説明

メタボリックシンドローム改善作用を有する飲料及びサプリメント

【課題】天然の素材を原料とし、副作用が少なく長期にわたる摂取が可能で、メタボリックシンドローム改善に有効な飲料及びサプリメントを提供する。
【解決手段】杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含むことを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤作用のある飲料又はサプリメント。杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物であり、シベリア落葉松抽出物がシベリア落葉松の形成層又は木部の抽出物である。杜仲葉加工物に紅麹加工物とシベリア落葉松抽出物を組み合わせた飲料がメタボリックシンドロームの改善に有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は天然物由来のメタボリックシンドローム改善作用を有する飲料及びサプリメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本肥満学会では、BMI〔Body Mass Index:体重(Kg)/身長(m)〕=25以上を肥満と定めている。肥満は単に体重増加だけでなく、糖尿病、高脂血症、高血圧、動脈硬化性疾患等のいわゆるメタボリックシンドロームの発症に深く関わっていることから、体重減少により疾病予防や改善を図ることが大事である。肥満症は、BMI≧25で判定した肥満に対して、一つは、肥満に起因した糖尿病、高脂血症、高血圧症、心筋梗塞、脂肪肝、変形性関節症などの合併症が単発ないしは重複して発症した場合、もう一つは、内臓脂肪/皮下脂肪の面積比から0.4以上を内臓脂肪型肥満、0.4未満を皮下脂肪過多肥満に分別し、その結果、内臓脂肪型と判別できれば上記合併症の有無にかかわらず、それだけで肥満症と診断される(非特許文献1)。肥満の場合、体脂肪を低減させることが重要である。
【0003】
平成17年度厚生労働省国民健康・栄養調査によると、我が国では、ライフスタイルの欧米化や都市化に伴う過剰な栄養摂取と運動不足により、男性ではほぼ各年代で、女性は20歳から49歳以下で肥満者が増加している(非特許文献2)。
極端なダイエットなどではなく、通常の食生活や運動を通して肥満の改善や予防ができれるのであれば理想である。
【0004】
我が国では抗肥満薬としてはマジンドールが知られているが、マジンドールはBMI35以上でないと適用されなかったり、保険適用期間が3ヶ月であるなどのさまざまな使用制限があった。
【0005】
天然物由来のメタボリックシンドローム改善剤としては、杜仲葉加工物が知られている(特許文献1)。しかし、特許文献1に示されたメタボリックシンドローム改善作用は、測定結果が統計処理されておらず、その効果に有意性があるかどうかわからないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-230969号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】松澤裕次:肥満治療ガイドライン2006, 肥満研究, 42-48, 2006
【非特許文献2】健康・栄養情報研究会編:国民健康・栄養の現状−平成17年厚生労働省国民健康・栄養調査報告より−, 第一出版, 354, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、天然の素材を原料とし、副作用が少なく長期にわたる摂取が可能で、メタボリックシンドローム改善に有効な飲料及びサプリメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解消するために本発明者らが鋭意努力を重ねたところ、杜仲葉加工物に紅麹加工物とシベリア落葉松抽出物を組み合わせた飲料がメタボリックシンドロームの改善に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、以下に係るものである。
【0010】
(1) 杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含むことを特徴とする飲料。
【0011】
(2) 杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物である(1)に記載の飲料。
【0012】
(3) シベリア落葉松抽出物がシベリア落葉松の形成層又は木部の抽出物である(1)に記載の飲料。
【0013】
(4) 杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含むことを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤作用のあるサプリメント。
【0014】
(5) 杜仲葉加工物が杜仲葉粉砕物又は杜仲葉水抽出濃縮物である(4)に記載のサプリメント。
【0015】
(6) シベリア落葉松抽出物がシベリア落葉松の形成層又は木部の抽出物である(4)に記載のサプリメント。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、メタボリックシンドロームを有効に改善することが可能となった。本発明の飲料及びサプリメントはメタボリックシンドローム改善作用を有し、天然由来のものであり、本発明の飲料又はサプリメントを長期間摂取しても安全である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例2で測定した身体計測値の推移を示すグラフ。
【図2】実施例2で測定した血液検査の測定値の推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含有するメタボリックシンドローム改善作用のある飲料またはサプリメントに関するものである。以下、各成分を詳細に説明する。
【0019】
