説明

メタルハライドランプ

【課題】
高効率で初期光束維持率の低下が少なくて、しかも水銀灯用安定器を用いて点灯できるメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】
メタルハライドランプは、透光性セラミックス気密容器1、一対の電極2、2および放電媒体を備えた発光管ITと、外管OTと、始動手段STとを具備し、前記金属ハロゲン化物は、NaX、CeX、CaXおよびTlXを含み、いずれもmol組成比で、10≦NaX/CeX≦31、0.02≦CaX/(NaX+CeX)≦1.1、および0.03≦TlX/(NaX+CeX)≦0.20、を満足し、前記発光管は、透光性セラミックス気密容器の最大内径をDmとし、一対の電極間距離をLeとしたとき、比Le/Dmが1≦Le/Dm≦4を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス気密容器を備えたメタルハライドランプに関する。
【背景技術】
【0002】
透光性アルミナセラミックスからなるセラミックス製発光管を用いたメタルハライドランプは、従来の石英ガラスからなる発光管に比べ耐熱性および耐食性に優れていて、より高温で動作させることが可能であることから、高効率、高演色および長寿命という特長を有しているため、急速に普及しつつある。
【0003】
また、メタルハライドランプを点灯する際に用いる安定器については、電子安定器などからなる専用安定器に比べ安価な水銀灯安定器が一般的に普及しており、初期投資の削減が可能などの理由から、水銀灯用安定器で点灯可能なメタルハライドランプが求められている。
【0004】
さらに、省エネの観点から、メタルハライドランプのより一層の高効率化、さらなる長寿命化が期待されている。
【0005】
一方、高いランプ効率を得るための封入物質としてハロゲン化セリウムとハロゲン化ナトリウムを封入し、モル組成比NaI/CeIを3.8〜10の範囲に選定したメタルハライドランプが知られている(特許文献1参照。)。ランプ効率を高めるために、例えば上記のように希土類金属のハロゲン化物を利用する場合、その封入比を高くして蒸気圧を高め、その発光を利用しようとすると、再点弧電圧も高くなり、その分だけ立消え電圧も高くなるため寿命中に立ち消えしやすくランプ寿命が短くなってしまう。
【0006】
特に、水銀灯用安定器を用いてメタルハライドランプを点灯する場合には、特に立ち消えが問題となる。電子安定器などからなる専用安定器用のメタルハライドランプの場合には、定格ランプ電圧が90〜110Vである。これに対して、水銀灯用安定器用のメタルハライドランプの場合は、定格電圧が120〜130Vと高く設定されるため、寿命中のランプ電圧上昇による立ち消えの問題が顕著となる。そのため、水銀灯用安定器で点灯するメタルハライドランプでは、再点弧電圧をできるだけ低くすることが寿命中の立ち消えを抑制して長寿命なランプの設計をするうえで重要になる。
【0007】
ハロゲン化ナトリウムおよびハロゲン化セリウムを用いたランプにおいて、さらにハロゲン化カルシウムを封入したメタルハライドランプが知られている(特許文献2参照。)。この従来技術では、ハロゲン化カルシウムのハロゲン化セリウムに対するmol比を0.4〜15にすると、高効率が得られ、またこの条件と電極間距離の発光管の内径に対する比を1以上にする条件とを併せることにより、発光管のクラックを防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−086130号公報
【特許文献2】特開2008−108736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記後者の従来技術におけるメタルハライドランプは、高効率が得られるものの点灯50〜500時間という比較的早い段階において発光管が著しく黒化するために、初期光束維持率が低下するという問題のあることが分かった。また、水銀灯用安定器で点灯させた場合、上記の黒化現象が顕著に見られるため実用的に使用が困難である。
【0010】
