説明

メタノフラーレン誘導体及びそれを用いた光電変換素子

【課題】有機FET、EL素子、太陽電池などに応用可能な新規メタノフラーレン誘導体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表わされるメタノフラーレン誘導体で、Cに結合するFL上の炭素CとC2’13C−NMRケミカルシフト値の平均値が80.10ppm以上であることを特徴とするメタノフラーレン誘導体。


(式(I)において、FLはフラーレン類、X、Xは、芳香族炭基、アルキル基等、CおよびC2’はCが結合したFL上の炭素原子であり、nは1〜10の整数。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタノフラーレン誘導体に関する。本発明のメタノフラーレン誘導体は、有機半導体材料として、有機電界効果型トランジスタ(有機FET)、エレクトロルミネッセンス素子などのエレクトロニクス素子、太陽電池などに応用可能な材料であって、本発明はまたそれを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電は、COの排出ガスを伴わないために極めてクリーンな発電方法であり、温室効果ガスを削減し、地球温暖化問題を解決する手段として期待されている。有機薄膜太陽電池は、大面積、簡易、安価な製造法が期待でき、軽量で、かつ柔軟性に富むため有望な次世代太陽電池と考えられているが、その変換効率の大幅な向上が実用化に向けての重要課題となっている。
1992年Sariciftciはホール輸送材料である導電性高分子とフラーレンC60のヘテロ接合セルによって効率の良い電荷分離が可能であることを示した(非特許文献1、特許文献1参照)。
さらに、フラーレンのホール輸送材料への相溶性を高めることを目的として、フェニル基と酪酸エステル基をメチレンで架橋したメタノフラーレン(フェニルC61ブチリックアシッドメチルエステル;PCBM)が合成され、ポリパラフェニレンビニレンにアルコキシ基を導入したポリ〔2−メトキシ、5−(2’―エチル−ヘシキシロキシ)―パラ−フェニレンビニレン〕;MEH−PPVとPCBMを混合し活性層とするMEH−PPV/PCBM系ではC60に比べて光電変換効率が大幅に改善された(非特許文献2参照)。
【0003】
Sariciftciらはホール輸送材料として共役系高分子ポリ(3−ヘキシルチオフェン);P3HTとメタノフラーレン誘導体PCBMとの混合活性層からなるバルクヘテロ接合構造で3.5%のエネルギー変換効率を達成した。(非特許文献3参照)。
さらに、HeegerならびにCarrollらはそれぞれ独自にこのブレンド膜素子の加熱処理によって5%程度のエネルギー変換効率を報告している(非特許文献4、5参照)。
大幅なエネルギー変換効率の向上を目指すうえで、新たなp型半導体材料およびn型半導体材料の開発は重要であるが、p型半導体としてはP3HT、n型半導体としてはPCBMがデバイス作成に用いられる標準物質の感があり、デバイス改良による変換効率の向上にとどまっているのが現状である。p型半導体としては、新たにいくつかの高分子が報告されているが、光電変換材料に用いられるn型半導体としてのフラーレン誘導体の開発例は多くなくPCBMを超えるものがないと言っても過言ではない。
【0004】
改めて、フラーレン誘導体の設計指針を考察してみると、フラーレンのホール輸送材料への相溶性を高めることを目的としてPCBMが合成されドナー/アクセプター複合膜が作られ、MEH−PPV/PCBM系ではC60に比べて光電変換効率が大幅に改善された事実からわかるように、フラーレン誘導体のホール輸送材料との相溶性は極めて重要である。また、PCBMのフェニル環に電子供与性置換基を施すことによりLUMO(最低空軌道:電子によって占有されていない分子軌道のうち最もエネルギーの低い軌道)を上昇させ、デバイス化した際に開放端電圧を増大しエネルギー変換効率を上昇できることが報告されている(非特許文献6)。
これらの状況から、溶解性に富みp型半導体である高分子との相溶性が高く、高い開放端電圧を有するフラーレン誘導体の分子設計が要求される。
本発明者らは、これらの要求を満足すべく、先に、新規なメタノフラーレン誘導体を提案したが(特許文献2)、開放端電圧の観点から未だ十分ではなく、さらに開放端電圧の高いメタノフラーレン誘導体が望まれた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5331183号
【特許文献2】特開2009−57356号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】N.S.Sariciftci,L.Smilowitz,A.J.Heeger,F.Wudl,「サイエンス(Science)」,1992年,258巻,p.1474−1476
【非特許文献2】C.J.Brabec、F.Padinger、N.S.Sariciftci、J.C.Hummelen,「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス(J.Appl.Phys.)」,1999年,85巻,p.6866
【非特許文献3】F.Padinger、R.S.Rittberger、N.S.Sariciftci,「アドバンスト・ファンクショナル・マテリアル(Adv.Funct.Mater.)」,2003年,13−1巻,p.85−88
【非特許文献4】M.R-Reyes、K.Kim、D.L.Carroll、「アプライド・フィジクス・レターズ(Appl.Phy.Lett.)」,2005年,87巻,083506
【非特許文献5】W.Ma、C、Yang、X.Gong、K.Lee、A.J.Heeger、「アドバンスト・ファンクショナル・マテリアル(Adv.Funct.Mater.)」,2005年,15巻,p.1617−1622
【非特許文献6】F.B.Kooistra、J.Knol、F.Kastenberg、L. M. Popescu、W. J. H. Verhees、 J.M.Kroon、J.C.Hummelen、「オーガニック・レターズ(Org.Lett.)」,2007年,9巻,p.551−554
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは前記の課題点を鑑み鋭意研究した結果、PCBMが有しているエステルなどの電子吸引性基を除去した分子設計を行うことにより溶解度ならびにLUMOの高いメタノフラーレン誘導体の開発に成功した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(I)で表わされるメタノフラーレン誘導体であり、Cに結合するFL上の炭素C13C−NMRケミカルシフト値とC2’13C−NMRケミカルシフト値の平均値が80.10ppm以上であることを特徴とするメタノフラーレン誘導体に関する。
【化1】

