説明

メタルハライドランプ

【課題】点灯回路が熱破壊し難く且つ配光特性も良好なメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】一対の電極15a,15bを有する発光管10および当該発光管10を気密封止する内管28を有する二重管構造体20と、前記内管28の長手方向一端部を保持するホルダ30と、一方の開口側端部に前記ホルダ30がその開口を塞ぐように取り付けられ内部に前記発光管10を点灯させる点灯回路が収納されたケース40と、を備えたメタルハライドランプ1において、前記ホルダ30と前記ケース40とで構成されるランプ筐体80の底側端面の最大外径[mm]をDとし、前記一対の電極15a,15bのうちの前記ランプ筐体80に近い側に配置された電極15aの先端から前記ランプ筐体80の底側端面を含む仮想平面Aまでの最短距離[mm]をLとした場合に、0.29≦D/2L≦3.6、40≦D≦122、10≦L≦75の関係を満たす構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルハライドランプに関し、特に、水銀灯代替光源として好適なメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、広場、競技場などの屋外照明、体育館や工場などの高天井の屋内照明には、従来、主として水銀灯が用いられているが、水銀灯は比較的効率が低いため、近年の省エネルギーの要請を背景として、当該水銀灯を効率の高いメタルハライドランプへ置き換えることが推奨されている。
【0003】
しかし、水銀灯用の既存の照明施設には安定器が設けられているため、当該水銀灯用の照明器具にメタルハライドランプをそのまま装着して水銀灯と同等の明るさを得るためには、前記安定器をメタルハライドランプ用の安定器に取り替える必要があり、このことが、メタルハライドランプへの置き換えの阻害要因の一つとなっている。
【0004】
そこで、水銀灯用の安定器はそのまま残存させた状態で、当該水銀灯と同等の明るさが得られるメタルハライドランプとして、安定器を含む点灯回路をランプ筐体の内部に収納した所謂回路内蔵型のメタルハライドランプへの要望が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−158361号公報
【特許文献2】特開2005−116218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、回路内蔵型のランプに関しては、電球形蛍光ランプや水槽用ランプのような低ワットタイプのランプについては検討されているが、水銀灯の代替品となる高ワットタイプのランプについては耐熱性などの観点から課題が多いため検討されていない。例えば、メタルハライドランプの定常点灯中、前記発光管の表面は1000[℃]近い温度になり、当該発光管を気密封止する内管でさえも400[℃]を超える温度になるため、上記のようにランプ筐体内部に点灯回路を収納すると、内管の熱がランプ筐体を介して点灯回路に伝わり、その熱で点灯回路が熱破壊されるおそれがある。
【0007】
このような点灯回路の熱破壊を防止する方法の一つとして、ランプ筐体を大型化してその表面積を大きくし、ランプ筐体の放熱性を向上させることが考えられる。しかしながら、ランプ筐体を大型化すると、そのランプ筐体の陰となって発光管の光が届き難い暗い領域が広がるため、メタルハライドランプの配光特性が悪化する。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、点灯回路が熱破壊し難く且つ配光特性も良好なメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るメタルハライドランプは、先端が互いに対向する一対の電極を有し発光物質としてハロゲン化金属が封入された発光管および当該発光管を気密封止する内管を有する二重管構造体と、前記内管の長手方向一端部を保持するホルダと、一方の開口側端部に前記ホルダがその開口を塞ぐように取り付けられ、他方の開口側の端部に口金が外嵌され、内部に前記発光管を点灯させる点灯回路が収納されたケースと、前記二重管構造体を内包した状態で前記ケース又はホルダに取り付けられた外管とを備え、前記ホルダと前記ケースとで構成される有底のランプ筐体において、その底側端面の最大外径[mm]をDとし、
前記一対の電極のうちの前記ランプ筐体に近い側に配置された電極の先端から、前記ランプ筐体の底側端面を含む仮想平面までの最短距離[mm]をLとした場合に、
0.29≦D/2L≦3.6、
40≦D≦122、
