説明

メタセシス反応用(予備)触媒としてのルテニウム錯体

本発明は、以下の式(I)(式中、L1、X、X’、R1、R2、R3及びnは本願明細書において定義したものである)のルテニウム錯体の新規(予備)触媒に関する。式1の新規ルテニウム錯体は、メタセシス反応に都合の良い(予備)触媒であり、及び即ち、閉環メタセシス、クロスメタセシス又はエン−インメタセシス反応に適用することができる。本発明の他の態様は、以下の式(II)の新規中間体である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
技術分野
本発明は、以下の式1:
【化1】

のルテニウムカルベン錯体、それらの合成及び異なるタイプのメタセシス反応用触媒としてのそれらの使用(practical use)に関する。
【0002】
背景情報
有機合成におけるオレフィンメタセシスの適用が、ここ数年で顕著に発展してきている。(予備(pre))触媒として作用する数種のルテニウムカルベン錯体が開発されてきており、それは、種々のメタセシス反応において高い活性を有し、及び多くの官能基に対して広範な許容性を有する。この特性の組み合わせは、有機合成におけるそのような(予備)触媒の利便性についての基本である。
更に、実際の適用について、特に工業的スケールにおいては、これらのルテニウム錯体が、熱負荷条件下において長期的に安定であること、及びそれらが、保護ガス雰囲気なしに、貯蔵、精製及び適用可能であることが非常に望ましい。
上記特性を有するルテニウム錯体が文献に記載されている。J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 8168-8179 or Tetrahedron Lett. 2000, 41, 9973-9976を参照されたい。しかしながら、よりよい安定性が、より低い触媒活性と関連していることが見い出された。そのような制限は、例えば、式Aの(予備)触媒について見られた(Angew. Chemie Int. Ed. 2002, 114, 832参照)。











【0003】
【化2】

【0004】
次いで、式B及びCの(予備)触媒が記載され、それらは、式Aの(予備)触媒に比し、より高い触媒活性を示す。触媒A、B及びCは、金属原子をキレート化するイソプロピル基を含む。系B及びCの活性がより高い理由は、イソプロポキシ基に対してオルト位にあるフェニル又は(置換)ナフチル基の存在により生じる立体障害にある(Angew. Chemie Int. Ed. 2002, 114, 832-834; Angew. Chemie Int. Ed. 2002, 114, 2509-2511)。
驚くべきことに、芳香族系ニトロ基を含む、一般式1のルテニウム錯体(予備)触媒が、知られている高い活性のルテニウム錯体に比し、更に高い触媒活性を示すこと、及びこれらの錯体が、同時に、熱的に及び空気に安定性であることを見い出した。
【0005】
発明の概要
本発明は、以下の式1:
【化3】

(式中、L1は、中性リガンドであり;
X及びX’は、アニオン性リガンドであり;
1は、−C1-5−アルキル又は−C5-6−シクロアルキルであり;
2は、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;
3は、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はアリールであり、ここで、アリールは、−C1-6−アルキル又は−C1-6−アルコキシにより置換されていてもよく;
nは、0、1、2又は3である)の新規ルテニウム錯体、それらの合成、全ての中間体の合成及び式1の錯体の触媒としての又は予備触媒としての使用に関する。
【0006】
本発明の式1の化合物は、開環メタセシス重合(ROMP)、閉環メタセシス(RCM)、不飽和ポリマーの解重合、テレケリック(telechelic)ポリマーの合成、エン−インメタセシス及びオレフィン合成を含むが、これらに限定されないオレフィンメタセシス反応を触媒するために使用することができる。
本発明の別の実施態様は、以下の式2:
【化4】

【0007】
(式中、R1、R2、R3及びnは、上記に定義したものであり、及び
4は、−C1-20−アルキルであり;
mは、0、1又は2であり;
部分式:
【化5】

【0008】
は、アルキレン基を示し、その中において、メチレン基の1つ又は双方の水素原子が、基R4により置換されていてもよい)の新規2−アルコキシ−5−ニトロスチレン誘導体に関し、それは、錯体1を製造するための中間体である。従って、上記部分式は、以下のアルキレン基:
【化6】

を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、式2の新規2−アルコキシ−5−ニトロスチレン誘導体の製造であり、その中においては、
−置換2−ヒドロキシ−5−ニトロベンズアルデヒド3を、R1Zによりアルキル化し、その中において、R1は、式1で与えられた意味を有し、及びZは、ハロゲン原子、C1-6−アルキル−S−(O)−O−、C1-6−フルオロアルキル−S(O)−O−、アリール−S(O)−O−又はアリール−S(O)2−O−より選ばれる離脱基である。
【化7】