(一般式(I)において、FLはフラーレン類を表し、XおよびXは、それぞれ個別に、(a)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基、(b)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基であり、いずれかの水素原子の少なくとも一つが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはアリール基で置換されたもの、(c)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素の30量体までのオリゴマーから誘導される一価の基、または(d)アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、およびアルキルチオアルキル基から選ばれる基であり、FLとXおよびXはメチン炭素Cで連結されており、CおよびC2’はCが結合したFL上の炭素原子であり、nは1〜10の整数を表す。)
【0009】
また本発明は、前記の一般式(I)におけるXが、下記式(II)で表わされる芳香環またはチオフェン環から誘導される一価の基であることを特徴とする前記記載のメタノフラーレン誘導体に関する。
【化2】

【0010】
また本発明は、前記の一般式(I)におけるXが、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、またはアルキルチオアルキル基であることを特徴とする前記記載のメタノフラーレン誘導体に関する。
【0011】
また本発明は、前記のメタノフラーレン誘導体を電子輸送材料として用いてなる光電変換素子に関する。
【0012】
また本発明は、ホール輸送材料としてチオフェン環を含んだ共役高分子化合物を用いてなることを特徴とする前記の光電変換素子に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、溶解度ならびにポリマーへの相溶性が高く、開放端電圧が高く電荷移動度・電荷分離能に優れた新規メタノフラーレン誘導体が提供され、かかるメタノフラーレン誘導体を用いることにより電子特性、耐久性に優れた光電変換素子が提供される。
また、本発明の新規なメタノフラーレン誘導体は、有機半導体材料として、有機FET、エレクトロルミネッセンス素子などのエレクトロニクス素子にも応用可能な材料である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のメタノフラーレン誘導体について詳細に説明する。
本発明のメタノフラーレン誘導体は下記一般式(I)で示される化合物であり、フラーレン上の炭素CおよびC2’と、XおよびXが結合した炭素Cが架橋した構造を有する。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(I)において、丸で囲んだFLはフラーレン類を表す。フラーレン類とは、Sp2型の炭素原子が球状に結合した三次元閉核構造を有する化合物の総称であり、具体的にはフラーレン、その誘導体およびその骨格内に金属原子や化合物を内包しているものなどを挙げる事ができる。具体的には、化学式としてC60、C70、76、78、82、84、90、96などが挙げられるが、これらの中ではC60又はC70が特に好ましい。
【0017】
一般式(I)において、XおよびXは、それぞれ個別に、(a)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基、(b)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基であり、いずれかの水素原子の少なくとも一つが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはアリール基で置換されたもの、(c)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素の30量体までのオリゴマーから誘導される一価の基、または(d)アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、およびアルキルチオアルキル基から選ばれる基である。
【0018】
前記芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素としては、炭素数6〜30のものが好ましく、例えばベンゼン、ナフタレン、アントラセンなどが挙げられる。
前記ヘテロ芳香環炭化水素、多環ヘテロ芳香環炭化水素としては、炭素数6〜30のものが好ましく、ヘテロ原子としてはイオウが好ましく、例えばチオフェン、ベンゾチオフェン、チエノチオフェン等のチオフェン系複素芳香環化合物を挙げることができる。
【0019】
上記の芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、ヘテロ芳香環炭化水素、多環ヘテロ芳香環炭化水素としては、例えば下記式(II)で表わされる芳香環またはチオフェン環を有する化合物が挙げられる。
【化4】

