備えた容器内に、α6液とβ6液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α6液とβ6液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(F)〔[Zn0.77Al0.23(OH)][CO2−0.23/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(F)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(F)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(F)を得た。触媒(F)は、組成分析の結果、Zn及びAlの総モルに対して、Znを77モル%、Alを23モル%〔Zn/Al=3.3(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0060】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(F)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0061】
実施例7
<触媒の調製>
硝酸マグネシウム6水和物〔Mg(NO・6HO〕7.76g(0.030モル)、硝酸カルシウム4水和物〔Ca(NO・4HO〕7.15g(0.030モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕11.36g(0.030モル)を50.19gの水に溶解させ、これをα7液とした。一方、炭酸ナトリウム6.42g(0.061モル)、及び水酸化ナトリウム8.48g(0.212モル)を60.56gの水に溶解させ、これをβ7液とした。撹拌機を備えた容器内に、α7液とβ7液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α7液とβ7液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(G)〔[Mg0.40Ca0.19Al0.41(OH)][CO2−0.41/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(G)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(G)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(G)を得た。触媒(G)は、組成分析の結果、Mg、Ca及びAlの総モルに対して、Mgを40モル%、Caを19モル%、Alを41モル%〔(Mg+Ca)/Al=1.5(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0062】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(G)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0063】
実施例8
<触媒の調製>
硝酸マグネシウム6水和物〔Mg(NO・6HO〕14.93g(0.058モル)、硝酸鉄(III)9水和物〔Fe(NO・9HO〕1.81g(0.0045モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕11.76g(0.031モル)を50.59gの水に溶解させ、これをα8液とした。一方、炭酸ナトリウム6.65g(0.063モル)、及び水酸化ナトリウム8.78g(0.220モル)を62.69gの水に溶解させ、これをβ8液とした。撹拌機を備えた容器内に、α8液とβ8液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α8液とβ8液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(H)〔[Mg0.65Fe0.05Al0.30(OH)][CO2−0.35/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(H)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(H)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(H)を得た。触媒(H)は、組成分析の結果、Mg、Fe及びAlの総モルに対して、Mgを65モル%、Feを5モル%、Alを30モル%〔Mg/(Fe+Al)=1.9(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0064】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(H)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0065】
実施例9
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕13.98g(0.047モル)、硝酸鉄(III)9水和物〔Fe(NO・9HO〕1.46g(0.0036モル)、及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕9.49g(0.025モル)を40.83gの水に溶解させ、これをα9液とした。一方、炭酸ナトリウム5.36g(0.051モル)、及び水酸化ナトリウム7.08g(0.177モル)を50.59gの水に溶解させ、これをβ9液とした。撹拌機を備えた容器内に、α9液とβ9液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α9液とβ9液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(I)〔[Zn0.66Fe0.05Al0.29(OH)][CO2−0.17・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(I)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(I)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(I)を得た。触媒(I)は、組成分析の結果、Zn、Fe及びAlの総モルに対して、Znを66モル%、Feを5モル%、Alを29モル%〔Zn/(Fe+Al)=1.9(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0066】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(I)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0067】
実施例10
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕17.82g(0.060モル)、硝酸鉛〔Pb(NO〕1.54g(0.0047モル)及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕12.10g(0.032モル)を49.66gの水に溶解させ、これをα10液とした。一方、炭酸ナトリウム1.71g(0.016モル)、及び水酸化ナトリウム7.74g(0.194モル)を31.39gの水に溶解させ、これをβ10液とした。撹拌機を備えた容器内に、α10液とβ10液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α10液とβ10液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(J)〔[Zn0.64Pb0.05Al0.31(OH)][CO2−0.31/2・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(J)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(J)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(J)を得た。触媒(J)は、組成分析の結果、Zn、Pb及びAlの総モルに対して、Znを64モル%、Pbを5モル%、Alを31モル%〔(Zn+Pb)/Al=2.2(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0068】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(J)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0069】
実施例11
<触媒の調製>
硝酸亜鉛6水和物〔Zn(NO・6HO〕13.50g(0.045モル)、塩化スズ5水和物〔SnCl・5HO〕1.22g(0.0035モル)及び硝酸アルミニウム9水和物〔Al(NO・9HO〕9.17g(0.024モル)を39.70gの水に溶解させ、これをα11液とした。一方、炭酸ナトリウム5.18g(0.049モル)、及び水酸化ナトリウム7.12g(0.178モル)を48.88gの水に溶解させ、これをβ11液とした。撹拌機を備えた容器内に、α11液とβ11液をそれぞれ20mL/hの流量で連続的に供給(共フィード)しながら室温で撹拌した。α11液とβ11液を全量供給した後に得られた混合物の液相のpHは13であった。得られた混合物を60℃にて一晩熟成した後、濾過し、次いで濾残を洗浄濾液のpHが7付近になるまで水洗した後、60℃で18時間乾燥させ、ハイドロタルサイト(K)〔[Zn0.64Al0.26Sn0.10(OH)][CO2−0.23・nHO]〕を得た。このハイドロタルサイト(K)は、銅Kα線によるX線回折分析の結果、ハイドロタルサイト構造を有することが確認された。得られたハイドロタルサイト(K)を100mL/minの窒素流通下、450℃で6時間焼成し、触媒(K)を得た。触媒(K)は、組成分析の結果、Zn、Al及びSnの総モルに対して、Znを64モル%、Alを26モル%、Snを10モル%〔Zn/(Al+Sn)=1.8(モル比)〕の割合で含有するものであった。
【0070】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(K)を使用し、マイクロリアクターを140℃に加熱した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0071】
実施例12
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0072】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)0.075gに代えて上記で得られた触媒(D)0.040gを使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0073】
実施例13
<触媒の調製>
実施例11と同様の方法で触媒(K)を得た。
【0074】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(K)を使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱して0.5時間反応を行った以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0075】
実施例14
<触媒の調製>
実施例11と同様の方法で触媒(K)を得た。
【0076】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)0.075gに代えて上記で得られた触媒(K)0.11gを使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱して0.5時間反応を行った以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0077】
比較例1
<触媒の調製>
炭酸セシウム〔CsCO〕0.516g(0.0016モル)を水に溶解させ、200mLの水溶液とした。得られた水溶液に、シリカゲル〔SiO〕10.00gを添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、ロータリーエバポレーターを用いて水を留去し、得られた固体を空気雰囲気下、120℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥物を空気雰囲気下、450℃にて3時間焼成し、セシウムの含有量が4重量%であるセシウム含有シリカ触媒(R1)を得た。
【0078】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(R1)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0079】
比較例2
<触媒の調製>
オキシ塩化ジルコニウム8水和物〔Zr(ClO)・8HO〕0.644g(0.0020モル)を水に溶解させ、200mLの水溶液とした。得られた水溶液に、シリカゲル〔SiO〕10.00gを添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、ロータリーエバポレーターを用いて水を留去し、得られた固体を空気雰囲気下、120℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥物9.80gを、炭酸セシウム〔CsCO〕0.516g(0.0016モル)を水に溶解させて200mLとした水溶液に添加し、室温で4時間撹拌した。撹拌後、ロータリーエバポレーターを用いて水を留去し、得られた固体を空気雰囲気下、120℃で一晩乾燥させた。得られた乾燥物を空気雰囲気下、450℃にて3時間焼成し、セシウムの含有量が3.9重量%、ジルコニウムの含有量が1.2重量%であるセシウム−ジルコニウム含有シリカ触媒(R2)を得た。
【0080】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(R2)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0081】
比較例3
<触媒の調製>
比較例1と同様の方法で触媒(R1)を得た。
【0082】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(R1)を使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0083】
比較例4
<触媒の調製>
比較例2と同様の方法で触媒(R2)を得た。
【0084】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(A)に代えて上記で得られた触媒(R2)を使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱した以外は、実施例1と同様の方法で活性試験を行った。結果を表1に示した。
【0085】
【表1】

