説明

メタルハライドランプ

【課題】 拡散形で始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの自身による光吸収を極力防止し、ランプ効率の向上を図ることができるメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】 本メタルハライドランプは、概略回転楕円体形状(以下「球状」という)をした外管バルブ2を有し、その中にセラミック発光管1を収容し、蛍光体3が塗布された外管バルブの球状部2aとステム5および始動器15が内蔵された外管バルブのネック部2bとの境界部分2cに発光管1による光を反射する反射板9を設け、これにより発光管1と、ステム5および始動器15とを分離する。外管バルブの球状部2aと反射板9とで概略球状を呈する。反射板9により、ネック部2bに配置されたステム5および始動器15に向かう光はランプ中心部側に反射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメタルハライドランプに係り、特に低電圧始動形セラミックメタルハライドランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプは、発光管内に水銀、希ガスのほかに発光金属をハロゲン化合物の形で封入し、これにより演色性等を改善したランプである。このメタルハライドランプの効率を向上させるためには、発光管の温度を高めて、発光物質であるメタルハライドの蒸気圧を高めることが重要である。このために、近年、耐熱性の高いセラミックスを用いたセラミックメタルハライドランプが多く用いられてきている。中でも水銀灯安定器で点灯できる始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプは水銀灯のおよそ2倍の効率を持つことから水銀灯の代替が進んでいる。これら低電圧始動形セラミックメタルハライドランプは使用時の眩しさ軽減のために外管バルブに蛍光体を塗布した拡散形が広く用いられている。
【0003】
ランプ効率の改善に関しては、例えば特開平11−329349号公報に、蛍光ランプに係る技術が開示されている。この技術は、蛍光ランプのガラス管の管端封じ部と放電電極の間に反射板を設けたもので、これによりガラス管内に発生した放電による放射およびそれにより蛍光体で励起発光する光のうち、管端部に向かう放射、光の成分をガラス管内部に反射して、蛍光ランプのランプ効率を向上しようとするものである。
また、特開2002−203404公報には、照明効率の良い反射形HIDランプに係る技術が開示されている。この技術は、発光管の口金側に反射板を備え、これにより発光管からネック部へ抜けてくる光を反射板で反射して戻し照明光として有効に利用しようとするものである。
【特許文献1】特開平11−329349号公報
【特許文献2】特開2002−203404公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプは、ステムに黒色を呈するタングステンガラスが用いられること、並びに、光を吸収し易い着色した始動器を内蔵することから、発光管から放射された光の一部はこれら着色物に吸収されてしまう。中でも、拡散形は発光管からほぼ全ての方向に放射された光もその一部が外管バルブの拡散膜で反射されてランプ内に戻ることから、着色物に吸収される割合はより高くなり、透明形に比べて効率の低下をもたらすという問題がある。すなわち、発光管から3次元的にネック部分を見込む立体角(図1の立体角Ω)は全立体角(全ての方向=4π)の約2%程度であるにもかかわらず、拡散形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプは透明形のそれと比べて効率が6%も低下しているのである。本発明者らはこの効率低下が上記理由によることを見出したものである。
【0005】
従って本発明の目的は、上記のような拡散形で始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの自身による光吸収を極力防止し、ランプ効率の向上を図ることができるメタルハライドランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、セラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管および前記始動器を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記外管バルブが前記セラミック発光管を収容する球状部と前記始動器の一部または全部を収容するネック部とを有し、前記外管バルブの球状部内面に蛍光体が塗布され、前記球状部と前記ネック部との境界部分に前記セラミック発光管による光を反射する反射板が設けられたメタルハライドランプにより達成される。ここで、前記反射板は前記セラミック発光管に接続されたリード線を通す穴、および前記始動器を構成する電流制限用抵抗を通す穴を有することができる。本発明に係る照明器具は、上記反射板を備えたメタルハライドランプを使用したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る反射板を設けることにより、この種のメタルハライドランプのランプ効率を5%程度高めることが可能となり、又同時に、その口金部温度を4〜5℃下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明するが、その前にまず本発明の概要を説明する。
【0009】
本発明に係る始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプは、B形又はBT形外管のような概略回転楕円体形状(以下「球状」という)をした外管バルブを有し、その中にセラミック発光管を収容し、蛍光体が塗布された外管バルブの球状部とステムおよび始動器が内蔵された外管バルブのネック部との境界部分に前記発光管による光を反射する反射板を設け、これにより前記発光管と、ステムおよび始動器とを分離するものである。すなわち外管バルブのネック部はその球状部との境界部分で反射板によって蓋をされ、その結果、発光管がほぼ閉じた空間に収容されることになる。ここで、外管バルブの球状部と反射板とからなる形状が概略球状を呈することがネック部における光の吸収を防止する上で重要である。従って、反射板は平板以外に、曲面板を用いることもできる。この反射板により、ネック部に配置された始動器等の着色物に向かう光はランプ中心部側に反射されるので、ランプ効率を向上することができる。このとき、セラミック発光管は石英発光管に比べてよりコンパクトであり、したがって、より有効に反射板によって光を反射することができる。更に、セラミック発光管は石英発光管に広く用いられている保温膜が無いことから、石英発光管で生じる保温膜の影が口金部に向かうこともなく、よりいっそう有効に反射板によって光を反射することができる。また同時に、この反射板により、ネック部への上記発光管からの輻射熱並びに対流等による熱伝導を遮断し、ネック部の口金部温度を下げることができる。