【0020】
これらの芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、ヘテロ芳香環炭化水素、多環ヘテロ芳香環炭化水素は、溶媒への溶解度向上、光電変換素子として用いる際のホール輸送材料との相溶性向上および、耐久性向上のために、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基などの置換基を有することができる。
ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素を挙げることができる。
アルキル基としては、シクロアルキル基を含み、炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、2−エチルプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。また、アルキル基の水素の一部または全部を、不飽和結合を含む基、フェニル基など芳香環を含む置換基などとしても良い。アミノ基等を用いて上記アルキル基等を結合しても良い。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エーテル結合(−O−)などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテルなどを挙げることができる。
アルコシキ基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルコキシ基が挙げられ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキルチオ基が挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、2−エチルプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等々を挙げることができる。
アリール基としては、炭素数6〜30、好ましくは6〜18のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。また、アリール基の水素の一部または全部が、炭素数1〜12、好ましくは1〜8のアルキル基で置換されていても良い。
【0021】
またXおよびXとしては、上記化合物のオリゴマーから誘導される一価の基も好ましく用いることができる。オリゴマーとしての芳香環の縮合数については特に制限されないが、好ましくは30量体以下、さらに好ましくは20量体以下、特に好ましくは2〜8量体を挙げることができる。
【0022】
また一般式(I)におけるXおよびXとして用いられるアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基としては以下のものが好ましい。
アルキル基としては、シクロアルキル基を含み、炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基を挙げることができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、オクティル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等を挙げることができる。
また、アルキル基の水素の一部または全部を、不飽和結合を含む基、フェニル基など芳香環を含む置換基などとしても良い。アミノ基等を用いて上記アルキル基等を結合しても良い。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシル基、チオール基、アミノ基などであっても良い。また、アルキル鎖の途中に、エーテル結合(−O−)などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテルなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。また上記アルキル基等の末端が、ヒドロキシ基、チオール基、エーテル結合などを含んでも良く、繰り返し単位が1から15のエチレンオキシド基でも良い。2つの置換基が末端で結合をつくり環状となっていても良い。例えば、環状エーテルなどを挙げることができる。また、さらに芳香環が縮環している構造でもよい。末端が水酸基やアミノ基などのヘテロ元素を持つ反応性置換基、例えばエーテル基等を有していても良い。
【0023】
アルコキシ基としては、炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルコキシ基を挙げることができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、t−ブチルオキシ基、2−エチルプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。
アルコキシアルキル基はR−O−R−で表され、Rとしては炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基、Rとしては炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキレン基を挙げることができ、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシブチル基、メトキシペンチル基、エトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、エトキシヘキシル基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキルチオ基が挙げられ、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、i−プロピルチオ基、ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、2−エチルプロピルチオ基、シクロヘキシルチオ基等々を挙げることができる。
アルキルチオアルキル基はR−S−R−で表され、Rとしては炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキル基、Rとしては炭素数1〜30、好ましくは1〜18のアルキレン基を挙げることができ、例えば、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、メチルチオプロピル基、エチルチオプロピル基、メチルチオブチル基、エチルチオブチル基、メチルチオペンチル基、エチルチオペンチル基、メチルチオヘキシル基、エチルチオヘキシル基などが挙げられる。
【0024】
本発明の一般式(I)で示されるメタノフラーレン誘導体において、Xとしては、前記の(a)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基、(b)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基であり、いずれかの水素原子の少なくとも一つが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはアリール基で置換されたもの、または(c)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素の30量体までのオリゴマーから誘導される一価の基であることが好ましく、Xとしては、前記の(d)アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、およびアルキルチオアルキル基から選ばれる基であることが好ましい。
【0025】
本発明のメタノフラーレン誘導体は、XとXを結合したメチン炭素を何対持つかは、本発明の目的を達成できれば特に制限されなるものではないが、一般式(I)における置換数nは1〜10の整数が好ましく、より好ましくは1〜5である。
【0026】
本発明の一般式(I)で表わされるメタノフラーレン誘導体は、FL、XおよびXに結合したCに結合するFL上の炭素C13C−NMRケミカルシフト値およびC2’13C−NMRケミカルシフト値の平均値が80.10ppm以上であることを特徴とする。
本発明においては、以後、上記ケミカルシフトの平均値をCS値と呼ぶ。
CS値(ppm)=[CS(C)+CS(C2’)]/2
CS(C):炭素C13C−NMRケミカルシフト値(ppm)
CS(C2’):炭素C2’13C−NMRケミカルシフト値(ppm)
【0027】
本発明において、13C−NMRスペクトルの測定方法は下記の通りである。
試料10〜50mgを、5mmφのNMR用サンプル管中で、1mlの重水素化クロロホルムを用いて完全に溶解させ均一化させた後、室温(27℃)で、プロトン完全デカップリング法により測定を行う。
測定条件は、フリップアングル90°、パルス間隔5T1以上(T1は、メチル基のスピン−格子緩和時間のうち最長の値)とする。なお、定量精度を上げるため、13C核の共鳴周波数として25MHz以上のNMR装置を使用し、1000回以上の積算回数で測定を行うことが望ましい
【0028】
本発明においては、CS値が80.10ppm以上であることが必要であり、好ましくは80.20ppm以上、さらに好ましくは80.30ppm以上である。また、CS値の上限は100.00ppmである。
CS値が80.10ppm未満ではメチン基からの電子供与性が減少するため、太陽電池として素子化した場合の開放電圧が低くなることから好ましくなく、また100.00ppmを超えるとC60の電子受容性を著しく阻害することとなり、光電変換材料として用いる上では好ましくない。
【0029】
本発明のメタノフラーレン誘導体の合成方法の一例を述べるが、これらの方法に限定されるものではない。すなわち、目的とするメタノフラーレンの前駆体であるトシルヒドラゾン(実施例中の1a、3a、5a、6a、比較例中の2a、4a)およびフラーレンをナトリウムメトキシド存在下、オルトジクロロベンゼン、ピリジン溶媒中で、50〜150℃で、1〜12時間還流加熱して、目的とするメタノフラーレン誘導体を得ることができる。