10≦L≦75、
の関係を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るメタルハライドランプは、ランプ筐体の底側端面の最大外径[mm]をDとし、ランプ筐体に近い側に配置された電極の先端からランプ筐体の底側端面を含む仮想平面までの最短距離[mm]をLとした場合に、0.29≦D/2Lの関係を満たすため、ランプ筐体の放熱性が高く、その結果点灯回路が熱破壊し難い。また、D/2L≦3.6の関係を満たすため、配光特性が良好である。なお、具体的な根拠については後述する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るメタルハライドランプの概略構成を示す縦断面図
【図2】本実施の形態に係る発光管の概略構成を示す縦断面図
【図3】点灯回路ユニットにおける点灯回路の回路図
【図4】外管を示す縦断面図
【図5】外管を示す縦断面図
【図6】外管を示す縦断面図
【図7】外管を示す縦断面図
【図8】外管を示す縦断面図
【図9】最大外径D及び最短距離Lが点灯回路の熱破壊に及ぼす影響についての実験結果を示す図
【図10】最大外径D及び最短距離Lがランプの配光特性に及ぼす影響についての実験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施の形態に係るメタルハライドランプ(以下単に「ランプ」と称する)について、図面を参照しながら説明する。
<ランプの構成>
図1は、本実施の形態に係るメタルハライドランプの概略構成を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係るランプ1は、発光管10を有する二重管構造体20と、当該二重管構造体20が取り付けられたホルダ30と、筒状であって一方の開口側端部に前記ホルダ30が取り付けられた筒状のケース40と、当該ケース40の他方の開口側端部に外嵌された口金50と、前記ケース40内部に収納された点灯回路ユニット60と、前記二重管構造体20を内包した状態で前記ケース40に取り付けられた外管70とを備える。
【0013】
図2は、本実施の形態に係る発光管の概略構成を示す縦断面図である。図2に示すように、発光管10は、内部に気密封止された放電空間11を有する本管部12と当該本管部12の管軸方向両側に延出するように形成された一対の細管部13a,13bとからなる放電容器14を有する。本管部12及び細管部13a,13bは、例えば透光性セラミックで形成されている。なお、透光性セラミックとしては、例えばアルミナセラミックを用いることができるが、他のセラミック、或いは石英ガラス等を用いても良い。
【0014】
放電容器14は、本管部12及び細管部13a,13bをそれぞれ別個に成形した後、それらを焼きばめによって一体化したものを用いているが、これに限らず、例えば本管部12及び2つの細管部13a,13bを一体成形しても構わない。
【0015】
発光管10は、メタルハライドランプ1の長手方向の中心軸上に位置し、先端が互いに対向する一対の電極15a,15bを備える。また、発光管10の放電空間11には、発光物質としてのハロゲン化金属、始動補助ガスである希ガス、及び、緩衝ガスである水銀がそれぞれ所定量封入されている。なお、ハロゲン化金属としては、例えばヨウ化ナトリウムやヨウ化ジスプロシウム等が用いられる。また、本発明では、ランプ1の長手方向の中心軸上を、単に、「ランプ軸」とも称する。なお、ランプ軸は後述するケース40の筒軸Xと一致する。
【0016】
電極15a,15bは、電極棒16a,16bと、当該電極棒16a,16bの先端側(放電空間11側)の端部に設けられた電極コイル17a,17bとを備え、前記電極棒16a,16bの先端が電極15a,15bの先端に相当する。なお、図1及び図2において符号Pで示す部分が、後述するランプ筐体80に近い側に配置された電極15aの先端である。電極棒16a,16bと細管部13a,13bとの隙間には、発光物質の侵入を防ぐためのモリブデンコイル18a,18bが電極棒16a,16bに巻装された状態で配置されている。
【0017】
なお、電極15a,15bは、理想的(設計的)には上述した通りランプ軸上に、つまり、電極棒16a,16bの中心軸がランプ軸と一致するように配置されている。しかし、実際には、そのプロセスの精度上、前記中心軸がランプ軸と一致していない場合もある。
【0018】
細管部13a,13bには、先端部に電極15a,15bが接合された給電体19a、19bがそれぞれ挿入されている。給電体19a、19bは、それぞれの細管部13a,13bにおける本管部12とは反対側の端部部分に流し込まれたフリットからなるシール材(不図示)によって封着されている。
