説明

メタボリックシンドロームの治療または予防に特に有効な組成物

本発明は、メタボリックシンドロームおよびそれに起因する疾患または状態の治療または予防に有用な医薬製剤の製造のためのアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の使用に関する。また本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤として有用な医薬製剤の製造のためのビタミンB1またはその代謝産物の使用に関する。さらに本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を食材との組合せで含有する食料製品、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を、液状、固形または半固形の担体との組合せで含有する食品添加剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドロームおよびそれに起因する疾患または状態の治療または予防のためのセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)阻害剤の使用に関する。本発明はまた、SSAO阻害剤としてのビタミンB1またはその代謝産物の使用に関する。さらに、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を含有する食料製品や食品添加剤、ならびに食材への添加剤または栄養補助食品としての前記阻害剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を明らかにするために本明細書で使用する刊行物および他の資料、特に、実施に関するさらなる詳細を提供するための事例は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
VAP−1は、ヒト内皮細胞接着分子であり、他の炎症関連接着分子と明確に区別されるいくつかの特有の特性を有する。VAP−1の最も興味深い特徴の1つは、モノアミンオキシダーゼ活性を含む触媒性細胞外ドメインである(Smith, D. J.ら, J. Exp. Med 188: 17-27 (1998))。
【0004】
ヒトVAP−1 cDNAのクローニングおよび配列決定により、これが、銅含有アミンオキシダーゼ(E.C.1.4.3.6)と呼ばれる酵素のクラスへの相同性を有する膜貫通タンパク質をコードすることが明らかとなった。酵素アッセイにより、VAP−1が、該タンパク質の細胞外ドメインに存在するモノアミンオキシダーゼ(MAO)活性を有することが示された(Smith, D. J.ら, J. Exp. Med 188: 17-27 (1998))。したがって、VAP−1は、エクト酵素である。VAP−1 MAO活性の解析により、VAP−1は、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)と称する膜結合型MAOのクラスに属することが示された。これらは、広く分布するミトコンドリアMAO−AおよびBフラボタンパク質とは、アミノ酸配列、補因子、基質特異性およびある種の阻害剤に対する感受性により明確に区別される。しかしながら、ある種の基質および阻害剤は、SSAO活性およびMAO活性の両方に共通する。哺乳動物のSSAOは、内生的に生じたか、または食餌もしくは生体異物として吸収された種々のモノアミンを代謝し得る。これらは、主に、脂肪族または芳香族の第一級モノアミン(メチルアミンまたはベンジルアミンなど)に作用する(Lyles G. A., Int. J. Biochem. Cell Biol, 28: 259-274 (1996))。したがって、血管内皮細胞表面上に位置するVAP−1は、循環している一級モノアミンに対し、下記の反応経路にしたがって作用し得る。
RNH2+O2+H2O -----→ RCHO+H22+NH3
【0005】
ヒトにおけるVAP−1 SSAOの生理的基質は明確に同定されていない。しかしながら、メチルアミンは、VAP−1 SSAOの良好な基質である。メチルアミンは、クレアチニン、サルコシンおよびアドレナリンの分解のための種々のヒト生化学的経路の産物であり、種々の哺乳動物の組織内および血中に見られる。また、これは、食事(dietary)前駆物質の腸細菌分解によって飲食物にも由来し得る。血中のメチルアミン濃度は、糖尿病などのある一定の生理学的状況および病理学的状況において増加し得る。別の潜在的な生理的基質はアミノアセトンである。
【0006】
VAP−1 SSAO活性は、白血球の表面上に発現されるVAP−1リガンド上に提示されるアミン基質との直接相互作用を伴う新規な機序による内皮細胞への白血球接着の経路に直接関与することが提案されている(Salmiら、Immunity,vol. 14, pp. 265-276 (2001))。この刊行物には、内皮に対する白血球の接着のプロセスにおけるVAP−1 SSAO活性の直接関与が記載されている。したがって、VAP−1 SSAO活性の阻害剤は、炎症の領域における白血球接着を低減し、それにより炎症領域内への白血球輸送が低減され、したがって炎症プロセス自体が低減されることが期待され得る。
【0007】