【0030】
次に、本発明のメタノフラーレン誘導体を用いて作製する光電変換素子について説明する。
本発明の光電変換素子としては、例えば、基板上に光吸収剤として本発明のメタノフラーレン誘導体を電子輸送材料として利用し、適当なホール輸送材料とを組み合わせることにより形成した光電変換層を有するヘテロ接合型デバイスなどを挙げることができる。ヘテロ接合型電子デバイスは、例えばメタノフラーレン誘導体およびホール輸送材料が光吸収による電荷発生を行うことで、光照射により取り出し電荷量、すなわち電流値の変化する光電変換素子としての特性を示す。
本発明の光電変換素子の具体的構造としては、例えば、透明導電性基板上に、本発明のメタノフラーレンとホール輸送材による光電変換層、対極を順次積層配置した構造をもつものが挙げられる。
【0031】
ホール輸送材料としては、ホール輸送性高分子であるポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、ポリカルバゾールなどを用いることができる。それらの中でも、本発明のメタノフラーレン誘導体に対しては、ホール輸送材料としてポリチオフェン系ホール輸送材料を用いることが好ましい。
【0032】
ポリチオフェンとしては、チオフェンおよび置換チオフェンをモノマー単位として、2,5位で重合したものを好適に用いることができる。置換チオフェンとしては、アルキル置換チオフェン、アリール置換チオフェンなどを挙げることができ、より具体的なポリチオフェンの構造としては、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3−(p―アルキルフェニルチオフェン))などを挙げることができる。これらポリチオフェンの中でも、特に移動度の高いものが好ましく、例えば立体規則的に重合したものなどを用いることができる。
【0033】
光電変換層は、本発明のメタノフラーレン誘導体と前記ホール輸送材料を溶解可能な溶媒に溶解して溶液とし、透明導電性基板上に塗布した後、溶媒を除去することにより形成することができる。
用いる溶媒はメタノフラーレン誘導体およびホール輸送材料の両方を溶解し得るものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、四塩化炭素、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、プロピルベンゼン、二塩化エチレン、塩化メチル等を挙げることがでる。また、溶液中のメタノフラーレン誘導体およびホール輸送材料の濃度については特に制限はないが、作製上の観点から0.1〜5質量%程度が好ましい。なお、メタノフラーレン誘導体とホール輸送材料が溶解し難い場合には、撹拌、加熱等の操作を行ってもよい。
メタノフラーレン誘導体とホール輸送材料を溶解した溶液を透明導電性基板表面に塗布する方法については特に制限はないが、例えば、キャスト、スピンコート、スプレーコート、バーコート等の方法によって実施することができる。また、塗布量については特に制限はないが、通常は、基板1cm当たり0.002〜0.1ml程度が好ましい。次いで、上記溶媒を蒸発させることにより、光電変換層を形成することができる。溶媒を蒸発させる方法としては、例えば、基板を加熱する方法が挙げられる。
【0034】
透明導電性基板は、通常、透明基板上に透明電極層を積層させて製造される。透明基板としては特に限定されず、材質、厚さ、寸法、形状等は目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色あるいは有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色あるいは有色の透明性を有する樹脂でも良い。かかる樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリ酢酸セルロース、ポリメチルペンテンなどが挙げられる。なお、本発明における透明とは、10〜100%の透過率を有することであり、また、本発明における基板とは、常温において平滑な面を有するものであり、その面は平面あるいは曲面であってもよく、また応力によって変形するものであってもよい。
【0035】
また、透明電極の導電層を形成する透明導電膜としては、本発明の目的を果たすものである限り特に限定されることはなく、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステンなどの金属薄膜、金属酸化物からなる導電膜などが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫や酸化亜鉛に、他の金属元素を微量ドープしたIndium Tin Oxide(ITO(In:Sn))、Fluorine doped Tin Oxide(FTO(SnO:F))、Aluminum doped Zinc Oxide(AZO(ZnO:Al))などが好適なものとして用いられる。膜厚は通常、1nm〜50μm、好ましくは10nm〜10μmである。また、表面抵抗(抵抗率)は、本発明の基板の用途により適宜選択されるところであるが、通常、0.01〜500Ω/sq、好ましくは0.1〜50Ω/sqである。
【0036】
次に、光電変換層に対極を積層することにより光電変換素子が得られる。
対極は、通常、金、白金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、カリウムなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。対極の設置方法については、真空蒸着法、電子ビーム真空蒸着法、スパッタリング法や、溶媒に分散した金属微粒子を塗布し、溶媒を揮発除去する等の公知の方法で成膜しても良い。また、対極金属層を形成する前に、光電変換層と対極金属層の密着性およびエキシトンブロック性を改善するため、種々の有機および無機材料を形成することができる。用いられる材料としては、本発明の目的に合致していれば特に制限されないが、例えば、フェナントロリン、バソキュプロインなどの有機物、LiF、TiOxなどの無機化合物の薄膜層が利用できる。
【0037】
なお、メタノフラーレン誘導体とホール輸送材料が太陽電池として機能するしくみについては、例えば、S.S.Sun and N.S.Sariciftci,”Organic hotovoltaics”(Taylor and Francis)などに記載されている。通常、メタノフラーレンとホール輸送材料を混合した膜を作製すると、それらはナノスケールで相分離し、相互陥入した相分離構造を形成するが、その構造をバルクヘテロ接合と呼ぶ。ここで、メタノフラーレン誘導体とホール輸送材料は、それぞれ光照射によりエキシトン(電子−ホール対)を生じ、このエキシトンがフラーレン誘導体/ホール輸送材料界面において電荷分離されることでフリーなキャリア(電子およびホール)を生じる。生じたフリーの電子とホールはそれぞれ電子吸引性および電子供与性である、メタノフラーレン相とホール輸送材料相を伝播し、各々別々の電極へと到達することで光起電力を得る。この過程において、エキシトンは電荷分離されるためにメタノフラーレン誘導体とホール輸送材料層の界面まで拡散しなければならないが、エキシトンには寿命(τ)があるため光吸収後時間の経過と共にエキシトン量は減少する。エキシトンの量が1/eとなる時間(τ)をエキシトンの寿命とすれば、エキシトンの拡散定数をDとして、エキシトンの拡散長がL=(D×τ)1/2と定義される。高効率な太陽電池を得るためにはエキシトンを高効率でフリーキャリアへと電荷分離する必要があるから、光吸収により生じたエキシトンが拡散する時間をなるべく短くする必要がある。そのためには、メタノフラーレン相とホール輸送材料相それぞれの相分離による構造(ドメイン)が大きすぎると、エキシトンが電荷分離されるために移動すべき平均距離が長くなるため、光電変換特性が低下する。よって、エキシトンを効率よく電荷分離させ高効率な太陽電池素子を得るためには、相分離構造を大きくしすぎないよう、メタノフラーレンとホール輸送材料の相溶性を高める必要がある。
【0038】
メタノフラーレン誘導体とホール輸送材料の相溶性とは、塗布後溶媒を蒸発させた固体膜状態においてメタノフラーレン誘導体とホール輸送材料の混合特性のことである。高い光電変換特性を得るためにはメタノフラーレン誘導体とホール輸送材料はナノスケールで適度に相分離している必要もあるが、相溶性が悪いとメタノフラーレン誘導体とホール輸送材料の相分離が極端に大きくなるため、先に記載したとおりかえってデバイス特性を低下させる原因となる。このような固体状態での相溶性を測定するためには、例えば散乱特性、X線解析等により平均的なドメインサイズを原子間力顕微鏡により相分離構造の直接的イメージを測定することができる。
【0039】
素子特性の評価については、透明電極および対極にそれぞれ電流測定用の端子を取り付け、光照射の有無による電流値の変化について測定を実施すれば良く、例えばJIS C 8911〜9、JIS C 8931〜40などを参考に測定することが望ましい。
【0040】
また、素子の耐久性を向上するために、各種の封止処理を行うことができる。封止方法については、本発明の目的に合致していれば特に制限されないが、例えばガス透過性の低い各種材料を用いて素子を封止することができる。ガス透過性の低い封止方法としては、前記基板材料のようなものをガスバリア層として活用し、ガス透過性の低い接着剤等を用いてデバイスに接着させることで封止処理を行い耐久性を向上することが可能である。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
一般式(I)におけるXがフェニル、Xがペンチル、n=1であるメタノフラーレン誘導体1b(PCP)を以下のように合成した。
【0043】
【化5】