【0019】
図1に戻って、発光管10の一方の給電体19aは、電極15aとは反対側の端部が電力供給線21に電気的に接続されており、他方の給電体19bは、電極15bとは反対側の端部が電力供給線22に電気的に接続されている。各電力供給線21,22は、それぞれ金属箔23,24及び当該金属箔23,24に接続されたリード線25,26を介して点灯回路ユニット60に接続されている。なお、一方の電力供給線21における他方の電力供給線22及び給電体19bと対向する部分は、例えば石英ガラスからなるスリーブ27で被覆されている。
【0020】
上記した発光管10等の部材は、例えば円筒状をした内管28内に収納されており、発光管10、電力供給線21,22、金属箔23,24、リード線25,26、スリーブ27及び内管28等で二重管構造体20が構成されている。
【0021】
内管28は、例えば石英ガラスからなり、金属箔23,24が位置する側の端部がいわゆるピンチシール法によって圧潰され気密封止されている。したがって、内管28は、片封止型の気密容器であるといえる。ここで、内管28において圧潰されている部分をピンチシール部29と称するが、当該ピンチシール部29の横断面は略長方形である。
【0022】
内管28の内部であって発光管10の外部にあたる空間は、ランプ点灯時に給電体19a,19bや電力供給線21,22等が高温にさらされた際に酸化するのを防止するために、真空にされている。なお、真空にするのではなく前記空間に不活性ガスを充満させて酸化を防止する構成であっても良い。
【0023】
ホルダ30は、例えばアルミニウムからなる円板形状であって、中央に二重管構造体20のピンチシール部29を挿入するための長孔31が、ピンチシール部29の形状に合わせて形成されている。二重管構造体20は、ピンチシール部29を長孔31に挿入し、ピンチシール部29と長孔31との間隙に無機接着剤32を充填することで、ホルダ30に取り付けられている。その状態において、一対の電極15a,15bはそれぞれ筒軸X上に位置し、そのため一対の電極15a,15bの電極中心もケース40の筒軸X上に位置する。なお、無機接着剤32には、例えばシリカ及びアルミナを主成分とし1000℃の耐熱温度を有するものが用いられる。また、ホルダ材料としては、例えば、SUS304のようなステンレス鋼、鉄、白金、アルミナ、ジルコニア、石英ガラス、ステアタイト、硬質ガラス、軟質ガラス、PPS、PBI、PBT等が挙げられる。ただし、本発明におけるホルダ材料としては、特に限定されず、加工性、耐熱性、および部材としたときの軽量化という点を考慮しながら、適宜選択すれば良い。
【0024】
ケース40は、例えば耐熱性の合成樹脂材料からなり、外観が略円錐台形をした筒状である回路収納部41と、前記回路収納部41の小さい方の開口側の端部に連設された円筒状の口金取付部42とからなる。回路収納部41の内面には、点灯回路ユニット60を載置するための円環状の回路載置面43と、ホルダ30を載置するための円環状のホルダ載置面44とがそれぞれ内側の一部を切り欠くことによって形成されており、さらに、回路収納部41の大きい方の開口側の端面45には円環状の挿入溝46が形成されている。一方、口金取付部42には、点灯回路ユニット60の第1リード線63をケース40の外部に導出させるための貫通孔47が形成されている。また、ケース材料としては、金属アルミ,鉄、それらを含む合金、アルミナなどのセラミック、およびPPS,PBTのような樹脂材料、硬質ガラスや軟質ガラスなどを適宜使用して良い。
【0025】
ケース40の内部空間(回路収納部41の内部空間48)と外管70の内部空間71とは、ホルダ30によって仕切られており、外管70の内部空間71で熱された空気が回路収納部41の内部空間48へ流れ込まないようになっている。したがって、回路収納部41の内部空間48の雰囲気温度は外管70の内部空間71の雰囲気温度よりも低い。
【0026】
ホルダ30とケース40とで構成されるランプ筐体80は、有底筒状であって、ホルダ30の発光管10側の主面33とケース40の大きい方の開口側の端面45とでランプ筐体80の底側端面が構成されている。ケース40のホルダ載置面44にホルダ30が載置された状態で、ホルダ30はケース40の開口を塞いでおり、ホルダ30がケース40の開口内に埋没するために、ホルダ30の発光管10側の主面33とケース40の大きい方の開口側の端面45とは略面一になっている。図1に示すように、ランプ筐体80の底側端面の最大外径Dは、ケース40の大きい方の開口側の端面45の最大外径と同じである。
【0027】
