説明

メタドヘリンポリペプチドとそのコード核酸及び使用方法

転移制御するタンパク質であるメタドヘリン及びメタドヘリンのバリアントが記載される。上記メタドヘリン及びメタドヘリンのバリアントをコードするDNA配列、並びに生産方法が記載される。メタドヘリン、メタドヘリンへ結合する抗体等の結合作用物質、及びsiRNA等の発現調節作用物質の適用を包含する療法が記載される。所望の物質を特定の肺組織へ送達するためのメタドヘリン又はメタドヘリンバリアントの使用が記載される。メタドヘリンの存在に基づいて転移性細胞を診断する方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及び分子医学の分野、より具体的には腫瘍転移の調節に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2003年11月13日付けで出願された米国仮出願第60/519,675号(その全体が参照により本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【0003】
[政府の利益]
この研究は、国立衛生研究所の国立癌研究所からの助成CA 82713、CA30199及びCA09579、並びに国防省からのDAMD17−02−1−0315により後援された。政府は本発明に確かな権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
腫瘍転移は、複雑な多段階プロセスであり、このプロセス中に癌細胞は、原発腫瘍塊から離れて、臓器特異的部位で転移性病巣を樹立する(Fidler, I.J., Surg Oncol Clin N Am 10: 257-269, vii-viiii. (2001))。転移性部位の位置は、癌の特定のタイプ及び疾患の病期に依存する。例えば、乳癌は通常、まず肺及び肝臓に広がる(Kamby, C. et al., Cancer 59: 1524-1529 (1987); Rutgers, E.J. et al., Br J Surg 76: 187-190 (1989); Tomin, R. and Donegan, W.L., J Clin Oncol 5:62-67 (1987))。疾患の後期では、乳癌は、中枢神経系及び骨に広がる(Amer, M.H., J Surg Oncol 19: 101-105 (1982); Boogerd, W., Radiother Oncol 40, 5-22 (1996))。疾患の転移段階は、たいてい従来の治療に効果がなく、通常患者が診断後ほんの数年しか生存しないことを考慮すると非常に悲惨
である(Harris, J. et al., Cancer of the breast. In Cancer, principles and practice of oncology (Philadelphia, Lippincott Co.), pp. 1602-1616 (1982))。
【0005】
幾つかの要因が、転移の位置及び成長に影響を及ぼす。原発腫瘍からの血流パターンに応じて、ある腫瘍細胞は、特定の臓器へ優先的に運ばれる(Weiss, L., Clin Exp Metastasis 10: 191-199 (1992))。循環中、幾つかの腫瘍細胞は、特定臓器への細胞接着を媒介する特定の内皮細胞表面分子を選択的に認識する(Abdel-Ghany, M. et al., J Biol Chem
276: 25438-25446 (2001); Cheng, H.C. et al., J Biol Chem 273: 24207-24215 (1998); Johnson, R.C. et al., J Cell Biol 121: 1423-1432 (1993))。小毛細血管における機械的な捕捉又は内皮との接着性相互作用による転移部位での腫瘍細胞の拘束は、二次部位で腫瘍が樹立されるのに必須の段階である(Chambers, A.F. et al., Nat Rev Cancer 2: 563-572 (2002); Orr, F.W. and Wang, H.H., Surg Oncol Clin N Am 10:357-381, ix-x (2001))。いったん腫瘍細胞が標的臓器に播種すると、局所的微小環境が、特定の癌細胞が増殖するかどうかに影響を与える(Fidler, I.J., Surg Oncol Clin N Am 10: 257-269, vii-viiii (2001); Radinsky, R., Cancer Metastasis Rev 14: 323-338 (1995))。残念ながら、臓器特異的転移の原因となる要因の多くがいまだに解明されていない。
【0006】
多くの考え得る要因のうち、考え得る1つの要因は、特定の組織中の分子に結合することにより、その組織へのタンパク質又は細胞のホーミングを可能にする単数又は複数のタンパク質の可能性がある。肺特異的ホーミングペプチドの幾つかは、in vivoファージディスプレイにより単離されており(Rajotte, D. and Ruoslahti, E., J Biol Chem 274: 11593-11598 (1999))、肺血管系に特異的に結合する抗体が調製されている(McIntosh, D.P., et al., Proc Natl Acad Sci USA 99: 1996-2001 (2002))。血管マーカーの組織特異的発現は、肺血管系に限定されず、各組織がその血管系上に特異的な特徴を付すことが、最近のデータにより示唆されている(Ruoslahti, E., Nat Rev Cancer 2: 83-90 (2
002))。したがって、組織特異的血管マーカーへの腫瘍細胞の結合は、他の組織への選択的腫瘍転移において役割を果たす可能性がある。
【0007】
肺転移が形成するために必要とされる接着性相互作用の例が存在する。マウスモデルにおいて、肺内皮細胞上のジペプチジルジペプチダーゼIVは転移性胸部及び前立腺癌腫細胞上のフィブロネクチンに対する接着受容体であることが見出された(Cheng, H.C. et al., J. Biol Chem 273: 24207-24215 (1998); Johnson, R.C., et al., J Cell Biol 121:
1423-1432 (1993))。別のマウスモデルでは、肺内皮細胞上のCa2+感受性塩素チャネルであるhCLCA2は、転移性乳癌細胞上のβ4インテグリンに対するリガンドであることが報告された(Abdel-Ghany, M., et al., J Biol Chem 276: 25438-25446 (2001); Elble, R.C., et al., J Biol Chem 272: 27853-27861 (1997))。ごく最近では、肺、肝臓及びリンパ節において高度に発現される分泌ケモカインであるCXCL12は、転移性乳癌細胞の表面上のCXCR4受容体へ結合することが示された(Muller et al., 2001)。さらに、転移を阻害するには、これらの相互作用のたった1つを妨害すれば十分である(Abdel-Ghany, M., et al., J Biol Chem 276: 25438-25446 (2001); Cheng, H.C. et al., J
Biol Chem 273: 24207-24215 (1998); Muller, A., et al., Nature 410: 50-56 (2001))。乳癌におけるこれらの相互作用の重要性に関して有効な根拠は存在しないが、細胞接着分子と成長因子受容体との多数の相互作用が、循環性腫瘍細胞の付着及び成長に必要である可能性がある。特有の血管アドレスに基づく類似のメカニズムは、他の臓器への臓器特異的転移において役割を果たしている可能性がある。
【0008】
他者等によって、転移性乳癌において発現が増大される多数の遺伝子が同定されている。GenBankTMのエントリーAK000745として記載されるこのような遺伝子はの1つは、転移性乳癌において多くの他の遺伝子と共に発現が促進された(Van't Veer, et al., Nature 415: 530-536 (2002))。しかしながら、乳癌転移におけるこの遺伝子又はそのタンパク質産物(本明細書中では、メタドヘリンと称される)の因果的役割の可能性は、いまだ立証されていない。
【発明の開示】
【0009】
本発明の態様は、メタドヘリンのバリアント、並びにメタドヘリンをコードする核酸及びポリペプチドに関する。これらのポリペプチド及び核酸は、腫瘍転移を調節及び診断するのに有用である。メタドヘリンポリペプチド及び核酸は、癌、特に乳癌及び肺癌を診断又は治療するのに有利に使用することができる。
【0010】
さらに、メタドヘリンポリペプチド及びメタドヘリンをコードする核酸は、メタドヘリン活性又は発現を変更させることができる作用物質をスクリーニングするのに有用である可能性がある。さらに、これらの核酸及びタンパク質は、小分子薬物、ペプチド、抗体、アンチセンス核酸又は低分子干渉RNA等の、腫瘍転移に影響を及ぼし得る有用な一般的作用物質及び結合性作用物質を発見するのに使用することができる。
【0011】
本発明の幾つかの実施の形態はまた、メタドヘリン核酸を含むベクター、このようなベクターを含む宿主細胞、メタドヘリンアンチセンス核酸及び関連組成物を包含し得る。
【0012】
本発明の他の実施の形態は、目的とする物質を肺組織に局在化させることが可能である分子を包含する。実施の形態の一つでは、局在化用分子は、メタドヘリンのフラグメントである。別の実施の形態では、上記分子は、メタドヘリンのアミノ酸378〜440を包含する。
【0013】
さらに他の実施の形態は、メタドヘリン核酸にハイブリダイズするか、又はメタドヘリン核酸を増幅するオリゴヌクレオチドである。
【0014】
他の実施の形態は、抗メタドヘリン特異的抗体、及び転移性癌を治療するためのこれらの抗体の使用である。さらに、メタドヘリン核酸又はメタドヘリン特異的抗体を含有するキットが提供され、このようなキット及び試薬は、癌を診断したり、治療法に対する応答をモニタリングしたり、或いは癌患者の予後を予測するのに使用することができる。
【0015】
また、メタドヘリンポリペプチド、コード核酸、メタドヘリンポリペプチドの活性若しくは発現を調節する化合物又は作用物質を使用して、腫瘍転移を調節する方法が提供される。腫瘍転移を調節する方法は、癌等の疾患を治療するのに使用することができる。
【0016】
他の実施の形態は、メタドヘリン配列を対象とするアンチセンスヌクレオチドを投与することを包含する治療法を提供する。さらに、メタドヘリン配列を対象とするアンチセンスヌクレオチドを患者へ投与することを包含する、患者の治療方法が提供される。
【0017】
他の実施の形態は、メタドヘリンを対象とする抗体を投与することにより、メタドヘリンが媒介する局在化を低減させる方法を提供する。
【0018】
他の実施の形態は、メタドヘリン配列を対象とするsiRNAをサンプルへ投与することにより、メタドヘリンの発現を低減させる方法を提供する。さらに、転移性細胞上のメタドヘリンの発現のレベルを低減させるために、有効量のsiRNAを患者へ投与することにより、癌患者を救済する方法が提供される。
【0019】
他の実施の形態は、被験体における癌を画像化する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[発明の詳細な説明]
本明細書中で開示するように、メタドヘリン及びその機能的フラグメントは、特に肺血管を認識し、且つ腫瘍の転移に関与する細胞表面タンパク質であると特徴付け及び発見された。機能的フラグメントの1つは、配列番号3に示され、マウスメタドヘリン(配列番号1)のアミノ酸378〜440に相当する。本明細書中で開示するように、メタドヘリンは、転移性胸部腫瘍において過剰発現され、細胞外ドメインにおけるC末端セグメントを通じて肺血管系に結合されることが見出された。したがって、メタドヘリンの発現又は機能を阻害することにより、腫瘍転移を阻害する方法及び組成物が提供される。メタドヘリンが、肺血管系におけるその受容体に結合することを阻害する方法及び組成物もまた提供される。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態は、単離マウスメタドヘリンタンパク質(配列番号1)又はメタドヘリンタンパク質をコードする単離DNA(配列番号2)、並びにヒト相同体(配列番号13及び配列番号16)を包含する。さらに、本発明の実施形態は、単離ポリペプチド及びそれらの機能的バリアント、このようなポリペプチド及びバリアントをコードする核酸分子、並びに関連組成物及び方法を包含する。他の実施形態は、メタドヘリンの活性又は発現を阻害する方法及び組成物を包含する。メタドヘリンの活性又は発現を調節するための組成物としては、メタドヘリン、そのバリアント、抗体、siRNA、アンチセンス分子、ペプチド、タンパク質又は小分子を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
メタドヘリンの活性又は発現を、正又は負のいずれかに調節する化合物を同定する方法が、本明細書中で提供される。本発明の実施形態はまた、メタドヘリン核酸にハイブリダイズするか、又はメタドヘリン核酸を増幅するのに使用することができるオリゴヌクレオチドを包含する。本発明の実施形態はまた、メタドヘリン核酸又はメタドヘリン特異的抗
体を含有するキットを包含する。このようなキット及び試薬は、癌を診断したり、治療法に対する応答をモニタリングしたり、或いは癌患者の予後を予測するのに使用することができる。
【0023】
本発明の別の実施形態は、腫瘍転移を阻害する方法である。上記方法は、腫瘍転移の危険性を有する患者を選択すること、及びメタドヘリン又はそのバリアント若しくはフラグメントがメタドヘリン受容体に結合するのを阻害するのに有効な量の化合物を投与することを包含する。患者の選択は、多くの代替的方法で行われてもよい。例えば、患者の有する癌のタイプは、癌の広がる見込みを示す可能性がある。一実施形態では、癌を有するか、又は癌になる危険性が高い任意の患者が、この治療の被験体であり得る。別の実施形態では、患者の同定は、以下でより完全に記載するように、過剰のメタドヘリンの存在を検出することのような本実施形態の方法を使用することにより達成される。一実施形態では、上記化合物は、メタドヘリンの結合フラグメント、例えばマウス肺ホーミングドメイン(配列番号3)又はこれに相当するヒトメタドヘリンタンパク質(配列番号13)のアミノ酸378〜440由来のドメイン(配列番号17)を含む。代替的実施形態では、上記化合物は、メタドヘリンに優先的に結合するモノクローナル抗体であり得る。代替的実施形態では、上記化合物は、ペプチドであり、ここでこのペプチドは、メタドヘリンに又はメタドヘリンの受容体のいずれかに結合する。一実施形態では、上記化合物は、メタドヘリンのバリアントであり得る。一実施形態では、上記化合物は、ペプチド擬似体であり、ここでこのペプチド擬似体は、メタドヘリン又はメタドヘリンの受容体のいずれかに結合する。代替的実施形態では、上記化合物は、メタドヘリンの発現を阻害するアンチセンス分子又はsiRNA分子であり得る。代替的実施形態では、上記化合物は、小分子薬物であり得る。
【0024】
上記化合物は、当業者に理解されるように、化合物の特性に応じた位置へと送達され得る。例えば、抗体、メタドヘリンに対するペプチド、アンチセンスmRNA、siRNA及び受容体は、存在する癌の位置へ送達され得る。同様に、受容体又はメタドヘリンに結合するペプチド、抗体、受容体又はそれらのフラグメント、及びメタドヘリン又はそのバリアントは、癌が広がる可能性がある位置へ送達され得る。一実施形態では、癌は乳癌である。一実施形態では、メタドヘリンの受容体は、肺血管系上に位置する。
【0025】
乳癌を患っているか、又は乳癌の危険性がある患者の治療方法を以下に記載する。一実施形態では、メタドヘリンを対象とする抗体は、癌性細胞上のメタドヘリン分子が転移するのを防ぐために患者へ投与される。一実施形態では、抗体は優先的、特異的に又は選択的にメタドヘリンへ結合する。一実施形態では、抗体は、マウス肺結合ドメイン(配列番号3)又は相当するヒト肺結合ドメイン(配列番号17)等のメタドヘリンの肺結合ドメインを対象とする。別の実施形態では、メタドヘリンに対するアンチセンスRNAは、癌性細胞上のメタドヘリンの発現を低減させ、転移を低減させるために患者へ投与される。別の実施形態では、メタドヘリンを対象とするsiRNAは、癌性細胞におけるメタドヘリンの発現のレベルを低減させるために、患者へ投与される。一実施形態では、上記化合物は、メタドヘリン、メタドヘリンのバリアント、又はメタドヘリンのフラグメントである。一実施形態では、上記化合物は、メタドヘリンに由来するペプチド、又はそのペプチド擬似体である。
【0026】
メタドヘリンの機能的フラグメント、機能的フラグメントを作製する方法、及び機能的フラグメントを使用する方法もまた以下に記載する。一実施形態では、メタドヘリンタンパク質の機能的フラグメントは、目的の物質を肺へ送達するために、ホーミング作用物質として使用される。1つの好ましい実施形態では、機能的フラグメントは、配列番号3又は配列番号17に示されるような肺結合ドメインである。別の実施形態では、機能的フラグメントは、肺結合ドメインのバリアントである。機能的フラグメントは、細胞上で発現
されてもよく、細胞はそれにより、肺組織へと特異的に局在化されるようになる。メタドヘリンの考え得る肺ホーミングドメインは、図1Aに示される。図1Bは、タンパク質の予測される疎水性を示す。図1Cは、メタドヘリンタンパク質に関するさらなる構造情報を提供する。「TM」は、推定上の膜貫通ドメインの位置を示す。数字は、メタドヘリンタンパク質におけるアミノ酸の位置を示す。
【0027】
別の実施形態では、機能的フラグメントは、目的のタンパク質又は薬物に結合する。より好ましい実施形態では、目的の物質に結合するこれらのフラグメントは、患者へ投与されて、フラグメントは、肺組織へと向かい、目的のタンパク質又は薬物を主として肺組織へ送達する。一実施形態では、肺結合ドメインは、配列番号3又は配列番号17で提供されるアミノ酸配列を有する。一実施形態では、上記化合物又は組成物は、静脈内投与され得る。
【0028】
代替的実施形態では、メタドヘリンの機能的フラグメントは、肺組織上に存在するメタドヘリン受容体と競合、それを阻害するのに使用される。好ましい実施形態では、機能的フラグメントは、配列番号3又は配列番号17で示されるようなメタドヘリンの肺結合ドメインを含む。別の好ましい実施形態では、機能的フラグメントは、メタドヘリン受容体への結合により転移を阻害するメタドヘリンのバリアントである。
【0029】
一実施形態では、メタドヘリン機能的フラグメントは、癌の広がりを阻害するのに使用される。転移性細胞と肺組織との結合を阻害する上述の機能的フラグメントは、患者の肺組織へ投与され、メタドヘリン受容体へ結合することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、患者における転移性癌を診断する方法が提供される。これらの実施形態の幾つかにおいて、癌の転移性拡大の危険性の疑いがある組織を有する患者が選択される。続いて、転移の危険性がある組織が、正常組織より高レベルのメタドヘリンを発現しているかどうかの決定がなされる。より高発現レベルのメタドヘリンは、転移性癌の徴候を示す。他の実施形態では、メタドヘリンに結合する結合性作用物質は、癌の存在を検出するための診断薬として使用される。ある組織における特異的な位置でのメタドヘリン結合性作用物質の局在化は、その組織が癌性領域を有する可能性があることを示し得る。幾つかの実施形態では、結合性作用物質は、メタドヘリンに結合する小ペプチドである。別の実施形態では、結合性作用物質は、メタドヘリンに対する受容体である。他の実施形態では、組織におけるメタドヘリン発現のレベルは、メタドヘリンに優先的に結合する抗体を投与することにより検査される。抗体は放射性又は比色性標識で標識され、その結果、抗体は容易に検出することができることが好ましい。この方法は、in vivo又はin vitroで、組織上で実施され得ることに留意すべきである。任意の患者がこの検査から恩恵を受け得る一方で、検査する患者を狭める選択肢が存在する。一実施形態では、選択は家系によりなされてもよい。別の実施形態では、選択は、癌と癌拡大の危険性との間の相関により決定されてもよく、10%を上回る任意の危険性は、危険性がある患者をもたらすと見なされ得る。代替的実施形態では、1%を上回る任意の危険性は、「危険性がある」と見なされ得る。当業者に理解されるように、癌による損傷効果もまた、考慮すべき要因であり得る。