本発明は、高効率で初期黒化が少なくて、しかも水銀灯用安定器を用いて点灯できるメタルハライドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のメタルハライドランプは、透光性セラミックスからなり内部に放電空間を有する透光性セラミックス気密容器、透光性セラミックス気密容器内に放電空間を挟んで離間対向して配設された一対の電極、ならびに水銀、希ガスおよび金属ハロゲン化物により構成され透光性セラミックス気密容器の内部に封入された放電媒体を備えた発光管と、内部に発光管を配設した外管と、発光管の始動を促進する始動手段とを具備し;前記金属ハロゲン化物は、ハロゲン化ナトリウム(NaX)、ハロゲン化セリウム(CeX)、ハロゲン化カルシウム(CaX)およびハロゲン化タリウム(TlX)を含み、いずれもmol組成比で、10≦NaX/CeX≦31、0.02≦CaX/(NaX+CeX)≦1.1、および0.03≦TlX/(NaX+CeX)≦0.20、を満足し;前記発光管は、透光性セラミックス気密容器の最大内径をDmとし、一対の電極間距離をLeとしたとき、比Le/Dmが1≦Le/Dm≦4を満足する;ことを特徴としている。
【0012】
本発明において、数式1の10≦NaX/CeX≦31は、主としてメタルハライドランプのランプ効率および早期黒化、したがって早期光束維持率に影響し、比NaX/CeXが上記数式1を満足すれば、ランプ効率が100以上になりやすくなるとともに、早期黒化による早期光束維持率低下が少なくなる。しかし、比NaX/CeXが10未満であるか、または31を超えると、ランプ効率が100以下になりやすくなる。なお、上記範囲内において、ランプ効率が相対的に高くなる理由から、数式1は、好適には11≦NaX/CeX≦20の範囲である。
【0013】
数式2の0.02≦CaX/(NaX+CeX)≦1.1は、主として水銀灯用安定器を用いた点灯において、メタルハライドランプの立ち消え発生防止に影響し、比CaX/(NaX+CeX)が上記数式2を満足すれば、立ち消えが発生しない。しかし、比CaX/(NaX+CeX)が0.02未満であると、水銀灯用安定器を用いた点灯において立ち消えが発生しやすくなる。また、上記比が1.1を超えると、立ち消えは発生しないもののランプ効率が低下する傾向が強くなる。これは、カルシウムによる青色および赤色光成分が増加しすぎることに起因すると考えられる。なお、上記範囲内において、立ち消えが発生しないとともにランプ効率が相対的に高くなる理由から、数式2は、好適には0.1≦CaX/(NaX+CeX)≦0.8の範囲である。
【0014】
数式3の0.03≦TlX/(NaX+CeX)≦0.20は、数式1を満足することを前提としたときに主としてランプ効率に影響し、比TlX/(NaX+CeX)が上記数式3を満足すれば、数式1の10≦NaX/CeX≦31によるランプ効率向上に加えてランプ効率の明らかな上積みが得られる。しかし、比TlX/(NaX+CeX)が0.03未満であるか、または0.20を超えると、タリウムによる緑色光添加によるランプ効率向上の効果が得られなくなる。なお、上記範囲内において、ランプ効率が相対的にさらに高くなって約5%向上する理由から、数式3は、好適には0.05≦CaX/(NaX+CeX)≦0.15の範囲である。
【0015】
また、上記に加えてカルシウムによる赤色光およびタリウムによる緑色光の上記適量添加により、色度偏差の低減効果を奏する。
【0016】
数式4の1≦Le/Dm≦4は、主として水銀灯用安定器を用いた点灯において、メタルハライドランプの始動性に影響し、比Le/Dmが上記数式4を満足すれば、始動手段によって発生する始動電圧が2000V以下であってもメタルハライドランプの始動が確実に行われる。しかし、比Le/Dmが1未満になると、透光性セラミックス気密容器のクラックが増加する。また、比Le/Dmが4を超えると、メタルハライドランプの始動が不確実になる。
【0017】
本発明において、以上説明の構成に加えて、発光管の管壁負荷を18〜26W/cmの範囲にすることで、より一層所期の効果を奏しやすくなる。しかし、管壁負荷が18W/cm未満になると、発光管内面の温度が低くなりやすくなるために、黒化が発生しやすくなる。また、管壁負荷が26W/cmを超えると、放電媒体の蒸気圧が高くなり、再点弧電圧の上昇を招き、立ち消えが生じやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、高効率で、かつ早期黒化による初期光束維持率の低下が少なくて、しかも水銀灯用安定器を用いて点灯するメタルハライドランプを提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のメタルハライドランプを実施するための一形態における正面図である。
