説明

メタボリックシンドローム予防又は改善組成物

【課題】ウナギ卵の用途を提供すると共に、新しいメタボリックシンドローム予防又は改善組成物を提供する。
【解決手段】ウナギ卵を含むメタボリックシンドローム予防又は改善組成物であり、好ましくは成熟卵若しくはその乾燥物又は、それらの抽出物を含むメタボリックシンドローム予防又は改善組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタボリックシンドローム予防又は改善組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドロームは、一般に、内臓肥満型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のいずれか2つ以上を併せ持った状態をいう。内臓脂肪が過剰に溜まると、糖尿病、高血圧症、高脂血症などの生活習慣病を併発しやすくなると言われているため、メタボリックシンドロームの予防や改善には、高血糖等の症状がある患者のみならず健常人からも高い関心が集まる。
適度な運動等によってメタボリックシンドロームの予防や改善を図ることが重要であるが、一方で、メタボリックシンドロームの予防や改善に繋がる効果を有する各種の成分の開発も行われている。
例えば、アスタキサンチンおよび/またはそのエステルを有効成分として含有するメタボリックシンドローム予防剤(特許文献1)、大豆胚芽タンパク質を有効成分とするメタボリックシンドローム改善用組成物(特許文献2)及び特定の処理を行ったメロン果皮の抽出物を含むメタボリックシンドローム改善剤(特許文献3)、L−アラビノースとスクロースとを有効成分とすることを特徴とする内臓脂肪蓄積抑制剤(特許文献4)等が知られている。
【0003】
一方、ウナギは、レチノールなどのビタミン類が豊富に含まれ、栄養豊富な食品としてよく知られているが、日本で最も食されるニホンウナギの大部分は養殖に頼っているのが現状である。養殖は、天然ウナギの稚魚であるシラスウナギを漁獲して行われているが、収穫量は減少傾向にある。
このような背景のため、ウナギの高い栄養価に着目して栄養補助剤(例えば、特許文献5等)などの技術も開発されているが、成体ウナギの身を利用したものであり、ウナギの卵の生理活性については明らかにされていない。
また、ウナギの卵については、ウナギの養殖の困難性から主として養殖用に用いられており、食するという発想に至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−246504号公報
【特許文献2】特開2008−031121号公報
【特許文献3】特開2009−256234号公報
【特許文献4】特開2009−280501号公報
【特許文献5】特許第4314397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明は、ウナギ卵の用途を提供すると共に、新しいメタボリックシンドローム予防又は改善組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のとおりである。
[1] ウナギ卵を含むメタボリックシンドローム予防又は改善組成物。
[2] 前記ウナギ卵が、成熟卵若しくはその乾燥物又は、これらの抽出物である[1]記載のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物。
[3] ウナギ卵を含む飲食品。
[4] ウナギ卵を含むアディプシン発現増強組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウナギ卵の用途を提供すると共に、新しいメタボリックシンドローム予防又は改善組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、ウナギ卵を含むメタボリックシンドローム予防又は改善組成物である。
本発明は、ウナギ卵に肥満(脂肪分化)と負の相関があるアディプシンの遺伝子発現増強作用があることを見出したことに基づくものであり、このようなウナギ卵を含むことによって、新たなメタボリックシンドローム予防又は改善組成物を提供できる。
【0009】
本発明において「メタボリックシンドロームの予防又は改善」とは、メタボリックシンドロームの状態の発生の抑制又は、メタボリックシンドロームの状態の緩和を意味するが、これらは明確に認識可能に区別されるべきではなく、本発明における「メタボリックシンドローム予防又は改善」の用語に包含される。
本発明において「メタボリックシンドローム」とは、内臓肥満型肥満に加えて、高血糖、高血圧、脂質異常のいずれか2つ以上を併せ持った状態を意味するが、本発明では、脂質細胞の分化が進行して、肥満細胞内への脂質の蓄積が過剰に生じ得る状態が含まれれば、本発明における「メタボリックシンドローム」の用語に包含される。
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0011】
