説明

メタボリックシンドローム改善剤

【課題】メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、或いは機能性食品、さらにはそれらを用いた応用方法の提供。
【解決手段】コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、或いは、該化合物を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の改善効果を有し、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果をする機能性食品、そして該化合物を有効成分として含有する組成物を摂取することによるメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患改善方法、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、又は機能性食品に関する。また、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善用組成物を製造するためのコエンザイムQ10の使用、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善のためのコエンザイムQ10の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10はベンゾキノン誘導体であり、広く生物界に分布していることからユビキノン(酸化型コエンザイムQ10)と命名された。これを2電子還元したヒドロキノン体がユビキノール(還元型コエンザイムQ10)である。イソプレノイド側鎖の長さ(n)の違いにより多数の同族体が存在するが(n=1〜12)、生合成されるため、主たる同族体は種によって決まっている。哺乳類ではn=9,10が主であり、例えばマウス、ラットではn=9が多く、ウサギでn=10が多い。ヒトはn=10である。
【0003】
コエンザイムQ10は、生体内の細胞中におけるミトコンドリアの電子伝達系構成成分として存在する生理学的成分であり、生体内において酸化と還元を繰り返すことで電子伝達系における伝達成分としての機能を担っている。コエンザイムQ10は生体内において、エネルギー生産及び抗酸化活性を示すことから、その有用性は広く知られている。コエンザイムQ10はヒトの体内で生合成される分子であるが、加齢と共に生合成量が低下すること、あるいはさまざまな疾患における生体中のコエンザイムQ10量の減少が報告されている。このような疾患では外部からのコエンザイムQ10の供給が良好な結果をもたらしている。更に、罹患時だけでなく老人あるいは肉体的に疲労したときなど、平常時でもコエンザイムQ10の補給が必要であると考えられている。
【0004】
酸化型コエンザイムQ10は、鬱血性心不全薬として医薬用途に用いられている。医薬用途以外では、ビタミン類同様、栄養剤、栄養補助剤、更に、痴呆症などの老人性の疾患、アレルギー疾患に対する有用性、あるいは運動能力の増加等も報告されており、また、その安全性が高いことから有用な栄養補給の手段と言われている。
【0005】
一方、近年、我が国ではライフスタイルの変化により、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満に代表される生活習慣病を併せ持つ、いわゆるメタボリックシンドローム(マルチプルリスクファクター症候群)の患者が増えつづけており大きな社会問題になっている。その理由は、本症候群が動脈硬化を発症・進展させやすく、心筋梗塞や脳卒中などの原因となるからである。上記4種の生活習慣病はいずれも動脈硬化の主要な危険因子であり、共通して活性酸素の産生を増加させる(非特許文献1、2)。活性酸素は直接又は低比重リポ蛋白(LDL)の酸化を介して血管内皮細胞の機能を傷害し、さらに血管壁における脂質蓄積を促進することによって動脈硬化を発生させると考えられている。従って、生活習慣病が重積したメタボリックシンドロームでは、いっそう活性酸素が増加した状態(酸化ストレス状態)にあるはずで、動脈硬化病変が発症・進展すると考えられている。
【0006】
これまでメタボリックシンドロームの治療又は改善方法としては、食事制限や、運動療法が主で、又薬剤としては個別の疾患治療薬(糖尿病治療薬、血圧降下剤、高脂血症治療薬等)はあったが、メタボリックシンドロームの予防及び/又は改善剤、又は機能性食品は無いのが実情であった。
こうした背景からメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、又は機能性食品の開発が強く望まれていた。
【非特許文献1】日本臨床、62、(6)1021−1028(2004)
【非特許文献2】日本臨床、62、(6)1029−1036(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、又は機能性食品、或いはそれらの製造方法を提供し、さらにはそれらを用いた応用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、コエンザイムQ10にメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果があることを見出し、本発明を完成した。
具体的には、コエンザイムQ10を有効成分として含有する組成物を摂取または塗布することにより、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患を有する患者を何ら副作用無く、予防及び/又は改善することを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤;
(2)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果を有する機能性食品;
(3)メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善用組成物を製造するためのコエンザイムQ10の使用;