【0031】
1つの好ましい実施形態では、転移性乳癌腫由来のcDNAのファージ発現ライブラリーは、乳癌転移の頻発する部位である肺の血管へ結合するタンパク質ドメインを同定するのに使用される。
【0032】
定義
本明細書中で使用する場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド塩基の一本又は二本鎖ポリマーを意味し、DNA及び、
センス鎖及びアンチセンス鎖の両方のHnRNA及びmRNA分子を含む、対応するRNA分子を包含し、またcDNA、ゲノムDNA及び組換えDNA、並びに完全又は部分的合成ポリヌクレオチドを包含する。HnRNA分子はイントロンを含有し、概して1対1の様式でポリヌクレオチドに相当する。mRNA分子は、イントロンが削除されているHnRNA及びポリヌクレオチドに対応する。ポリヌクレオチドは、全遺伝子、又はその任意の部分から構成され得る。操作可能なアンチセンスポリヌクレオチドは、対応するポリヌクレオチドのフラグメントを含んでもよく、したがって「ポリヌクレオチド」の定義は、すべてのこのような操作可能なアンチセンスフラグメントを包含する。
【0033】
本発明の組成物及び方法はまた、上記ポリペプチド及びポリヌクレオチドのバリアントを包含する。このようなバリアントとしては、天然に存在する本発明の配列の対立遺伝子バリアントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書中で使用する場合、メタドヘリン「バリアント」は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は、上述のポリペプチド又はポリヌクレオチドとは異なるが、メタドヘリンタンパク質の活性を損なわないものに限られる分子である。好ましい実施形態では、メタドヘリンバリアントの、メタドヘリン受容体に対する結合能は損なわれない。1つの好ましい実施形態では、変異メタドヘリン分子は、メタドヘリンタンパク質の少なくともアミノ酸378〜440を含むか、又はコードするが、配列番号1の全タンパク質配列を含まないか、又はコードしない。別の好ましい実施形態では、変異メタドヘリンは、5個のアミノ酸又はそれ未満の置換、欠失或いは付加により、野生型配列と異なる。このようなバリアントは概して、上記ポリペプチド配列の1つを修飾すること、及び例えば本明細書中に記載する代表的な手順を使用して修飾ポリペプチドの転移阻害特性を評価することにより同定され得る。ポリペプチドバリアントは好ましくは、同定されたポリペプチドに対して少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約99%の同一性(以下に記載するように決定される)を示す。さらに好ましい実施形態では、バリアントは、保存的置換及び/又は修飾の点でのみ異なる。
【0035】
本明細書中で使用する場合、「保存的置換」は、ポリペプチドの二次構造及び疎水性親水性の性質が、ペプチド化学の当業者によって実質的に変わらないと予測されるように、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換されるものである。概して、アミノ酸の以下の群は、保存的変化を表す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、及び(5)phe、tyr、trp、his。
【0036】
バリアントはまた、アミノ酸の欠失又は付加を含む他の修飾を含有してもよく、変更は、肺結合ドメインに対して最小の影響を有する。好ましい実施形態では、変更は、メタドヘリンポリペプチドの転移阻害特性、二次構造及び疎水性親水性の性質に対して最小の影響を及ぼす。例えば、メタドヘリンポリペプチドは、翻訳と同時又は翻訳後に、タンパク質の移行を導く、タンパク質のN末端にあるシグナル(又はリーダー)配列に結合されてもよい。メタドヘリンポリペプチドはまた、メタドヘリンポリペプチドの合成、精製又は同定を容易にするために、或いは固体支持体へのメタドヘリンポリペプチドの結合を増強するために、リンカー又は他の配列(例えば、ポリ−His)に結合させてもよい。例えば、メタドヘリンポリペプチドは、免疫グロブリンFc領域へ結合させてもよい。
【0037】
ヌクレオチド「バリアント」は、1つ又はそれ以上のヌクレオチド欠失、置換或いは付加を有する点で、上述のヌクレオチド配列と異なる配列である。このような修飾は、例えばAdelman等(DNA, 2:183, 1983)により教示されるように、オリゴヌクレオチド定方向部
位特異的突然変異誘発等のような標準的な突然変異誘発法を用いて容易に導入することができる。ヌクレオチドバリアントは、天然に存在する対立遺伝子バリアントでも天然に存在しないバリアントでも良い。変異ヌクレオチド配列は好ましくは、上述の配列に対して少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、最も好ましくは少なくとも約95%の相同性(以下に記載するように決定される)を示す。
【0038】
1つの好ましい実施形態において提供されるペプチドの機能的フラグメントは、本明細書中で具体的に列挙されるDNA配列の1つ又はそれ以上に対して実質的に相同的であるDNA配列によりコードされるバリアントを包含する。「実質的な相同性」は、本明細書中で使用する場合、中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能なDNA配列を指す。適切な中程度のストリンジェントな条件は、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で予洗すること、50℃〜65℃、5×SSCで一晩、或いは異種間相同性の場合では、0.5×SSCを用いて45℃でハイブリダイズさせること、続いて0.1%SDSを含有する2×、0.5×及び0.2×SSCそれぞれを用いて、65℃で20分間、二度洗浄することを包含する。このようなハイブリダイズしているDNA配列もまた、コード縮重に起因して、ハイブリダイズしているDNA配列によりコードされるメタドヘリンポリペプチドをコードするヌクレオチド配列と同様に、本発明の範囲内である。
【0039】
代替的実施形態では、相同体はBLASTによるアラインメントにより整列させることができ、またメタドヘリンに対して図2においてすでに整列された配列の1つと同程度に相同的であるものである。好ましい実施形態では、新たな配列は、その配列とメタドヘリン配列とをアラインメントした後に、相同体候補とメタドヘリンとの間において、本明細書中に記載するメタドヘリン配列と図2に列挙されるもののすべてとの間よりも変異が少ない場合、相同体である。一実施形態では、メタドヘリンは、ヒトメタドヘリンである。代替的実施形態では、メタドヘリンは、マウスメタドヘリンである。当業者に理解されるように、図2及び類似の図はまた、メタドヘリンタンパク質の機能的ドメインを同定するのにも使用され得る。一実施形態では、種間で相同的であるタンパク質のドメインは、重要なドメインであり、代替的な「肺結合」ドメイン又は他のシグナル伝達機能に有用であり得る。より好ましい実施形態では、異なる種類の生物間で同一であるドメインは、重要なドメインである。したがって、このタイプの比較により、メタドヘリンの代替的機能的ドメインを容易に同定することが可能で、肺結合ドメインが一例である。一実施形態では、図2に提示される4つの配列と類似するドメインは、互いに肺結合ドメインにわたって、相同的であるとみなされ、したがって潜在的な機能的フラグメントである。続いて、本明細書中に開示するさらなる方法を使用して、機能的活性に関して選択されたドメインを容易に試験し得る。
【0040】
2つのヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列は、2つの配列におけるヌクレオチド又はアミノ酸残基の配列が、以下に記載するように最大限の一致で整列される際に同じである場合、「同一である」と言える。2つの配列間の比較は通常、比較ウィンドウにわたって配列を比較して、配列類似性の局所領域を同定及び比較することにより実施される。本明細書中で使用する場合、「比較ウィンドウ」は少なくとも約20個の近接位置、通常30個〜約75個、40個〜約50個のセグメントを指し、ここでは、2つの配列が最適に整列された後、配列は、近接位置の同じ番号を有する参照配列と比較され得る。
【0041】
一実施形態では、比較のための配列のアラインメントは、バイオインフォマティクスソフトウェアのLasergene一式(DNASTAR, Inc., Madison, Wis.)におけるMegalignプログラムを用いて、デフォルトパラメータを使用して実施することができる。このプログラムは、以下の参照文献に記載される幾つかのアラインメントスキームを具体化している:Dayhoff, M.O. (1978) A model of evolutionary change in proteins --
Matrices for detecting distant relationships. In Dayhoff, M.O. (ed.) Atlas of Protein sequence and structure, National Biomedical Research Foundation. Washington D.C., Vol 5, Suppl. 3, pp. 345-358; Hein J. (1990) Unified Approach of Alignment and Phylogenes pp.626-645 Methods in enzymology vol. 183, Academic Press, Inc., San Diego, Calif; Higgins, D.G. and Sharp, P.M.(1989) Fast and sensitive multiple sequence alignments on microcomputer CABIOS 5:151-153; Myers E.W. and Muller W. (1988) Optimal alignments in linear space CABIOS 4:11-17; Robinson, E.D. (1971) Comb. Theor 11:105; Santou, N. Nes, M. (1987) The neighbor joining method.
A new method for reconstructing phylogenetic trees Mol. Biol. Evol. 4: 406-425;
Sneath, P.H.A. and Sokal, R.R. (1973) Numerical Taxonomy -- the Principles and Practice of Numerical Taxonomy, Freeman Press, San Francisco, Calif; Wilbur, W.J. and Lipman, D.J. (1983) Rapid similarity searches of nucleic acid and protein data banks Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 726-730. アラインメントに関して多くの選択肢が存在し、別の選択肢は、ncbiウェブページ、bl2seqにより提供されるものである。
【0042】
好ましくは、「配列同一性のパーセント」は、少なくとも20個の位置の比較ウィンドウにわたって最適に整列された2つの配列を比較することにより決定され、ここで比較ウィンドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントに関して参照配列(これは、付加又は欠失を含まない)と比較した場合に、20パーセント未満、通常5〜15パーセント、又は10〜12パーセントの付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセントは、同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が両方の配列に見られる位置の数を決定して、対応位置の数をもたらすこと、対応位置の数を参照配列における位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)から除算すること、及びその結果に100を乗じて、配列同一性のパーセントをもたらすことにより算出される。
【0043】
本明細書中で記載される機能的メタドヘリンタンパク質又はメタドヘリンフラグメントは、いくつかの方法で創出され得る。それらは、実施例で記載されるように組織から単離されることもある。或いは、それらはまた、合成的又は組換え手段により生成されることもある。約100個未満のアミノ酸、一般的に約50個未満のアミノ酸を有する合成ペプチドは、当業者に既知の技法を用いて生成され得る。例えば、このようなポリペプチドは、市販の固相法のいずれか、例えばMerrifield固相合成方法を使用して合成してもよく、ここではアミノ酸は、伸長中のアミノ酸鎖に順次付加される(例えば、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85: 2149-2146, 1963を参照)。ポリペプチドの自動合成用の装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division(Foster City, Calif.)等の供給業者から市販されており、製造業者の指示書に従って作動され得る。
【0044】
或いは、上記ポリペプチドのいずれかは、ポリペプチドをコードするDNA配列を、発現ベクターへ挿入させること、及び適切な宿主においてタンパク質を発現させることにより、組換え的に生産してもよい。当業者に既知の様々な発現ベクターのいずれかを使用して、本発明の組換えポリペプチドを発現させてもよい。発現は、組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターで形質転換又はトランスフェクトされた任意の適切な宿主細胞で達成され得る。適切な宿主細胞としては、原核生物、酵母及び高等真核生物細胞が挙げられる。好ましくは、使用される宿主細胞は、大腸菌、酵母又はCHO細胞等の哺乳類細胞系列である。この様式で発現されるDNA配列は、天然に存在するポリペプチド、天然に存在するポリペプチドの一部、又はそれらの他のバリアントをコードし得る。
【0045】
別の実施形態は、メタドヘリンタンパク質の擬似体を包含する。より好ましい実施形態では、擬似体はそのタンパク質の肺結合ドメインである。「擬似体」とは、肺結合ドメイ
ンの機能的構造が、メタドヘリン肺結合ドメインと同じであることを意味する。擬似体は、本明細書中で記載されるように、元のメタドヘリンタンパク質が発見されたのと同じプロセスにより決定され得る。或いは、擬似体は配列解析及び構造予測により創出されてもよく、ここでメタドヘリン肺結合タンパク質の予測される又は実際のタンパク質構造は、肺結合ドメインの代替的擬似体を創出するための設計図として使用される。或いは、擬似体は、構造的に類似していなくてもよいが、ただ機能的には類似しており、小分子薬物を含み得る。
【0046】
一実施形態では、擬似体は小分子であり、メタドヘリンの肺結合ドメインに機能的に類似している。本開示を鑑みると、当業者は、単に本明細書中に記載する手順を繰り返すこと、及び小分子が肺結合ドメインと類似の様式で結合されたかどうか、或いは擬似体が、転移に対して肺結合ドメインと同じ影響を有していたかどうかを決定することにより、特定の小分子が肺結合ドメインの擬似体であったかどうかを決定することができる。一実施形態ではメタドヘリンの活性を模倣するこれらの小分子は、本明細書中に論述するように、肺結合ドメイン自体が患者を治療するのに使用され得るように、患者を治療するのに使用されてもよい。代替的実施形態では、メタドヘリンの活性を模倣する小分子は、診断補助として、本明細書中に記載するようにメタドヘリンの肺結合部分が、癌を診断するのに使用することができる方法に類似した様式で使用されてもよい。
【0047】
一実施形態では、擬似体は、二価性ペプチド、多価ペプチド及びペプチド擬似体を含むペプチド又はペプチド擬似体であり、並びに以下でさらに論述するホーミングペプチド及びペプチド擬似体である。本明細書中で使用する場合、「ペプチド」という用語は、ペプチド、タンパク質、タンパク質のフラグメント等を意味するのに広範に使用される。本明細書中で使用する場合、「ペプチド擬似体」という用語は、構造的にベースとなるペプチドの活性を有するペプチド様分子を意味する。一実施形態では、このようなペプチド擬似体としては、化学的に修飾されたペプチド、天然に存在しないアミノ酸を含有するペプチド様分子、及びペプトイドが挙げられ、ペプチド擬似体が由来するペプチドの選択的ホーミング活性等の活性を有する(例えば、Goodman and Ro., Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery Vol.1(ed. M.E. Wolff; Jphn Wiley & Sons 1995), 803-861頁の薬物設計のためのペプチド擬似体(Peptidomimetics for Drug Design)を参照)。
【0048】
例として拘束アミノ酸を含有するペプチド様分子、ペプチド二次構造を模倣する非ペプチド構成成分又はアミド結合アイソスターを含む様々なペプチド擬似体が、当該技術分野で既知である。別の例は、拘束された天然に存在しないアミノ酸、例えばαメチル化アミノ酸:α,αジアルキルグリシン又はαアミノシクロアルカンカルボン酸;Nα Cα環化(cyclized)アミノ酸、Nαメチル化アミノ酸;β又はγアミノシクロアルカンカルボン酸;α,β不飽和アミノ酸:β,βジメチル又はβメチルアミノ酸;β置換2,3メタノアミノ酸:N Cδ又はCα Cδ環化アミノ酸:置換プロリン又は別のアミノ酸擬似体を含有するペプチド擬似体である。別の例は、ペプチド二次構造を模倣するペプチド擬似体、例えば非ペプチドβターン擬似体、γターン擬似体、βシート構造の擬似体又はヘリックス構造の擬似体であり、これらはそれぞれ、当該技術分野で既知である。別の例は、例えばretro inverso型修飾;還元アミド結合;メチレンチオエーテル又はメチレン−スルホキシド結合;メチレンエーテル結合;エチレン結合;チオアミド結合;トランスオレフィン又はフルオロオレフィン結合;1,5二置換テトラゾール環;ケトメチレン又はフルオロケトメチレン結合又は別のアミドアイソスター等のアミド結合アイソスターを含むペプチド様分子でもあり得るペプチド擬似体である。これらの及び他のペプチド擬似体が、本明細書中で使用される場合の「ペプチド擬似体」という用語の意味内に包含されることは、当業者に理解されよう。
【0049】
ペプチド擬似体を同定する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、潜在的なペプ
チド擬似体のライブラリーを含有するデータベースのスクリーニングを包含する。例として、Cambridge構造データベースは、既知の結晶構造を有する300,000個を超える化合物の収集を含有する(Allen et al., Acta Crystallogr. Section B, 35:2331 (1979))。この構造データベースは、新たな結晶構造が決定される場合に継続的に更新されて、本発明のペプチドと同じ形状の適切な形状並びに標的分子に対する潜在的な幾何学的及び化学的相補性を有する化合物をスクリーニングすることができる。本発明のペプチド又はそのペプチドに結合する標的分子の結晶構造が入手可能でない場合、構造は、例えばプログラムCONCORD (Rusinko et al., J. Chem. Inf. Comput. Sci. 29: 251
(1989))を用いて生成することができる。別のデータベースであるAvailable Chemicals Directory(Molecular Design Limited, Information Systems;San Leandro CA.)は、市販されている約100,000個の化合物を含有しており、例えばメタドヘリン、そのバリアント又はメタドヘリン受容体へ選択的結合活性を有する本発明のペプチドの潜在的ペプチド擬似体を同定するのに探索することができる。