【0010】
−式4の置換2−アルコキシ−5−ニトロベンズアルデヒドを、その後、式:
【化8】

(式中、R4及びmは、式2で与えられた意味を有し、及びWは、オレフィン化反応に適する離脱基である)のオレフィン試薬で処理して、式2を得る。
【化9】

【0011】
−化合物2を、その後、式5のルテニウム錯体と反応させて、式1のルテニウム錯体を得ることができ、その中において、L1及びL2は、中性リガンドであり;R5は、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;R6は、アリール、ビニル又はアレニル(allenyl)であり、及びX及びX’は、アニオン性リガンドである。
【化10】

【0012】
場合により、得られる式1の化合物は、その後、異なる中性リガンドL1と反応させて、式1の化合物中に存在する中性リガンドL1を置換してもよく、それにより、式1の異なる化合物が得られる。
本願明細書に記載する化合物は、不斉中心を有していてもよい。非対照的に置換された原子を含む本発明の化合物は、光学的に活性な又はラセミ形態で単離することができる。当該技術分野においては、光学的活性体を製造する方法、例えば、ラセミ体の分解による方法又は光学的に活性な出発物質からの合成による方法がよく知られている。オレフィンの幾何異性体の多くが、また、本願明細書において記載される化合物中に存在していてもよく、及びそのような安定性異性体の全てが本発明において意図される。本発明の化合物のシス及びトランス幾何異性体を記載し、及び異性体混合物として又は別の異性体型として単離することができる。全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ体及び全ての幾何異性体が意図され、これは、特定の立体化学又は異性体が具体的に示されない限りにおいてである。
【0013】
発明の詳細な記載
本願明細書において具体的に定義されていない用語は、その開示内容及び文脈から当該技術分野における当業者によりそれらに与えられるであろう意味を有するべきである。しかしながら、特に反対の記載のない限り、本願明細書において記載されるように、以下の用語は、示される意味を有し、及び以下の約束事が守られる。
以下に定義する基においては、炭素原子数は、多くの場合、基の前に特定されており、例えば、−C1-6アルキルは、炭素原子数1〜6のアルキル基を意味する。以下において他に特定されていない限り、用語コントロールの従来の定義及び従来の安定原子価は、全ての式及び基において推定及び達成される。
本願明細書において使用する用語“置換された”は、指定された原子における1又はそれより多くの水素が、指定の原子の通常の原子価を越えない限りにおいて、意図される基から選択されるもので置き換えられることを意味し、及び、置換により安定性化合物が得られる。
本願明細書において使用する用語“アリール”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、芳香族系の単一炭素環系又は芳香族系の多炭素環系のいずれかを意味する。例えば、アリールとしては、フェニル又はナフチル環系が挙げられる。
【0014】
本願明細書において使用する用語“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素より選ばれるハロゲン置換基を意味する。
本願明細書において使用する用語“−C1-20−アルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、炭素原子数1〜20の非環式の直鎖又は分枝鎖アルキル置換基を意味する。本願明細書において使用する用語“−C1-5−アルキル”又は“−C1-6−アルキル”は、上記用語と同一の意味を有するが、但し、炭素原子数がより少なく、正確には、最大炭素原子数が5又は6である。用語−C1-20−アルキル、−C1-5−アルキル又は−C1-6−アルキルは、即ち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、1−メチルエチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル又は1,1−ジメチルエチルを含み得る。
本願明細書において使用する用語“−C2-20−アルケニル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、炭素数が2〜20であり及び少なくとも1つの二重結合を含む非環式の直鎖又は分枝鎖アルケニル置換基を意味する。本願明細書において使用する用語“−C2-6−アルケニル”は、上記用語と同一の意味を有するが、但し、炭素原子数がより少なく、正確には、最大炭素原子数が6である。用語−C1-20−アルケニル又は−C1-6−アルケニルは、即ち、ビニル又はアレニルを含み得る。
【0015】
本願明細書において使用する用語“−C2-20−アルキニル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、炭素数が2〜20であり及び少なくとも1つの三重結合を含む非環式の直鎖又は分枝鎖アルキニル置換基を意味する。本願明細書において使用する用語“−C2-6−アルキニル”は、上記用語と同一の意味を有するが、但し、炭素原子数がより少なく、正確には、最大炭素原子数が6である。
本願明細書において使用する用語“−C5-6−シクロアルキル”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、炭素数が5又は6のシクロアルキル置換基を意味し、及び、即ち、シクロペンチル又はシクロヘキシルを含む。
本願明細書において使用する用語“−C1-6−アルコキシ”は、単独で又は別の置換基との組み合わせでのいずれかで、置換基−C1-6−アルキル−O−を意味し、アルキルは、上記で定義されたものであり、炭素原子数が6までである。アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチル−エトキシ、ブトキシ又は1,1−ジメチルエトキシを含む。
【0016】
更なる実施態様
好ましい化合物は、以下の式1aのものである:
【化11】

