説明

メタノールプラントを利用した酢酸原料又はMMA原料の製造方法

【課題】 メタノールプラントを利用して効率よく酢酸原料又はMMA原料を製造する方法を提供する。
【解決手段】 COリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーに炭酸ガス及び水蒸気と共に低級炭化水素ガスを導入して改質を行う改質工程と、該改質工程で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離工程と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成工程とからなる。このCOリフォーミング触媒には、比表面積0.1m/g以下のMgO担体にRu及び/又はRhを200〜2000wtppm担持させたものを使用するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールプラントを利用して効率よく酢酸原料又はMMA原料を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酢酸やMMA(メタクリル酸メチル)は、低級炭化水素の改質及び合成反応によって得られるメタノールから工業的に製造することができる。例えば酢酸の場合は、天然ガスなどの低級炭化水素をリフォーミング触媒の存在下で改質させて一酸化炭素と水素を主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスを触媒の存在下で気相合成反応させてメタノールを生成する(特許文献1)。そして、得られたメタノールをロジウム触媒の存在下で一酸化炭素によってカルボニル化することにより、効率よく酢酸を生産することができる(非特許文献1)。
【0003】
一方、MMAを製造する場合は、上記と同様にして生成したメタノールを、エチレン及び一酸化炭素と共にVIII族金属からなる触媒の存在下で反応させてプロピオン酸メチルを生成し、このプロピオン酸メチルとホルムアルデヒドとを縮合させる。これにより効率よくMMAを生産することができる(特許文献2、3、4及び5)。なお、縮合に使用するホルムアルデヒドは、触媒の存在下でメタノールの酸化的脱水素反応を行うことによって得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−180841号公報
【特許文献2】米国特許第6476255号明細書
【特許文献3】米国特許第6478929号明細書
【特許文献4】米国特許第6489506号明細書
【特許文献5】米国特許第6544924号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「工業有機化学−主要原料と中間体−(第4版)」、株式会社東京化学同人、p.194−195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酢酸やMMAは上記のようにメタノールから生成されるため、酢酸やMMAの製造プラントを新設する場合は、当該酢酸等の製造プラントとメタノールプラントとを両方とも新設するか、あるいは既設のメタノールプラントに隣接して酢酸等の製造プラントだけを新設する場合が多い。いずれの場合においても、酢酸やMMA、及び製品メタノールの需要にフレキシブルに対応できるように、メタノールプラントで生成される製品メタノールの全量ではなく一部だけを酢酸原料やMMA原料として抜き出すことが一般的に行われている。
【0007】
このように、通常はメタノールプラントによって生成されたメタノールの一部を抜き出し、これを原料として酢酸やMMAの製造プラントに供給することが行われるため、酢酸やMMAの製造プラントのみならずメタノールプラントをできるだけ効率よく運転することが望まれていた。本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、メタノールプラントを利用して効率よく酢酸原料又はMMA原料を製造する方法及び装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明が提供する酢酸原料又はMMA原料の製造方法は、COリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーに炭酸ガス及び水蒸気と共に低級炭化水素ガスを導入して改質を行う改質工程と、該改質工程で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離工程と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成工程とからなることを特徴としている。
【0009】