ヒト臨床組織試料では、VAP−1の発現が炎症部位において誘導される。このVAP−1レベルの増加は、血中に存在するモノアミンに対するVAP−1 SSAO細胞外ドメインの作用によって生じるH22生成の増加をもたらし得る。この内皮細胞の局所環境内でのH22生成は、他の細胞内事象を開始し得る。H22は、他の接着分子を上方調節し得る既知のシグナル伝達分子であり、この接着分子発現の増加は、VAP−1が発現される領域内への白血球輸送の増強をもたらし得る。また、VAP−1 SSAO反応の他の生成物が、炎症プロセスにも寄与する生物学的効果を有し得ることもあり得る。したがって、VAP−1 SSAO活性の生成物は、炎症プロセスの段階的拡大に関与し得、これは、特異的SSAO阻害剤によりブロックされ得る。
【0008】
VAP−1 SSAOは、VAP−1 SSAOの循環しているアミン基質レベルの増加と関連する多くの他の病理学的状態に関与し得る。これらの基質の酸化的脱アミン化は、内皮細胞の局所環境における毒性のアルデヒドおよび酸素ラジカルのレベルの増加をもたらし得、これは該細胞を損傷し得、血管系の損傷をもたらし得る。網膜症、神経障害および腎症などの血管障害は、SSAO活性の特異的阻害剤により治療され得ることが提案されている。
【0009】
Takahashi, H. ら、Yakugaku Zasshi 101 (12): 1154-1156 (1981) には、多くのN−アルキルアミノエフェドリン(たとえば、N−(イソプロピリデンアミノ)−エフェドリンまたはR,S−(+)−(2−ヒドロキシ−1−メチル−2−フェニルエチル)メチルヒドラゾン−2−プロパノンなど)の合成が報告されている。これらのヒドラゾン化合物は、気管支の筋組織に対するその効果を評価するために合成されたが、なんら有意な活性は示さないことがわかった。
【0010】
Grifantini, M. ら、Farmaco, Ed. Sci. 23 (3): 197-203 (1968) には、抗欝特性およびモノアミンオキシダーゼ阻害特性を有する、N−アミノ−1−エフェドリンおよびN−アミノ−d−シュードエフェドリンのいくつかのアルキル誘導体およびアシル誘導体の合成が報告されている。
【0011】
Jeffrey O’Sullivan ら、Biochimica et Biophysica Acta 1647 (2003) 367-371には、ある種のアミノヘキソース、すなわちグルコサミン、ガラクトサミンおよびマンノサミンによるセミカルバジド感受性アミンオキシダーゼの阻害が報告されている。
【0012】
国際公開第02/020290号パンフレットおよび同03/006003号パンフレットには、VAP−1活性を調節する特異的VAP−1 SSAO阻害剤として有用なある種のヒドラジノ化合物が開示されている。これらの化合物は、急性および慢性の炎症性の状態または疾患ならびに炭水化物代謝、脂肪細胞の分化もしくは機能および平滑筋細胞の機能の異常と関連する疾患ならびに種々の血管系の疾患の治療に有用であると記載されている。
【発明の開示】
【0013】
以下に言及する最近の研究に基づき、本発明者らは、血管接着タンパク質(vascular adhesion protein-1)(VAP−1)を過剰発現するトランスジェニックマウス(慢性的に、追加的なSSAO基質またはアテローム発生性の食事で刺激した)は、非トランスジェニックマウスと比べ、グルコース取り込みの増大を示すことを見出した。SSAO代謝の最終生成物である過酸化水素は、グルコース取り込みを増強するインスリン様効果をもたらし得る。この知見に基づき、本発明者らは、メタボリックシンドロームでは、血中グルコースレベルを調節しようとしてアミンオキシダーゼ酵素活性が増大していること、および、該酵素活性の増強の結果として、その後、メタボリックシンドロームに起因する合併症が促進されることを提案する。
【0014】
ある側面によれば、本発明は、メタボリックシンドロームおよびそれに起因する疾患または状態の治療または予防に有用な医薬製剤の製造のためのアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の使用に関する。
【0015】
別の側面によれば、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤として有用な医薬製剤の製造のための、ビタミンB1またはその代謝産物の使用に関する。
【0016】
第3の側面によれば、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を食材との組合せで含有する食料製品に関する。
【0017】
第4の側面によれば、本発明は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を、液状、固形または半固形の担体との組合せで含有する食品添加剤に関する。
【0018】
第5の側面によれば、本発明は、食材に対する添加剤としてのアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
用語「メタボリックシンドローム」は、次の異常:中心性肥満、特に、高グリセリド血症、低HDLコレステロール、低密度LDL粒子および食後高脂肪血症(postpranial lipemia)などの異常脂質血症;耐糖能障害(空腹時グルコース異常など);インスリン抵抗性および高血圧を含むと理解されたい。
【0020】
用語「メタボリックシンドロームと関連する合併症」は、前記シンドロームに起因する任意の疾患または障害を含むと理解されたい。かかる疾患は、特に、種々の型のミクロアルブミン尿症;繊維素溶解の障害および凝固能力の増大(PAI−1の上昇、フィブリノーゲンの上昇およびフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)レベルの増大を含む);慢性炎症の徴候(例えば、CRP上昇など);内皮機能障害(例えば、内皮依存性血管拡張障害など);脂肪肝疾患および微小血管障害である。具体的な疾患および障害の非限定的な例としては、アテローム性硬化症(atherosclerosis)、血管性網膜症、網膜症、糸球体硬化症、ネフロパシー、ネフローゼ症候群、多発性ニューロパチー、単発性ニューロパチー、自律神経障害、緑内障、灰色白内障、足底部潰瘍、関節の問題、および感染リスクの増大が挙げられ得る。
