説明

メタボリックシンドローム改善剤

【課題】本発明は、副作用が少なく長期にわたって摂取した場合でも安全であり、さらに内臓脂肪の蓄積のみならずその他のリスクファクターについても改善効果をもたらすメタボリックシンドローム改善剤、動脈硬化予防剤、それを含む医薬または食品を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、杜仲葉加工物および血糖低下作用を有する植物加工物を含む、メタボリックシンドローム改善剤、動脈硬化予防剤およびそれらを含む医薬、食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杜仲葉加工物を含む、メタボリックシンドローム改善剤に関する。さらに本発明は、当該メタボリックシンドローム改善剤を含む経口摂取用組成物、医薬組成物、食品組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
過栄養や運動不足を背景とした心血管疾患の増加が、欧米のみならずアジアでも問題となっている。心筋梗塞や脳梗塞などを含む動脈硬化性疾患についての予防対策は、従来、高コレステロール血症の対策に重点が置かれ、他のリスクファクターについても個々に対応してきた。しかし、近年の飽食と運動不足を背景に肥満を基盤に1人に複数のリスクファクターが集積している場合が極めて多くなり、動脈硬化の発症も、このようなマルチプルリスクファクター症候群から数多く見られることが明らかとなってきた(非特許文献1を参照)。
【0003】
このマルチプルリスクファクター症候群は、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群などの種々の概念で呼ばれていたが、これらを世界的にメタボリックシンドロームとして統一する動きが生まれ、日本においてもメタボリックシンドロームの診断基準が定義された。その基準によれば、内臓脂肪の蓄積(ウエスト周囲径が男性で85cm以上、女性で90cm以上)に該当し、さらに(1)脂質(血中の中性脂肪が150mg/dL以上またはHDLコレステロールが40mg/dL未満)、(2)空腹時血糖(100mg/dL以上)および(3)血圧(収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧が85mmHg以上)の(1)〜(3)から2つ以上に該当する場合、メタボリックシンドロームと診断される(非特許文献1を参照)。
【0004】
メタボリックシンドロームに対する薬物療法は未だ十分に確立されているとは言えず、抗肥満薬の処方が検討されている。しかしながら、日本で医療保険の適用が認められている抗肥満薬としてはマジンドールが知られているが、当該薬剤にはBMI35以上および保険適用期間が3ヶ月以内という使用制限が伴っている。また、メタボリックシンドロームの各リスクファクターに対して個別に薬物治療する場合は、薬剤併用による相互作用が症状に悪影響を及ぼす懸念があり、例えば、降圧剤として用いられるサイアザイド系利尿薬は、インスリン感受性の低下した糖・脂質代謝へ悪影響を及ぼすことが知られている(非特許文献2および3を参照)。
【0005】
杜仲(Eucommia ulmoides oliver)は、中国中央部起源のトチュウ科トチュウ属の一科一属一種に分類される落葉性木本類で、樹高が20mに達する喬木である。杜仲は、一般にお茶と称するツバキ科の植物と比較し、カフェインを全く含んでいないほか、含有物も異なる。杜仲葉は、1980年代から飲料としての用途が普及している。杜仲の樹皮は医薬品として取り扱われており、中国では「高血圧症、腰痛、関節痛、腎臓病、肝臓病、ストレス、精力減退、利尿困難、物忘れ」に有効な漢方薬として利用されている。
【0006】
天然物由来の食品や漢方薬は、一般に副作用が少ないなどの利点を有することから、近年において発生が増加している生活習慣病に対してのその有用性が注目されている。上述の杜仲に関しても、杜仲葉の成分のリパーゼ阻害活性について検討した例もいくつかの報告がされている(特許文献1〜5を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−289950号公報
【特許文献2】特開2005−289951号公報
【特許文献3】特開2003−342185号公報
【特許文献4】特開2002−179586号公報
【特許文献5】特開2002−275077号公報
【非特許文献1】肥満・メタボリックシンドローム診療ガイダンス、メジカルビュー社、2005年、第10〜11頁
【非特許文献2】肥満・メタボリックシンドローム診療ガイダンス、メジカルビュー社、2005年、第205〜206頁
【非特許文献3】肥満・メタボリックシンドローム診療ガイダンス、メジカルビュー社、2005年、第207〜209頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、天然の素材を原料とし、副作用が少なく長期にわたって摂取した場合でも安全であり、さらに内臓脂肪の蓄積のみならずその他のリスクファクターについても改善効果をもたらすメタボリックシンドローム改善剤、動脈硬化予防剤、それを含む医薬または食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意研究を進めたところ、杜仲葉加工物を含む組成物に、メタボリックシンドローム改善作用を見いだし、本発明を完成させた。
すなわち本発明の一つの側面によれば、杜仲葉加工物を含む、メタボリックシンドローム改善剤が提供される。
【0010】