また、本発明が提供する酢酸原料又はMMA原料の製造プラントは、COリフォーミング触媒の存在下において、炭酸ガス及び水蒸気と共に導入される低級炭化水素ガスの改質を行う改質手段と、該改質手段で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離手段と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成手段とからなることを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明が提供するメタノールプラントの改造方法は、メタノールに加えて酢酸原料又はMMA原料を生産するため、スチームリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーを備えたメタノールプラントを改造する方法であって、低級炭化水素ガスを炭酸ガス及びスチームによって改質すべくリフォーマー内のスチームリフォーミング触媒をCOリフォーミング触媒に置き換えると共に、改質で得られる合成ガスの一部から一酸化炭素を分離する設備を設けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メタノールプラントを利用して効率よく酢酸原料又はMMA原料を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るMMA原料の製造プラントの一具体例を示す概略のフロー図である。
【図2】従来のMMA原料の製造プラントを示す概略のフロー図である。
【図3】本発明に係る酢酸原料の製造プラントの一具体例を示す概略のフロー図である。
【図4】従来の酢酸原料の製造プラントを示す概略のフロー図である。
【図5】従来のスチームリフォーマーを備えたメタノールプラント示す概略のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明に係る酢酸原料又はMMA原料の製造プラントの一具体例について説明する。この一具体例の酢酸原料又はMMA原料の製造プラントは、COリフォーミング触媒の存在下において、炭酸ガス及び水蒸気と共に導入される低級炭化水素ガスの改質を行う改質手段と、該改質手段で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離手段と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成手段とからなる。なお、酢酸原料の製造プラントとMMA原料の製造プラントとは基本的に同じ要素で構成されるので、以降、図1に示すMMA原料の製造プラントを参照しながら上記手段の各々について具体的に説明する。
【0014】
この図1に示す製造プラントでは、改質手段としてリフォーマー1を使用している。リフォーマー1は、内部にCOリフォーミング触媒が充填された触媒管が加熱炉2内に配置された構造をしており、この触媒管内に原料供給ラインL1を介して天然ガスなどの低級炭化水素ガスが導入される。原料供給ラインL1には炭酸ガス及び水蒸気をそれぞれ供給するCO供給ラインL2及びスチーム供給ラインL3が接続している。各供給ラインには図示しない流量計やバルブなどの流量制御手段が設けられているのが望ましく、これにより低級炭化水素ガスに対する炭酸ガス及びスチームの流量を制御することが可能となる。
【0015】
低級炭化水素ガスには、COリフォーミング触媒の触媒毒であるメルカプタンなどの硫黄化合物が含まれている場合がある。この硫黄化合物を除去するため、原料供給ラインL1上には硫黄除去手段(図示せず)を設けるのが好ましい。硫黄除去手段は、例えば硫黄化合物を水素化分解するCo−Mo系やNi−Mo系触媒が充填された反応器と、該水素化分解によって生成される硫化水素を吸着除去する酸化亜鉛の吸着剤とによって構成することができる。
【0016】
リフォーマー1の触媒管は、加熱炉2のバーナーで燃料を燃焼した時に発生する輻射熱によって効率よく加熱されるようになっている。バーナーの燃料には、前述した原料供給ラインL1の上流側で分岐した燃料供給ラインL4を介して供給される低級炭化水素ガス、及び一酸化炭素分離手段やメタノール生成手段から排出される各種のガスが使用される。燃焼後の排ガスは排ガスラインL5から系外に排出される。
【0017】
リフォーマー1に使用するCOリフォーミング触媒には、担体としてのマグネシア(MgO)に、ルテニウム(Ru)及び/又はロジウム(Rh)を200〜2000wtppm、好ましくは200〜1000wtppm、より好ましくは500〜700wtppm担持させたものを使用する。MgO担体にRu及び/又はRhを200〜2000wtppmの範囲内で担持させることによって、カーボンが析出しにくくなるため、一般的なNi系触媒を使用する際に課される制限(一般的にはカーボン析出を避けるためにS/C比を2.0以上で運転する)を超えてより効率のよい条件で改質反応を行うことができる。
【0018】
また、このCOリフォーミング触媒は、GHSV(ガス空間速度)が2000〜10000hr−1となるようにリフォーマー1内に充填されるのが好ましい。この値が2000hr−1未満では触媒管の必要本数が多くなりすぎ、10000hr−1を超えると合成ガス中のメタン残が著しく増大するからである。
【0019】
マグネシア担体には、市販の金属酸化物を用いてもよいし、市販の金属水酸化物を焼成して得られるマグネシアを用いてもよい。いずれの場合であっても、マグネシアの純度は98質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましい。特に、鉄、ニッケル、及び二酸化ケイ素(SiO)等の不純物は、カーボンの析出活性を高めたり、高温、還元ガス雰囲気下で分解したりするので担体に含まれていないのが望ましい。これらの不純物が含まれる場合は、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0020】
