説明

メタクリル酸製造用触媒の再生方法及びメタクリル酸の製造方法

【課題】メタクリル酸の製造に使用された使用済触媒の触媒活性及び触媒寿命を良好に回復させることができるメタクリル酸製造用触媒の再生方法、及びこの方法により得られた再生触媒を用いて、メタクリル酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、使用済触媒、硝酸根、アンモニウム根及び水を混合し、モリブデンに対する銅の原子比が所定割合である水性スラリーAを得る工程(1)と、モリブデンに対する銅の原子比が所定割合である水性スラリーBを得る工程(2)と、工程(1)で得られた水性スラリーAと工程(2)で得られた水性スラリーBとを混合して得られた水性スラリーCを、乾燥、焼成する工程(3)とを含み、ヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する銅の原子比が0.05/12〜0.25/12であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなる使用済みの触媒に再生処理を施し、メタクリル酸製造用触媒を再生する方法と、この方法により得られた再生触媒を用いてメタクリル酸を製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒は、例えばメタクロレイン等を原料とする気相接触酸化反応に長時間使用すると、熱負荷等により触媒活性が低下することが知られている。
【0003】
かかる使用済触媒の再生方法として、これまでに、使用済触媒に硝酸根及びアンモニウム根を混合して得られる水性スラリーを乾燥した後、焼成し、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.3/12であるヘテロポリ酸化合物からなる再生触媒を得る方法(特許文献1〜6参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80232号公報
【特許文献2】特開2008−86928号公報
【特許文献3】特開2008−93595号公報
【特許文献4】特開2009−248034号公報
【特許文献5】特開2009−248035号公報
【特許文献6】特開2010−207694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の再生方法で再生された再生触媒は、触媒活性及び触媒寿命の点で必ずしも満足のいくものではなかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、メタクリル酸の製造に使用された使用済触媒の触媒活性及び触媒寿命を良好に回復させることができるメタクリル酸製造用触媒の再生方法、及びこの方法により得られた再生触媒を用いて、長期間にわたり高い収率でメタクリル酸を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1]リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、下記工程(1)〜(3)を含み、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12であることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
工程(1):メタクリル酸の製造に使用された使用済触媒、硝酸根、アンモニウム根及び水を混合し、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.10/12〜0.50/12となるように調整した水性スラリーAを得る工程
工程(2):前記ヘテロポリ酸化合物の構成元素を含む化合物のうち少なくともモリブデンを含む化合物と、水とを混合し、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0/12〜0.25/12となるように調整した水性スラリーBを得る工程
工程(3):工程(1)で得られた水性スラリーAと工程(2)で得られた水性スラリーBとを混合して得られた水性スラリーCを、乾燥、焼成する工程
[2]前記ヘテロポリ酸化合物が、さらに、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを含み、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であり、工程(1)における水性スラリーAに含まれるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ工程(2)における水性スラリーBに含まれるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12である前記[1]に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[3]工程(3)における水性スラリーCが、工程(1)で得られた水性スラリーAと、工程(2)で得られた水性スラリーBと、銅を含む化合物とを混合して得られたものである前記[1]又は[2]に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[4]前記水性スラリーCに含まれるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となる範囲で、前記水性スラリーAと、前記水性スラリーBと、前記銅を含む化合物とを混合する前記[3]に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[5]工程(1)で得られる水性スラリーA及び工程(3)における水性スラリーCから選ばれる少なくとも一方が湿式粉砕処理されたものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[6]工程(3)における水性スラリーCが100℃以上で熱処理されたものである前記[1]〜[5]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[7]工程(1)で得られる水性スラリーAは、硝酸根1モルに対し0.1〜3.0モルのアンモニウム根を含む前記[1]〜[6]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[8]工程(1)で得られる水性スラリーAの液相のpHが8以下である前記[1]〜[7]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[9]前記ヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む前記[1]〜[8]のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
[10]前記[1]〜[9]のいずれかに記載の再生方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生された触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、メタクリル酸の製造に使用された使用済触媒の触媒活性及び触媒寿命を良好に回復させることができる。また、この方法により再生された再生触媒を用いれば、高い収率で長時間にわたりメタクリル酸を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のメタクリル酸製造用触媒の再生方法は、メタクリル酸の製造に使用された使用済のメタクリル酸製造用触媒に再生処理を施し、特定の再生触媒を得る方法である。