【図2】同じく発光管の拡大断面図である。
【図3】同じく第1の試作ランプ群の点灯試験結果を示す表である。
【図4】同じく第2の試作ランプ群の点灯試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0021】
最初に、図1および図2を参照して、本発明の一形態におけるメタルハライドランプの構造を説明する。本発明において、メタルハライドランプは、発光管IT、外管OTおよび始動手段STを具備している。
【0022】
発光管ITは、透光性セラミックス気密容器1、電極2、2、一対の電流導入導体3、3、一対のシール部4、4および放電媒体を備えている。
【0023】
透光性セラミックス気密容器1は、透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、好適には包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の小径筒部1b、1bを備えている。そして、小径筒部1bおよび包囲部1aは、鋳込み成形により一体に成形されている。
【0024】
透光性セラミックスとしては、単結晶の金属酸化物、例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えた材料を用いることができる。しかし、多結晶のアルミニウム酸化物すなわち多結晶アルミナセラミックスが工業的規模で生産できるとともに、比較的合理的な価格で得られるので、最適である。なお、透光性とは、放電によって発生した可視光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明であるのが好ましいが、要すれば光拡散性であってもよい。そして、少なくとも主要部である包囲部1aの大部分が透光性を備えていればよく、要すれば小径筒部1bは遮光性であってもよい。
【0025】
包囲部1aは、本形態において、外形が連続的な曲面を有する繭玉状に膨出していて、その内部にほぼ同様形状の連続的な曲面を有する放電空間1cが形成されている。本発明において、透光性セラミックス気密容器1の後述する一対の電極2、2の間に位置する包囲部1aの最大内径をDmとする。また、包囲部1aは、その内部に形成される放電空間1cの主要部の形状を上記形状だけでなく、所望により楕円球状や球状の中空にすることができる。なお、上記主要部は、小径筒部1bと接している側の端部近傍を除いた残余の大部分であって、放電による発光が主として透過する部分をいう。
【0026】
一対の小径筒部1b、1bは、包囲部1aの管軸方向の両端から管軸方向に沿って外方へ一体に延在している。なお、一体成形により透光性セラミックス気密容器1が一体化されていると、透光性セラミックス気密容器1の温度分布が相対的に均一になりやすくなるとともに、光学的均質性を得やすくなる。
【0027】
また、小径筒部1bは、後述する電極2および電流導入導体3を内部に挿通して支持するとともに、透光性セラミックス気密容器1を封止するのに寄与させることができる。この場合、小径筒部1b内の電極2の周囲にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成して、点灯中その内部に充填する液相の放電媒体の放電空間1c側の内面を最冷部にすることができる。なお、小径筒部1bの断面は、好ましくはほぼ円形である。
【0028】
さらに、透光性セラミックス気密容器1の点灯中における包囲部1aの外表面の温度が850〜1200℃、小径筒部1bの外表面の温度が600〜950℃になるように設計することができる。
【0029】
一対の電極2、2は、透光性セラミックス気密容器1内において、先端が放電空間1cを挟んで離間して対向するように配設されている。そして、一対の電極2、2の先端間に形成される電極間距離をLeとしたとき、当該電極間距離Leと透光性セラミックス気密容器1の最大内径Dmとの比Le/Dmが1〜4となるように設定される。
【0030】
また、電極2は、純タングステン(W)、ドープドタングステン、モリブデン(Mo)、サーメットなどの導電性にして、かつ耐火性の導電性物質を単体で、または適宜組み合わせて用いて形成することができる。