(式中、L1、X、X’、R1、R2、R3及びnは、上記に定義したとおりのものである)。
【0017】
より好ましい化合物は、一般式1又は1aのものであり、式中、
1が、P(R113であり、R11が、各々、独立して、−C1-6−アルキル、−C3-8−シクロアルキル又はアリールであり;又は
1が、以下の式6a、6b、6c又は6dのリガンドである:
【化12】

(式中、R7及びR8が、各々、独立して、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;特には、
9及びR10が、各々、独立して、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;又は
9及びR10が、それらが結合する炭素原子と一緒に組み合せられて、3〜8員の炭素環を形成し;
Y及びY’が、ハロゲンである)。
【0018】
特に好ましい化合物では、式中、R7及びR8が、各々、独立して、H、−C1-6−アルキル、−C2-6−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;
9及びR10が、各々、独立して、H、−C1-6−アルキル、−C2-6−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;又は
9及びR10が、それらが結合する炭素原子と一緒に組み合せられて、5〜7員の炭素環を形成する。
【0019】
最も好ましいものは、一般式1又は1aの化合物であり、式中、
1が、イソプロピル基であり;及び/又は
2が、H、−C1-6−アルキル又はアリールであり、特には、R2が、ハロゲン原子の意味を有し;及び/又は
X及びX’が、ハロゲンであり、特には、塩素であり;及び/又は
1が、P(シクロヘキシル)3であり;又は
1が、式6a、6b、6c又は6dの基であり;及び/又は
7及びR8が、2−メチルベンゼン、2,6−ジメチルベンゼン又は2,4,6−トリメチルベンゼンであり;及び/又は
nが0である。
【0020】
更なる態様は、式1又は1aの化合物であり、式中、
1が、イソプロピル基であり;
2が、Hであり;
nが、0であり;
X及びX’が、各々、塩素であり;及び
1が、式6a:
【化13】

(式中、R7及びR8が、各々、2,4,6−トリメチルフェニルである)のリガンドであり;及び
9及びR10が、各々、Hである。
【0021】
好ましいものは、以下の式2aの化合物である:
【化14】

(式中、R1、R2、R3、R4、m及びnは、上記で定義したものである)。
【0022】
より好ましい化合物は、一般式2又は2aのものであり、式中、
1が、イソプロピル基であり;及び/又は
2が、H、−C1-6−アルキル又はアリールであり、特には、R2が、ハロゲン原子の意味を有し;及び/又は
4が、−C1-6−アルキル、特には、メチル又はエチルであり;及び/又は
nが、0であり;及び/又は
mが、0である。
更なる実施態様は、式2又は2aの化合物であり、式中、
1が、イソプロピル基であり;
2が、Hであり;
mが、0であり;及び
nが、0である。
【0023】
更に好ましくは、式1又は1aの錯体の製造方法であって、一般式2又は2aの化合物を、以下の式5のルテニウム錯体と、場合により、異なる中性リガンドL1の存在下で、反応させる方法である:
【化15】

(式中、L1及びL2は、中性リガンドであり;
5は、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;及び
6は、アリール、ビニル又はアレニルであり;及び
X及びX’は、アニオン性リガンドである)。
【0024】
より好ましくは、上記式1のルテニウム錯体の合成は、以下の条件で行う:
銅塩、特には、CuClの存在下;及び/又は
特には、塩化メチレン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン又はそれらの混合物より選ばれるハロゲン化又は芳香族系溶剤中;及び/又は
0〜100℃の温度で、特には、10〜80℃の温度で、より具体的には、20〜60℃の温度で;及び/又は
1〜24時間、特には、1〜10時間、より具体的には、1〜4時間。
最も好ましくは、上記ルテニウム錯体の合成においては、反応を、1つの容器内において、式6a、6b、6c又は6dのリガンドを、式5(式中、L1及びL2の両リガンドが、式P(R113のホスフィンであり、ここで、R11が、上記意味を有する)の固形錯体と混合すること、及びその後、式2又は2aのリガンドを添加することにより行う。
【0025】
上記ルテニウム錯体の合成についてのある好ましい変形体は、式7a、7b、7c又は7d:
【化16】

(式中、アニオンは、ホルメート(formiate)、アセテート、トリフルオロ−アセテート又は他の酸基、ハロゲン又は[BF4-より選ばれる)の安定性塩から、現場で、一般式6a、6b、6c又は6dのリガンドを生成するものである。従って、その塩は、好ましくは、溶剤、例えば脂肪族又は芳香族炭化水素、好ましくはヘキサン中のサスペンション形態で、アルカリ金属の水素化物、アルカリ土類金属の水素化物又はアルコラート、特には、カリウムのtert−ペンタノレート(pentanolate)、カリウムのtert−アミレート又はカリウムのtert−ブタノレートより選ばれる強塩基と反応させる。その後、反応を継続するが、これは、式5(式中、L1及びL2の双方が、式P(R113のホスフィンである)の固形錯体を添加し、次いで、式2又は2aのリガンドを添加することにより行われ、一般式1又は1aの化合物を生じる。
【0026】
更に好ましくは、中間体の製造方法であり、それは、a)一般式3の化合物を、式R1Z(9)の試薬を用いてアルキル化して、式4の中間体を形成する工程、及びb)4を、式10のオレフィン化試薬と反応させて、一般式2の化合物を得る工程を含む:
【化17】