更に、マグネシア担体は比表面積が0.1m/g以下であることが好ましい。一般的に、担体の比表面積は広ければ広い程反応部位が増加するので速度論的な観点からは好ましいが、本発明で使用するCOリフォーミング触媒は改質反応に対する活性が極めて高いので、広い比表面積を必要としておらず、比表面積を広くするとかえってカーボンの析出反応が促進されるので好ましくない。このため、担体の比表面積を0.1m/g以下としている。担体の比表面積の下限は特に限定するものではないが、担体が孔のない完全な球体であると想定したときの比表面積が最小値と考えられる。なお、ここでいう担体の比表面積はBET法に基づいて温度15℃で測定したものである。
【0021】
このマグネシア担体を、1000℃以上1500℃以下で焼成した後、例えば含浸法によりRu及び/又はRhを担持させることによって触媒を作製することができる。含浸法は、担体を水中に分散させた後、RuやRhの金属塩若しくはその水溶液を添加して混合することによって担体に触媒金属を含浸させるものである。金属塩には水溶性塩を用いるのが好ましく、例えば、硝酸塩、塩化物等の無機酸塩、酢酸塩やシュウ酸塩等の有機酸塩を使用するのが好ましい。あるいは、水溶性塩に代えて、RuやRhのアセチルアセトナト塩等をアセトン等の有機溶媒に溶解し、これを担体に含浸させてもよい。
【0022】
上記方法で含浸させた後、担体を水溶液から分離し、水溶性塩の場合は100〜200℃、好ましくは100〜150℃の乾燥温度で乾燥する。一方、有機溶媒を用いて含浸した場合は、その溶媒の沸点より50〜100℃高い温度で乾燥する。乾燥後は焼成を行う。焼成の温度及び時間は、所望する担体の比表面積に応じて適宜選定されるが、一般的には、300〜1300℃の温度で1〜5時間かけて焼成する。
【0023】
Ru及び/又はRhを担持させる方法には、上記した含浸法の他、担体を排気してから細孔容積分の金属塩溶液を少量ずつ加え、担体表面を均一に濡れた状態にし、その後、乾燥及び焼成を行う方法であるincipient−wetness法や、霧状の金属塩水溶液を担体に吹き付け、その後乾燥及び焼成を行うSpray法を採用してもよい。触媒の形態は特に限定はなく、例えば粉末状、顆粒状、球形状、円柱状、円筒状等の各種の形状を使用することができる。通常は、充填される触媒床の方式に応じて適切な形状が選定される。
【0024】
リフォーマー1で生成された合成ガスは、一部が抜き出されてラインL21を介して一酸化炭素分離手段に送られ、残りはラインL6を介してメタノール生成手段に送られる。先ず、一酸化炭素分離手段について説明する。この一酸化炭素分離手段は、当該一部の合成ガスから炭酸ガスを除去する脱炭酸装置3と、脱炭酸装置3で脱炭酸されたガスを処理して一酸化炭素ガスとその他のガスに分離する深冷分離装置4とからなる。
【0025】
脱炭酸装置3には、例えばアルカノールアミン溶液やアルカリ塩溶液などの吸収液を用いた化学吸収法を使用することができる。この方法は、吸収塔内で合成ガスと吸収液を向流接触させて合成ガスに含まれる炭酸ガスを吸収する方法である。脱炭酸されたガスは吸収塔の塔頂から排出され、後段の深冷分離装置4に送られる。一方、炭酸ガスを吸収した吸収液は吸収塔の塔底から排出され、再生塔に送られた後、そこで加熱されて再生される。この再生の際に吸収液から放散される炭酸ガスは、再生塔の塔頂から排出された後、リサイクルガスとしてラインL22を介してリフォーマー1の上流側に戻される。
【0026】
深冷分離装置4では、脱炭酸されたガスが冷却により液化された後、精留により水素、低級炭化水素、及び一酸化炭素に分離される。分離された水素は一部がラインL23を介してメタノール生成手段の上流側に戻される。分離された水素は更にラインL24を介してリフォーマー1の上流側に設けられた図示しない硫黄除去手段にもパージガスとして供給される。一方、分離された低級炭化水素はラインL25を介して前述した加熱炉2のバーナーに送られ、一酸化炭素はラインL26を介して後段のMMA製造装置9に送られる。
【0027】
次にメタノール生成手段について説明する。メタノール生成手段は、メタノール反応器5、リサイクル装置6、メタノールセパレータ7、及び水素分離装置8から構成される。メタノール反応器5には、メタノール合成において一般的に使用される反応器を使用することができる。例えばチューブ内に銅系触媒が充填されたシェルアンドチューブ熱交換器型の反応器を使用することができる。チューブ側の反応条件は特に限定はなく、メタノール合成の一般的な条件である5〜15MPaG程度、200〜300℃程度でメタノールの合成反応を行うことができる。その際、シェル側にボイラ水を供給することによって、メタノール合成反応の反応熱を水蒸気として回収することができる。
【0028】
なお、このメタノール合成反応は前段の改質反応に比べて低温かつ高圧での反応になるので、リフォーマー1とメタノール反応器5との間には合成ガスを所定の温度まで冷却する図示しない冷却装置、及び合成ガスを所定の圧力まで昇圧する図示しない圧縮機が設けられている。また、リフォーマー1からメタノール反応器5に向かう接続ラインL6には、前述した深冷分離装置4で分離された水素ガス及び後述する水素分離装置8で分離された高純度の水素ガスが合流している。すなわち、一酸化炭素分離手段のために一部が抜き出された後の残りの合成ガスが流れるラインL6に、ラインL12及びラインL23が合流してラインL7となる。
