説明

メタリック塗料組成物

【課題】 光輝感に優れた塗膜を形成することが可能なメタリック塗料を提供する。
【解決手段】 不飽和基含有樹脂、有機溶剤および光輝材から成るメタリック塗料組成物において、不飽和基含有樹脂として不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)を使用する。該不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は2以上の活性水素を有する分子量300以下の化合物(A)と脂環式または芳香族のポリイソシアネート化合物(B)と活性水素を有する(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝材を良好に配向させることができ、従って光輝感に優れた塗膜を形成することが可能なメタリック塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック塗料において、自動車、一般工業などの被塗物が鋼板である場合には焼付塗料であるアクリルメラミン樹脂が、パソコンや携帯電話などのように被塗物がプラスチック板である場合には常温乾燥性のラッカー樹脂やイソシアネート硬化型ウレタン樹脂が、それぞれ広く使用されている。
【0003】
しかし、プラスチック用塗料において使用されているイソシアネート硬化型ウレタン樹脂は、樹脂の硬化までにポットライフという反応時間(最終的な硬化までに数時間もの時間)を必要とする。また、このものは一般に塗膜硬度が低い(柔らかい)ため、擦り傷防止などの見地から、高硬度塗膜を形成し得るものの出現が要望されている。一方焼付塗料は高温度の適用を必要とするために、プラスチック用途には適さない。
【0004】
種々の塗料用樹脂のうち、紫外線硬化型樹脂は紫外線の照射により短時間(数十秒)で硬化し、その間に被塗物の温度はプラスチックでも耐え得る程度にしか上昇しないので、プラスチック用途に広く使用されている。特に多官能のアクリレートオリゴマーを含んだ紫外線硬化型樹脂の場合には、高硬度の塗膜を形成できることが知られている。
【0005】
しかし、このような低分子量のアクリレートオリゴマーから構成されている通常の紫外線硬化型樹脂は、これらをメタリック塗料に使用した場合にはスプレー塗布後の光輝材の動きを抑制する為に必要な溶剤の揮発に伴う十分な粘度上昇や乾燥性が期待できず、従って光輝材の配向が良好で光輝感に優れたメタリック塗膜を得ることは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、光輝材を良好に配向させることができ、その結果として光輝感に優れた塗膜を形成することが可能なメタリック塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、下記する特定の不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)、有機溶剤および光輝材から成るメタリック塗料組成物をスプレー塗装によって被塗物に塗着すると、有機溶剤の揮発に伴って、適度に粘度が上昇し、これにより光輝材の動きを止められ、次いで乾燥に伴う塗膜の収縮によって光輝材が押さえつけられ、その結果として光輝材の良好な配向性が実現され、光輝感に優れたメタリック塗膜が形成されることを見出した。
【0008】
本発明における上記の不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は、2以上の活性水素を有する分子量300以下の化合物(A)と脂環式または芳香族のポリイソシアネート化合物(B)と活性水素を有する(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物であり、分子内にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を持ち、3000以上、好ましくは3000〜30000の分子量、および2以上、好ましくは2〜10の不飽和基を有し、粘度が200万mPa・s以上、好ましくは常温でワックス状であることによって特徴づけられるものである。
【0009】
不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は、上記化合物(A)と化合物(B)と化合物
(C)との反応生成物であって前記した条件を満たすものである限り、その構造について格別に限定されるものではないが、より多官能でより高粘度であるものが好ましい。不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)の好ましい例は、化合物(A)としてのシクロヘキシルジメタノールと化合物(B)としてのイソホロンジイソシアネートと化合物(C)としてのジペンタエリスリトールペンタアクリレートとを反応させることによって得られるポリマー、すなわち、

化合物(C)−化合物(B)−(化合物(A)−化合物(B))x−化合物(C)