本発明の別の側面によれば、杜仲葉加工物および血糖低下作用を有する植物加工物を含む、メタボリックシンドローム改善剤が提供される。ここで、前記植物加工物の血糖低下作用としては、例えばα−グルコシダーゼ阻害作用に起因する作用が挙げられる。また、当該植物加工物としては、サラシア、桑葉、バナバ葉、グアバ葉、ヤーコン、オリーブ葉、ニガウリ、羅布麻、ギムネマ、西洋人参、地膚子、人参、マテ茶、モロヘイヤ、荷葉、カイアポ、田七人参、紅景天、ヒバマタ、枳グ子、黄精、羅漢果、スギナ、山茱萸、霊芝などの抽出物および原体乾燥物が挙げられる。本発明において好ましく使用される植物加工物は、サラシア抽出物および桑葉抽出物である。サラシア抽出物および桑葉抽出物は、購入により入手可能であり、サラシア抽出物は、例えばサラシアエキスD(多田フィロソフィー社製)および桑葉抽出物は、例えば桑の葉エキスパウダー(日本粉末薬品社製)を本発明において使用することができる。
【0011】
本発明のさらなる側面によれば、前記植物加工物が難消化性デキストリンおよび桑葉抽出物から選択される、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤が提供される。ここで用いられる難消化性デキストリンは特には限定されないが、例えば、植物(例えば、トウモロコシ、馬鈴薯など)由来のデンプンを消化酵素(アミラーゼおよびグルコアミラーゼなど)で処理して得られる水溶性食物繊維などであってもよい。
【0012】
本発明の別の側面によれば、前記杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物である、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤が提供される。当該杜仲葉抽出物は特に限定されず、当該抽出物を製造するために使用される抽出溶媒は、例えば、水、エタノール、メタノール、およびそれらの混合溶媒などが使用されうる。
【0013】
本発明のこの側面の1つの態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を水により抽出する工程;および、当該抽出液を濃縮する工程を含む製造方法により得られる杜仲葉水抽出エキスであってもよい。
【0014】
本発明のこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を焙煎する工程;杜仲葉を水により抽出する工程;および、当該抽出液を濃縮する工程を含む製造方法により得られる杜仲葉水抽出エキスであってもよい。
【0015】
本発明の別の側面によれば、前記杜仲葉加工物が乾燥した杜仲葉の粉砕物である、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤が提供される。
本発明のこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を乾燥する工程;および、杜仲葉を粉砕する工程を含む製造方法により得られる乾燥した杜仲葉の粉砕物であってもよい。
【0016】
本発明のこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を焙煎する工程;および、杜仲葉を粉砕する工程を含む製造方法により得られる乾燥した杜仲葉の粉砕物であってもよい。
【0017】
本発明のこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;および杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程を含む製造方法により得られる乾燥した杜仲葉の粉砕物であってもよい。
【0018】
本発明のさらにこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉中の水分を均一化する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を粉砕する工程;および杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程を含む製造方法により得られる乾燥した杜仲葉の粉砕物であってもよい。
【0019】
本発明のさらにこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉中の水分を均一化する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を粉砕する工程;および杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程を含む製造方法により得られる乾燥した杜仲葉の粉砕物であってもよい。
【0020】
上記の態様において、乾燥杜仲葉の粉砕方法は特に限定されず、当該粉砕物を製造するために使用される粉砕物の加工方法は、例えば、回転式粉砕器、ピンミル、衝突型微粉砕機、ジェットミルなどの粉砕器が使用されうる。
【0021】
本発明のさらにこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程;および杜仲葉をジェットミルにより粉末にする工程を含む製造方法により得られる杜仲葉緑色粉末のもまた提供される。
【0022】
本発明のさらにこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉中の水分を均一化する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を粉砕する工程;杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程;および杜仲葉をジェットミルにより粉末にする工程を含む製造方法により得られる杜仲葉粉末であってもよい。
【0023】