【0029】
このラインL7には、更にメタノール合成工程のリサイクルガスのラインが合流している。この合流後のラインL8のガスがメタノール反応器5に供給される。このメタノール反応器5において、前述したように触媒の存在下において気相合成反応を行ってメタノールの生成が行われる。
【0030】
メタノール反応器5の後段にはリサイクル装置6が設けられている。このリサイクル装置6は、例えばメタノール反応器5から出た反応ガスを冷却する冷却器と、この冷却器の冷却によって凝縮された粗メタノールを、未反応ガスを含む残りのガスから分離する気液分離槽とから構成される。そして、この未反応ガスを含む残りのガスは、リサイクルガスとして高圧のままメタノール反応器5の上流側にリサイクルされ、前述したラインL7に合流する。
【0031】
気液分離槽の後段にはメタノールセパレータ7が設けられており、ここで気液分離槽から排出される粗メタノールを精製して高純度のメタノールを製造する。粗メタノールの精製には例えばリボイラーとコンデンサーを備えた蒸留搭を使用することができ、ここで粗メタノールを蒸留することによって塔底もしくは塔中段から純度の高いメタノールが得られる。搭頂から排出される流体は、ラインL10を介して前述した加熱炉2のバーナーで燃焼処理される。
【0032】
ところで、前述した未反応ガスを含む残りのガスには、主にメタンからなる低級炭化水素成分が含まれている。この低級炭化水素成分は、メタノール合成反応にとって不活性であるため、リサイクルループ内に徐々に蓄積していく。この蓄積した低級炭化水素成分の濃度を所定の濃度以下に抑えるため、リサイクルループにはリサイクルガスの一部を抜き出すパージラインL11が設けられている。このパージラインL11を介して抜き取られたガスは、前述した加熱炉2のバーナーで燃焼処理される。
【0033】
図1に示すプロセスでは、このパージラインL11を介して抜き出されたガスの少なくとも一部を回収する回収ラインが設けられている。そして、この回収ラインは水素分離装置8に接続している。水素分離装置8では、この回収されたガスに対して分画操作を施して高純度の水素ガスを取り出している。取り出された高純度の水素ガスは、ラインL12を介して前述したラインL6に合流している。一方、高純度の水素ガスが分離された後に残るガスは、ラインL13を介して前述した加熱炉2のバーナーに送られ、ここで燃焼処理される。
【0034】
水素分離装置8には、例えばPSA(Pressure Swing adsorption)装置や水素分離膜を使用することができる。PSA装置は、吸着剤が充填された複数の充填搭からなる装置であり、ガスが供給される充填搭を一定の時間間隔で切り替えることによって各充填搭毎に加圧減圧を繰り返して特定のガス成分の吸着脱着を行い、これにより高純度の水素ガスを生成するものである。一方、水素分離膜はパラジウムや高分子で形成された膜によって分子ふるいの原理で水素分子のみを選択的に透過させて高純度の水素ガスを生成するものである。
【0035】
このように、リサイクルループからのパージラインのガスの少なくともを一部を回収し、この回収したガスから分離した水素ガスをメタノール合成手段に向う合成ガスに合流することによって、後述するように、メタノール合成反応の効率性の指標となるM値を好適には1.8〜2.2の範囲内、より好適には2.0にすることが可能となる。なお、ラインL12若しくはラインL23又はこれら両方には図示しない流量計やバルブなどから構成される流量制御手段が設けられているのが好ましく、これにより当該水素ガスが合流された後のラインL7を流れるガスのM値の制御が容易になる。
【0036】
以上のプロセスにより、製品としてのメタノールを生産しながらMMA原料をも製造することができる。すなわち、メタノールセパレータ7で得られる製品メタノールの一部をラインL20を介して抜き出して、一酸化炭素分離手段からラインL26を介して供給される一酸化炭素、及び系外から外部からラインL27を介して供給されるエチレンと共に原料としてMMA製造装置9に供給する。これにより、製品メタノールをラインL9から取り出しつつ、製品MMAをラインL28から取り出すことが可能となる。
【0037】
次に、上記説明した図1の製造プラントを用いて行われるMMA原料の製造方法について説明する。なお、酢酸原料の製造方法は、MMA原料の製造方法と同様であるので説明を省略する。MMA原料の製造方法は、COリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーに炭酸ガス及び水蒸気と共に低級炭化水素ガスを導入して改質を行う改質工程と、該改質工程で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離工程と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成工程とからなる。
【0038】