(4)メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善のためのコエンザイムQ10の使用;
(5)コエンザイムQ10を有効成分として含有する組成物を摂取または塗布することを特徴とする、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善方法;
(6)メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である上記(1)記載の予防及び/又は改善剤;
(7)メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である上記(2)記載の機能性食品;
(8)メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である上記(4)記載のコエンザイムQ10の使用;
(9)
メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である上記(5)記載の予防又は改善方法;
(10)コエンザイムQ10を有効成分として含有する高血圧、酸化ストレス、炎症、又はインスリン抵抗性の各症状のうち少なくとも1つ以上の症状を改善することによるメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防又は改善剤;
に関する。
さらに、本発明は、
(11)コエンザイムQ10を有効成分として含有する、酸化LDL値、8−hydroxydeoxyguanosine値、3−nitrotyrosine値、3−chrolotyrosine値のうち少なくとも1つの値の亢進を伴うメタボリックシンドロームの予防及び/又は改善剤;
(12)コエンザイムQ10を有効成分として含有する、酸化LDL値、8−hydroxydeoxyguanosine値、3−nitrotyrosine値、3−chrolotyrosine値のうち少なくとも1つの値の亢進を伴うメタボリックシンドロームの改善剤;
(13)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する血圧上昇抑制剤;
(14)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する高値の8−hydroxydeoxyguanosine値の抑制剤;
(15)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因するDNAの酸化障害の抑制剤;
(16)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームの酸化亢進に起因する動脈硬化等の予防剤;
(17)コエンザイムQ10を有効成分として含有する高値の酸化LDL値の抑制剤;
(18)コエンザイムQ10を有効成分として含有する酸化ストレスの抑制剤;
(19)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する動脈硬化等の予防剤;
(20)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する高値の3−nitrotyrosine値及び3−chrolotyrosine値の抑制剤;
(21)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する高値の反応性窒素酸化物値の抑制剤;
(22)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する動脈硬化の病態進行の抑制剤;
(23)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する高値のインシュリン値の抑制剤;
(24)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームとして発症している糖尿病の改善剤;
(25)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する糖尿病の予防剤;
(26)コエンザイムQ10を有効成分として含有する高値の高感度CRP値の抑制剤;
(27)コエンザイムQ10を有効成分として含有する心筋梗塞及び/又は糖尿病の改善剤;
(28)コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドロームに起因する心筋梗塞及び/又は糖尿病の予防剤;
(29)経口で摂取することを特徴とする上記(11)〜(28)に記載の剤;
(30)上記(11)〜(29)に記載の「剤」の態様を、「機能性食品」で置換した態様;
(31)上記(11)〜(29)に記載の「剤」の態様を、「予防及び/又は改善用組成物を製造するためのコエンザイムQ10の使用」の態様に書き換えた態様;
(32)上記(11)〜(29)に記載の「剤」の態様を、「予防及び/又は改善のためのコエンザイムQ10の使用」の態様に書き換えた態様;
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、コエンザイムQ10を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果を有する機能性食品、化粧料、さらにはメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善用組成物を調整するためのコエンザイムQ10の使用、そして、該化合物を有効成分として含有する組成物を摂取又は塗布することを特徴するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について、以下具体的に説明する。本発明に用いられるコエンザイムQ10は医薬又は食品として服用又は食用可能なコエンザイムQ10であればその由来および製法は何ら限定されるものでは無いが、好ましくは市販のものが良い。また、生体内でコエンザイムQ10に変換する化合物であってもよいし、還元型コエンザイムQ10を含んでいても何ら問題無い。
【0011】