【0021】
Bo Isomaa, Life Sciences 73 (2003)2395-2411によれば、ある人が下記の5つの条件のうち3つをみたす場合、メタボリックシンドロームに罹患している:
1.空腹時血糖>6.1mmol/l
2.高グリセリド血症;トリグリセリド>1.7mmol/l
3.低HDLコレステロール;<1.0mmol/l(男性)および<1.3mmol/l(女性)
4.高血圧;血圧>130/85および/または薬物適用
5.中心性肥満;胴囲>102cm(男性)および>88cm(女性)。
【0022】
用語「予防」は、完全な予防(prevention)、防御(prophylaxis)、および個体の前記疾患または状態を伴う病気になるリスクの低下を含むことを理解されたい。その用語はすでに発症した症状の低減を含むものとも理解されるべきである。
【0023】
用語「治療」または「治療する」は、疾患または状態の完全な治癒、および該疾患または状態の改善または軽減を含むことを理解されたい。
【0024】
用語「個体」は、ヒトまたは動物の被験体をいう。
【0025】
用語「アミンオキシダーゼ酵素阻害剤」は、本明細書においてこの活性を有する任意の既知化合物またはまだ未発見の化合物を包含するものと理解されるべきである。かかる化合物の任意の異性体、異性体混合物、薬学的にまたは生理学的に許容され得る任意の塩を包含することも理解されたい。
【0026】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤は、特にメタボリックシンドロームから誘導される合併症の治療または予防において有用である。
【0027】
メタボリックシンドロームおよびそれに起因する疾患または状態の予防または治療における使用のための医薬組成物において使用される場合、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤、その異性体、異性体混合物、またはその薬学的に許容され得る塩は、様々な経路で投与することができる。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、関節内、髄腔内、筋肉内、腹腔内注もしくは皮内注射、または経皮、経頬側粘膜、経口腔粘膜、経眼経路または吸入によってなされ得る。あるいは、または併用して、経口投与も可能である。特に好ましいのは経口投与である。好適な経口製剤としては、たとえば従来のもしくは徐放性の錠剤およびゼラチンカプセルがあげられる。
【0028】
化合物の必要投与量は、治療される特定の疾患または状態、状態の重症度、治療期間、投与経路および使用される特定の化合物により変化し得る。
【0029】
したがって、典型的な用量は、体重に対し、約0.1μg/kgから約300mg/kgの投与量範囲、好ましくは1.0μg/kgから10mg/kgのあいだである。本発明の化合物は、1日1回で投与されてもよく、または全1日投与量が1日に2回、3回または4回の分割用量で投与されても良い。
【0030】
用語「食材」は、植物もしくは動物起源であるか、または合成により製造された任意の食用可能な成分であって、哺乳動物の身体へのエネルギー供給物質として有用であるものと理解されたい。したがって、食材には、炭水化物、タンパク質もしくは脂肪または他の成分(特に、水)とそれらの混合物および/もしくは組成物が含まれ得る。食材は、野菜、シリアル、小麦粉、ミルク、肉、卵、バター、マーガリンなどの基本食材であり得る。また、食材として、任意の完成品(finished)組成物、例えば、パン、ケーキ、ヨーグルトおよび他の乳製品、完成品の食事なども当然考慮されよう。
【0031】
本発明による食料製品は、任意の食料製品であるが、特に、機能性食品、栄養サプリメント、栄養剤、ファーマフード、栄養補給食品、健康食品、またはデザイナーフードである。アミンオキシダーゼ酵素阻害剤の好適な濃度は、使用する具体的な阻害剤および対象となる(in question)食料製品に依存する。
【0032】
本発明による機能性食品は、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤が補われた任意の食材であり得る。非限定的な例としては、バター、マーガリン、ビスケット、パン、ケーキ、キャンデー、菓子類、ヨーグルトもしくは別の発酵乳製品、またはシリアル(ミューズリなど)が挙げられ得る。
【0033】
特に有用な食材としては、ライ麦および種々のライ麦系製品が挙げられ得る。
【0034】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤は、原則的には、そのままで食品製造プロセスに添加され得るが、正確な添加投与(dosing)を達成するため、食品製造プロセスに加える前に、まず該阻害剤を担体と混合することが好ましいだろう。
【0035】