【0044】
25mLナシ型フラスコにC60を300.0mg加え、アルゴン雰囲気下で乾燥o−ジクロロベンゼン(ODCB)9mLに溶かし、60分間超音波をかけた。ジムロート冷却器、攪拌子を備えた50mL二口フラスコにトシルヒドラゾン1aを172mgと等量のナトリウムメトキシド27mgとをアルゴン雰囲気下で、乾燥ピリジン6mLに溶かし15分間攪拌した。その後、C60のODCB溶液を添加し70℃で1時間、100℃で4時間加熱した。反応後、減圧蒸留にてODCBとピリジンを除去し、リサイクル分取GPC(展開溶媒;クロロホルム)により分離・精製し58mgの茶色固体を得た。これを3mLのODCBに溶かし170℃で4.5時間加熱後、減圧蒸留にて溶媒を除去リサイクル分取GPC(展開溶媒;クロロホルム)により分離・精製し56.6mgのメタノフラーレン誘導体1bを得た(収率15.4%)。また、得られた生成物は高速液体クロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン 2:3 メタノール)により確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体1bのCS値は80.47ppmであった。
【0045】
<分析データ>
IR(KBr)2961、2918、2856、2328、1599、1493、1426、1260、1185、1092、1019、866、799、694、585、573、548、526cm−1H−NMR(300MHz;CDCl)δ7.84(d、2H、6.9Hz)、7.48−7.35(m、3H)、2.80(t、2H、8.1 Hz)、1.82−1.72(m、2H)、1.46−1.26(m、4H)、0.84(t、3H、7.2 Hz);13C−NMR(75MHz、CDCl)δ149.17,148.30,146.00,145.25,145.20,145.09,144.90,144.85,144.80、144.74,145.56,144.43,144.04,143.85,143.20,143.09,143.06,143.00,142.37,142.29,142.21,141.04、140.78,138.10,137.59,137.37,132.18,128.28,128.06,80.47,52.77,34.33,31.86,26.70,22.63,14.02.
【0046】
(比較例1)
一般式(I)におけるXがフェニル、Xが3−(メトキシカルボニル)プロピル、n=1であるメタノフラーレン誘導体2b(PCBM)を文献(J.C.Hummelen、B.W.Knight、F.LePeq、F.Wudl,「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)」、1995年、60巻、532−538)に従い合成した。
得られた生成物は高速液体クロマトグラフィーにより確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体2bのCS値は、79.88ppmであった。
【0047】
【化6】