【0011】
本発明の再生方法に適用できるメタクリル酸製造用触媒(以下「対象触媒」と称することもある)は、リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩(部分中和塩)からなるものが好ましく、さらに好ましくはケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものである。
【0012】
前記ヘテロポリ酸化合物は、さらに、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを含有することが好ましく、前記元素Xと、バナジウムと、銅、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下「元素Y」と称することもある)とを含有することがより好ましい。
【0013】
前記メタクリル酸製造用触媒(対象触媒)を構成する前記ヘテロポリ酸化合物の組成は、メタクリル酸の製造に使用される前の新品触媒において、下記式(i)の通りであることが好ましい。
MoCu (i)
(式(i)中、P、Mo、Cu及びVはそれぞれリン、モリブデン、銅、バナジウムを表し、Xはカリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを示し、Yはヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(元素Y)を示し、Oは酸素を表し、b=12としたとき、0<a≦3、0<c≦3、0≦d≦3、0≦e≦3、0≦f≦3であり、xは各元素の酸化状態により定まる値である。尚、X及びYのそれぞれが、2種以上の元素である場合には、2種以上の元素の合計比率が、b=12としたとき、0<e≦3、0<f≦3となればよい。)
【0014】
特に、前記新品触媒を構成する前記ヘテロポリ酸化合物の組成は、メタクリル酸の収率及び触媒寿命の観点から、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.01/12〜0.50/12であることが好ましい。また、メタクリル酸の収率及び触媒寿命の観点から、前記新品触媒を構成する前記ヘテロポリ酸化合物に元素Xが含まれることが好ましく、その場合、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)は0.5/12〜2/12であることが好ましい。
【0015】
前記新品触媒は、例えば、ヘテロポリ酸化合物を構成する上述した各元素を含む化合物(例えば、各元素のオキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物、アンミン錯体等)を混合し、所望の形状に成形した後、焼成するなど、従来公知の方法で製造されたものであればよい。
前記各元素を含む化合物は、例えば、リンを含む化合物としては、リン酸、リン酸塩等が用いられ、モリブデンを含む化合物としては、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸塩、酸化モリブデン、塩化モリブデン等が用いられ、銅を含む化合物としては、酸化銅、硝酸銅、テトラアンミン銅二硝酸塩、炭酸銅、水酸化銅、塩化銅等が用いられ、バナジウムを含む化合物としては、バナジン酸、バナジン酸アンモニウム(メタバナジン酸アンモニウム)等のバナジン酸塩(メタバナジン酸塩)、酸化バナジウム、塩化バナジウム等が用いられ、元素Xを含む化合物としては、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム等の酸化物;硝酸カリウム、硝酸ルビジウム、硝酸セシウム、硝酸タリウム等の硝酸塩;炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムなどの炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等の重炭酸塩;水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等の水酸化物;塩化カリウム、塩化ルビジウム、フッ化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム等のハロゲン化物等が用いられる。また、前記元素Yを含む化合物としては、オキソ酸、オキソ酸塩、酸化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、ハロゲン化物等が用いられる。
【0016】
一般に、上述した好ましい触媒組成に設定された新品触媒は、メタクリル酸の製造に使用されると、熱負荷等により触媒活性が低下してしまうことがある。本発明の再生方法では、このように触媒活性の低下した使用済触媒を再生処理の対象とし、二種類の水性スラリーを混合し、乾燥、焼成することにより、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12になるようにするものである。再生触媒におけるCu/Mo比が0.05/12〜0.25/12であれば、良好な転化率及び選択率で長時間にわたりメタクリル酸を製造することができる。さらに、本発明の再生方法では、再生触媒におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が、0.5/12〜2/12となるようにするのが、触媒活性及び触媒寿命の観点から好ましい。
【0017】
本発明の再生方法では、上記工程(1)〜(3)を経て、再生触媒が得られる。
工程(1)においては、使用済触媒、硝酸根、アンモニウム根及び水を混合し、さらに、得られるスラリー中のモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.10/12〜0.50/12、好ましくは0.20/12〜0.40/12となるように調整して、水性スラリーAを得る。さらに、得られる再生触媒における触媒活性を効果的に回復させる点で、水性スラリーAにおけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12、好ましくは、2.5/12〜3.5/12となるように調整することが好ましい。ここで、硝酸根及びアンモニウム根を混合することにより、得られる再生触媒を用いたメタクリル酸の製造における転化率や選択率を向上させることができる。
【0018】
硝酸根を混合するには、硝酸根供給源として、例えば、前記対象触媒を構成する元素を含む硝酸塩のほか、硝酸、硝酸アンモニウム等の硝酸塩等を用いればよく、他方、アンモニウム根を混合するには、アンモニウム根供給源として、例えば、前記対象触媒を構成する元素を含むアンモニウム塩のほか、アンモニア;硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩等を用いればよい。
好ましくは、硝酸根の供給源またはアンモニウム根の供給源として、前記対象触媒を構成する元素を含む硝酸塩やアンモニウム塩を用いるのがよく、さらに、硝酸根とアンモニウム根との比率を後述の範囲に調整するために、硝酸、アンモニア、硝酸アンモニウムを用いるのがよい。
【0019】
工程(1)で得られる水性スラリーAにおいて、前記硝酸根と前記アンモニウム根との比率は、得られる再生触媒における触媒活性を効果的に回復させる点で、硝酸根1モルに対してアンモニウム根が0.1〜3.0モルであることが好ましく、より好ましくは、硝酸根1モルに対してアンモニウム根が0.5〜2.5モルであるのがよい。
【0020】
