説明

メタルハライドランプ、紫外線照射装置

【課題】メタルハライドランプの長手方向の両端部における温度分布の低い部分を解消させて350〜380nmの波長域における発光効率の改善を図る。
【解決手段】略円筒形状の石英ガラス製の発光管11で放電空間13を形成し、この放電空間13内に、少なくとも希ガスと放電媒体となる水銀それに鉄等の放電媒体が封入して無電極のメタルハライドランプ100を構成する。メタルハライドランプ100はマグネトロンより放射されるマイクロ波により、放電媒体である鉄が350〜380nmの紫外線を発光させる。発光管11に放電空間13を形成させる封止部121,122には、発光管11の有効発光長を侵害しない範囲で無機の保温膜151,152を形成する。これにより、マイクロ波の発光管11の両端に位置する定在波の谷の部分に起因する最冷点温度の発生を防止することで発光効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロ波によって励起を行い、紫外線を発光させる無電極のメタルハライドランプおよびこのランプを用いた紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のメタルハライドランプは、発光管内に対向配置された電極付近における管壁外表面に設けた保温膜が、点灯時における最冷点温度が放電空間の両端近傍よりも中央側になるように放電空間の両端近傍を保温する保温手段が形成されている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−338610公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、350〜380nmの波長において鉄による強い発光を示すが、メタルハライドランプとしてマイクロ波給電式無電極ランプが用いられた場合、メタルハライドランプがマイクロ波の定在波にて放電形成が行われることから、定在波の谷の部分では最冷部が発生することになり、温度の低い部分では鉄の発光効率が低下する、という問題があった。
【0005】
この発明の目的は、350nm〜380nmにおいて高い発光効率の得られるマイクロ波給電式無電極のメタルハライドランプおよびこのランプを用いた紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明のメタルハライドランプは、略円筒形状の石英ガラス製発光管で放電空間を形成し、該放電空間内に、少なくとも希ガスと水銀それに鉄等の放電媒体が封入して構成される無電極ランプに、マグネトロンより放射されるマイクロ波により放電が発生するメタルハライドランプにおいて、前記発光管の有効発光長を侵害しない少なくとも一方の発光管の封止部に、耐熱性に優れた保温膜を形成したことを特徴とする。
【0007】
この発明の紫外線照射装置は、放電媒体が封入されている紫外線を発光させる請求項1または2記載のメタルハライドランプと、前記メタルハライドランプを収納し、外部に紫外線を照射可能とするランプハウスと、前記ランプハウスから照射された紫外線の照射領域を制限するため、紫外線照射面下に設置された紫外線カットフィルタと、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、定在波の谷となる端部封止部に耐熱性に優れた無機保温膜を形成して最冷部の温度を上昇させたことにより、鉄の発光効率を上昇させて照度の改善を可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】無電極ランプにおけるマイクロ波の定在波について説明するための説明図である。
【図4】この発明と従来のランプを同条件で点灯させた分光分布について説明するための説明図である。
【図5】この発明と従来の350〜380nmにおける発光比について説明するための説明図である。
【図6】この発明の紫外線照射装置に関する一実施形態ついて説明するためのシステム構成図である。
【図7】図6のIa−Ib線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1、図2は、この発明のメタルハライドランプに関する一実施形態について説明するための、図1は斜視図、図2は図1の正面図である。
【0012】
図1、図2において、100は無電極のメタルハライドランプを示しており、このメタルハライドランプ100の11は、紫外光を透過させる石英ガラス製の例えば長さが140mm、管径φが11mm、肉厚mが1mm程度の円筒形状の発光管である。発光管11の両端は、加熱して封止部121,122を形成したことにより、発光長が138mm程度の放電空間13が形成される。
【0013】
さらに、発光管11の放電空間13内には、60torrのアルゴンガスとそれに水銀、鉄等の放電媒体が封入される。発光管11の封止部121,122には、発光管11を支持する棒状の支持部141,142が、それぞれ発光管11と同材料で融解させた状態で一体形成される。
【0014】
メタルハライドランプ100は、マイクロ波が照射されることにより、放電空間13に封入された放電媒体である鉄のもつ350〜380nmの波長に強い発光させることが可能となる。
【0015】
ここで、図3を参照し、マイクロ波が照射されることにより発光の無電極ランプにおける定在波について説明する。
【0016】
図3の破線で示すように、マイクロ波の定在波の谷Va〜Vcがメタルハライドランプ100の長手方向の両端部と中央部においてそれぞれ発生する。定在波の谷Va〜Vcの各部分では、山の部分Ma,Mbに比して電磁エネルギーが低いことから、必然的に発生する温度も低いことになる。
【0017】
再び、図1、図2において、マイクロ波の定在波の谷となる図3に示したVa〜Vcのうち、メタルハライドランプ100の定在波の谷Va,Vcの位置で最冷部となる封止部121,122の発光管11には、保温膜151,152が形成される。保温膜151,152は、有効発光長を侵害しない範囲内、具体的には封止部121,122からそれぞれ発光管長の5%となる程度の領域Aに耐熱性に優れ、マイクロ波を反射しないシリカ、リン酸、酸化ジルコニウムを主成分とする無機被覆剤を用いて形成される。
【0018】