【0048】
(実施例2)
一般式(I)におけるXが5−エチルチオフェン−2−イル、Xがペンチル、n=1であるメタノフラーレン誘導体3b(EThCP)を以下のように合成した。
【0049】
【化7】

【0050】
25mLナシ型フラスコにC60を100.0mg加え、アルゴン雰囲気下で乾燥o−ジクロロベンゼン(ODCB)3mLに溶かし、60分間超音波をかけた。ジムロート冷却器、攪拌子を備えた50mL二口フラスコにトシルヒドラゾン3aを78.8mgと等量のナトリウムメトキシド12.2mgとをアルゴン雰囲気下で、乾燥ピリジン2mLに溶かし15分間攪拌した。その後、C60のODCB溶液を添加し70℃で2時間、100℃で4時間加熱した。反応後、減圧蒸留にてODCBとピリジンを除去し、リサイクル分取GPC(展開溶媒;クロロホルム)により分離・精製し44.0mgのメタノフラーレン誘導体3bを得た(収率34.6%)。また、得られた生成物は高速液体クロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン 2:3 メタノール)により確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体3bのCS値は80.73ppmであった。
【0051】
<分析データ>
IR(KBr)2952、2921、2852、2359、1427、1375、1186、805、740、574、555、526、451cm−1H−NMR(300MHz;CDCl)δ7.24(d、1H、3.6Hz)、6.78(d、1H、3.6Hz)、2.99−2.84(m、4H)、 1.95−1.85(m、2H)、1.55−1.48(m、4H)、1.41(t、3H、7.5Hz)、 0.94(t、3H、7.2 Hz);13C−NMR(75MHz、CDCl)δ148.91、148.18、145.88、145.32、145.28、145.25、145.20、144.90、144.87、144.85、144.73、144.64、144.51、144.19、143.91、143.89、143.19、143.12、143.08、143.00、 142.98、142.39、142.32、142.22、141.00、140.77、138.32、138.19、136.74、131.57、122.10、80.73、47.17、34.58、31.70、26.85、23.71、22.67、15.57、14.03.
【0052】
(比較例2)
一般式(I)におけるXが5−エチルチオフェン−2−イル、Xが3−(メトキシカルボニル)プロピル、n=1であるメタノフラーレン誘導体4b(EThCBM)を以下のように合成した。
【0053】
【化8】