本発明はまた、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を液状、固形または半固形の担体との組合せで含有する食品添加剤に関する。担体は、食品における使用に許容され得、かつアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の性質に影響することなく該阻害剤との混合に適した任意の食用可能な非毒性の固形、半固形または液状の担体であり得る。担体の役割は、主に、正確な量のアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の投薬をより容易にすることである。食品添加剤中での該阻害剤の好適な濃度は、対象となる阻害剤および食品添加剤の提案されている用途に依存する。
【0036】
本発明による食品添加剤は、一選択肢によれば、食品業界により、アミンオキシダーゼ酵素阻害剤が補われた食材を含む種々の食料製品の加工の際に使用され得る。この目的のため、食品添加剤それを、食品製造プロセスでの該添加剤の添加における工業的用途に適したパッケージ内に簡便に封入される。
【0037】
別の選択肢によれば、食品添加剤は、直接、消費者によって、例えば、ある一定量の食品添加剤を摂取する食事に添加投与することにより使用され得る。この選択肢では、パッケージに適正な量を導く手段および誤って過剰添加投与するのを制限する手段を設けることが好ましいであろう。
【0038】
特に好ましい実施形態によれば、食品添加剤は、栄養補助食品として使用される単位用量の形態である。したがって、文言「食品添加剤」は、食品添加剤は、消費者が摂取する前に、常に最初に食材に添加されなければならないということを意味すると、狭義に解釈されないものとする。栄養補助食品は、最初に食材と混合することなく、直接摂取してもよい。栄養補助食品は、食事と一緒に摂取してもよく、あるいはまた、食間に摂取してもよい。
【0039】
食料製品または食品添加剤に使用される特に有用なアミンオキシダーゼ酵素阻害剤はビタミンB1またはその任意の代謝産物である。
【0040】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を含有する栄養補助食品の典型的な剤形としては、限定されないが、粉剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、キャプレッツ、トローチ剤、液剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤などの経口投薬形態が挙げられる。かかる剤形にはすべて、当業者に知られた慣用の担体、希釈剤、賦形剤、結合剤および添加剤を含み得る。
【0041】
典型的な固形担体としては、ラクトース、スクロース、ゼラチン、寒天などの多糖類が挙げられ、一方、液状担体としては、塩、多糖類の水溶液、錯化剤、界面活性剤、シロップ、植物油(ピーナッツ油またはオリーブ油など)、およびある特定のアルコール類が挙げられる。しかしながら、任意の許容され得る固形、半固形または液状の担体が、本発明による食品添加剤に使用され得る。しかしながら、食品添加剤と普通の水だけの混合物である食品添加剤配合物は、実行される可能性が低いことが予想される。
【0042】
前記食料製品および食品添加物は、特にメタボリックシンドロームに罹患しているかそのリスクのあるヒトにとって有用であるが、これらの製品は、他の個体、特にアミンオキシダーゼ酵素活性の増加により生じる疾患または状態に罹患しているかまたはそのリスクのある個体においても価値のある健康増進効果を有し得る。そのような疾患または状態の例としては、炎症性疾患または状態;脂肪細胞の分化や機能もしくは平滑筋細胞機能の異常に関係する疾患、および脈管系疾患などである。
【0043】
かかる炎症性疾患または状態の例としては、
結合組織の炎症性疾患または状態、たとえば強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節炎、変形性関節症または退行性関節疾患、リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、ベーチェット症候群、再発性多発性軟骨炎、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、全身性硬化症、好酸球性筋膜炎、多発性筋炎や皮膚筋炎、リウマチ性多発性筋痛症、脈管炎、側頭動脈炎、結節性多発性動脈炎、ウェグナー肉芽腫症、混合性結合組織病、または若年性関節リウマチなど、
消化器系の炎症性疾患または状態、たとえば、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性結腸症候群(痙攣性結腸)、肝線維症、口腔内膜炎(口内炎)、または再発性アフタ性口内炎など、
中枢神経系の炎症性疾患または状態、たとえば、多発性硬化症、アルツハイマー病または虚血性脳卒中による虚血―再灌流障害など、
肺の炎症性疾患または状態、たとえば、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患または成人呼吸窮迫症候群など、
皮膚の炎症性疾患または状態、たとえば、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、ばら色ひこう疹、扁平苔癬または毛孔性紅色ひこう疹など、
組織外傷に関連するか、または臓器移植もしくは他の外科手術に起因する炎症性しっかんまたは状態
が挙げられる。
【0044】
脂肪細胞の分化もしくは機能、または平滑筋細胞の機能の異常に関連する疾患の例は、アテローム性硬化症や肥満などである。
【0045】
脈管系疾患の例は、アテローム性動脈硬化症(atheromatous atherosclerosis)、非アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、末梢動脈閉塞、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)またはレイノー病もしくはレイノー現象などである。