【0050】
一実施形態では、単離ペプチド又はペプチド擬似体、或いは以下でさらに論述するようなホーミング分子は、環状かそうでなければコンホメーション的に限定され得る。本明細書中で使用する場合、ペプチド又はペプチド擬似体等の「コンホメーション的に限定される」分子は、三次元構造が、経時的に実質的に1つの空間的配置で維持されるものである。コンホメーション的に限定される分子は、親和性、代謝安定性、膜透過性又は溶解性等の増大という、改善された特性を有することがある。コンホメーション的限定方法は、当該技術分野で既知であり、以下にさらに論述するような環化を包含する。
【0051】
ペプチド又はペプチド擬似体に関して本明細書中で使用する場合、「環状」という用語は、2つの非隣接アミノ酸又はアミノ酸類縁体間での分子内結合を含む構造を意味する。環化は、共有結合又は非共有結合により達成され得る。分子内結合としては、主鎖対主鎖、側鎖対主鎖及び側鎖対側鎖の結合が挙げられるが、これらに限定されない。環化の好ましい方法は、非隣接アミノ酸又はアミノ酸類縁体の側鎖間でのジスルフィド結合の形成によるものである。ジスルフィド結合を形成することが可能な残基としては、例えば、システイン(Cys)、ペニシラミン(Pen)、β,βペンタメチレンシステイン(Pmc)、β,βペンタメチレンβメルカプトプロピオン酸(Pmp)及びそれらの機能的等価体が挙げられる。
【0052】
ペプチド又はペプチド擬似体はまた、例えば、1つのアミノ酸又はその類縁体の側鎖基を利用して、アミノ末端残基のN末端アミンへの共有結合を形成することができるラクタム結合を介して、環化することができる。ラクタム結合を形成することが可能な残基としては、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、リシン(Lys)、オルニチン(Orn)、α,βジアミノ−プロピオン酸、γアミノアジピン酸(Adp)及びM(アミノメチル)安息香酸(Mamb)が挙げられる。環化はさらに、例えば、リシン(Lys)残基とロイシン(Leu)残基との間でのリシノノルロイシン結合、又は2つのチロシン(Tyr)残基間のジチロシン結合の形成により達成することができる。これら及び他の結合が、本発明の環状ペプチド又はペプチド擬似体中に包含させることができることは、当業者に理解されよう。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、目的の物質と結合されて、所望の物質の局在化を導くためのメタドヘリン又はそのバリアントを提供する。「目的の物質」は、メタドヘリンタンパク質と結合する任意のものであり得る。1つの好ましい実施形態では、メタドヘリン及び目的の物質である第2のポリペプチドを含む融合タンパク質は、共有結合により連結される。別の非限定的な実施例では、表面上でメタドヘリンを発現するように人工的に誘導される細胞は、それらの細胞表面上でメタドヘリンを発現させることにより、メタドヘリンと結合される目的の物質である。別の実施形態では、ナノ粒子は、メタドヘリンタンパ
ク質又はバリアントに結合される所望の物質であり得る。別の実施形態では、ナノデバイスは、メタドヘリンタンパク質又はバリアントに結合される所望の物質であり得る。粒子及びデバイスを作製並びに使用する方法は、当該技術分野で既知である。この技術の概説に関しては、Erkki Ruoslahi, Cancer Cell, August 2002, 97-98を参照されたい。
【0054】
続いて、メタドヘリンタンパク質又はそのバリアントへ結合されたこれらの粒子及びデバイスは、この実施形態のメタドヘリンタンパク質又はバリアントにより、目的の部位へ送達される。例えば、Hood等(Science, 296: 2404-2407 (2002))に記載されるように、分子、この場合ではメタドヘリン又はそのバリアントをナノ粒子の外部表面へ付加させてもよく、結果として、分子が自然にどこに導かれようと、全ナノ粒子は、これらの局在化細胞へ導かれ、これらの局在化細胞へのナノ粒子の積荷の送達をもたらすこととなる。積荷は任意の化合物であってもよく、例えばそれは、タンパク質ベース、DNAベース、RNAベース、結合性作用物質、治療用作用物質、診断用作用物質、或いは本明細書中で論述するような又は当業者に理解されるような任意の数の可能性であり得る。
【0055】
別の実施形態では、ウイルスは、メタドヘリンタンパク質又はそのバリアントと結合される目的の物質であり得る。一実施形態では、ウイルスは、ワクシニア又は他のポックスウイルス、レトロウイルス又はアデノウイルスである。遺伝子療法用のための遺伝物質を送達するためのウイルスの使用は当該技術分野で既知であり、例えば、Panicali等(米国特許第5,656,465号、1997年8月12日発行)(その全体が参照により本明細書に援用される)を参照されたい。一実施形態は、メタドヘリンが、fuse5等のファージベクターへクローニングされることを包含し(例えば、Ruoslahti等、米国特許第6,610,651号、2003年8月26日発行(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されるように)、ここでは、発現時に、コードペプチドは、ファージの表面上で融合タンパク質として発現され、したがって、メタドヘリン受容体を有する領域へのファージの局在化を導く。一実施形態では、ウイルスは、遺伝子療法を可能にする材料を含有する。当該材料は、疾患細胞を救済し得るか、又は死滅し得る。別の実施形態では、ウイルスは、腫瘍の診断用イメージングを可能にする材料を含有する。メタドヘリンのレベルが癌の危険性を示すため、当該材料は、癌を検出する際には含まれる必要はなく、単に緑色蛍光タンパク質等の検出可能なプローブであってもよい。しかしながら、別の実施形態では、ウイルス中の材料はまた、細胞上の異なるマーカーの存在を実際に検出するのに役立ち得る。
【0056】
幾つかの実施形態では、「連結エレメント」は、目的の物質にメタドヘリン又はメタドヘリンバリアントを結合させるのに使用される。2つの分子を結合させることができる多くの代替法が存在することは、当業者に理解されよう。連結エレメントは、光切断可能な結合等の特定の所望の特性を有する複雑な分子であってもよく、或いはそれは、ジスルフィド結合のように簡素であってもよい。別の分子又は目的の物質がメタドヘリン又はメタドヘリンバリアントに結合されると、結合体の形成をもたらす。「結合体」という用語は、目的の物質及び別の化合物又は分子の両方の結合を示すことを意味する。一実施形態では、「結合体」という用語は、メタドヘリン又はメタドヘリンバリアントと結合された目的の物質を示すことを意味する。別の実施形態では、「結合体」という用語は、メタドヘリン又はメタドヘリンバリアントに対する抗体と結合された目的の物質を示すことを意味する。別の実施形態では、「結合体」という用語は、メタドヘリンの結合性作用物質と結合された目的の物質を示すことを意味する。結合体は、本明細書中に記載するように、或いは当業者に理解されるように、さらに定義されてもよい。
【0057】
一実施形態では、本発明の融合タンパク質をコードするDNA配列は、メタドヘリン及び第2のポリペプチドをコードする別個のDNA配列を適切な発現ベクターと組み合わせ構築する既知の組換え技法を使用して構築される。メタドヘリンをコードするDNA配列
の3’末端は、ペプチドリンカーの存在下又は非存在下で、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の5’末端へ連結されて、その結果、配列のリーディングフレームは、同調し、2つのDNA配列からメタドヘリン及び第2のポリペプチドの両方の生物活性を保持する単一の融合タンパク質へのmRNA翻訳を可能にする。当業者に理解されるように、メタドヘリン分子のほんの一部が、融合タンパク質に含まれる必要がある。好ましい実施形態では、配列番号1のアミノ酸378〜440のみが使用される。
【0058】
ペプチドリンカー配列を使用して、各ポリペプチドが確実にその二次及び三次構造へフォールドするのに十分な距離で、第1及び第2のポリペプチドを分離させてもよい。このようなペプチドリンカー配列は、当該技術分野で既知の標準的な技法を用いて、融合タンパク質へ組み込まれる。適切なペプチドリンカー配列は、以下の要因に基づいて選択され得る:(1)柔軟な伸長コンホメーションをとることができること、(2)第1及び第2のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用することができる二次構造をとることができないこと、及び(3)ポリペプチド機能的エピトープと反応し得る疎水性又は荷電残基を持たないこと。好ましいペプチドリンカー配列は、Gly、Asn及びSer残基を含有する。Thr及びAla等の他のほぼ中性のアミノ酸もまた、リンカー配列に使用され得る。リンカーとして有用に使用され得るアミノ酸配列としては、Maratea et al., Gene 40:39-46, 1985、Murphy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262, 1986、米国特許第4,935,233号及び米国特許第4,751,180号に開示されるものが挙げられる。リンカー配列は、1〜約50アミノ酸長であり得る。第1及び第2のポリペプチドが、機能的ドメインを分離させて、且つ立体障害を防止するのに使用することができる非必須N末端アミノ酸領域を有する場合にはペプチド配列は必要とされない。
【0059】
連結されたDNA配列は、適切な転写又は翻訳調節エレメントへ操作可能に連結される。DNAの発現を担う調節エレメントは、第1のポリペプチドをコードするDNA配列の5’のみに位置付けられる。同様に、翻訳及び転写終結シグナルを終結させるのに必要とされる終止コドンは、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3’のみに存在する。メタドヘリンポリペプチドは、ヌクレオチド配列において第1のポリペプチドである必要はない。
【0060】
一実施形態では、第2のポリヌクレオチドによりコードされる第2のポリペプチドは、メタドヘリンに目的の物質を接着させるための手段であり、したがって、目的の物質がヌクレオチドベースでない場合でさえも、メタドヘリンが目的の物質を肺へ導くことを可能にする。この実施形態の第2のポリペプチドは、独自の結合能力を有し得るか、或いは単に他の結合物により容易に結合される分子であり得る。
【0061】
代替的実施形態では、リンカー又は第2のポリペプチドは包含されないが、目的の物質は存在する。所望の物質は、それ自体がメタドヘリンポリペプチドと結合又は会合する能力を有する。さらに好ましい実施形態では、目的の物質自体がメタドヘリンへ結合する方法は、メタドヘリンの肺結合ドメインを遮断しない。別の好ましい実施形態では、メタドヘリンの378〜440残基は、目的の物質とメタドヘリンとの結合により遮断されない。「肺結合ドメイン」とは、メタドヘリンがその受容体に結合する構造を意味する。状況に応じて、この構造は、核酸構造、アミノ酸構造又は肺結合ドメインの三次元形状に類似している非タンパク質構造であり得る。「肺結合ドメイン」は、単に肺に位置する受容体に結合するドメインであるということを意味しない。一実施形態では、「肺結合ドメイン」は、他の臓器に位置する類似のメタドヘリン受容体に結合し得る。一実施形態では、肺結合ドメインは、肝臓における類似の受容体へ結合し得る。一実施形態では、肺結合ドメインはまた、肝臓における異なる受容体へも結合する。当業者に理解されるように、肺を用いたメタドヘリンの使用に適用する本明細書中の実施形態のすべてはまた、メタドヘリンに結合する受容体を有効なレベルまで発現する他の臓器へも適用され得る。例えば、メ
タドヘリン又はそのバリアントが肝臓における受容体へも結合する場合、メタドヘリン又はそのバリアントは、肺診断に関して本明細書中に記載するように、診断薬として使用することができるか、或いはメタドヘリン又はそのバリアントは、乳癌の拡大を停止させることに関して本明細書中で記載されるように、癌の肝臓への広がりを停止させるのに使用することができる。当業者は、身体中の特定の位置への局在化に対してなされるはずの変化を理解するであろう。
【0062】
一実施形態では、本発明の結合体へ組み込まれる目的の物質は、治療用作用物質である。本明細書中で使用する場合、「治療用作用物質」という用語は、正常又は病的組織において1つ又はそれ以上の生物活性を有する分子を意味する。様々な治療用作用物質が、本発明の結合体中に包含され得る。一実施形態では、メタドヘリン又はそのバリアントの結合体は、癌化学療法剤を含有する。本明細書中で使用する場合、「癌化学療法剤」は、癌細胞の増殖、成長、寿命又は転移活性を阻害する化学的作用物質である。このような癌化学療法剤は、ドセタキセル等のタキサン、ドキソルビシン等のアントラサイクリン、アルキル化剤、ビンカアルカロイド、代謝拮抗物質、シスプラチン又はカルボプラチン等の白金系薬剤、メトトレキサート等のステロイド、アドリアマイシン等の抗生物質、イホスファミド、又は選択的エストロゲン受容体モジュレータ、トランスツズマブ等の抗体であり得るが、これらに限定されない。
【0063】
一実施形態では、タキサンは、本発明の結合体で有用な化学療法剤である。有用なタキサンとしては、ドセタキセル(Taxotere, Aventis Pharmaceuticals, Inc., Parsippany,
NJ)及びパクリタキセル(Taxol, Bristol Myers Squibb, Princeton, NJ)が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Chan et al., J. Clin. Oncol. 17:2341-2354 (1999)を参照されたい。
【0064】
一実施形態では、本発明の結合体において有用な癌化学療法剤は、ドキソルビシン、イダルビシン又はダウノルビシン等のアントラサイクリンである。ドキソルビシンは、一般的に使用される癌療法剤であり、例えば乳癌を治療するのに有用であり得る(Stewart and
Ratain, Cancer: Principles and practice of oncology 5th ed., Chap.19 (eds. DeVita, Jr., et al.; J.P. Lippincott 1997);Harris et al., Cancer: Principles and practice of oncology, supra, 1997)。さらに、ドキソルビシンは、抗血管新生活性を有し(Folkman, Nature Biotechnology 15: 510 (1997)、Steiner, Angiogenesis: Key principles Science, technology and medicine pp. 449-454 (eds. Streiner et al.; Birkhauser Verlag, 1992))、これは、癌を治療する際にその有効性に寄与し得る。
【0065】
一実施形態では、メルファラン又はクロラムブシル等のアルキル化剤は、本発明の結合体において有用な癌化学療法剤である。同様に、ビンデシン、ビンブラスチン又はビノレルビン等のビンカアルカロイド又は5フルオロウラシル、5フルオロウリジン又はそれらの誘導体等の代謝拮抗物質は、本発明の結合体において有用な癌化学療法剤であり得る。
【0066】
一実施形態では、白金系薬剤は、本発明の結合体において有用な癌化学療法剤である。このような白金系薬剤は、例えばCrown, Seminars in Oncol. 28:28-37 (2001)に記載されるように、例えばシスプラチン又はカルボプラチンであり得る。本発明の結合体で有用な他の癌化学療法剤としては、メトトレキサート、マイトマイシンC、アドリアマイシン、イホスファミド及びアンサマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
一実施形態では、乳癌又は他のホルモン依存性癌の治療のための癌化学療法剤は、エストロゲンの影響に拮抗する、選択的エストロゲン受容体モジュレータ又は抗エストロゲン等の作用物質である。選択的エストロゲン受容体モジュレータであるタモキシフェンは、乳癌の治療のために本発明の結合体において使用することができる癌化学療法剤である(F
isher et al., J. Natl. Cancer Instit. 90:1371 1388 (1998))。
【0068】
一実施形態では、本発明の結合体において有用な治療用作用物質は、ヒト化モノクローナル抗体等の抗体である。非限定的な例として、抗上皮成長因子受容体2(HER2)抗体であるトランスツズマブ(Herceptin, Genentech, South San Francisco, CA)は、HER2/neuを過剰に発現する乳癌を治療するために本発明の結合体において有用な治療用作用物質である(White et al., Annu. Rev. Med. 52:125-141(2001))。
【0069】
一実施形態では、本発明で有用な治療用作用物質は、細胞傷害剤(cyctoxic agent)である。本明細書中で使用する場合「細胞傷害剤」は、細胞死を直接的又は間接的に促進する任意の分子である。本発明で有用な細胞傷害剤としては、小分子、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド擬似体、核酸分子、細胞及びウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例として、本発明で有用な細胞傷害剤としては、ドキソルビシン、ドセタキセル又はトランスツズマブ等の細胞傷害性小分子;以下でさらに記載されるもの等の抗菌ペプチド;カスパーゼ及び毒素等のアポトーシス促進性ポリペプチド、例えば、カスパーゼ8;ジフテリア毒素A鎖、シュードモナス属(Pseudomonas)エクソトキシンA、コレラ毒素、DAB389EGF等のリガンド融合毒素、トウゴマ(ricinus communis)毒素(リシン)及び細胞傷害性T細胞等の細胞傷害性細胞が挙げられる。例えば、Martin et al., Cancer Res. 60:3218-3224 (2000); Kreitman and Pastan, Blood 90:252-259 (1997); Allam et al., Cancer Res. 57:2615-2618 (1997)及びOsborne and Coronado Heinsohn, Cancer J. Sci. Am. 2:175(1996)を参照されたい。本明細書中に記載されるか、又は当該技術分野で既知のこれらの及びさらなる細胞傷害剤は、本発明の結合体及び方法において有用であり得ることを当業者は理解する。
【0070】
一実施形態では、治療用作用物質は治療用ポリペプチドである。本明細書中で使用する場合、「治療用ポリペプチド」は生物学的に有用な機能を有する任意のポリペプチドである。本発明で有用な治療用ポリペプチドとしては、サイトカイン、抗体、細胞傷害性ポリペプチド、アポトーシス促進性ポリペプチド及び抗血管新生ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例としては、本発明で有用な治療用ポリペプチドは、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G CSF)、インターフェロンα(IFN α)、インターフェロンγ(IFN γ)、インターロイキン1(IL 1)、インターロイキン2(IL 2)、インターロイキン3(IL 3)、インターロイキン4(IL 4)、インターロイキン6(IL 6)、インターロイキン7(IL 7)、インターロイキン10(IL 10)、インターロイキン12(IL 12)、リンホタクチン(LTN)又は樹状細胞ケモカイン1(DC CK1)等のサイトカイン;抗HER抗体又はそのフラグメント;ジフテリア毒素A、シュードモナス属エクソトキシンA、コレラ毒素、DAB389EGF又はリシンのようなリガンド融合毒素等の毒素又はカスパーゼを含む細胞障害性ポリペプチド;又はアンジオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン、血小板因子4、アナステリン等の抗血管新生ポリペプチド、或いは本明細書中でさらに記載するか、又は当該技術分野で既知のもののうちの1つ(以下を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