なる一般構造を有するものである(xは繰り返し単位の数である。)。このような構造を有する不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は有機溶液の形態で合成される。
【0010】
化合物(A)は水酸基を2個以上持つ、分子量が300以下の化合物であればよい。例えば、シクロヘキシルジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノールなどの多価脂環式アルコール類;エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1.5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1.8−オクタンジオールなどの多価脂肪族アルコール類などが挙げられる。
【0011】
化合物(B)は脂環または芳香族構造がポリイソシアネート中に含まれている化合物であれば良い。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)メチルシクロヘキサン−2,4(又は2,6)−ジイソシアネート、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート重合体、ジフェニルメタンジイソシアネート重合体などを挙げることができる。
【0012】
化合物(C)は分子中に(メタ)アクリレート基と活性水素とを持つ化合物であれば良い。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリレートなどのヒドロキシアクリレート;プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,5−ペンタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,7−ヘプタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物;1,8−オクタンジオールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0013】
また、その他にもネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物などが挙げられる。
【0014】
本発明のメタリック塗料組成物は、上記のような不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)に有機溶剤および光輝材を配合したものである。
【0015】
有機溶剤は、不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)を溶解することができ、且つスプレーが可能なものである限り、その種類に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、エチルグリコールアセテート、ブチルアセテートなどを好適に使用することができる。有機溶剤の使用量は、塗料組成物をスプレー可能粘度とするのに必要な量、またはそれよりも少ない量とされる。後者の場合には、スプレー塗装に先立って有機溶剤を添加することにより、組成物の粘度をスプレー可能粘度に調整することが必要である。光輝材は、塗膜に金属のような光輝感を与える顔料である限り、その種類に制限はないが、一般的にはアルミニウムやその他の金属顔料、パール顔料などが好適に使用される。
【0016】
光輝材の使用量は不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)の100重量部(固形分)に対して、5〜35重量部が好ましい。
【0017】
本発明のメタリック塗料組成物には、必要に応じて沈降防止剤やレベリング剤などのような慣用の添加剤の適量を配合することができる。
【0018】
本発明のメタリック塗料組成物は、通常、スプレー塗装によって被塗物に適用される。その際、組成物の粘度が高い場合には、有機溶剤を添加することにより、その粘度をスプレー可能粘度、例えばフォードカップ#4にて10〜18秒(20℃)の粘度に調整する必要がある。スプレー塗装により5〜30μm、好ましくは10〜20μmの厚さの塗膜を塗着させたのち、紫外線照射することにより、光輝材の配向が良好で光輝感に優れたメタリック塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。以下において、部および%は、いずれも重量基準である。
【0020】
実施例 1
不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)とメチルエチルケトンとを
60%対40%の割合で含んで成る溶液 100部
ALPASTE 5620NS 16部
(東洋アルミニウム工業株式会社製のアルミニウム顔料ペースト;固形分70%)
IRGACURE 184(Ciba社製の光開始剤) 4部
NS−5500(楠本化成(株)製の沈降防止剤) 10部
【0021】
上記の成分を酢酸ブチル中に分散させて、フォードカップ#4にて12秒(20℃)の粘度に調整することにより、本発明のメタリック塗料組成物を調製した。
【0022】
上記の不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は、化合物(A)としてのシクロヘキシルジメタノールと化合物(B)としてのイソホロンジイソシアネートと化合物(C)としてのジペンタエリスリトールペンタアクリレートとを反応させることによって得られる前記一般構造式のポリマーであって、9200の分子量および10の不飽和基を有しており、粘度が200万mPa・s以上であり、常温でワックス状である。
【0023】
実施例 2
不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)とメチルエチルケトンと
を50%対50%の割合で含んで成る溶液 120部
ALPASTE 5620NS(前出) 16部
IRGACURE 184(前出) 4部
NS−5500(前出) 10部
【0024】
上記の成分を酢酸ブチル中に分散させて、フォードカップ#4で12秒(20℃)の粘度に調整することにより、本発明のメタリック塗料組成物を調製した。
【0025】
上記の不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)は、化合物(A)としてのシクロヘキシルジメタノールと化合物(B)としてのイソホロンジイソシアネートと化合物(C)としての2−ヒドロキシエチルアクリレートとを反応させることによって得られる前記一般式のポリマーであって、3900の分子量および2の不飽和基を有しており、粘度が200万mPa・s以上であり、常温でワックス状である。
【0026】
比較例
この比較例は、低分子量のウレタンオリゴマーから成る従来技術を例示するものである。
比較樹脂−1 60部
ALPASTE 5620NS(前出) 16部
IRGACURE 184(前出) 4部
NS−5500(前出) 10部
【0027】
上記の成分を酢酸ブチル中に分散させて、フォードカップ#4で14秒(20℃)の粘度に調整することにより、従来技術のメタリック塗料組成物を調製した。
【0028】
上記の比較樹脂−1は化合物(A)としてのシクロヘキシルジメタノールと化合物(B)としてのイソホロンジイソシアネートと化合物(C)としてのペンタエリスリトールトリアクリレートとを反応させることによって得られる前記構造式(ただしxの値が小さい)のポリマーであって、1500の分子量および6の不飽和基を有しており、粘度が35000mPa・sであり、常温で液状である。
【0029】
試験例
実施例1、実施例2および比較例のメタリック塗料組成物を、それぞれポリカーボネート板にエアースプレーで塗布し、60℃で10分間乾燥したのち、光源として120W/cmのメタルハライドランプを用いて、1400mJ/cmの積算光量で紫外線照射することにより、厚さ12μmのメタリック塗膜を作製した。それぞれの塗膜についてフロップ・インデックス(Flop index)および目視による光輝感、密着性並びに鉛筆硬度を測定し、結果を表1に示した。
【0030】
フロップ・インデックスは、X−Rite社製のフロップ・インデックス測定器(X−Rite MA−68II)を用いて測定した。光輝材の種類により幾分異なるが、一般的にはフロップ・インデックスが20以上であれば、金属のような優れた光輝感があると評価できる。
【0031】
目視による光輝感の評価において、○は光輝感に優れていたこと(光輝材の配向ムラが殆んど認められないこと)を、×は光輝感に乏しかったこと(光輝材の配向ムラが多く認められること)を、それぞれ意味する。塗膜の密着性はカッタ−で素地に達するようにカットし、1×1mmの大きさのゴバン目塗膜を100個作り、その表面に粘着セロハンテ−プを貼着し、それを急激に剥離したのちの塗面を観察することによって測定した。○はゴバン目塗膜の剥離が全く認められなかったことを、×はゴバン目塗膜の剥離が10個以上認められたことを、それぞれ意味する。
【0032】
塗膜の鉛筆硬度は、ブリキ板に上記の塗装条件で塗膜を作製し、紫外線照射後に測定し
た。
【0033】
【表1】

【0034】
上記の試験結果から明らかなように、不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)、有機溶剤および光輝材から成る本発明のメタリック塗料組成物を使用することによって、光輝材の配向が良好で光輝感に優れたメタリック塗膜を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)、有機溶剤および光輝材を含有して成るメタリック塗料組成物であって、該不飽和基含有ウレタン樹脂化合物(a)が2以上の活性水素を有する分子量300以下の化合物(A)と脂環式または芳香族のポリイソシアネート化合物(B)と活性水素を有する(メタ)アクリレート化合物(C)との反応生成物であり、分子内にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を持ち、3000以上の分子量および2以上の不飽和基を有することを特徴とする組成物。

【公開番号】特開2010−209276(P2010−209276A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59314(P2009−59314)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(390028048)根上工業株式会社 (11)
【出願人】(000225854)楠本化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】