【0031】
さらに、電極2は、好ましくは細長い電極軸部2a、電極主部2bおよび電極サブコイル2cからなる。電極主部2bは、電極軸部2aの先端部に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、表面の一部に放電アークの起点が形成される。なお、電極主部2bは、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じてタングステンのコイルを巻装することができる。電極サブコイル2cは、電極軸部2aの周囲に巻装されている。なお、好ましい構成として、電極2は、その電極軸部2aに巻装された電極サブコイル2cと小径筒部1bの内面との間にキャピラリーとも称されるわずかな隙間を形成しながら小径筒部1b内に挿通されているとともに、先端が包囲部1aに臨んでいる。
【0032】
一対の電流導入導体3、3は、それぞれ封着性部分3aおよび耐ハロゲン性部分3bからなる。そして、先端部で電極2の基端を機械的に支持するとともに電気的に接続して電極2への給電路となる。
【0033】
封着性部分3aは、透光性セラミックス気密容器1との封着性の良好な導電部材、例えば多結晶アルミナセラミックスに対してニオブの棒状体からなり、先端が小径筒部1bの内部に挿入され、基端が小径筒部1bから外部へ突出している。
【0034】
耐ハロゲン性部分3bは、ハロゲンおよびハロゲン化物に対する耐性に優れる導電性部材、例えばモリブデンの棒状体からなる。また、耐ハロゲン性部分3bは、電極2と封着性部分3aとの間に介在して、電極2と封着性部分3aとの間の熱膨張係数の違いを緩和するとともに、高温となる電極2からシール部4への熱伝動を緩和する。さらに、耐ハロゲン性部分3bは、キャピラリー内に進入した液相のハロゲン化物が接触するために耐ハロゲン性材料からなる。耐ハロゲン性材料は、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)から選択した金属、これら金属とセラミックスとの混合導電材料であるサーメットまたは上記金属とサーメットとの複合体などにより構成することができる。
【0035】
一対のシール部4、4は、透光性セラミックス気密容器1の封止予定部、例えば小径筒部1bと電流導入導体3の封着性部分3aとの間で透光性セラミックス気密容器1を封止するための手段である。シール部4は、フリットガラスと称されるセラミックス封止用コンパウンドを加熱溶融させて透光性セラミックス気密容器1の好適には小径筒部1bと電流導入導体3の封着性部分3aとの間の隙間に進入させてから固化させることで、これらを封着する構成が一般に多用されている。
【0036】
しかしながら、本発明においては上記手段とは異なる既知の各種シール手段を適宜採用することができる。
【0037】
放電媒体は、水銀、希ガスおよび金属ハロゲン化物により構成され、透光性セラミックス気密容器1の内部に封入されている。
【0038】
水銀は、緩衝体としてランプ電圧形成に主として寄与する。しかし、周知のように水銀蒸気による特性スペクトルの一部は、発光にも寄与する。なお、透光性セラミックス気密容器の包囲部における単位容積当たりの水銀封入量を3〜30mg/ccに設定するのが好適である。
【0039】
始動ガスは、少なくとも高圧放電ランプを始動させるときに放電を開始させるのに寄与する。しかし、本発明においては具体的なガスの種類は限定されない。一般照明用のメタルハライドランプの場合、好適にはアルゴン(Ar)単体またはネオン(Ne)およびアルゴン(Ar)の混合ガスを用いることができる。始動ガスの封入圧は、一般的には8〜80kPaである。8kPa未満では、パッシェン曲線から理解できるように始動が困難になる。また、80kPaを超えると始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。好適にはネオン(Ne)およびアルゴン(Ar)の混合ガスである。
【0040】
金属ハロゲン化物は、本発明の特徴部分であり、ハロゲン化ナトリウム(NaX)、ハロゲン化セリウム(CeX)、ハロゲン化カルシウム(CaX)およびハロゲン化タリウム(TlX)を含み、いずれもmol組成比で、数式1ないし数式3をともに満足するように設定されている。なお、金属ハロゲン化物を構成するハロゲンとしては、ヨウ素または/および臭素が用いられる。