【0046】
本発明は、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例】
【0047】
具体的な目的
本研究は、インビトロでのセミカーバザイド感受性アミンオキシダーゼ酵素(SSAO)上昇の重要性を調べる。VAP−1の擬似インスリン能と、血管系合併症を引き起こしたり悪化させたりする可能性について検討するために、本発明者らは、SSAO活性を有し、内皮細胞表面や可溶型の分子であるVAP−1をトランスジェニックマウスにおいて過剰発現させ、その後該マウスに慢性的に、15ヶ月に渡り追加のSSAO基質またはアテローム生成食を投与した。
【0048】
原則的所見
1)慢性的なヒトVAP−1の過剰発現は肥満を促進する
カロリー摂取量の減少にかかわらず、トランスジェニックマウスは、コントロールマウスに比し、体重、肥満度指数(BMI)、腹部皮下脂肪および精巣上体白色脂肪組織(WAT)沈着の増加を認めた。
【0049】
2)血糖はVAP−1活性によって調節されている
導入遺伝子とメチルアミンとの組み合わせは、マウス空腹時の糖負荷で糖の取り込みを亢進した(図1A)。この亢進は、小分子のSSAO阻害剤によってブロックされた(図1B)。空腹時グルコースレベルは導入遺伝子によっても低下され、HbA1cレベルは導入遺伝子および/またはメチルアミン補充によっても低下されていた(図1C)。この血糖と耐糖能の改善は、少なくとも部分的には、骨格筋のインスリン応答性の改善によるものと説明され得る(図1D)。
【0050】
3)VAP−1の過剰発現は糖化最終産物(AGE)形成を増加させる。
AGEペプチドレベルを64週齢のマウス血中で、蛍光分光法によって測定した。AGEに特異的蛍光レベル(励起360、発光465)は、導入遺伝子の存在下で増加した(図2)。蛋白濃度の内部標準であるトリプトファン由来の蛍光(励起280、発光333)は、各群間で有意な差は見られなかった。
【0051】
4)メチルアミンの補充は、高血圧を促進する
尾部のカフ法で、全ての群のマウスの収縮期血圧と心拍数が測定された。メチルアミン補充により血圧は有意に上昇したが、心拍数には影響がなかった。導入遺伝子のみでも血圧の上昇傾向が見られた。
【0052】
5)メチルアミンの補充およびmTIEhVAP−1導入遺伝子は粥状硬化の進行を修飾する
各群のマウスに対しオイルレッドO染色陽性の大動脈表面積率が計測された。メチルアミンの補充は未処理対照と比較した場合、病変形成率が上昇していた。導入遺伝子により各大動脈の病変数は減少していたが、一方で病変形成総面積は変化しておらず、これにより個々の病変が増大していることが示唆された。
【0053】
6)mTIEhVAP−1導入遺伝子は糸球体硬化症進行期間の腎肥大および糸球体肥大を阻害する
糸球体硬化症はヒトおよび実験動物の糖尿病における主要な腎病変である。その病因は論議を呼んでおり、糸球体硬化症の進行における腎過肥大および糸球体肥大の意義は不明である。本研究では、この二つの腎病理は別個に評価された。
【0054】
腎総質量は導入遺伝子によって減少していた。アテローム形成食誘導による腎質量の増加も、導入遺伝子により抑制された。形態学的分析により、さらに総糸球体表面積の有意な導入遺伝子特異的減少とアテローム形成食誘導糸球体肥大の阻害も明らかとなった。
【0055】
反対に、腎切片の組織学的分析ではアテローム形成食を与えられたトランスジェニックマウスにおいて、糸球体硬化症(毛細血管間隙の減少、細胞数の増加、細胞外マトリックスの増加および糸球体柄の肥厚)が明らかとなった。中程度の糸球体病変は、アテローム形成食を与えられた非トランスジェニックマウスにおいても認められたが、その程度はトランスジェニックマウスよりも軽度であった。さらに、偶発的な糸球体嚢胞は、アテローム形成食を与えられたトランスジェニックマウスに存在したが、同様に給餌された非トランスジェニックマウスには存在しなかった。
【0056】
結論と意義
以前の研究で、うっ血性心不全と特異的肝炎の患者の血中においてSSAO活性の上昇が報告されている。今回の包括的研究で、本発明者らは、このSSAOの上昇が単に様々な病態の良性副産物ではなく、生物学的及び病理学的変化の原因となっていることを示すインビボデータを初めて報告した。トランスジェニックマウスにおいてこれらの実験を行なうことにより、本発明者らは、通常SSAOの上昇が認められる病態においては、追加合併症のないSSAOの上昇の重要性を明らかにした。
【0057】
本発明者らは、これらの変化はSSAO基質代謝の最終産物である過酸化水素、アンモニアおよびアルデヒドに起因すると示した。一方、過酸化水素は肥満(脂肪合成促進および脂肪分解阻害)とメタボリックシンドローム(糖取り込みの増加)との双方に重要な、インスリン様効果を引き起こすことができ、他方、過酸化水素は、内皮細胞毒性および心臓血管病理に関係する重要な反応性酸素種(ROS)である。さらにアンモニアおよびホルムアルデヒドは、タンパク質の異常な非酵素的糖化を促進することができる、大変活性および細胞毒性の強い化学薬品であり、直接あるいは続発的に高血圧、粥状硬化、腎症などの糖尿病後期合併症を発生し得る。
【0058】
これらの知見は、全く正反対であると思われるが、互いに矛盾するものではない。本発明者らは、メタボリックシンドロームでは血糖値を調節するためにVAP−1活性が上昇すること、および慢性的な酵素活性の副産物として、続発的に血管損傷が進むことを提案した。これは、VAP−1を操作することによって、メタボリックシンドロームに関連した病態の治療手段として供される可能性がある。