本発明のさらにこの側面の別の態様において、前記杜仲葉加工物は、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉中の水分を均一化する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を粉砕する工程;杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程;および杜仲葉をジェットミルにより粉末にする工程を含む製造方法により得られる杜仲葉粉末であってもよい。
【0024】
本発明の上記の態様において、杜仲生葉を蒸熱する工程において使用する杜仲生葉が裁断されていないものであってもよい。
本発明のこの側面の別の態様において、上記の方法により製造することができる杜仲葉加工物、または上記の方法により製造することができる杜仲葉緑色粉末から水抽出液を得る工程を含む製造方法により得られる杜仲葉水抽出エキスであってもよい。
【0025】
本発明の別の側面によれば、前記杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物および乾燥杜仲葉の粉砕物の混合物である、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤が提供される。ここで、前記杜仲葉抽出物および乾燥杜仲葉の粉砕物は、既に定義したものが使用されうる。
【0026】
本発明のさらに別の側面において、1日用量換算でゲニポシド酸を、例えば75mg以上、好ましくは85mg以上、さらに好ましくは99mg以上含有する、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤が提供される。
【0027】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤は、動脈硬化の予防、および動脈硬化性疾患(例えば、脳梗塞、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、大動脈瘤、大動脈解離、閉塞性動脈瘤硬化症など)の予防にも使用されうる。
【0028】
さらに本発明の別の側面によれば、既に定義したメタボリックシンドローム改善剤を含む医薬、医薬組成物、食品、食品組成物または経口摂取組成物が提供される。ここで、前記食品は、特に限定はされないが、例えば、機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品、保険機能食品、特定保険用食品または栄養機能食品であってもよく、当該食品の包装、容器などには、「メタボリックシンドローム改善効果」、「動脈硬化予防効果」等の効能が表示されていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るメタボリックシンドローム改善剤は、内臓脂肪減少効果に加え、その他の複合型リスクファクターである(1)血中の中性脂肪減少効果、(2)空腹時血糖値減少効果および(3)血圧降下効果のいずれかの改善効果を得ることができる。例えば本発明におけるメタボリックシンドローム改善剤により、内臓脂肪減少効果、血中中性脂肪減少効果および空腹時血糖抑制効果を得ることができる。杜仲葉加工物および血糖低下作用を有する植物加工物の組み合わせにより得られる効果のうちの少なくとも1つは、杜仲葉加工物および血糖低下作用を有する植物加工物を単独で投与した場合よりも優れた効果(相乗的効果)を得ることができる。
【本発明の具体的な態様】
【0030】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明における杜仲葉加工物は、杜仲生葉または杜仲の乾燥葉を原料にして調製されうる。ここで、杜仲生葉は、収穫後乾燥前の杜仲葉を意味するものであり、栽培により生産されたものであっても天然より採取されたものであってもよい。例えば、当年葉で落葉前の生葉を用い、採取時期は4月から10月、好ましくは5月から8月、より好ましくは7月から8月までの生葉を用いることができる。
【0031】
上述の杜仲生葉の蒸熱工程は、市販されている蒸し機またはオートクレーブなどを用いて、当該技術分野で通常行われている方法により実施することができる。例えば、ネットコンベア上に杜仲生葉を広げ、ボイラーから供給される無圧蒸気を充満させた処理室を通過させることにより、杜仲生葉を蒸熱処理することができる。蒸熱温度は、特に限定はされないが、例えば杜仲葉の大きさに応じて90〜120℃、好ましくは95〜110℃、より好ましくは100〜110℃の範囲で適宜選択されうる。また蒸熱時間も、10〜240秒間、好ましくは20〜180秒間、より好ましくは20〜120秒間の範囲で適宜選択されうる。また、使用する蒸気量は、例えば200〜70L/分、好ましくは170〜100L/分の範囲で適宜選択されうる。蒸し葉の処理量は、生葉の水分率に応じて、特に限定はされないが、例えば3〜10kg/分、好ましくは4〜8kg/分、より好ましくは5〜7kg/分の範囲で適宜選択されうる。この蒸熱工程は、杜仲葉を褐色に変色させる酵素が失活することにより杜仲生葉の成分が保たれやすくなる;および、杜仲葉が柔らかくなることで、その後の揉捻工程の実施が容易になる、などの効果をもたらす。
【0032】
本発明における揉捻工程は、例えば市販されている揉捻機、粗揉機または中揉機を用いて行うことができる。例えば市販の揉捻機としては、株式会社寺田製作所製、揉捻機60Kg型などを用いることができる。本工程により、余分な水分を取り除きつつ杜仲葉中の水分が均一に整えられ、さらに杜仲特有の成分が抽出しやすくなる。本工程は、必要に応じて加熱下で行うこともできるが、好ましくは加熱せずに行われる。また本工程に要する時間は、特に限定はされないが、例えば10〜80分間、好ましくは20〜60分間、より好ましくは25〜30分間の範囲で適宜選択されうる。揉捻葉の処理量は、特に限定はされないが、例えば水分率に応じて25〜40kg、好ましくは30〜35kg、より好ましくは32〜33kgの範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、例えば乾量基準で25〜40%、好ましくは25〜35%、より好ましくは25〜30%である。