【0086】
表1において、活性試験結果のPA、MMA、及びMAAは、以下のものを示す。
【0087】
PA:プロピオン酸
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
【0088】
実施例15
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0089】
<触媒の活性試験>
2.5mLのガラス製マイクロリアクターに、プロピオン酸メチル〔式(I)中、Rがメチル基である化合物〕0.35g(4.0ミリモル)、24.6重量%ホルムアルデヒド水溶液0.61g(ホルムアルデヒド5.0ミリモル、水25.7ミリモル)、メタノール0.26g(8.0ミリモル)、及び上記で得られた触媒(D)0.075gを入れ、マイクロリアクター内の気相部に窒素を導入してマイクロリアクター内の圧力を1.5MPa(ゲージ圧)とした。次いで、撹拌しながらマイクロリアクターを120℃に加熱し、4時間反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析して、下記式に基づき、プロピオン酸メチル転化率(%)、メタクリル酸メチル選択率(%)、メタクリル酸選択率(%)及びメタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)を求め、表2に示した。
【0090】
プロピオン酸メチル転化率(%)=〔反応したプロピオン酸メチルのモル数÷供給したプロピオン酸メチルのモル数〕×100
メタクリル酸メチル選択率(%)=〔生成したメタクリル酸メチルのモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)=〔プロピオン酸メチル転化率(%)×(メタクリル酸メチル選択率(%)+メタクリル酸選択率(%))〕÷100
【0091】
実施例16
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0092】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、24.6重量%ホルムアルデヒド水溶液0.61gに代えて、15重量%ホルムアルデヒド水溶液1.00g(ホルムアルデヒド5.0ミリモル、水47.1ミリモル)を使用した以外は、実施例15と同様の方法で活性試験を行った。結果を表2に示した。
【0093】
比較例5
<触媒の調製>
比較例2と同様の方法で触媒(R2)を得た。
【0094】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(D)に代えて上記で得られた触媒(R2)を使用した以外は、実施例15と同様の方法で活性試験を行った。結果を表2に示した。
【0095】
【表2】