本発明におけるウナギとしては、ウナギ目ウナギ科(Anguillidae)に属する魚であれば特に制限はなく、ニホンウナギ、オオウナギ、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ等を挙げることができるが、栄養価及びメタボリックシンドローム予防又は改善効果の観点から、オオウナギ又はニホンウナギであることが好ましく、ニホンウナギであることが特に好ましい。
【0012】
ウナギ卵は、卵巣内に存在していれば本発明に使用することができる。ウナギ卵としては、未成熟卵又は成熟卵を挙げることができ、確実なメタボリックシンドローム改善又は予防効果の観点から成熟卵であることが好ましい。なお、本発明において、ウナギ卵とは、ウナギ卵を卵巣から単離したものであっても、ウナギ卵を含む卵巣を単離せずに使用してもよく、好ましくは、ウナギ卵を卵巣から単離したものである。
【0013】
本発明において、未成熟卵とは、本発明では、ウナギ全体の質量に対する卵の質量が10%以下のものを意味する。
成熟卵は、成熟卵巣から採取されたものを意味する。成熟卵巣は、自然成熟させた卵巣であってもよく、人為的に催熟させたものであってもよい。ウナギ卵巣の催熟は、魚類卵巣の催熟に適用される方法をそのまま適用することができる。例えば、ウナギ又は他種の雌成体の各種性腺刺激ホルモン又は脳下垂体抽出物を雌ウナギに投与することによって催熟を行ってもよい。なお、ウナギは、水温の変化させることにより、成熟促進を行うことができる。
また、未成熟卵および成熟卵は、未受精卵であっても受精卵であってもよく、無精卵であっても有精卵であってもよい。成熟卵を用いる場合には、ウナギ卵巣から採取されたものをそのまま用いることができる。
【0014】
また、メタボリックシンドローム予防又は改善効果を確実に得る観点から、ウナギ卵としては、成熟直前の未成熟卵または成熟卵が好ましい。これらは、乾燥物または抽出物(乾燥物の抽出物を含む)として好適に使用することができる。なお、成熟卵若しくはその乾燥物、又はこれらの抽出物であることがより好ましい。
成熟卵は、ウナギ卵巣から採取された状態で使用することができ、また、卵の完全形態のみならず、破砕物、粉砕物、切片等として使用してもよい。乾燥物は、成熟卵を乾燥させたものを意味し、一般に、水分含量が25質量%以下のもの、好ましくは水分含量が15質量%以下のものが包含される。乾燥物を得るための乾燥条件としては、魚卵の乾燥物を作製する際に適用される条件であれば特に制限はなく、真空凍結乾燥、真空乾燥、スプレードライ等の適用可能な乾燥方法を通常用いられる条件で適用すればよい。ウナギ卵の乾燥物としては、成分の安定性付与の観点では真空凍結乾燥粉末であることが好ましい。100gの成熟卵を乾燥させると、乾燥の程度にもよるが、約5g〜20gの質量まで減少可能である。
【0015】
破砕物又は粉砕物は、卵そのもの又は卵の乾燥物を破砕又は粉砕したものを意味する。破砕物又は粉砕物としてのサイズについては特に制限はない。卵又はその乾燥物の破砕又は粉砕には、ミル、フードプロセッサー、マイクログラインダー等の通常用いられる加工方法をそのまま適用すればよい。粉末をそのまま製品とする場合にはこのまま使用するが、場合によりこの粉末をタブレット、カプセル、糖衣錠剤などに成型しても良い。
【0016】
抽出物は、成熟卵又はその乾燥物に対して抽出処理を施すことによって得られたものを意味する。抽出処理としては、成熟卵又はその乾燥物について通常実施され得る処理を全て包含し、成熟卵の場合には、単に圧搾することであってもよい。成熟卵又はその乾燥物の場合には、特定の抽出用溶媒を使用した抽出処理であってもよい。抽出物を得るために用いられる抽出溶媒としては、食品用途の場合は水、エタノール、含水エタノール等を挙げることができる。抽出条件としては、常温抽出、加温抽出、還流、凍結乾燥後抽出、減圧抽出、超臨界抽出(二酸化炭素)等を使用することができる。
【0017】
本メタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、ウナギ卵を含むものであればよい。このため、ウナギ卵のみで構成されたものであってもよい。本発明のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、飲食品用途であっても、医薬用途であってもよい。医薬用途である場合、ウナギ卵と医薬として許容可能な担体とを含むものであってよい。また、この場合の医薬として許容可能な担体としては、水、生理食塩水等を挙げることができる。
【0018】
本メタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、ウナギ卵による効果を損なわない範囲で、経口用組成物等に通常用いられる添加剤等を含むことができる。