水性スラリーAを調製する際には、その中に存在するモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が前述した範囲(水性スラリーAにおけるCu/Mo比)になるように調整することが必要である。具体的には、原子比の調整は、銅を含む化合物(銅含有化合物)とモリブデンを含む化合物(モリブデン含有化合物)の少なくとも一方を加えることにより行えばよい。その混合量は、使用済触媒の触媒組成(構成成分の種類や量)に基づき、銅含有化合物及び/又はモリブデン含有化合物を加えた後の水性スラリーAにおけるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が前述した範囲になるように決定すればよい。メタクリル酸製造用触媒は、メタクリル酸の製造に長時間使用することによる熱負荷等によってモリブデンが飛散、消失してしまうために、新品触媒と使用済触媒とではその触媒組成が異なることがあるため、再生に供する前の使用済触媒の触媒組成(構成成分の種類や量)を、蛍光X線分析や誘導結合プラズマ(ICP)発光分析等により分析するのが好ましい。再生に供する前の使用済触媒におけるCu/Mo比が前述した水性スラリーAにおけるCu/Mo比の範囲内である場合には、銅含有化合物とモリブデン含有化合物の両方を加えなくてもよいし、水性スラリーAにおけるCu/Mo比が前述した範囲内に保たれる限り銅含有化合物及び/又はモリブデン含有化合物を加えてもよい。
【0021】
水性スラリーAを調製する際には、その中に存在するモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が前述した範囲(水性スラリーAにおけるX/Mo比)になるように調整することが好ましい。具体的には、原子比の調整は、元素Xを含む化合物(元素X含有化合物)とモリブデン含有化合物の少なくとも一方を加えることにより行えばよい。その混合量は、再生に供する前の使用済触媒の前記分析により得られた触媒組成に基づき、元素X含有化合物及び/又はモリブデン含有化合物を加えた後の組成におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が前述した範囲になるように決定すればよい。再生に供する前の使用済触媒におけるX/Mo比が前述した水性スラリーAにおけるX/Mo比の範囲内である場合には、元素X含有化合物とモリブデン含有化合物の両方を加えなくてもよいし、水性スラリーAにおけるCu/Mo比及びX/Mo比が前述した範囲内に保たれる限り元素X含有化合物及び/又はモリブデン含有化合物を加えてもよい。
【0022】
水性スラリーAの調製において混合するモリブデン含有化合物や銅含有化合物としては、上述した新品触媒の製造に用いることのできるモリブデンを含む化合物や銅を含む化合物の中から、1種もしくは2種以上を適宜選択すればよい。
【0023】
尚、水性スラリーAを調製する際には、使用済触媒の触媒組成に基づき、必要に応じて、モリブデンや銅以外の触媒構成元素を含む化合物を加えることもできる。モリブデンや銅以外の触媒構成元素を含む化合物としては、上述した新品触媒の製造に用いることのできる各元素を含む化合物の中から、1種もしくは2種以上を適宜選択すればよい。
【0024】
水性スラリーAの調製において混合する水としては、通常イオン交換水が用いられる。水の混合量は、得られる水性スラリーA中のモリブデン量(使用済触媒に含まれるモリブデンと添加するモリブデン含有化合物に含まれるモリブデンとの合計)1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
【0025】
水性スラリーAを調製する際には、上述した各成分の混合順序は特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0026】
水性スラリーAを調製する際には、使用済触媒をそのまま混合に供してもよいし、これにあらかじめ前処理として熱処理を施してもよい。
【0027】
使用済触媒の前処理として行う前記熱処理の処理温度は、特に制限されないが、好ましくは350〜600℃である。熱処理の処理時間は、特に制限されないが、通常0.1〜24時間であり、好ましくは0.5〜10時間である。また、使用済触媒の前処理として行う前記熱処理は、酸素含有ガス等の酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよい。
【0028】
また、水性スラリーAの調製に供する使用済触媒が成形体である場合、そのまま用いてもよいが、必要に応じて、あらかじめ従来公知の方法で破砕処理を施すこともできる。尚、水性スラリーAの調製に供する使用済触媒に、破砕処理と前処理として行う前記熱処理との両方を施す場合、両処理の順序は特に制限されないが、通常は破砕処理を行った後に熱処理が施される。
【0029】
工程(1)で得られる水性スラリーAにおいて、その液相のpHは8以下であることが好ましい。水性スラリーAの液相のpHが8を超えると、触媒活性が充分に回復しないおそれがある。
【0030】
工程(2)においては、対象触媒を構成するヘテロポリ酸化合物の構成元素を含む化合物のうち少なくともモリブデンを含む化合物と、水とを、得られるスラリー中のモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0/12〜0.25/12となるように調整して混合し、水性スラリーBを得る。
【0031】
水性スラリーBの調製においては、ヘテロポリ酸化合物の原料化合物として、少なくともモリブデン含有化合物を用い、このモリブデン含有化合物に対して、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が前述した範囲(水性スラリーBにおけるCu/Mo比)になるように銅含有化合物を用いる。よって、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)を0/12に設定する場合には、銅含有化合物は混合する必要はない。
【0032】
水性スラリーBの調製において混合するモリブデン含有化合物や銅含有化合物としては、上述した対象触媒の製造に用いることのできるモリブデンを含む化合物や銅を含む化合物の中から、1種もしくは2種以上を適宜選択すればよい。
【0033】
尚、水性スラリーBを調製する際には、必要に応じて、モリブデンや銅以外の触媒構成元素を含む化合物を加えることもできる。モリブデンや銅以外の触媒構成元素を含む化合物としては、上述した対象触媒の製造に用いることのできる各元素を含む化合物の中から、1種もしくは2種以上を適宜選択すればよく、中でも、元素Xを含む化合物を加えるのが好ましい。水性スラリーBにおけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)は、好ましくは0/12〜0.5/12、より好ましくは0/12〜0.3/12となるように調整することが好ましい。
【0034】
水性スラリーBの調製において混合する水としては、通常イオン交換水が用いられる。水の混合量は、得られる水性スラリーB中のモリブデン量1重量部に対し、通常1〜20重量部である。
【0035】
水性スラリーBを調製する際には、上述した各成分の混合順序は特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0036】
工程(3)においては、工程(1)で得られた水性スラリーAと工程(2)で得られた水性スラリーBとを混合し、水性スラリーCを得る。水性スラリーAと水性スラリーBとの混合割合は、特に制限されないが、水性スラリーC中に含まれるモリブデン及び銅の量を考慮して、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となるように調整すればよい。具体的には、例えば、水性スラリーC中に含まれるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となるように、水性スラリーAと水性スラリーBとの混合割合を調整し、得られた水性スラリーCを乾燥、焼成することにより、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるCu/Mo比を0.05/12〜0.25/12とすることができる。