【0033】
上述の杜仲葉を乾燥する工程は、例えば天日にさらすことにより行うことができる。ここで天日にさらす時間は、特に限定はされないが、例えば96〜120時間、好ましくは96〜114時間、より好ましくは96〜102時間の範囲で適宜選択されうる。さらに当該乾燥工程は市販されている乾燥機を用いても行うことができる。乾燥機による乾燥方法は、特に限定はされないが、例えば、株式会社寺田製作所製、乾燥機ND120型により行われうる。ここで熱風の温度は、特に限定されないが、例えば70〜100℃、好ましくは85〜95℃の範囲から適宜選択されうる。また本工程に要する時間は、特に限定はされないが、5〜80分間、好ましくは10〜80分間、より好ましくは20〜80分間の範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、特に限定はされないが、例えば水分率5%以下、好ましくは水分率3%以下、より好ましくは水分率2%以下である。
【0034】
上述の杜仲葉を焙煎する工程は、特に限定はされないが、例えば市販されている焙煎機を用いて行うことができる。本工程における焙煎方法は、特には限定されないが、例えば、有限会社横山製作所製、熱風式回転乾燥火入機などにより行われうる。また本工程に要する時間は、特に限定はされないが、30〜50分間、好ましくは30〜45分間、より好ましくは35〜40分間の範囲で適宜選択されうる。また本工程の焙煎温度は、特に限定はされないが、例えば100〜140℃、好ましくは120〜140℃、より好ましくは130〜140℃の範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、例えば乾量基準で8%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下である。
【0035】
上述の杜仲葉の水抽出物を得る工程において、杜仲葉加工物1kgに対して、例えば5〜50kg、好ましくは10〜30kg、より好ましくは15〜20kgから適宜選択される量の水が用いることができる。抽出温度は、例えば85〜98℃、好ましくは90〜95℃の範囲から適宜選択されうる。抽出時間は、特に限定はされないが、例えば10〜120分、好ましくは20〜90分、より好ましくは30〜60分から適宜選択されうる。
【0036】
抽出液の濾過は、例えば30〜200メッシュのフィルターなどを用いて行われうる。濾液は濃縮を行う前に一定時間静置してもよい。静置することにより発生する沈殿物を除去することにより、不要物を取り除くことができる。静置する時間は、特に限定はされないが、例えば1〜24時間、好ましくは6〜20時間、より好ましくは8〜18時間から適宜選択されうる。静置する際の温度は、特に限定はされないが、例えば0〜35℃、好ましくは0〜16℃、より好ましくは2〜8℃から適宜選択されうる。
【0037】
濾液として得られる抽出液の濃縮は、当該技術分野で通常用いられる方法により行われるが、例えばロータリーエバポレーターなど用いて行われうる。当該濃縮工程は、例えば20〜140mmHg、好ましくは30〜120mmHg、より好ましくは40〜100mmHgの範囲から適宜選択されうる減圧条件下、例えば30〜80℃、好ましくは35〜70℃、より好ましくは40〜60℃の範囲から適宜選択されうる温度で行われうる。当該濃縮工程により、当初の抽出液との容積比で例えば5〜8%、好ましくは5.6〜7.5%、より好ましくは6〜6.6%に濃縮される。
【0038】
得られる濃縮物を、そのまま本発明の杜仲葉水抽出エキス液として使用することができるが、さらに遠心分離、加熱殺菌などの処理を行うこともできる。遠心分離は、市販の遠心分離機を用いて、当該技術分野で通常行われている方法により行われうる。例えばバッチ式でいえばロータリー遠心分離機、流動式でいえば多室型遠心分離機またはデカンター式遠心分離機、チューブラー型遠心分離器などが用いて行えうる。遠心分離の条件は特に限定はされないが、例えばバッチ式円心機の場合、1000〜3100rpm、好ましくは1500〜2500rpm、より好ましくは1800〜2000rpmの回転数;例えば210〜2010g、好ましくは470〜1310g、より好ましくは680〜840gのg値;および、例えば10〜60分、好ましくは15〜40分、より好ましくは20〜30分の処理時間から適宜選択される条件で行われうる。連続通過式の遠心分離機を用いる場合、100〜400メッシュ、好ましくは150〜350メッシュ、より好ましくは200〜300メッシュから適宜選択される条件で行われうる。遠心分離後の上澄みの回収は給水機、濾過助剤として珪藻土による濾過などにより行われる。
【0039】
加熱殺菌は、例えば75〜100℃、好ましくは80〜95℃、より好ましくは85〜90℃に加温することにより行われる。加熱殺菌のための処理時間は、例えば60〜240分、好ましくは90〜220分、より好ましくは120〜180分の範囲から適宜選択されうる。
【0040】
得られる杜仲葉水抽出エキス液の濃縮率は、当初の抽出液に対して容積比で例えば5〜7.5%、好ましくは5.5〜7%、より好ましくは6〜6.5%、例えば6.5%である。
【0041】
得られる杜仲葉水抽出エキス液のゲニポシド酸含量は、6〜40mg/g、好ましくは15mg/g〜40mg/g、より好ましくは28〜37mg/g、例えば30mg/gである。