(式中、式2a、3、4、9及び10のR1、R2、R3、R4、m及びnは、上記で定義したものであり、及び
Wは、オレフィン化反応に適する離脱基であり;及び
Zは、ハロゲン、−C1-6−アルキル−S(O)−O−、−C1-6−フルオロアルキル−S(O)−O−、アリール−S(O)−O−又はアリール−S(O)2−O−である)。
【0027】
より好ましくは、その方法においては、上記工程a)を以下の条件で行う:
非プロトン性溶剤中、特には、DMF、DMSO、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、グリコールエーテル、メタノール、エタノール又はそれらの混合物より選ばれた上記溶剤中、より具体的には、上記溶剤はDMFである;又は
相間移動触媒を用いてフィットされた二相性溶剤系中;又は
触媒の存在下、特には、上記触媒は、Cs2CO2、CsF、第4級アンモニウム塩、クラウン・エーテル又はクリプタンドより選ばれ、より具体的にはCsCO3の存在下;又は
アルカリ金属の炭酸塩又はアルカリ性水酸化物の存在下、特には、Na2CO3、K2CO3、Li2CO3、Cs2CO3、NaOH、KOH、LiOH、CsOHの存在下;又は
1〜24時間、特には、8〜24時間、より具体的には、16〜24時間;
0〜150℃の温度で、特には、10〜100℃、より具体的には、20〜80℃;又は。
【0028】
化合物4から出発して、化合物2が、テッブ(Tebbe)、ウィッティグ(Wittig)、ウィッティグ−ホーナー(Wittig-Horner)、ウィッティグ−ホーナー−エモンズ(Wittig-Horner-Emmons)又はピーターソン(Peterson)条件下に利用可能であるが、好ましい方法においては、上記工程b)を以下の条件で行う:
アルコール、グリコールエーテル又は環状エーテルより選ばれる溶剤中、好ましくはTHF中;又は
Wが、テッブチタン試薬を用いるテッブによる又はウィッティングのホスホニウムイリド試薬を用いるウィッティングによるオレフィン化反応に適する離脱基、より具体的にはPPh3又はTiCp2より選ばれる離脱基であり;ここで、Phは、置換又は未置換フェニルであり、及びCpは、置換又は未置換シクロペンタジエニル−アニオンであり、それは、その酸化形態における反応後にみられる。
本発明の別の好ましい実施態様は、全てのタイプのメタセシス反応についての方法であり、オレフィンを、一般式1又は1aの触媒と接触させることを含み;特には、そのメタセシス反応は、閉環又はクロスメタセシス反応である。
以下の実施例は、本発明の種々の実施態様を説明するためのものであり、如何なる場合にも本発明を制限すると理解されるべきではない。
【0029】
実施例1
【化18】