「化合物」という用語は、多種多様な物質を示すことが意味され、例えば、毒素、作用物質、細胞傷害性作用物質、siRNA、治療用作用物質、抗体、結合性作用物質、メタドヘリン受容体タンパク質、メタドヘリン受容体核酸配列、メタドヘリンアミノ酸配列及びメタドヘリン核酸配列、メタドヘリン肺結合ドメイン、並びにそれらのバリアントを包含することができる。ある特定のグループ又はサブグループはこの用語の使い方に依存する。
【0072】
「作用物質」という用語は、メタドヘリンタンパク質又はヌクレオチド配列と結合される分子の存在を示し得る。しかしながら、状況によっては、作用物質という用語はまた、メタドヘリンのタンパク質又は核酸配列を包含する。
【0073】
「試験化合物」は、in vivo、in vitro、in silico、或いは任意の様式により、メタドヘリンがその受容体へ結合する場合に存在するように投与することができる。試験化合物は、メタドヘリンとその受容体との間の相互作用を阻害することができる(部分的に又は完全に)か、或いはメタドヘリンとその受容体との相互作用を妨害することができない。試験化合物としては、上記作用物質、抗体、siRNA、治療薬等を挙げることができる。首尾よい試験化合物は、メタドヘリンとその受容体との間の機能的相互作用を阻害する化合物である。したがって、結合は依然として起こり得るが、結合は、メタドヘリンが転移において機能することが可能であるのに十分でない。或いは、首尾よい試験化合物は、in vivo条件及び濃縮下で、メタドヘリンの、その受容体への結合を効果的に妨げ得る。或いは、結合することができるメタドヘリンが存在しないか、又はその量が低減されるため、結合は簡単には行われ得ない。首尾よい試験組成物の例としては、肺結合ドメインのバリアント、siRNA、ペプチド擬似体、並びに様々な作用物質及び治療薬を挙げることができる。
【0074】
メタドヘリン
以下で及び実施例で記載するように、ファージに肺組織を選択的に標的とさせるタンパク質が発見され、「メタドヘリン」と称された。このタンパク質の核酸配列は、配列番号2(マウス)及び配列番号16(ヒト)に示される。このタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1(マウス)及び配列番号13(ヒト)に示される。図1Aはメタドヘリン配列を表示し、このタンパク質における推定上の肺ホーミングドメインを特定する。図1Bは、このタンパク質の疎水性プロットを示し、このタンパク質の様々な構造的特徴を示唆する。mycエピトープタグをこのタンパク質へ挿入することにより(例えば、図1Cに示すように)、このタンパク質は、細胞接着に関与する細胞外ドメインを有することが見出された。このドメインは、ファージに肺組織を標的とさせるだけでなく、メタドヘリンを過剰発現している細胞を肺組織へと局在化させることが見出された。
【0075】
メタドヘリンの高発現は、培養腫瘍細胞において、並びに実験的及び臨床的乳癌の両方において見られた。正常な胸部組織及び他の正常な組織における発現が、メタドヘリンに特異的な抗体で検出した場合に低いという点で、メタドヘリンの高発現は癌に対して選択的であった。
【0076】
免疫染色により、メタドヘリンが乳癌組織及び胸部腫瘍異種移植片において高度に発現されることが明らかとなった。以下で説明するように、メタドヘリンの肺ホーミングドメイン(配列番号3)に対して反応する抗体は、実験的肺転移を阻害し、腫瘍細胞の表面上で発現されるメタドヘリンが、転移部位で、局在化及び場合によっては成長を媒介することを示した。さらに、乳癌細胞におけるメタドヘリン発現のsiRNA媒介性阻害は同様に、実験的肺転移を阻害することが発見された。
【0077】
メタドヘリンは、肺血管系の特異的マーカーを検出し、それを標的とするようである。メタドヘリンを提示するファージは、肺血管系中に蓄積し、様々な血管床の中でも、それは、主として肺内皮へ結合することを示唆する。メタドヘリンファージの、肺血管系を特異的に標的とする能力は、様々な血管床の中でも、メタドヘリン受容体は、主として肺内皮上で発現されることを示唆する。
【0078】
したがって、メタドヘリンは、癌転移において重要な役割を果たすようであり、またメタドヘリンの有効性を変化させる化合物及び方法は、それにより、癌転移及びその危険性
を変化並びに低減させるのに使用できることが見出された。
【0079】
腫瘍細胞転移におけるメタドヘリンの重要性は、乳癌に限定されない。全米バイオテクノロジー情報センターでの癌ゲノム詳細解析プロジェクト(The Cancer Genome Anatomy Project)の構成要素であるSAGEmap(Lal, A., et al., Cancer Res 59:5403-5407 (1999); Lash, A.E., et al., Genome Res 10:1051-1060 (2000))を使用して、メタドヘリンmRNAが、脳及び前立腺の癌において有意に過剰発現される(P<0.05)ことが決定された。このことは、メタドヘリンがこれらの癌の転移においても同様に役割を果たし得ることを示唆する。したがって、本明細書中に記載する一般的な方法及び組成物は、乳癌に対してだけでなく、メタドヘリンのレベルの上昇を伴う任意の癌に使用され得る。
【0080】
メタドヘリンは、哺乳類間で保存され、BLASTアルゴリズム(Altschul, S.F., et al., Nucleic Acids Res 25: 3389-3402 (1997))を用いることで、GenBankTMデータベースにおいて、さらなるマウス及びヒトメタドヘリン様分子が存在することが決定された。
【0081】
幾つかの実施形態では、メタドヘリンタンパク質又はそのバリアントは、続いて表面上でメタドヘリンを発現する細胞中で発現させることができ、したがって、肺組織へのこれらの細胞の局在化を可能にする。一実施形態では、メタドヘリンの肺結合ドメインのみが、肺へ送達されるべき細胞上で発現される必要がある。このようなホーミング細胞を創出する簡素な方法は、細胞にメタドヘリン、メタドヘリンの肺結合ドメイン又はメタドヘリンのキメラをその細胞表面上で発現させた後、その細胞を患者へ投与することである。代替的実施形態では、メタドヘリン分子は細胞上で発現されないが、その代わりに細胞と結合される。ペプチドを細胞と結合させる多くの方法が存在するが、メタドヘリンペプチド及び細胞上の特定の分子へ結合するリンカーは、このような結合を創出する1つの一般的な方法である。リンカーは、細胞上の特定のタンパク質又は分子へ結合することができるか、或いはリンカーは、細胞膜へ無差別に結合することができる。
【0082】
他の実施形態では、メタドヘリン又はバリアント若しくはそれらのフラグメントは、転移を停止させるのに使用することができる。メタドヘリンペプチドは、肺又は乳癌を有する患者へ投与して、転移の危険性を停止又は低減させることができる。以下で論述するようにメタドヘリンタンパク質は、様々な方法で投与することができ、メタドヘリン分子は最終的にはそれ自身で肺組織へ局在化するので、肺へ直接的に、或いは他の場所へ投与することができる。任意の機能的バリアントもまた肺へ局在化するため、全メタドヘリンタンパク質が投与される必要はない。メタドヘリン又はそのバリアントは、肺におけるメタドヘリン受容体の相当量を阻害するのに十分な量で肺組織に投与され、その後メタドヘリン分子が肺組織へ局在化するのを防ぎ得る。或いは、メタドヘリン受容体又はそのバリアントは癌性細胞上のメタドヘリンへ結合するために、初期腫瘍又は肺組織へ添加されてもよい。これは順次、癌性細胞上のメタドヘリンが肺組織上の受容体へ結合するのを防ぎ、それにより肺への腫瘍転移を防止する。
【0083】
好ましい実施形態では、メタドヘリンの肺結合ドメインは、患者におけるフラグメントと未知の標的との間で起こる任意の非特異的結合の機会を低減させるために、患者へ投与される。「フラグメント」が本明細書中で使用する場合、「バリアント」の一部である。換言すると、バリアントはフラグメントではない種を包含し得る。好ましい実施形態では、無細胞メタドヘリンのみが肺へ投与されて、その結果メタドヘリンの肺組織表面への結合は、任意の局所組織に対して最小限の影響を有する。メタドヘリン又はメタドヘリンフラグメントは肺へ局在化して、肺に存在するメタドヘリン受容体を占有して、メタドヘリン受容体を介して肺組織と結合する癌細胞が、肺へ局在化するのを防ぎ、転移を防ぐ。当業者に理解されるように、ペプチド又は完全長タンパク質が、ペプチドとして投与される
必要はなく、後にin vivoで発現される核酸形態で投与することができる。
【0084】
代替的実施形態では、メタドヘリンを結合して、メタドヘリンの翻訳を阻害するアンチセンスRNAは、転移性又は潜在的に転移性の腫瘍を治療するのに使用される。好ましい実施形態では、RNAは、メタドヘリンタンパク質の有効な生産を妨げるアンチセンスRNAである。代替的実施形態では、低分子干渉RNA(siRNAs)は、転移性腫瘍を治療するのに使用される。siRNAの構造及び活性は、Bosher等(Nature Cell Biol. 2:E31, 2000)及びC.P. Hunter(Curr. Biol. 9:R440, 1990)により概説されている。このようなsiRNA複合体は、メタドヘリンをコードするmRNAの翻訳を特異的に阻害するメタドヘリンセンス及びアンチセンスポリヌクレオチドを有する二本鎖RNA分子を含む。siRNAを使用又は創出するためのキット及び指示書は当該産業で豊富であり、多くの会社で入手可能である。例えば、Ambion(Austin, Texas)は、「Silencer siRNA construction Kit」等のin vitroでのsiRNA生産用の幾つかのキットを作製している。以下に記載するように、siRNAを作製するためのpSilencer 3.0−H1プラスミド及びAmbionベクターは、転移性乳癌を低減させるのに有効に使用された。
【0085】
メタドヘリン又は融合タンパク質を含むメタドヘリンバリアントは、薬学的組成物及び/又はワクチン内に存在し得る。薬学的組成物は、1つ又はそれ以上のポリペプチドを含んでもよく、それらはそれぞれ、1つ又はそれ以上のメタドヘリン、及び生理学的に許容性のある担体を含有し得る。薬学的組成物はまた、小分子、抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド、アンチセンスRNA及びsiRNAを含み得る。
【0086】
絶えず抗体を生産して、メタドヘリン結合を阻止するために、身体に、メタドヘリン自身に対する抗体を作製させることが望ましい状況が存在し得る。このような場合では、メタドヘリンに対するワクチンを作製するために、メタドヘリン又はそれらのバリアントを使用してもよい。ワクチンは、1つ又はそれ以上のメタドヘリン及び非特異的免疫応答エンハンサーを含んでもよく、ここで非特異的免疫応答エンハンサーは、メタドヘリンに対する免疫応答を誘発又は増強することが可能である。非特異的免疫応答エンハンサーの例としては、アジュバント、生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ガラクチド)及びリポソーム(ポリペプチドがそこへ組み込まれる)が挙げられる。薬学的組成物及びワクチンはまた、コンビネーションポリペプチド(すなわち、多数のエピトープを含有する単一ポリペプチド)へ組み込まれるか、又は別個のポリペプチド内に存在する、胸部腫瘍抗原の他のエピトープを含有し得る。
【0087】
或いは、薬学的組成物又はワクチンは、メタドヘリンがin situで生成されるように、1つ又はそれ以上のメタドヘリンをコードするDNAを含有してもよい。このような薬学的組成物及びワクチンにおいて、DNAは、核酸発現系、細菌及びウイルス発現系を含む当業者に既知の様々な送達系のいずれか内に存在し得る。適切な核酸発現系は、患者において発現に必須のDNA配列(例えば、適切なプロモーター)を含有する。細菌送達系は、その細胞表面上で胸部腫瘍細胞抗原のエピトープを発現する細菌(例えば、カルメット・ゲラン桿菌)の投与を包含する。好ましい実施形態では、DNAは、ウイルス発現系(例えば、ワクシニア又は他のポックスウイルス、レトロウイルス又はアデノウイルス)を用いて導入されてもよく、これは、非病原性(欠陥性)複製コンピテントウイルスの使用を包含し得る。適切な系は、例えば、Fisher-Hoch et al., PNAS 86:317-321, 1989、Flexner et al., Ann. N.Y. Acad Sci. 569:86-103, 1989; Flexner et al., Vaccine
8:17-21, 1990; 米国特許第4,603,112号; 第4,769,330号及び第5,017,487号; WO 89/01973号; 米国特許第4,777,127号; 英国特許第2,200,651号; 欧州特許第0,345,242号; WO 91/02805号; Berkner, Biotechniquies 6:616-627, 1988; Rosenfeld et al., Science 252: 43
1-434, 1991; Kolls et al., PNAS 91:215-219, 1994; Kass-Eisler et al., PNAS 90:11498-11502, 1993; Guzman et al., Circulation 88:2838-2848, 1993; 及びGuzman et al., Cir. Res. 73:1202-1207, 1993に開示されている。このような発現系へDNAを組み込むための技法は当業者に既知である。例えば公開済みのPCT出願WO 90/11092号及びUlmer et al., Science 259: 1745-1749, 1993に記載され、Cohen, Science 259:1691-1692, 1993により概説されるように、DNAはまた「裸」であってもよい。裸のDNAの取り込みは、生分解性ビーズ上へDNAをコーティングすることにより増大され得て、これは効率的に細胞へ輸送される。
【0088】
投与の経路及び頻度、並びに投与量は、個人によって様々であり、他の疾患に現在使用されているものと平行させてもよい。概して、薬学的組成物及びワクチンは、注射により(例えば、皮内、筋内、静脈内又は皮下)、鼻内的に(例えば、吸入)又は経口的に投与され得る。
【0089】
当業者に既知の任意の適切な担体は、本発明の薬学的組成物において使用され得るが、担体のタイプは投与の様式に応じて様々である。皮下注射のような非経口投与に関しては、担体は好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、脂質、ワックス及び/又は緩衝液を含む。経口投与に関して、上記担体又はマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース及び/又は炭酸マグネシウム等の固体担体のいずれが使用され得る。生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸グリコライド)がまた、本発明の薬学的組成物用の担体として使用され得る。適切な生分解性ミクロスフェアは、例えば米国特許第4,897,268号及び同第5,075,109号に開示されている。
【0090】
さらなる実施形態では、上記実施形態は、転移を停止させるための治療、癌の広がりの存在又は危険性を診断するための試験、或いはその両方を施すためのキットにおいて組み合わせられる。1つの好ましい実施形態では、担体及びメタドヘリンバリアント又は以下に記載するような結合性作用物質は、丸剤形態を提供するように組み合わせられ、続いて、癌転移の防止のための均一な投与量を可能にするようにパッケージングされる。1つの好ましい実施形態では、肺癌の転移を停止させるための治療用のキットは、本発明の多数の実施形態を包含する。それは、メタドヘリンのフラグメントのような、転移を防止するためのメタドヘリンベースのデバイスや、系において本来残存しているメタドヘリンの量を検出するためのメタドヘリンベースのデバイス、及びおそらくメタドヘリンに対する抗体検出系を包含し得る。
【0091】
異なる実施形態では、上述の結合体及び治療用作用物質、並びに以下で論述する結合性作用物質は、腫瘍転移を画像化する方法で使用することができる。一実施形態では、結合性作用物質はまた、メタドヘリンが、その受容体に結合するのを阻害する。
【0092】
結合体及び作用物質は、胸部、卵巣、脳、結腸、腎臓、肺、肝臓、膀胱及び前立腺腫瘍並びに黒色腫を含む様々な腫瘍と関連する転移腫瘍細胞の存在を検出するのに有用である。検出可能な作用物質を含有する作用物質又は結合体の投与後に、腫瘍転移は可視化される。画像が腫瘍転移の存在に関して陽性である場合、腫瘍はさらなる処理に関して評価され得る。これらの結果は癌の発達段階及び転移の存在又は蓋然性に関して、臨床医に有価な情報を提供する。
【0093】
一実施形態では、腫瘍リンパ管系を画像化する方法が提供される。投与される結合体又は作用物質は、腫瘍において及び腫瘍周辺で、例えば胸部において及び胸部腫瘍周辺で、脈管系の検出又は可視化を可能にする検出可能な作用物質を含有する。腫瘍転移のin vivo診断用イメージングに関して、メタドヘリン、そのバリアント若しくはメタドヘ
リン受容体に結合するペプチド又は他の作用物質は、被験体へ投与されると検出可能な作用物質へ連結され、被験体に対して外部で検出される。一実施形態では、このような検出可能な作用物質は、例えば、インジウム113、インジウム115又はテクネチウム99等のγ線放出核種であってもよく、被験体への投与後に、結合体又は作用物質は、固体シンチレーション検出器を用いて可視化され得る。
【0094】
様々な検出可能な作用物質が本発明の方法で有用である。本明細書中で使用する場合、「検出可能な作用物質」という用語は、in vivoで投与することができ、続いて検出することができる任意の分子を指す。一実施形態では、上記実施形態の画像化方法で有用な検出可能な作用物質としては、放射性作用物質及び比色性作用物質が挙げられるが、これらに限定されない、例示的な放射性作用物質としては、インジウム111、テクネチウム99、炭素11及び炭素13が挙げられる。本発明で有用な蛍光分子は、フルオレセイン、アロフィコシアニン、フィコエリトリン、ローダミン及びテキサスレッドを包含するが、これらに限定されない。
【0095】
別の実施形態では、この方法で使用される作用物質及び結合体は、メタドヘリンの肺結合ドメインに対する擬似体、並びに検出可能な作用物質を含む。
【0096】
一実施形態では、メタドヘリン又はそのバリアントは、抗体又はそれらのフラグメント等の結合性作用物質を生成するのに使用され得る。好ましい実施形態では、これらの結合性作用物質は、ヒト胸部若しくは肺腫瘍の転移を検出又は防ぐことが可能である。本発明の結合性作用物質は概して、本明細書中に記載する代表的な手順を含む、当業者に既知の方法を用いて調製され得る。一実施形態では、結合性作用物質は、本明細書中に記載する代表的なアッセイを使用して、肺又は乳癌を有する患者と有さない患者とを識別することが可能である。換言すると、メタドヘリン若しくはその適切なバリアントへ結合する抗体又は他の結合性作用物質は、肺又は乳癌の存在を示すシグナルを発生する。異なる実施形態では、結合性作用物質の重要性は、癌の存在又は非存在を識別することにはなく、結合性作用物質がいかに効率的にメタドヘリンへ結合するかどうかにある。
【0097】
メタドヘリン又はメタドヘリンバリアントの、腫瘍を検出することが可能な抗体を生成する能力は概して、メタドヘリン又はメタドヘリンバリアントに対する1つ又はそれ以上の抗体を産生すること、及び、患者の腫瘍を検出する抗体の能力を決定することにより評価され得る。この決定は、生成された抗体により結合されるメタドヘリンの存在に関して、癌を有する患者及び癌を有さない患者からの生物学的サンプルをアッセイすることにより成され得る。このような試験アッセイは、例えば以下に記載するような代表的な手順を使用して実施され得る。このような手順により腫瘍を検出することが可能な抗体は、有用であるとみなされる。さらなる好ましい実施形態では、このような手順により腫瘍の少なくとも20%を検出することが可能な抗体を生成するメタドヘリンバリアント又はフラグメントは、転移性ヒト肺又は胸部腫瘍を検出するためのアッセイにおいて非常に有用であるとみなされる。抗体は、単独で使用してもよく、或いは感受性を改善するために組み合わせて使用してもよい。