【0037】
水性スラリーCを調製する際の混合順序、温度、攪拌条件などは、特に制限されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0038】
水性スラリーCの調製において、水性スラリーAと水性スラリーBとを混合する際や、後述する熱処理の際または該熱処理後には、必要に応じて、対象触媒の触媒構成元素を含む化合物や水を混合することができ、中でも、銅を含む化合物を混合するのが好ましい。水性スラリーC調製時に銅を含む化合物を混合することにより、触媒活性を効果的に回復させることができる。その場合、触媒構成元素を含む化合物を水に懸濁させた状態で加えることが好ましい。それらの混合割合は、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物において、その組成が前記式(i)を満たし、かつモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.15/12〜0.25/12となるよう適宜設定すればよい。具体的には、例えば、水性スラリーAと、水性スラリーBと、銅を含む化合物とを混合して水性スラリーCを得る場合、水性スラリーCに含まれるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となる範囲で、水性スラリーAと、水性スラリーBと、銅を含む化合物との混合割合を調整し、得られた水性スラリーCを乾燥、焼成することにより、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるCu/Mo比を0.05/12〜0.25/12とすることができる。
【0039】
水性スラリーCを調製する際には、さらに、水性スラリーC中に含まれるモリブデン及び元素Xの量を考慮して、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12となるように調整することが好ましい。具体的には、例えば、水性スラリーCに含まれるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となる範囲で、水性スラリーC中に含まれるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12となるように、水性スラリーAと水性スラリーBとの混合割合を調整し、得られた水性スラリーCを乾燥、焼成することにより、最終的に得られる再生触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるCu/Mo比を0.05/12〜0.25/12とし、かつX/Mo比を0.5/12〜2/12とすることができる。この際、Cu/Mo比及びX/Mo比がかかる範囲を満たすために、水性スラリーCに必要に応じて元素Xを含む化合物(元素X含有化合物)とモリブデン含有化合物の少なくとも一方を加えてもよい。
【0040】
水性スラリーCの調製において水を新たに混合する場合、混合する水としては、通常イオン交換水が用いられる。
【0041】
工程(3)において、水性スラリーCは、次いで乾燥に付される。乾燥する際の乾燥方法は、特に制限されるものではなく、例えば、蒸発乾固法、噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、気流乾燥法など、この分野で通常用いられる方法を採用することができる。また、乾燥条件については、混合スラリー中の水分含量が充分に低減されるよう適宜設定すればよく、特に制限されないが、その温度は、通常300℃未満である。
【0042】
水性スラリーCは、上述した乾燥に付す前に、100℃以上での熱処理が施されることが高収率で長期間にわたり安定してメタクリル酸が得られるという点で好ましい。熱処理は、例えば、密閉容器内で100℃以上の温度に加熱して熟成させることにより行われる。水性スラリーCにこのような熱処理が施されることにより、触媒活性を効果的に回復させることができる。熱処理における加熱温度の上限は、200℃以下であるのが好ましく、150℃以下であるのがより好ましい。熱処理における加熱時間は、充分な活性回復効果を得るうえでは、通常0.1時間以上、好ましくは2時間以上であり、生産性の観点からは、20時間以下であるのがよい。水性スラリーAと、水性スラリーBと、銅を含む化合物とを混合して水性スラリーCを調製する場合、該水性スラリーCを100℃以上での熱処理が施されたものとするには、例えば、(A)水性スラリーAと、水性スラリーBと、銅を含む化合物との混合スラリーに100℃以上での熱処理を施す方法、(B)水性スラリーAと、水性スラリーBとの混合スラリーに100℃以上での熱処理を施した後、銅を含む化合物を混合し、得られた混合スラリーに100℃以上での熱処理を施す方法等により熱処理を施せばよい。
【0043】
前記乾燥後に得られた乾燥物には、後述する前焼成もしくは焼成に付す前に、必要に応じて、所望の形状(リング状、ペレット状、球状、円柱状等)に成形する成形処理を施すことができる。成形処理は、例えば、打錠成形や押出成形など、この分野で通常用いられる方法により行えばよい。成形処理に際しては、必要に応じて、前記乾燥物に、水、成形助剤、気孔剤等を加えることができる。成形助剤としては、例えば、セラミックファイバーやグラスファイバーのほか、硝酸アンモニウム等が挙げられる。特に、硝酸アンモニウムは、成形助剤としての機能を有するほか、気孔剤としての機能も有する。
【0044】
前記成形処理で得られた成形体(以下、乾燥物という場合もある)には、引き続き、調温調湿処理を施すことが好ましい。焼成もしくは前焼成に付す前に調温調湿処理を施すことにより、均一で、より安定な再生触媒を得ることができる。調温調湿処理は、具体的には、40〜100℃、相対湿度10〜60%の雰囲気下に、成形体を0.5〜10時間程度曝すことにより行われる。該処理は、例えば、調温、調湿された槽内にて行ってもよいし、調温、調湿されたガスを成形体に吹き付けることにより行ってもよい。また、該処理を行う際の雰囲気ガスとしては、通常、空気が用いられるが、窒素等の不活性ガスを用いてもよい。
【0045】
前記乾燥後に得られた乾燥物には、後述する焼成に先立ち、前焼成として、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下に、180〜300℃程度の温度で保持する処理を施すことが好ましい。
【0046】
工程(3)においては、前記乾燥後に得られた乾燥物は、次いで焼成に付される。焼成は、この分野で通常用いられる方法により行うことができ、特に制限はされない。例えば、酸素等の酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよいし、窒素等の非酸化性ガスの雰囲気下で行ってもよく、焼成温度は通常300℃以上で行われる。中でも、触媒寿命を良好に回復させる上では、酸化性ガス又は非酸化性ガスの雰囲気下で多段焼成するのが好ましく、酸化性ガスの雰囲気下で第一段焼成を行い、次いで非酸化性ガスの雰囲気下で第二段焼成を行う、二段階の焼成方法を採用するのがより好ましい。
【0047】