【0030】
乾燥DMF(25ml)中のパウダー化無水炭酸カリウム(1.1g、8mmol)、触媒量の炭酸セシウム(521mg、40mol%)及び3.I(668mg、4mmol)の攪拌サスペンションに対して、ニート2−ヨードプロパン(0.8ml、8mmol)を添加した。反応混合物を、室温(RT)で24時間攪拌し、及び次いで、溶剤を減圧下に蒸発させた。残留物を水(50ml)へ注入し、及びtBuOMe(4×25ml)で抽出した。組み合せられた有機層を塩水で洗浄し、Mg2SO4で乾燥し、及び蒸発させて乾燥物とした。粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2)を用いて精製して、2−イソプロポキシ−5−ニトロベンゼンアルデヒド4.Iを、低融点固体として得た(850mg、86%収率)。
IR (KBr): ν [cm-1] = 3115, 2991, 2942, 1679, 1609, 1526, 1348, 1284, 1111, 950, 832, 748, 667;
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm]= 1.48 (d, 6H, J = 6.1 Hz), 4.85 (q, 1H, J = 6.1 Hz), 7.10 (d, 1H, J = 9.2 Hz), 8.39 (dd, 1H, J = 2.9, 9.2 Hz), 8.69 (d, 1H, J = 2.9 Hz), 10.41 (s, 1H);
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 21.8, 72.6, 113.6, 124.7, 125.12, 130.4, 141.1, 164.3, 187.8;
MS (El): m/z 209 (10, [M]+.), 167 (100), 137 (18), 120 (11), 93 (7), 75 (3), 65 (10), 53 (4);
HRMS (El) [M]+ (C10H11O4N)について計算: 209.0688; 実測 209.0686.
【0031】
乾燥THF(20ml)中のPh3PCH3Br(932mg、2.53mmol)の攪拌サスペンションに対して、ゆっくりと、−78℃で、首尾良く、ヘキサン中のBuLi溶液(1.8ml、2.7mmol、1.5M)及び乾燥THF中の4.I溶液(2ml)を添加した。この後、反応混合物をRTまで温め、及び更に10時間攪拌した。この後、NH4Cl(2ml)及びtBuOMe(100ml)の飽和溶液を添加した。不溶性材料をろ過除去し、得られた溶液を減圧下に蒸発させた。粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2を使用)により精製して、2−イソプロポキシ−5−ニトロスチレン2.Iを、黄白色オイルとして得た(236mg、63%収率)。
IR (フィルム): ν [cm-1] = 3088, 2982, 2967, 1627, 1607, 1583, 1516, 1341, 1271, 1107, 950, 742 cm-1; 1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 1.41 (d, 6H, J = 6.0 Hz), 4.71 (q, 1H, J = 6.0 Hz), 5.40 (dd, 1H, J = 0.5, 11.2 Hz), 5.87 (dd, 1H, J = 0.5, 17.7 Hz), 6.91 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 7.00 (dd, 1H, J = 11.2, 17.7 Hz), 8.12 (dd, 1H, J = 2.8, 9.1 Hz), 8.36 (d, 1H, J = 2.8 Hz); 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 21.9, 71.5, 112.2, 116.8, 122.4, 124.5, 128.1, 130.1, 141.0, 159.9; MS (El): m/z 207 (4, [M]+.), 165 (59), 148 (100), 135 (4), 118 (96), 104 (2), 90 (15), 65 (8), 63 (7), 51 (4); MS (ESI): m/z 230 ([M+Na]+); HRMS (ESI): m/z [M+Na]+ (C11H13O3NNa)について計算: 230.0788; 実測 230.0776.

【0032】
実施例2
【化19】

【0033】
アルゴン雰囲気下で、式5.II(式中、L2は、式6a.II:
【化20】

のNHCリガンドを表す)のカルベン錯体(153mg、0.18mmol)及び無水CuCl(18mg、0.18mmol)を、シュレンクチューブに入れた。次いで、乾燥脱酸素CH2Cl2(10ml)を添加した後、CH2Cl2(4ml)中の化合物2.I(38mg、0.18mmol)の溶液を添加した。得られたサスペンションを30℃で1時間攪拌し、次いで、それを、減圧下に濃縮し、及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOH5:2)により精製した。溶剤を除去し及び少量の乾燥n−ペンタンで洗浄した後、錯体1.II(式中、Mesは、メシチル基を意味する)を、緑色の微結晶性固体として得た(100mg、83%収率)。Rf=0.30(ヘキサン/EtOAc8:2);
1H-NMR (500 MHz, CD2Cl2): δ [ppm]= 16.42 (s, 1H), 8.46 (dd, 1H, J = 9.1, 2.5 Hz), 7.80 (d, 1H, J = 2.5 Hz), 7.10 (s, 4H), 6.94 (d, 1H, J = 9.1 Hz), 5.01 (sept, 1H, J = 6.1 Hz), 4.22 (s, 4H), 2.47 (2s, 18H), 1.30 (d, 6H, J = 6.1 Hz); 13C-NMR (125 MHz, CD2Cl2): δ [ppm]= 289.1, 208.2, 156.8, 150.3, 145.0, 143.5, 139.6, 139.3, 129.8, 124.5, 117.2, 113.3, 78.2, 52.0, 21.3, 21.2, 19.4; IR (KBr): ν [cm-1] = 2924, 2850, 1606, 1521, 1480, 1262, 1093, 918, 745; MS (ESI): m/z 636 [M-CI]+; HRMS(EI): m/z C31H37N3O3Ruについて計算: [M+.] 671.1255, 実測 671.1229; 元素分析, 計算: (%) C31H37N3O3Ruについて (671.63): C 55.44, H 5.55, N 6.26; 実測: C 55.35; H 5.70, N 6.09.