【0098】
メタドヘリンは、患者の癌を診断するため、或いは疾患の進行をモニタリングするためのマーカーとして使用され得る。一実施形態では、患者における癌は、予め決定したカットオフ値に対して、メタドヘリンのレベルに関して患者から得られる生物学的サンプルを評価することにより診断され得る。本明細書中で使用する場合、適切な「生物学的サンプル」としては、血液、血清、尿並びにより伝統的な組織サンプルが挙げられる。好ましい実施形態では、サンプルは、肺組織サンプルである。
【0099】
メタドヘリンのレベルは、メタドヘリンに特異的な任意の結合性作用物質を使用して評
価され得る。「結合性作用物質」は、本発明の状況では、メタドヘリンに結合する任意の作用物質(例えば、化合物又は細胞)である。本明細書中で使用する場合、「結合」は、「複合体」が形成されるような、2つの別個の分子(これらはそれぞれ、遊離(すなわち、溶液状態)であり得るか、或いは細胞又は固体支持体の表面上に存在し得る)間の結合を指す。このような複合体は、遊離であり得るか、或いは支持体材料上に固定化され得る(共有結合的に又は非共有結合的に)。結合する能力は一般的に、複合体の形成に関して結合定数を決定することにより評価され得る。結合定数は、複合体の濃度を構成成分濃度の積で除算した場合に得られる結果である。好ましい実施形態では、2つの化合物は、本発明の状況では、複合体形成に関する結合定数が約103L/molを超える場合に「結合」と考えられる。結合定数は、当業者に既知の方法を用いて決定され得る。結合は、ジスルフィド結合の形成を伴うような共有結合であり得るか、或いは、非共有結合であり得る。
【0100】
上記要件を満たす任意の作用物質が結合性作用物質であり得る。例えば、結合性作用物質は、ペプチド構成成分を伴うか又は伴わないリボソーム、RNA分子又はペプチドであり得る。本実施形態の結合性作用物質は、単独でメタドヘリンに結合する必要はない。一実施形態では、結合性作用物質は優先的にメタドヘリンへ結合する。「優先的に」とは、結合性作用物質が少なくとも1つの他の標的化合物へ結合するよりも強力に、優先してメタドヘリンに結合することを意味するに過ぎない。同様に、結合性作用物質がメタドヘリンに「特異的」である場合、結合性作用物質は、1つの他の材料に対して結合するよりも高い特異性でメタドヘリンへ結合することを意味するに過ぎない。当業者に理解されるように、結合性作用物質の任意の特定の用途において必要とされる特異性の度合いは、結合性作用物質が曝露される他の分子を含む多くの要因に依存する。
【0101】
好ましい実施形態では、結合性作用物質は抗体又はその結合性フラグメントである。このような抗体はポリクローナル又はモノクローナルであり得る。さらに、抗体は単鎖、キメラ、CDR−グラフト又はヒト化されたものであってもよい。抗体は、本明細書中に記載する方法により、及び当業者に既知の他の方法により調製され得る。
【0102】
サンプル中のメタドヘリンのような分子を検出するために結合パートナーを使用することに関して、当業者に既知の様々なアッセイ方式が存在する。例えば、Harlow and Lane,
Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harobor Laboratory, 1988を参照されたい。好ましい実施形態では、アッセイは、ポリペプチドへ結合し、ポリペプチドをサンプルの残部から除去するための、固体支持体上に固定された結合パートナーの使用を包含する。続いて、結合されたポリペプチドは、レポーター基を含有する第2の結合パートナーを使用して検出され得る。適切な第2の結合パートナーとしては、結合パートナー/ポリペプチド複合体に結合する抗体が挙げられる。或いは、競合アッセイを利用してもよく、ここでは、メタドヘリンはレポーター基で標識され、結合パートナーをサンプルとインキュベーションした後、固定化された結合パートナーに結合される。サンプルの構成成分が、結合パートナーに標識メタドヘリンが結合するのを阻害する程度は、固定化された結合パートナーとのサンプルの反応性を示す。
【0103】
固体支持体は、抗体が接着され得る当業者に既知の任意の材料であり得る。例えば、固体支持体は、マイクロタイタープレートにおける試験ウェル又はニトロセルロース若しくは他の適切な膜である。或いは、支持体は、ガラス、ガラス繊維、ラテックス又はポリスチレン若しくはポリ塩化ビニル等のプラスチック材料等のビーズ又はディスクであり得る。支持体はまた、例えば、米国特許第5,359,681号に開示されるもの等の磁気粒子又は光ファイバーセンサであり得る。結合性作用物質は、当業者に既知の様々な技法を使用して固体支持体上へ固定化されてもよく、これらは、特許及び科学文献において十分記載される。本発明の状況では、「固定化」という用語は、吸着等の非共有結合及び共有
結合(これは、抗原と支持体上の官能基との間の直接的な連結であってもよく、或いは架橋剤による連結であってもよい)の両方を指す。マイクロタイタープレートにおけるウェル又は膜への吸着による固定化が好ましい。このような場合では、吸着は適切な緩衝液中で、結合性作用物質を適切な時間、固体支持体と接触させることにより達成され得る。接触時間は温度により様々であるが、好ましい実施形態では、通常約1時間〜約1日である。概して、プラスチックマイクロタイタープレート(例えば、ポリスチレン又はポリ塩化ビニル)のウェルを約10ng〜約10マイクログラム、好ましくは約100ng〜約1マイクログラムの範囲の量の結合性作用物質と接触させることは、適切な量の結合性作用物質を固定化するのに十分である。
【0104】
固体支持体への結合性作用物質の共有結合は概して、まず支持体を、支持体及び結合性作用物質上のヒドロキシル又はアミノ基等の官能基の両方と反応する二価性試薬と反応させることにより達成され得る。例えば、結合性作用物質は、ベンゾキノンを使用して、或いは支持体上のアルデヒド基と結合パートナー上のアミン及び活性水素との縮合により、適切なポリマーコーティングを有する支持体へ共有結合され得る(例えば、Pierce Immunotechnology Catalog and Handbook, 1991, at A12-A13を参照)。
【0105】
ある特定の実施形態では、アッセイは2抗体サンドイッチアッセイである。このアッセイは、まず固体支持体、通常マイクロタイタープレートのウェル上に固定化されている抗体を、サンプル内のメタドヘリンのポリペプチド又はメタドヘリンのフラグメントを固定化された抗体へ結合させるように、サンプルと接触させることにより実施され得る。続いて、未結合のサンプルを、固体化されたメタドヘリン−抗体複合体から除去して、メタドヘリン上の異なる部位へ結合することが可能な第2の抗体(レポーター基を含有する)を添加する。次に、固体支持体に結合した状態のままである第2の抗体の量が、特異的なレポーター基に適した方法を使用して決定される。
【0106】
より具体的には、上述のように抗体が支持体上に固定化されると、支持体上の残存するタンパク質結合部位は通常遮断される。ウシ血清アルブミン又はTWEEN 20.TM.(Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)のような任意の適切な遮断用作用物質が当業者に既知である。続いて、固定化された抗体をサンプルとインキュベートして、メタドヘリン又はそのフラグメントを抗体に結合させる。サンプルはインキュベーション前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)のような適切な希釈剤で希釈されてもよい。概して、適切な接触時間は、癌を有する個体から得られるサンプル内のメタドヘリンの存在を検出するのに十分な期間である。好ましい実施形態では、接触時間は結合されたメタドヘリンと未結合のメタドヘリンとの間での平衡状態で達成されるレベルの少なくとも約95%である結合のレベルを達成するのに十分である。平衡を達成するのに必要な時間は、ある期間にわたって起きる結合のレベルをアッセイすることにより容易に決定され得ることは、当業者に理解されよう。一般的なガイドラインとしては、室温で、約30分のインキュベーション時間が一般的に十分である。
【0107】
次に、未結合のサンプルは、0.1%Tween 20.TM.を含有するPBSのような適切な緩衝液で固体支持体を洗浄することにより除去され得る。続いて、レポーター基を含有する第2の抗体が固体支持体へ添加され得る。好ましいレポーター基としては、酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ)、基質、補因子、阻害剤、色素、放射性核種、発光基、蛍光基及びビオチンが挙げられる。レポーター基への抗体の結合は、当業者に既知の標準的な方法を使用して達成され得る。
【0108】
次に、第2の抗体を、固定化された抗体−メタドヘリン複合体とともに、結合されたメタドヘリンを検出するのに十分な時間インキュベートさせる。適切な時間は概して、ある期間にわたって起きる結合のレベルをアッセイすることにより決定され得る。続いて、未
結合の第2の抗体は除去されて、結合された第2の抗体は、レポーター基を用いて検出さされる。レポーター基を検出するのに使用される方法は、レポーター基の性質に依存する。放射性基に関しては、シンチレーションカウンティング又はオートラジオグラフィ法が一般的に適切である。色素、発光基及び蛍光基を検出するのに、分光学的方法が使用され得る。ビオチンは、異なるレポーター基(通常、放射性若しくは蛍光基、又は酵素)にカップリングされたアビジンを用いて検出され得る。酵素レポーター基は概して、基質の添加(一般的に、特定の時間)、続く反応生成物の分光学的又は他の分析により検出され得る。
【0109】
患者における癌の広がりの危険性を決定するために、固体支持体へ結合された状態のままであるレポーター基から検出されるシグナルは一般的に、既定のカットオフ値に相当するシグナルと比較される。1つの好ましい実施形態では、カットオフ値は、固定された抗体が、癌を有さない患者由来のサンプルとともにインキュベートされる場合に得られる平均シグナルである。別の好ましい実施形態では、カットオフ値は、癌を有するが癌の広がりが起きていない患者の系におけるメタドヘリンの量により決定される。一実施形態では、シグナルを発生するサンプルがカットオフ値よりも高い場合、その組織において癌の転移の危険性が見られる。好ましい実施形態では、3回の標準偏差が既定のカットオフ値を上回るシグナルを発生するサンプルは、その臓器への癌の広がりの危険性に関して陽性であるとみなされる。代替的な好ましい実施形態では、カットオフ値は、Sackett et al., Clinical Epidemiology: A Basic Science for Clinical Medicine, Little Brown and Co., 1985, p. 106-7の方法に従って、受診者−操作者曲線(Receiver Operator Curve)を使用して決定される。簡潔に述べると、この実施形態では、カットオフ値は、診断試験結果に関してそれぞれ考え得るカットオフ値に相当する真の陽性割合(すなわち、感受性)及び偽陽性割合(100%特異性)の対のプロットから決定され得る。左側上隅に最も近いプロット上のカットオフ値(すなわち、最大面積を取り囲む値)は、最も正確なカットオフ値であり、この方法により決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、陽性であるとみなされ得る。或いは、カットオフ値は、プロットに沿って左へとシフトさせて、偽陽性の割合を最低限に抑えてもよく、或いは右へとシフトさせて、偽陰性の割合を最低限に抑えてもよい。概して、この方法により決定されるカットオフ値よりも高いシグナルを発生するサンプルは、癌に関して陽性であるとみなされる。代替的な好ましい実施形態では、カットオフ値は、固定化された抗体が、癌を有する患者由来のサンプルとともにインキュベートされる場合に得られる平均シグナルである。この実施形態では、検査されるサンプルからの結果は、既知の癌由来のサンプルと同程度大きいか、又はそれよりも大きい。
【0110】
別の実施形態では、メタドヘリンは、肺又は乳癌の進行に関するマーカーとして使用され得る。この実施形態では、癌の診断に関して上述されるようなアッセイを経時的に実施してもよく、メタドヘリンの量の変化が評価され得る。概して、肺又は乳癌は、結合性作用物質により検出されるメタドヘリンのレベルが経時的に増大する患者において進行中である。対比して、肺又は乳癌は、反応性メタドヘリンのレベルが一定のままであるか、又は経時的に減少する場合には進行中ではない。
【0111】
同様に、又は或いは、メタドヘリン又はそのバリアントはメタドヘリンの結合特性の変化を誘導することが可能な結合性作用物質を生成するのに使用され得る。このような結合性作用物質は、癌性細胞上にすでに存在するメタドヘリンポリペプチドに結合して、その結合特性を変更させることが可能である。その結果、癌性細胞の肺結合ドメインが有効に相殺され、癌は、患者の他のセクション、特に肺へ広がらない。好ましい実施形態では、結合性作用物質は、メタドヘリン受容体へのメタドヘリンの結合能力を阻害する。別の好ましい実施形態では、結合性作用物質はメタドヘリンの肺結合ドメインへ結合して、それを阻害する。代替的実施形態では、結合性作用物質は、メタドヘリン及びその受容体の結
合を実際に促進又は強化し得る。専門用語に関して十分に明瞭にするために、このような結合性作用物質は、単に結合性作用物質ではなく「結合増強作用物質」と称するべきである。一実施形態では、結合性作用物質はメタドヘリンに結合して、それを阻害する小分子である。別の実施形態では、結合性作用物質はペプチドである。別の実施形態では、結合性作用物質は抗体である。一実施形態では、結合性作用物質は、癌を治療するか、又は癌の広がりを防止するのに使用され得る。別の実施形態では、結合性作用物質は、本明細書中に記載するように、診断用イメージング方法において使用され得る。
【0112】
小分子、ペプチド、タンパク質又は抗体が、メタドヘリンの結合特性に対して影響を与えるかどうかを決定する多くの方法が存在する。概して、メタドヘリンの検出に関して前述する方法は、メタドヘリンの結合特性が結合性作用物質により変更されたかどうかを観察するのに有用である。このような作用物質の1つの例は、以下の実施例において実証される。好ましい実施形態では、メタドヘリンタンパク質及び考え得る結合性作用物質をまず、最終的な結合性作用物質の目的の特性に適した条件下でともに結合させて、複合体を形成させる。続いて、この複合体をメタドヘリン受容体へ曝露させる。これを行う様々な方法が存在する。1つの好ましい実施形態では、複合体は、細胞の表面上で発現された後、その細胞は動物へ注入されて、それが肺組織、特にメタドヘリン受容体へ局在化するかどうかを確認する。結合性作用物質の存在が、肺上へ局在化される細胞の数を低減させる場合、その結合性作用物質は、メタドヘリンの結合能力を調節する有効な結合性作用物質である。
【0113】
代替的な好ましい実施形態では、類似のプロセスは作用物質がメタドヘリン活性を調節するための有効な手段であるかどうか、換言すると活性調節性作用物質であるかどうかを実証する。これは、メタドヘリンを発現する癌性細胞が、問題となっている考え得る活性調節性作用物質への曝露後又は中に、依然として肺へ局在化することができるかどうかを決定することにより試験され得る。
【0114】
一実施形態では、腫瘍転移を変更させる化合物(例えば、試験化合物)をスクリーニングする方法が提供される。上記実施形態は、第1の試験化合物を選択すること、メタドヘリンポリペプチド、そのバリアント又はフラグメント及びメタドヘリン受容体の存在下で第1の試験化合物を接触させること、続いて第1の化合物が、メタドヘリン受容体へのメタドヘリンポリペプチド、バリアント又はフラグメントの結合に影響を及ぼすかどうかを決定することを含む。代替的実施形態では、観察されるべき影響は、メタドヘリンへ受容体への化合物の結合を単に観察するのではなく、腫瘍転移が起きるかどうかを決定することであり得る。一実施形態では、メタドヘリン受容体は、肺血管系上に位置する。
【0115】
さらなる実施形態では、上記実施形態における作用物質を識別すること、すなわち、作用物質が、受容体へのメタドヘリンの結合を阻害することによりメタドヘリン局在化を低減させる結合性作用物質であるかどうか、或いは作用物質が、おそらくあまり直接的でない手段により局所化を低減させる活性調節性作用物質であるかどうかを決定することが望ましい場合がある。これらは、活性低減性作用物質が同様に結合性作用物質を包含し得る場合に、必ずしも別個の群であるとは限らない。しかしながら、当業者に理解されるように、直接的な結合反応と、おそらく停止に至る反応のカスケードとを識別するのを助長するのに、当該技術分野において多くの方法が存在する。簡単な例は、作用物質の存在が、メタドヘリン受容体(上記受容体の供給源は、本特許で同定される肺細胞である)による結合を防止するかどうかを観察するために、BiaCORETM2000表面プラズモン共鳴デバイス(BIAcore, Inc Piscataway, NJ)を用いた表面プラズモン共鳴を使用する。さらに、既知のカスケードを停止させるための様々な試薬並びに結合プロセスの動態はすべて、発見した作用物質のタイプを示す。しかしながら、これらの2つの作用物質を識別する必要のない場合が多い。
【0116】
代替的な好ましい実施形態では、上記方法は、考え得る発現調節性試薬がメタドヘリンの発現を調節するかどうかを決定するように適合させることができる。この実施形態では、考え得る発現調節性作用物質の存在下及び非存在下メタドヘリンで形質転換した細胞の局在化は、宿主へ注入されて、肺への局在化に関してモニタリングされる。この状況では、作用物質がメタドヘリンの発現に実施に影響を与えるのに十分な時間を付与されること、及び宿主への注入前に、作用物質を細胞サンプルから除去して、結合性作用物質の存在を単に示すに過ぎない偽陽性を取り除くことが重要である。発現調節性作用物質が、メタドヘリン発現細胞に対する、肺へ局在化する細胞の割合に対して影響を与えるが、メタドヘリンを発現しない細胞の局在化に対して有意な影響を与えない場合、作用物質は、発現性作用物質として分類される。
【0117】
上記スクリーンから得られる小分子、ペプチド、タンパク質又は抗体、並びに転移を防止するためにそれらを使用する方法もまた、本発明の実施形態である。
【0118】
別の実施形態では、メタドヘリンを発現する細胞は、細胞のライブラリーへ結合するそれらの能力に関してスクリーニングするのに使用され、ここではライブラリーは、潜在的なメタドヘリン受容体タンパク質をコードするDNAを発現する。細胞のライブラリーの創出及び結果の分析は、当業者に既知の様々な方法で実施することができる。例えば、潜在的なメタドヘリン受容体がクローニングされると、受容体に対する抗体は、メタドヘリンに関して記載するような様式で創出することができる。続いて、抗体は、潜在的なメタドヘリン受容体のいずれが実際の受容体であるかどうかをアッセイするのに使用することができる。
【0119】
上記方法において使用するための抗体は、当業者に既知の様々な技法のいずれかにより調製され得る。例えば、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988を参照されたい。1つのこのような技法では、メタドヘリンを含む免疫原は、最初に多種多様な哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ及びヤギ)のいずれかに注入される。この工程では、メタドヘリンは、修飾なしでの免疫原として利用され得る。或いは、メタドヘリンが、ウシ血清アルブミン又はキーホールリンペットヘモシアニンのようなキャリアタンパク質へ結合される場合に、より優れた免疫応答が誘発され得る。免疫原は、好ましくは1回又はそれ以上のブースター免疫化を組み込んだ既定のスケジュールに従って、動物宿主へ注入されて、動物を定期的に失血させる。続いて、メタドヘリンに特異的なポリクローナル抗体は、例えば、適切な固体支持体へカップリングされたメタドヘリンを使用したアフィニティクロマトグラフィにより、このような抗血清から精製され得る。
【0120】
メタドヘリンに特異的なモノクローナル抗体は、例えばKohler and Milstein, Eur. J.
