説明

メタボリックシンドローム予防・治療剤ならびに機能性食品

【課題】より強力でかつ有害作用を回避できるメタボリックシンドローム予防および治療剤ならびに機能性食品の提供。
【解決手段】桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として含むメタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防または治療剤ならびに機能性食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として含むメタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防または治療剤に関する。
また、本発明は、桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを含む機能性食品に関する。
【背景技術】
【0002】
現代人では食事の欧米化が進んでおり、運動量の低下などの生活習慣病と相俟って将来的に高血圧症、糖尿病、脳卒中等のより重篤な病気に進展することが危惧されている。そこで、これらの重篤な病気に至る前に、その前段階ともいえるメタボリックシンドロームを基準とし、40歳以上を検診対象とし注意を呼びかけることとなった。厚生労働省は、その基準として以下のように定義している。ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上を「要注意」とし、その中でi)血清脂質異常(トリグリセリド値150mg/dL以上、またはHDLコレステロール値40mg/dL未満)、ii)血圧高値(最高血圧130mmHg以上、または最低血圧85mmHg以上)、iii)高血糖(空腹時血糖値110mg/dL)の3項目のうち2以上を有する場合をメタボリックシンドロームと診断する、と規定している。
【0003】
一方、有害作用を回避できる生薬等の植物由来の各種成分が近年ますます注目されている。
【0004】
特開2004−292404号公報(特許文献1)には、食事由来の糖質の吸収を阻害することによる血糖値の上昇を抑制し、糖質が貯蔵脂肪として蓄積することを有効に防止し得る糖質吸収抑制剤および食品が開示されている。その有効成分として、焙煎した桑葉と、下記漢方由来素材(a):蕃柘榴と、山査子、桔梗、高麗人参、杜仲茶、陳皮、クチナシの実、ウコン、熊笹、ギムネマ、薄荷、生姜、ナツメ、麦芽、甘草、ハブ茶から選ばれた少なくとも1種とを含有する糖質吸収抑制剤、すなわち、桑葉、蕃柘榴を必須成分とし、ギムネマ等を任意成分として含有する糖質吸収抑制剤、および食品が記載されている。
【0005】
特開2003−128571号公報(特許文献2)には、枇杷葉より抽出される抽出物と、ギムネマ、杜仲茶、桑葉等からなる群から選ばれる少なくとも1種以上の動植物より抽出される抽出物とからなる血糖値上昇抑制作用を有する糖尿病医薬および健康食品が記載されている。
【0006】
特開2002−142733号公報(特許文献3)には、桑葉、杜仲茶、ギムネマ茶等を混合した、海洋深層水を利用した健康飲料として最適な穀物茶が記載され、その海洋深層水を必須成分としている。
【0007】
特許第3445567号明細書(特許文献4)には、γ−アミノ酪酸を含むイネ科植物の緑葉健康茶と、杜仲茶、ギムネマ茶、桑葉茶等とからなる群より選択された一つまたは複数の茶が混合された健康茶であって、緑葉健康茶が特定の含量の、または富化されたγ−アミノ酪酸を含む該健康茶が記載されている。
【0008】
特開2004−43335号(特許文献5)には、天然から産出されたサンゴ化石または海洋生物由来の鉱物を用いた血糖値低下作用を備えたミネラル含有組成物において、桑葉エキス末及びギムネマエキス末等のうち少なくとも1つをさらに配合する組成物が記載されている。
【0009】
このような現状に鑑み、より強力でかつ有害作用を回避できるメタボリックシンドローム予防および治療剤が求められていた。
【0010】
【特許文献1】特開2004−292404号公報
【特許文献2】特開2003−128571号公報
【特許文献3】特開2002−142733号公報
【特許文献4】特許第3445567号明細書
【特許文献5】特開2004−43335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、より強力でかつ有害作用を回避できるメタボリックシンドローム予防および治療剤ならびに機能性食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、発明者らは、有効でかつ有害作用を回避できる処方を鋭意研究した結果、桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを配合した場合、メタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患に対して、優れた予防または治療剤となることを見出した。
【0013】
本発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、以下を提供する。
(1)桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として含むメタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防または治療剤。
(2)メタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患が、ウエストサイズの減少、体重の減少、肥満度の減少、体格指数(BMI)の低下および血圧の低下よりなる群から選択される少なくとも1つの指標により改善される(1)に記載の予防または治療剤。