【0010】
図1は、本発明に係る始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの一実施例を示す構成図である。同図は内部が分かるように一部切欠き図としている。図1に示すように、セラミック発光管1は、硬質ガラスからなる外管バルブ2の内部にステム5を介して気密に封止され、支持棒を兼ねたリード線4a、4bにより保持されている。外管バルブ2の球状部2aの内面には蛍光膜3が塗布されている。口金6は外管バルブ2のネック部2bに機械的にかしめ固定され、リード線と電気的に接続されている。グロー管7、電流制限用抵抗8、バイメタル(図示せず)からなる始動器15はリード線4a、4bに電気的に接続され、固定されている。反射板9は、例えば白色セラミック板からなり、外管バルブの球状部2aとネック部2bとの境界部分に配置され、反射板9に設けた穴を貫通するリード線4a、4bに固定される。電流制限用抵抗8の一部は、反射板9に設けた穴を通じて、ランプ中心部に伸びている。これにより、外管バルブの球状部2aと反射板9とで概略球状を形成する。外管バルブ2の内部には窒素ガスが約二分の一気圧に減圧され封入されている。セラミック発光管1の内部には、始動ガスとして約15kPaのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀50mg、発光金属としてナトリウム、タリウム、ディスプロシウムのヨウ化物が適量封入されている。
【0011】
本実施例によれば、始動器15等の着色物に向かう光は反射板9により発光管1側に反射されるのでランプ効率が向上するとともに、発光管1からの輻射熱並びに対流等による熱伝導が反射板9により遮断される。本実施例のランプを定格電力270W、周囲温度25℃、ベースアップの状態で裸点灯したところ、ランプ効率は92ルーメン/ワット、口金6の温度は138℃であった。一方、比較例として、同仕様ランプで反射板9を除いたランプを定格電力270Wで点灯したところ、ランプ効率は88ルーメン/ワット、口金6の温度は143℃であった。すなわち、本実施例では比較例と比べ、ランプ効率が5%程度向上し、かつ口金の温度が5℃低下した。従来、この種のセラミックメタルハライドランプは、高い温度のセラミック発光管からの熱が口金部に伝導し、口金部温度が上昇し易く、器具の設計や使用条件に制約をもたらすという問題があったが、上述のような反射板を設けることにより、ランプ効率の向上とともに、セラミック発光管からの熱の伝導を遮断し口金部温度の上昇を大幅に緩和することができるという予想以上の効果を得ることができた。
【0012】
図2(a)、(b)は、それぞれ本発明で用いられる反射板の一例を示す図である。本例の反射板9a、9bは白色セラミック板からなり、例えば図1に示すように配置される。図2(a)において、反射板9aに設けられた穴10a、10bにはリード線4a、4bがそれぞれ通され、穴11には電流制限用抵抗8が通される。図2(b)において、反射板9bに設けられた穴10a、10bにはリード線4a、4bがそれぞれ通される。反射板9bでは、抵抗8が通される穴は設けておらず、電流制限用抵抗8は反射板9bよりも口金6の側に設置することとなる。反射板9a、9bはリード線に溶着された金属片により固着されている。本例の反射板は平板形状を示したが、これに限定されることなく、例えば曲面板を用いてもよいし、また円形以外の形状のものを用いてもよい。また、ランプ効率を一層向上させるために、例えば反射板のセラミック発光管側の面に蛍光体を塗布してもよい。
【0013】
図3は、本発明に係るメタルハライドランプを使用した照明器具の一例を示す図である。本図も内部が分かるように一部切欠き図としている。図示のように、照明装置30は、照明装置本体31と、本体31中に配置された始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプ32と、ランプ32の口金を差し込むソケット33とを備える。照明装置本体31は例えば支持体34で首振り可能に固定される。ランプ32には、内部に図1、図2に示すような反射板が設けられている。これにより、ランプ効率を向上したメタルハライドランプを有する照明装置30を得ることができる。また、上記反射板はランプ32中のセラミック発光管からの熱の伝導を遮断するので、ランプ32の口金部温度およびソケット33の温度の上昇を大幅に緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、低電圧始動形セラミックメタルハライドランプにおいてランプ効率の改善を図ると共に口金部温度上昇を緩和させるものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプの一実施例を示す構成図である。
【図2】(a)、(b)は、それぞれ本発明で用いられる反射板の一例を示す図である。
【図3】本発明に係るメタルハライドランプを使用した照明器具の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1・・・セラミック発光管、2・・・外管バルブ、3・・・蛍光膜、4a・・・リード線、4b・・・リード線、5・・・ステム、6・・・口金、7・・・グロー管、8・・・電流制限用抵抗、9・・・反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック発光管と、前記セラミック発光管を始動するための始動器と、前記セラミック発光管および前記始動器を収容する外管バルブとを備えたメタルハライドランプであって、前記外管バルブが前記セラミック発光管を収容する球状部と前記始動器の一部または全部を収容するネック部とを有し、前記外管バルブの球状部内面に蛍光体が塗布され、前記球状部と前記ネック部との境界部分に前記セラミック発光管による光を反射する反射板が設けられたことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
前記反射板が前記セラミック発光管に接続されたリード線を通す穴を有することを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。
【請求項3】
前記反射板が前記始動器を構成する電流制限用抵抗を通す穴を有することを特徴とする請求項2記載のメタルハライドランプ。
【請求項4】
請求項1記載のメタルハライドランプを使用したことを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−48985(P2006−48985A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225252(P2004−225252)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】