焼成に用いられる酸化性ガスは、酸化性物質を含むガスであり、例えば、酸素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスを用いる場合、その酸素濃度は、通常1〜30容量%程度とすればよく、酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられ、必要に応じて不活性ガスで希釈される。また、前記酸化性ガスには、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。酸化性ガスとしては、中でも、空気が好ましい。酸化性ガス雰囲気下で行う焼成は、通常、このような酸化性ガスの気流下で行われる。また、酸化性ガス雰囲気下で行う焼成の温度は、通常360〜410℃であり、好ましくは380〜400℃である。
【0048】
焼成に用いられる非酸化性ガスは、実質的に酸素の如き酸化性物質を含有しないガスであり、例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。また、前記非酸化性ガスには、必要に応じて水分を存在させてもよいが、その濃度は通常10容量%以下である。非酸化性ガスとしては、中でも、窒素が好ましい。非酸化性ガス雰囲気下で行う焼成は、通常、このような非酸化性ガスの気流下で行われる。また、非酸化性ガス雰囲気下で行う焼成の温度は、通常420〜500℃であり、好ましくは420〜450℃である。
【0049】
本発明のメタクリル酸製造用触媒の再生方法においては、上記した水性スラリーA及び水性スラリーCから選ばれる少なくとも一方を湿式粉砕処理が施されたものとすることが、触媒活性及び触媒寿命を効果的に回復させる点で好ましい。
【0050】
湿式粉砕処理は、スラリー中の固形分を粉砕する処理であり、通常、湿式粉砕機を用いて行われる。湿式粉砕機としては、例えば、ボールミル、振動ボールミル、ロッドミル、媒体撹拌型ミル、振動ロッドミル、ジェットミル等が挙げられる。前記湿式粉砕処理において、粒径は、5.0μm以下まで粉砕されることが好ましく、2.0μm以下まで粉砕されることがさらに好ましい。尚、本発明における粒径は、水性スラリー中の固形分の平均粒径であり、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて体積基準のメジアン径を測定することにより求めることができる。
【0051】
湿式粉砕処理前の水性スラリー中の固形分濃度は、高い粉砕効率が得られるという点で、20〜60重量%が好ましい。かかる範囲を満たすために、該スラリーの濃縮や希釈を行ってもよく、その際の濃縮条件や希釈条件については、特に制限はない。
【0052】
湿式粉砕処理は、水性スラリーA及び水性スラリーCから選ばれる少なくとも一方の調製時に施され、中でも触媒寿命の回復度合いの点から、水性スラリーAのみ、または水性スラリーA及び水性スラリーCを湿式粉砕処理されたものとするのが好ましい。水性スラリーAのみが湿式粉砕処理されたものとするには、例えば、工程(1)〜(3)において、湿式粉砕処理が施された水性スラリーAを水性スラリーBとの混合に供して得られた水性スラリーCを乾燥、焼成すればよい。水性スラリーA及び水性スラリーCが湿式粉砕処理されたものとするには、例えば、工程(1)〜(3)において、湿式粉砕処理が施された水性スラリーAを水性スラリーBとの混合に供して、得られた混合スラリーに湿式粉砕処理を施して水性スラリーCを得、得られた水性スラリーを乾燥、焼成すればよい。
【0053】
尚、水性スラリーCを前記100℃以上での熱処理が施されたものとする場合は、該熱処理の前に湿式粉砕処理を行ってもよいし、該熱処理の後に湿式粉砕処理を行ってもよいが、該熱処理の後に湿式粉砕処理を行うのが好ましい。
【0054】
かくして、高い触媒活性及び触媒寿命を有する再生触媒を得ることができる。この再生触媒は、対象触媒と同様、ヘテロポリ酸化合物からなるものであり、遊離のヘテロポリ酸からなるものであってもよいし、ヘテロポリ酸の塩からなるものであってもよい。中でも、ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものが好ましく、さらにケギン型ヘテロポリ酸の酸性塩からなるものがより好ましい。また、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物においては、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12であり、Cu/Mo比が0.15/12〜0.25/12であるのが好ましい。加えて、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物においては、前記式(i)を満たす組成を有するのがよく、モリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であるのが好ましい。
【0055】
尚、本発明のメタクリル酸製造用触媒の再生方法は、メタクリル酸の製造に使用して得られた使用済触媒を再生対象とするものであるが、例えば、触媒の製造過程で生じるロス粉や、所望の性能を有していない触媒など、メタクリル酸の製造に未使用の触媒を再生対象として本発明の再生方法を実施することもでき、そのような場合にも、使用済触媒を再生した場合と同様に、良好な効果が得られる。
【0056】
本発明のメタクリル酸の製造方法は、前記した本発明の再生方法により再生されたメタクリル酸製造用触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物(以下「メタクリル酸原料」と称することもある)を気相接触酸化反応に付すものである。このように本発明の再生触媒を用いることにより、良好な転化率及び選択率を長時間維持しつつメタクリル酸を製造することができる。
【0057】
メタクリル酸の製造は、通常、固定床多管式反応器にメタクリル酸製造用触媒を充填し、これに前記メタクリル酸原料と酸素とを含む原料ガスを供給することにより行われるが、これに限定されるものではなく、流動床や移動床などの反応形式を採用することもできる。酸素源としては、通常、空気や純酸素が用いられる。また、原料ガス中には、前記メタクリル酸原料及び酸素以外の成分として、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、水蒸気等が含まれていてもよい。
【0058】
前記原料ガスに含まれるメタクリル酸原料は、必ずしも高純度の精製品である必要はなく、例えば、メタクロレインとしては、イソブチレンやt−ブチルアルコールの気相接触酸化反応により得られたメタクロレインを含む反応生成ガスを高純度のメタクロレインに精製することなく用いることもできる。なお、前記原料ガスに含まれるメタクリル酸原料は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0059】
メタクリル酸の製造における反応条件は、原料ガスに含まれるメタクリル酸原料の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、前記メタクリル酸原料としてメタクロレインを用いる場合、通常、原料ガス中のメタクロレイン濃度は1〜10容量%、水蒸気濃度は1〜30容量%、メタクロレインに対する酸素のモル比は1〜5、空間速度は500〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜350℃、反応圧力は0.1〜0.3MPa、である条件下で反応が行われる。他方、前記メタクリル酸原料としてイソブタンを用いる場合、通常、原料ガス中のイソブタン濃度は1〜85容量%、水蒸気濃度は3〜30容量%、イソブタンに対する酸素のモル比は0.05〜4、空間速度は400〜5000h-1(標準状態基準)、反応温度は250〜400℃、反応圧力は0.1〜1MPa、である条件下で反応が行われる。また、前記メタクリル酸原料としてイソブチルアルデヒドやイソ酪酸を用いる場合には、通常、メタクロレインを原料として用いる場合とほぼ同様の反応条件が採用される。尚、空間速度は、反応器内を通過する1時間当りの原料ガス供給量(L/h)を、反応器内の触媒容量(L)で除することにより求めることができる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