【0096】
表2において、活性試験結果のMP、MMA、及びMAAは、以下のものを示す。
【0097】
MP:プロピオン酸メチル
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
【0098】
実施例17
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0099】
<触媒の活性試験>
2.5mLのガラス製マイクロリアクターに、プロピオン酸無水物〔式(I)中、Rがプロピオニル基である化合物〕0.52g(4.0ミリモル)、24.6重量%ホルムアルデヒド水溶液0.61g(ホルムアルデヒド5.0ミリモル、水25.7ミリモル)、メタノール0.26g(8.0ミリモル)、及び上記で得られた触媒(D)0.075gを入れ、マイクロリアクター内の気相部に窒素を導入してマイクロリアクター内の圧力を1.5MPa(ゲージ圧)とした。次いで、撹拌しながらマイクロリアクターを120℃に加熱し、4時間反応を行った。反応液をガスクロマトグラフィーにより分析して、下記式に基づき、プロピオン酸無水物転化率(%)、メタクリル酸メチル選択率(%)、メタクリル酸選択率(%)及びメタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)を求め、表3に示した。
【0100】
プロピオン酸無水物転化率(%)=〔反応したプロピオン酸無水物のモル数÷供給したプロピオン酸無水物のモル数〕×100
メタクリル酸メチル選択率(%)=〔生成したメタクリル酸メチルのモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷生成した全生成物のモル数〕×100
メタクリル酸とメタクリル酸メチルの合計収率(%)=〔プロピオン酸無水物転化率(%)×(メタクリル酸メチル選択率(%)+メタクリル酸選択率(%))〕÷100
【0101】
実施例18
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0102】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、マイクロリアクターを160℃に加熱して1時間反応を行った以外は、実施例17と同様の方法で活性試験を行った。結果を表3に示した。
【0103】
実施例19
<触媒の調製>
実施例4と同様の方法で触媒(D)を得た。
【0104】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(D)の使用量を0.040gとし、マイクロリアクターを160℃に加熱して1時間反応を行った以外は、実施例17と同様の方法で活性試験を行った。結果を表3に示した。
【0105】
実施例20
<触媒の調製>
実施例11と同様の方法で触媒(K)を得た。
【0106】
<触媒の活性試験>
<触媒の活性試験>において、触媒(D)0.075gに代えて上記で得られた触媒(K)0.11gを使用し、マイクロリアクターを160℃に加熱して0.5時間反応を行った以外は、実施例17と同様の方法で活性試験を行った。結果を表3に示した。
【0107】
【表3】

【0108】
表3において、活性試験結果のPAnh、MMA、及びMAAは、以下のものを示す。
【0109】
PAnh:プロピオン酸無水物
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含む触媒の存在下、式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種とを反応させることを特徴とする式(II)
【化2】

(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ハイドロタルサイトが、式(III)
[M11−xM2(OH)][Am−x/m・nHO] (III)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0<x≦0.5、n>0である。)
で示されるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイトが、式(IV)
[M1M2M3(OH)][Am−(b+2c)/m・nHO]
(IV)
(式中、M1はマグネシウム、亜鉛、銅、コバルト、マンガン、鉄、鉛、ニッケル、カルシウム、バリウム及びストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の2価の金属元素を表し、M2はアルミニウム、鉄、チタン、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ランタン、ガリウム及びインジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の3価の金属元素を表し、M3はスズ、チタン及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の4価の金属元素を表し、Am−はm価のアニオンを表す。mは1〜4の整数を表し、0.5≦a<1、0<b<0.5、0<c<0.5であり、a+b+c=1かつ0<b+c≦0.5であり、n>0である。)
で示されるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記M1がマグネシウム、亜鉛、鉛及びカルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記M2がアルミニウム及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記焼成を250〜650℃で行う請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
さらに水の存在下で前記反応を行う請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
式(I)
【化3】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、又はアシル基を表す。)
で示される化合物と、ホルムアルデヒド、メチラール、1,3,5−トリオキサン及びパラホルムアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも1種とを反応させて式(II)
【化4】

(式中、Rは、前記と同じ意味を表す。)
で示される化合物を製造する際に使用される触媒であって、ハイドロタルサイトを焼成して得られる焼成物を含むことを特徴とする触媒。

【公開番号】特開2013−53128(P2013−53128A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26031(P2012−26031)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】