このような保温膜151,152として用いられる耐熱性の無機被覆剤の具体的な材料の一例としては、日産化学工業(株)のボンド・エックス(商品名)を挙げることができる。
【0019】
図4は、この発明の保温膜151,152が形成されたランプと従来の保温膜が形成されないランプを、同条件で点灯させた場合の分光分布について説明するための説明図である。
【0020】
図4の実線に示す保温膜151,152が形成されたこの発明のメタルハライドランプ100は、破線に示す保温膜がない従来のメタルハライドランプに比して350nm〜380nmの波長域における高い発光効率のメタルハライドランプの実現を図ることが可能となる。
【0021】
図5は、この発明と従来の発光比について説明するためのものである。すなわち、350nm〜380nmの波長域において、この発明のメタルハライドランプは、28%程度の発光分布の向上が見られる。
【0022】
この実施形態では、マイクロ波給電式無電極のメタルハライドランプにマイクロ波で形成される定在波の谷の部分である封止部に、最冷部温度を上昇させることにより鉄の蒸発量を増加させ、350nm〜380nmの波長域において従来よりも発光効率の向上を図ることができる。
【0023】
なお、上記したこの発明のメタルハライドランプの一実施形態では、保温膜をメタルハライドランプ100の両端の封止部121,122の部分に形成したが、保温膜は少なくとも一方の封止部に形成しても構わない。この場合は、両側に形成した場合に比べ発光効率向上は劣るものの、保温膜を形成しない場合に比べて発光効率を改善させることができる。
【0024】
また、マイクロ波の定在波が発生する発光管11の長手方向の中間部にも保温膜を形成し、ここで温度を上昇させることも考えられるが、中間部に保温膜を形成すると保温膜が邪魔となり照度低下を来たす可能性があることから、発光管11の封止部の定在波の谷に対応する部分とした。
【0025】
図6および図7は、この発明の無電極のメタルハライドランプを点灯させる点灯装置について説明するための、図6はシステム構成図、図7は図6のIa−Ib線の断面図である。
【0026】
紫外線照射装置200の、61はマイクロ波を遮蔽する機能を有する、例えばステンレス製のランプハウスであり、このランプハウス61の中央下方部には電極を備えない、図1〜図5で説明したこの発明のメタルハライドランプ100をランプハウス61の側面の一部に取り付けてある。
【0027】
62は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生させるマグネトロンであり、マグネトロン62には、電源63から電力が供給される。64は、マグネトロン62で発生させたマイクロ波をアンテナ65から送信し、メタルハライドランプ100にマイクロ波を伝達させる導波管である。
【0028】
ランプハウス11の上面には、吸気口66が設置され、ブロア67から送風される冷却媒体である空気がランプハウス61内に取り込むようにしてある。ブロア67と吸気口66間には、図示しないダクトが設けられ、ブロア67から送られる風を取り込むようになっている。
【0029】
メタルハライドランプ100の背面側には、照射される紫外光を集光あるいは拡散させる反射板68が設置される。反射板68の前面には、照射窓を構成するRFスクリーン69がランプハウス61の一部に設けられている。RFスクリーン69は、金属でありかつ開口部が設けられ、マイクロ波は遮断し、紫外光と送風は通過させる。
【0030】
RFスクリーン69は、例えば、金属線をメッシュ状に編み込んで形成したり、金属板にパンチング加工でメッシュ状に形成したりして開口部を有するようになっている。メタルハライドランプ100と対向するRFスクリーン69の反対面は、紫外線の照射面となる。
【0031】
このようにして、マグネトロン62のマイクロ波で励起されたメタルハライドランプ100は、紫外光を発し、RFスクリーン69を介して図示しない被照射物を照射させることができる。
【0032】
この実施形態では、メタルハライドランプ100の長手方向の両端部における温度分布の低い部分の温度の上昇を図ったことより、メタルハライドランプ100が発する350〜380nmの波長域における発光効率が改善された紫外線の照射を実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
100 メタルハライドランプ
11 発光管
121,122 封止部
13 放電空間
141,142 支持部
151,152 保温膜
200 紫外線照射装置
61 ランプハウス
62 マグネトロン
63 電源
64 導波管
65 アンテナ
66 吸気口
67 ブロア
68 反射板
69 RFスクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状の石英ガラス製発光管で放電空間を形成し、該放電空間内に、少なくとも希ガスと水銀それに鉄等の放電媒体が封入して構成される無電極ランプに、マグネトロンより放射されるマイクロ波により放電が発生するメタルハライドランプにおいて、
前記発光管の有効発光長を侵害しない少なくとも一方の発光管の封止部に、耐熱性に優れた保温膜を形成したことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記保温膜は、マイクロ波を反射させない耐熱性無機被膜剤で形成したことを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
放電媒体が封入されている紫外線を発光させる請求項1または2記載のメタルハライドランプと、
前記メタルハライドランプを収納し、外部に紫外線を照射可能とするランプハウスと、
前記ランプハウスから照射された紫外線の照射領域を制限するため、紫外線照射面下に設置された紫外線カットフィルタと、を具備したことを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−113791(P2011−113791A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268724(P2009−268724)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】