具体的に説明すると、先ず系外から供給される低級炭化水素ガスは、加熱炉2の燃料のための一部のガスが抜き取られた後、深冷分離装置4からのパージガスが添加され、更に必要に応じて硫黄分が除去される。次に、脱炭酸装置3からの炭酸ガスと、系外からのCOリフォーミング用の二酸化炭素ガスとスチームリフォーミング用のスチームが添加された後、原料ガスとしてリフォーマー1に導入される。
【0039】
系外から添加する二酸化炭素ガスの量は、リフォーマー1に導入する原料ガスにおけるCO/カーボン比が0.1〜0.6の範囲内となるように、より好ましくは0.3〜0.5の範囲内となるように制御される。ここで、CO/カーボン比とは、原料ガス中のCO分子のモル数を原料ガス中の炭化水素ガスに含まれるカーボン原子のモル数で割った値である。CO/カーボン比を0.1以上とすることによってCOをメタノール原料として有効に利用することができる。一方、0.6以下とすることによってリフォーマー1のdutyが過大になるのを抑えることができる。
【0040】
一方、系外から添加するスチームの量は、リフォーマー1に導入する原料ガスにおけるスチーム/カーボン比(HO/カーボン比、又はS/C比とも称する)が0.7〜1.7の範囲内となるように、より好ましくは1.0〜1.4の範囲内となるように制御される。このS/C比の上限を1.7以下にすることによって、原料ガスの必要量をその最適値の約1割増しまでに抑えることができ、よってリフォーマー1のdutyが過大になるのを抑えることができる。
【0041】
S/C比の下限については、スチーム/カーボン比を0.7以上にすることによって、カーボン活性をカーボンが析出する閾値である1.0以下に抑えることができる。つまり、スチーム/カーボン比を0.7以上にすることによって反応器出口でのカーボン析出を防ぐことができる。なお、カーボン活性については、後でより詳細に説明する。
【0042】
これら低級炭化水素ガスと二酸化炭素ガスとスチームとからなる原料ガスを、COリフォーミング触媒が充填されているリフォーマー1の触媒管内に供給する。リフォーマー1は前述したように加熱炉2における輻射熱によって外部から加熱されており、これによりリフォーマー1に供給された原料ガスは、リフォーマー1の触媒管内を流れる間に所定の温度まで加熱されると共にCOリフォーミング触媒の触媒作用を受けて、水素と一酸化炭素とを主成分とする合成ガスに改質される。
【0043】
このリフォーマー1の触媒管内は、出口側の反応温度が800℃〜950℃の範囲内、反応圧力が1.0〜3.0MPaGの範囲内となるように制御することが好ましい。反応条件をこれら範囲内に制御すると共に、原料ガスの組成を前述したスチーム/カーボン比及びCO/カーボン比の範囲内に制御することによって、カーボンを析出させることなく効率よく原料ガスを改質することができる。
【0044】
更に、リフォーマー1出口の合成ガスは、カーボン活性が0.36以上1.0以下であることが好ましい。なぜなら、カーボン活性が0.36未満ではS/C比が1.7より大きくなってリフォーマー1のdutyが過大になるからである。一方、カーボン活性は高くなればなる程リフォーマー1でのエネルギー効率はよくなるものの、1.0を超えると反応器出口にカーボンが析出しやすくなる。ここでカーボン活性とは、カーボン発生の起こりやすさを示す指標であり、カーボン活性が1.0以下であればカーボン発生は熱力学的に起こらないが、カーボン活性が1.0を超えると、カーボン発生のポテンシャルは増大する。
【0045】
カーボン活性は、ある温度及び圧力における生成ガスの分圧と、カーボン生成反応の平衡定数の比から求めることができる。例えば、下記式1で示される一酸化炭素からの炭素析出反応(Boundouard反応)に関しては、炭酸ガスと一酸化炭素の分圧とこの反応の平衡定数の比から下記式2によりカーボン活性(Ac)を求めることができる。なお、下記式2において、KはBoundouard反応の平衡定数、Pco及びPcoはそれぞれ、運転条件下でのCO及びCOの分圧である。
【0046】
[式1]
2CO=C+CO
[式2]
Ac=K・((Pco)/Pco
【0047】
このように、カーボン活性(Ac)は、リフォーマー1への原料ガスの組成、反応条件(温度、圧力)が定まれば、生成物の収支計算より、求めることができる。よって、これらのパラメータを適宜調整することによってリフォーマー1出口でのカーボン活性Acを所望の値に制御することが可能となる。なお、上記式2の平衡定数と温度の関係は、例えば、D.R.Stull et.al.,The Chemical Thermodynamics of Organic Compounds,John Wiley(1969)を参考にして求めることができる。
【0048】
リフォーマー1から出た合成ガスは、一部が抜き出されて一酸化炭素分離手段に送られ、残りの合成ガスはメタノール合成手段に送られる。一酸化炭素分離手段では、前述したように脱炭酸装置3及び深冷分離装置4によってMMA原料となる一酸化炭素が生成される。一方、メタノール合成手段では、上記残りの合成ガスを冷却及び昇圧した後、深冷分離装置4からの水素ガス及び水素分離装置8で分離された高純度の水素ガスを合流させる。
【0049】
この合流後のガスに更に後述するリサイクルガスを合流させたガスがメタノール反応器5に供給される。メタノール反応器5では、主に下記の2つの反応式からなるメタノール合成反応が行われる。
[式3]
CO+2H=CHOH
[式4]
CO+3H=CHOH+H
【0050】