杜仲(Eucommia ulmoides Oliver)とはトチュウ目、トチュウ科、トチュウ属に属する一科一属の落葉性喬木であり、中国中南部地方が原産地である。樹皮は漢方薬の原料として使われ、葉はお茶として利用される。樹皮は漢方薬として、腰痛、足腰の倦怠感解消、頻尿、肝機能・腎機能の強化、高血圧に効果がある。杜仲茶は、血圧降下、肝機能の機能向上に効果がある。
【0020】
杜仲葉加工物とは、乾燥杜仲葉もしくは杜仲葉焙煎物の粉砕物、乾燥杜仲葉の水抽出液もしくは杜仲葉焙煎物の水抽出液などの杜仲葉抽出物、これらの杜仲葉抽出物を濃縮した杜仲葉抽出濃縮物を挙げることができる。
【0021】
飲料の原料には、杜仲葉抽出物を用い、サプリメントの原料には杜仲葉粉砕物または杜仲葉抽出濃縮物を用いることができる。
【0022】
紅麹とはモナスカス(Monascus)属に属する麹の一種であり、菌糸が赤いことから紅麹と呼ばれている。紅麹加工物とは、紅麹を原料とするものであれば特に限定されないが、例えば紅麹菌を液体培養し、その液体培養液から菌糸を分離した紅麹液や紅麹液を減圧濃縮して得られる紅麹粉末を挙げることができる。紅麹液等の紅麹加工物にはモナコリンKが含まれている。
【0023】
シベリア落葉松(Larix sibiricia Ledeb.(Pinaceae))とはシベリアカラマツとも呼ばれ、ロシア連邦のコルィマ地方、アニュイ地方、ヴェルホヤンスク地方を原産地とする落葉針葉樹である。シベリア落葉松抽出物とは、シベリア落葉松の樹皮を剥ぎ落とした形成層や木部を、水、エタノール等の抽出溶媒で抽出したものである。シベリア落葉松抽出物にはフラボノイドであるジヒドロケルセチンが含まれている。
【0024】
本発明において、飲料の原料となる杜仲葉抽出液とは、80〜90℃の温水100リットルに対して、乾燥杜仲葉又は杜仲葉焙煎物を0.1〜1Kg(0.1〜1wt%)加えて、抽出したものを用いればよい。
【0025】
本発明において紅麹加工物は、上記杜仲茶抽出液に対して0.01wt%〜1wt%配合すればよい。
【0026】
また本発明においてシベリア落葉松抽出物は、上記杜仲茶抽出液に対して0.001wt%〜0.01wt%配合すればよい。
【0027】
サプリメントとするには、杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を、錠剤、顆粒製剤、液体製剤、カプセル製剤等とすればよい。
【0028】
実施例1
杜仲茶複合飲料の製造
乾燥杜仲葉7.5kgを85℃の温水1500リットルで17分間抽出した。抽出後、抽出液と杜仲葉を分離し、抽出液を30℃以下に冷却し、抽出液を遠心分離して精製した。抽出液に紅麹液2.145kg(0.143wt%)、シベリア落葉松抽出物64.5g(0.0043%)を配合し、ミキシングした。その後140℃で30秒間殺菌して杜仲茶複合飲料を調製した。
【0029】
実施例2
杜仲茶複合飲料のメタボリックシンドローム改善作用の評価試験
【0030】
(被験者)
以下の選択基準を満たし、検査結果に影響する可能性のある薬を服用している者等の除外基準に合致しない22名を選抜し被験者とした。ヘルシンキ宣言の主旨に従い、被験者に十分な説明を行い、文書による同意を得た上で、評価試験を実施した。
<選択基準>
・ 30歳以上55歳以下の女性
・ 次のいずれにも該当する者
・ウェスト周囲径90〜120cmの者
・トリグリセライド値が150〜300mg/dL、または総コレステロール値が220〜350mg/dLの者
【0031】
(試験食品)
実施例1で調製した杜仲茶複合飲料を、1日に500mlを食事中または食後に適時摂取させた。
【0032】
(試験デザイン)
オープン試験とし、試験期間中の検査は、試験食品摂取前、摂取4週後、摂取8週後の計3回実施した。
【0033】
(検査項目)
体重・BMI・体脂肪率・体脂肪量・筋肉量(In body 3.2:株式会社バイオスペース)の身体計測の測定は各検査日(計3回)に行った。
【0034】
血液検査は、血液を肘静脈より各検査日(計3回)に採血し、総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、トリグリセライドを測定した。
【0035】
(統計処理)
測定値は、図においては平均値±標準偏差で表示した。Dunnettの多重比較検定を行い、有意水準は両側検定で5%とした。
【0036】
(試験結果)
身体計測の結果を図1に、血液検査の結果を図2に示す。
【0037】
図1及び図2に示した結果から明らかなように、本発明の試験食品の摂取を8週間継続することで、体重、BMI、体脂肪率、体脂肪量が摂取前に比べて有意に低下し、血清脂質成分値についても、総コレステロール、LDL−コレステロール、トリグリセライド測定値が摂取前に比べて有意に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の飲料及びサプリメントは、安全かつ手軽にメタボリックシンドロームを改善することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含むことを特徴とする飲料。
【請求項2】
杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
シベリア落葉松抽出物がシベリア落葉松の形成層又は木部の抽出物である請求項1に記載の飲料。
【請求項4】
杜仲葉加工物、紅麹加工物及びシベリア落葉松抽出物を含むことを特徴とするメタボリックシンドローム改善剤作用のあるサプリメント。
【請求項5】
杜仲葉加工物が杜仲葉粉砕物又は杜仲葉水抽出濃縮物である請求項4に記載のサプリメント。
【請求項6】
シベリア落葉松抽出物がシベリア落葉松の形成層又は木部の抽出物である請求項4に記載のサプリメント。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−273569(P2010−273569A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126960(P2009−126960)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年11月28日 株式会社医事出版社発行の「診療と新薬 (2008 VOL.45 NO.11)」(別刷)に発表
【出願人】(594185307)
【Fターム(参考)】