【0054】
25mLナシ型フラスコにC60を50mg加え、アルゴン雰囲気下で乾燥o−ジクロロベンゼン(ODCB)1.5mLに溶かし、60分間超音波をかけた。ジムロート冷却器、攪拌子を備えた50mL二口フラスコにトシルヒドラゾン4aを56.7mgとナトリウムメトキシド8mgとをアルゴン雰囲気下で、乾燥ピリジン1mLに溶かし15分間攪拌した。その後、C60のODCB溶液をナシ型フラスコから添加し、70℃で4時間、さらに100℃で1.5時間加熱した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン)により分離・精製し、29.5mgのメタノフラーレン誘導体4b(EThCBM)を得た(収率52.2%)。また、得られた生成物は高速液体クロマトグラフィーにより確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体4bのCS値は、80.08ppmであった。
【0055】
<分析データ>
IR(KBr)2960、1737(C=O;s)、1456、1428、1376、1263、1186、1170、983、885、806、741、572、562、525(s)、445、 432 cm−1H−NMR(300MHz;CDCl)δ7.27(d、1H、3.60Hz)、6.78(d、1H、3.60Hz)、3.69(s、3H)、2.99−2.90(m、4H)、 2.58(t、2H、7.5Hz)、2.29−2.19(m、2H)、1.41(t、3H、7.5Hz); 13C−NMR(75MHz;CDCl)δ173.50(C=O)、148.50、148.40、147.65、145.74、145.23、145.20、145.18、145.13、144.81、144.72、144.64、144.57、144.47、144.14、143.82、143.78、143.10、143.04、143.00、142.92、142.90、142.26、142.17、142.13、142.11、140.92、140.70、138.26、138.10、135.97、131.77(H)、122.20(H)、80.08(bridge head)、51.66(O)、46.20(bridge)、33.86()、33.71()、23.68()、22.52()、15.53().
【0056】
(実施例3)
一般式(I)におけるXが5−エチルチオフェン−2−イル、Xがノニル、n=1であるメタノフラーレン誘導体5b(EThCN)を以下のように合成した。
【0057】
【化9】

【0058】
100mLナシ型フラスコにC60を1,000mg加え、アルゴン雰囲気下で乾燥o−ジクロロベンゼン(ODCB)30mLに溶かし、60分間超音波をかけた。ジムロート冷却器、攪拌子を備えた100mL二口フラスコにトシルヒドラゾン5aを700mgとナトリウムメトキシド90mgとをアルゴン雰囲気下で、乾燥ピリジン20mLに溶かし15分間攪拌した。その後、C60のODCB溶液を添加し70℃で2時間、100℃で4時間加熱した。反応後、減圧蒸留にてODCBとピリジンを除去し、リサイクル分取GPC(展開溶媒;クロロホルム)により分離・精製し473mgのメタノフラーレン誘導体5bを得た(収率35.1%)。また、得られた生成物は高速液体クロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン 2:3 メタノール)により確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体5bのCS値は80.54ppmであった。
【0059】
<分析データ>
IR(KBr)2918、2848、1940、1457、1427、1185、803、740、669、554、526cm−1H−NMR(300MHz;CDCl)δ7.24(d、1H、3.6Hz)、6.78(d、1H、3.6Hz)、2.99−2.84(m、4H)、1.94−1.84(m、2H)、1.58−1.49(m、4H)、1.41(t、3H、7.5Hz)、1.35−1.20(m、8H)、0.88(t、3H、7.2Hz);13C−NMR(75MHz、CDCl)δ148.82、148.10、145.81、145.23、145.20、145.17、145.12、144.81、144.77、144.66、144.56、144.43、144.11、143.84、143.82、143.12、143.04、143.00、142.93、142.91、142.31、142.25、142.14、140.92、140.69、138.22、138.12、136.61、131.56、122.03、80.54、47.05、34.49、31.92、29.58、29.47、29.33、27.10、23.70、22.70、15.55、14.14.
【0060】
(実施例4)
一般式(I)におけるXが5−エチルチオフェン−2−イル、Xがヘプタデシル、n=1であるメタノフラーレン誘導体6b(EThCHpd)を以下のように合成した。
【0061】
【化10】