これら2つの反応式の量論関係から分かるように、メタノール合成においては、その原料となる合成ガス中の化合物Xのモル濃度を[X]としたとき、[H]=2[CO]+3[CO]の量論式の成立するときが最も高効率となる。更に、下記に示すようにM値を仮定したとき、上記量論式から、M=2の成立するときが最もメタノール合成が高効率となる。
[式5]
M=([H]−[CO])/([CO]+[CO])
【0051】
そこで、効率のよいメタノール合成を行うべくCOとCOに対してHが過不足にならずに適切な量論比の合成ガスがメタノール合成に供給されることを考慮して、ラインL7を流れるガスのM値を好適には1.8〜2.2の範囲内に、より好適には2.0に制御する。なお、このラインL7を流れるガスは、上記一部の合成ガスが抜き出された後の残りの合成ガスに、深冷分離装置4からの水素ガス及び水素分離装置8からの高純度の水素ガスを合流させたものである。
【0052】
メタノール反応器5を出たガスは次にリサイクル装置6に送られ、ここで熱交換器などの冷却器でガスを冷却された後、凝縮により生じた液体画分と未反応ガスを含む残りのガスとが分離される。ここで得られた液体画分はメタノールと水からなる粗メタノールであり、該粗メタノールは後段のメタノールセパレータ7に送られて、ここで例えば蒸留塔によって精製される。これにより高純度のメタノールが得られる。
【0053】
一方、未反応ガスを含む残りのガスは、リサイクルガスとしてメタノール反応器5の上流側にリサイクルされる。その際、メタンなどのメタノール合成にとって不活性な成分がリサイクルループ内に徐々に蓄積するのを防ぐため、リサイクルガスの一部を系外に取り出して加熱炉2のバーナーで燃焼処理する。また、この抜き取ったガスの少なくとも一部を水素分離装置8に送り、ここで高純度の水素ガスを分離する。得られた高純度の水素ガスは、深冷分離装置4からの水素ガスと共にメタノール生成工程に向う合成ガスに合流される。
【0054】
これにより、前述したように、メタノール生成工程の原料ガスのM値を所望の範囲内に制御することが可能となる。すなわち、メタノール生成工程の原料ガスがメタノール合成にとって最適な量論比となる。また、水素ガスを添加する前のリフォーマー1の出口の生成ガスのM値を2より低くすることができるので、リフォーマー1の原料ガスのスチーム/カーボン比を下げることができる。その結果、リフォーマー1の必要熱量を下げることが可能となる。
【0055】
スチーム/カーボン比は低ければ低いほどリフォーマー1の必要熱量を下げることができるので、消費エネルギーを削減する観点からは好ましいが、スチーム/カーボン比を下げることによってカーボン活性Acが増加するので、カーボンが析出しやすくなる。この場合は、前述したMgO担体に上記所定量のRu及び/又はRhを担持した触媒を用いることによってカーボンの析出を抑えることが可能となる。
【実施例】
【0056】
[参考例]
先ず参考例として、図5に示すようなスチームリフォーマーを備えた従来のメタノールプラントを想定し、製品メタノールを125t/h生産する場合のプロセス計算を行った。プロセス計算の条件として、リフォーマー1の触媒管の出口温度を875℃、出口圧力を2.0MPaGとした。また、リフォーマー1に供給する原料ガスのスチーム/カーボン比を3.0とした。このプロセス計算の結果を下記表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記表1の結果から分かるように、リフォーマー1に供給される天然ガスの体積流量が96×10Nm/hとなった。また、リフォーマー1で生成された合成ガスのM値は2.85であった。
【0059】
[実施例1]
次に、上記参考例で想定したスチームリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーを備えたメタノールプラントに対して、スチームリフォーミング触媒をCOリフォーミング触媒に置き換えると共に、このCOリフォーミング触媒の存在下での改質で得られる合成ガスの一部から一酸化炭素を分離する設備を設ける改造を行った上で、当該改造したプラントによって生成されるメタノール及び一酸化炭素と、系外から導入されるエチレンとを原料としてMMAの製造を行う場合を想定してプロセス計算を行った。
【0060】
すなわち、上記改造後のプラントは、図1のフロー図に示すように、天然ガスに炭酸ガス及びスチームを添加してCOリフォーミング触媒の存在下で改質し、得られた合成ガスからメタノール生成工程により製品メタノールを製造する。更に、合成ガスは一部を抜き出して脱炭酸装置3及び深冷分離装置4で処理し、これにより上記抜き出した一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する。このようにして得たメタノールの一部及び一酸化炭素を、系外から導入されるエチレンと共にMMA製造装置9に供給し、MMAを製造するものである。
【0061】