尚、以下で使用した空気は3.5容量%の水分を含むもの(大気相当)であり、以下で使用した窒素は実質的に水分を含まないものである。
【0061】
以下の各例において得られた触媒の組成分析、触媒性能の評価は、下記のようにして行った。
【0062】
<触媒組成(構成元素比)>
蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX Primus II」)を用い、触媒を蛍光X線分析することにより求めた。
【0063】
<粒径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製「LA−920」)を用いてスラリー中の固形分の平均粒径(体積基準のメジアン径)を測定した。なお、分散媒には水を使用し、相対屈折率は1.80(水に対する値)で測定を行った。
【0064】
<触媒の活性試験>
触媒9gを内径16mmのガラス製マイクロリアクターに充填し、炉温(マイクロリアクターを加熱するための炉の温度)を355℃まで昇温した。次いで、メタクロレイン、空気、スチーム及び窒素を混合して調製した原料ガス(組成:メタクロレイン4容量%、分子状酸素12容量%、水蒸気17容量%、窒素67容量%)を空間速度670h−1でマイクロリアクター内に供給して1時間反応を行い、触媒を強制劣化させた。次いで、炉温を280℃にして、この劣化触媒に、上記と同じ組成の原料ガスを、上記と同じ空間速度で供給して反応を開始した。炉温280℃での反応開始から1時間経過時の出口ガス(反応後のガス)をサンプリングし、ガスクロマログラフィーにより分析して、下記式に基づき、メタクロレイン転化率(%)、メタクリル酸選択率(%)及び収率(%)を求めた。
メタクロレイン転化率(%)=〔反応したメタクロレインのモル数÷供給したメタクロレインのモル数〕×100
メタクリル酸選択率(%)=〔生成したメタクリル酸のモル数÷反応したメタクロレインのモル数〕×100
収率(%)=〔転化率(%)×選択率(%)〕÷100
【0065】
参考例1
<新品触媒の調製>
40℃に加熱したイオン交換水224kgに、硝酸セシウム[CsNO]38.2kg、75重量%オルトリン酸27.4kg、及び70重量%硝酸25.2kgを溶解させ、これをα液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水330kgに、モリブデン酸アンモニウム4水和物[(NHMo24・4HO]297kgを溶解させた後、メタバナジン酸アンモニウム[NHVO]8.19kgを懸濁させ、これをβ液とした。
【0066】
α液とβ液の温度を40℃に保持しながら、攪拌下、β液にα液を滴下した後、密閉容器中で120℃にて5.8時間攪拌した。次いで、三酸化アンチモン[Sb]10.2kg及び硝酸銅3水和物[Cu(NO・3HO]10.2kgを、イオン交換水23kg中に懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌した。こうして得られたスラリー中の固形分の粒径は1.9μmであった。得られたスラリーをスプレードライヤーにて噴霧乾燥し、得られた乾燥粉末100重量部に対して、セラミックファイバー4重量部、硝酸アンモニウム13重量部、及びイオン交換水9.7重量部を加えて混練した後、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。得られた成形体を、温度90℃、相対湿度30%にて3時間乾燥させた後、窒素気流中にて435℃で3時間、続いて空気気流中にて390℃で3時間、保持することにより焼成し、その後、成形体を取り出して、これを新品触媒とした。
【0067】
得られた新品触媒は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムをそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.30及び1.4の原子比で含むヘテロポリ酸化合物からなるものであった。この新品触媒の活性試験の結果を表1に示す。
【0068】
参考例2
<使用済触媒の調製>
参考例1で得た新品触媒を所定時間、メタクロレインの接触気相酸化反応に付して、使用済触媒を得た。
得られた使用済触媒を構成するヘテロポリ酸化合物の酸素を除く金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.3、9.9、0.49、0.5、0.29及び1.4であった。この使用済触媒の活性試験の結果を表1に示す。
【0069】
実施例1
〔工程(1):水性スラリーA1の調製〕
参考例2で得られた使用済触媒200gをイオン交換水376gに加え攪拌した。次に、新品触媒に対する使用済触媒の不足成分を補うため、モリブデン源として三酸化モリブデン[MoO]30.6gと、リン源として75重量%オルトリン酸2.4gと、バナジウム源としてメタバナジン酸アンモニウム0.2gとを添加し、さらに、硝酸アンモニウム[NHNO]32.6gをイオン交換水108gに溶解させた水溶液を加えた後、70℃に昇温して同温度で1時間保持した。次いで、25重量%アンモニア水47.1gを添加し、70℃にて1時間保持した後、密閉容器中120℃にて5時間攪拌した。攪拌後、40℃まで冷却し、硝酸セシウム35.7gをイオン交換水107gに溶解させた40℃の水溶液を加え、水性スラリーA1を得た。得られた水性スラリーA1中の固形分の粒径は14.3μm、硝酸根に対するアンモニウム根のモル比は1.9であり、水性スラリーA1の液相のpHは6.1であった。また、水性スラリーA1に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.29及び3.2であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.29/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は3.2/12であった。
【0070】
〔水性スラリーA2の調製〕
上記水性スラリーA1の全量にイオン交換水を加えて希釈し、950gのスラリー(固形分濃度:29重量%)を得た。得られたスラリーを直径15mmのアルミナ製ボール1870gとともにアルミナ製容器に入れ、回転式ボールミルを用いて53回転/分の速度で容器を連続的に回転させることで16時間粉砕を行い、水性スラリーA2を得た。水性スラリーA2中の固形分の粒径は1.3μm、硝酸根に対するアンモニウム根の比は1.9であり、水性スラリーA2の液相のpHは6.4であった。また、水性スラリーA2に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.29及び3.2であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.29/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は3.2/12であった。
【0071】
〔工程(2):水性スラリーB1の調製〕