【0059】
実験
図1A〜1Dへの言及:
ヒトVAP−1過剰発現とメチルアミン補充が耐糖能を増強する。糖負荷(グルコース2.0gIP/体重kg)試験後30、60、90、120分後の、空腹時血糖値に対する血糖の上昇は、平均±SEMで示す。(A)通常の水道水(実線)またはメチルアミン添加水(波線)を投与された26週齢の非トランスジェニック(白記号)およびmTIEhVAP−1トランスジェニック(黒記号)マウスへの糖負荷試験。糖クリアランス比は、ANOVAによる個々のマウスの曲線下面積(AUC)(メチルアミンp=0.0002、およびメチルアミン/導入遺伝子相互作用p=0.046)、および独立スチューデントt検定による各時点の血糖値(星印 p<0.01 対水道水投与の非トランスジェニックマウス、十字 p<0.02 対メチルアミン投与の非トランスジェニックマウス)を比べると、有意な差が見られた。(B)10〜12週齢のトランスジェニックマウスへの糖負荷試験。通常の水道水投与(実線)、その後16日間メチルアミン添加水を投与されたもの(四角および波線)、メチルアミン投与に加えSSAO阻害剤注射を受けたもの(三角および波線)。対応スチューデントt検定では、各時点で有意差(対水道水投与のトランスジェニックマウス、星印 p<0.01、および十字 p=0.037)が見られ、AUCでも有意差(水道水対メチルアミン投与 p=0.006、メチルアミン投与対メチルアミン投与+SSAO阻害剤治療 p=0.0005、水道水対メチルアミン投与+SSAO阻害剤治療 p=0.0008)が見られた。(C)グリコシル化されたヘモグロビン(HbA1c)の割合の平均値±SEMは、空腹時血から測定された。57〜59週齢の非トランスジェニックマウス(白棒)およびトランスジェニックマウス(黒棒)、トランスジェニックマウスにメチルアミン投与したもの(灰色、縞)または投与しなかったもの。HbA1c値は混合ANOVAにおいて有意差(導入遺伝子 p=0.03、およびメチルアミン投与 p<0.0001)が見られ、導入遺伝子/メチルアミン相互作用が確認された(p=0.01)。星印は独立スチューデントt検定による、対通常の食餌と飲料水を投与された非トランスジェニックマウス p<0.01。(D)非トランスジェニックマウスおよびmTIEhVAP−1トランスジェニックマウスにおける筋肉内糖輸送能。ヒラメ筋における2−[1−14C]−デオキシ−D−グルコース輸送のインスリン刺激前後比が、非トランスジェニック(NT、白棒)およびトランスジェニック(TG、黒棒)マウスにおいて、14日間のメチルアミン経口投与(灰色、縞)または非投与にて測定された。非投与の非トランスジェニックマウスの刺激前輸送に対する上昇率の平均値±SEMとして示されている。星印、対非トランスジェニック試料の刺激前値 p<0.05。十字、インスリン刺激のみの非トランスジェニックマウスと比較した場合の有意差(p=0.02)またはインスリン+メチルアミン処置非トランスジェニックマウスと比較した場合の有意差(p=0.01)。
【0060】
図2A〜2Bへの言及:
(A)SSAO反応産物のホルムアルデヒドは、インビトロでAGE形成を促進する。0.5Mグルコースおよび0.008%ホルムアルデヒドの添加および非添加において37℃でインキュベートされたタンパク質試料(20mg/mlリボヌクレアーゼ)のAGE特異的蛍光スペクトル(励起360、発光465)は、11日間周期的に測定された。AU=任意単位。(B)mTIEhVAP−1導入遺伝子は64週齢のマウス血中でAGEペプチド値を増加させる。非トランスジェニック(NT、白棒)およびトランスジェニック (TG、黒棒)マウスに通常の飼料(chow)および水(tap)、メチルアミン添加水(Methyl.)またはアテローム形成食(athero.)を長期投与した後の、AGE特異的蛍光スペクトル(励起360、発光465)。全ての治療群を比した場合、トランスジェニック群でAGE特異的蛍光スペクトルの有意な(ANOVA、導入遺伝子効果 p=0.05)上昇が見られた。また通常飼料と水道水投与群に比し、トランスジェニック群で有意な(独立スチューデントt検定、星印p=0.05)AGE上昇が見られた。AU=任意単位。
【0061】
本発明者らは、糖尿病では血糖値を調節するためにSSAO活性が上昇し、慢性的なSSAO活性の副産物として、続発的に血管合併症が進行するということを提案する。(糖尿病や導入遺伝子の過剰発現により)インビトロでのVAP−1値が上昇すると、SSAO活性も上昇する可能性が高い。VAP−1によるメチルアミンなどの第一級アミンの脱アミノ化は、生物学的活性を有する過酸化水素、アンモニア、アルデヒドなどの化合物を産生する。これら化合物は順次、AGE形成や糖尿病に典型的な血管障害の促進期間において、有益なインスリン様効果を産むことができる。
【0062】
VAP−1阻害剤としてのビタミンB1とその代謝産物:
SSAOによる過酸化水素形成の蛍光測定:
細胞のSSAO活性は、高感受性で安定したH22のプローブであるアンプレックスレッド試薬(10−アセチル−3,7−ジヒドロキシフェノキサジン;モレキュラープローブス(Molecular Probes)、ヨーロッパ BV)を用いて測定された。培養細胞(VAP−1がトランスフェクトされたCHO細胞、およびこれらのモックトランスフェクト対照)を、クレブスリンゲルリン酸ブドウ糖液(KRPG;145mM NaCl、5.7mMリン酸ナトリウム、4.86mM KCl、0.54mM CaCl2、1.22mMMgSO4、5.5mMブドウ糖、pH7.35)でリンスし、チアミン、ペニシリンまたはアンピシリン(1mg/ml)を含む200μlのKRPGで37℃、30分間前培養した。触媒反応は基質であるベンジルアミンと、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(最終濃度0.8U/ml)とアンプレックスレッド試薬(60μM)を含むH22検出液を加えることにより開始された。プレートを250μlの最終容量で、37℃、1〜2時間培養し、培養液を遠心によって洗浄し、アリコート(200μl)で白色の非燐光マイクロプレート(Cliniplate)中に静置した。試料の蛍光強度を測定し(励起、545nm;発光、590nm;Tecan ULTRA fluoropolarometer)、H22濃度を標準H22の段階希釈液もしくはアンプレックスレッド反応産物であるレゾルフィン(モレキュラープローブス)によって得られた較正曲線をもとに算出した。
【0063】
モノアミンオキシダーゼ活性の放射化学的測定
アミンオキシダーゼ活性を、基質として[7−14C]−ベンジルアミンヒドロクロライド(特異活性 57mCi/mmol、アマシャム(Amersham))を、および25マイクロリットルの血清を使用して放射化学的にアッセイした。反応を6μmol/Lの[14C]−ベンジルアミン(40000dpm)の添加により開始し、1時間後、クエン酸により終結した。アルデヒドを、ジフェニルオキサゾールを含むトルエン中に抽出し、[14C]標識ベンジルアルデヒドの形成をシンチレーションカウンターで定量化した。表示された濃度のチアミンの存在下で血中VAP−1/SSAO酵素活性の潜在的阻害を測定した。最終的に6人のボランティアの血中VAP−1/SSAO酵素活性を、5〜9日間、100mg/日のビタミンB1の摂取前後で測定した。
【0064】
結果
蛍光定量法では、VAP−1をトランスフェクトされたCHO細胞処理後のチアミンによる抑制率は1mg/mlの濃度で37%、200μg/mlで38%、100μg/mlで7%であり、一方、コントロール、ペニシリンおよびアンピシリンは活性を阻害しなかった。インビトロでチアミンは、血中VAP−1/SSAO活性を1mg/mlで87%、800μg/mlで70%、400μg/mlで39%、200μg/mlで32%減少させた。インビトロではVAP−1/SSAO酵素活性のビタミンB1への応答には個人差があった。6人中4人のボランティアがビタミンBに応答した。実験終了時、それらのVAP−1酵素活性は25、2、32および16%(平均19%)に減少していた。
【0065】
本発明の方法は様々な実施態様の形態で組み込まれ得、本明細書にはほんの数例が開示されているに過ぎないことは認識されよう。当業者には、他の実施態様が存在し、それが本発明の精神から逸脱しないことは自明である。したがって、記載された実施態様は例示であり、制限的なものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1A】糖負荷(グルコース2.0gIP/体重kg)試験後30、60、90、120分後の、空腹時血糖値に対する血糖の上昇は、平均±SEMで示す。通常の水道水(実線)またはメチルアミン添加水(波線)を投与された26週齢の非トランスジェニック(白記号)およびmTIEhVAP−1トランスジェニック(黒記号)マウスへの糖負荷試験。糖クリアランス比は、ANOVAによる個々のマウスの曲線下面積(AUC)(メチルアミンp=0.0002、およびメチルアミン/導入遺伝子相互作用p=0.046)、および独立スチューデントt検定による各時点の血糖値(星印 p<0.01 対水道水投与の非トランスジェニックマウス、十字 p<0.02 対メチルアミン投与の非トランスジェニックマウス)を比べると、有意な差が見られた。
【図1B】糖負荷(グルコース2.0gIP/体重kg)試験後30、60、90、120分後の、空腹時血糖値に対する血糖の上昇は、平均±SEMで示す。10〜12週齢のトランスジェニックマウスへの糖負荷試験。通常の水道水投与(実線)、その後16日間メチルアミン添加水を投与されたもの(四角および波線)、メチルアミン投与に加えSSAO阻害剤注射を受けたもの(三角および波線)。対応スチューデントt検定では、各時点で有意差(対水道水投与のトランスジェニックマウス、星印 p<0.01、および十字 p=0.037)が見られ、AUCでも有意差(水道水対メチルアミン投与 p=0.006、メチルアミン投与対メチルアミン投与+SSAO阻害剤治療 p=0.0005、水道水対メチルアミン投与+SSAO阻害剤治療 p=0.0008)が見られた。
【図1C】グリコシル化されたヘモグロビン(HbA1c)の割合の平均値±SEMは、空腹時血から測定された。57〜59週齢の非トランスジェニックマウス(白棒)およびトランスジェニックマウス(黒棒)、トランスジェニックマウスにメチルアミン投与したもの(灰色、縞)または投与しなかったもの。HbA1c値は混合ANOVAにおいて有意差(導入遺伝子 p=0.03、およびメチルアミン投与 p<0.0001)が見られ、導入遺伝子/メチルアミン相互作用が確認された(p=0.01)。星印は独立スチューデントt検定による、対通常の食餌と飲料水を投与された非トランスジェニックマウス p<0.01。
【図1D】非トランスジェニックマウスおよびmTIEhVAP−1トランスジェニックマウスにおける筋肉内糖輸送能。ヒラメ筋における2−[1−14C]−デオキシ−D−グルコース輸送のインスリン刺激前後比が、非トランスジェニック(NT、白棒)およびトランスジェニック(TG、黒棒)マウスにおいて、14日間のメチルアミン経口投与(灰色、縞)または非投与にて測定された。非投与の非トランスジェニックマウスの刺激前輸送に対する上昇率の平均値±SEMとして示されている。星印、対非トランスジェニック試料の刺激前値 p<0.05。十字、インスリン刺激のみの非トランスジェニックマウスと比較した場合の有意差(p=0.02)またはインスリン+メチルアミン処置非トランスジェニックマウスと比較した場合の有意差(p=0.01)。