なお、ランプ筐体80の底側端面は、ホルダ30の発光管10側の主面33とケース40の大きい方の開口側の端面45とで構成される場合に限られない。例えば、ホルダの外径がケースの開口径よりも大きく、ケースの大きい方の開口側の端面にホルダを載置した状態でホルダとケースとが接合されているような場合は、ランプ筐体80の底側端面がホルダの発光管側の主面のみで構成され、ランプ筐体の底側端面の最大外径Dはホルダの発光管側の主面の最大外径と同じになる。
【0028】
口金50は、筒状胴部とも称されるシェル51と、円形皿状をしたアイレット52と、シェル51及びアイレット52とを接合するガラス材料からなる絶縁部53とで構成される。点灯回路ユニット60の第1リード線63の貫通孔47から導出された部分は、ケース40の外面と口金50の内面とに挟持され、これにより第1リード線63とシェル51とが電気的に接続されている。点灯回路ユニット60の第2リード線64の口金取付部42の開口から導出された部分は、アイレット52に半田54で接合され、これにより第2リード線64とアイレット52とが電気的に接合されている。
【0029】
点灯回路ユニット60は、ケース40の回路載置面43に載置され固定されたプリント配線板61と複数の電子部品62等からなり、ケース40の回路収納部41の内部空間48、すなわちランプ筐体80内部に配置されている。
【0030】
図3は、点灯回路ユニットにおける点灯回路の回路図である。図3に示すように、点灯回路は、AC/DC変換部、DC調整部、及び、DC/AC変換部を有し、口金50から第1リード線63及び第2リード線64を介して供給される商用交流電力を、発光管10を点灯させるための電力に変換して発光管10に給電する。
【0031】
AC/DC変換部は、商用交流電源からの交流電力を所定電圧の直流電力に変換する役割を有し、整流回路DBと、整流回路DBから出力される直流電圧を昇圧する昇圧回路とを備える。昇圧回路は、チョッパー方式の昇圧回路であり、インダクタンスL1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、及び、コンデンサC1を備える。本例において、インダクタンスL1にはチョークコイルが、スイッチング素子Q1にはトランジスタが、コンデンサC1には電解コンデンサが、それぞれ使用される。
【0032】
DC調整部は、AC/DC変換部から出力される直流電圧を所定の電圧に調整する役割を有し、チョッパー方式の降圧回路からなる。当該降圧回路は、スイッチング素子Q2、ダイオードD2、インダクタンスL2、及び、コンデンサC2を備える。本例において、スイッチング素子Q2にはトランジスタが、インダクタンスL2にはチョークコイルが、コンデンサC2には電解コンデンサが、それぞれ使用される。
【0033】
DC/AC変換部は、DC調整部から出力される直流電圧を交流電力に変換して、発光管10に給電する役割を有し、直流電力を交流電力に変換する変換回路と、発光管10に流れる電流を制御し放電を安定させる安定器L3とを備える。変換回路は、フルブリッジ回路であり、4つのスイッチング素子Q3,Q4,Q5,Q6を備える。また、安定器L3には、例えばチョークコイルが使用される。
【0034】
ランプ1は、上記した構成の点灯回路を内蔵しているため、水銀灯用の安定器(銅鉄安定器)が残存している既設の照明施設にも使用することができる。なお、言うまでも無く、水銀灯用の銅鉄安定器を除去した施設でも、あるいは、電力ラインにおいて当該銅鉄安定器を意図的に短絡させた施設においても、ランプ1を使用することは可能である。
【0035】
外管70は、開口端縁部71がケース40の挿入溝46に挿入され、開口端縁部71と挿入溝46との間隙に無機接着剤(不図示)が充填されて、ケース40に接合されている。外管70には、耐熱性や加工性を考慮して例えば硬質ガラスまたは軟質ガラスが用いられる。硬質ガラスの熱膨張係数は、30〜60×10−7[/℃]、熱伝導率は1.0[W/(m・K)]、軟質ガラスの熱膨張係数は、80〜100×10−7[/℃]、熱伝導率は0.74[W/(m・K)]である。なお、無機接着剤には、例えば二重管構造体20をホルダ30に固定する無機接着剤32と同様のものを使用することができる。
【0036】
なお、本実施の形態に係る外管70は、図4(a)に示すような所謂ドロップ形状であったが、図5(a)に示すような、頂部が半球状の円筒形状であっても良いし、図6(a)に示すような、外側にやや膨らんだ円形の端面を頂部側に有する円筒形状であっても良いし、図7(a)に示すような、外周面全体に僅かに膨らみをもたせた円筒形状であっても良いし、図8(a)に示すような、ランプ軸方向中間部に大径部が設けられた円筒形状であっても良い。また、図4(b)、図5(b)、図6(b)、図7(b)及び図8(b)に示すように、外管70の頂部に凹入部が設けられていても良いし、図4(c)、図5(c)、図6(c)、図7(c)及び図8(c)に示すように、外管70の頂部に突出部が設けられていても良い。