コエンザイムQ10の医薬及び食品中の含有量は、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果が得られる量であれば何ら限定されるものではないが、1日のコエンザイムQ10の摂取量が1〜2000mgとなるような量、好ましくは10〜500mg、さらに好ましくは30〜300mgとなるような量が良い。
【0012】
コエンザイムQ10は融点の低い親油性の固体であり、水に難溶性のために経口投与における吸収性が低いことが知られている。このため、医薬製剤及び食品中のコエンザイムQ10の分散安定性、結晶析出防止性などの性状の安定性及び生体吸収性を向上させることが好ましい。本発明において、コエンザイムQ10の性状を安定化したものを用いても良い。例えば、コエンザイムQ10を鶏卵タンパク質、乳タンパク質、肉タンパク質等の動物性タンパク質、大豆タンパク質もしくは大豆ペプチド等の植物性タンパク質又はこれらの加水分解物と配合する、又は、更にでんぷん等の糖質等と配合することによりコエンザイムQ10を安定化し、更に生体吸収性を向上させた後に使用しても良い。
【0013】
コエンザイムQ10を乳化組成物として用いる場合には、例えばコエンザイムQ10を油相成分としてショ糖酢酸イソ酪酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、ポリ(モノ)グリセロール脂肪酸エステル等に溶解し、多価アルコール及び乳化剤を用いて乳化処理するか、又は有機酸等の添加剤の存在下又は不存在下に、アラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、デンプン、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、デキストリン、カルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等の水溶性物質中にコエンザイムQ10を分散、乳化するか、又はシクロデキストリン等の包摂化合物中に包摂させることにより性状の安定性生体吸収性を向上させた後に使用すれば良い。
【0014】
本発明に係わるメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤、組成物又は食品を摂取する対象は、ヒト又は動物である。本発明において動物とは産業用動物、伴侶動物及び実験動物を指す。産業動物とはウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥、ダチョウ等の家禽、ブリ、ハマチ、マダイ、マアジ、コイ、ニジマス、ウナギ等の魚類など産業上飼養することが必要とされている動物である。又、伴侶動物とはイヌ、ネコ、マーモセットなど家庭用ペットを示す。実験動物とはビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル、カニクイザルなど医学、生物学、農学、薬学等の分野で研究に共用される動物を示す。
【0015】
本発明でいうメタボリックシンドロームとは、マルチプルリスクファクター症候群とも言われ、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満に代表される生活習慣病が引き起こされやすくなった状態のことをいう。
本発明の対象となるメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患症状又は疾患であれば何ら限定されるものではない。メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患としては、例えば高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、糖尿病性網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病性腎症、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞等又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
本発明のコエンザイムQ10を有効成分として含有する組成物は、摂取及び/又は塗布によってメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善に有効な組成物であればよい。該組成物を摂取及び/又は塗布することを特徴とするメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善方法も本発明の範囲内である。摂取には経口、非経口いずれも含まれ、非経口には、注射、点滴、経鼻などによるものがある。
【0017】
また、本発明のコエンザイムQ10の使用は、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善用組成物を調製するための使用であれば特に限定されない。メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善に有効な組成物としては、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤としての医薬、及びメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果を有する機能性食品、化粧料などが挙げられる。
【0018】
本発明のコエンザイムQ10を含有する医薬としては、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果が得られるものであれば何ら限定されない。該医薬の剤型としては、散在、顆粒剤、丸剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、粘付剤、吸入剤、注射剤等が挙げられる。これらの製剤は常法に従って調製されるが、コエンザイムQ10は水に難溶性であるため、植物性油、動物性油等の非親水性有機溶媒に溶解するか又は、乳化剤、分散在もしくは界面活性剤等とともに、ホモジナイザー(高圧ホモジナイザー)を用いて水溶液中に分散、乳化させて用いる。更に、コエンザイムQ10の吸収性を高めるために、平均粒子系を1ミクロン程度まで微粉砕し用いることも可能である。