このような添加成分としては、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、湿潤剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を挙げることができ、具体的には、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、ゼラチン、デンプン、セルロース及びセルロース誘導体、動物油及び植物油、ポリエチレングリコール、水、一価または多価アルコールを挙げることができる。
【0019】
また、本発明のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物の形態としては、特に制限されず、用いられるウナギ卵の形態に応じて適宜選択される。選択可能な形態としては、例えばカプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、シロップ剤、トローチ剤、散剤、顆粒剤、輸液剤および注射剤等が挙げられる。中でも、摂取容易性の観点から、好ましくはカプセル剤、錠剤、顆粒剤または散剤がある。
【0020】
本発明のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、安全とされている投与量の範囲内において、ヒトを含む動物に対して所定の用量で投与される。具体的な投与量については、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して適宜選択される。例えば、経口投与形態としては、一般に、成人1日あたり、ウナギ卵の量として0.5mg/体重1kg〜1000mg/体重1kgとすることができる。
【0021】
本発明のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、上述したように、メタボリックシンドロームの状態の進行速度の緩和又は停止のために、特に脂質異常改善のために用いられる。メタボリックシンドロームの状態の進行速度の指標としては、血清脂質、血圧、血糖値、内臓脂肪蓄積等を挙げることができる。
【0022】
また本メタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、アディプシン発現増強作用又はメタロチオネイン発現増強作用を有する。このため、本メタボリックシンドローム予防又は改善は、アディプシン、メタロチオネイン又はこれら双方の遺伝子発現の増強に基づいて評価してもよい。
アディプシンは、脂肪細胞の分化を抑制することや、インシュリン抵抗性を改善して糖類の代謝(燃焼)を促進する効果が知られているタンパク質である。アディプシンの遺伝子発現の増強は、脂肪蓄積作用を有する肥満細胞の分化を抑制することから、肥満の抑制に寄与すると考えられている。
また、メタロチオネインとは、分子量約6000〜7000の金属結合性タンパク質の一種であり、分子中に重金属結合部位を持ち、重金属解毒作用を有するタンパク質である。また、メタロチオネイン欠損マウスを用いた実験において、脂肪細胞への脂肪取り込みが顕著に増大することが報告されている。メタロチオネインの発現増強は、肥満遺伝子の発現抑制に寄与すると考えられている。
【0023】
本メタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、ヒト用に限られず、メタボリックシンドロームの状態を引き起こしうる他の哺乳動物に用いてもよい。このような哺乳動物としては、イヌ、ネコ等のペットを挙げることができる。
【0024】
本メタボリックシンドローム予防又は改善組成物は、メタボリックシンドロームの予防又は改善効果を有するので、前述の如く、飲食品等として用いてもよい。即ち、本発明の飲食品は、ウナギ卵を含む飲食品である。このような飲食品としては、清涼飲料、果実飲料、野菜飲料、発泡性飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、またはアルコール性飲料等を挙げることができる。また、食品としては、液状、固形状、粉末状の嗜好食品類、調味料及び香辛料類、もしくは調理加工食品、および、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品等を挙げることができる。
【0025】
本発明のアディプシン発現増強組成物は、ウナギ卵を含むものである。
上記のとおり、ウナギ卵を含む組成物は、アディプシンの発現増強を誘導する。このことから、本発明によれば、アディプシン発現増強組成物を被検体に投与することによって、アディプシンの発現抑制によって生じる各種の症状を予防又は改善することができる。このような症状の改善としては、脂質異常、耐糖能異常、高血圧これを含むメタボリックシンドローム等を挙げることができる。
【0026】