【0037】
以上に説明した本実施の形態に係るランプは、水銀灯代替光源として既存の水銀灯用照明器具に装着して用いられるものであって、定格ランプ電力が30〜420[W]であることが好ましい。250Wより高ワットタイプのランプの場合、熱源である発光部からの熱の影響が非常に大きいために、回路の寿命信頼性を確保することが非常に困難になるなどの理由から、定格ランプ電力は30〜250[W]であることがより好ましい。具体的な定格ランプ電力としては、例えば30[W]、70[W]、100[W]、150[W]、200[W]、250[W]等が挙げられる。なお、本発明において定格ランプ電力とは、回路込みのランプにおいて光源で消費される電力をいう。
【0038】
一般に、メタルハライドランプは、水銀灯と比較して発光効率[lm/W]が良いため、水銀灯の代替品として使用する場合は水銀灯よりも低いランプ電力で同等の明るさが得られる。例えば30[W]のメタルハライドランプは、80[W]の水銀灯と同等の明るさが得られ、80[W]の水銀灯の代替品となり得る。同様に、70[W]のメタルハライドランプは100[W]の水銀灯と同等、100[W]のメタルハライドランプは200[W]の水銀灯と同等、150[W]のメタルハライドランプは250[W]の水銀灯と同等、200[W]のメタルハライドランプは300[W]の水銀灯と同等、250[W]のメタルハライドランプは400[W]の水銀灯と同等の明るさが得られ、それぞれの水銀灯の代替品となり得る。ところで、後述する「配光に及ぼす影響」についての用途では、3mの高さの街路灯用モールライトに装着し、上向きに、すなわち外管70が上側、口金50が下側になる姿勢で点灯させる際に、所望の直下照度の絶対値を確保するという観点から、代替となるワットレンジの水銀灯を用いる。ただし、使用する用途、環境によっては、全光束・照度などのような代替条件として注目するランプ特性が異なる場合があるため、代替となるワットレンジは適宜変更して良い。
【0039】
<最大外径D及び最短距離Lについて>
(1)放熱性に及ぼす影響
本発明に係るランプは、図1に示すように、ランプ筐体80の底側端面の最大外径[mm]をDとし、ランプ筐体80に近い側の電極15bの先端から、ランプ筐体80の底側端面を含む仮想平面Aまでの最短距離[mm]をLとした場合に、0.29≦D/2L、の関係を満たすため点灯回路の短命化を防ぐ。
【0040】
上記D/2Lは、図1に示すように、電極15bの先端とランプ筐体80の底側端面の外周縁(ケース40の大きい方の開口側の端面45の外周縁)とを結ぶ線分Yと、ケース40の筒軸Xとがなす角度[°]をαとした場合のtanαに相当する。したがって、言い換えれば、0.29≦tanα、の関係を満たす場合に点灯回路の短命化を防ぐと言える。
【0041】
図9は、最大外径D及び最短距離Lが点灯回路の熱破壊に及ぼす影響についての実験結果を示す図である。実験では、本実施の形態に係るランプ1をベースに、消費電力、最大外径D及び最短距離Lに変更を加えたランプを種々作製し、それらランプを点灯させて、点灯回路が熱破壊されるまでの時間を測定した。
【0042】
具体的には、まず、実施例1〜14及び比較例1〜7のランプを用意し、各ランプに対してエージングを実施し、点灯回路が熱破壊するまでの総点灯時間(回路寿命時間)を測定した。そして、回路寿命時間が24000[h]以上の場合は、所望の定格寿命に対してバラツキを考慮した寿命信頼性を確保する「良好」なランプと評価し、24000[h]未満の場合は、所望の定格寿命に対してバラツキを考慮した寿命信頼性を確保できない「不良」なランプと評価した。なお、ランプが不点になり、かつ、点灯回路以外の箇所に故障が見られなかった場合に、点灯回路が短命化し、破壊したとみなした。また、エージングは、ランプの口金が下側となる点灯姿勢を保持し、定格電力において裸点灯させながら、5.5h点灯させた後に0.5h消灯するという点灯サイクルを採用し、評価を行った。
【0043】
回路寿命時間24000[h]を境にして「良好」、「不良」の評価した理由としては、メタルハライドランプ1は、水銀灯の代替品としての位置づけから当該水銀灯と同等かそれ以上の寿命を実現する必要があり、水銀灯の寿命は12000[h]であるため、その代替品として少なくとも12000[h]好ましくは15000[h]の寿命を確保する必要があり、回路設計上の電子部品の品質のバラツキやランプの使用環境までも考慮するとその2倍の寿命すなわち30000[h]を設計寿命とすることが好ましいからである。