【図2A】SSAO反応産物のホルムアルデヒドは、インビトロでAGE形成を促進する。0.5Mグルコースおよび0.008%ホルムアルデヒドの添加および非添加において37℃でインキュベートされたタンパク質試料(20mg/mlリボヌクレアーゼ)のAGE特異的蛍光スペクトル(励起360、発光465)は、11日間周期的に測定された。AU=任意単位。
【図2B】mTIEhVAP−1導入遺伝子は64週齢のマウス血中でAGEペプチド値を増加させる。非トランスジェニック(NT、白棒)およびトランスジェニック (TG、黒棒)マウスに通常の飼料(chow)および水(tap)、メチルアミン添加水(Methyl.)またはアテローム形成食(athero.)を長期投与した後の、AGE特異的蛍光スペクトル(励起360、発光465)。全ての治療群を比した場合、トランスジェニック群でAGE特異的蛍光スペクトルの有意な(ANOVA、導入遺伝子効果 p=0.05)上昇が見られた。また通常飼料と水道水投与群に比し、トランスジェニック群で有意な(独立スチューデントt検定、星印p=0.05)AGE上昇が見られた。AU=任意単位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタボリックシンドロームおよびそれに起因する疾患または状態の治療または予防に有用な医薬製剤の製造のためのアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の使用。
【請求項2】
前記疾患がメタボリックシンドロームの合併症である請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記合併症が、ミクロアルブミン尿症;PAI−1の上昇、フィブリノーゲンの上昇およびフォン・ヴィレブランド因子レベルの増大を含む繊維素溶解の障害および凝固能力の増大;CRP上昇などの慢性炎症の徴候;内皮依存性血管拡張障害などの内皮機能障害;脂肪肝疾患および微小血管障害、またはそれらに由来する任意の状態もしくは疾患である請求項2記載の使用。
【請求項4】
前記メタボリックシンドロームに起因する合併症が、アテローム性硬化症、血管性網膜症、網膜症、糸球体硬化症、ネフロパシー、ネフローゼ症候群、多発性ニューロパチー、単発性ニューロパチー、自律神経障害、緑内障、灰色白内障、足底部潰瘍、関節の問題、および感染リスクの増大からなる群より選択される請求項2または3記載の使用。
【請求項5】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤として有用な医薬製剤の製造のための、ビタミンB1またはその代謝産物の使用。
【請求項6】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を食材との組合せで含有する食料製品。
【請求項7】
前記食料製品が、機能性食品、栄養剤、栄養サプリメント、ファーマフード、栄養補給食品、健康食品またはデザイナーフードである請求項6記載の食料製品。
【請求項8】
その成分が、メタボリックシンドロームに罹患しているか、またはそのリスクがある個体による摂取に適したものである請求項7記載の食料製品。
【請求項9】
前記食料製品が、バター、マーガリン、ビスケット、パン、ケーキ、キャンデー、菓子類、ヨーグルトもしくは別の発酵乳製品、またはシリアルの形態の機能性食品である請求項7または8記載の食料製品。
【請求項10】
前記アミンオキシダーゼ酵素阻害剤がビタミンB1またはその代謝産物である請求項6〜9のいずれか1項に記載の食料製品。
【請求項11】
アミンオキシダーゼ酵素阻害剤を、液状、固形または半固形の担体との組合せで含有する食品添加剤。
【請求項12】
前記食品添加剤が、i)食品業界で前記食品添加剤製品を食材に添加する際の使用、またはii)消費者が前記添加剤を食事もしくは他の食材に添加するときの使用に適したパッケージ内に封入されている請求項11記載の食品添加剤。
【請求項13】
前記添加剤が、栄養補助食品として使用される単位用量の形態である請求項11記載の食品添加剤。
【請求項14】
前記アミンオキシダーゼ酵素阻害剤がビタミンB1またはその代謝産物である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の食品添加剤。
【請求項15】
食材に対する添加剤としてのアミンオキシダーゼ酵素阻害剤の使用。
【請求項16】
前記アミンオキシダーゼ酵素阻害剤が、食材への添加前に、液状、固形または半固形の担体に添加される請求項15記載の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2007−519688(P2007−519688A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550207(P2006−550207)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/FI2005/000035
【国際公開番号】WO2005/072738
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(504459559)ファロン ファーマシューティカルズ オサケ ユキチュア (9)
【Fターム(参考)】