【0034】
実施例3
【化21】

【0035】
アルゴン雰囲気下で、式5.IIIのカルベン錯体(164.6mg、0.20mmol)をシュレンクチューブに入れた。次いで、乾燥脱酸素CH2Cl2(15ml)を添加した後、CH2Cl2(5ml)中の化合物2.I(50mg、0.24mmol)の溶液を添加した。得られたサスペンションを40℃で1時間攪拌し、次いで、それを減圧下で濃縮し、及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc5:2)により精製した。溶剤を除去し及び少量の乾燥n−ペンタンで洗浄した後、錯体1.IIIを、褐色の微結晶性固体として得た(95mg、70%収率)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 1.26 2.35 (m, 39 H), 5.33 5.40 (m 1H), 7.18 (d, J = 5 Hz, 1H), 8.54 (d, J = 5 Hz, 1H), 8.60 (s, 1H), 17.38 (d, J = 5.0 Hz, 1H); 13CNMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 22.1, 26.2, 27.7 (d, J = 24 Hz), 30.1, 35.8 (d, J = 10 Hz), 78.2, 113.2, 117.6, 124.2, 143.3, 157.0, 273.2; IR (CH2Cl2, フィルム): ν [cm-1] = 2930 (s), 2852 (s), 1604 (m), 1575 (m), 1521 (s), 1476 (m), 1447 (m), 1379 (w), 1342 (s), 1275 (s), 1241 (m), 1205 (w), 1181 (w), 1136 (m), 1095 (s), 1049 (w), 1005 (w), 951 (m), 918 (s), 851 (m), 830 (m), 789 (m), 745 (s), 656 (m), 606 (m), 518 (m); HRMS (EI): m/z C28H44O3N(35)Cl2P(102)Ruについて計算 (M+): 645.14794; 実測 645.14706.
【0036】
実施例4
塩7.IV(152mg、0.388mmol)を、アルゴン下に、シュレンクチューブ内においてn−ヘキサン(7ml)中で懸濁した。
【化22】

【0037】
次いで、カリウムのtert−アミレートCH3CH2C(CH32-+(0.22ml、0.372mmol、1.7M溶液のトルエン)を添加し、及び得られた黄白色混濁溶液を室温で30分間攪拌した。
【化23】

【0038】
次いで、式5.IIIの固形ルテニウム錯体(255mg、0.310mmol)を添加し、及び得られたサスペンションを30分間還流した。得られた褐色桃色サスペンションに対して、CH2Cl2(7ml)中の化合物2.I(83.5mg、0.403mmol)の溶液及び固形CuCl(33.8mg、0.341mmol)を室温で添加した。
【化24】

【0039】
得られた混合物を40℃で1時間加熱した。得られた混合物を減圧下で濃縮し、及びシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc5:2)により精製した。溶剤を除去し及び少量の乾燥n−ペンタンで洗浄した後、錯体1.IIを、緑色微結晶性固体として得た(149mg、72%収率)。分析データは、正確に得られたものと一致する(実施例2参照)。
実施例5
【化25】

【0040】
実施例2と同様にして錯体1.Vを製造することにより、緑色の微結晶性固体を得た(40%収率)。
IR (KBr): ν [cm-1] = 2924 (s), 2853 (s), 1608 (m), 1523 (m), 1483 (s), 1343 (s), 1267, 1010 (w), 905 (s), 826 (m), 745 (m). MS(El): m/z 643 (3), 322 (4), 304 (100), 289 (11), 246 (5), 181 (12), 159 (12), 158 (12), 105 (8), 77 (15), 43 (58). MS (LSIMS) m/z 644 (M+H+).
メタセシス反応用触媒としての一般式1の化合物の使用、二重結合C=C及び/又は他の官能基を含む化合物の合成により、驚くべきことに、上首尾の結果が得られた。従って、以下に記載する式1の新規(予備)触媒は、他の匹敵する既知の高活性のルテニウム触媒より良好であると思われ;特にはそれらの活性についてである。
それらの結果として、より少量の触媒、より低い反応温度及びより短い反応時間でも、通常使用される従来の触媒と比較してより良い収率が得られる。以下の実施例6〜10は、式1の触媒の優位性を示す。
【0041】
実施例6
式1.II(実施例2参照)の化合物により触媒される閉環メタセシス反応
【化26】

【0042】
CH2Cl2(35ml)中のジエンS1(210mg、0.75mmol)の溶液に対して、CH2Cl2(2ml)中の触媒1.II(5mg、1mol%)の溶液を0℃で添加した。0℃で更に1時間攪拌した後、溶剤を減圧下に除去し、及び残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2)を用いて精製して、P1を無色固体として得た(186mg、99%収率)。
IR (KBr): ν [cm-1] = 3030, 2942, 2899, 2855, 1657, 1596, 1450, 1332, 1286, 1162, 910, 816, 712; 1H-NMR (200MHz, CDCl3): δ [ppm] = 2.28 (m, 4H), 2.39 (s, 3H), 3.25 (m, 4H), 5.72 (m, 2H), 7.25 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 7.64 (d, 2H, J = 8.2 Hz); 13C-NMR (50MHz, CDCl3): δ [ppm] = 21.5, 29.948.2, 126.9, 129.5, 130.1, 136.2, 142.9; MS (El): m/z 251 (5, [M]+) 223 (2), 184 (6), 155 (4), 105 (2), 91 (19), 96 (16), 77 (1), 65 (13), 42 (100); HRMS (El) m/z [M]+ (C13H17O2NS)について計算: 251.0980; 実測 2251.0979.
【0043】
実施例7
式1.II(実施例2参照)の化合物により触媒されるクロスメタセシス反応
【化27】