【0062】
50mLナシ型フラスコにC60を500mg加え、アルゴン雰囲気下で乾燥o−ジクロロベンゼン(ODCB)15mLに溶かし、60分間超音波をかけた。ジムロート冷却器、攪拌子を備えた100mL二口フラスコにトシルヒドラゾン6aを440mgとナトリウムメトキシド45mgとをアルゴン雰囲気下で、乾燥ピリジン10mLに溶かし15分間攪拌した。その後、C60のODCB溶液を添加し70℃で2時間、100℃で4時間加熱した。反応後、減圧蒸留にてODCBとピリジンを除去し、リサイクル分取GPC(展開溶媒;クロロホルム)により分離・精製し218mgのメタノフラーレン誘導体6bを得た収率29.0%)。また、得られた生成物は高速液体クロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン 2:3 メタノール)により確認し、H−NMR、13C−NMR、IRにて同定した。メタノフラーレン誘導体6bのCS値は80.53ppmであった。
【0063】
<分析データ>
IR(KBr)2918、2847、1716、1540、1461、1427、1374、1212、1185、803、718、525cm−1H−NMR(300MHz;CDCl)δ7.24(d、1H、3.6Hz)、6.78(d、1H、3.6Hz)、2.99−2.84(m、4H)、1.94−1.84(m、2H)、1.58−1.49(m、4H)、1.41(t、3H、7.5Hz)、1.32−1.19(m、24H)、0.879(t、3H、7.2Hz);13C−NMR(75MHz、CDCl)δ148.81、148.09、145.79、145.22、145.19、144.80、144.64、144.55、144.42、144.10、143.82、142.99、142.92、142.30、142.23、142.13、140.91、140.68、138.10、136.60、131.54、122.02、80.53、47.04、34.45、31.93、29.72、29.60、29.55、29.42、29.37、27.06、23.69、22.70、15.54、14.13.
【0064】
(実施例5)
洗浄した15Ω/□の面抵抗を持つITOをスパッタ法により成膜したガラス基板上に、Baytron P(H.C.Stark社製)を5000rpm(50s)でスピンコートし、120℃で10分乾燥した。メタノフラーレン誘導体として1bを用いて、分子量17,500のポリ(3−ヘキシルチオフェン)(アルドリッチ社製)と重量比0.8:1.0で混合し、メタノフラーレン誘導体1bの濃度が1wt%となるようにクロロベンゼンに溶解させると、両材料は完全に溶解し、均一な混合溶液となった。前記基板上に、前記混合溶液を800rpm(50s)でスピンコートし、光電変換層を形成した。光電変換層を形成したITO/ガラス基板を窒素下一晩乾燥した後、約10-5torrの真空下でLiFを0.5nm、Alを100nmそれぞれ蒸着し対極を形成し、光電変換デバイスを得た。窒素下で、得られた光電変換デバイスを封止した。封止には、ガラス板とエポキシシール材を用いた。封止した光電変換デバイスを、100mW/cm擬似太陽光を照射しながら電圧電流特性を測定した。電圧−電流特性から最大効率を計算した。結果を表1に示した。
【0065】
(比較例3)
実施例5と同様にメタノフラーレン誘導体2b(PCBM)を用いて作成した光電変換デバイスの電圧電流特性を測定し、電圧−電流特性から最大効率を計算し、結果を表1に示した。
【0066】
(実施例6)
実施例5と同様にメタノフラーレン誘導体3bを用いて作成した光電変換デバイスの電圧電流特性を測定し、電圧−電流特性から最大効率を計算し、結果を表1に示した。
【0067】
(比較例4)
実施例5と同様にメタノフラーレン誘導体4bを用いて作成した光電変換デバイスの電圧電流特性を測定し、電圧−電流特性から最大効率を計算し、結果を表1に示した。
【0068】
表1に示すように、メタノフラーレンのCS値が80.10ppmより大きい実施例5および実施例6は、CS値が80.10ppmより小さい比較例3および比較例4に比較して、開放端電圧が高く、また光電変換効率も高かった。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のメタノフラーレン誘導体は、有機半導体材料として、有機FET、エレクトロルミネッセンス素子などのエレクトロニクス素子、太陽電池などに応用可能な材料であり、産業上の価値が大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表わされるメタノフラーレン誘導体であり、Cに結合するFL上の炭素C13C−NMRケミカルシフト値とC2’13C−NMRケミカルシフト値の平均値が80.10ppm以上であることを特徴とするメタノフラーレン誘導体。
【化1】

(一般式(I)において、FLはフラーレン類を表し、XおよびXは、それぞれ個別に、(a)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基、(b)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素から誘導される一価の基であり、いずれかの水素原子の少なくとも一つが、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基またはアリール基で置換されたもの、(c)芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素、骨格にヘテロ原子を含むヘテロ芳香環炭化水素、若しくは多環ヘテロ芳香環炭化水素の30量体までのオリゴマーから誘導される一価の基、または(d)アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、およびアルキルチオアルキル基から選ばれる基であり、FLとXおよびXはメチン炭素Cで連結されており、CおよびC2’はCが結合したFL上の炭素原子であり、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)におけるXが、下記式(II)で表わされる芳香環またはチオフェン環から誘導される一価の基であることを特徴とする請求項1記載のメタノフラーレン誘導体。
【化2】

【請求項3】
請求項1に記載の一般式(I)におけるXが、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルチオ基、またはアルキルチオアルキル基であることを特徴とする請求項1または2記載のメタノフラーレン誘導体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のメタノフラーレン誘導体を電子輸送材料として用いてなる光電変換素子。
【請求項5】
ホール輸送材料としてチオフェン環を含んだ共役高分子化合物を用いてなることを特徴とする請求項4記載の光電変換素子。

【公開番号】特開2011−26235(P2011−26235A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172908(P2009−172908)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構太陽光発電システム未来技術研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】