【0019】
製剤化のために用いることができる添加剤には、例えば大豆油、サフラー油、オリーブ油、胚芽油、ひまわり油、牛脂、いわし油等の動物性油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、精製水、乳糖、デンプン、結晶セルロース、D−マンニトール、レシチン、アラビアガム、ソルビトール液、糖液等の賦形剤、甘味料、着色料、pH調整剤、香料などをあげることができる。尚、液体製剤は、服用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよい。また、錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしても良い。
【0020】
注射剤の形で投与する場合には、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮、関節内、滑液嚢内、胞膜内、骨膜内、舌下、口腔内等に投与することが好ましく、特に静脈内投与又は腹腔内投与が好ましい。静脈内投与は、点滴投与、ポーラス投与のいずれであってもよい。
【0021】
本発明のコエンザイムQ10を含有する機能性食品としては、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の改善効果が得られるものであれば何ら限定されるものでは無く、例えばコエンザイムQ10含有サプリメント(散在、顆粒剤、ソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、チュアブル錠、速崩錠、シロップ、液剤等)、コエンザイムQ10含有飲料(お茶、炭酸飲料、乳酸飲料、スポーツ飲料等)、コエンザイムQ10含有菓子(グミ、ゼリー、ガム、チョコレート、クッキー、キャンデー等)、コエンザイムQ10含有油、コエンザイムQ10含有油脂食品(マヨネーズ、ドレッシング、バター、クリーム、マーガリン等)コエンザイムQ10含有ケチャップ、コエンザイムQ10含有ソース、コエンザイムQ10含有流動食、コエンザイムQ10含有乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ等)、コエンザイムQ10含有パン類、コエンザイムQ10含有麺類(うどん、そば、ラーメン、パスタ、やきそば、きしめん、そーめん、ひやむぎ、ビーフン等)等が挙げられる。
【0022】
本発明に用いられるコエンザイムQ10を含有する機能性食品には、必要に応じて各種栄養素、各種ビタミン類(ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等)、各種ミネラル類(マグネシウム、亜鉛、鉄、ナトリウム、カリウム、セレン等)、食物繊維、多価不飽和脂肪酸(アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸等)、共役脂肪酸類(共役リノール酸、共役リノレン酸等)、リン脂質(レシチン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルDHA等)、糖脂質類(セレブロシド等)、カロチノイド類(β−カロチン、リコピン、アスタキサンチン、β−クリプトキサンチン等)、フラボノイド類(ケルセチン、ルテオリン、イソフラボン等)、キサントフィル類(カプサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン等)、アミノ酸類(グリシン、セリン、アラニン、グルタミン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トリプトファン、フェニルアラニン、ヒスチジン、プロリン、メチオニン、システイン等)、その他の栄養素(カルニチン、セサミン、α−リポ酸、イノシトール、D−カイロイノシトール、ピニトール、タウリン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸、S−アドノシルメチオニン、クルクミン、γ−オリザノール、グルタチオン、γ−アミノ酪酸、シネフリン、ピロロキノリンキノン、カテキン、カプサイシン等)、分散剤、乳化剤等の安定剤、甘味料、呈味成分(クエン酸、リンゴ酸等)、フレーバー、ローヤルゼリー、プロポリス、アガリクス等を配合することができる。また、ペパーミント、ベルガモット、カモンミール、ラベンダーなどのハーブ類を配合してもよい。また、テアニン、デヒドロエピアンドステロン、メラトニンなどの素材を配合してもよい。また、食品や化粧品として加工する過程において物理的条件または共存する他の成分によって酸化型コエンザイムQ10から生じる還元型コエンザイムQ10を含有しても何ら問題はない。
【0023】
本発明の化粧料としては、クリーム、乳液、ローション、マイクロエマルジョンエッセンス、入浴剤などが挙げられ、香料等を混合してもよい。
【0024】
メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善度を評価する方法としてはメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善度を評価する方法であれば良く、例えばメタボリックシンドロームのモデル動物であるSHR/NDmcr−cp(SHR/cp)を用いて、それらの体重、心拍数、血圧、グルコース、リポ蛋白(HDL;高比重リポ蛋白、LDL;低比重リポ蛋白、VLDL;等)、酸化LDL、CRP、8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG)、FRAS、BAP、ORAC、過酸化脂質、マロンジアルデヒド(TBARS)、カルボキシメチルリジン、ペントシジン、ヘキサノイルリジン、4−ヒドロキシノネナール、アクロレイン、3−ニトロチロシン(3−NT)、3−クロロチロシン(3−CT)、トータルコレステロール、血中遊離脂肪酸、コエンザイムQ10の酸化率又は、グルタチオンペルオキシダーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ及びカタラーゼ活性等を測定すればよい。