【0044】
乾燥CH2Cl2(15ml)中のインドールS2(77.8mg、0.36mol)及びメチルアクリレートS2b(92.9mg、1.1mol)の攪拌溶液に対して、CH2Cl2(5ml)中の触媒1.II(12.1mg、5mol%)の溶液を添加した。得られた混合物を室温で2時間攪拌した。溶剤を減圧下に除去し、残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2)を用いて精製して、(E)−P2を、黄色結晶性固体として得た(186mg、99%収率)。
IR (KBr): ν [cm-1] = 3364, 2953, 2904, 1707, 1655, 1504, 1324, 1215, 750 cm-1; 1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 2.42 (s, 3H), 3.61 (dd, 2H, J = 1.7, 6.0 Hz), 3.70 (s, 3H), 5.74 (dt, 1H, J = 1.7, 15.7 Hz), 7.09 (dt, 1H, J = 6.0, 15.7 Hz), 7.42 (d, 1H, J = 8.8 Hz), 7.98 (dd, 1H, J = 2.0, 8.8 Hz), 8.24 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 8.51 (br. s, 1H), 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ [ppm] = 12.0, 26.7, 51.5, 107.2, 108.8, 115.4, 117.5, 121.4, 133.2, 133.6, 138.9, 142.6, 146.7, 167.0; MS (El): m/z 274 (100, [M]+.), 259 (75), 242 (63), 215 (38), 199 (11), 189 (15), 175 (15), 168 (53), 154 (18), 143 (31), 127 (12), 115 (12), 84 (17); HRMS (El): m/z [M]+. (C14H14O4N2)について計算: 247.0954; 実測 274.0959. 元素分析, 計算 (C14H14O4N2): C, 61.31; H, 5.14; N, 10.21; 実測: C, 61.05; H, 5.22; N, 10.09.
【0045】
実施例8
触媒1.IIを使用する場合の基質S3(2−アリル−2−(2−メチルアリル)ジエチルマロネート)の環化速度の試験
【化28】

【0046】
シュレンクチューブ中に、CH2Cl2(20ml)中のジエンS3(100mg、0.4mmol)の溶液を25℃で入れ、CH2Cl2(1ml)中の触媒1.II(2.6mg、0.004mmol、1mol%)の溶液を添加した。得られる混合物を、更に18時間、同一温度で攪拌した。変換率をGCで計算した。(反応混合物のアリコートを、エチル−ビニルエーテルの1M溶液の計算量の添加により即時急冷し、及びGC技術により分析した。得られた結果を、図1において、曲線10(◆)として示した。
基質S3(2−アリル−2−(2−メチルアリル)ジエチルマロネート)の環化速度の試験を、触媒Aを用いて繰り返した。実験は、上記と同一条件下で行ったが、但し、触媒Aの量を2.5mol%まで上昇させた。得られた結果を、図1において、曲線2(●)として示した。
【0047】
実施例9
クロスメタセシス反応における触媒1.II及びCの効率の比較
【化29】

【0048】
条件
a)触媒1.II(1mol%)、室温で30分、収率95%
b)触媒C(2.5mol%)、室温で20分、収率91%
CH2Cl2(10ml)中のオレフィンS4(107mg、0.5mmol)及びメチルアクリレートS2b(86mg、1mmol)の攪拌溶液に対して、CH2Cl2(2ml)中の触媒1.II(3.4mg、1mol%)の溶液を添加した。得られた混合物を、その後、室温で30分間乾燥した。溶剤を減圧下に除去し、及び残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2)を用いて精製した。生成物P4を、95:5の比での(E)及び(Z)−異性体の混合物として、無色オイルとして得た(130mg、95%収率)。
Angew. Chemie 2002, 114, 2509-2511におけるデータに従って、式Cの触媒は、同様の反応において、91%収率で生成物P4を生じた。
【0049】
実施例10
クロスメタセシス反応における触媒1.II及びAの効率の比較
【化30】

【0050】
条件
a)触媒1.II(5mol%)、室温で30分間、収率87%
b)触媒A(8mol%)、室温で6時間、収率79%
CH2Cl2(5ml)中のジエチルアリルマロネートS5(100mg、0.5mmol)及びS5a(53mg、1mmol)の攪拌溶液に対して、CH2Cl2(5ml)中の触媒1.II(16.8mg、5mol%)の溶液を添加した。得られた溶液を室温で30分間攪拌した。溶剤を減圧下に除去し、及び残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc8:2)を用いて精製した。生成物P5を、1:2の比での(E)及び(Z)−異性体の混合物として、無色オイルとして得た(98mg、87%収率)。
Synlett 2001, 430-431に従って、触媒Aは、類似の反応で、生成物P5を収率79%で生じた。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のルテニウム触媒を用いた場合の2−アリル−2−(2−メチルアリル)ジエチルマロネートの環化速度と、既知のルテニウム触媒を用いた場合のものとを比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式1の化合物:
【化1】