Immunol. 6:511-519, 1976の技法及びそれに対する改良法を使用して調製され得る。簡潔に述べると、これらの方法は、目的の特異性(すなわち、目的のメタドヘリンとの反応性)を有する抗体を生産することが可能な不死細胞系の調製を包含する。このような細胞系は、例えば、上述のように免疫化した動物から得られる脾臓細胞から生産され得る。続いて、脾臓細胞は、例えば、骨髄腫細胞融合パートナー、好ましくは免疫化された動物と同系であるものとの融合により不死化される。様々な融合法が使用され得る。例えば、脾臓細胞及び骨髄腫細胞は、非イオン性界面活性剤と数分間組み合わせた後、ハイブリッド細胞の成長を支持するが、骨髄腫細胞の成長は支持しない選択培地上で、低濃度で平板培養されてもよい。好ましい選択法は、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)選択を使用する。十分な時間、通常約1〜2週後に、ハイブリッドのコロニーが観察される。単一コロニーを選択して、メタドヘリンに対する結合活性に関して試験する。高い反応性及び特異性を有するハイブリドーマが好ましい。
【0121】
モノクローナル抗体は、成長中のハイブリドーマコロニーの上清から単離され得る。さらに、マウス等の適切な脊椎動物の腹膜腔へのハイブリドーマ細胞系の注入のような様々な技法を使用して、収率を増強し得る。続いて、モノクローナル抗体は、腹水又は血液から回収され得る。混入物は、クロマトグラフィ、ゲル濾過、沈殿及び抽出のような慣例の手法により抗体から除去され得る。本発明のポリペプチドは、精製プロセスにおいて、例えばアフィニティクロマトグラフィ工程において使用され得る。
【0122】
モノクローナル抗体はまた、肺若しくは胸部腫瘍を減少又は排除するための治療用試薬として使用され得る。抗体はそれ自体で(例えば、転移を阻害するために)、或いは1つ又はそれ以上の治療用作用物質にカップリングさせて使用され得る。これに関して適切な作用物質としては、放射性核種、分化誘導物質、薬物、毒素及びそれらの誘導体が挙げられる。好ましい薬物としては、メトトレキサート、並びにピリミジン及びプリン類縁体が挙げられる。好ましい分化誘導物質としては、ホルボールエステル及び酪酸が挙げられる。好ましい毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素、コレラ毒素、ゲロニン、シュードモナス属エクソトキシン、赤痢菌属(Shigella)毒素及びアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質が挙げられる。
【0123】
治療用作用物質は、適切なモノクローナル抗体へ、直接的に又は間接的に(例えば、リンカー基を介して)カップリング(例えば、共有結合)され得る。作用物質と抗体との間の直接的な反応は、それぞれが他方と反応することが可能な置換基を保有する場合に可能である。例えば、アミノ又はスルフィドリル基等の求核性基は、酸無水物又は酸ハロゲン化物のようなカルボニル含有基と、或いは良好な脱離基(例えば、ハロゲン化物)を含有するアルキル基と反応することが可能であり得る。
【0124】
或いは、リンカー基を介して治療用作用物質及び抗体をカップリングさせることが望ましい場合がある。リンカー基は、結合能力の妨害を回避するために、作用物質から抗体を遠ざけるためのスペーサーとして機能することができる。リンカー基はまた、作用物質又は抗体上の置換基の化学的反応性を増大させるのに、したがってカップリング効率を増大させるのに役立ち得る。化学的反応性の増大はまた、他の場合では可能でない作用物質又は作用物質上の官能基の使用を容易とし得る。
【0125】
ホモ及びヘテロ官能性の両方の、様々な二価性又は多価性試薬(例えば、the Pierce Chemical Co., Rockfordm Ill.のカタログに記載されるもの)がリンカー基として使用され得ることが、当業者に明らかであろう。カップリングは、例えばアミノ基、カルボキシル基、スルフィヒドリル基又は酸化炭水化物残基により達成され得る。このような方法論について記載する多数の参照文献、例えばRodwellらに対する米国特許第4,671,958号が存在する。
【0126】
治療用作用物質が、本発明の免疫複合体の抗体部分から遊離されるとより強力である場合、細胞への内部移行中又はその際に切断可能なリンカー基を使用することが望ましい場合がある。多数の種々の切断可能なリンカー基が記載されている。これらのリンカー基からの作用物質の細胞内放出に関するメカニズムとしては、ジスルフィド結合の還元による切断(例えば、Spitlerに対する米国特許第4,489,710号)、光解離性結合の照射による切断(例えば、Senterらに対する米国特許第4,625,014号)、誘導体化アミノ酸側鎖の加水分解による切断(例えば、Kohnらに対する米国特許第4,638,045号)、血清補体媒介性加水分解(Rodwellらに対する米国特許第4,671,958号)及び酸を触媒とする加水分解(Blattlerらに対する米国特許第4,569,789号)による切断が挙げられる。
【0127】
1つよりも多い作用物質を抗体へカップリングさせることが望ましい場合がある。一実施形態では、作用物質の多数の分子が1つの抗体分子にカップリングされる。別の実施形態では、1つよりも多いタイプの作用物質が、1つの抗体へカップリングされ得る。特定の実施形態に関係なく、1つよりも多い作用物質との免疫複合体は、様々な方法で調製され得る。例えば、1つよりも多い作用物質は抗体分子に直接的にカップリングされてもよく、或いは結合用に多数の部位を提供するリンカーを使用することができる。或いは、担体を使用することができる。
【0128】
担体は、直接的な又はリンカー基を介した共有結合を含む様々な方法で作用物質を保有し得る。適切な担体としては、アルブミンのようなタンパク質(例えば、Katoらに対する米国特許4,507,234号)、ペプチド及びアミノデキストランのような多糖(Shihらに対する米国特許第4,699,784号)が挙げられる。担体はまた、非共有結合により、或いはリポソーム小胞などへの封入により、作用物質を保有し得る(例えば、米国特許第4,429,008号及び第4,873,088号)。放射性核種作用物質に特異的な担体としては、放射性ハロゲン化小分子及びキレート化合物が挙げられる。例えば、米国特許第4,735,792号は、代表的な放射性ハロゲン化小分子及びそれらの合成について開示する。放射性核種キレートは、放射性核種である金属又は酸化金属を結合するための供与体原子として窒素及び硫黄原子を含有するものを含むキレート化合物から形成され得る。例えば、Davisonらに対する米国特許第4,673,562号は、代表的なキレート化合物及びそれらの合成について開示する。
【0129】
抗体及び免疫複合体に関する様々な投与経路が使用され得る。通常、投与は、静脈内、筋内、皮下であるか、或いは切除された腫瘍で行われる。抗体/免疫複合体の正確な用量は、使用する抗体、メタドヘリンの濃度、及び抗体のクリアランス速度に応じて様々であることが明らかであろう。
【0130】
本発明の診断用試薬はまた、メタドヘリンをコードするDNA配列、或いはそれらの1つ又はそれ以上の部分を含んでもよい。例えば、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプライマーは、生物学的サンプルから得られるメタドヘリン核酸を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイにおいて使用されてもよく、ここでオリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つは、メタドヘリン遺伝子又はRNAに特異的である。続いて、増幅されたcDNAの存在は、ゲル電気泳動のような当該技術分野で既知の手法を用いて検出される。同様に、メタドヘリンに特異的なオリゴヌクレオチドプローブは、生物学サンプル中の発明のメタドヘリンの存在を検出するのに、ハイブリダイゼーションアッセイで使用され得る。
【0131】
本明細書中で使用する場合、「メタドヘリンに特異的なオリゴヌクレオチドプライマー」は、メタドヘリンに対して少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%の同一性を有するオリゴヌクレオチド配列を意味する。本明細書中に記載する診断方法において有用に使用することができるオリゴヌクレオチドプライマー及び/又はプローブは、少なくとも約10〜40ヌクレオチドを有し得る。オリゴヌクレオチドプライマーは、配列番号2に示される配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも約10個の連続的なオリゴヌクレオチドを有し得る。診断方法で使用するためのオリゴヌクレオチドプローブは、配列番号2に示される配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも約15個の連続的なオリゴヌクレオチドを有し得る。PCRベースのアッセイ及びハイブリダイゼーションアッセイ両方に関する手法は、当該技術分野で既知である。したがって、プライマー又はプローブは、血液、尿及び/又は胸部腫瘍組織を含む生物学的サンプルにおいて胸部腫瘍特異的配列を検出するのに使用され得る。
【0132】
以下の実施例は、実例として提供されるものであり、限定の目的で提供されるものでは
ない。
実施例
【実施例1】
【0133】
メタドヘリンcDNAの同定
この実施例は、乳癌転移を媒介する細胞接着タンパク質の候補が、どのようにしてin
vivoファージスクリーニングアプローチを使用して同定されたかを説明する。このアプローチはまた、類似のタンパク質を見出すのに、或いは考え得るメタドヘリンバリアントが、肺細胞を結合するそれらの能力において機能的であることを確証するのに使用することができる。高度の転移性のBALB/c由来の4T1乳腺腫瘍細胞系は、4T1細胞及びヒト乳腺腺癌が、転移の類似した部位を共有するため、腫瘍転移を研究するのに選択した(Aslakson, C.J. and Miller, F.R., Cancer Res 52:1399-1405 (1992); Dexter, D.L., et al., Cancer Res 38:3174-3181 (1978); Miller et al., 1983)。ヒト乳癌は通常、まず癌の24〜77%が肺へ、また22〜62%が肝臓へ広がる(Kamby, C. et al.,
Cancer 59: 1524-1529 (1987); Rutgers, E.J. et al., Br J Surg 76: 187-190 (1989); Tomin, R. and Donegan, W.L., J Clin Oncol 5:62-67 (1987))。同様に、4T1細胞は、マウスにおいて95%を超える場合において肺へ、また75%を超える癌において肝臓へ広がる(Pulaski, B.A., and Ostrand-Rosenberg, S., Cancer Res 58: 1486-1493 (1998))。BALB/c胸部腺癌に由来する細胞系である4T1は、ATCCから得られ、Pulaskiら(Cancer Res 58: 1486-1493(1998))により記載されるように維持した。MDA−MB−435及びKRIB細胞系は、以前に記載されるように維持した(Laakkonen, P. et al., Nat Med 8: 751-755 (2002))。ヌードBALB/cマウスに、1×106個の4T1腫瘍細胞を皮下注射して、5週(KRIB)又は10週(MDA−MB−435)間維持した。続いて、腫瘍を取り出して、OCT包埋用培地(Tissue-Tek, Elkhart, IN)中で凍結させて、切片化した。4T1細胞は、潜在的に転移に関与する分泌及び膜貫通タンパク質をコードする転写物に富んだcDNAライブラリーを調製するのに使用された。
【0134】
ファージライブラリー及びスクリーニング
cDNAライブラリーを、4T1細胞の膜結合ポリリボソームmRNAから調製した。簡潔に述べると、3.2×108個の4T1細胞の膜結合ポリソーム由来のRNAを、Mechler(1987)により記載される方法を用いて調製した。このRNAおよそ1μgを使用して、Luo他(1999)により記載される方法を用いて、増幅されたアンチセンスmRNA(aNA)6μgを生成した。aRNAを鋳型として使用して、Luo他(1999)により記載されるように、mRNA合成したが、但し、プライマー5’−TTNNNNNN−3’[配列番号4]をランダムヘキサマープライマーの代わりに使用し、メチル化dNTPをdNTPの代わりに使用した。cDNAライブラリーは、製造業者のプロトコルに記載されるように、mRNAから調製された(OrientExpressTMランダムプライマーcDNA合成キット、Novagen, Madison, WI)。
【0135】
「停止リンカー」を、上述のmycエピトープファージベクターへ挿入して、ライブラリー構築中にcDNAにうまく連結されないファージベクターにおけるmycエピトープの発現を防止した。3つすべてのリーディングフレームにおける停止コドンをコードするオリゴヌクレオチドを合成して、リン酸化して、アニーリングして、EcoRI/HindIII消化したmycエピトープファージベクターへ連結させて、myc−T7ベクターを形成した。続いて、cDNAライブラリーを、EcoRI/HindIII消化したmyc−T7ベクターへ連結させて、ファージをパッケージして、ライブラリーを増幅した。プラークアッセイにより測定した場合、ライブラリーは、4.7×106個の一次組換え体を含有した。
【0136】
続いて、ライブラリーにおけるcDNAのmycエピトープタグ付き挿入部を発現する
T7ファージを構築した。3つすべてのリーティングフレームにおけるmycエピトープ、内部EcoRI及びHindIII制限酵素制限部位、及びフランキングEcoRI/HindIIIアダプターをコードするオリゴヌクレオチドを合成した。続いて、オリゴヌクレオチドは、個々にリン酸化して、アニーリングして、EcoRI/HindIII消化したT7Select1−2a、1−2b又は1−2cベクターアーム(Novagen)に連結させて、mycエピトープファージベクターを生成した。
【0137】
オープンリーディングフレームを有するcDNA挿入物を発現するファージクローンを、ラット抗マウスIgG1磁気ビーズ(緩衝液1ml当たり3.1μl、Miltenyi Biotec, Auburn, CA)に結合させた抗myc mAb(3.1μg/mlのMAB8864、Chemicon, Temecula, CA)による3回の選択により濃縮した。選択を、0.5%ウシ血清アルブミンを含有するダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBSB)10ml中の1011pfuのファージを用いて実施した。ファージを、磁化したLS MACSカラム(Mitenyi Biotec)へ添加して、緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム)で洗浄して、カラムを消磁した後にPBSBで溶出させて、さらなる洗浄のために第2のカラムへ移した。ファージを、抗myc選択の各回後にリキッド・ライセート法を用いて増幅させた。
【0138】
4T1 cDNAライブラリーを用いたex vivo及びin vivoスクリーニングは、過去に記載されるように実施した(Hoffmanら、印刷中)。ライブラリーを、単一細胞肺懸濁液での2回のex vivo選択を実施することにより、肺組織へ結合するファージの予備選択をした。続いて、予備選択した4T1ライブラリーをBalb/cマウスへ静脈内注射して、肺中に蓄積されるファージを単離した。3回のin vivo選択後に、32個のファージクローンから、cDNA挿入部をシーケンシングした。
【0139】
個々のファージクローンを、肺血管系へ特異的に結合するそれらの能力に関して試験した。同定した5つの肺特異的クローンのうちの1つが、GenBankTMへ最近寄託されたタンパク質のフラグメント(アクセッション番号AAL92861及びAAP30791)をコードした。選択されたファージは、マウスへ静脈内(i.v.)注射して、5分間循環させると、対照ファージよりもほぼ20倍多く肺へ結合した(図3、エラーバーは、変量1つ当たり2〜7回の実験に関する平均値±標準偏差を表す)。このファージの選択的蓄積は、胸部、皮膚、脳又は肝臓では見られず、その量は、膵臓及び腎臓において対照ファージよりも2倍未満であった。ファージは、肺中の血管と共局在した。これは、フルオレセイン標識したトマトレクチン及びメタドヘリンファージ(T7−メタドヘリン)又はT7−415非組換えファージ(T7−対照)のいずれかを同時注入したマウス由来の肺の抗ファージ免疫染色により決定した。対照肺は、注入していないマウス(レクチン-ファージ-)、レクチンのみを注入したマウス(レクチン+ファージ-)及びメタドヘリンファージのみを注入したマウス(レクチン-ファージ+)由来であった。抗ファージ抗体を、Alexa 594ヤギ抗ウサギIgG抗体により検出した。核を、DAPIで染色した。これは、タンパク質フラグメントが、肺中の血管へ目的の物質を送達するための有効な手段であったことを示す。
【0140】
完全長メタドヘリンcDNAのクローニング
以下のプライマーを合成して、完全長マウスメタドヘリンcDNAを増幅した:
5’−ACCATGGCTGCACGAAGCTGGCAGGACGAGCTG−3’(配列番号5)。
5’−TCACGTTTCCCGTCTGGCCTTTTTCTTCTTTTTTA−3’(配列番号6)。
【0141】
総RNA単離キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、RNAを4T1細胞から単離した。メタドヘリンcDNA(配列番号2)を、長鋳型用のSuperscriptTMOne−Step RT−PCRキットを用いて(製造業者のプロトコルに従って、Invitrogen, Carlsbad)、RT−PCRにより増幅して、製造業者のプロトコルに従って(Invitrogen, Carlsbad, CA)、TOPO−TAベクターであるpcDNA3.1−V5/Hisへサブクローニングした。
【実施例2】
【0142】
メタドヘリンに対する抗体
この実施例は、メタドヘリン、特にメタドヘリンの肺ホーミングドメインに対する抗体を得る方法を説明する。この実施例はまた、メタドヘリンが、腫瘍細胞の外部表面上に局在化することを説明する。抗T7ファージアフィニティ精製された抗体は、過去に記載された(Laakkonen, et al., (2002). Nat Med 8: 751-755)。ポリクローナル抗体は、グルタチオン−Sトランスフェラーゼへ融合させた、組換えメタドヘリン肺ホーミングドメイン(配列番号3)に対して、ニュージーランドホワイトウサギにおいて生成した。初期免疫化を、完全フロイントアジュバント中で行い、ブースターを、不完全フロイントアジュバントを用いて行った。抗体を、メタドヘリン(378-440)ペプチドのアミノ末端へ付加したシステイン残基を介してSulfoLink Gel(Pierce, Rockford, IL)とカップリングさせた、組換え6xヒスチンタグ付けしたメタドヘリン(378-440)ペプチド上で抗体をアフィニティ精製した。タグをまず、プライマー5’−CCCGCCATGGGGTTAAATGGTTTGTCTTCTGCTGACCC−3’(配列番号7)及び5’−CCCGAGATCTTTTAGATTTCCCAGTTGGAAGAGCTCCCTCCCC−3’(配列番号8)を使用して、ベクターpQE−60(Qiagen, Valencia, CA)中に肺結合ドメインをサブクローニングすることにより付加された。
【0143】
これらのプライマーは、pQE−60ベクターにおいて発現させると、C末端で6ヒスチジン残基をもたらした。続いて、このコンストラクトを、プライマー5’−CCCGGGATCCGGGTGCGGGTTAAATGGTTTGTCTTC−3’(配列番号9)及び’−CCCGCTCGAGTTAGTGATGGTGATGGTGATGAGATCTTTTAG−3’(配列番号10)を使用して、PCRにより、6xヒスチジンタグを伴う肺結合ドメインを、PGEX4T1ベクター(Pharmacia, Piscataway, NJ)へサブクローニングするのに使用した。これは、N末端でGSTタグをもたらした。
【0144】
これらの抗体は、フローサイトメトリーにおいて非透過処理4T1細胞へ結合した(図4A、抗myc抗体を細胞に適用して、PE標識した二次Abで検出した)。この結果は、腫瘍細胞上の表面上にあるメタドヘリンの肺ホーミングドメインの存在を裏付け、ここで肺ホーミングドメインは、転移中に血管標的へ結合するのに利用可能である。細胞質タンパク質(Bcl−2)及びウサギIgGに対する対照抗体は、非透過処理4T1細胞の表面へ結合しなかったのに対して、細胞は、インテグリンα5β1に関して強力に陽性であった(図4A、対照細胞をFITC標識した二次Ab及びヨウ化プロピジウム単独(FITC/PIのみ)で染色した)。
【実施例3】
【0145】
メタドヘリン抗体によるメタドヘリンのFACS検出
この実施例は、細胞上のメタドヘリンタンパク質の存在を検出する方法を実証する。FACSにより4T1細胞上のメタドヘリンの存在を分析するために、細胞を2mM EDTAを有するPBS(PBSE)とともに10分間インキュベートすることにより、培養プレートから脱離させた。続いて、細胞をPBSBで洗浄して、40μg/ml(PBSB中)の以下の抗体:抗Bcl2(SL−492、Santa Cruz Biotechnology, Santa Cruz, CA)、正常なウサギIgG(Sigma, St. Louis, MO)、抗インテグリンα5β1(ヒト