なお、本発明に係るウナギ卵を含有する組成物は、前述の如く、メタロチオネイン及びCYP450発現増強を示すものである。そのため、メタボリックシンドローム予防又は改善組成物の他、メタロチオネイン及びCYP450発現抑制によって生じる各種の症状を予防又は改善することができる。当該各種の症状としては、例えば、遺伝子の損傷や抗酸化作用、放射線による細胞破壊や筋萎縮性側索硬化症(ALS)が挙げられ、本発明に係るウナギ卵を含有する組成物は、遺伝子の損傷修復、抗酸化作用若しくは放射線による細胞破壊の修復、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の予防のために使用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」又は「部」は質量基準である。
【0028】
[実施例1]
ウナギ卵の成分分析
ウナギ卵巣には、捕獲した天然ニホンウナギに、産卵直後の雌性サケの脳下垂体を14週間投与し、人為的に催熟させた成熟卵巣(eel mature egg, EME)を使用した。
EMEは、凍結乾燥後、室温で直ちにミルで粉砕し、60メッシュのふるいにかけたものを脱酸素剤ならびに乾燥剤を入れた密閉容器に入れ、使用時まで冷凍庫に保存した。
以下の各実験では、この乾燥粉末を用いた。
得られたEMEの乾燥粉末について、一般成分、レチノール、α−トコフェロール、アミノ酸組成、脂肪酸組成、ポリアミン組成のそれぞれを、以下のように測定を行った。
【0029】
(1)一般成分
一般成分は次の方法に従って定量した。
即ち、水分は凍結乾燥法を用い、乾燥前後の質量から水分量を算出した。たんぱく質は改良ケルダール法によって定量した窒素量に「窒素−たんぱく質換算係数」6.25を乗じて算出した。
脂質はクロロホルム−メタノール改良抽出法によって求めた。灰分は直接灰化法(550℃)によって求めた。
炭水化物は日本食品標準成分表に準じ、アンスロン−硫酸法を用いて算出した。尚、動物実験時は組成の整合性をとるため、差し引き法による炭水化物値を使用した。
【0030】
(2) サンプル中に含まれるビタミンA・E量の測定
財団法人日本食品分析センターに委託し、凍結乾燥物をHPLC法で測定を行った。
(3) サンプル中に含まれるアミノ酸組成の測定
ニンヒドリン法を用いた分析を行った。
(4) ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸組成の測定
クロロホルム−メタノール改良抽出法により抽出した脂質を、KOH−メタノール法により、脂肪酸メチルエステル化し、以下の条件でガスクロマトグラフィー分析を行い、脂肪酸組成を求めた。
GC14−B型ガスクロマトグラフィー(株式会社 島津製作所)
メイクアップガス:窒素。
キャリアガス:ヘリウム (流量:180 kPa)
カラム:SPB−PUFA、30m×0.25mm ID、0.2μm
(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)
カラム温度:50℃から210℃までの昇温度。
昇温速度:4℃/min。最終保持時間:40分。
検知機:FID(水素炎イオン化型検出器)
スプリット比: 1:60 チャートスピードは10mm/min
インテグレータ:CR‐8Aクロマトパック(株式会社 島津製作所)
【0031】
(5) 脂肪酸組成測定試料の調製
ウナギ成熟卵(EME:eel mature eggs)、ウナギの身(M:eel meat)又はウナギの肝(EL:eel liver)からクロロホルム−メタノール改良抽出法を用いて、脂質を抽出し、0.1mM内部標準品(トリコサン酸)を加えエバポレーターで十分に揮発乾固させたものに、2mlのヘキサンと2Mの水酸化カリウム−メタノールを0.2ml加えボルテックス後、15000rpmで5分間遠心後上清を得た。その上清を用いて脂肪酸組成を測定した。
尚、脂肪酸組成同定のため、標準品としてスペルコ37種FAMEミックス(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を用いた。
【0032】
(6) ポリアミン測定試料の調製
EME、M、ELを約100mg計量し、15ml試験管に入れ、0.9mlの0.1M塩酸と、内部標準品。を20μl加えホモジナイズし、12000rpmで10分間遠心後、上清をとり、等量の20%TCAを加え、12000rpmで10分間遠心した。その上清を、HPLCを用いてポリアミン濃度を測定した。
【0033】
(7)陽イオン交換HPLCによるポリアミン量の測定
移動相としてクエン酸バッファーを用いるOPAポストカラムHPLC法を用いた。
流速はクエン酸バッファー(0.28Mクエン酸水和物、2M NaclをNaOHでpH5.5に合わせ、12.5%MeOHを加えたもの)、0.5ml/min、OPA反応液(ο−フタルアルデヒド(OPA) 6mM、0.4Mホウ酸をKOHでpH10.4に合わせ0.2%メルカプトエタノール、0.1%Brij−35を加えたもの)0.25ml/min、励起波長345nm、発光波長450nm、カラム温度65℃にて行った。
移動相用ポンプはLC−6A(株式会社 島津製作所)、OPA反応液用ポンプはNP−FX−3(日本精密株式会社)、LC−9A(株式会社 島津製作所)を用いた。蛍光検出器はRF−530(株式会社 島津製作所)を用いた。カラム樹脂はMCl GEL CK10S(三菱化学株式会社)を用いた。