【0041】
10≦NaX/CeX≦31…数式1
0.02≦CaX/(NaX+CeX)≦1.1…数式2
0.03≦TlX/(NaX+CeX)≦0.20…数式3
外管OTは、発光管ITおよび後述する始動手段STを内部に収納している。そして、発光管ITを機械的に保護し、発光管ITの作動温度を所望の範囲に維持し、あるいは発光管ITからの放射のうち所定のものを遮断するなどの機能を外管OTに対して選択的または包括的に付与させることができる。
【0042】
外管OTと発光管ITとは、一般的には両者の軸が一致するように配置される。外管OTは、所望の機能を発揮するために、その内部に、真空ないし低圧の大気または不活性ガス、例えば希ガスや窒素を封入することができる。外管OT内の雰囲気を133Pa以下に減圧された窒素などの不活性ガスまたは空気に設定するのが発光管ITの温度分布を均一化するのに効果的であるので、好適である。なお、外管OTは、適当な透光性、気密性、耐熱性および加工性を備えている材料、例えば硬質ガラスを用いて構成することができる。また、外管OTは、既知の各種形状を適宜選択的に採用することができる。
【0043】
また、外管OTは、片封止および両端封止のいずれの構造をも所望に応じて選択的に採用することができる。なお、片封止は、外管の一端にのみピンチシール部が形成されていて、他端が封止部を形成しないで閉塞されている構造をいう。両端封止は、外管の両端にピンチシール部が形成されている構造をいう。なお、外管OTが片封止構造であると、汎用ランプソケットを用いる一般照明用として都合がよい。
【0044】
本形態において、外管OTは、硬質ガラスからなるBT形バルブ状をなしていて、そのネック部にフレアステム11を封着して備えている。フレアステム11は、一対の導入線11a、11bを気密に導入している。そして、外管OTは、その内部の所定位置に発光管ITを後述する支持構体SFにより支持して収納しているとともに、発光管ITを後述するシュラウドSHにより保護している。
【0045】
支持構体SFは、金属棒状体を略U字状に湾曲して形成されていて、その下部がフレアステム11に封着されている導入線11bに溶接され、上部にスプリング材からなるトップホルダー12が溶接されている。トップホルダー12は、外管OTの頭部内面に係止され得るようになっていて、支持構体SFの上部を外管OTに対して係止する。発光管ITは、図1においてその上部の電流導入導体3が、支持構体SFの上部側を橋絡する帯状導体13に加締め付けによって接続されている。また、発光管ITの図1において下部の電流導入導体3がストランドワイヤ14および接続導体15を直列的に介して導入線11aに溶接されている。
【0046】
以上により、発光管ITは、導入線11aおよび11bの間に接続されている。
【0047】
シュラウドSHは、透光性筒体16および補強紐体17により構成されている。透光性筒体16は、例えば石英ガラスなどの耐熱性透光性部材からなり、円筒状をなしていて、発光管ITを側方からほぼ同心状に包囲するように配設されている。なお、シュラウドSHは、図において上下両端が開放され、かつその内面と発光管ITとの間には適当な空間が形成されている。補強紐体17は、例えばアルミナなどを主成分とする耐熱無機系繊維糸やステンレス鋼線からなり、透光性筒体16の外周に巻装されて、透光性筒体16をその外側から締め付けて補強している。
【0048】
また、シュラウドSHは、支持構体SFに配設された一対のシュラウドホルダー18、18に上下両端を挟持されて支持構体SFに保持されている。すなわち、シュラウドホルダー18は、円盤状をなす嵌合部がシュラウドSHの透光性筒体16の端部に嵌合し、嵌合部と一体の取付脚部が支持構体SFに溶接されることにより、所定の位置に支持される。なお、発光管ITの透光性の小径筒部1bは、シュラウドホルダー18を緩く貫通してシュラウドSHから外部に突出している。
【0049】
始動手段STは、メタルハライドランプの始動を補助する手段であり、本形態においては例えば始動用のグロースタータ(点灯管)19、バイメタルを用いた熱応動スイッチ(図1では見えない。)および限流抵抗器20の直列回路からなり、この直列回路は一端が支持構体SFに接続し、他端が接続導体15に接続している。したがって、始動手段STは、導入線11aおよび11bに発光管ITと一緒に並列接続している。