【0042】
当該濃縮エキス液を、スプレードライ、フリーズドライなどの当該技術分野で通常用いられる方法で乾燥し、杜仲葉水抽出エキスの粉体を得ることができる。当該エキス粉末は、焙煎工程後、水抽出前の杜仲葉1kgから、例えば200〜600g、好ましくは200〜400g得られる。得られる杜仲葉水抽出エキス粉末のゲニポシド酸含量は、40〜100mg/g、好ましくは50〜90mg/g、より好ましくは60〜80mg/g、例えば77mg/gである。得られる杜仲葉水抽出エキス粉末の杜仲葉配糖体の含量は、30〜60mg/100g、好ましくは35〜55mg/100g、より好ましくは40〜50mg/100g、例えば47mg/100gである。
【0043】
上述の杜仲葉を乾燥する工程により得られた杜仲葉は、そのままジェットミルにより粉末にする工程に付すこともできるが、当該工程の前に仮粉砕を行ってもよい。ここで仮粉砕の方法は、特に限定はされないが、例えば市販されている粉砕器を用いて行うことができる。本工程における粉砕方法は、特には限定されないが、例えば、槇野産業株式会社製、コロプレックス250Z型などにより行われうる。本工程を経て得られる杜仲葉の大きさは、例えば150μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下である。
【0044】
本発明において、杜仲葉をジェットミルにより粉末(例えば、平均粒径が3〜14μmの粉末)にする工程は、特に限定はされないが、例えば市販されているジェットミルを用いて行うことができる。ここでジェットミルにおいて使用する圧縮空気は加熱していてもよく、例えば70〜150℃、好ましくは90〜150℃、より好ましくは105〜150℃の範囲から適宜選択される温度であってもよい。圧縮空気を加熱して粉砕を行う場合、本工程において加熱殺菌も行うことができるという利点がある一方で、杜仲葉から粉体加工後の変色は極めてわずかである。さらに、粉末粒径の均一性が高められる。得られる杜仲葉粉末は、例えば3〜14μm、好ましくは4〜8μm、特に好ましくは4.5〜6μmの範囲の平均粒径を有し、例えば5μmである。また、本工程で得られる杜仲葉粉末は、例えば2〜14μm、好ましくは2〜8μm、特に好ましくは4〜5μmの範囲のメディアン径を有し、例えば5μmである。また、本工程で得られる杜仲葉粉末は、例えば2〜32μm、好ましくは2〜9μm、特に好ましくは4〜6μmの範囲のモード径を有し、例えば5μmである。
【0045】
本工程の粉砕室への原料供給量は、投入風量を5.5m/分、粉砕圧力を0.6Mpaに固定した場合、1〜12kg/時間、好ましくは1〜8kg/時間、より好ましくは1〜6kg/時間の範囲で適宜選択されうる。本工程を経て得られる杜仲葉の水分量は、例えば乾量基準で6%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは2%以下である。
【0046】
本明細書で用いられる用語「メタボリックシンドローム改善剤」とは、特に限定はされないが、例えば、内臓脂肪減少効果に加え、さらに(1)血中の中性脂肪減少効果、(2)空腹時血糖値減少効果および(3)血圧降下効果のいずれかの効果を得るために投与される薬剤を意味する。例えば本発明におけるメタボリックシンドローム改善剤は、内臓脂肪減少効果、血中中性脂肪減少効果および空腹時血糖抑制効果を有するものであってもよい。
【0047】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤は、特に限定はされないが、メタボリックシンドロームの改善のために使用されうる他の薬剤、例えば、脂肪吸収阻害剤、肥満症の治療剤または予防剤、抗脂血症の予防剤および治療剤、ならびに糖尿病、高血圧など治療剤または予防剤とともに使用されうる。
【0048】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤は、医薬組成物の有効成分として使用することができる。当該医薬組成物は、種々の剤形、例えば、経口投与のためには、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁液、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤などとすることができ、例えば、局所投与のためにはクリーム、ゼリー、ゲル、ペースト、軟膏などとすることができるが、これらには限定されない。当該医薬組成物は、一般に用いられる各種成分を含みうるものであり、例えば、1種もしくはそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤、結合剤、安定剤、コーティング剤等を含みうる。また本発明の医薬組成物は、持続性または徐放性剤形であってもよい。
【0049】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤の投与量は、患者の体型、年齢、体調、疾患の度合い、発症後の経過時間等により、適宜選択することができ、本発明の医薬組成物は、治療有効量および/または予防有効量のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤を含むことができる。例えば本発明の杜仲葉粉砕物またはその水抽出物として、一般に10〜50000mg/日/成人、好ましくは100〜5000mg/日/成人の用量で使用される。当該医薬組成物の投与は、単回投与または複数回投与であってもよく、たとえば他のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤などの他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。