上記プロセス計算の条件として、リフォーマー1の触媒管の出口温度を875℃、出口圧力を1.85MPaGとした。また、リフォーマー1に供給する原料ガスのスチーム/カーボン比を1.22、CO/カーボン比を0.34とした。更に、メタノール生成工程のリサイクルループからのパージガスを一部回収し、これを分離処理して得た高純度の水素と深冷分離装置4からの水素とをメタノール生成工程に供給する合成ガスに合流することによって、ラインL7を流れる当該合流後のガスのM値を2.0にした。改質工程を含んだメタノールプラントまわりのプロセス計算結果を下記表2に、それ以外の主に一酸化炭素分離工程まわりのプロセス計算結果を下記表3に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
上記表2〜3の結果から分かるように、ラインL7におけるガスのM値を2.0にしつつ、リフォーマー1の出口ガスのM値を2より低い値に抑えることができるので、メタノールの原料ガスとなる二酸化炭素の添加量を増やすことができる上、リサイクルループにおけるメタンの濃度を下げることができる。その結果、製品メタノールの生産量を参考例と同じ125t/hを維持しつつ、MMAを34t/h生産することが可能となった。
【0065】
なお、この改質反応条件では、リフォーマー1出口の合成ガスのカーボン活性(Ac)は0.53となった。この値はカーボンが析出し易い条件になっているが、MgO担体にRu及び/又はRhを200〜2000wtppmの範囲内で担持させたCOリフォーミング触媒を使用することによってカーボンを析出させることなく良好に改質反応を行うことができる。
【0066】
[比較例1]
実施例1との比較のため、上記参考例で想定したスチームリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーを備えたメタノールプラントをそのまま使用し、これにより得られる製品メタノールを一部抜き出しつつ、天然ガスを部分酸化(POX)してMMA原料の一酸化炭素を生成する場合を想定してプロセス計算を行った。
【0067】
すなわち、このプロセスは、図2のフロー図に示すように、図5の参考例の場合と同様にして天然ガスから製品メタノールを生産する。これと並行して、ラインL42を介して抜き出した天然ガスに対して、ラインL43を介して供給されるスチーム、及びラインL44を介して供給される酸素を添加した後、硫黄除去装置11に供給して硫黄分を除去する。そして、この硫黄除去されたガスをPOX装置12に供給し、ここで下記の化学式で示される部分酸化反応を行って一酸化炭素を含んだガスを生成する。そして、このガスに対して実施例1と同様にして脱炭酸装置13及び深冷分離装置14で処理して一酸化炭素ガスを分離するものである。
[式6]
CH+1/2O=CO+2H
【0068】
上記プロセス計算の条件として、リフォーマー1の触媒管の出口温度を875℃、出口圧力を2.0MPaGとした。また、リフォーマー1に供給する原料ガスのスチーム/カーボン比を3.0とした。メタノールプラントまわりのプロセス計算結果を下記表4に、それ以外の主に部分酸化工程まわりのプロセス計算結果を下記表5に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
上記表4〜5の結果から分かるように、COリフォーミングに比べてエネルギー効率の悪いスチームリフォーミングによってメタノール原料の合成ガスを製造しているため、製品メタノールの生産量が実施例1に比べて2割程度低い98t/hとなった。
【0072】
[実施例2]
図3に示すように、実施例1と同様にして改造したプラントによって生成されるメタノール及び一酸化炭素を原料として酢酸の製造を行う場合を想定してプロセス計算を行った。このプロセス計算では、条件として、リフォーマー1の触媒管の出口温度を875℃、出口圧力を1.85MPaGとした。また、リフォーマー1に供給する原料ガスのスチーム/カーボン比を1.20、CO/カーボン比を0.39とした。更に、合成ガスと水素が合流した後のラインL7におけるM値を2.0にした。メタノールプラントまわりのプロセス計算結果を下記表6に、それ以外の主に一酸化炭素分離工程まわりのプロセス計算結果を下記表7に示す。
【0073】
【表6】

【0074】
【表7】

【0075】
上記表6〜7の結果の比較から分かるように、製品メタノールの生産量は参考例や実施例1と同じ125t/hを維持しつつ、酢酸を40t/h生産することが可能となった。
【0076】
なお、この改質反応条件では、リフォーマー1出口の合成ガスのカーボン活性(Ac)は0.54となった。この値はカーボンが析出し易い条件になっているが、MgO担体にRu及び/又はRhを200〜2000wtppmの範囲内で担持させたCOリフォーミング触媒を使用することによってカーボンを析出させることなく良好に改質反応を行うことができる。
【0077】
[比較例2]
実施例2との比較のため、上記参考例で想定したスチームリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーを備えたメタノールプラントをそのまま使用し、これにより得られる製品メタノールを一部抜き出しつつ、天然ガスを部分酸化(POX)して酢酸原料の一酸化炭素を生成する場合を想定してプロセス計算を行った。ここで想定したプロセスは、図4のフロー図に示すように、酢酸製造装置10を除いて比較例1で想定した図2のプロセスと同等である。
【0078】
上記プロセス計算の条件として、リフォーマー1の触媒管の出口温度を875℃、出口圧力を2.0MPaGとした。また、リフォーマー1に供給する原料ガスのスチーム/カーボン比を3.0とした。メタノールプラントまわりのプロセス計算結果を下記表8に、それ以外の主に部分酸化工程まわりのプロセス計算結果を下記表9に示す。