【0050】
グロースタータ(点灯管)19は、グロー放電により内部に配設された一対の電極のバイメタルが熱変形して接触し、グロー放電の停止による冷却で開離して安定器に流れていた電流が遮断したときに、安定器に高電圧始動パルス電圧が発生して、発光管ITに印加することでメタルハライドランプを始動させる。また、この始動に先立ち、グロー放電発生時に外部に紫外線を放射してメタルハライドランプ内に初期電子を励起するように構成されている。なお、安定器は、(一般形・低始動形)水銀灯用安定器が用いられる。
【0051】
上記の動作を行うために、グロースタータ19は、例えば紫外線透過性の石英ガラスからなるバルブの一端部にリード線を気密に封着した封止部が形成され、バルブ内にはリード線に接続したバイメタルからなる放電電極が所定の間隔を隔て対峙しているとともに、アルゴン(Ar)が所定圧力で封入されている。
【0052】
なお、限流抵抗器20は、グロー電流を所定値に限流する手段であり、例えば300Ωである。熱応動スイッチは、メタルハライドランプが始動して点灯した際の温度上昇により変位してオフ動作をするので、点灯中始動手段STの動作を停止させる。
【0053】
口金Bは、E39形口金であり、外管OTのネック部に固着され、外管OTから外部へ露出した図示しない一対の導入線の一方がシェル部に、他方がセンターコンタクトに、それぞれ接続している。
【0054】
なお、図1において、符号G1はパーフォーマンスゲッタ、G2はイニシャルゲッタであり、いずれも外管OT内を清浄化するもので、支持構体SFの上下に分離して溶接されている。
【実施例1】
【0055】
図1に示す構造である。
【0056】
透光性セラミックス気密容器:内容積3cc、最大内径Dm16mm
電極間距離Le:16mm、Le/Dm=1.0
放電媒体 :NaI-CeI3-CaI-TlI(mol組成比60-5-28-8)=5mg、
Br/Iのmol組成比=35
水銀=40mg、Ar=13.3kPa
管壁負荷 :21W/cm2
外管内雰囲気 :真空
安定器 :水銀灯用安定器
定格ランプ電力:230W
全光束 :23200lm(500hr後)
ランプ効率 :105lm/W
相関色温度 :4000K(100hr後)
立ち消え :なし
早期黒化 :なし。

次に、実施例1のメタルハライドランプにおいて、以下のように放電媒体の封入条件を振った第1の試作ランプ群を各5本試作し、水銀灯用安定器を用いて点灯して評価した結果について図3の表を参照して説明する。
(1)比NaX/CeXを3〜66の範囲で変化させた。
(2)比CaX/(NaX+CeX)を0〜1.2の範囲で変化させた。
(3)ランプ電圧が130Vになるように水銀を20〜50mgの範囲内で変化させた。
(4)評価は、ランプ効率(lm/W)、色温度(K)、立ち消え発生、黒化有無とした。
【0057】
なお、図中の色温度は、相関色温度で点灯100時間での値である。立ち消え発生と黒化有無は、点灯500時間までの状態を評価した。また、黒化の有無は目視により判定した。したがって、図3において、「黒化」は早期黒化の有無を示している。比NaX/CeXおよび比CaX/(NaX+CeX)は、いずれもmol組成比である。
【0058】
図3から理解できるように、比NaX/CeXが10〜31であれば、ランプ効率が相対的に高くなり、加えて比CaX/(NaX+CeX)が0.02〜1.1であれば、ランプ効率が100lm/W以上になる。また、0.02〜0.8であれば、ランプ効率が105lm/W以上になる。早期黒化が発生する。
【0059】
比CaX/(NaX+CeX)が0であると、立ち消えが発生するが、0.02以上であれば立ち消えが発生しない。しかし、比CaX/(NaX+CeX)の値は、上述のようにランプ効率にも影響を与えるので、所定値範囲内である必要がある。なお、比CaX/(NaX+CeX)が0.02であっても、比NaX/CeXが3の場合には、立ち消えが発生する。
【0060】
さらに、比NaX/CeXが10〜31の範囲であれば、相関色温度は3461〜4515の範囲内で選択可能なので、実用上問題ない。
【0061】
次に、実施例1のメタルハライドランプと同様な仕様において、比Le/Dmを以下のように振った第2の試作ランプ群を各5本試作し、水銀灯用安定器を用いて点灯して評価した結果について図4の表を参照して説明する。