【0050】
本発明に係る食品は、液体飲料および固形の食品を含む。当該食品は、医薬部外品、他の飲食物などの成分、食品添加物などとして使用することができる。また本明細書における経口摂取用組成物は、そのまま機能性食品として使用できるほか、医薬品、医薬部外品、飲食物等の成分、食品添加物などとして使用することができる。当該使用により、本発明のメタボリックシンドローム改善効果および動脈硬化予防剤を有する当該食品または経口摂取用組成物の日常的および継続的な摂取が可能となり、メタボリックシンドロームの効果的な改善、および動脈硬化および動脈硬化性疾患の効果的な予防が可能となる。
【0051】
本発明のメタボリックシンドローム改善剤および動脈硬化予防剤を含む食品または飲料の例としては、リパーゼ阻害効果もしくは肥満抑制効果を有する機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品(栄養ドリンク等)、保険機能食品、特定保険用食品、栄養機能食品、一般食品(ジュース、菓子、加工食品等)などが含まれる。本明細書における食品または飲料は、任意の添加物として、鉄およびカルシウムなどの無機成分、種々のビタミン類、オリゴ糖およびキトサンなどの食物繊維、大豆抽出物などのタンパク質、レシチンなどの脂質、ショ糖および乳糖などの糖類、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、ソウマチン、サッカリン、サッカリンナトリウムなどの甘味料・矯味料を含むことができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
[実施例1] 杜仲葉エキスの調製
(1)水抽出用の杜仲葉加工物の製造
水抽出用の杜仲葉加工物の製造は、特開平8−173110号公報の実施例2の記載に基づいて行った。杜仲の生葉5kgを、日本茶製造用の送帯蒸機により110℃で90秒間蒸熱した。生葉を送帯蒸し機の投入口から機内に投入し、コンベヤ上を移動する間に上下スチーム供給装置からスチームを当て、110℃で90秒間蒸熱した。ネットコンベア上に杜仲生葉を広げ、ボイラーから供給される無圧蒸気を充満させた処理室を通過させることにより、杜仲生葉を蒸熱処理することができる。例えば、宮村鉄工株式会社製、給葉機、地上型1500およびネットコンベア、送帯式1000を用いることができる。
【0054】
次にこの蒸熱後の杜仲葉を揉捻機を用いて30分間揉捻した後、揉捻物を乾燥機を用いて80℃で5時間、水分量を5%まで乾燥させた。杜仲葉の色調は蒸熱後、緑褐色であったのが、乾燥に従い緑色を帯びた黒褐色へと変化した。その後、炒葉機(IR−10SP型:寺田製作所)を用いて110℃で30分間焙煎し、水抽出用の杜仲葉加工物サンプル2kgを得た。
【0055】
(2)杜仲葉エキスの調製
水抽出用の杜仲葉加工物サンプル1kgを90℃の熱水15kgに投入し、90℃で30分間抽出し14kg得た。その後150メッシュのフィルターを用いて濾過し、濾液を5℃に冷却し一晩放置した。上澄み液を取り出し、減圧下50℃で濾液を濃縮し1kg得た。
【0056】
濃縮液をクボタ株式会社製、遠心分離器KS8000で処理し、1800rpmの回転速度により遠心分離により沈殿物を除去し、得られた上澄み液を加熱殺菌(85℃、2時間)し、杜仲葉水抽出エキスを得た。当該濃縮エキス液をスプレードライ法により乾燥し、杜仲葉水抽出エキスの粉体(300g)を褐色の粉体として得た。
【0057】
[実施例2]杜仲葉粉末の調製
(1)乾燥杜仲葉の製造
乾燥杜仲葉の製造は、120kgの杜仲生葉を、送帯蒸機において蒸熱処理し、葉打機で攪拌および揉圧しながら乾燥し、揉捻機で杜仲葉中の水分を均一化した。その後、葉打機で攪拌および揉圧しながら乾燥し、杜仲葉中の水分を均一化した。このようにして処理した杜仲葉を再乾機により乾燥して乾燥杜仲葉を得た。各工程における条件を以下に示す:
送帯蒸機:蒸気量140L/分、蒸熱時間80秒、蒸気温度100〜110℃。葉打機:回転数36rpm
得られた乾燥杜仲葉30kgを、株式会社ホーライ製、UGC−280型で、1.4mm〜2.8mmに粉砕した。次に遠赤外焙煎機を用いて、通過速度を45秒としてセラミックヒーターを上段、下段それぞれ1灯照射し、約200℃で焙煎を行い、焙煎した乾燥杜仲葉26kgを得た。
【0058】
(2) 杜仲葉粉末の調製
実施例2(1)で得られた焙煎した乾燥杜仲葉26kgを、槇野産業株式会社製、コロプレックス250Z型により75μmに粉砕したものを、ジェットミルにて粉砕圧力を0.6Mpaに固定して、原料供給量を4kg/時間で微粉砕した。このジェットミルで粉砕する時に、圧縮空気を150℃に加熱した乾燥杜仲葉粉末を0.98kg得た。
【0059】
[実施例3] 杜仲葉エキスのメタボリックシンドローム改善作用の評価試験
(1) 試験食品の調製
試験食として、実施例1の粉体を50重量%以上含有し、賦形剤として粉末還元麦芽糖水飴(アマルティMR−100:東和化成工業社製)を43.3重量%、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F:三菱化学フーズ社製)を5重量%、微粒二酸化ケイ素(カープレックスFPS―500:DSLジャパン社製)を1.7重量%配合する素錠(1錠あたり333mg、ゲニポシド酸の含有量10mg)に、少量の表面剤(ラックグレーズ20E:日本シェラック工業社製)をコーティング乾燥した錠剤を製造した。
【0060】
(2) 試験方法
試験は、オープン試験により摂取期間4週間とし、成人男女計6名を被験者とした。