【実施例】
【0025】
本発明を製剤例、食品製造例、化粧料製造例、及び実施例に基づいて説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
[製剤例1]
<錠剤>
コエンザイムQ10 120g
結晶セルロース 330g
カルメロース−カルシウム 15g
ヒドロキシプロピルセルロース 10g
精製水 60ml
上記組成物を通常の方法にて配合、乾燥した後、10gのステアリン酸マグネシウムを添加し、打錠を行い、1錠あたりコエンザイムQ10を20mg含有する100mgの錠剤を得た。
【0026】
[製剤例2]
<ソフトカプセル>
200gのコエンザイムQ10をオリーブオイル400gに添加して、約60℃で溶解、均一に撹拌した後に冷却し、コエンザイムQ10含有素材を得た。ゼラチン70%、グリセリン30%を混和、膨潤させ、溶解ゼラチンシートを作成した。このゼラチンシートに内溶液としてコエンザイムQ10含有素材を1カプセルあたり300mgの内容量になるように充填し、乾燥させ、1カプセルあたりコエンザイムQ10を100mg含有するソフトカプセルを得た。
【0027】
[食品製造例1]
<飲料>
30gのコエンザイムQ10を60℃に加温し、油相を得た。グリセリン90gに乳化剤としてグリセロール脂肪酸エステル10gを添加し、70℃に加温して溶解させた。この溶液に先の油相を撹拌しながら徐々に添加した。混合液を、乳化機を用いて高圧乳化処理して乳化組成物を得た。この乳化組成物20gに水180mlを添加、撹拌してコエンザイムQ10含有飲料を得た。
【0028】
[食品製造例2]
<パン>
1gのコエンザイムQ10、砂糖15g、食塩2g、脂肪粉乳5gを湯70gに溶かし、鶏卵2個を添加してよく混ぜた。これを小麦粉130gとドライイースト2gを混合した混合物に加え、手でこねた後、バター約30gを加えて更にこね、30個のロールパン生地を作った。ついで、発酵させた後、表面に溶き卵を塗り、オーブンにて180℃で15分間焼き、ロールパンを得た。
【0029】
[食品製造例3]
<うどん>
小麦粉400gに対して、水200gにコエンザイムQ10を2g、食塩20gを添加して、よくこねて寝かした。この後、生地を延伸し、幅約6mmで切断してうどんを製造した。
【0030】
[化粧料製造例1]
<クリーム>
コエンザイムQ10、ステアリルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、パラベン、ビタミンE、香料、精製水を適当量、定法に従って配合し、クリームを得た。
【0031】
[実施例1]
6週齡の雄性 SHR/NDmcr−cp(SHR/cp)ラット(例えば、日本エスエルシー株式会社から購入することができる。)に市販の標準食または種々濃度(0.07、0.2及び0.7%) のコエンザイムQ10添加食を与え、それぞれコントロール群、0.07%コエンザイムQ10群、0.2%コエンザイムQ10群及び、0.7%コエンザイムQ10群として、各群6匹の動物を用いた。4週間毎に無麻酔下に尾動脈の収縮期血圧をtail−cuff法により測定した。また、12時間絶食後尾静脈より採血し、酸化ストレスのマーカーであるLDLの変性度、過酸化脂質及びDNAの酸化障害を示す8−hydroxydeoxyguanosine(8−OHdG)、ならびに反応性窒素酸化物のバイオマーカーである3−nitrotyrosine(3−NT)及び3−chrolotyrosine(3−CT)の各血中濃度を測定した。さらに、炎症反応のマーカーで心筋梗塞や糖尿病発症の予測因子といわれている高感度C反応性タンパク (hsCRP)及びインシュリン抵抗性の指標として血中のインシュリン値を測定した。
【0032】
LDLの変性度はアニオン交換HPLC(AE−HPLC)を用いた亜分画分析法(Yamgutchi Y et.al.,:Atherosclerosis139,323−331(1998)、Haginaka J. et.al.,:J.Chromatogr.B.751,161−167(2001))により測定した。過酸化脂質値は八木法(Yagi K.:Biochem. Med.15,212−216(1976))にて測定し、チオバルビツール酸反応物質(thiobarbituric acid reactive substances;TBARS)量として表示した。血清中の8−OHdG量は多電極電気化学検出器を用いるHPLC(HPLC−ECD)法(Long L. et.al.,:J.Chromatogr.B.731,241−249(1999))にて測定した。血清総蛋白中の3−NT及び3−CTの定量は、HPLC−ECD法(Yamaguchi Y.et.al.,:FEBS Lett.512,218−222(2002))にて行い血清蛋白当たりの値で表示した。また、hsCRP及びインシュリン値は市販のELISAキット(Alpha Diagnostic社及び森永生科学研究所社)を用いて測定した。
【0033】
血圧へのコエンザイムQ10投与効果を図1に示す。なお、特に図中において、コエンザイムQ10をCoQ10と略することがある。SHR/cpのコントロール群の収縮期血圧は6週齢で150mmHg以上を示し、すでに高血圧を発症しており、加齢と共に増加し、28週齢まで持続した。それに対してコエンザイムQ10の投与は濃度依存的に有意な血圧上昇抑制作用が認められた。
【0034】
8−OHdGに対するコエンザイムQ10投与効果を図2に示す。コントロール群では酸化ストレスマーカーの8−OHdG値は6週齢ですでに高値を示し、加齢と共に増加し、16〜20週齢でプラトーとなり、その後減少する傾向を示した。それに対してコエンザイムQ10投与群では8−OHdG値の増加を濃度依存的に抑制した。本結果によりDNAの酸化障害を抑制する効果を有することが判明した。従って、コエンザイムQ10は、メタボリックシンドロームの酸化亢進に起因する動脈硬化等の予防に有効である。
【0035】