【0044】
図9から明らかなように、0.29≦tanα、の関係を満たす実施例1〜14のランプは、いずれも回路寿命時間が30000[h]以上であり目標値を超えている。一方、0.29≦tanα、の関係を満たさない比較例1〜7のランプは30000[h]どころか、水銀灯の定格寿命である12000[h]の半分にも満たない。
【0045】
また、実施例1〜14のランプは、いずれもケース40の回路収納部41の内部空間48の雰囲気温度のうち少なくとも一部の温度が70[℃]を超えることがなかった。一方、比較例1〜7のランプはいずれもランプ筐体内全ての雰囲気温度が80[℃]以上である。一般に、点灯回路の中で最も熱に弱い素子は電解コンデンサであると考えられるが、電解コンデンサが所望の定格寿命に対してバラツキを考慮した寿命信頼性を確保する温度は70[℃]であるため、この温度を超えている比較例1〜7のランプは寿命が短かったと考えられる。なお、本願において、「回路温度」とは、点灯を開始してから3h経過後、点灯回路ユニットが収納されたランプ筐体80の内部空間の温度が安定した状態の際に、熱電対を用いてランプ筐体80内の雰囲気温度を、全空間を網羅する領域においてランダムに16点測定したうち、最低の測定温度を意味する。
【0046】
(2)配光性に及ぼす影響
本発明に係るランプは、D/2L≦3.6、すなわちtanα≦3.6、の関係を満たすため配光性が良好である。
【0047】
図10は、最大外径D及び最短距離Lが配光性に及ぼす影響についての評価結果を示す図である。実験では、本実施の形態に係るランプ1をベースに、消費電力、最大外径D及び最短距離Lに変更を加えたランプを種々作製し、それらランプの配光性を評価した。
【0048】
具体的には、まず、実施例15〜26及び比較例8〜13のランプを用意し、各ランプを3mの高さの街路灯用モールライト(パナソニック電工株式会社製 モールライトベーシック)に装着し上向きに点灯させ(外管70が上側、口金50が下側になる姿勢で点灯させ)、モールライトのポールから半径1[m]離れた地点において地面から100[cm]の高さにて照度計(コニカミノルタ株式会社製 デジタル照度計 T−1)を用いて照度を測定した。そして、代替の対象となる水銀灯を同じ条件で点灯させた場合の照度に対する比率[%]を算出し、その算出値を直下照度と称して、直下照度が80[%]以上の場合は、配光性の良い「良好」なランプと評価し、80[%]未満の場合は、配光性の悪い「不良」のランプと評価した。
【0049】
図10から明らかなように、tanα≦3.6、の関係を満たす実施例15〜26のランプは、いずれも直下照度が85[%]以上であり目標値を超えている。一方、tanα≦3.6、の関係を満たさない比較例8〜13のランプは75[%]以下であり目標値に至らなかった。
【0050】
(3)その他
本実施の形態に係るランプ1は、水銀灯の代替品として既存の水銀灯用照明器具に装着して使用されるものであるため、水銀灯用照明器具に装着可能なように、今回、水銀灯照明器具の適合評価を実施した結果、器具装着に関して適合可能である範囲を見出している。そのため、本実施の形態に係るランプ1は、0.29≦D/2L≦3.6、の関係を満たすだけでなく、さらに、40≦D≦122、且つ、10≦L≦75、の関係を満たす必要がある。なお、図9及び図10に示すように、実施例1〜26のランプはいずれも、40≦D≦122、且つ、10≦L≦75、の関係を満たしている。
【0051】
また、本実施の形態に係る回路内蔵型ランプは、銅鉄式のような安定器を含む照明器具にも適用することができる。
このように本実施の形態に係る回路内蔵型ランプの取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具が安定器を含んでいる場合、本実施の形態に係るランプに内蔵している点灯回路を保護するという観点からは、点灯回路の入力部にパルス保護回路を付設することが好ましい。なぜならば、例えば、点灯中のランプが立ち消えるなどして回路への入力電流が急激に遮断された場合には、インダクタンス成分を含む安定器から高電圧のパルスが発生することがあり、このパルス電圧により回路素子が破損するおそれがあるが、上記のようにパルス保護回路を付設すると、パルス電圧による回路素子の破損を抑えることができるためである。また、ランプが立消えたりなどした場合であっても、回路への入力電流が急激に遮断されることなく、緩やかに減少させるための保護回路を設けることによって、安定器からのパルス電圧を低下させることもできる。