フィブロネクチン受容体に対して産生した抗体を含有するウサギ血清から精製したプロテインG)及び抗メタドヘリン(378-440)とともにインキュベートした。結合した抗体を検出するために、細胞をヤギ抗ウサギIgG−FITC(PBSB中40μg/ml、Molecular Probes, Eugene, OR)とともにインキュベートした。最後の洗浄後、2μg/mlのヨウ化プロピジニウム(PI)を含有するPBSで細胞を再懸濁させて、FACSで分析した。メタドヘリン(378-440)に対して産生した抗体は、フローサイトメトリーにおいて非透過処理4T1細胞へ特異的に結合した(図4A)。それに対して、細胞質タンパク質(Bcl−2)及びウサギIgGに対する対照抗体は、非透過処理4T1細胞の表面へ結合しなかった。
【実施例4】
【0146】
MYC−メタドヘリンによるメタドヘリンのFACS分析
この実施例は、メタドヘリンのバリアントがFACS分析により観察することができる代替的方法を説明する。メタドヘリンを肺に局在させることが可能な融合タンパク質であるmyc−メタドヘリンを以下の実験で使用した。myc−ビメンチン、myc−メタドヘリン又はmyc−pCMVベクター単独(Clontech, Palo Alto, CA)を発現する一過的にトランスフェクトしたHEK293T細胞を、1%BSAを含有するPBS(PBSB)で穏やかに洗浄することにより、それらの培養皿から脱離させた。続いて、マウス抗myc mAb(PBSB中2μg/ml、Chemicon, Temecula, CA)を用いて4℃で20分間、細胞を染色した。細胞をPBSBで洗浄して、ヤギ抗マウスIgG PE標識した抗体(PBSB中4μg/ml、Pharmingen, San Diego, CA)で染色して、PBSBで再度洗浄して、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで固定して、PBS中で再懸濁させて、FACScanフローサイトメーター(BD, San Jose, CA)を用いて分析した。無傷のmycメタドヘリン発現細胞は、抗myc抗体で特異的に標識されることが観察された(図4B)。しかしながら、myc−ビメンチン又はmyc−pCMVで処理した細胞は、抗myc抗体で標識されなかった。
【実施例5】
【0147】
メタドヘリンによる血管局在化
この実施例は、肺血管中でのメタドヘリンの存在に関して検査する方法を説明し、及びメタドヘリン発現ファージが細胞を肺血管へ送達させることを説明する。メタドヘリンを発現するファージを、マウスの尾静脈への2.5×1010pfuメタドヘリンファージ(M9LB200μl中)の静脈注射により検査した。血管を、フルオレセイン及びメタドヘリンファージ(T7−メタドヘリン)又はT7−415非組換えファージ(T7−対照)へ結合させたLycopersicon esculentum(トマト)レクチン200μgとファージの同時注入により可視化させた。対照肺は、注射していないマウス(レクチン-ファージ-)、レクチンのみを注入したマウス(レクチン+ファージ-)及びメタドヘリンファージのみを注入したマウス(レクチン-ファージ+)由来であった。抗ファージ抗体を、Alexa594ヤギ抗ウサギIgG抗体により検出した。核をDAPIで染色した。注射した材料を10分間循環させた。肺を取り出して、OCT包埋用培地(Tissue-Tek)中で凍結させた。ファージは、対照ファージよりもほぼ20倍多く肺へ結合した。このファージの選択的蓄積は、胸部、皮膚、脳又は肝臓では見られず、その量は、膵臓及び腎臓において対照ファージよりも2倍未満であった。ファージは、肺中の血管と共局在した。
【実施例6】
【0148】
腫瘍細胞溶解物におけるメタドヘリン及びメタドヘリンバリアントレベルの分析
この実施例は、腫瘍細胞溶解物におけるメタドヘリンの量をモニタリングする方法を説明する。腫瘍細胞溶解物を、150μl当たり106個の細胞の比で、2.5×Laemmliサンプル緩衝液(Laemmli, 1970)中で調製して、4〜20%アクリルアミドグラジエントゲル上でのSDS/PAGEに付した。タンパク質を、PVDF膜へ転写して、抗
メタドヘリン(378-440)(0.1μg/ml)及びヤギ抗ウサギIgG−HRP(1:10,000で希釈、Bio-Rad, Herculees, CA)を用いて免疫ブロットを実施して、ECLPlusと化学発光試薬(Amercham BiosciencesPiscataway, NJ)を用いて、製造業者の指示書に従って発色させた。免疫ブロットにより検出されるメタドヘリンの相対量を、AlphaImager(Alpha Innotech, San Leandro, CA)を用いて定量化した。β−アクチンを、抗アクチンモノクローナル抗体(10μg/mlTemecula, CA)で検出した。トランスフェリン受容体を、抗トランスフェリン受容体ポリクローナル抗体(2μg/ml、Santa Cruz Biotech, Santa Cruz, CA)で検出した。新規175kDaタンパク質クローンD2に反応性であるアフィニティ精製したポリクローナル抗体を、抗メタドヘリン(378-440)に関して記載されるように調製した。対照免疫ブロットを、抗クローンD2(0.1μg/ml)及びヤギ抗ウサギIgG−HRP(上述)を用いて実施した。
【0149】
4T1腫瘍細胞抽出物において、抗メタドヘリン(378-440)抗体は、およそ80kDa、75kDa及び55kDaの見かけの分子量を有するタンパク質を検出した。KRIB及びMDA−MB−435細胞抽出物はまた、80kDa及び75kDaのタンパク質を含有していた。図5は、内因性メタドヘリンの免疫ブロットを示す。レーン1及びレーン4は、4T1細胞抽出物に由来し、レーン2は、KRIB細胞抽出物に由来し、レーン3は、MDA−MB−435細胞抽出物に由来する。メタドヘリンの免疫ブロット検出を、抗メタドヘリン(378-440)を用いて実施した(レーン1〜3)。未関連タンパク質であるクローンD2の免疫ブロット検出を、抗クローンD2ポリクローナル抗体を用いて実施した(レーン4)。未関連タンパク質(クローンD2)に反応性である対照のアフィニティ精製したポリクローナル抗体は、抗メタドヘリン(378-440)免疫反応性バンドを検出しなかった。抗メタドヘリン(378-440)により検出される80kDa及び55kDaのタンパク質はまた、エピトープタグ付きメタドヘリンcDNAを鋳型として使用したin vitroでの転写及び翻訳反応により生産された。このことは、75kDa及び55kDaのタンパク質が、メタドヘリンの分解生産物であり得ることを示唆した。
【実施例7】
【0150】
細胞膜へのメタドヘリン局在化及びmAb(378-440)の特異性
この実施例は、細胞の種々の位置におけるメタドヘリンを探索するための抗メタドヘリン(378-440)抗体の使用方法を提供し、細胞全体にわたるメタドヘリン分子の分布について記載する。この実施例はまた、どの標識効果がこの抗体の特異的結合に起因するかどうかを決定する方法を説明する。
【0151】
細胞表面標識:10%ウシ胎児血清(FBS)を含む氷冷IMEM(Invitrogen)中で20μg/mlに希釈した抗メタドヘリン(378-440)を、チャンバスライド上で培養した細胞に添加して、氷上で1時間インキュベートした。細胞をIMEMで洗浄して、PBS中の冷4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した。抗メタドヘリン抗体を、Alexa594ヤギ抗ウサギIgG(1%FBS及び3%ヤギ血清を含むPBSで1:500に希釈)で検出した。スライドをVectashield蛍光マウンティングメディアVector, Burlingame, CA)により取り付けた。非透過処理細胞では、染色は細胞の縁で濃縮された。対照により、メタドヘリン(378-440)肺ホーミングペプチドとの抗メタドヘリン(378-440)のプレインキュベーションは染色を阻害したのに対して、対照ペプチドは阻害しなかったことが示された。
【0152】
透過処理細胞標識:細胞をまず、4%パラホルムアルデヒド(上述)で固定した後、PBSB中の0.1%TritonX−100で15分間処理した。細胞をPBSBで洗浄して、抗メタドヘリン(378-440)(10%FBSを含むIMEMで20μg/mlに希釈)とともに室温で1時間インキュベートした。抗メタドヘリン(378-440)を、上述のようにAlexa594ヤギ抗ウサギIgGで検出した。固定及び透過処理された4T1細胞
において、メタドヘリン免疫反応性は、細胞質及び原形質膜へ局在化した。抗メタドヘリン(378-440)で染色した非透過処理4T1細胞の切片(0.15μm)では、染色は、細胞の縁へ濃縮された。対照として、過剰のメタドヘリン(378-440)ペプチドとともにプレインキュベートした非透過処理4T1細胞は、抗メタドヘリン(378-440)による染色を低減した一方で、過剰の対照ペプチド中でインキュベートした細胞は低減しなかったことを示した。Alexa594ヤギ抗ウサギIgG抗体を使用した。
【実施例8】
【0153】
癌の広がりを診断する手段としてのヒト腫瘍サンプルにおけるメタドヘリンの検出
この実施例は、癌性であるヒト組織サンプルに存在するメタドヘリンの量を決定する方法を実証する。パラフィン包埋したヒト腫瘍切片(Spring Biosciences, Fremont, CA)を脱パラフィンした後、標的回収溶液で処理した(製造業者の指示書に従って, Dako, Carpinteria, CA)。切片を上述のように染色した。但しPBSBを、0.1M Tris/150mM NaCl中の0.5%ブロッキング試薬(NEN Life Sciemces, Boston, MA)で置き換えた。特異性を決定するために、抗メタドヘリン(378-440)(20μg/ml)を、ブロッキング緩衝液中で200μg/mlの組換えメタドヘリン肺ホーミングタンパク質(配列番号3)又は未関連組換え対照タンパク質(72個のアミノ酸、肺ホーミングクローンD2)とともに一晩プレインキュベートした後、切片を免疫染色した。ヒト胸部腫瘍及び正常ヒト胸部組織の両方の切片を、抗メタドヘリン(378-440)単独で、或いは過剰のメタドヘリン(378-440)ペプチド又は過剰の対照ペプチドとともにプレインキュベートした抗メタドヘリン(378-440)で染色した。
【0154】
抗メタドヘリン(378-440)で染色した幾つかのヒト乳癌切片は、腫瘍全体にわたってメタドヘリンの高い発現を示した。対比して、細胞質メタドヘリン又は細胞表面結合メタドヘリンは、正常なヒト胸部組織では検出されなかったが、核染色は存在した。乳癌組織の細胞表面染色は、メタドヘリン(378-440)ペプチドで阻害されたが、対照ペプチドでは阻害されなかった。どちらのペプチドも、核染色を阻害しなかった。
【実施例9】
【0155】
癌細胞を診断する手段としての異種移植片におけるメタドヘリンの検出
この実施例は、検出方法が、ヒト起源ではないサンプルに役立つことを実証する。肺転移を生成することが既知である2つの腫瘍モデルである、マウスMDA−MB−435(胸部腺癌)及びKRIB(骨肉腫腫瘍)(Berlin et al., 1993; Price et al., 1990)腫瘍異種移植片の切片で多量のメタドヘリンタンパク質が検出された。異種移植片を、ヌードBalb/cマウスで成長させて、免疫染色により分析した。切片を、抗メタドヘリン(378-440)単独で、或いは過剰のメタドヘリン(378-440)ペプチド又は過剰の対照ペプチドとともにプレインキュベートした抗メタドヘリン(378-440)で染色した。抗メタドヘリン(378-440)を、Alexa594ヤギ抗ウサギIgG抗体で検出して、核を、DAPIで染色した。メタドヘリンは、両方のモデルにおいて腫瘍細胞表面へ局在するように見え、特にメタドヘリンの強力な発現が、KRIB腫瘍の周囲で見出された。メタドヘリン(378-440)肺ホーミングペプチドとの抗体のプレインキュベーションは染色を阻害したが、対照ペプチドは阻害しなかったため、抗メタドヘリン(378-440)免疫染色は特異的であった。腫瘍に隣接する皮下組織又は皮膚は、抗メタドヘリン染色を示さなかった。
【0156】
特異的メタドヘリン染色は、乳腺管の内側の上皮細胞の頂端膜側にある正常なマウス乳腺組織の凍結組織切片に存在し、少量のメタドヘリンは、乳腺脂肪体の至るところに分散された。マウス胸部組織の切片を、抗メタドヘリン(378-440)単独で、或いは過剰のメタドヘリン(378-440)ペプチドとともにプレインキュベートした抗メタドヘリン(378-440)で染色した。メタドヘリンは、脾臓、腎臓、肺及び皮膚で検出されなかったが、微量のメタドヘリンが、肝臓で見られた。出生後初期及び成体小脳におけるプルキンエニューロンは
、メタドヘリン染色に関して強力に陽性であった。これらの免疫染色の結果は、メタドヘリンが、腫瘍において選択的に過剰発現されることを示す。
【実施例10】
【0157】
特定の位置への目的の物質の送達
この実施例は、結合された物質を肺組織へ効果的に送達するメタドヘリンの能力を説明する。静脈内注射した腫瘍細胞の組織分布に対するメタドヘリンの影響を試験するために、HEK293T細胞を、メタドヘリンcDNA(配列番号2)でそれらを一過的にトランスフェクトすることにより研究した。HEK293T細胞を、DsRed2(Clontech, Palo Alto, CA)及びメタドヘリン−pCMV又は空myc−pCMVベクターで同時トランスフェクトした。トランスフェクションの2日後、細胞をPBSBで脱離させて、40μmナイロンフィルタに通して濾過した。DsRed発現細胞を、FACS Vantageフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, CA)を使用して単離した。この実験において目的の物質である、2.5×105個のDsRed陽性細胞をヌードBALB/cマウスの尾静脈へ注入した。5匹のマウスに各細胞型を注入した。2時間後、マウスを屠殺して、臓器を取り出し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドで固定して、10μm厚の凍結組織切片を調製した。各肺切片に関して、3つの異なる領域を計数した。3つ又はそれ以上の細胞を有するDsRed陽性細胞の凝集塊を、計数から排除した。肺当たり5つの切片を計数した。
【0158】
蛍光性細胞は、注入の2時間後に検査した肺の血管で検出され、細胞計数は、ベクタートランスフェクト細胞の計数よりも22%多いメタドヘリントランスフェクト細胞を示した。有意な量のDsRed2 HEK293T細胞は、脳、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、脾臓又は膵臓で観察されなかった。図6は、肺切片における表示領域当たりのDsRed2陽性細胞の数を示す(n=75、片側スチューデントt検定、*P<0.001)。この結果は、メタドヘリンが肺血管系へ優先的に結合することを示すファージのホーミングデータを支持する。
【実施例11】
【0159】
siRNAによるメタドヘリンの阻害及び転移の形成を低減させるその能力
メタドヘリンに対するsiRNAは、メタドヘリンを阻害し得る
siRNAの、メタドヘリン生産を変更させる能力を検査した。図7Aに示されるように、メタドヘリンに反応性であるが、GAPDH又は陰性対照mRNA(例えば、「スクランブル」)に反応性でないsiRNAは、HEK293T細胞において、トランスフェクトされたmyc−メタドヘリンの発現を低減することが可能であった。メタドヘリンレベルは、2週後に正常に回復した。しかしながら、4T1細胞におけるEGFP及びメタドヘリン反応性siRNA又はスクランブルsiRNAの同時発現を用いて、機能するなモデルが創出され、細胞をFACSで選択した。メタドヘリン−siRNAによるトランスフェクションは、β−アクチン又はII型膜貫通タンパク質であるトランスフェリン受容体の発現に影響を及ぼさなかった(図7Bを参照)。しかしながら、メタドヘリン−siRNA細胞におけるメタドヘリンタンパク質発現は、スクランブルsiRNA細胞に対して、約40%低減された(図7C)。図7Cにおける矢印は、デンシトメトリにより定量化した80kDaのメタドヘリンタンパク質バンドを示す。
【0160】
リアルタイプPCRにより測定される場合、メタドヘリン−siRNA細胞は、メタドヘリンmRNAレベルがβ−アクチンmRNAレベルに規準化した場合に、スクランブルsiRNA細胞よりも約40%少ないメタドヘリンmRNAを発現した(図7D)。同様にリアルタイムRT−PCRにより検出されるメタドヘリンmRNAの相対量は、β−アクチンmRNAの存在量に対して規準化された。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。

メタドヘリンに対するsiRNAは、マウスモデルの転移の形成を阻害する
【0161】
この実施例は、細胞におけるメタドヘリンの自然レベルを低減させることにより、乳癌細胞の転移潜在性を変化させる、メタドヘリンに対するsiRNAの有効性を説明する。メタドヘリン発現のsiRNA媒介性阻害に関して、マウスメタドヘリンcDNAのヌクレオチド1597〜1615(5'−GTGCCACCGATGTTACAAG−3’)(配列番号11)が、標的配列として使用された。この標的配列を含有するオリゴヌクレオチドを合成して、製造業者の指示書に従って、pSilencer3.0H1プラスミド(Ambion, Austin, TX)へサブクローニングした。緑色蛍光タンパク質(EGFP)を、4T1細胞においてメタドヘリン反応性siRNA又は対照スクランブルsiRNAとともに同時発現させて、FACSによりsiRNAでトランスフェクトした細胞を選択した。4T1細胞を、4:1の比のpSilencer対EGFPベクターを使用して、EGFP発現ベクター(Clontech, Palo Alto, CA)と一緒に、メタドヘリン又は陰性対照siRNA pSilencerベクターでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日後に、EGFPで標識され、且つヨウ化プロピジニウムを排除した4T1細胞をFACSにより単離した。PBS100μl中のこれらの選択4T1細胞10,000個又は50,000個を、麻酔をかけたヌードBALB/cマウスの尾静脈へ注入した。マウスの肺を注入の22日後に回収して、ブアン溶液で染色した。肺表面上の腫瘍病巣を解剖顕微鏡下で計数した。データは、注入した細胞10,000個当たりの形成される腫瘍病巣の数として記録した。
【0162】
マウスに注入すると、メタドヘリン反応性siRNAを発現する4T1細胞は、スクランブルsiRNAを発現する細胞よりも約80%少ない実験的肺転移を形成した(P<0.001)。結果を図7Eに表示する。値は、注入した細胞10,000個当たりの腫瘍病巣の数として表される。バーは、平均値±標準偏差を表す(片側スチューデントt検定、*P<0.02、**P<0.01、***P<0.001)。パーセントは、対照群に対して比較した場合の相対抑制を示す。メタドヘリン−siRNA及びスクランブルsiRNA細胞の生存度における差は、ヨウ化プロピジニウム染色を使用して検出されなかった。さらに、siRNA発現プラスミドをトランスフェクトする前及び2日後の細胞数の計数は、細胞の成長速度に対するメタドヘリン−siRNAのいかなる有意な影響も示さなかった。
【実施例12】
【0163】
メタドヘリンに対するさらなる相同体の生産:
肺ホーミングファージの肺ホーミングドメインの推定アミノ酸配列を配列番号3に示す。BLAST(Altschul, S.F., et al., Nucleic Acids Res 25: 3389-3402 (1997))を用いて、1つのcDNAクローン(GenBankTM アクセッション番号AY082966、配列番号16)が、ファージクローンに相当する推定完全長ヒトタンパク質(配列番号13)をコードすることが決定された。メタドヘリンをコードするcDNAは、マウスメタドヘリンのコード領域(配列番号2)に対して93%相同であるコード領域を有する。GenBankTM登録は、当該タンパク質を「LYRIC」と称して、結腸癌腫における推定CEACAM1関連タンパク質として記載している。これらの結果は、乳癌転移におけるこの肺ホーミングタンパク質の重要性を示す。このタンパク質をメタドヘリン(転移接着タンパク質)と命名した。報告されたマウスメタドヘリンのcDNA相同体を使用して(GenBankTMアクセッション番号AK029915)、オリゴヌクレオチドを設計して、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により完全長マウスメタドヘリンcDNA(配列番号2)を増幅した。配列番号2に示されるように、マウスメタドヘリンcDNAは、ヌクレオチド319に始まり、ヌクレオチド2058で終わる1737塩基対のコード領域を有する2530ヌクレオチド長である。ヒトメタドヘリンcDNAは、ヌクレオチド7
9に始まり、ヌクレオチド1827で終わる1748塩基対のコード領域を有する2031ヌクレオチド長である。当業者に理解されるように、この手順は、他の生物におけるさらなる相同体を同定するために容易に反復させることができる。
【実施例13】
【0164】
メタドヘリンの機能的領域を決定する方法
この実施例は、メタドヘリン又はそのバリアントの機能的特色を同定し、続いて確認する方法を説明する。メタドヘリンの疎水性領域の分析(Kyte, J. and Doolittle, R.F., J