40℃に加熱したイオン交換水105gに、75重量%オルトリン酸12.9g、及び67.5重量%硝酸12.3gを溶解し、これをa液とした。一方、40℃に加熱したイオン交換水165gに、モリブデン酸アンモニウム4水和物139gを溶解した後、メタバナジン酸アンモニウム3.85gを懸濁させ、これをb液とした。攪拌下、a液にb液を滴下して、ヘテロポリ酸化合物を含む水性スラリーB1を得た。この水性スラリーB1に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン及びバナジウムがそれぞれ、1.5、12、0.50であり(アンチモン、銅、セシウムはいずれも0である)、モリブデンに対する銅の原子比、及びモリブデンに対するセシウムの原子比はいずれも0/12であった。
【0072】
〔工程(3):水性スラリーC1の調製〕
上記水性スラリーA2を475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物1.59gを、イオン交換水3.67gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC1を得た。水性スラリーC1中の固形分の粒径は1.4μmであった。また、水性スラリーC1に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0073】
〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC1を135℃にて乾燥し、得られた乾燥物100重量部に対し、セラミックファイバー2重量部、硝酸アンモニウム13重量部、イオン交換水7重量部を加えて混練し、直径5mm、高さ6mmの円柱状に押出成形した。得られた成形体を、温度90℃、相対湿度30%で3時間乾燥させた後、空気気流中にて220℃で22時間、続いて250℃で1時間保持し、次いで空気気流中にて390℃で4時間、続いて窒素気流中にて435℃で4時間、保持することで焼成し、その後成形体を取り出して、再生触媒(R1)を得た。この再生触媒(R1)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R1)の活性試験の結果を表1に示す。
【0074】
実施例2
〔工程(1)、(2):水性スラリーA2及びB1の調製〕
実施例1と同様の操作を行い、水性スラリーA2及びB1を得た。
【0075】
〔工程(3):水性スラリーC2の調製〕
上記水性スラリーA2を475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物3.18gを、イオン交換水7.34gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC2を得た。水性スラリーC2中の固形分の粒径は1.4μmであった。また、水性スラリーC2に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.24及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.24/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0076】
〔水性スラリーC2の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC2について、実施例1〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕と同様の操作を行い、再生触媒(R2)を得た。この再生触媒(R2)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.24及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.24/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R2)の活性試験の結果を表1に示す。
【0077】
実施例3
〔工程(1)、(2):水性スラリーA2及びB1の調製〕
実施例1と同様の操作を行い、水性スラリーA2及びB1を得た。
【0078】
〔工程(3):水性スラリーC3の調製〕
上記水性スラリーA2を475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物0.80gを、イオン交換水1.83gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC3を得た。水性スラリーC3中の固形分の粒径は1.4μmであった。また、水性スラリーC3に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.16及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.16/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0079】
〔水性スラリーC3の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC3について、実施例1〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕と同様の操作を行い、再生触媒(R3)を得た。この再生触媒(R3)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.16及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.16/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R3)の活性試験の結果を表1に示す。
【0080】
実施例4
〔工程(1)、(2):水性スラリーA1及びB1の調製〕
実施例1と同様の操作を行い、水性スラリーA1及びB1を得た。
【0081】
〔工程(3):水性スラリーC4の調製〕
上記水性スラリーA1の全量にイオン交換水を加えて希釈し、950gのスラリー(固形分濃度:29重量%)を得た。得られたスラリーを475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物1.59gを、イオン交換水3.67gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC4を得た。水性スラリーC4中の固形分の粒径は11.4μmであった。また、水性スラリーC4に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0082】
〔水性スラリーC4の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC4について、実施例1〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕と同様の操作を行い、再生触媒(R4)を得た。この再生触媒(R4)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R4)の活性試験の結果を表1に示す。
【0083】
実施例5
〔工程(1)、(2):水性スラリーA2及びB1の調製〕
実施例1と同様の操作を行い、水性スラリーA2及びB1を得た。
【0084】
〔工程(3):水性スラリーC5の調製〕
上記水性スラリーA2を475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物1.59gを、イオン交換水3.67gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC5を得た。水性スラリーC5中の固形分の粒径は1.3μmであった。また、水性スラリーC5に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0085】