(3)桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを含む機能性食品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より強力でかつ有害作用を回避できるメタボリックシンドローム予防および治療剤ならびに機能性食品が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本明細書に記載されたメタボリックシンドロームとは、メタボリック症候群、代謝性症候群および内臓脂肪症候群ともいわれ、高血圧、糖尿病、高脂血症、ならびに肥満等の生活習慣により惹起される疾患等が発生し得るまたはそれらがさらに進行し得る状態をいう。また、厚生労働省により、前記のごときメタボリックシンドロームの判定基準が、ウエスト周囲径、血清脂質異常、血圧高値および高血糖に基づき規定されている。
【0016】
本明細書に記載されたメタボリックシンドロームに起因する疾患は、メタボリックシンドロームから生じる疾患または状態であれば、特に限定されるものではないが、例えば、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、糖尿病合併症(例えば、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害等)、心筋梗塞、動脈硬化、脳血管障害等およびそれらの組合せを含む。
【0017】
本明細書に記載された予防剤または治療剤とは、前記のメタボリックシンドロームまたはメタボリックシンドロームに起因する疾患の発生を予防する、あるいはそれらを治療または改善するための組成物を意味する。
また、本明細書に記載された機能性食品とは、前記のメタボリックシンドロームまたはメタボリックシンドロームに起因する疾患の発生を予防する、あるいはそれらを改善するための組成物をいう。
【0018】
前記予防剤、治療剤または機能性食品を投与するまたは摂取する対象は、メタボリックシンドロームまたはメタボリックシンドロームに起因する疾患の発生および進行を予防、治療、改善することが必要とされるヒトおよび動物であり、特に限定されるものではないが、例えば、ヒト、ならびにイヌ、ネコ、トリ等のペット動物等が含まれる。
【0019】
1つの態様において、本発明の予防剤、治療剤および機能性食品は、桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として含有する。
【0020】
本発明に使用する桑葉エキスは、熱帯〜温帯に広く分布するクワ科クワ属の落葉高木(例えば、ヤマグワ、ログワ、カラヤマグワ)の葉から得られるエキスであり、例えば、水製抽出乾燥後に得られる桑葉エキス末として市販され、入手可能である。
【0021】
本発明に使用するギムネマエキスは、インド原産の蔓性のガガイモ科の多年草から得られるエキスであり、例えば、原料選別後に粗砕し、エタノール水溶液で抽出し、スプレードライする工程により得られ、エキス末として市販され、入手可能である。
【0022】
本発明に使用するガルシニアエキスは、インドや東南アジアに生育するオトギリソウ科フクギ属の果樹、ガルシニアカンボジア(Garcinia cambogia)から得られるエキスであり、例えば、ガルシニアエキス末として市販され、入手可能である。
【0023】
本発明に使用する大豆サポニンは、大豆に含まれる配糖体の一種で、大豆イソフラボン、大豆レシチンと同様に大豆の活性成分の1つである。大豆サポニンは大豆から抽出分離し、溶媒で精製するか、あるいは抽出液から樹脂吸着剤を用いて選択的にサポニンを吸着させ、精製する等によって得ることができ、例えば、大豆サポニン末として市販され、入手可能である。
【0024】
本発明の予防剤、治療剤および機能性食品に有効成分として配合される桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンの配合量は、1回服用量当たり、各々、50〜1000mg、50〜1000mg、50〜1000mgおよび10〜300mg、より好ましくは、各々、100〜500mg、100〜500mg、100〜500mgおよび10〜80mgの範囲である。
【0025】
また、本発明の予防剤、治療剤および機能性食品は、1錠当たり200〜500mgである錠剤の場合、2〜4錠/回を朝、昼、夕食の1日1〜3回、食前に服用するのが好ましい。また、1包当たり1000〜2000mgである顆粒の場合、1〜2包/回を朝、昼、夕食の1日1〜3回、食前に服用するのが好ましい。さらに、10ml当たりの有効成分が300〜1500mgである液剤の場合、10〜90ml/回を朝、昼、夕食の1日1〜3回、食前に服用するのが好ましい。
【0026】
本発明の予防剤、治療剤および機能性食品のごとき前記組成物は、必要に応じて、一般的に製剤化に用いられる賦形剤、添加剤、溶解剤等を用いて、公知方法により、桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として混和することにより得られる。有効成分が濃縮液の場合、乾燥後に、粉末を散剤化、顆粒化または錠剤化して、散剤、顆粒剤または錠剤の分包品とすることができる。散剤化、顆粒化または錠剤化に際しては、例えば、乳糖、デキストリン、デンプン、セルロースなどの賦形剤を使用することができる。別法として、前記組成物を液剤として調製し、適当な瓶(ガラス、缶、防湿ファイバー紙類)に充填することもできる。
【0027】
また、該組成物は、前記の桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンと前記したごとき賦形剤、添加剤とで補助食品の形態(細粒化分包、固型丸粒、三角粒など)、あるいは水溶液中に再溶解してドリンク中に配合した形態または濃縮液として分包とすることができる。