被験者には、摂取期間中、毎日、実施例3(1)に記した錠剤9錠(ゲニポシド酸の合計含有量90mg)を1日分として摂取させた。なお,被験者には被験食を毎日定時に摂取することを除いて、それまでの食生活、喫煙量および運動などの日常生活を変えることのないように指示した。
【0061】
測定は、試験開始時および摂取4週間後の合計2回として、血中中性脂肪値、空腹時血糖値、血圧およびウエスト周囲径を下記の通り実施した。
採血方法は、各時期の食事前(早朝空腹時;前日夕食後10時間絶食)に1回約10ml(試験食開始後は15ml)の量を採血した後、所定のサンプルチューブ4本に分注した。
【0062】
血圧の測定は、最低5分間の安静期間後に、座位にて自動血圧計(オムロン社製 HEM−1000)により収縮期血圧を2回測定した。ただし、2回目が1回目と収縮期血圧で10mmHg以上異なる際は、再度測定し、この範囲に安定するまで測定を行った。血圧値は、自動血圧監視装置2回の測定の平均値とした。
【0063】
ウエスト周囲径の測定は、臍の位置として、両足をそろえた立位で、両腕を身体の脇に自然に垂らし、腹壁の緊張を取り除き、自然呼気終末に計測を行った。なお、測定には、非伸縮性の布製のメジャーを用いた。
【0064】
すべての測定値は、平均値で示した。また、摂取開始日と摂取4週間目の比較については対応のあるt検定(paired t−test)を実施した。
【0065】
(3) 結果
結果を表1に示す。実施例3(1)に記した錠剤9錠(ゲニポシド酸合計含有量が90mg)を1日分として摂取することにより、摂取開始時と比較して4週間後には、血中中性脂肪、収縮期血圧、ウエスト周囲が減少する傾向にあった。
【0066】
【表1】

【0067】
[実施例4] 杜仲葉粉末のメタボリックシンドローム改善作用の評価試験
(1) 試験食品の調製
試験食は、実施例2の粉体を使用した。
【0068】
(2) 試験方法
試験方法は、実施例3と同様とし、被験者を成人男女5名で実施した。
被験者には、摂取期間中、毎日、実施例4(1)に記した粉体3g(ゲニポシド酸の含有量85mg)を1日分として摂取させた。
【0069】
(3) 結果
結果を表2に示す。実施例4(1)に記した粉末(ゲニポシド酸含有量が85mg)を1日分として摂取することにより、摂取開始時と比較して4週間後には、血中中性脂肪、収縮期血圧、ウエスト周囲が減少する傾向にあった。
【0070】
【表2】

【0071】
[実施例5] 杜仲葉エキス、杜仲葉粉末および桑葉エキスのメタボリックシンドローム改善作用の評価試験
(1)試験食品の調製
試験食は以下の方法により調製した。実施例1の粉体を55.6重量%以上含有し、かつ実施例2の粉体を23.3重量%以上含有し、かつ桑の葉エキスパウダー(日本粉末薬品社製)を10重量%以上含有し、賦形剤として結晶セルロース(セオラスFD−301:旭化成ケミカルズ社製)を4.7重量%として混合後、精製水を3.5重量%およびエタノールを35重量%として加え練合し、乾燥機により45℃で15時間乾燥し、精製水およびアルコールを蒸発させた。製粒後、ショ糖脂肪酸エステル(リョートーシュガーエステルS−370F:三菱化学フーズ社製)を5.7重量%、微粒二酸化ケイ素(カープレックスFPS―500:DSLジャパン社製)を1.8重量%として混合後、打錠して得られた素錠(1錠あたり300mg、1錠あたりのゲニポシド酸の含有量11mg)に表面剤としてイーストラップ(キリンビール社製)を22.2重量%とグリセリン(花王社製)を0.36重量%の混合液でコーティング乾燥した錠剤を製造した。
【0072】
(2)試験方法
試験方法は、実施例3と同様とした。測定項目の設定値により被験者の測定データを抽出し、平均値として示した。設定値と被験者数は次の通りである。血中中性脂肪値:摂取開始時に血中中性脂肪値150mg/dL以上の被験者(n=8)、収縮期血圧、ウエスト周囲径および内臓脂肪断面積:摂取開始時に内臓脂肪断面積100平方cm以上の被験者(n=10)、空腹時血糖値:摂取開始時に空腹時血糖値85mg/dL以上の被験者(n=8)。
【0073】
被験者には、摂取期間中、毎日、実施例5(1)に記載の錠剤9錠(ゲニポシド酸の含有量99mg)を1日分として摂取させた。
内臓脂肪断面積は、腹部CTスキャン撮影を行い、呼気時の臍部断層画像より腹部脂肪蓄積を求めた。
【0074】
(3)結果
結果を表3に示す。実施例5(1)の錠剤9錠(ゲニポシド酸含有量が99mg)を1日分として摂取することにより摂取開始時と比較して4週間後には、血中中性脂肪、収縮期血圧、空腹時血糖値、ウエスト周囲径および内臓脂肪断面積が減少する傾向にあった。
【0075】
桑葉は、α―グルコシダーゼ阻害活性をもち、血糖値改善素材として知られるが、文献(食品と開発 VOL.37 NO.10、54―56)では、1.8gをヒトに摂取することによりその効果を認めている。また、文献ではα―グルコシダーゼ阻害活性を持つことが知られる1―デオキシノジリマイシンが0.1%対乾燥物以上被験品に含まれると記述があり、文献での1―デオキシノジリマイシンの1日あたりの摂取量は1.8mgである。本試験食品で1日用量として摂取された桑葉は、約270mgであり、1−デオキシノジリマイシンの1日あたりの摂取量は0.0837mgである。従って杜仲葉と既知の桑葉の使用量より少ない量で血糖値を改善することが明らかとなった。
【0076】
【表3】

【0077】
[実施例6] 杜仲葉粉末および難消化性デキストリンのメタボリックシンドローム改善作用の評価試験
(1)試験食品の調製
試験食は、実施例2の粉体を62.5重量%および難消化性デキストリン(ファイバーソル2:松谷化学工業社製)を37.5重量%混合した粉体を製造した(1袋あたり8g、ゲニポシド酸の含有量125mg)。
【0078】
(2)試験方法
被験者は成人男女7名を対象とした。