〔水性スラリーC5の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC5について、実施例1〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕と同様の操作を行い、再生触媒(R5)を得た。この再生触媒(R5)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.19及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.19/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R5)の活性試験の結果を表1に示す。
【0086】
比較例1
〔工程(1)、(2):水性スラリーA2及びB1の調製〕
実施例1と同様の操作を行い、水性スラリーA2及びB1を得た。
【0087】
〔工程(3):水性スラリーC6の調製〕
上記水性スラリーA2を475g分取し、上記水性スラリーB1の全量を混合後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、次いで、三酸化アンチモン4.80g及び硝酸銅3水和物4.77gを、イオン交換水11.0gに懸濁させた状態で添加し、その後、密閉容器中で120℃にて5時間攪拌し、水性スラリーC6を得た。水性スラリーC6中の固形分の粒径は1.5μmであった。また、水性スラリーC6に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.29及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.29/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。
【0088】
〔水性スラリーC6の乾燥及び焼成〕
得られた水性スラリーC6について、実施例1〔水性スラリーC1の乾燥及び焼成〕と同様の操作を行い、再生触媒(R6)を得た。この再生触媒(R6)に含まれる金属元素の原子比は、リン、モリブデン、バナジウム、アンチモン、銅及びセシウムがそれぞれ1.5、12、0.50、0.5、0.29及び1.4であり、モリブデンに対する銅の原子比は0.29/12、モリブデンに対するセシウムの原子比は1.4/12であった。この再生触媒(R6)の活性試験の結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
表1に示すように、実施例1〜5で得られた触媒は、比較例1で得られた触媒と比較して、強制劣化後も高い収率でメタクリル酸が得られており、長期間にわたり良好な収率でメタクリル酸を製造し得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンと、モリブデンと、銅とを含むヘテロポリ酸化合物からなるメタクリル酸製造用触媒の再生方法であって、下記工程(1)〜(3)を含み、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12であることを特徴とするメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
工程(1):メタクリル酸の製造に使用された使用済触媒、硝酸根、アンモニウム根及び水を混合し、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.10/12〜0.50/12となるように調整した水性スラリーAを得る工程
工程(2):前記ヘテロポリ酸化合物の構成元素を含む化合物のうち少なくともモリブデンを含む化合物と、水とを混合し、モリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0/12〜0.25/12となるように調整した水性スラリーBを得る工程
工程(3):工程(1)で得られた水性スラリーAと工程(2)で得られた水性スラリーBとを混合して得られた水性スラリーCを、乾燥、焼成する工程
【請求項2】
前記ヘテロポリ酸化合物が、さらに、カリウム、ルビジウム、セシウム及びタリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Xを含み、再生された触媒を構成するヘテロポリ酸化合物におけるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0.5/12〜2/12であり、工程(1)における水性スラリーAに含まれるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が2/12〜4/12であり、かつ工程(2)における水性スラリーBに含まれるモリブデンに対する元素Xの原子比(X/Mo)が0/12〜0.5/12である請求項1に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項3】
工程(3)における水性スラリーCが、工程(1)で得られた水性スラリーAと、工程(2)で得られた水性スラリーBと、銅を含む化合物とを混合して得られたものである請求項1又は2に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項4】
前記水性スラリーCに含まれるモリブデンに対する銅の原子比(Cu/Mo)が0.05/12〜0.25/12となる範囲で、前記水性スラリーAと、前記水性スラリーBと、前記銅を含む化合物とを混合する請求項3に記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項5】
工程(1)で得られる水性スラリーA及び工程(3)における水性スラリーCから選ばれる少なくとも一方が湿式粉砕処理されたものである請求項1〜4のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項6】
工程(3)における水性スラリーCが100℃以上で熱処理されたものである請求項1〜5のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項7】
工程(1)で得られる水性スラリーAは、硝酸根1モルに対し0.1〜3.0モルのアンモニウム根を含む請求項1〜6のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項8】
工程(1)で得られる水性スラリーAの液相のpHが8以下である請求項1〜7のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項9】
前記ヘテロポリ酸化合物が、さらに、バナジウムと、ヒ素、アンチモン、ホウ素、銀、ビスマス、鉄、コバルト、ランタン及びセリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含む請求項1〜8のいずれかに記載のメタクリル酸製造用触媒の再生方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の再生方法によりメタクリル酸製造用触媒を再生し、この再生された触媒の存在下に、メタクロレイン、イソブチルアルデヒド、イソブタン及びイソ酪酸からなる群より選ばれる化合物を気相接触酸化反応に付すことを特徴とするメタクリル酸の製造方法。

【公開番号】特開2013−734(P2013−734A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138216(P2011−138216)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】