(1)放電媒体として、Ar13.3kPa、水銀38mg、金属ハロゲン化物6mg(NaX−CeX−CaX=14:1:3)を封入した。
(2)比Le/Dmを1〜8の範囲で振った。
(3)評価は、ランプ効率および始動性とした。
【0062】
なお、評価項目「始動」において、記号○は始動性良好、記号×は始動しない、を意味する。水銀灯用安定器は、始動時にメタルハライドランプの外管内に配設された始動手段STの動作により水銀灯用安定器から発生する始動用パルス電圧が1000〜2000Vである。これに対して、専用安定器では、始動回路が安定器内に一体に組み込まれていて、しかも2000〜5000Vの高電圧パルスを発生する。
【0063】
図4から理解できるように、比Le/Dmが1〜4の範囲内であれば、始動性に問題ない。しかし、比Le/Dmが5〜8の範囲では、始動しなかった。この評価結果から、水銀灯用安定器を用いて点灯する場合には、比Le/Dmを1〜4にする必要のあることが分かる。
【0064】
なお、より一層確実な始動を確保するためには、比Le/Dmを1〜3にするのがよい。また、比Le/Dmを1未満にすると、ランプ効率が低下するため、1以上にするのがよい。さらに、ランプ効率は、比Le/Dmが大きいほど値が大きくなるが、本評価においては比Le/Dmが5以上の場合には、始動しなかったので、ランプ効率は不明である。
【0065】
次に、実施例1のメタルハライドランプと同様な仕様において、ハロゲン化タリウムTlXをmol組成比でTlX/(NaX+CeX)を0.01〜0.24の範囲内で振って封入した第3の試作ランプ群を試作してランプ効率の増加について検証してみた。
【0066】
その結果、比TlX/(NaX+CeX)が0.03以上であれば、明らかに3%以上のランプ効率増加が認められた。また、上記比を0.05以上とすることで、ランプ効率が約5%増加することが分かった。しかし、上記比が0.21以上になると、ランプ効率低下が認められた。
【0067】
本発明のメタルハライドランプは、以上説明した定格ランプ電力230Wに限定されるものではない。したがって、屋外や高天井照明などの一般照明に使用される定格ランプ電力150〜700Wのメタルハライドランプにおいても、もちろん本発明を適用してその効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
1…透光性セラミックス気密容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、2…電極、3…電流導入導体、3a…封着性部分、3b…耐ハロゲン製部分、4…シール部、11…ステム、19…グロースタータ(点灯管)、20…限流抵抗器、B…口金、G1…パーフォーマンスゲッタ、G2…イニシャルゲッタ、IT…発光管、OT…外管、SF…支持構体、ST…始動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性セラミックスからなり内部に放電空間を有する透光性セラミックス気密容器、透光性セラミックス気密容器内に放電空間を挟んで離間対向して配設された一対の電極、ならびに水銀、希ガスおよび金属ハロゲン化物により構成され透光性セラミックス気密容器の内部に封入された放電媒体を備えた発光管と、内部に発光管を配設した外管と、発光管の始動を促進する始動手段とを具備し;
前記金属ハロゲン化物は、ハロゲン化ナトリウム(NaX)、ハロゲン化セリウム(CeX)、ハロゲン化カルシウム(CaX)およびハロゲン化タリウム(TlX)を含み、いずれもmol組成比で、
10≦NaX/CeX≦31、
0.02≦CaX/(NaX+CeX)≦1.1、および
0.03≦TlX/(NaX+CeX)≦0.20、
を満足し;
前記発光管は、透光性セラミックス気密容器の最大内径をDmとし、一対の電極間距離をLeとしたとき、比Le/Dmが1≦Le/Dm≦4を満足する;
ことを特徴とするメタルハライドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−150792(P2011−150792A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8675(P2010−8675)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】