【0028】
なお、本発明の予防剤、治療剤および機能性食品の有効成分である桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンは、食品由来の成分であって毒性や副作用は考えられず、しかも以下の実施例に示すごとき、優れたメタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防、治療または改善作用を有する。
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
調製例1:メタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患(メタボリックシンドローム用)の予防・治療剤または機能性食品の調製
下記の配合量を含有するように各成分を混和し、前記組成物を散剤として調製した。各成分は、株式会社前忠などから入手した市販品を用いた。
【0031】
【表1】

【実施例2】
【0032】
メタボリックシンドローム用予防・治療剤または機能性食品(錠剤)
調製例1に示す各有効成分(賦形剤を除く)を配合した粉末665mg、乳糖120mgおよびデキストリン215mgを混合し、造粒し、乾燥し、次いで、30メッシュにて篩過した後、常法に従って錠剤形態(六角錠、丸錠または三角錠)の本発明の予防剤、治療剤または機能性食品を得た。
【実施例3】
【0033】
メタボリックシンドローム用予防・治療剤または機能性食品(散剤、顆粒剤)
調製例1に示す各有効成分(賦形剤を除く)を配合した粉末665mg、デンプン435mgを混合し、造粒し、乾燥し、次いで、5〜10メッシュにて篩過した後、常法に従って、散剤形態または顆粒化して顆粒剤形態の本発明の予防剤、治療剤または機能性食品を得た。
【実施例4】
【0034】
メタボリックシンドローム用予防・治療剤または機能性食品(液剤)
調製例1に示す各有効成分(賦形剤を除く)を配合した粉末665mgを蒸留水で懸濁・溶解し、全量を10mlとした。ガラス性瓶に充填し、液剤形態の本発明の予防剤、治療剤または機能性食品を得た。
【実施例5】
【0035】
予防・治療効果に関する試験
調製例1および2に記載された各散剤を用い、以下の要領で試験を実施した。
1.試験方法
対象: ウエストサイズを基準に、メタボリックシンドローム群をA群とし、正常数値範囲群をB群とし、各群3名における服用前後の変化を8週間観察した。
(参考 メタボリックシンドローム基準値:ウエスト周囲径が男性85cm、女性90cm以上)
A群(メタボ群):88.0、90.0および98.0cmの男性3名
B群(正常値群):70.0cm女性、78.0および78.5cmの男性2名
服用量:各対象は、調製例1で得られた各散剤を1日量とし、水に溶かして、朝夕2回に分けて服用した。
測定 :服用前および服用後8週間
測定項目:ウエストサイズ、体重、肥満度、体格指数(BMI)値および血圧(最高/最低)
なお、肥満度およびBMI値は下記の計算式により算出した。
肥満度(%)={(現在の体重(kg)−標準体重(kg))/標準体重(kg)}×100%
(式中、標準体重=身長(m)×身長(m)×22)
BMI値=体重(kg)/身長(m)
【0036】
2.試験結果
調製例1における結果を表3に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
A群(メタボ群)およびB群(正常値群)間の服用前と服用後8週間との増減値の比較において、ウエストサイズについて、B群の−1.4cmに対して、A群では−3.5cmであり、明らかにA群に効果が見られた。体重については、B群の−1.8kgに対してA群では−3.0kgで、A群においてさらに減少した。肥満度について、B群−2.4%に対して、A群は−4.9%の減少が見られた。BMI値について、B群は−0.7kg/mに対し、A群は−1.1kg/mと変化した。
このように、上記の結果よりウエストサイズ、体重、肥満度、BMI値について、B群(正常値群)に比べA群(メタボ群)では、明らかにより大きな効果が確認された。血圧の増減値においてはA、B群共に大差は観察されなかったが、B群に比較しA群では、最高血圧および最低血圧の双方が低下していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明により、より強力でかつ有害作用を回避できるメタボリックシンドローム予防および治療剤ならびに機能性食品が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを有効成分として含むメタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防または治療剤。
【請求項2】
メタボリックシンドロームもしくはメタボリックシンドロームに起因する疾患が、ウエストサイズの減少、体重の減少、肥満度の減少、体格指数(BMI)の低下および血圧の低下よりなる群から選択される少なくとも1つの指標により改善される請求項1に記載の予防または治療剤。
【請求項3】
桑葉エキス、ギムネマエキス、ガルシニアエキスおよび大豆サポニンを含む機能性食品。

【公開番号】特開2010−30950(P2010−30950A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194528(P2008−194528)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(503448930)中井興産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】