(式中、L1は、中性リガンドであり;
X/X’は、アニオン性リガンドであり;
1は、−C1-5−アルキル又は−C5-6−シクロアルキルであり;
2は、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;
3は、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はアリールであり、ここで、アリールは、場合により、−C1-6−アルキル又は−C1-6−アルコキシにより置換されていてもよく;
nは、0、1、2又は3である)。
【請求項2】
以下の式1aの、請求項1に記載の化合物:
【化2】

(式中、L1、X、X’、R1、R2、R3及びnは、請求項1において定義したものである)。
【請求項3】
1が、P(R113であり;
11が、−C1-6−アルキル、−C3-8−シクロアルキル又はアリールであり;又は
1が、以下の式6a、6b、6c又は6dのリガンドであり:
【化3】

7及びR8が、各々、独立して、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;
9及びR10が、各々、独立して、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;又は
9及びR10が、それらが結合する炭素原子と一緒に組み合せられて、3〜8員の炭素環を形成し;
Y及びY’が、ハロゲンである、
請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
7及びR8が、各々、独立して、H、−C1-6−アルキル、−C2-6−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;
9及びR10が、各々、独立して、H、−C1-6−アルキル、−C2-6−アルケニル又はフェニルであり、ここで、フェニルが、場合により、独立して、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はハロゲンより選ばれる3個までの基により置換されていてもよく;又は
9及びR10が、それらが結合する炭素原子と一緒に組み合せられて、5〜7員の炭素環を形成する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
2が、H、−C1-6−アルキル又はアリールであり;
X及びX’が、各々、ハロゲンである、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
1が、PCy3又は式6a、6b、6c又は6dのリガンドであり;
Cyが、シクロヘキシルであり;
X及びX’が、各々、塩素である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
1が、式6a、6b、6c又は6dのリガンドであり;及び
7及びR8が、2−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル又は2,4,6−トリメチルフェニルである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
nが0である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
1iPrであり;
2がHである、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
式2の化合物。
【化4】

(式中、R1が、−C1-5−アルキル又は−C5-6−シクロアルキルであり;
2が、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;
3が、−C1-6−アルキル、−C1-6−アルコキシ又はアリールであり、ここで、アリールが、−C1-6−アルキル又は−C1-6−アルコキシで置換されていてもよく;
4が、−C1-20−アルキルであり;
mが、0、1又は2であり;及び
nが、0、1、2又は3である。)
【請求項11】
以下の式2aの、請求項10に記載の化合物:
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、m及びnは、請求項10において定義したものである)。
【請求項12】
2が、H、−C1-6−アルキル又はアリールであり;
4が、−C1-6−アルキルであり;
mが、0又は1である、
請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
4が、メチル又はエチルであり;
nが0である、
請求項10〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
1が、イソプロピル;
2が、Hであり;
mが、0である、
請求項10〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の錯体を製造する方法であって、請求項10〜14のいずれか1項に記載の式2又は2aの化合物を、以下の一般式5のルテニウム錯体と反応させる方法:
【化6】

(式中、L1及びL2は、中性リガンドであり;
5は、H、−C1-20−アルキル、−C2-20−アルケニル、−C2-20−アルキニル又はアリールであり;
6は、アリール、ビニル又はアレニルであり;
X/X’は、アニオン性リガンドである)。
【請求項16】
銅塩の存在下で行う請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項10〜14のいずれか1項に記載の式2又は2aの中間体を製造する方法であって、
a)以下の式3:
【化7】

の化合物を、式R1Z(9)の試薬と反応させて、以下の式4:
【化8】

の中間体を形成する工程;及び
b)式4の中間体を、以下の式10:
【化9】

のオレフィン化試薬と反応させて、以下の一般式2の化合物にする工程:
【化10】

(式中、式2a、3、4、9及び10のR1、R2、R3、R4、m及びnは、請求項10〜14において定義したものであり、及び
Wは、オレフィン化反応に適する離脱基であり;
Zは、ハロゲン、−C1-6−アルキル−S(O)2−、−C1-6−フルオロアルキル−S(O)2−、アリール−S(O)2−又はアリール−S(O)3−である)。
【請求項18】
メタセシス反応を行う方法であって、1つのC=C二重結合を有する2つの化合物又は少なくとも2つのC=C二重結合を有する1つの化合物を触媒と接触させる工程を含み、ここで、触媒が、請求項1〜9のいずれか1項に記載のルテニウム錯体を含む方法。
【請求項19】
閉環又はクロスメタセシス反応を行う方法であって、ジアルケニル化合物を、請求項1〜9のいずれか1項に記載のルテニウム錯体と接触させる工程を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−503085(P2006−503085A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544132(P2004−544132)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011222
【国際公開番号】WO2004/035596
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】