試験は、実施例6(1)の試験食品および難消化性デキストリンについて食後血糖値の比較試験を実施した。被験者には、前日22時より絶食し、翌日9時に初期の血糖値を測定後した。ただちに、実施例6(1)の試験食品1袋あるいは難消化性デキストリン試験食5gを摂取後、それぞれ同じ内容の食事を摂取させ、食後30分、120分の血糖値を測定した。なお、試験終了まで水以外の摂取は制限させた。
【0079】
血糖値の測定方法は、各測定時に手指毛細血管より採血用穿刺針(ファインタッチ:テルモ社製)を用いて採血し、直ちに血糖測定器(メディセーフミニGR102:テルモ社製)にて血糖値を測定した。
【0080】
(3)結果
結果を表4に示す。実施例6(1)に記した粉末1袋(ゲニポシド酸含有量が125mg)は、難消化性デキストリン5gと同等な空腹時血糖値を示した。
【0081】
難消化性デキストリンは、スクラーゼやマルターゼなど二糖類分解酵素を阻害することなく、ショ糖やマルトースの加水分解により生じたグルコースの吸収を抑制し、血糖値の上昇抑制効果を持つことが知られるが、文献(日本食物繊維研究会誌 VOL.3 NO.1、1999、157−163)では、5gをヒトに摂取することによりその効果を認めている。本試験食品で1日用量として摂取された難消化性デキストリンは、僅か3gであり、杜仲葉との併用により血糖値を改善することが明らかとなった。
【0082】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
杜仲葉加工物を含むメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項2】
血糖低下作用を有する植物加工物をさらに含む、請求項1に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項3】
前記植物加工物が難消化性デキストリンおよび桑葉加工物から選択される、請求項2に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項4】
前記植物加工物がα−グルコシダーゼ阻害作用を有する、請求項2または3に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項5】
前記植物加工物が植物抽出物である、請求項2〜4のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項6】
前記杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項7】
前記杜仲葉加工物が、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を水により抽出する工程;および、当該抽出液を濃縮する工程を含む製造方法により得られる杜仲葉水抽出エキスである、請求項6に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項8】
前記杜仲葉加工物が、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を焙煎する工程;杜仲葉を水により抽出する工程;および、当該抽出液を濃縮する工程を含む製造方法により得られる杜仲葉水抽出エキスである、請求項6または7に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項9】
前記杜仲葉加工物が乾燥杜仲葉の粉砕物である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項10】
前記粉砕物が、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を揉捻する工程;杜仲葉を乾燥する工程;および、杜仲葉を粉砕する工程を含む製造方法により得られる粉砕物である、請求項9に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項11】
前記粉砕物が、杜仲生葉を蒸熱する工程;杜仲葉を攪拌および/または揉圧しながら乾燥する工程;杜仲葉中の水分を均一化する工程;杜仲葉を乾燥する工程;杜仲葉を粉砕する工程;杜仲葉に対して遠赤外線を照射することにより杜仲葉を乾燥する工程;および杜仲葉をジェットミルにより粉末にする工程を含む製造方法により得られる杜仲葉粉末である、請求項9または10に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項12】
前記杜仲葉加工物が杜仲葉抽出物および乾燥杜仲葉の粉砕物の混合物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項13】
1日用量換算でゲニポシド酸を85mg以上含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項14】
動脈硬化の予防のために使用される、請求項1〜13のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤を含む医薬。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のメタボリックシンドローム改善剤を含む食品。
【請求項17】
機能性食品、健康食品、健康補助食品、栄養補助食品、保険機能食品、特定保険用食品または栄養機能食品である、請求項16に記載の食品。

【公開番号】特開2007−230969(P2007−230969A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57825(P2006−57825)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】