酸化LDL値に対するコエンザイムQ10投与効果を図3に示す。コントロール群では6週齢で酸化LDLが高値を示した。それに対してコエンザイムQ10投与群では酸化LDLの上昇が有意に抑制されていた。本結果により、コエンザイムQ10が酸化ストレスを抑制する効果を有することが判明した。従って、コエンザイムQ10は、メタボリックシンドロームの酸化亢進に起因する動脈硬化等の予防に有効である。
【0036】
3−NT及び3−CT値に対するコエンザイムQ10投与効果を図4に示す。コントロール群では3−NT及び3−CT値は6及び8週齢で変化しなかったが、16週齢で共に増加傾向を示し、その後加齢とともに顕著に増加した。これらの増加に対してコエンザイムQ10投与群では有意に抑制されていた。本結果により、コエンザイムQ10が反応性窒素酸化物を低減する効果を有することが判明した。ここで、3−NT及び3−CT等の反応性窒素酸化物は、体内のリン酸化反応を抑制し、アポトーシスを誘導することが知られる。また、動脈硬化の病巣に多く存在することから、動脈硬化の病態進行にかかわっている事が予想される。さらに、アルツハイマー症候群、パーキンソン病、急性肺障害にも関与していることが知られている。従って、コエンザイムQ10を投与することにより上記病態を改善あるいは予防することが可能である。
【0037】
インシュリン値に対するコエンザイムQ10投与効果を図5に示す。コントロール群は6週齢で正常ラットに比較して顕著な高値を示したが、加齢と共に増加し、20週齢でピークを示した。このような顕著な増加はコエンザイムQ10投与群では濃度依存的に有意に抑制された。本結果により、コエンザイムQ10がメタボリックシンドロームとして発症している糖尿病の改善効果を有すること、及びメタボリックシンドロームに起因する糖尿病の予防に有効であることが判明した。
【0038】
高感度CRP値に対するコエンザイムQ10投与効果を図6に示した。コントロール群は6週齢では正常ラットと同程度であったが、12週齢で増加傾向を示し、加齢と共に増加し、20週齢でピークに達したが、32週齢ではほぼ正常値にまで減少した。16〜20週齢間に見られた高感度CRP値の増加はコエンザイムQ10投与群では濃度依存的に優位に抑制された。本結果により、コエンザイムQ10が心筋梗塞や糖尿病の改善効果を有すること、及びメタボリックシンドロームに起因する心筋梗塞や糖尿病の予防に有効であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のコエンザイムQ10を有効成分として含有することを特徴とするメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患改善効果を有する機能性食品は、医薬及び/又は食品の分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】メタボリックシンドロームモデルラットの血圧へのコエンザイムQ10投与効果を示す。
【図2】メタボリックシンドロームモデルラットの8−OHdGに対するコエンザイムQ10投与効果を示す。
【図3】メタボリックシンドロームモデルラットの酸化LDL値に対するコエンザイムQ10投与効果を示す。
【図4】メタボリックシンドロームモデルラットの3−NT及び3−CT値に対するコエンザイムQ10投与効果を示す。
【図5】メタボリックシンドロームモデルラットのインシュリン値に対するコエンザイムQ10投与効果を示す。
【図6】メタボリックシンドロームモデルラットの高感度CRP値に対するコエンザイムQ10投与効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善剤。
【請求項2】
コエンザイムQ10を有効成分として含有するメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善効果を有する機能性食品。
【請求項3】
メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善用組成物を製造するためのコエンザイムQ10の使用。
【請求項4】
メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善のためのコエンザイムQ10の使用。
【請求項5】
コエンザイムQ10を有効成分として含有する組成物を摂取または塗布することを特徴とする、メタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防及び/又は改善方法。
【請求項6】
メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である請求項1記載の予防及び/又は改善剤。
【請求項7】
メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である請求項2記載の機能性食品。
【請求項8】
メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である請求項4記載のコエンザイムQ10の使用。
【請求項9】
メタボリックシンドロームに起因する疾患が動脈硬化である請求項5記載の予防又は改善方法。
【請求項10】
コエンザイムQ10を有効成分として含有する高血圧、酸化ストレス、炎症、又はインシュリン抵抗性の各症状のうち少なくとも1つ以上の症状を改善することによるメタボリックシンドローム又はメタボリックシンドロームに起因する疾患の予防又は改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−44894(P2008−44894A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222587(P2006−222587)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年3月9日、社団法人 日本薬理学会主催の第79回日本薬理学会年会において、文書をもって発表。
【出願人】(303046299)旭化成ファーマ株式会社 (105)
【Fターム(参考)】