【0034】
また、一部の項目については、比較検討のため、採卵したウナギの身および肝の測定も行った。ウナギの肝は凍結乾燥後、ミルで粉砕したものを使用し使用時まで冷凍庫に保存した。
【0035】
結果を表1〜表4に示す。
また、表1、表3中の「DM」は乾物を意味する。表4における数値は、100g総脂肪酸中の脂肪酸量(g)を意味する。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
[実施例2]
ウナギ卵の機能性評価
7週齢C57BL/6J雄性マウスを3群に分け、コントロール(C)群にはAIN−93Gに準拠した精製飼料を与えた。更に、タンパク質量の2.5質量%又は5.0質量%をそれぞれウナギ卵乾燥粉末に代えた試料を与えた(EME2.5群及び5.0群)。
なお、各群とも、EME添加による栄養成分の差を調整するため、タンパク質、脂質量をコントロール(C)群と同レベルに調整した飼料を調製した飼料とした(表5参照)。また給餌は、水と共に自由摂取とした。なお、表5の数値はgを表す。
【0041】
【表5】

【0042】
3週間の飼料投与後、血液を採取した。さらに、肝臓から全RNAを常法に従って抽出し、mRNA発現レベルの解析に用いた。
DNAマイクロアレイスライドは、Whole Mouse Genome Oligo Microarray Kit (Agilent Technologies社) を使用した。ラベル化には Low RNA Input リニア増幅&ラベル化Kit Puls, one-color、RNA Spike-In Kit(Agilent Technologies)を使用した。ハイブリダイゼーションにはGene Expression Hybridization Kit(Agilent Technologies)を使用した。実験中のインキュベーションにはApplied Biosystem社のGene Amp PCR system 9700を用いた。洗浄にはGene Expression Wash(Agilent Technologies)を使用した。実験操作に関しては製品マニュアルに従って行なった。画像化にはDNA Microarray Scanner(Agilent Technologies)、数値化にはFeature Extraction(Agilent Technologies)を使用した。解析は、Agilent technologies社の添付マニュアルに従って行った。結果を表6に示す。表6中の数値は、コントロール群での各遺伝子の蛍光強度に対する相対強度の大きさを示す。
【0043】
【表6】

【0044】
解析の結果、コントロール群と比較して2倍以上の発現上昇が認められた遺伝子の数は、EME2.5群で143、EME5.0群で151であった。特に、表6に示されるように、アディプシン及びメタロチオネイン1及び2の発現上昇レベルがコントロール群と比較して顕著であった。
アディプシンは脂肪細胞の分化抑制に寄与すると考えられており、また、メタロチオネインは、肥満遺伝子の発現抑制に寄与すると考えていることから、本実施例のウナギ卵を含む組成物を被検体に投与することによって、メタボリックシンドロームの予防又は改善効果、特に脂質異常改善効果が期待できる。また、アディプシン及びメタロチオネインの発現が増強されることから、メタボリックシンドロームの予防又は改善の他に、これらの遺伝子の発現抑制に基づく他の症状の改善も期待できる。
【0045】
従って本発明によれば、メタボリックシンドロームを効果的に予防又は改善することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウナギ卵を含むメタボリックシンドローム予防又は改善組成物。
【請求項2】
前記ウナギ卵が、成熟卵若しくはその乾燥物又は、これらの抽出物である請求項1記載のメタボリックシンドローム予防又は改善組成物。
【請求項3】
ウナギ卵を含む飲食品。
【請求項4】
ウナギ卵を含むアディプシン発現増強組成物。

【公開番号】特開2012−31109(P2012−31109A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172835(P2010−172835)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年2月1日 http://nenkai.pharm.or.jp/130/pc/ipdfview.asp?i=994を通じて発表 平成22年3月30日 社団法人 日本薬学会主催の「日本薬学会第130年会」において文書をもって発表
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(506045303)イトー商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】