【0079】
【表8】

【0080】
【表9】

【0081】
上記表8〜9の結果から分かるように、COリフォーミングに比べてエネルギー効率の悪いスチームリフォーミングによってメタノール原料の合成ガスを製造しているため、製品メタノールの生産量が実施例2に比べて2割程度低い103t/hとなった。
【符号の説明】
【0082】
1 リフォーマー
2 加熱炉
3 脱炭酸装置
4 深冷分離装置
5 メタノール反応器
6 リサイクル装置
7 メタノールセパレータ
8 水素分離装置
9 MMA製造装置
10 酢酸製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
COリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーに炭酸ガス及び水蒸気と共に低級炭化水素ガスを導入して改質を行う改質工程と、該改質工程で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離工程と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成工程とからなることを特徴とする酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項2】
前記COリフォーミング触媒が、比表面積0.1m/g以下のMgO担体にRu及び/又はRhを200〜2000wtppm担持させたものであることを特徴とする、請求項1に記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項3】
前記リフォーマーの反応条件が、出口温度800〜950℃、及び出口圧力1.0〜3.0MPaGであり、前記リフォーマーに供給されるガスの組成が、モル基準において、HO/カーボン比0.7〜1.7、及びCO/カーボン比0.1〜0.6であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項4】
前記メタノール生成工程が、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを触媒が充填された反応器内で反応させてメタノールの合成を行うメタノール合成工程と、該メタノール合成工程の生成ガスからメタノールを分離するメタノール分離工程と、該メタノール分離工程でメタノールを分離した後の残りのガスをリサイクルガスとして該メタノール合成工程の入口側に戻すリサイクル工程と、該リサイクルガスの少なくとも一部から水素ガスを分離してこれを該メタノール合成工程の入口側に供給する水素分離工程とからなり、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスと前記水素ガスとの合流後のガスのM値が1.8〜2.2であり、該水素分離工程において水素ガスを分離した後の残りのガスを前記リフォーマーの熱源に利用することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項5】
前記水素ガスの分離にPSA装置を用いることを特徴とする、請求項4に記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項6】
前記一酸化炭素分離工程が、前記一部の合成ガスから炭酸ガスを除去する脱炭酸工程と、炭酸ガスが除去されたガスから深冷分離法により一酸化炭素を分離する深冷分離工程とからなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項7】
前記脱炭酸工程で取り除かれた炭酸ガスを、前記改質工程の上流側にリサイクルすることを特徴とする、請求項6に記載の酢酸原料又はMMA原料の製造方法。
【請求項8】
COリフォーミング触媒の存在下において、炭酸ガス及び水蒸気と共に導入される低級炭化水素ガスの改質を行う改質手段と、該改質手段で得た合成ガスの一部を抜出し、この一部の合成ガスから一酸化炭素を分離する一酸化炭素分離手段と、前記一部を抜き出した後の残りの合成ガスを処理してメタノールを生成するメタノール生成手段とからなることを特徴とする酢酸原料又はMMA原料の製造プラント。
【請求項9】
メタノールに加えて酢酸原料又はMMA原料を生産するため、スチームリフォーミング触媒が充填されたリフォーマーを備えたメタノールプラントを改造する方法であって、低級炭化水素ガスを炭酸ガス及びスチームによって改質すべくリフォーマー内のスチームリフォーミング触媒をCOリフォーミング触媒に置き換えると共に、改質で得られる合成ガスの一部から一酸化炭素を分離する設備を設けることを特徴とするメタノールプラントの改造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103909(P2013−103909A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248766(P2011−248766)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【Fターム(参考)】