また、本実施の形態においては、回路の入力部にACフィルタおよび/またはアクティブフィルタ回路を付設させてもよい。一般的に、水銀灯用に使用される安定器はインダクタであるため、本実施の形態に係る点灯回路への入力電流が高調波成分を多く含む場合、本来の入力電流波形を歪ませることがある。その点、これらの回路を付設することにより、回路への入力電流の高調波成分を低減することが出来るため、安定器によって電流波形を歪ませられることなく、ランプに対して適正な電流を安定して供給することができるので、ちらつきなどの問題が回避できる。
【0052】
ところで、本実施の形態の取替え対象となる既存の水銀灯用照明器具は、既に数十年という長期にわたって使用されている場合が多く、コイル劣化などが懸念される。
その点、本実施の形態に係るランプはセラミック発光管を使用しているため、水銀灯の2倍程度の効率を得ることが出来る。そのため、既存の水銀灯に対して同等の光束(光量)を得るのであれば、およそ半分の電力/電流にすることが出来る。このため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、本実施の形態に係るランプに交換した後は、安定器の電流負荷を低減することができるため、コイル劣化を抑制させる効果や発煙などの不具合を抑制することが出来る。さらに、水銀灯を使用している際、コイル劣化により安定器が短絡状態になった場合は水銀灯の発光管が爆発することがあるが、本実施の形態に係るランプであれば内蔵された回路により電流が制限されているため、発光管が爆発するなどの危険性もない。そのため、本実施の形態に係る回路内蔵型ランプを既存の水銀灯用照明器具に適用する場合には、回路内蔵型ランプとして既存の水銀灯よりも低電力タイプのものを選択することが好ましい。このように低電力タイプを選択すると、取替え対象となる水銀灯よりも回路内蔵型ランプが低電流であるため、既存の安定器が長期間にわたって使用されていても、回路に対する電流負荷が低いので、コイル劣化等が生じている場合でも発煙などの不具合を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るメタルハライドランプは、点灯回路を内蔵しているにも関わらず、回路を内蔵するためのケース容積を適正に確保するようにしたので、高ワットを負荷した場合であっても、回路温度が低減されるため、回路信頼性を確保することができる。また、本発明に係るメタルハライドランプは、ケースの陰となって発光管の光が届き難い暗い領域が発生しにくいので、優れた配光特性を得ることができることから、特に、既存の水銀灯用照明器具にそのまま装着して用いる水銀灯代替品として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 発光管
15a,15b 電極
20 二重管構造体
28 内管
30 ホルダ
40 ケース
50 口金
70 外管
80 ランプ筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が互いに対向する一対の電極を有し発光物質としてハロゲン化金属が封入された発光管および当該発光管を気密封止する内管を有する二重管構造体と、
前記内管の長手方向一端部を保持するホルダと、
一方の開口側端部に前記ホルダがその開口を塞ぐように取り付けられ、他方の開口側の端部に口金が外嵌され、内部に前記発光管を点灯させる点灯回路が収納されたケースと、
前記二重管構造体を内包した状態で前記ケース又はホルダに取り付けられた外管とを備え、
前記ホルダと前記ケースとで構成される有底のランプ筐体において、その底側端面の最大外径[mm]をDとし、
前記一対の電極のうちの前記ランプ筐体に近い側に配置された電極の先端から、前記ランプ筐体の底側端面を含む仮想平面までの最短距離[mm]をLとした場合に、
0.29≦D/2L≦3.6、
40≦D≦122、
10≦L≦75、
の関係を満たすことを特徴とするメタルハライドランプ。
【請求項2】
定格ランプ電力が30〜250[W]であることを特徴とする請求項1記載のメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−282949(P2010−282949A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87534(P2010−87534)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】