Mol Biol 157, 105-132 (1982))により、アミノ酸残基52〜74が、推定膜貫通ドメインをコードすることが明らかとなった(例えば、図1B及び図1C)。検索は、他の既知のタンパク質に類似したメタドヘリンにおけるいかなるドメインも明らかにしなかった。膜ヘリックスを検出し、且つタンパク質における膜貫通トポロジーを予測するために隠れマルコフモデル(Glasgow, J. (1998), Proceedings, Sixth International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology: June 28-July 1, 1998, Montreal, Quebec (Menlo Park, Calif., AAAI Press); Krogh, A., et al., J Mol Biol 305: 567-580 (2001))を用いて、メタドヘリンが、細胞外肺ホーミングドメインを有するII型膜貫通タンパク質であると予測されることが分かった。この予測を確認するために、c−mycエピトープを、図1Cに示されるように、メタドヘリンcDNAの肺ホーミングドメインにサブクローニングした。まずQuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて、ヌクレオチド1222の後ろのメタドヘリンcDNAにEcoRI制限酵素部位挿入することにより、mycエピトープはメタドヘリンタンパク質へ付加された。続いて、mycエピトープをコードするオリゴヌクレオチド(EQKLISEEDL)[配列番号12]及びフランキングEcoRIアダプターを合成して、リン酸化して、EcoRI消化したメタドヘリンcDNAへ連結させた。myc−メタドヘリンcDNAは、pCMVベクター(Clontech, Palo Alto, CA)へサブクローニングした。鋳型としてビメンチン特異的プライマー及びヒトmRNAを使用して、ヒトmyc−ビメンチンcDNAを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により生成した後、pCMV−Mycベクター(Clontech, Palo Alto, CA)へサブクローニングした。
【0165】
このmycタグ付cDNAは、HEK293T細胞において発現されて、続いてこれらの細胞を、抗myc抗体で染色した。フローサイトメトリーを使用して、完全なmycメタドヘリン発現細胞が抗myc抗体で標識されることが観察され、このことは、メタドヘリンの肺ホーミングドメインが細胞外であることを示した。細胞内タンパク質であるmyc−ビメンチンを発現する、ベクターでトランスフェクトした細胞又は非透過処理細胞において細胞表面標識は検出されなかった。抗myc抗体は、透過処理されるとmycビメンチン発現細胞を染色し、これはmyc−ビメンチンの発現を確認し、またベクター単独を発現する透過処理細胞は、抗myc抗体で染色されなかった。
【0166】
この実施例は、メタドヘリンのバリアントが、依然として機能的であるか、又は依然としてある特定の目的の特性を有するかどうかを決定するために、単にメタドヘリン(378-440)に対する抗体を使用することにより改変され得る。
【実施例14】
【0167】
メタドヘリンmAbによる転移の阻害
この実施例は、転移が、どのようにして結合性作用物質、この場合、メタドヘリンの肺結合ドメインに対する抗体の添加により阻害されるかどうかを説明する。マウスモデル系を使用して、メタドヘリンの肺ホーミングドメインに対して反応性である抗体を用いて、4T1細胞においてメタドヘリン活性を阻害した。4T1細胞を、PBSEによりプレートから脱離させて、PBSで一度洗浄して、PBS中に5×105個の細胞/mlで再懸濁させて、氷上に置いた。抗メタドヘリン(378-440)又はウサギIgG(200μg)を
5×104個の細胞に添加した後、細胞を、側方尾静脈を介して雌Balb/c nu/nuマウスへ注入した。腫瘍細胞注入の7日後に、動物を屠殺した。肺を回収して、ブアン溶液で染色して、左葉の表面上の腫瘍病巣を解剖顕微鏡下で計数した。4T1細胞とともに同時注入すると、抗メタドヘリン(378-440)は、ウサギIgGで処理した4T1細胞と比較した場合、肺転移を約40%阻害した(図.7F)。別個の実験では、抗メタドヘリン(378-440)又はウサギIgGで予め処理した4T1細胞から形成される乳腺脂肪体腫瘍の成長間に、差は観察されなかった。
【実施例15】
【0168】
メタドヘリンを介して転移を阻害する治療薬のスクリーニング
この実施例は、メタドヘリンに結合して、メタドヘリンを遮断することにより転移を阻止する小分子、ペプチド又はタンパク質に関してどのようにしてスクリーニングすることができるかどうかを説明する。例えば実施例1におけるファージクローンにおけるメタドヘリン又はそのフラグメントを発現する細胞は、実施例1に従って、考え得るブロッキング作用物質と混合された後、マウスに注入される。注入された細胞が肺組織へ局在化する場合、ブロッキング作用物質は、実験の期間にわたって完全なブロッキング作用物質として有効ではない。肺組織への細胞の局在化の低減又は対照との比較は、考え得る遮断用作用物質を示す。
【実施例16】
【0169】
in silicoでの他の癌におけるメタドヘリンの役割の決定
この実施例は、本発明のメタドヘリンが、他の癌の転移を停止させるのに有用であるかどうかをどのようにして決定できるかを説明する。全米バイオテクノロジー情報センターでの癌ゲノム詳細解析プロジェクト(The Cancer Genome Anatomy Project)の構成要素であるSAGEmap(Lal, A., et al., Cancer Res 59: 5403-5407 (1999); Lash, A.E.,
et al., Genome Res 10: 1051-1060 (2000))を使用して、メタドヘリンが、乳癌だけでなく、脳及び前立腺の癌においても有意に過剰発現される(P<0.05)ことが決定された。このことは、脳及び前立腺癌の転移におけるメタドヘリンの類似の役割を示唆する。続いて、本発明の抗メタドヘリン抗体を投与して、癌転移が停止されるかどうかを決定することができる。
【実施例17】
【0170】
in silicoでのメタドヘリンのバリアントの決定
この実施例は、メタドヘリンの他のバリアントを決定するための手法を説明する。BLASTアルゴリズム(Altschul, S.F., et al., Nucleic Acids Res 25: 3389-3402 (1997))を使用して、GenBankTMデータベースにおけるさらなるマウス及びヒトメタドヘリン様分子を決定した。図2は、ヒト(配列番号13)、マウス(配列番号1)、ラット(配列番号14)及びゼブラフィッシュ(配列番号15)由来の幾つかのメタドヘリン相同体又はバリアントの機能的比較が現在既知であることを示す。
【実施例18】
【0171】
転移を防止するための機能的バリアントの決定
この実施例は、メタドヘリンの考え得るバリアントが、癌転移を防止するのに依然として機能的であるかどうかを決定するために、それらがどのように検査され得るかを説明する。考え得るバリアントは、実施例1と同様に、モニタリングされ得る宿主細胞において発現される。続いてバリアントは、実施例1に記載するように、宿主へ投与されて、バリアントが宿主細胞の肺組織へ局在化することが可能であるかどうかを決定する。バリアントが、依然として肺組織へ局在化することが可能であり、メタドヘリン受容体へ結合する場合、それは、癌の広がりを防止する目的で、機能的バリアントであるとみなされる。
【実施例19】
【0172】
乳癌転移を低減させるためのメタドヘリンに対する抗体の使用
癌及び乳癌転移の危険性を有する患者を選択する。乳癌転移の危険性は、癌を有さない患者に対して、メタドヘリンのレベルが増大した患者の系におけるメタドヘリンの存在を決定することにより検査され、患者は、乳癌転移の増大した危険性を有することを示す。続いて、メタドヘリンの結合領域を対象とする有効量の抗体を患者に投与するが、これは、他の癌化学療法又は他の治療と併用して投与され得る。有効量を、患者を基準として患者ごとに決定して、患者の系において依然として存在する抗体を有さないメタドヘリンに関する反復アッセイにより直接的にモニタリングすることができる。或いは、有効量は、患者の全般的な健康及び癌の任意の広がりの低減をモニタリングすることにより決定される。治療は、癌の広がりが低減されるまで継続される。
【実施例20】
【0173】
乳癌転移を低減させるためのメタドヘリンに対するsiRNAの使用
癌及び乳癌転移の危険性を有する患者を選択する。乳癌転移の危険性は、癌を有さない患者に対して、メタドヘリンのレベルが増大した患者の系におけるメタドヘリンの存在を観察することにより決定され、患者は、乳癌転移の増大した危険性を有することを示す。続いて、メタドヘリンを対象とする有効量のsiRNAを患者に投与するが、これは、他の癌化学療法又は他の治療と併用して投与され得る。有効量を、患者を基準として患者ごとに決定して、患者の系において依然として存在するメタドヘリンの存在に関する反復アッセイにより直接的にモニタリングすることができる。治療は、癌の広がりが低減されるまで継続される。
【実施例21】
【0174】
乳癌を治療するためのsiRNAの使用
乳癌を有する患者を選択する。乳癌転移の危険性は、癌を有さない患者に対して、メタドヘリンのレベルが増大した患者の系におけるメタドヘリンの存在を観察することにより決定され、患者は、乳癌転移の増大した危険性を有することを示す。続いて、メタドヘリンを対象とする有効量のsiRNAを患者に投与するが、これは、他の癌化学療法又は他の治療と併用して投与され得る。有効量を、患者を基準として患者ごとに決定して、患者の系において依然として存在するメタドヘリンの存在に関する反復アッセイにより直接的にモニタリングすることができる。治療は、乳癌が低減されるまで継続される。
【0175】
本発明を、明瞭性及び理解の目的で幾らか詳細に記載してきたが、本発明の真の範囲を逸脱することなく、形態及び細部における様々な変更が成され得ることが当業者に理解されよう。上述した図面、表及び付録、並びに特許、出願及び刊行物はすべて、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】メタドヘリンタンパク質の肺結合ドメインの配列及び構造情報を示す図である。図1Aは、メタドヘリンの肺ホーミングドメインのアミノ酸配列を示す。このドメインは、完全長マウスメタドヘリンタンパク質の残基378〜440に相当する。図1Bは、9個のアミノ酸のウィンドウサイズを使用したメタドヘリンの疎水性分析を示す。図1Cは、完全長メタドヘリンタンパク質の配置を示す。
【図2−1】図2は、ヒトメタドヘリン及び幾つかのメタドヘリン相同体のBLASTで実施したアラインメントを示す図である。
【図2−2】図2は、ヒトメタドヘリン及び幾つかのメタドヘリン相同体のBLASTで実施したアラインメントを示す図である。
【図2−3】図2は、ヒトメタドヘリン及び幾つかのメタドヘリン相同体のBLASTで実施したアラインメントを示す図である。
【図3】Balb/cマウスの尾静脈への注入及び5分間の循環後の肺、膵臓、胸部、皮膚、腎臓、脳及び肝臓から回収されたメタドヘリンファージ力価を示すグラフである。
【図4】メタドヘリンの肺ホーミングドメインが細胞外に存在することを示す図である。図4Aは、フローサイトメトリーにより分析された完全長mycでタグ付けしたメタドヘリン、myc−ビメンチン又はmyc−pCMVを発現するHEK293T細胞を示すグラフである。図4Bは、非透過処理4T1腫瘍細胞に適用されて、FITC標識二次抗体Abで検出された場合のウサギIgG、抗Bcl2ポリクローナルAb(Bcl2)、抗インテグリンα5β1ポリクローナル抗体(インテグリンα5β1)又は抗メタドヘリン(378-440)(メタドヘリン)を示すグラフである。
【図5】4T1腫瘍細胞におけるメタドヘリン発現を示すゲルの画像である。
【図6】肺切片における表示領域当たりのDsRed2陽性細胞数を示すグラフである(n=75、片側スチューデントt検定、*P<0.001)。
【図7−1】図7Aは、GAPDH、スクランブルmRNA又はメタドヘリンに反応性のmycでタグ付けしたメタドヘリン及びsiRNAを発現するHEK293T細胞抽出物の抗myc免疫ブロットを示す画像である。図7Bは、メタドヘリン又はスクランブルmRNAに反応性のsiRNAを発現する4T1細胞における、β−アクチン及びトランスフェリンタンパク質レベルの免疫ブロット定量化を示すゲルの画像である。図7Cは、メタドヘリン又はスクランブルmRNAに反応性のsiRNAを発現する4T1細胞における、メタドヘリンタンパク質レベルの免疫ブロット定量化を示すゲルの画像である。図7Dは、メタドヘリン又はスクランブルmRNAに反応性のsiRNAを発現する4T1細胞における、メタドヘリンmRNAのリアルタイムRT−PCR定量化を示す棒グラフである。
【図7−2】図7Eは、メタドヘリン転写物に反応性のsiRNAが、4T1細胞の実験的肺転移を阻害することを示すグラフである。
【図7−3】図7Fは、抗メタドヘリン(378-440)、ウサギIgG又はPBSで処理した4T1細胞を注入したマウス由来の肺転移の数を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における腫瘍転移を阻害する方法であって、
腫瘍の転移の危険性がある患者を選択すること、及び
メタドヘリン又はその結合フラグメントの、その受容体への結合を阻害する有効量の化合物を前記患者へ投与して、患者における腫瘍転移を阻害することを含む方法。
【請求項2】
前記メタドヘリンポリペプチドは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合フラグメントは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物は、メタドヘリンに優先的に結合するモノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物は、メタドヘリンの肺結合ドメインに優先的に結合するモノクローナル抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物はペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物はアンチセンス分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物はsiRNA分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記受容体は、肺血管系上に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物は、前記受容体への結合に関して競合するメタドヘリン又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記腫瘍は、乳癌腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者における転移性癌を診断する方法であって、
転移性癌の危険性がある組織を有する患者を選択すること、及び
前記組織が、正常な組織より高レベルのメタドヘリンを発現しているかどうかを決定することを含み、より高レベルのメタドヘリンは、転移性癌の徴候を示し、それにより患者における転移性癌を診断する方法。
【請求項13】
前記組織が、正常組織より高レベルのメタドヘリンを発現しているかどうかは、前記組織を、メタドヘリンと優先的に結合する抗体と接触させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は標識されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記標識は、放射性標識又は比色性標識である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組織が、正常組織より高レベルのメタドヘリンを発現しているかどうかを決定することが、in vivoで実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
乳癌を治療する方法であって、
乳癌の危険性がある患者を選択すること、及び
メタドヘリンの、その受容体への結合を阻害する有効量の化合物を前記患者へ投与して、乳癌を治療することを含む方法。
【請求項18】
前記化合物は、メタドヘリンに優先的に結合するモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記モノクローナル抗体は、メタドヘリンの肺結合ドメインに結合する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物は、前記メタドヘリンの発現を阻害するアンチセンス分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物は、前記メタドヘリンの発現を阻害するsiRNA分子である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記化合物は、メタドヘリン受容体への結合に関して競合するメタドヘリン又はそのフラグメントである、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
作用物質を患者の肺血管系へ送達する方法であって、
作用物質をメタドヘリンタンパク質に連結させて、メタドヘリン標的作用物質を創出すること、及び
前記メタドヘリン標的組成物を患者へ投与して、作用物質を患者の肺血管系へ送達することを含む方法。
【請求項24】
前記メタドヘリンは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
作用物質を患者の肺血管系へ送達する方法であって、
作用物質をメタドヘリンの肺結合ドメインへ連結させて、メタドヘリン標的作用物質を創出すること、及び
前記メタドヘリン標的作用物質を患者へ投与して、作用物質を前記患者の肺血管系へ送達することを含む方法。
【請求項26】
前記肺結合ドメインは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記肺結合ドメインは、前記配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記メタドヘリン標的作用物質を投与することは、前記メタドヘリン標的作用物質の静脈内投与を含む、請求項23又は25に記載の方法。
【請求項29】
腫瘍転移に影響を及ぼす化合物をスクリーニングする方法であって、
第1の試験化合物を選択すること、
メタドヘリンの存在下、前記第1の試験化合物とメタドヘリンポリペプチド受容体とを接触させること、及び
前記第1の化合物が、前記メタドヘリンポリペプチドの、前記受容体に対する結合に影響を及ぼすかどうかを決定することを含み、結合に影響を及ぼす化合物は、腫瘍転移に影響を及ぼす化合物であると決定され、それにより腫瘍転移に影響を及ぼす化合物をスクリ
ーニングする方法。
【請求項30】
前記メタドヘリンポリペプチドは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記メタドヘリンポリペプチドの前記結合フラグメントは、配列番号17に示されるアミノ酸配列を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記メタドヘリンポリペプチドは、メタドヘリンタンパク質の肺結合ドメインであり、前記肺結合ドメインは、前記配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一である、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の試験化合物は、メタドヘリンに優先的に結合するモノクローナル抗体である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の試験化合物はペプチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記受容体は、肺血管系上に位置する、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
癌を有する疑いがある被験体における癌の診断画像を決定する方法であって、
検出可能な作用物質に結合されたメタドヘリン又はそのバリアントからなる、結合体を有効量患者へ投与すること、及び
前記検出可能な作用物質を観察することを含み、前記結合体の集中した領域は、癌の徴候を示し、それにより被験体における癌の診断画像を決定する方法。
【請求項37】
前記検出可能な作用物質はインジウムである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記検出可能な作用物質は蛍光分子である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記検出可能な作用物質はローダミンである、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【公表番号】特表2007−514655(P2007−514655A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539793(P2006−539793)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/037471
【国際公開番号】WO2005/050198
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500114586)ザ バーナム インスティチュート (8)
【Fターム(参考)】